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最後の晩餐にはまだ早い


代官山「レクテ」(2018年10月)

 この日も「友、遠方より来たる」の日だった。何故か知己の多い関西からの客人だが、今回は本人から代官山「レクテ」に行きたいとのリクエストがあったので、私はWEB予約をするだけ、佐々木料理長には「重鎮が同行するので宜しく」と、事前には伝えておいたが(笑)。
 レクテには友人と昨年12月に利用同席している、料理の印象が良かった事に加え、友人の知り合いの料理人とレクテの佐々木料理長が知己だった事もあり、今回ランチで再訪問が実現した。
 恵比寿駅近くのペットショップ?で待ち合せ、歩いて店へ向かう事に、普段人混みに慣れていないから、久し振りに繁華街へ出ると、東京は何と人が多いのだとあらためて思う(笑)、私が子供の頃の恵比寿はビール工場位しかなく、降りる駅ではなかったが、今では東京を代表する繁華街の一つになった。
 フレンチの有名店「モナリザ」や「マッシュルーム」が見える道を進み、雑多な西恵比寿の繁華街から、静かな代官山の街並みに変わる辺りに店がある。
 2階のドアを開け、いつもどおり何故か個室に案内される、本人達はVIP扱いされた気分だが、他から見れば隔離されたと見えるかも知れない?(笑)。
 佐々木料理長に挨拶する、以前の白コックコート姿から暗色のTシャツ姿に変わったせいか、フレンチ料理人と云うより、剣道の師範代みたいな精悍な印象がする。
 白ワインで乾杯し、始まったVIPメニュー?は以下のとおり、料理名は店側の表示に沿い、カッコ内は私の補足。

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・ファームウメムラ 坊ちゃんかぼちゃ(チーズのチュイール)

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・石巻産 サワラ 藁の薫り(秋田山内にんじん、フヌイユ)

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・ガレット・ピエ・ド・ポー(豚足のガレット仕立て)

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・音更町 庄司農園 はるきらり ライ麦(自家製パン)

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・北海道産2色のビーツ(生ハム、上にコンテチーズ)

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・今治産 真鯛 天然きのこ(神経締めした後に直接入荷した鯛、料理長自らが採取した茸)

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・スコットランド産 雷鳥(藁で燻したココットで)

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・同 切り分けて(中にフォアグラ、豚足)

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・栗きんとん(黒豆のアイスクリーム)

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・グアテマラ エル・インヘルト農園 レゼルバ・デ・ラ・フィンカ(+500円)

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・ミニャルディーズ(ピスタチオのマカロン、ヘーゼルナッツのゼリー、ナッツ入りショコラ、抹茶のカヌレ)

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・ニュージーランド ソーヴィニヨンブラン&フランス・トゥーレーヌ ガメイ

 フィンガーフード的なものを出す店が増え、スープのアミューズは少なくなっているが、ホッとする優しさ、これで掴みは万全。鰆は鰹みたいに藁で微かに炙っただけで、ネットリとした食感の良質な上身に、人参とフヌイユの味が効いている。
 続く豚足のガレットは「やられたな」と思った料理、まるでゴジラの欠片みたいな外見で、こうした料理を「インスタ萎え」と呼ぶそうだが(笑)、本質的に美味しいのは、こんな手間がかかる割に見栄えのしない料理なのだと思う。
 当初は予定に無かったビーツ料理も素材の良さを生かし印象的だった。続く真鯛は今治の漁商から神経締めした個体が直接送られて来るもの、これを佐々木氏が長野大鹿村の斜面で命がけ?で採って来た茸類と合わせる、元々魚料理には定評のある料理人だが、記憶に留めたい一品になっていた。
 肉料理は毎年ジビエの走りになるグルーズ(雷鳥)、フォアグラと豚足を上身で包み調理し、最後にココット内で藁を使って香り付けする、まさに王道で王侯貴族の料理だ。雷鳥の特徴である微かな苦味が舌を刺激する。その絶妙さに高揚して、思わずサービスの若い女性に、「貴女もやがてこの苦味の美味しさがわかる歳になる、その時はもう私達は居ないけど」と、訳の分からない親父話をしてしまった(笑)。
 デセールの栗きんとんは、友人が云う様に一見「中津川のパクリでは?」とも思えるが、「いえ、リスペクトです」と訂正しておいた(笑)、栗も良かったが添えた黒豆を使ったグラスが絶妙だった。
 前回来た時は食後のコーヒーに「ゲイシャ」をお願いしたが、今回は希少さでは同等の「レゼルバ・デ・ラ・フィンカ」、ゲイシャは酸味に特徴あるがこれは苦味だ、個人的にはこちらの方が好み、やはり人生は苦味が判ってからが本番(笑)。

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 佐々木氏の料理はこれが4回目だが、あらためて抽斗の多い人だなと思う、季節や客のレベルによって幾らでも技が繰り出せる懐の深さを感じる、そして直球料理だけでなくビーツの皿みたいなチェンジアップ的料理を入れるのが上手い、これでムニュに緩急の起伏が生まれ、最後まで食べ疲れない料理になる、経験の浅い若手料理人にはなかなか出来ない事だ、さすがは魔都PARISのレストランで料理長を務めただけの事はある。
 料理人の印象と同じく、静かな凄味を感じさせ、長く記憶に残したい料理だった。星の有無とか、点数が何点で順位が何番とか、そうした料理以外のものには関心を持たず、本質的な料理が好きな人には、自信を持ってお勧めしたい店だと思う(笑)。
 この日の夜には特別なイベントがありながら、こうした手間のかかる料理を提供してもらった、佐々木料理長とスタッフの皆さんに感謝です。


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田原町「レモンパイ」

 現在ケーキ専門店は、規模の小さい店でもフランス語で「パティスリー (pâtisserie)」と表記する事が多くなったが、私が子供の頃はケーキ店やケーキ屋が一般的で、父親は「洋菓子屋」と呼んでいた。
 今回紹介するのは、パティスリーと呼ぶより「横丁のケーキ屋」と呼ぶのが似合いそうな店で、昭和時代を連想させる雰囲気がある。
 店の名前は「レモンパイ」、売っている商品をそのまま店名にしている。存在を知ったのはWEB情報からで、最近ブログ記事で紹介した蔵前の「パティスリーFOBS」の事を調べている時に見つけた、開業は1981年(昭和56年)だから、今年で37年営業している。

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 店の場所は台東区寿2丁目、地下鉄銀座線田原町駅を出れば至近で、浅草通りではなく少しだけ脇道に逸れた微妙な場所に在る、この近辺は浅草にも近く、訪れる機会が多いながら今迄存在を知らなかった、上野のとんかつ店の帰りに寄ってみる事にした。
 店の前に立つと「まさにレモンパイだな」と思った(笑)、可愛らしい外観が売っている商品や店のコンセプトを的確に表現している、二階は住居みたいに見える。

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 ドアを開けると、目の前にケーキ類が並ぶガラスケース、店のイメージに違わないキュートなケーキ類が並ぶ。レモンパイだけでなく、フルーツを使ったタルトやパイ、チョコレートのケーキもある。最近増えている単体仕上げのケーキは少なく、大きく作ってあとでカットするタイプだ。
 看板商品のレモンパイはホール、ハーフ、4分の1&6分の1カットを揃えている。

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 最近改装したそうで、3席だけだがイートインスペースもある。

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 店内は木の温もりを強調した柔らかな印象で、優しいセンスの空間。
 販売は若い女性で、すぐ後ろがラボと云うより作業場、他に女性が2人作業していた。話を聞いたら、此の店は応対に出た女性の母親が始め、現在でも母娘でやっているとの事。店内が最近のパティスリーに多いクール感ではなく、何処かアットホームな雰囲気を感じるのは頷ける、そう離れていない場所に在る、ブログで紹介した「FOBS」のクールモダンな印象とは対照的。
 店の代表的なアイテムを3種類買う事に、以下食した印象を。

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 昔は一般的だったが、今ケーキの箱に包装紙をかける店は少なくなった、これがあると箱を開けるワクワク感がある、紙は懐かしいデザインで昭和的(笑)。「パティスリー」ではなく、英語で「CONFECTIONERY」と表記する店は珍しい。

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・レモンパイ4分の1カット(税込420円)
 店名になっているメインアイテム、店一番の売れ筋みたいだ。パイ生地の上にレモン風味のクリーム、その上にメレンゲを被せて焼いている、シンプルな作りで想像したより軽い味わい、甘酸っぱい風味は懐かしく「初恋の味」とでも呼びたくなる、これは1ホールでもいけそうだ(笑)。

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・チョコレートケーキ(410円)
 レモンパイに次ぐ人気商品らしい、パイではなくスポンジ生地を優しい味わいのチョコレートクリームで包んでいる。ちょっと「トップス」のチョコレートケーキを思わせる味だが、あれ程しつこくない(笑)。

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・洋なしパイ(400円)
 生クリーム系はあまり好まないのでこれを買った、シンプルな味わいだが、素材の良さは伝わる。

 全体的な印象は、プロのパティシェが作ったと云うより、お菓子作りの好きな人が作った家庭的な味わいに感じた。最近は変わったスパイスやリキュールを使うパティスリーが増えているが、此処は素材重視で余計な物を加えず、何処か懐かしくてホッとする味、特にレモンパイとチョコレートケーキは、素朴ながら独自性を感じ美味しい、スイーツ好きは一度試す価値ありと思う。
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 安井かずみ作詞、加藤和彦作曲で、竹内まりあが歌った「不思議なピーチパイ」は1980年のヒット曲、此の店の開業が1981年なのでほぼ同時代だ、歌詞の「ピーチパイ」の部分を「レモンパイ」に替えて口ずさみたくなる(笑)、そんな素敵な店と味だった。昭和的な懐かしさが好きな人にお勧めしたい。
 なお店は日・月曜日が休みで、営業時間は12時から18時半と短いので、行く際は注意して下さい。

※次回のブログ更新は10月20日(土)の予定です。


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上野「とんかつ みつ葉」

 現在、私の活動範囲は地元を除けば上野~秋葉原辺りがメインで、それより先に行く事が少なくなった。
 文京区の本郷三丁目交差点に「かねやす」と云う名の雑貨店があり、江戸時代から続く老舗だが、当時の川柳で「本郷も かねやすまでは 江戸のうち」と詠まれた店だ、これは千代田城(江戸城)から見て北限になり、此処までが江戸域内だとの認識を表している。そうすると私は江戸に入府する事は殆ど無くなったと云う事だ(笑)。
 この日も御徒町で買い物をするついでに近辺でランチと思い、いつも行く店ではなく、ブログ記事で取り上げられそうな処を事前にWEB上で探してみた、そして見つけたのが、今年1月にオープンした「とんかつ みつ葉」だった。
 事前に調べたら、個人店ではなく墨田区に本社を置く魚家㈱が運営している、「とんかつ家で魚家とはこれいかに?」だが(笑)、元々寿司店が本業らしい。「がってん寿司」を運営するRDCグループもとんかつ店をやっているから、寿司ととんかつには運営に共通項があるのかも知れない。

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 店の場所は京成上野駅から地下鉄上野広小路駅に向かって歩き、ABABビルを過ぎ左側にある9階建ビルの地階、1、2階は「築地すし鮮」と云う寿司店だが、同じグループの経営と聞く、個人経営でこれだけ好立地の場所に出店するのはまず無理だろう。

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 階段を降りた右側が店舗入口、奥に深い店の造りで40席近くありそう、カウンター席はなくテーブル席だけだった、サービスの女性が「お好きな席へどうぞ」と云うので、入口近くに座った。

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 メインメニューはとんかつのみで6種類、下は副菜。英語、中国語、韓国語で併記している。

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 「人気おすすめ」と3品を特記している、「この中から選んで欲しい」と云う意味にも取れるが(笑)、「特選」が付くのは鹿児島県産六白黒豚使用で、その他は同じ鹿児島でも美湯豚と云う種類を使うそうだ。結局無難そうな「上ロースかつ定食」(税別1,500円)に決めた。

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 卓上のアイテムは、右から岩塩、とんかつソース(1種のみ)、ドレッシング(紫蘇)、同(胡麻)だった。

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 暫く待ってやって来た「上ロースかつ定食」、見た目は美味しそうに見える。

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 メニューに肉の重量表示はないが、200g近くありそうだ。サービスの女性が「始めは塩だけで食べてみてください」と云うので、それに従ってまずは一切れ塩をかけ食べる。
 割と白っぽい衣なので、「ぽん多」や「かつ吉」系と同じく低温で長時間揚げる調理だと思う、厚みのあるロース肉の中心は少しピンク色の仕上げで柔らか目な食感、脂身は結構削いでいるが肉質はいい、生パン粉の質も良く、肉汁も保持し味も逃げていないので、揚げの技術は悪くない。
 次にソースをかけて食べる、個人的には甘口に感じた、もう少し辛口で粘度低い方が好みだが、まあ我慢できない程ではない、やはりご飯と一緒に食べるなら、塩よりソースだなと思う。

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 盛りのいいご飯はとても艶やかに炊けていて美味しい、味噌汁、キャベツと共に1回お替り可能だそうだが、ご飯だけは控えた(笑)。

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 しじみ汁、店名の三つ葉がちゃんと入っている(笑)、とんかつ用の味噌汁としては少し薄味に感じたが、普通に美味しい、考えたら家で貝を具にした味噌汁は何年も作っていない。

 この内容で税込1,620円なら納得できた、レベルとすれば、近くにある「山家」の上ロースかつと同程度と感じた、ただあちらは開店一番に行かないと行列必至なので、この店は待たずに座れそうだし、食後も行列に気を遣って「早く席を開けよう」と焦る事はなさそうだ。
 店内は女性が一人で対応、厨房も一人だったが、どうやらこの方日本人ではなくアジア系、中国ではなく、ベトナムやタイ辺りの人に見える、築地場外では中国人が寿司握るし、大阪心斎橋でもタコ焼きを中国人が作っているのを見た、従来経験と勘が必要とされた、とんかつや天ぷらまで外国人が作る時代になった。考えれば「かつや」や「てんや」と云った揚げ物のチェーン店も、「この道何年」みたいな職人が居る訳ではない、修行を経ないでもそれなりに作れるよう、フライヤー等の調理機器が進歩しているのだと思う。

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 京成上野駅から近い事もあって、外国人客の利用も想定している、外国人が観光で日本へ来て、京成で上野に降りてから、ガイドブックで見た英語表記のあるこの店へ入店、外国人料理人が作ったとんかつを食べ、「日本のとんかつDeliciousです」とSNSにUPする、好むと好まざるとにかかわらず、そうした時代になったようだ(笑)。
 

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代官山「サンプリシテ‘Simplicité’」(2018年9月)

  「友、遠方より来たる」の日で、関西からの来客それもフレンチ好きな方なので、店選びに迷ってしまう。美味しいだけなら沢山店がある東京だが、折角遠くから来るので、東京でないと体験できない個性的な店を見て欲しいと思った。
 まず頭に浮かんだのは外苑前「フロリレージュ」だが、日曜日のそれもランチタイムとなるとプラチナシート的に難しい、予約キャンセルに賭けるより安全策を採りたい、そこで思い付いたのが、今年1月にオープンし2月に初訪問した、代官山「サンプリシテ」だった。友人に提案したら興味を示してくれたので、此処に決める事に。
 「サンプリシテ」の相原薫料理長は独立するにあたり、従来の定番フレンチ路線とは方向性を変え、カウンター中心のフルオープンキッチンで、魚商から直接仕入れ、店で熟成させた魚を使った料理を中心に提供している。
 初訪問時に一番感心したのは、料理も独自性があり良かったが、何よりカウンターキッチンとは何かを理解している事で、整理整頓と清掃が行き届いた中で、料理長とスタッフが大声や不安そうな表情等一切なく、また誰も時計や指輪をしておらず、衛生面に配慮している事だった。時に指輪をしたまま生肉を触っている料理人を見ると、「この人、食品衛生講習会行っても寝ているだけか?」と不安になってしまう、客に不快さや緊張を感じさせてしまうなら、オープンキッチンは止めた方がいい。

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 駅は代官山が近いが、アクセスがいい恵比寿駅で待ち合せ歩いて向かう事に、前回覚えた近道を通って行ったが、それでも10分以上かかった。
 2階の店へ上る階段に行列が出来ていて何事?と思ったが、3階がイベントスペースになっていて、其処に集まって来た人達らしい。
 12時に入店、レセプションで名前を告げ、予約時に希望していたカウンター席に案内される。目の前に居る相原料理長に挨拶して、始まったランチメニューは以下のとおり、 

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・函館 牡丹海老 
 新鮮な牡丹海老をタルタル状にして

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・しらす/マドレーヌ
 シラスは卵黄で和えサブレ生地に乗せ、下は黒オリーブで作った柔らかいマドレーヌ

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・白はドイツモーゼルのリースリング

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・玉手箱
 熟成した鰯の身を木箱の中で瞬間燻製にして

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・秀逸な自家製パン&竹炭のバター

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・長崎 魳 蕪
 直接取引している長崎の魚商から届くカマス、皮目を炭で炙って、ホタテ貝のチップ、下は蕪を使ったソース

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・北海道 帆立 パセリ
 ホタテ貝を餅粉で衣を付け火入れ、牛乳を使ったソースエミルジョン

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・五島列島 真鯛 フェンネル
 一週間熟成させた長崎産の天然真鯛をポワレしてブイヤベース仕立で

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・豪州 仔牛 南瓜
 仔牛にトリュフ入りパン粉をまぶし、サラマンドルで火入れ、昆布出汁とワインのソース、南瓜のピュレと種、赤スグリ。

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・ヌガーグラッセ

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・シュークリームと中国茶

 初訪問の友人は関西人なので魚、特に白身には慣れているが、「東京でこんな美味しい魚を食べたのは初めて」と、いみじくも云った言葉が全てを表していると思う。
 仲卸を通さず漁商から直接空輸される魚が中心、特に真鯛は長崎五島沖で釣ったものを神経締めした後、店へ届いてから一週間熟成させる、塩焼きしただけでも旨いと思うが、それではフランス料理にはならない、熟成した鯛の身と最も合う料理は何かと、料理長は考えたのだと思う、銀座の超高級店やフランスで働いた記憶から選んだ料理がブイヤベース、これがジャストに合っていた。
 仔牛に使ったソースは油脂を使わず、軽いが印象的なもの、「前店ではフォアグラもブーダンノワールも出していました」と云う相原氏だが、独立するにあたり路線変更したのは正解だったと思う、需要に比べて供給過多だと感じる東京フレンチ界で生き残るには、「この店でないと体験出来ない」オジリナリティが今後も重要視される筈だ。

 料理長とスタッフのキッチン内の連携やサービス担当の動きに無駄がなく、前回以上に洗練されて来たように感じる。「フロリレージュ」の川手料理長が、スタッフ数が多い事もあり「美術工房の親方」を連想させるのに対し、相原氏は「舞台上の奇術師」みたいに見える、仕事毎にスタッフ達が音もなく近寄り作業に参加する、まるで主役と助手が繰り広げるイリュージョンだ。
 もし此の店へ行くなら、断然カウンター席がお勧めなので、予約時に伝えるのを忘れないように、他の椅子席と同じ金額で相原ショータイムが見られる(笑)。
 「いい食体験」とは料理だけでなく、誰と同席したのか、料理人やサービスと何の話をしたのか、そして此の店みたいに、優れたパフォーマンスを見られた等が、足し算になり記憶に残って行くものだ。
 素敵な午後になりました、相原料理長、スタッフの皆さんありがとうございました。


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綾瀬「Le Ballon(ル・バロン)」

 定期的に通っている整体治療院の帰りに、ブログ記事で取り上げた綾瀬の大陸系中華「みなみ」へ行こうとしたら定休日だった、近くを自転車でウロウロ?していたら、何故かフランス国旗が見えた。
 以前「ワイン食堂」を名乗り、夜だけ営業のワインバー的店と思っていたが、最近店名を変えランチ営業を始めたようだ、店前で黒板のランチメニューを見ていたら、中からエプロン姿の男性が出て来た、「やっているのですか?」と訊いたら「ええ、どうぞお入りください」との返事、値段はそう高くなく、怖いもの見たさ?も手伝って、入ってみる事にした(笑)。

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 店名は「ル・バロン(Le Ballon)」、仏語で風船の事だ、以前は「O’bo」と云う名前だったと思う。

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 店の場所は千代田線綾瀬駅東口を出て、そのまま南へ向かって歩き、持ち帰り寿司店がある突き当りを右に曲がれば直ぐ、数年前から店横の道路を整備していたが、最近完成して見違える程綺麗になった、この場所だけなら一見南仏風で足立区とは思えない、ただ店隣が景品交換所なのがいかにも綾瀬らしいが(笑)。

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 一人だったので、カウンター席に座る、旧店時代も含め初めて入店したが、意外と広い店内で、フランス料理店らしい雰囲気がある。
 ランチメニューは税込1,000、1,200、1,500円の3種で、前菜&デザートの付く1,500円を、選べるメインは「鶏ムネ肉の低温ロースト」、飲み物はコーヒーでお願いした。
 サービスは先程の男性でこの人が店主らしい、右奥が厨房になっていて、割と若い男性が一人で調理していた。店主と少し話しをしたが、店名を変えただけでスタッフは変わっていないとの事、ランチ営業を始めたのは今年6月からだそうだ。

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 まずはサラダ、野菜は新鮮でちゃんと下処理もしている、ビネグレットも悪くない、何気ないがこうした物で店の本気度は伝わる。

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 前菜4品、右上からコールスロー、キャロットラペ、ブロッコリーのアリオリオ、グリーンピースの冷製ポタージュだと思った。
 原価は高くはないが、自分でも似たようなものは作るので、手をかけないとお金を取れる料理にならないのは判る、どれもキチンと仕事していて美味しい、これはちょっと驚き(笑)。

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 フォカッチャ風のパンは自家製との事、結構まともな作りだった。

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 メインの「鶏ムネ肉の低温ロースト」、付け合せはシュクルート、ジャガイモに赤ピーマン、胸肉の下にはカボチャのピュレでソースにしている、赤い粉はピモンエスプレッドか?
 食べてみて予想以上に調理は良かった、おそらくフライパンで焼き目を付けた後、低い温度のオーブンで火入れしたのだと思う、ジャストなキュイッソンだった、料理人の経歴は不明だが、それなりの店で働いて居た筈。

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 デザートはキウイのムースとアイスクリーム(アボガド?)。花びらは余計だが、味は悪くなかった。

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 ホットコーヒー、今ガラスのカップが流行っているみたいだ。

 こう云っては失礼ながら、あまり期待していなかったのだが料理は良かった、特に鶏の火入れは出色、量も割とあるし、これで税込1,500円ポッキリはかなりお得な内容。
 稲荷町「キエチュード」でも感じる事だが、1万円のムニュを作れる料理人が、まともな1,500円の料理を作れない筈ない、技術がしっかりしていれば、単価の低い食材料でも旨いと感じさせる料理に出来る実例と思った。

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 「孤独のグルメ」の井之頭五郎みたいに、事前情報なくブラリと入った店が当たりだったと云う事は、実際には滅多にないが、此処は良かった、交通費もかからないし、また来たいと思う。
 最近、地元で和洋中と千円ランチながら佳店に当たり嬉しい反面、普段の外食行動範囲が狭くなり、大体半径2㎞以内になって来ている(笑)。
 今から20年位前だが、東京もPARISみたいに、各住区に良質なビストロ、ブランジェリー、パティスリーがそれぞれ一つ以上あれば、もっと成熟した街になるが、自分が生きている内には無理だろうと思っていた。それが最近になって、地元にも利用するに値する店が出来ているのは嬉しい、あとは長く続けられるように、地元客が支えてくれるかどうかだ。
 都心から離れた地でも若い人達が頑張っているのを見ると、この歳まで生きられて少しは良かったかな?と思う(笑)。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
店の点数評価等はしません、「食と人」を描きたいと思っています。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手で加齢による朝型人間化のため、ランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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