最後の晩餐にはまだ早い


札幌・ススキノ「meli-melo(メリメロ)」(2016札幌食べ続け⑥)

 3泊4日駆け足での札幌食べ続けも最終日、最後の店に選んだのは、すすきの狸小路近くにあるフランス料理「meli-melo(メリメロ)」だった。
 料理人は1980年生れの佐藤大典氏、2013年に札幌円山で同名店舗を開業、昨年5月現在地に移転した。興味深いのは移転後すぐにフランスへ行き、パリの「アストランス」&「ルドワイヤン」で約半年間働いた事、その間に料理長として店を営業していたのは料理人でもある奥様だった、フランスで単身働く事により、自分も妻もお互いスキルアップを図ると云う、現代的で面白いやり方だ。
 ブログ記事にした「リアン」の木下料理長とも親交があり、彼より更に年齢が下なので、札幌の新しい世代の料理を体験出来ると、今回初訪問を楽しみにしていた店だ。

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 店の場所は去年訪れた、人気フランス料理店「サヴール」のすぐ近く、複合ビルの2階部分なのも「サヴール」同様だが、新しい建物で窓が大きく採光があり、明るい店内なのが違う。 
 料理長夫妻に挨拶してキッチン横のカウンター席に座らせてもらう、奥様とは前に働いていた店で会っていた、もう一人若い男性料理人がキッチンに立ち3人体制。
 ここ数年来東京でも増えたフルオープンキッチンスタイルで、客席から全て作業が見えるが、洗い場は客席から見えない場所にある、店内はカウンター含め16席だが、既に3人客が居て後から8人の団体も来たので、ほぼ満席になった。
 ランチは3,000円と5,000円の2種だが、あらかじめ後者でお願いしていた、更にノンアルコールのペアリングがあるとの事で、興味を惹かれ注文してみる。
 この日の料理は以下のとおり、

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・アミューズ(左:アイコトマト、ボタン海老 右:炙り鯖、バターナッツ南瓜)

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・ズッキーニとリコッタチーズのタルトミルフィーユ、プラムソース

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・自家製パン、焦がした玉葱を挟んだ発酵バター

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・甘鯛のウロコ焼き、ホウズキのソース
・帆立、アオリイカ、パースニップとほうれん草のソース(画像撮り忘れました)

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・北海道産松茸とノドグロのスープ仕立て

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・青森金子ファームの黒毛和牛ランプのロティ、ポルチーニ、ムキタケ、黒ニンニクソース

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・プレデセール(大葉のソルベ)

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・デセール(手前から:メープル&プラリネのグラス、洋梨のコンポートの上にマロンのエスプーマ、ショコラムース)

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・アレッシイの変ったカップにエスプレッソ

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・ミニャルディーズ(きなこショコラ、サブレ)

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・ノンアルコール4種(上段左:赤紫蘇&ライム、右:パブリカ&パイナップルにローズマリー、下段左:ヨーグルトのホエー、右:ビーツが其々のベース)

 前日までに比べ料理に緑色が増えた(笑)、活力を感じる若い料理人の料理だと思ったのが第一印象。
 二品目のタルトミルフィーユは、働いていた「アストランス」の料理から着想を得たみたいだ。今回札幌で訪れたフレンチ3店は何処も自家製パンで味も上質、これは東京のレストランも見習って欲しい点だと思う。
 次の甘鯛はホウズキをソースに使う意外な組合せだが、なかなか面白いと思った。帆立と烏賊料理はパースニップの風味が生きている。佐藤氏が「今日一番食べて欲しかった」と云う道産松茸とノドグロは、香りを強調し和食の様でいながら、やはりフレンチの皿になっている。
 上質な牛ランプは的確な調理で美味、ガルニに使ったムキタケの食感・風味が特徴ある。デセールも軽めながら変化に富んでいい構成だった。
 全体的な印象は、油脂を抑えてライト感覚ながら、肉料理はしっかりと出すフランス式、料理人は違うと云うかも知れないが、やはり「アストランス」からの影響はありそうだ、甘鯛のホウズキソースみたいな際どいバランスを狙う料理もあり、ムニュ構成として全体を味わう料理だと思った。私は2001年ミシュラン一ツ星になったばかりの「アストランス」を訪れているが、料理を連想させるものがある、でもあの容れ物で三ツ星店になったのは今でも信じられないでいるが(笑)。

 主に奥様が考えるジューペアリングは、時に四次元的?で難解な時もある「フロリレージュ」に較べ、優しく判り易い組合せで特に女性客に受け入れられそうだ。
 奥様は現在サービスとデセール担当みたいだが、料理人でもあるので、これから二人のポテンシャルが相乗効果になって行けば、更なる進歩がありそう、モダンなインテリアや食器・カトラリー等は新しく上質で店の居心地もいい、「新しい札幌フレンチ」の風を感じる事が出来る店だ。

 今回、札幌フレンチ訪問は3店だったが、何処も特徴があり料理人の世代も違っていたので面白かった。東京でも同様だが、これだけ競合店が増えている中で生き残るには、他店にはない独自性が求められると思う、個性を出そうとする意図はどの店でも感じられた。
 ハイシーズン以外、LCC利用なら往復1万円前後で東京から札幌まで行ける、フランス料理に限らず、札幌飲食店のレベルの高さを是非体験して欲しいと思う。
 次の訪問は来年になるが、今回訪れる事が出来なかった店を含め、今から何処へ行くか考えるのも楽しみだ(笑)。

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梅島「手打蕎麦 本郷」

 だいぶ前の話になるが、有名調理師学校の教員の方と話す機会があり、以前から知りたかった事を訊いたのだが、それは、
「定年退職後に調理師学校に入り、卒業して飲食店を開業する人がいるが、成功するものなのでしょうか?」で、実はこれ私自身が進路の一つとして考えていたので、ぜひ知りたい事だった(笑)、その方の答えでは、
「あまり成功例は聞かないが、蕎麦屋なら実例がある」との事だった。その後私も成長?し、若手料理人の料理を体験する機会も増え、何かを作る行為は何かを破壊する事でもあるので、若いエネルギーに敵う訳がない事を悟った(笑)、退職後の余暇でお金を稼げるほど世の中は甘くない。
 それでも自分が今より若く、体力ももっとあったなら、脱サラしてラーメン屋か蕎麦屋をやってみたかったなとの未練が今でもあるが(笑)。

 この日初訪問したのは、東武伊勢崎線梅島駅近くにある「手打蕎麦 本郷」だが、WEB情報によると店主は脱サラしてプロの蕎麦職人になったそうだ、以前にブログで紹介した、綾瀬「重吉」の店主も元ミュージシャンだし、やはり転職するなら蕎麦が狙い目なのかも知れない、こう言っては失礼ながら、構成要素が単純で入り易いし、極めようとすれば奥が深い、設備投資もフレンチやイタリアン程にはかからないだろうから、減価償却も長期間でなくて済む、志があって場所に恵まれれば「当たる」可能性はあるかも知れない、ただこればかりはやってみないと判らないと付け加えておくが(笑)。

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 「本郷」の場所は梅島駅から環七へ向かって歩き、最初の道を右折してすぐ、11時半の開店時間に合わせて行ったのだが、まだ開いていなかったので、少し離れた場所で待機?していたら。中から店主らしき男性が現れ、暖簾を架けたので挨拶して入店した。外から見る店構えはなかなかいい、美味しい蕎麦が食べられそうな雰囲気はある。
 店内は15~6席位か、入口近くには個室的な小上がりもある、2人用の席に座ったら、厨房からアンジェラ・アキ風の眼鏡をかけた女性がお茶を持って現れた、この方が店主の奥さんだろうか?

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 単品蕎麦もあるが、初回なので無難に昼定食にする事に、三種類あるうちから「天丼ともり蕎麦」のセットをお願いした、蕎麦は温かい「かけ」も選べるが、今回は蕎麦の傾向が判り易い冷蕎麦で注文した。

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 少々暗くて写真の写りが悪いのだが、店内には蕎麦を挽く電動石臼が備えられている、と云う事は自家製粉&手打ちなのは間違いないだろう。

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 暫くして運ばれて来たのが画像の中身で、もり蕎麦、小天丼、漬物、小鉢(大根とささ身の和え物)、白玉小豆。

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 まずは肝心の蕎麦だが、色は少し緑色がかった灰色でそれ程細打ちではない、一本啜ってみると、ちゃんと蕎麦の香りがする、おそらくは二八(蕎麦8:小麦2)だと思う、加水は少な目で喉ごしは少し引っかかる感じだ、「とんでもなく美味しい」と云うレベルでなく、どこか下町風で親しみ易くホッとする美味しさだ。蕎麦の量は少な目、それに合わせたのかツユも少ないが、辛口で山葵も練りではない。

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 天丼は、胡麻油でカラっと揚げた黒っぽい蕎麦屋風の天ぷらではなく、お惣菜的な天ぷら、これも下町風で私は嫌いではない、ご飯も美味しいしあっと言う間に食べてしまった(笑)。

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 白玉小豆は一口だが、これがあるとやっぱり嬉しい(笑)。

 これで税込800円は格安だと思う、有名蕎麦屋ならもり蕎麦1枚分だ(笑)。何でも以前は840円だったが値段を下げたそうで、食材料高騰の中でこの心意気は偉い、それだけでも応援したくなるが(笑)、味も立派なものだ。
 わざわざ電車賃をかけてまで行く店か?と聞かれると答えが難しいが、この近くに用事があったら寄ってみる事をお勧めしたい、特にランチは狙い目だ。なお近くにはこれもブログで紹介した、担々麺で知られる「ふうりゅう」があるので、胃袋に自信のある人は連食も可能(笑)。

 過去ブログで紹介してきた、綾瀬「重吉」、大谷田「蕎」、五反野「そば遊膳とりい」等我家から自転車で行ける範囲には、探せば結構いい蕎麦屋があるが、完全退職後はこうした店を順番で回るのもいいかなと考えている、毎日フレンチを食べるよりは、きっと細く長く生きられる筈だ(笑)。

 次回のブログ更新は、年末恒例の「今年印象に残った店」を発表します。


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札幌・西17丁目「餅菓子商 白谷」(2014札幌食べ続け⑧)

 「バンケット」での豪勢なランチ後に、皆で札幌医大付属病院近くを歩いていたら、先を行く友人が「大福を売っている」と叫んだ(笑)、見ると目の前に和菓子販売らしき小さな店舗がある、札幌はファサードに駐車スペースを設けている店が多く、入口が奥に引っ込んでいるので気付かないと通り過ぎてしまう。友人の「入ってみましょう」との言葉に誘われ思わず入店してしまった、店の名前は「餅菓子商 白谷(しろや)」。

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 この場所は病院に来る人を想定しているのか飲食店が数店在る、和菓子店の2階は「喜香庵」と云う界隈では知られた蕎麦屋で、2年前に利用したがなかなか美味しい蕎麦だった記憶がある、その時もこの店はあった筈だが気が付かなかった。
 入ってみると意外に奥に広く喫茶スペースもある、左側に菓子類を並べた小さなガラスケース、見ると大福専門店という訳ではなく、通常の和菓子店で売っている「みたらし団子」みたいな物もあった、販売をしている若い男性が店主みたいだ。
 頭の中は既に大福モードだったので此処は「黒豆大福」(130円)を買い、店内で食べる事にする。

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 店奥の喫茶スペースは6席、特にお茶を注文しなくてもいいが、「抹茶150円」の文字を見て、思わず「安い」と頼んでしまった、大福と抹茶で合計280円は格安、スターバックスならコーヒー小1杯の値段だ(笑)。
 喫茶スペースの横には作業場が見えるが、どうやら店主一人で菓子の制作と販売、更にはお茶まで淹れている。

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 棚には抹茶碗や小物類、誰だか不明だが店を訪れた著名人?の色紙もある。物の配置等を見ると、この店主なかなかの美意識の持主、決して高価な物ばかり並べているのではなく、選んだ人間のセンスの良さが感じられるアイテム達だ。

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 先ずは大福からいただくが、形は小さめで外側の皮の部分は柔らかくしっとりとしている、中の餡は北海道産の小豆を使っているみたいで甘さを控えて上品、これなら2~3個位いけそうだ(笑)。

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 続いて店主が運んで来たのが抹茶、私は茶碗については「井戸だ、唐津だ」と薀蓄を語るのは好きなのだが、肝心の茶の作法については習った事はなく不案内だ、それなのでこの抹茶がどの程度の茶葉で、点て方が上手なのかどうかは語れないが、甘さを抑えたこの大福に合う軽やかで苦味が少ない飲み易さだった。使った茶碗も高価な物ではないと思うが、シンプルで趣味のいい器だ。

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 フランス料理店で食事後の中年?男子二人が、対面で大福と抹茶をいただくと云う、珍しくもあまり見たくない昼下がりの光景だが(笑)、美味しくて心豊かになれる時間になった、繰り返すがこれで280円は安い。
 東京のコーヒーショップは騒がしく、今コピー機でコピーしましたと云う感じの安手な絵を飾り、どうも落ち着く空間ではない、特に最近は殆どの席でスマホやタブレット端末を操作している人ばかりなのも気になる、そうかと云って土地代&賃料の高い東京で大福+抹茶を280円で提供し、長時間粘る客が居たらもう赤字必至で長く続かないが(笑)。
 こんな洒落た店がさりげなく存在する事自体、札幌が魅力を有した文化都市である証だと思う、また寄ってみたい店だ。

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 話は札幌のフランス料理に戻るが、今回訪問した4店、何処も個性的で面白かった。毎回札幌フレンチのレベルの高さには感心するが、今年はそれに加えて若い料理人達が、自分達の料理方向について模索しているなと云う印象も受けた。世界の流行に乗ろうとすると料理はグローバルになり、東京料理との差異がなくなる、それを札幌でやる意味があるのかどうか?一方「ガラパゴス的」と云っては失礼だが、1990年代のフランス料理を地道に継承して行こうとする料理人もいる。地元客を対象にするのか道外のグルメ達にも来て欲しいのか、料理人として何処へ向かうべきなのか、彼等も悩んでいるみたいに感じた。
 でも悩む事はいい事だ、「我思う、故に我あり」はデカルト先生の名言だが、料理人は「我思う、故に我の料理あり」であって欲しいものだ(笑)。
 今年訪れた店が次回変わっているのか変わっていないのか、新たな才能が出現しているのか、帰ったばかりだが次回の札幌訪問を今から楽しみにしている。


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神田須田町「雲林坊秋葉原店」の汁なし坦々麺

 この日、日本橋の三井記念美術館で開催中の「超絶技巧!明治工芸の粋」展を観に行こうと思い、その前に何処かで腹ごしらえをしようと、美術館近辺の昼食処をWEBで探してみたが、どうも高額店ばかり(笑)、あとは一食500円のサラリーマン御用達の店になってしまい両極化している。南青山の高級フレンチが展開するセカンドバージョン店に惹かれないでもなかったが、この日はもっと安くてパンチのある物が食べたかった(笑)。
 そこで思いついたのが、我家からだと少し手前になるが、秋葉原の坦々麺専門店「雲林房」、この店を再訪問する事にした、昼は11時開店なのでその後に予定がある時は、早目に食べられる店はありがたい。

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 ブログで確認したら前回利用は去年8月なので、もう10ヶ月も経ってしまった、月日の経つのは早過ぎる(笑)。入店は11時5分過ぎ頃だったが、既に2人が着席していた、正午過ぎのピーク時には行列も出来るそうで、秋葉原~神田のランチ激戦区では人気店の一つになっている。

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 注文は食券式なので、前回食べた「汁あり坦々麺」(830円)か「汁なし坦々麺」(830円)かに迷ったが、今回はWEB上で評判の高かった汁なしの方を選んだ、結構辛そうなので舌を中和させる意味で、「こしひかりご飯(中)」(120円)を追加した、炭水化物+炭水化物は、かなり危険な食べ合せ?なので、これは自己責任で選んで下さい(笑)。
 カウンター上には「汁なし坦々麺は太麺を使用するので、出来上がりの順番が変わる事があります」旨の注意書きがあった、サラリーマンにとって昼休みの1時間は貴重なので、こうした説明は大事だ(笑)。
 暫くしてから、ちょっと変わった楕円形の皿に盛られて出てきたのが汁なし坦々麺、

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 「よく混ぜてから食べてください」との店員からの言葉があり、そのとおりにした、太目の麺の上には炒めた豚挽肉、大き目に刻んだピーナッツ、辣油、甘味噌が絡んでいる。まず一口食べると肉味噌の甘みと旨味、その次にピーナッツのクリスピー感、そこへ辣油の辛さが来る、舌がそれに慣れようとしている時に、山椒の痺れ感が襲ってくる(笑)、これは東京人好みのエッジを尖らせた味だ。

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 同じ店の汁あり坦々麺に比べると、より個性的な味付けに感じた。舌の痺れ感を和らげるためにご飯を一口、これがいい炊き具合で明らかに我家より良い米を使っている(笑)。上に乗った味玉の黄身の茹で具合が見事で、かの「瓢亭玉子」みたいな感じだ。これについては別の客と店員が話しているのを耳にしたが、神田にある「雲林」の本店で作っていて、専任の「玉子茹で職人」が居るとの事だ(笑)。坦々麺はかなり刺激のある味なので、ご飯を間に入れる食べ方は丁度良かった。
 全体的に美味しかったが、あくまでも個人的な意見だが、この店では汁なしより汁ありの方が、味のバランス的には好みだ。汁なしの方はより刺激を求める若い人向けかも知れない(笑)。

 痺れた舌を舐めながら雨の中を歩いて向かったのが、銀座線三越前駅近く三井本館内7階にある三井記念美術館で、現在開催中の「超絶技巧!明治工芸の粋」展は、京都清水三年坂美術館所蔵品の「引っ越し公開」。
 明治期に作られ、主に外貨獲得のための輸出品として海外へ渡っていた工芸品に魅せられ、外国の骨董商やコレクターから買戻し、逆輸入したのが同美樹館の設立者である村田理如氏だった。今回はその代表的なコレクションを展示している。

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 七宝、金工、漆工、薩摩焼等、息をのむ程精密極まりない明治のアルチザン達の至芸を見る事が出来る。そして必見は象牙の彫刻品「牙彫(がちょう)」の作家安藤緑山の作品群、中でも代表作「竹の子、梅」は、驚異的な技巧と完璧な造形で「凄い、打ちのめされた」と思った程の作品、私が細かく解説するよりも、これは「とにかく、実物を見て」としか言い様がない、「百聞は一見に如かず」の言葉はこの作品のためにある(笑)。一応WEB上で拾った画像を載せておくが、二次元では本当の凄さが出ない。

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 この安藤緑山という作家、上野御徒町に住んでいた事位しか判らず、1885~1955とされる生没年も怪しいそうで、弟子も取らず家族関係も不明で顔写真も残っていない、超絶的な技法も未解明な部分が多く、まさに「孤高の天才職人」。昔の日本には本物の凄い奴が居た。
 7月13日(日)まで、三井記念美術館で開催中。


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根津美術館「井戸茶碗―戦国武将が憧れたうつわ」展

 南青山の根津美術館で開催中の、「井戸茶碗―戦国武将が憧れたうつわ」展を観に行った。

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 井戸茶碗とは、主に16世紀に朝鮮半島南部で作られた陶製の器で、元は民衆の日常雑器と推測されるが、日本に渡来後に茶人達が抹茶碗として転用、茶の世界では「一井戸、二楽、三唐津」とまで言われる程に珍重された、外に向かって開いた男性的で豪快な形が特徴で、荒い陶土を使って無造作に轆轤を回し成形した作為の無さが感じられる、その他には、
・色は枇杷色と呼ばれるベージュ系かグレー系
・胴部の内外に轆轤あとが残る
・高台が高く、竹の節状になっている
・高台部分の釉薬が縮れ細かい穴が現れている、茶人はこれを「梅花皮(かいらぎ)」と呼び珍重した
 以上の特徴があるが、「竹の節高台」と「梅花皮」については全てある訳ではなく、出ていない類型もある。

 「井戸茶碗」の呼び名については諸説あるが、茶を飲むため茶碗の中を覗き込むと、外見より深く広く感じ、まるで井戸の如くに見えるから、茶人がそう呼んだと云う説が有力らしい。
 室町から桃山時代にかけて日本に渡来し、千利休一門の茶人達が好んで茶事に用いた事から知られる事になる、特に戦国武将達に人気があった、日々戦いに明け暮れた彼等はこの茶碗の詫びた風情、天に向かって開いた形状、孤高な姿に己を重ね合わせたのかも知れない。中でも織田信長は戦勝の褒美として、部下の功労者にこれらの茶碗を与えた、拝領した者は銘を与え家宝として子孫に伝えていく、こうして名碗は現在に伝世する事になる。

 今回の展覧会は、日本各地で伝世され「名碗」となった74点を一堂に展示したもので、前評判も高く実際に見て圧巻だった。井戸茶碗は大きさや色から「大井戸」「小井戸」「青井戸」に分類されるが、眺めていると大井戸は戦国武将、小井戸はその跡継ぎの子、青井戸が奥方達みたいで、これらがまるで「清州会議」の様に、一つの城に大集合した錯覚を覚えた(笑)。
 この中から代表的な名碗を紹介したい、

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・大井戸茶碗 銘「喜左衛門」 大徳寺蔵
 井戸茶碗の代名詞にもなっている有名な碗、今回の展示中唯一の「国宝」、口造りは歪んで全体的にも薄汚れているが(笑)、それだからこそ桃山の茶人達の美意識に訴えた、唐物(中国製)茶碗の左右対称の均衡美に対し、左右非対称で不完全な茶碗に美を見出したのだから「価値観の逆転」だ、これを戦国の「下剋上」と結びつけるのも間違いでは無さそう、この茶碗を所有した者は不幸になると云う、オカルト的な謂われがあるのも名品の証拠(笑)。

     131203-3細川
・大井戸茶碗 銘「細川」 畠山記念館蔵
 もし信長公から、全展示品から「一つだけ好きな物を与える」と言われたら、私ならこれか(笑)、男性的な「喜左衛門」に対し、女性的な柔らかい外観と内側の繊細な造りで、見飽きる事が無い。江戸時代の大茶人である松平不味の所有物だった事もあり、愛情を注がれて「育った茶碗」だと云うのがよく判る。

      131203-4有楽
・大井戸茶碗 銘「有楽」 東京国立博物館蔵
 前二碗に比べると地味な外観だが、かつての所有者は信長の実弟である織田有楽斎、時代漫画「へうげもの」の中で名脇役として登場する人物だ(笑)、漫画にも描かれている様に、兄とは対照的な生き方をして、相当なエピキュリアンだったみたいだが、文化人として徳川政権になっても無事生き延びた、江戸城数寄屋橋門近くに屋敷があった事から、現在の「有楽町」はこの人の名前に由来する。

     131203-5柴田
・青井戸茶碗 銘「柴田」 根津美術館蔵
 伝承由来からすれば、この碗に優るものはない、織田信長からの褒賞として家臣の柴田勝家が拝領したとされる。小振りな造りながら姿が大変美しく、所々に青味を帯びた色合いから「青井戸」と呼ばれる茶碗、無骨武将と伝えられる柴田勝家のイメージに合わない気もするが(笑)、所有者と違って乱世を生き延び、今に伝わって歴史の証人になった、この名碗を根津美術館が所有していた事から、今回の展覧会が開催出来たのだと思う。

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 私が行ったのは平日午後だったが結構混んでいた、これだけの量と質の井戸茶碗を、一堂に集める展覧会は暫く無いだろうと思う、器好きで歴史好きの方には是非お勧めしたい。(2013年12月15日まで、東京・青山:根津美術館で開催)
 ※茶碗の画像はWEB上から引用しました。



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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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