最後の晩餐にはまだ早い


大阪・上本町「レストラン・コーイン」(2017関西食べ続け⑧)

 食旅行2日目に「オテル・ド・ヨシノ」に集まった、古典フレンチ好きの重量級選手達との会話で名前が挙がり話題になり、去年私が最も回数行ったレストランの料理人も「一番行ってみたい店」と話していたのが、これから訪れる事になる、大阪上本町の「レストラン・コーイン」だった、向かう方向が同じだと、結果辿り着くのも同じ場所になるみたいだ。「君達が気付くもっと前から行っているぞ」と、思わず自慢したくなるが、そこは笑って「そうですか」と相槌を打つ事にしている(笑)。
 去年は食旅行1日目に訪れたため、その後の訪問店の印象が薄れてしまった、それがあったので今年は日程最終夜に予定を組む事に、在関西の料理人で、やはりこの店に関心を持っていた友人と相席、1年ぶりに「上本町の巨匠」またの名を「無冠の帝王」が棲む館の扉を開く。 
 去年と店内のレイアウトが少し変わり、店奥が円卓から長卓になったが、この席に座らせてもらう、サービスを担当するのが、以前にもこの店で働いていた若い女性、有名調理学校の専門課程卒業生との事で、最近まで渡仏していたそうだ、料理の質問をしても「シェフに訊いてきます」みたいな事はなく、的確に答えるのはさすが。彼女もそうだが、今回の食旅行ではどの店も女性の活躍が印象に残った、今関西の食は女性達が支えている(笑)。

 湯浅料理長に挨拶し始まった濃厚な饗宴、まずは料理を紹介したい、なお後で湯浅氏より料理について説明があり、全部を載せると長くなるので、ブログ公開には適当でないと思われる部分(笑)等は要約し記す事にしたい、『』内がその説明。
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・アミューズ(赤ピーマンのババロア、カニ身、コンソメジュレ、カニみそ)
『カニは鳥取産活ズワイ蟹、熊野牛のコンソメジュレです。』

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・トリュフサンド(手前)とトリュフバター
『「フィセル」(ブランジェリー)のパンドゥミに自家製バターを塗り、オニオンソテーとトリュフスライスを挟みオーブンで焼いています。』(トリュフサンド)
『自家製バターにトリュフアッシェ、コニャック、ポルト酒、藻塩を練りました。レーズンバターのトリュフバージョン。』(トリュフバター)

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・ベレオロール‘Belle aurore’※
『(ファルスは)鴨、鳩、子牛、プーレ、フォアグラ、リードヴォー、猪、鹿、トリュフ、ピスタチオ等です。』

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・鳥取県産ミンククジラのタルタル仕立て、自家菜園の野菜添え
『今はなかなか手に入らない生ミンククジラの赤身。仕入先の鮮魚店が一頭買いしています、(入荷は)2ヶ月に1回位で今回は1トン物です。塩を打ち6時間後常温燻製1時間かけ、上のキャビアも燻製かけています。卵黄は土佐ジロー。』

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・コンソメクリュスタッセ
『オマール、赤座、足赤の頭でフォンをとり地鶏のササミのミンチでクラリッフェ。SPゲストの予約が入っている時だけ時間を逆算してそのまま(鍋ごと)プレゼンします。』

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・スッポンとアワビの赤ワイン煮
『スッポンは赤ワインと牛のフォンで1時間ほど煮る。縁ペラ部分を使いゼラチン質とコクを楽しんでもらいます。仕上げに軽くアワビを煮込み煮汁を煮詰めてソースにしています。通常なら魚のポアレやブレゼにブールブランやソースヴァンブラン等を合せた皿を提供するのですが、他(店)で沢山食べて来ると予想してこの料理にしました。』

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・ブレス産ピジョンのファルシー

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・同腿肉を使ったトリュフのリゾット
『ピジョンは綺麗に皮を残して、ささ身、フォアグラなどのファルスを中に詰込み全体を皮で覆い焼く、通常でしたらクレピーヌを使いたいところですが、ピジョンの皮でのみで覆うのがポイント、軽く仕上げたいためにそうしました。ソースはジュドピジョンに少しレモンを加えたもの。ガルニチュールはトリュフと保存していた米とピジョンの腿、内臓をフォンドピジョンとトリュフ、ジュドトリュフでブレゼしました。』

・フランボワーズのソルベ(画像なし)

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・ブリュレ
『トリュフと共に保存していた土佐ジローの卵黄でブリュレを作っています。飴のスフレと食べると(食感が通常の)ブリュレとなるようにしました。グラスもトリュフと土佐ジロー卵です。』

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・ミニャルディーズ

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・フレッシュアンフィージョン

※筆者注:料理中の「ベレオロールBelle aurore」とは、リヨンを中心に作られているパテ・アンクルートの一種で、型に入れないで焼く、その形から使っていた枕を連想し、子供時代の想い出から、母の名で呼んだのが料理名となったと伝えられる。

 全部について語ると長くなるので、特に印象に残った料理を挙げると、まずは鯨のタルタル、私の世代は「鯨=給食の竜田揚げ」のイメージがあり、あまり美味しいと云う認識ではなかったが、このタルタルには度肝を抜かれた(笑)、過去食べたどの牛タルタルより美味、これは「知ってしまった不幸」で、もうこれから牛肉では満足出来なくなりそう。友人も「金属バットで殴られたみたいに旨い」と云っていた(笑)。
 次のコンソメも脳髄に突き刺さる味と香り、時間とお金をかけたその一番いい状態を提供する、鍋全部飲みたい位だが、次を考えて一杯で止めておいた。スッポンと鮑で作る魚料理も圧巻、和の食材を使いながらも、王道真中直球のフランス料理にするのは、この料理人ならではの資質だ。
 そして「もう食べられないかな?」と思いながらも完食した、意外にも軽やかな鳩料理に加え、それに添えられたトリュフリゾットが異次元の旨さだった、満腹で少量しか食べられなかったのが心残り、誰も見ていなければ入れ物抱えて帰りたかった(笑)。
 デセールのトリュフブリュレは昨年版よりモダンになっていた、料理人は「私はモダンも作れるのです」との事(笑)。

 何回か通った店は「次はこんな料理が出るのでは?」と、行く前にある程度予想する、多くの店でそれが大きく外れる事はなくなったが、此の店はこちらの想像の斜め上を行く料理が出て来る(笑)。
 料理人の説明を読んでわかると思うが、料理はオートクチュール、食べる側の経験値や体調を考えて調理を変える、料理力に加えて推理力や洞察力も駆使するのでIQも高そう、過去私に何の料理を出したのかも概ね記憶(記録ではない)していると思う、アミューズ以外は殆ど料理がカブっていない。
 自分が海原雄山に料理ともてなしについて説教される山岡士郎になった気がした(笑)、今回の対決?も完敗に終わった。そして何より感心したのが、これだけ食べても翌朝胃が重くなく、ホテルの朝飯を普通に食べられた、これは特筆すべき事。
 記事を読んで此の店に興味を持ったら、ランチよりディナーへ行くべき、更に電話予約時に何故行きたいか理由を伝える事を勧めたい、「このブログを見た」でも構わない(笑)、客側が本気ならそれ以上の本気で応える料理人だから。
 濃い大阪夜の締めくくりに相応しい濃厚なトリュフ料理に酔い、何故か古い歌「アカシアの雨がやむとき」を口ずさんで帰り道を歩いていた(笑)。



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大阪・白鷺「グリル家Kutta(クッタ)」(2017関西食べ続け⑦)

 フランツ・カフカ「変身」の主人公は、ある朝目覚めると自分が巨大な虫になっている事に気付くが、関西4日目の朝にホテルで鏡を見ると、私は顔が膨れているのに気付いた(笑)。
 この日は毎年恒例の南大阪への遠足を敢行、まずは市営地下鉄で「なかもず」駅へ向かう、大阪狭山在住の食通友人と行動するためだ。
 車に乗せてもらい先ず向かったのは、友人の馴染みの店である、堺市白鷺の洋食店「グリル家Kutta(クッタ)」、本日のランチは此処でいただく事に。

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 店は2013年に開業、遠目でも目立つ赤いテントと、大阪的な直接客の心情に訴える店名に特徴あるが、ランチ700円からと云うリーズナブルな価格設定で、近くに大阪府立大学もある事から、学生や近隣住民に支持され人気店になっている。
 ランチタイムの席予約は出来ないが、友人はピーク時を外せば大丈夫だろうとの事で、13時近くに店に到着した。 
 店内は予想以上に混んでいた、総席数は30以上あるが、テーブル席は既に満席、カウンター席に空きがあったのでセーフだった。

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 ランチメニューは9種類に加え、一部の料理を組み合わせたコンビプレートもある、魅力的な料理が並ぶが、迷った末に「ハンバーグ&海老フライのコンビプレート」(税込1,050円)に決め、ご飯は小盛りにしてもらった(笑)。

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 ランチ時の店内は大学生らしき若い男女で賑わう、ベビーカーを連れたママさん達もランチ会をしている。夜は団体の貸切り宴会にも対応、コースメニューに加えてドリンク飲み放題もしているそうだ、店名入り焼酎も置いてある。

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・ポタージュスープ

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・ハンバーグ&海老フライのコンビプレート(ご飯少な目です)

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・友人が注文した「ローストビーフ丼」(980円)

 海老フライは予想以上に大きく、真っ直ぐ綺麗に揚げている、タルタルソースも美味しい、これなら海老好きの大阪人も納得だろう(笑)。ハンバーグは東京で食べるより柔らか目でフワッとした作り、たしか大阪の他店でも似た感じだったので、柔らかな口当たりが好まれるのかも知れない、ドミグラソースも丁寧な作りでした。
 友人は「此処でランチを食べるのは、お金持ちの学生」と話していたが、たしかに私が学生時代には、こんな上質なランチは一回も食べた記憶がない(笑)。
 羽賀稔料理長は有名調理学校卒業後、他店で経験を積んだ後に此の地で独立開業したと聞く、サービスを担当するのは奥様、気の短い大阪人は料理の出が遅いとすぐ催促があるそうだから、特にランチタイムは二人で大変だろうなと思う、見た感じでは料理はスムーズに出ていたが。
 家の近くにあったら、きっと通うだろうと思う店、変に背伸びする事なく、此の地で輝いて欲しいと思ってしまう、ご馳走様でした。

 食後は堺市内で江戸時代から続き、最近白イチジクの栽培直販で注目されている農家を見学訪問、入母屋造りの立派な日本屋敷で奥様に話を聞くが、偶然イチジクの木を植えた処、土地と合ったのか実が成り増えていったとの事、長野県でも林檎から桃へシフトする農家が増えている話を聞いたので、こうした先駆的な試みはいい事だと思う。
 その後堺市内美原区平尾にある「ファーマーズオリジン」へ寄る事に、二人の共通の友人である料理人が、此処の厨房を任されたので激励に訪れた。
https://r.gnavi.co.jp/hakmh9cu0000/
 元々工務店が経営していたカフェレストランだが、3月より熟成肉と産直野菜料理の店としてリニューアルする、これは興味津々で期待していいと思う、ただ車でないと行き難い場所ではあるが。

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・此処でいただいたのが、自家製さつま芋ケーキとコーヒーのセット、税込500円は安い(笑)。

 最後は堺が誇る、唐辛子と和香辛料の専門店「やまつ辻田」を訪問する事に。
http://www.yamatsu-tsujita.com/
 此処も豪壮な純和風建築で、居心地の良いゲストルームまで備えている、相手をしてくれたのは、格闘家と云っても通用しそうな大柄な辻田社長、話をしていると武芸の達人にも見えてくる(笑)。写真を見せてくれたが、サン=セバスチャンの「アルサック」や「ムガリッツ」でも此処の香辛料を使っているそうだ、世界中の料理人から山椒・干し柚子・鷹の爪と云った、和の香辛料が注目されている実態を知るが、現在国産の原料を得るのがとても大変な事を語ってくれた。
 お土産に石臼で挽いた粉山椒と七味唐辛子を購入、これで「大人の遠足」は終了しました、夕方の時間ギリギリまで付き合ってくれた友人に感謝です、ありがとうございました。
 荷物があったので一旦ホテルに戻り、いよいよこの食旅行の「真打登場」とも呼ぶべき店を訪問するため、急ぎ歩いて上本町へ向かう事に、詳しくは次の更新記事で。

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芦屋「オステリア・オ・ジラソーレ」(2017関西食べ続け⑥)

 関西3日目の午後は大阪から西へ向かい、一旦JR灘駅まで出向き、兵庫県立美術館で開催されていた「アドルフ・ヴェルフリ-二萬五千頁の王国」展を観る、ヴェルフリはスイス出身のアール・ブリュット(生の芸術)の作家で、精神病院に収容されながら描き続けた「物語」は圧巻、「妄想の大伽藍」との説明があったが、妄想だけで此処まで描けるのは天才としか云い様がない、絵画だけでなく作曲も手掛けた、残念ながら会期は終わってしまったが、興味のある人は「アドルフ・ヴェルフリ」をWEB検索してみてください、独自の世界を知る事が出来る。
 その後芦屋まで戻り、駅前のショッピングセンターで夕方まで時間を繋ぐ、東京人の私は「芦屋」と聞くとまず高級住宅地を連想し、そのため東京と鎌倉位の位置関係なのかな?と漠然と思っていたが、実際には大阪からは何と云う事もなく近かった(笑)。

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 周りが暗くなり冷えて来た頃に駅から南へ向かい、住宅街にあるイタリア料理「オステリア・オ・ジラソーレ」を目指す、今回初訪問をとても楽しみにしていた店だ。関西に在って東京で名前が知られているのは、南側の県にあるイタリア料理店だが、交流がある関西の食仲間達が高く評価しているのはこちらの店だったからだ。
 人の多い大阪から来ると、歩いている人が少なく夜は寂しい雰囲気も感じる道沿いに店はある、ファサードの青い照明が独特の雰囲気、南イタリア料理の店だが、これだけ見るとNYのイタリアンみたいな印象(笑)。
 ドアを開けると其処はバールの造りになっていて、レストランはその奥、こうした店の仕様はスペインのバル&レストランでも見たので、おそらくイタリアにも在り、それを取り入れたのだと思う。奥の内装はシックで落ち着いた雰囲気、壁の絵等所々に忍ばせたイタリアのテイストが心憎い。店名に‘Girasole’を使うイタリア料理店は東京にもあるが向日葵の事、そうソフィア・ローレンの「ひまわり」(笑)、「オ」を入れるのが正しい使い方か。
 この店の近くに住み、常連になっている食友人とのディナー(伊語ではcena)なので、店側も相当本気になっている筈だ。まずは料理全品について紹介したい、 

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・オリーブとビスコッティ

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・お米とキャベツの煮込みと牡蠣を包んだモルタデッラハム

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・自家製酵母から起こすと聞いた自家製パン(美味しい)

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・この日グラス提供可な白ワイン4種

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・ミル貝のカルパッチョ、フリアリエッリとカリフラワーのクレマ

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・イイダコと蕪、里芋のフリット、ブラッドオレンジヴィネガーで

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・マナガツオの炭火焼、赤ワインと玉ねぎのソース

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・手打ちのパッケリ、潮の香のソース

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・鳩の炭火焼、ニラとレバーのソース

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・フォンダンショコラと栗のスープ、マスカルポーネの雪見仕立て

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・カンノーロ
・エスプレッソ

 前菜4種と秀逸な自家製パンを食べ、この料理人は何を表現したいのか、客に何を感じ取って欲しいのか理解出来たと思った、魚介はどれも近海物みたいで、複雑な味付けや余計な調理より、素材の本来持っている力を生かす方向で提供する。
 ミル貝料理は同じカリフラワーを使った「オテル・ド・ヨシノ」の、「甲殻類のジュレ、カリフラワーのクリーム」を連想したが、繊細さではあちらだが、ストレートで鮮烈な旨さはこちらだなと思った。
 パスタはこの日最も印象に残った料理、パッケリとは極太の筒状パスタで、魚介の旨味を凝縮したソースは辛味を忍ばせて癖になる美味しさだった。「レバニラ炒め」を連想させる鳩料理は面白い、炭火焼は美味だがニラの量はもう少し抑えた方が鳩の肉味を生かすかも知れない。
 ドルチェも良かった、伊語では「パスティッチェーラ」と呼ぶそうだが、料理兼務の女性が作った品は、見かけは地味だが味に関しては今回の食旅行では最上のデザートだった。このパスティッチェーラは若く眼の輝きがいい、これからもっと伸びると思う。

 漁師の親父が捕った魚や貝を奥さんが料理する、やがてそのマンマが作る料理が近所で評判になり皆が集まって来る、客の「マンマ、お店出したら?」の言葉から始まった店が繁盛し、家族も手伝い口コミで有名になり遠くからも客がやって来る。こんな南イタリアでのリストランテ誕生物語を連想させる、この日の料理だった。
 料理長は杉原一禎氏で1974年兵庫生れ、名門調理師学校卒業後国内イタリアンを経て渡伊、おもにナポリ中心の南イタリアで働く、2002年に帰国し地元で独立開業、2007年に現在地へ移転した。
 食後に話をさせてもらったが、「きょうの料理」に出演しているアンドレア・ポンピリオ氏(日伊ハーフ)に少し似ている(笑)、上背があり体格がいいのでコックコートが似合うし、たぶんスーツ姿もピッタリだと思う、この日隣席の男女客と何故か映画「ゴッドファーザー」話で盛り上がったが、帽子を被って葉巻を銜えたら、あちらの世界でも通用しそうな雰囲気がある(笑)。
 「関西一のイタリアン」なのかどうかは、料理を評価する人次第だが、「関西一イタリア人的な料理人」ならトップ争い間違いないと思う(笑)。

 この夜は風が冷たく寒かったが、南イタリアの陽光と青い海を感じさせてくれる骨太な料理で、帰り道の寒さも忘れる楽しくて美味しい夜になりました。料理長とスタッフの皆さんありがとうございました。
 また関西でリピートしたい店が増えてしまった、これは困った事だ(笑)。


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大阪・南森町「香味」(2017関西食べ続け⑤) 

 何かを食べ、その移動だけではあまりにも芸がないと思い(笑)、大阪3日目は少し観光的な事もしておこうと、向かったのは中之島にある大阪市立東洋陶磁美術館、陶磁器好きに垂涎の朝鮮・中国の名品ばかり収めた、旧安宅コレクションを土台にした美術館だ。

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 現在開催中の特別展「台北國立故宮博物院―北宋汝窯青磁水仙盆」が目的だった。
 http://www.moco.or.jp/exhibition/current/?e=366    
 汝窯とは中国河南省にあった宮廷用の窯場で、北宋時代(960~1127)に最も栄え主に青磁が焼かれた、独特の色合いは「雨過天青」と呼ばれ、雨が上がって雲間に見える透き通った青空の色に例えられる。
 北宋青磁の代表類型が、器の中で水仙を育てたとされる楕円形の水仙盆、勿論宮廷で使われた物だ、この世界的名品が4点、台湾の故宮博物院から貸し出され、更には後年景徳鎮で焼かれたレプリカと、元々東洋陶磁美術館の所蔵だった水仙盆も加えて計6点が特別展示されている、やきもの好きとしては必見の展覧会だ。

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 会場は2階で、一番目立つ部屋に陳列されていた、中でも海外初公開の無紋(貫入がない)の大型盆は「人類史上最高のやきもの」との説明がある、史上最高かどうかは別にしても、これは見る価値のある歴史的逸品、深く吸い込まれそうな奥行き、滑らかな質感と今焼き上がったみたいな色の鮮やかさは「凄い」としか表現できない、照明に工夫はあるが、自然光の下ならもっと素晴らしく見えるだろうと思った。当時の技術で青磁の完品を作るのは大変難しく、一個の完成品を得るために無駄になった未完成品は相当数あった事だろう、製作に関わった職人達の情熱にも思いを馳せる。
 これだけの名品が日本で一堂に揃う事は、おそらく二度ないと思うので、興味のある人は見逃さない様に、会期は3月26日迄です。

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 この日の夜は芦屋まで出かけるので、ホテルのある天王寺まで戻るのは面倒、何処か近くでランチと思い、向かったのは昨年も昼に訪れた南森町の「中国菜 香味(シャンウェイ)」、中之島から歩いて行ける場所だ。
 入店は開店時間の11時半直後で一番乗り、矢谷料理長に挨拶して奥のテーブルに座らせてもらった。

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 「本日のランチ」(税込850円)は3種類、選んだのは日替りの「牛肉と色々野菜のオイスターソース炒め」に。
昼休み前なので他の客は居なかったが、食事中に続いて来た、大阪地方裁判所が近いからその関係者が多いらしく、13時迄が勝負時だ。

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・牛肉と色々野菜のオイスターソース炒め

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・主菜部分

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・玉子スープ

 「551蓬莱」でも感じた事だが、大阪中華は総じて一口目はあっさり目、普段刺激味に慣れている東京人には少し塩気が足りない印象もする、だが食べ続けて居ると味のベースになる湯がしっかりしているので、この薄味が必然になって来る、前半より後半勝負と云う感じだ、牛肉喰いの伝統が東京よりあるので、中国料理での牛肉の扱いも長けている、高温で炒めても硬くならず、味が抜けないよう工夫がされている。
 最近はスーパーでも見かける中国野菜のターツァイ(搨菜)だが、元は千葉県柏市の老舗中華「知味斎」が使い始め、他の中国野菜と共に近隣で栽培もしていた、矢谷氏はその店で働いていたので、中国野菜使いに関しては正統派、美味しい理由がわかる、この日のターツァイは矢谷氏の父親が栽培している物と聞いた。
 玉子スープも上品な上湯が特徴的な優しい味でした。

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 店の在る場所は官庁街なので、昼は850円の定食だけだが、夜席はかなり本格的な中国料理も提供している、入口に近い円卓では先日食の専門家達がマニアックな料理を堪能したと聞く(笑)。関西へ行くとなると、どうしてもフレンチ等のヨコメシ系中心になってしまうが、一度この店の本格料理も食べてみたいものだ。
 作った料理人の人柄が偲ばれる優しい味わいの料理、ご馳走様でした。去年はランチ延長戦として、続きで近くにある本格手打蕎麦「荒凡夫」へ行ってしまった、今年も髪は少ないながら、後ろ髪惹かれる思いだったが、夜も考えて自制する(笑)。
 私はこのまま梅田駅まで歩き、夜の食事のため芦屋へ向かう事に、関西食の修行(苦行?)はやっと道半ばです(笑)。


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大阪・高麗橋 「桜花」(2017関西食べ続け④)

 和歌山「オテル・ド・ヨシノ」から大阪のホテルに帰ったのが17時過ぎ、このままベッドに入って眠りたかったが、19時からは夜の部が始まる。お腹は空いていないが、とにかく胃薬を飲み(笑)、バスタブに湯を張って足湯に浸かった、これは体内血液を循環させ、少しでも胃内の堆積物を消化させようとする、食べ続け旅行で覚えたやり方、「おまじない」みたいな部分はあるが(笑)。
 夜は此処も毎年訪問している、市営地下鉄淀屋橋駅から近い和食店「高麗橋 桜花」、大阪中心の食材を料理人の現代的感覚で料理、「自分は決して喋りが得意ではない」と云いながら、料理や食材の事になると黙って居られない森田氏と素敵な奥様、調理を補助する美少女料理人和田さん、それぞれの個性が光る店だ。

 淀屋橋駅を出たら小振りの雨が、これ大阪名物の「小ぬか雨」だと思う、駅出口からは歩いて5分もかからないのでありがたい。入店したら同席者が既に待っていてくれた、この日は関西在住の食通男性二人と同席で、昼とはまた違う濃い話になりそうだ(笑)。
 森田夫妻に挨拶し、始まった早春の料理は以下のとおり、主題は「桃の節句」との事。

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・白酒代わり

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・白魚の酒蒸し 菜の花辛し和え 金時人参 大根おろし

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・なんば葱のぬた 蛍烏賊 さるぼう貝 白蒟蒻 雛あられ

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・椀物 桜道明寺蒸し(甘鯛しんじょう、椎茸、手毬麩)

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・造り(金剛山千早川の鱒)

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・造り、その二(あいなめ、ぼら、はり烏賊)造醤油、のばし梅

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・春のちらし寿司

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・焼物(鰆の西京焼き 門真蓮根、赤蕪)

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・強肴(桜鯛 卯の花和え 防風)

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・麺(にゅうめん、あさり、あおさ海苔)

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・香の物(辛子和え、昆布佃煮)

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・甘味(白あずき餡、苺、蕗の薹団子、小豆、バジル)

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・薄茶

 桜花料理の特徴は、高価な材料をふんだんに使って「どうだ、旨いだろう」みたいな力強さより、一品一品は穏やかな仕上げだが、全て食べ終わった時に「今日の料理美味しかったな」と思う安堵感、そして支払いの段階で「こんなに安くていいの?」と驚かされる。
 「はしり」の高価な筍などは使わず、一部の和食店等で取り入れている、強肴に和牛を出す事もない。基本は大阪の野菜と近海の魚介が中心、それでいて「ウチは京都と違う、大阪料理や」と変に力んでいる訳ではない(笑)。
 この料理、京都ならもう少しいい器や店内の設えはあるが、黙って一万だなと思う。他店であまり使わない野菜や魚を探して提供しているのも、価格を抑えて和食の門戸を広げたい店主の意向があると思う。「同じ産地の鯛をこの大きさで十匹揃えてくれ」みたいな注文の仕方が、仕入値段が一番高くつくそうだ、これはバンケット等で、希少な野禽類を一定数揃える時のフランス料理と同じ。数量が揃わず他店で使わない魚、未だ知られていない新品種の野菜、こうした物を使って献立を組むのが価格を抑えるに際し大事だが、料理の組立にセンスがないと、ブランド名に依存しない分、注目されず凡庸なものになり兼ねない、桜花の料理にはその心配は感じられなかった。

 料理中特に印象に残ったのは、まずは和食の華である椀物、春の訪れを感じさせる甘鯛に肉厚の椎茸、上質の昆布出汁の組合せが美味しさを生み出す。意外にも料理の途中で出た「ちらし寿司」も秀逸、料亭の味と云うより何処か家庭的な穏やかさだった。造りでは大阪府内の金剛山麓の鱒が記憶に残る、千早川は名勝地として知られ水も綺麗な地との事、今は養殖でもこれだけ高品質のものが提供出来る時代になった。
 珍しいバジルを添えた甘味の後に出たのが、金沢出身の和田さんが立てた薄茶、森田氏が「僕が淹れるより美味しい」と云っていたが、汚れない綺麗な心を反映しているのかも知れない(笑)。

 昼間の男性陣に比べると、体力は追い付かないかも知れないが、人生経験なら負けていない?親父が三人、森田氏と女将、そして年配男性客に人気があると聞く和田さんも含めて、濃い話になりました、特に和田さんとの話は際どいのもあったが、サラリと受け流すのは見事な親父あしらい、きっと大物料理人になれる器だと思った(笑)。
 森田氏と彼女のやり取りは、昔流行した「サインはV」みたいなスポ根TVドラマの、スパルタコーチとヒロイン的(笑)、「涙は心の汗だ」と森田氏が云えば、「コーチ、私にも出来るのでしょうか?」と和田さんが答える、これを見た親父世代客が彼女に味方する、少し離れた場所から二人を見守るのは、星明子的な優しい視線の女将(笑)。
 店はビジネス街にあるので、昼は格安定食も出しているが、先日料理人一家の家庭事情で一週間休んだ処、「あの店は潰れた」「夜にえらく儲けたのでランチやめた」みたいな変な噂が立ち、再開後客足が途絶えたそうだ、以来「意地でも続けてやる」と森田氏は思っているみたいで、やはりスパルタコーチにもなれる骨のある料理人だ(笑)。
 雨で潤った夜に楽しい宴になりました、次回もこのトリオに会えるのを楽しみにしています。

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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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