最後の晩餐にはまだ早い


新富町「プレニチュード」

 フランス南東部の大都市リヨンは古い街で、ローマ時代にはガリア(フランスの古い呼称)の首都として発展、当時は「ルグドゥノム」と呼ばれた。21世紀の現在でもパリとは違う独自の文化を保っている、ソーヌとローヌの二つの川に挟まれた半島状の中心地(プレスキル)とソーヌ川右岸の旧市街には数多くのレストランが点在し、「食の都」とも呼ばれる、これは中世以降に絹織物の生産地として栄え、ブルジョワと呼ばれる商家の富裕層が多く誕生し、飲食業を支えていたからでもある。
 このリヨンで約4年働き、帰国後もリヨン出身のフランス人料理人の店、神楽坂「ルグドゥノム・ブション・リヨネ」で料理長を務めた今田一之氏が、昨年12月に独立開業をしたのが、この日の昼に伺う新富町「プレニチュード」だ。
 「ルグドゥノム~」は訪れた事があるので興味あったのだが、今回たまたまFBで知り合った人が、この店のサービス担当に就任したのもあり、友人を誘って昼に初訪問する事になった。

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 店から一番近い駅は有楽町線の新富町だが、私は日比谷線八丁堀から歩いて行った、近年「ビストロ・シンバ」「メゾン・ミッシェル」に、この「プレニチュード」と、近いエリアにフランス料理店が続いて開業している、今東京でも熱い一帯と云えそう。「シンバ」からは首都高環状線を挟んですぐの場所、このまま銀座へ向かうと「カイラダ」も近いし、他にもビストロやイタリアンが数店在り、飲食激戦区になっている。
 12時丁度に入店し、店内左側のベンチシートに案内される、思っていたより広い店内で22席あるそうだ、入口右手が厨房で中は2人体制だった。

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 テーブルは昼でも白いクロスが敷かれ、位置皿にはシャガールの絵皿、その上には白い布ナプキンを立てている、このセンスは今の東京ではちょっと懐かしい感じがする(笑)。
 サービスの大津氏に挨拶し料理が始まる、ランチメニューは3,800円と5,800円の2種で、あらかじめ後者をお願いしていた。

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・アミューズ・ブーシュ(リエットのバゲットサンド、ロマネスコのマリネ)

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・そら豆のムース、北寄貝と春野菜のサラダ仕立て

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・ボルドー産白アスパラ、鴨の燻製ハム、ハーブ

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・長谷川農園のマッシュルームスープ

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・金目鯛のポワレ 生姜風味のエブリ麦とプティポワのピューレ

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・切子杯に入れた香川産甘夏のグラニテ

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・ハンガリー産鴨胸肉のロースト、赤ワインソース、インカのめざめ

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・苺のヴァシュラン、ピスタチオのアイスクリーム

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・ミニャルディーズ

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・コーヒー

 まず料理全体の印象を云うと、東京やPARISの若手料理人達が作る、エッジの立ったコンテンポラリー料理とは少し傾向が違い、何処か懐かしくて優しい美味しさ、リヨンを訪れたのは2009年が最後だが、記憶の中での料理には共通点がある。
 個人的な好みでは、前菜の「そら豆のムース、北寄貝と春野菜のサラダ仕立て」に惹かれたが、一つの料理だけが突出する事なく、全体が絹織物みたいに柔らかな肌触り、店内は時間がゆったりと流れ、モダンアートの鮮烈な刺激より、絵具を何層にも塗り重ねた伝統の油絵みたいな料理と云うと抽象的過ぎるかな?(笑)。
 パティシェールのヒカリちゃんが作るデセールも良かった、これから経験を積むといいパティシェになると思う、コーヒーも吟味され美味しい。
 店内サービスはスーツ姿の男女2人が担当するが、上質で寛げる。客の年齢層も高めに感じ「大人のレストラン」だなと思った。皿はベルナルド、カトラリーはさすがにクリストフルではないが、肉用にはライオールを使う、この辺りにも店主のフランスへのリスペクトを感じた。
 青山学院近くで、現在「モノリス」の場所に在った「アテスエ」の料理を思い出した、割と好きだった店で、私の記憶違いでなければオーナーシェフはリヨンで働いた事があり、優秀なメートレスが居た、料理には何処か共通点があると思った。
 店のWEBページでは「食べて美味しく、身体によい環境にも優しい。オーガニックな食材に拘った自然派フランス料理を」とコンセプトを主張している。料理の傾向は違うが、外苑前「フロリレージュ」が提唱する「サスティナビリティ」にも共通する考えで、レストランがこうしたメッセージを発信するのはいい事だと思う。

 店名の‘Plénitude’とは、「完全」「充実」を表すフランス語、開業後半年なので完全には足りないものがあるのは、料理長が一番承知していると思う、あくまでも目標と理解すべきで、あと半年位経って一周年を迎えた頃に一回目の充実が来そうな気がする、確認のためにもまた来てみたい店だと思った(笑)。


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麻布十番「ビストロ・コティディアン」(2017年5月)

 東麻布「ローブ」へ行くため、麻布十番駅の改札へ向かう長いエスカレーターに乗っている時、「そう云えば、ビストロ・コティディアンに暫く行っていない」と思った、家に帰って調べたら、去年の2月が最後で1年以上経っている、冬場にスペシャリテの「カスレ」を食べに行こうと思いながらも、そのままになっていた。
 行きたいと思う店を均等に回るには、東京のレストランは数が多過ぎる、私がもし今よりお金持ちだったとしても体力的に無理、もう一人の自分が欲しい位だ(笑)。

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 そうした訳で、ご無沙汰をお詫びするお土産を持って伺った(笑)、ランチタイムのコティディアン、マダムに挨拶し窓際のベンチシートに案内され、ランチのカルトを眺めながら井之頭五郎氏みたいに何を食べようか暫し悩む。

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 この日は結構暑い日だったので、「久しぶりにカスレ食べたいが、季節的にミスマッチかな?他のメイン料理なら『ブーダン・ブラン(岩中豚と鶏肉のソーセージ)』に惹かれるが、さてどうする?」、そこへ須藤料理長が挨拶に出て来た、彼の顔を見たら瞬間に「決めた、カスレ」と思った、念のためカスレみたいに煮崩れた顔だと云うのではありません(笑)、ジムで絞った身体を持ち、美味しい物が出て来るに違いない、味のあるいい顔です。

 ランチのカスレコース(4,200円)の前菜は、通常だとエスカルゴだが、少し重いかなと別の料理に替えてもらった、内容は以下のとおり、
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・冷製新タマネギのポタージュ

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・「野生児」と云う名のワインは、ラングドック・ルーション地方のフィトー(グラス1,000円)、従来の仏南西部ワインとは一線を画す、モダンなラベルで華やかな果実味がある。

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・岩中豚のリエットとポワンタージュのバゲット

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・北海道産サクラマスのミィ・キュイ

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・フランス産鴨もも肉コンフィのカスレ

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・山梨県産白桃のコンポート(これは標準仕様ではありません(笑))

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・リュバーブのタルト、バニラアイス

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・コーヒーとミニャルディーズ

 暑い日に向く冷たく優しい味わいの新玉葱ポタージュで「掴みはOK」(笑)。リエット&バゲットはこの店へ来たら無いと寂しい定番。
 続くサクラマスのミィ・キュイ(半生調理)は、鮭バージョンも含め割と各店で出る料理だが、コティディアンでは火を通した皮を付け提供、その香ばしさと身の柔らかさ、上に乗せた野菜と周りのソースが一体になった美味しさを感じさせる。
 そしてこの店では、最後に食べてから2年以上経っているカスレが登場する、まずは鴨コンフィ下の豆煮込みを一口味見、カレーみたいな風味がするが、近くにあったコティディアンも掲載されている本「ビストロメニュー・バイブル」(ナツメ社)で確認したら、カルダモンを使っているそうだ、前回も入っていたのだろうが気に留めなかった、塩分と脂分は以前より抑えているのでは?と感じる。続いて鴨コンフィ部分は記憶に変わりなく美味しい、料理自体はビストロの定番だが、此処まで丁寧な仕上がりに出会う事は少ない、単に「カスレ」と云うより、メニューどおり「鴨もも肉コンフィのカスレ」と呼ぶべきで、主役はあくまでも鴨だ。
 何故か1品増えていたデセールは文句なく美味、料理長は私と同じくスイーツ好きなのだと思う(笑)、特にバニラアイスは良質なバニラを使用、最近では出色のグラスだった。

 久し振りのコティディアンだったが、まずは来て良かったと思った、マダムともう一人の若い男性のサービスが良質で居心地がいい。料理も最新の煙や泡が出る尖ったものでは無く定番料理が多いのだが、余計なものを省き簡潔でいながら奥行きがあって美味、「贅沢な日常」を感じさせてくれる。
 フランスのビストロと較べたら、量や塩分・脂の質は違う、悪い意味ではなく日本人向け、それもシニアクラスでも完食出来て、リピートしたくなる料理だと思う、それもあって客層も比較的高めに感じた。
 これから更に高齢化社会になる日本、レストランも変わって行く必要あると思う、70代、80代になっても食べられるフレンチ、雰囲気が良くて月1回位のペースで来ても飽きない料理と、年金からでも払える値段(笑)、そうした店があれば老後の楽しみが増すし、もう少し生きてもいいかな?と思えてくる、家から麻布十番まで辿り着ける体力は維持しないといけないが(笑)。
 須藤料理長、マダム、そしてスタッフの皆さん、おかげで素敵な午後になりました、次はこんなに間を空けずに来たいと思います。

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東麻布「ローブ」 (2017年5月)

 GW中の「友、遠方より来たる」シリーズ(笑)、今回も在関西の友人夫妻で、訪問店のリクエストもあり、それが昨年6月末に開業し、直後の7月初旬に訪れた東麻布のフランス料理「ローブ‘L'aube’」だった。
 此の店は夜営業が中心で、毎週金・土だけランチをやっているが、今年開店後初のGWなので、期間中ランチとそれに続くデセールタイムを営業、企画に便乗する事になった。私も冬場に行きたいと思いながらも季節が過ぎてしまい、ようやくこれで念願の再訪問が出来る。
 店に一番近い駅は都営大江戸線の赤羽橋だが、乗換えが不便なので麻布十番駅で待合せ歩いて行く事に、天気は快晴で絶好のフレンチ日和だ(笑)。
 店の入って居るビルは昼間見ても隠れ家的、2階店舗へ上がる階段が一種の「結界」になって、俗世界から非日常空間へトリップする印象。サービス担当の関氏に挨拶し、オープンキッチン近くの席に案内される、劇場なら舞台上手前のかぶりつき席になる(笑)。
 着席後に関氏より料理の、平瀬パティシェールからデセールの説明がある、GW期間中のランチは標準仕様の肉料理が山形豚、これを仔羊または仔牛にプラス料金で差替え可との事なので、私は輸入解禁されたばかりのシストロン産仔羊に決めた。
 続いてデセールだが、通常だとチーズムースと赤果実の一品だが、デセールタイム用のアシェットデセールなら差替えまたは追加可との事、暫し悩んでいたら、平瀬氏より「皆さん食べられるのなら、追加分を3種類分けてお出ししましょうか?」と素敵な提案があった(笑)、これに乗らない訳はなく、即答で「お願いします」と応えてしまった。これはデセールタイム用の準備があったからで、お願いすればやってもらえる訳ではないです(笑)、いかに優秀なパティシェでも材料が無ければ作れません。

MUNU HARMONIE
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・高知レモンのジュース

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・シラスのオムレツ

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・アーティショー、桜肉

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・緑アスパラガス、レモングラス

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・自家製ブリオッシュ2種

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・土佐ジローの卵、長谷川マッシュルーム

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・天草産鱸のヴァプール、鎌倉野菜、ソースヴェルデ

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・シストロン産仔羊、シュクリーヌレタス(+1,400円)

 今橋料理長による第一幕は、レモンジュースの鮮烈な酸味で始まる、「目を覚ませと呼ぶ声が聞こえる」感じだ(笑)。一口サイズだが、シラスオムレツ、アーティショー、桜肉のトリオはよく考えられて、味の印象を残す。続く野菜料理は農業従事経験ある今橋氏の得意分野、春の香りと色が印象深い。玉子料理はおでん種の「バクダン」みたいだが(笑)、シャンピニオンピュレとの相性抜群、これは発想の勝利だと思う。
 魚料理はこの日最も今橋氏のセンスを感じた皿、鱸に添えたソースヴェルデがフランスで味わう時みたいに、各素材が日本的に慣れ合わない香りと味で、「これは南仏」と感じた。
 16年振りと聞く国内での仏産仔羊は盤石の美味しさ、本心を言ってしまうともっと量が食べたかったが、この後のデセール展開を考えると、これで丁度良かった(笑)。

 第二幕は平瀬劇場、まずは圧巻の4品をご覧ください。
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・フロマージュ 赤い果実

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・黒オリーブ タイム(後でタイムのソルベを添える)

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・リュバーブ レティエ

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・花菜ローズ マンゴー

 細かい解説は「蛇を画きて足を添う」になりそうなので止めておく(笑)、味わえなくても見て感じてください、味やデザインで4皿のレベルが高い事は勿論だが、出来不出来の差が無い事にも感心する。去年のブログ総集編で「最も印象深かった一品」として、平瀬氏のデセールを挙げたが、その後超える皿に出会う事を期待しながらも、何処も及ばず相当差があった、日本で彼女を超えるのは彼女自身しか居ないのかも知れない。
 オープンキッチンなので作業が見えるが、この複雑な仕様の4皿をエスプーマや液体窒素みたいな、料理人なら使いがちな飛び道具を使わず(たぶん)、仕上げの殆どが手作業。そして窓からの自然光を受け、彼女がポシュ(絞り袋)を手にする姿は何とも格好いい(笑)、此処にフェルメールがいたら、「絞り袋を持つ女」のタイトルで傑作を描き、数億いや数十億の価値ある絵になるのに残念だと、実に俗な事を考えてしまった(笑)。

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・ショコラ4種(もちろん自家製)
・水出し珈琲

 今橋&平瀬両氏の料理とデセールは前店から通算して3回目だが、更に良い方向へ変化していると思う、そして此処で留まらず進化して行きそうな力量を感じさせる。これから東京で注目すべき一店だと思う。
 関西から柏市経由?で来た友人夫妻も充分満足されたみたいで、今橋料理長、平瀬パティシェール、関メートル、手厚い対応をありがとうございました(笑)。


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外苑前「フロリレージュ」(2017年4月)  

 前回の利用時に、誕生日祝いをしようと次の予約を入れていた外苑前「フロリレージュ」、二ヶ月近く前だったが、私の歳になると意外に早くやって来るものだ(笑)。
 地下鉄外苑前駅から神宮球場へ向かって歩き、酒屋のある角を左折して細い道を直進、右手に熊野神社が見えるので、通り過ぎて最初のビル地下に店はある。
 前回に続いての平日ランチタイム、この日外国人客は見当たらなく、皆日本人客だと思うのが、殆ど12時に揃う事(笑)、フランスならデジュネ開始は地元人なら13時頃から、スペインなら14時頃それもバラバラにやって来る、「ヨーイ・ドン」で殆ど同時に始まる日本式は、店側は大変だがスタッフさえ揃っていれば、同時進行で料理を出せるので、楽な面はあるかも知れない。
 カウンターの角席に座って川手料理長に挨拶する、話題に出たのが「ドタキャン」で、つい最近も多人数であったそうだ、他店でも聞く事だが根本的な解決法は今の処なく深刻な問題、やがて海外有名店や日本でもフェア等では既導入している、料金先払いシステムを採るしかないのかなと考えるが、そんな事心配しない時代にレストランを食べ歩けたのは幸せだった(笑)。
 
 春4月のメニューは以下のとおり、
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・投影、そら豆
 盛られた鞘のうち一つだけ空豆コロッケ、空豆の温製スープ。

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・到来、ホワイトアスパラ
 奥に白アスパラのムースに桜花、緑のソースはシャルトリューズがベース。

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・サスティナビリティー、牛
 宮崎産経産牛のカルパッチョ、温かい出汁、国産野生アスパラガス。

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・フォアグラ、生姜
 仏産フォアグラの冷製、中に蕗の薹シフォンケーキ、上にサマートリュフ、ロゼワインを使ったソース。

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・稚鮎のフリット
 稚鮎を鰺みたいに開き、短時間干した後にフリットし実山椒と合わせる、腸を使ったジュースを添えて。

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・分かち合う
 北海道産仔羊背肉骨付ロースト、奥に新玉葱と羊端肉をミルフィーユ状にしてローストしたもの、新玉葱のピュレ。

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・ブランマンジェ、ココナッツ

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・贈り物、アマゾンカカオ

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・苺のパートフィロ
・奈良・月ヶ瀬「ティーファーム井ノ倉」のかぶせ煎茶

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・誕生月の参加者が居たので、お祝いのメッセージとマカロン
 台はサスティナビリティーの考えで再使用出来るドライフラワー、廣田氏作だと思う。

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・本日のドリンクペアリング(廣田氏作)
 
 まずは空豆の香りを生かしたコロッケとスープで春の息吹を体験する、続く白アスパラも緑のソースが印象的、verte(緑)は某知事がイメージカラーにしているが、若さと春の象徴色でもある(笑)。
 次の宮崎経産牛は前半のヤマ場、移転後に経産牛を使い始めたが、この料理は特徴を一番生かしているのではないかと思った、成牛の肉味が枯れた部分を出汁が補い、単に1+1=2ではない、複雑な旨味を出している。
 鶏インフルのため、最後の輸入分と聞く仏産フォアグラ冷製は上質、ロゼワインを使ったソースが引き立てる。続く稚鮎は、根気よく開きにしたスタッフ達に拍手(笑)。
 そしてこの日最も印象に残ったのが仔羊、春から仏産仔羊が輸入解禁されたが、この北海道産も質では決して劣っていないと思う、勿論素材を引き立てる的確な調理があってこそだが、ガルニの新玉葱の扱いもいい。
 デセール2品も以前より洗練度が増したと感じる、パティシェール1人で作っているが、川手料理とイメージが合って来た。
 料理&デセールも秀逸だったが、この店で特筆すべきは若いスタッフ達だ、川手料理長以下は、北海道出身で香川真司似(笑)のスーシェフ田原君、彼は川手氏が出張時には二毛作店?「ウラリレージュ」でシェフに就く。大阪出身で「オテル・ド・ヨシノ」スーシェフを経て、去年から此の店で働いている少し強面の角田君。更にはNYから来たスキンヘッドが特徴の彼に、小さな身体をフルに駆使してキッチン内を飛び回るパティシェール。
 サービス陣は旧店舗時代からの生き残り(笑)で、フラワーデザイナーでもある長身で知的な廣田氏、眼鏡と髭に白い靴下がトレードマークの明るいソムリエ中村氏、他にも若いスタッフ数人が皆個性的でキャラがある(笑)。他店なら黒子役で埋没してしまうが、この店では客と会話する事で全員が主役に見える、これは日本のレストランでは稀有な事、料理を作るのは機械ではなく人間、料理人である前にまず社会に通用する人であるためにも、このやり方はいいと思う。やがて彼・彼女達は旅立って行くのだろうが、此の店で得た経験はきっと生涯役立つ筈だ。
 ヴィエンヌ「ピラミッド」出身の料理人達が現代フランス料理の歴史を築いた様に、何時の日か「フロリレージュ」出身者の時代が来る、そう思いたい(笑)。

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 充実した午後になりました、このあと気分が良くなって、そのまま表参道「グラッシェル」まで歩いて、念願の「プリンパフェ」(税込1,620円)を食べに行く事に、本物のバニラを贅沢に使い、吟味したフルーツと共にまた食べたい逸品でした(笑)。この店のスタッフ達も皆笑顔の接客がいい、「悪いオーケストラはいない、悪い指揮者がいるだけだ」の名言は、どうやら飲食業界にも通用するみたいだ(笑)。

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赤坂「古屋オーガストロノム」(2017年4月)

 「友、遠方より来たる」シリーズ(笑)、今回も在関西の友人で、あらかじめ店のリクエストもあったのだが、それは去年1年間で5回、今年も2回目で計7回の利用になる、赤坂のフランス料理「古屋オーガストロノム」だった。
 ブログを続けていて、読む人の事を考えると、なるべく訪問店が片寄らない事を心掛けてはいるが、自分が本当に気に入った店は、文章にも表れてしまうみたいで(笑)、友人知人からも、この店と大阪の「コーイン」については聞かれる事が多い、ブログの検索ワードでも上位に来ているみたいだ。

 前回は昼利用だったが、今回は久しぶりの夜席、すっかり朝型人間になってしまったので、最後まで寝ないで居られるか少々心配だが(笑)。
 千代田線赤坂駅を出て一ツ木通りへ向かい、ドコモショップの角を左折、円通寺通りを進めばすぐ右側、大きな「f」の字が目印だが、その前に誰かが立っているなと思ったら、非常勤メートル?の秋葉氏が待っていてくれた(笑)、昔はジャン=クロード・ヴリナ氏を筆頭に、立っているだけで様になるサービスマンが居たが、今はもう絶滅寸前でこの人が最後の世代かも、長生きして欲しいものだ(笑)。
 先に入店して待っていた友人に挨拶、始まった当日の料理は以下のとおり、

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・アミューズ・ブーシュ(静岡産くぬぎ鱒のマリネ・シャンピニオンの温製スープ)

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・自家製全粒粉パン

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・66℃67分で火を入れた“蘭王”とフランス産キャビア、ブリオッシュトーストの“玉子サンドウィッチ”、グレス・ド・フォアグラのマヨネーズソース

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・北海道産ホタテのグリエ、ウニとフヌイユのクリーム

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・ハンガリー産フォアグラのポワレとロワール産ホワイトアスパラガス、シブレットバターソース

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・熊本産真鯛とアサリのポワレ、そのジュと京ほうれん草のピューレ

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・フランス産リ・ド・ヴォーのブレゼ、グリーンアスパラガスとモリーユ

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・オレンジとパイナップルのスープ、グリーンピースとミントのグラニテ

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・いちごとミルフィーユ、さくらのソルベと共に

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・レフォールのアンフュージョン

 前回利用が半月前だったので、料理どう変えて来るのかな?と思っていたが、まずは全体のデザインが違った、前回がクラシック真中の構成なら今回はモダンデザインになった、皿の上が凝縮から分散へ外側に向かって開いている、「なるほど、この手があったのか」と感心させる。
 各料理に触れると、スペシャリテの「ウフ・アン・ムーレット」から今回は「玉子サンド」へ変更、鶏卵と魚卵(キャビア)を合わせる難しいマッチングも成功していると感じる、皿内の色合いもいい。
 前回はコールラビと合わせた帆立は、今回のフヌイユとまた違った相性を見せる、帆立は相手を上手く引き立てるバイプレイヤーかも、前の玉子料理と共に「春」を感じさせる。ゲラ―ル以降一世を風靡したフォアグラポワレだが、最近は健康志向と鶏インフルエンザの影響で、レストランで見る機会が減っていると感じる、久しぶりに食べたフォアグラショーはやはり美味だった、脂肪肝は怖いがこれは残せない(笑)。
 真鯛とアサリを合わせるのも意外だが、旬のアサリの香りが生きている、ほうれん草もいいアクセントになっていた。
 この日の主役はラングドック産と聞くリ・ド・ヴォー、仏産食肉の輸入が今後増えるそうだが楽しみな事、フランス料理向けの精肉は国産も随分良くなっているが、こうした特殊食材は未だ仏産に一日の長があると思う、古屋氏は欧州産食肉を現地で相当数使って来たので扱いに長けている、これも的確な調理によりリ・ド・ヴォーの特徴を生かしていた、添えられたイタリア産緑アスパラと乾燥モリーユの相性・食感もいい。
 デセール2品も春を思わせるもので、各素材を上手く表現している。レフォールティーは面白かった(笑)。

 秋葉氏が「古屋は、この食材(A)は美味しい、この食材(B)も美味しい、それならAにBを合わせれば、美味しくない訳が無いとの考えで料理を作っている」と話していたが、意外にも思う組合せは、経験に裏打ちされた技術で生きている、主役がハッキリしているので、料理に混迷がなく秩序がある。
 私の考え過ぎかも知れないが、前回の料理は「フランスとベルギーで自分が学んだ料理」を、今回は「学んだ自分がこれから作りたい料理」を表現したかったのかなと思った。
 古典派コテコテの大阪「コーイン」の湯浅料理長が、「自分は(古典だけでなく)モダンも作れます」と語っていたが、古典を学べば現代を表現出来る、これは料理に限らず、絵画でも書でも陶芸でも、創作であれば共通する事かも知れない。

 店内は何時の間にか4卓全て埋まった、他店に較べると年齢層が高めな気もするが、一人の男性と目が合い「何処かで会った」と思ったのだが、この人が退店する時に「去年、〇〇〇〇〇〇に居ませんでしたか?」と話しかけられたので思い出した(笑)、東京以外だが其処も古典派料理なので、向かう方向が同じだと、結局行く店も同じになる(笑)。
 古屋料理長とサービス担当の秋葉、石橋両氏、遅くまでありがとうございました、この店ばかり利用すると色々と差し障りが生じるので、「忖度」しないといけないですが、また次に会えるのを楽しみにしています(笑)。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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