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最後の晩餐にはまだ早い


五反野「酒肴 和ろく」(2018年11月)

 今年8月にランチ利用し、料理に光るものを感じた、東武スカイツリーライン五反野駅近くの和食「酒肴 和ろく」、それ以来夜のおまかせ献立を味わってみたいと思っていたが、ようやく実現する事になった。
 献立は月替わりなので、寒さが増してくる霜月11月の料理、魚や野菜も旨くなる季節なのでとても楽しみだ。
 相客と五反野駅で集合、歩いて店まで向かうが、この日祝日だった事もあり、夜は昼と違い営業している店も少なく、駅前と云えども寂しい雰囲気がする。
 店についてあらためて紹介すると、2016年6月の開業で店主は1980年栃木生れの佐竹剛氏、地元で料理人として経歴を開始、その後東京に出て、TVの鉄人番組で全国的に有名になる道場六三郎氏の下で12年働く、銀座「ろくさん亭」では副料理長を5年務めた。五反野に独立開業したのは、同じ職場だった奥様の実家があったからだそうだ。今の日本では、子育てをしながら夫婦で昼夜飲食店を営業するとなると、夫婦どちらかの父母に頼らざるを得ない現状だ。
 18時の入店だったが、既に4人グループが食事中で、さすが足立は夜が早い、都心とは2時間位時差がある気がする(笑)。
 勿論予約していたので、店は椅子席を作ってくれていたが、我儘を云ってカウンター席に座らせてもらった。店主は私の顔を覚えていたみたいで、昼間居た奥様に代わって中年女性が手伝っていたが、顔立ちが似ているので奥様のお母様だと思う。
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 道場流を引き継いだ「お品書き」は、店主自ら書いたそうだ、これに沿って当日の料理(5,800円)が始まる。
「霜月の料理」
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・お通し(+300円):水蛸と小松菜

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・前菜:チーズ黄金焼き、人参スープ、ひとくち寿司(平鯛)、鮭西京焼

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・吸物:出汁一番(白菜と豚肉の重ね蒸し、春菊、黒こしょう)

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・刺身:本日の鮮魚三種盛り(鮪、戻り鰹、フグ)、あしらい

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・煮物:秋の味覚(海老芋と鰊炊き合わせ、青味、針柚子)

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・小鉢:蕪の菊なます

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・焼物:和牛もも肉炙り焼肉風、和ろくダレ、野菜

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・食事:むかごと地鶏の炊き込み、有馬山椒、三ツ葉

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・甘味:豆乳ぷりん、自家製黒蜜、きなこ

 料理全体の印象から云うと、「道場流」と聞くとTVの印象から、変化球の多い料理かな?と思っていたが、実際に体験してみるとそんな事はなく、季節物を使って上手く纏めていると思った。
 和食の華とも云える椀物は特に秀逸だった、本家は「命の出汁」の言葉で有名になったが、此処では本枯節と昆布で取った一番出汁に、鮪節などで追い出汁をするとの事。そこに豚肉の脂味が加わる事により更に香りと味が立体的になっている、この椀を味わうために5,800円払って惜しくないと思った(笑)。
 造りは関西へ行くと白身魚が旨いと思うが、鮪と鰹は東京の方がいい物が出ると感じる。海老芋と身欠き鰊は元々関西で使う食材だが、少し濃い目の味付けながら、お惣菜ではなく料理屋の味になっていた。
 メイン料理とも云える和牛料理は少し変化球だが、青唐辛子と林檎が味ベースとなって、品は悪くなく美味しい。
 締めの店主の地元である、栃木米とむかごの炊き込みご飯も後を引く味で、思わずお替りをしてしまった(笑)。甘味も果物を切っただけの物でなく手をかけている。
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 料理はランチで予想したとおり、いや予想以上に良かった、行く前は大阪高麗橋の「桜花」みたいな料理かな?とも思っていたが、やはり西と東の味のまとめ方は違うと感じる。それより今は芝大門に移転した「くろぎ」が、湯島で「湯島121」を名乗っていた時代の料理を連想した、あの頃料理は夜8,800円だったと記憶している、現在の料理値段を思うと、料理屋は有名になる前に行かないと出遅れなのだなと、あらためて思ってしまう(笑)。
 私が思わず店主に「将来銀座へ移転とか考えていますか?」と、嫌な事を訊いてしまったが、佐竹氏は「自分は銀座に長く居たので、熱い料理を出してもそのままにして、話をしているだけの客も見て来た、此の地で続けたいと思っている」との事、地元民としては嬉しい話だ。
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 いただいた名刺は、師である道場六三郎氏の書との事。料理はいい意味で「道場スピリッツ」を受け継いでいるなと思った、型に捉われず自由な発想、いい物なら産地を問わず、いい料理なら国籍を問わずに取り入れる、それでいて和食の本筋は外していない。
 此処は我家から自転車で行ける距離、もっと早く夜にも来るべきだった。有名になって値段が上がってしまっては困るが、老いた人間の財布にも優しい今の値段のうちに、これから通わないといけない(笑)。


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  2. 日本料理
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代々木公園「暮らしの店 黄魚」

 「アルドアック」での秀逸なランチ後、友人と別れて向かったのは、代々木八幡商店街にある「暮らしの店 黄魚」と云う店、今時の言葉なら「セレクトショップ」と呼ぶのだろうか、食器を中心に揃えた私の世代で云えば雑貨店だ(笑)。
 此の店を知ったのは偶然で、友人との待ち合せに適当な場所はないかと、代々木公園駅近くの店舗を、ネット上で探している時にWEBページを見つけた。
http://www.kio55.com/
 特に惹かれたのが、女性だと思われる店主のブログで、私も同じブロガーの端くれとして、他の人が書いた文章は気になるのだが、このブログは短いながら器など物の見方に非凡なセンスを感じさせた。自分が若い頃は、対人間は主に外見でしか判断しなかったが、年齢を重ねた今は、相手の知性、品性がまず気になり、結果付き合いたくなければパスしたいと思ってしまう。

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 店の場所は代々木八幡駅と代々木公園駅の出入口から続く、代々木八幡商店街中の同じ並びにある、私は富ヶ谷の「ルヴァン」へパンを買いに来ていたので、この界隈は昔から知っていたが、此処十年で様変わりし、若い人達それもファミリー層の姿が目立つ、彼・彼女向けの今風な飲食店も幾つかオープンしている。 
 小さなビルの1階に店舗がある、窓に作った棚に並べた食器や鍋類を見ても、色使いやデザインに上品な物が多く、入ってみたくなる雰囲気だ。

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 店のトレードマークは名前のとおり黄色い魚、「きお」と読むそうだ。

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 ドアを開けると其処はすぐ店舗になる、右手が会計などをする場所で、店主と思われる女性が女性客と話をしていた。
 目の前には皿を並べた低い机、此処から左側へ品物が並べてある。(店内撮影は了承を得ています)

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 陶磁器だけでなく、弁当に使う曲げわっぱや、ポルトガル製の靴下も置いてある。

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 布製や革製の鞄、下にあるジョージナカシマ風の椅子も商品との事。

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 アクセサリーやヴィンテージ物のホーロー鍋、キッチン用品やカトラリー類まで置いてある。
 店主はWEBページ上で自店の器について、
 『私のうつわ選びは、料理を盛って完成する うつわ。私は、ほぼ毎日、誰かのために、自分のために私は料理をします。ここにあるうつわで、ご自身の作られたお料理を妄想してみてください。そうしたら、きっと完成します。』と詩的に語っているが、成程その言葉が理解できる品揃えなだと思った。
 全体的に華美でなくノーブルで、飾るのではなく実際に料理に使ってみたくなる器、他の雑貨類も含め、店主の美意識と云うか一貫した審美眼が推し量れる品物だなと感じた。
 品物選びで長く話していた女性客が退けたので、穏やかな印象の店主と少し話をさせてもらった、「私は元々作る側だったので、物を勧めたりする売る方はあまり得意ではありません」と語る、ご自身も陶芸をやられていたみたいだ。
 彼女が物を選ぶ基準はやはり「使って幾ら」みたいだ、店内で目に留まった器に、ルーシー・リーが作った物に似ている鉢があり褒めていたら、「これ子供が居ると倒しそうで怖いのです」と云う、つまり高台が小さくて重心が上にあるので、デザイン的には格好いいが、あまり実用的ではないとの事、実際に料理を盛る器として使う視点から助言してくれるのはありがたい。何かと屈折している私は、それ聞いてかえって欲しくなった位(笑)。

     181207-7 坂上のり子
 話だけで帰るのは失礼かなと思い、目に留まった白磁の小さな楕円皿を買う事に、店主によると作家は坂上のり子さんと云う女性で、神奈川で作陶しているとの事。冷たく見えがちな白磁だが、これはどこかほっこりとした柔らかな印象、店主のイメージにも共通する(笑)。
 「うちの器は全て電子レンジでも使えます」との事、金銀装飾の物は置かないらしい、これは現代における「用の美」だなと思った。

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 同じ日に買った、富ヶ谷「ルヴァン」のパンを乗せてみた、予想どおり良かった(笑)。
 「アルドアック」「黄魚」「ルヴァン」は同じエリアなので、これから一緒に訪れる事ありそう、アルドアックのランチは土日、黄魚は水日休みなので、土曜日限定になるが。
 女性の掌が作った物を、女性の眼が選んで自店に置く、それを求めに来る客も女性が殆ど、「21世紀は女たちの時代」とも云われるが、此の店はそれを感じさせてくれる。
 代々木八幡&代々木公園駅に行く時には寄ってみる事をお勧めしたい、素敵な店です。


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代々木八幡「アルドアック」(2018年11月)

 ランチ仲間と話していて、「アルドアックヘ行った事がないので、一度行ってみたい」と聞いたのは結構前、「それなら今度ご一緒しましょう」と話しながら、実行出来ないままだったが、ようやく実現する事になった。「その店今度行きましょう」と云ったままになっているのは他の人にもあるが、忘れている訳ではありません、諸事情(主に経済的問題で)により先送りしているだけで、自分では「云うだけ番長」のつもりではない(笑)。

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 店の場所が分かり難いので、千代田線代々木公園駅前のナチュラルローソンで待ち合せ、昭和の雰囲気そのままの青年座前を通り、何度見ても笑ってしまう「春の小川」の壁画が描かれたトンネルを潜ると、アルドアックの入ったビルがある小さな商店街へ出る。
 2階に上ると、踊り場で先客2人組が開店を待っていた、間もなく中から扉が開き、酒井涼氏が顔を出す、この閉じた隠れ家感は夜も昼も同じ、紹介制の店ではないが、同行者が居ないと一人では入り難い雰囲気大。
 前のカップルに続いて入店し、酒井氏が目の前で調理をする砂かぶり席?に座った。私は去年12月以来、昼夜合わせて通算5回目の利用だと思う。
 土日だけ昼営業するが、ランチメニューは3,600円一種、この日の内容は以下のとおりだった。

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・バターナッツ南瓜のスープ、ムールと洋梨、クミンの香り

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・此処へ来たらやはりチャコリ(バスク産微発泡白ワイン)、この日は‘AGERRE’

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・九州産真ハタ、浅利のスープ、サルサベルデ、蕪と万願寺唐辛子

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・何かと話題の「365」のバゲット

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・山形産平牧金華豚のロースト、カタルーニャ風ソーセージ、白いんげん豆、パブリカ、シェリービネガーソース

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・赤はリオハの‘VALENCISO’2011

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・イカ墨のパエージャ

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・アイオリを添えて
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・定番のトルタケソ(バスク風チーズケーキ)、栗のペースト
・カフェソロ

 アルドアックを「スペイン料理」と一言で片づけるのは少し違う気もする。今年2月に同じワンオペスタイルの、大阪・本町「アラルデ」を利用したが、あちらがバスクに特化した料理なら、酒井氏はスペイン各地方料理に加え、フランス料理も取り入れているのでは?と感じる、「スペイン料理の哲学に基づいた酒井料理」と呼ぶべきではと思う。
 一品目はフランス料理店でも使う機会が増えたバターナッツ南瓜のスープ、其処へムール貝と刻んだ洋梨を加えるのが面白く味的にも外していない。
 ハタは繊細な身に浅利の出汁が絡んで、この味を嫌う日本人はまず居ないだろうと思う。続く金華豚はとんかつ店でお馴染みの平田牧場産、これを人数分一度にローストした火入れが抜群、舌に絡みつく様なネットリとした肉質はエロスも感じる(笑)、少し癖のある自家製ソーセージとのコンビもいい。
 イカ墨パエージャは文字どおり鉄板の美味しさ(笑)、隠し味として鰯の出汁を使うそうで、その下品になる一歩手前の風味が効いていると思った。

 スペインとフランスの違いはあるが、酒井氏と御茶ノ水「ビストロ・ヌー」の磯貝料理長は雰囲気が似ている、1980年と1981年なので同年代、二人とも若くしてオーナーシェフになり、特定の師には付かない独学派とも云うべき料理人。酒井氏はサッカー、磯貝氏はバスケットと元スポーツマン、どちらもイケメンで奥さんも美人(酒井氏妻は会っていないが皆の噂)、その結果当然として子供も可愛い(笑)。どんなに忙しくても飄々と料理を作る姿勢も同じ、何時も肩の力が抜けているように見える。若くして全てを手に入れたみたいな二人だが、話していても慢心は感じないので、謙虚さと向上心は、これからも失わないで欲しいと願ってしまう。
 2012年6月に始まったアルドアックだが、今では食通の間に知られる人気店として定着したと思う、私が「今後もこのスタイル(ワンオペ)で続けるのです?」と酒井氏に訊いたら、「店がこの狭さだし、誰かを入れてもあまり意味ないので、当面はこのまま続けるつもり」との応えだった、自分のやりたい事を続けるには、マイロードマイペースが最善で、結果長続きすると云う事かも知れない。
 店の形態はあくまでもバル的でありながら、スペインでは此処まで凝った料理を出すバルは見なかった、入り難さはあるが、興味のある人はまずはランチから行かれてみては如何だろう、但し予約は必須だが。
 次のブログ記事では、アルドアックの帰りに寄ったセレクトショップの事を書くつもりです。

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  2. スペイン料理
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赤坂「古屋オーガストロノム」(2018年10月)

 身内の誕生日祝いをする事になり、何処の店にしよう?と考えながらも、すぐに答えは出た、去年も同じ場所だったし、私が現在最も料理を信頼している店の一つ、赤坂の「古屋オーガストロノム」に決め、支配人の石橋氏に電話し、平日昼の席確保をお願いした。
 札幌食べ続け遠征でのフレンチ若手3人と、乃木坂のジャンヌ・ダルク(笑)の料理を体験した後で、1978~1984年生れの彼&彼女達と、1973年生れの古屋氏の料理がどう違うのか、確認してみたいと云う気持ちもあった。
 一ツ木通りを曲がり、飲食店の多い狭い道を進むと、右側にすっかりお馴染みになった、大きな「f」の字と小田原ナンバーの原付バイクが見える、前回利用からもう半年経っていた、月日の急流に追いついていない。
 石橋氏に案内され奥の席に着く、古屋料理長も挨拶に出て来て、始まった10月のメニューは以下のとおり、

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・アミューズ(オーストラリア産緑アスパラガスのスープ)

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・仏ベルジュラック地方、Château VARIの白

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・鳥取産大和鹿のパテ、フォアグラのアイスクリーム

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・自家製パン(トマト味)

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・スコットランド産ラングスティーヌのソテー、ピュイ産のレンズ豆、豚足のタタン

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・ランド産フォアグラのポワレと切り干し大根、ダブルコンソメ仕立て

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・山口県萩から届いた鰆のポワレ、タケイファームのキャロット添え、ルッコラ風味のソース

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・イタリア産仔牛イチボのロティ、牛タンとイカの紫白菜のファルシ、粒マスタードソース

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・洋梨のコンポートとソルベ

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・クレープで包んだバニラアイスクリームのフリット、チョコレートソースで

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・替え玉(笑)のアイスクリーム

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・エスプレッソ

 私が此の店を利用するのは、2016年1月の初訪問以来通算11回目になり、古屋氏も何を出すか悩んだと思う(笑)。
 デセール以外の6皿のうち主食材が外国産の料理が4皿、国産食材を積極的に使う料理人が多くなった中で、あえて「その時良い物なら国籍を問わない」スタイルが、まず特徴だと思う。
 10月に緑アスパラのスープは、一瞬季節ではない?と思うが南半球なら旬盛りだ、美味しさは食べれば納得する。当初予定に無かった鳥取の鹿を使ったパテはフォアグラアイスが面白い、鹿肉は風味があるが脂分が弱い、そこを補うために添えるのはフランス料理ならではの足し算。
 ラングスティーヌ、レンズ豆、豚足は、異種格闘技みたいな組合せだが、絶妙にバランスを取っているのが古屋氏の真骨頂。続くフォアグラと切り干し大根を合わせたセンスにも唸る、両者が良質のコンソメに浸かって気持ちよさそう(笑)。
 鰆も和食では字の如く春の魚だが、この時期は身が大きくなって脂が乗り和食では使わなくなる、そこでフランス料理で使ってしまおうと云う事、ルッコラを使ったソースが脂を中和し最後まで飽きさせない。
 肉料理は仔牛の火入れも良かったが、牛タンとイカを紫白菜で包んだガルニが印象的、一人厨房でよく此処までやるなと思う(笑)。
 デセール2品も秀逸、特にアイスのクレープ揚げは見映えはイマイチだが、クレープ、アイス、チョコレートが上質で三位一体になった味は抜群、今年のレストランデセールではベスト3に入れたいと思った。

 古屋氏や代官山「レクテ」の佐々木料理長の料理で一番感じる事は、何と云ってもムニュ構成の巧さだ、高原価な食材ばかり並べなくても、店からの帰路「今日はとてもいい料理だったな」と、充足した気持ちで帰る事が出来る。直球だけでなくチェンジアップも上手く混ぜ、緩急のある投法により最後まで飽きさせない、優れた読物と同じで起承転結がある。
 若さと閃きで、一皿だけ秀逸な料理が作れても、それを組み入れ優れたムニュを構築するとなると、若さだけでは届かない経験が要る、三田「コートドール」斉須料理長の著書に「調理場という戦場」があるが、幾つもの戦場を潜り抜けて来て、こうしたものは身に着くのでは?と思っている。
 調理が終わり我々の席へ話に来た古屋氏、「僕の料理はインスタ映えしません」と自ら認めるが、その後に云いたかったのは「でも美味しい料理です」だと思う(笑)。彼はあまり他の料理人と群れないし、流行りのコラボフェア等もやらない、地に足を付け自分のポジションを守っている印象がある。料理も含め「今風」のやり方ではないと思うが、ブレない自分を表現するには、料理人、言い方を変えれば表現者は孤独でないといけないのかも知れない。
 2015年7月に始まった此の店、それまでこうした料理は和歌山か大阪上本町に行かないと無理と思っていただけに、登場はありがたかった。以前より利用客も増えているように感じる、先日行った同じ赤坂エリアの「タンモア」も同じだが、クラシック料理はそれを求めている人が居る限り廃れない、私もその一人でありたいものだ。


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上野広小路「KANAME」

 上野広小路に或る上野風月堂は、社史によると1905年(明治38年)の開業だが、その前身は江戸時代の1747年、大坂出身の大住喜右衛門が江戸京橋に開業した菓子舗「大坂屋」で、通算すると創業371年になる老舗中の老舗だ
 明治時代から現在の場所で営業しているそうだが、2階には古くから続く飲食スペースがあり、主に洋食やサンドイッチ等の軽食を提供していた。私も数回利用した事あるが、昔ながらの上品なパーラーと云う印象だった。
 この場所が昨年11月に大幅リニューアル、「ビストロ感覚で楽しむ、モダンな洋食」をコンセプトにした新しいレストランに生れ変った、店名は「KANAME」、扇の要から取ったそうだ。信頼出来るサイトの評判も良かったので、上野で人と待ち合せる場所に選び、初めて利用してみた。店前は何度も歩いて通っていたが、店内に入るのは思い出せない位に久しぶりだ。

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 メニューを掲げている店の入口は一応別だが、店舗一階からも上がれるようになっている、帰りに気付いたのだが一階の菓子販売スペースもリニューアルされ、小さいながらカフェスペースも設けてあった。

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 階段を上るとレセプションで、空席待ちに使う椅子も並べてある。

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 店の真中にあるソファー調の席に案内される、天井が高く明るく広いスペースは74席あるそうだ、配られたメニューを見る。
 各種洋食メニューが中心で結構種類が多い、平日限定のワンプレートランチが3種類あり、この中から「デミグラスハンバーグプレート」(ドリンク付税込1,880円)にランチデザート(400円)を追加して注文する事にした。
 平日昼の客層は様々、隣の席は制服OL3人と上司らしき男性1人、これ奢りだろうか?と、どうでもいい事考える(笑)、窓際にはママ友仲間みたいな2人組、1人客も数人居る。

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 私は注文しなかったが、同行者の選んだランチスープ(300円)、マッシュルームを使ったクリームスープで美味しいとの事だった。

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 やって来たハンバーグプレート、WEB上の紹介では「特製デミグラスソースをかけた北海道産十勝アンガス牛のハンバーグと有頭海老フライのプレートです」とある。
 ハンバーグは最近流行の粗挽きではなく、昔ながらの細かい挽肉を使ったもの、牛だけでなく豚、少なくとも豚脂も使っているのでは?と思ったが、確認はしていない。練り肉の旨味感じるし肉汁も逃げていない、個人的には粗挽きよりこちらのタイプが好み、下に敷いたジャガイモピュレは本格派、特にドミグラスソースがいいと思った、同じ皿に乗った有頭海老フライも質や揚げが秀逸だった。

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 ご飯も美味しい、米の栽培法や炊飯器具が進歩したからだろう、最近は外れ飯?に当たる機会は少なくなったが、此の店は洋食系に合う銘柄だと思う。

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 コーヒーも手抜きなく普通に飲める。

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 このカップ最近よく見かけるが、英国「Steelite International」の物、ホテル・レストラン仕様に開発された食器みたいで、代官山「サンプリシテ」でも使っていた、気に入って個人的に欲しいのだが、ネット上では個人向け販売が見つからなかった。

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 デザートは風月堂の看板商品であるゴーフルを使ったもの、間に挟んだのは栗のクリーム、上には加熱したリンゴ、さすがは創業371年の菓子舗、丁寧に作ってあり美味しい(笑)、これ400円は安いと思った。

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 WEB情報によると、リニューアルにあたりスタッフも刷新、新しい料理長は銀座「ベージュ」や「アマン東京」にも居たフレンチ出身者と聞く、それはポム・ド・ピュレやソースに伺い知る事が出来た。
 店は老舗が生き残りをかけて本気で取り組んだなと云う印象、向かいにある上野松坂屋は新館を建て直して「パルコヤ」に変わり、新しい食エリアが出来た、旧態依然としたやり方では取り残されてしまう。京成上野駅にやって来る、外国人観光客の取り込みも考えている筈だ。
 値段は少し高めかなと思ったが、店内の雰囲気は良好だし、一人でも多人数でも利用可能な応用性がある。料理もデザートも含め予想以上の内容、上野らしい親しみあるサービスも含めて、また利用したいと思ういい店だった(笑)。
 

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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
人はそれぞれに「見方、感じ方、考え方」が違います。私が美味と思ってもそう思わない人が居て当然です、味覚とはそれだけ不安定で不完全なもの、あくまでも筆者個人の嗜好による感じ方である事を承知の上で読まれてください。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに赤坂、麻布十番等。
混雑電車が苦手で加齢による朝型人間化のため、ランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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