最後の晩餐にはまだ早い


乃木坂「TABLE MOTOH(ターブルモトオ)」(2020年6月)

 今年1月に再訪問、ブログ記事にした乃木坂・六本木間に在るフランス料理店「ターブルモトオ」のクスクスが反響を呼び?「此の店へ行ってみたい」と云う食仲間のリクエストに応え、予約してランチタイムに伺う事に、私は3回目の訪問。
 他店同様に緊急事態宣言下は休業していたが、5月の連休後に客数を絞って再開、6月からは従前と変わりなく営業しているが、地下店舗なのでフリの客は少なく、まだ元通りとはいかないようだ。店ヘの目印にしている表通りのピザ店も、いつもの混雑はなく特に外国人客が殆ど居ない。
 そのピザ店の近くに出ている店のランチ案内、以前のセットメニューに加えて‘One plate lunch’なる1,000円の「ルーローハン」まで登場、フレンチビストロと云うより「地域に密着した食堂」を目指しているようだ。
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 割と急な階段を降りて入店、カウンター席に座り菊池料理長に挨拶する、以前サービス担当だった須山氏は他店に移り、後任に墳(つか)本氏が就任した、なかなかサンバな若者と云う印象(笑)。
 あらかじめお願いしていたのは、「ランチスペシャリテのクスクスをメインに、前菜+デザートはおまかせ」と云う我儘な注文で、嫌がらず叶えてくれたのは嬉しい。此の日は急に暑くなり、北アフリカ出自のクスクスにはピッタリの天候になった、云わば「クスクス日和」(笑)。当日の料理は以下のとおり、

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・海のフラン

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・ウェルカムで毎回出る冷茶と、墳本氏が選んでくれた珍しい岩手産のワイン「夏」(デラウェア種)

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・カイザーのバゲットと自家製燻製バター

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・水茄子、イチジク、毛ガニのレムラード サラダ仕立

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・クスクスのスムール

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・仔羊のクスクス

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・蕎麦に山葵、オデンに辛子、クスクスはハリッサ(笑)

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・パイナップルのキャラメリゼ、スパイスのフィナンシェ、砕いた胡桃

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・パンナコッタ、茨城メロンのピュレ

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・エスプレッソと小菓子

 アミューズのフランは店の定番で洋風茶わん蒸しと云う趣、夏でも熱いものを出すのはそれが美味しいとの自信があるからだろう、いい序奏になっている。
 前菜の水茄子、無花果、毛蟹を積んだ皿は、見映えも味のバランスも、ビストロ料理と云うよりガストロ的なお金を取れる料理になっている、菊池氏はムニュ28,000円と云う、私には縁遠い高級店の厨房にも居たので、こうした料理も問題なく作れるし、それを安価な値段で食べられるのは愉快な事だ(笑)。
 メインの仔羊クスクスは、前回記事で書いているので繰り返さないが安定の美味しさ。先日のTVニュースで、黒いカレーで60年続いた神保町「キッチン南海」が閉店になる事を報じていたが、此の店もクスクスがずっと食べられる店であって欲しいと願う、私自身あと60年は生きられないが、本番の「最後の晩餐」には、このクスクスもありかな?と思い始めている、それまで続いて欲しい(笑)。
 そして此の日クスクス以上に良かったのがデザート、私も同行者も甘味好きで、菊池氏は奥様が現役パティシェールな事もあって甘い物好き、いつの間にか白髪親父3人によるスイーツ談議になっていた、店内に居た客には「何、あのオジサン達?」と、相当変に思われたかも知れない(笑)。
 パイナップルを甘く炒めた秀逸なメインの他に、「パンナコッタならお出しできますが?」と云われて当然同意、豪華二皿仕立のデザート三昧になってしまった、菊池chef大盤振る舞いの好意ありがとうございました(笑)。
 オープンキッチン内の菊池氏を見ていると、口より先に手が早く動く、根っからの職人気質な料理人に見える、こう云っては失礼かもしれないが、フレンチ料理人としてエリートコースを歩んだ訳でなく、フランスの有名店で働いて来たのでもない、それでも味わう人間の心に刺さる「旨いもの」を作れる料理人は居る、私はひそかに「雑草キュイジニエ」と呼んでいるが(笑)、その一人ではないかと思っている。
 次は夜のカルトも食べてみたい、そう思わせるものがある。お金をかけた瀟洒なインテリアとか、立ち上がる時には椅子を引いてくれるサービス等、料理以外の非現実的な価値を求める人には向かないかも知れないが、緊急事態宣言後に高級店が何処も苦戦している噂を聞くに連れ、今必要とされるのはこんな「美味しい日常」を提供してくれる店ではないかと考えている。
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 前回には無かったと思う、地下への階段のアプローチに掲げてある黒板、説明の必要ない言葉だが、これを見て貴方の琴線に触れたら、まずランチからでも行ってみる事をお勧めしたい(笑)。
EATPIAの店紹介
 



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赤坂「古屋オーガストロノーム」(2020年6月)

 緊急事態宣言解除後に稲荷町「キエチュード」を利用して、「普通に外食が出来るのは楽しい」とあらためて思った、失くしてから失くしたものの大きさを知ると云うか、安井かずみが作詞した「よろしく哀愁」の中に、「会えない時間が愛育てるのさ」とのフレーズがあるが、それだなと思った(笑)。続いて利用したフランス料理店が、このブログでもお馴染みの赤坂「古屋オーガストロノーム」、去年11月以来になってしまった。
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 店が在るTBS裏の狭い道は「赤坂円通寺通り」と呼ばれ、飲食店が多い事で知られるが、古屋料理長の話しによると、緊急事態宣言中の夜間は誰も歩いてなかったとの事、6月に入ってようやく人が出て来て、普段の赤坂に戻りつつある。店のトレードマークである「f」の大きな文字を見ると気持ちが高まってくる(笑)、洒落たバイクは古屋氏の愛車。
 サービス担当が女性の高野さんに替わり、また厨房内も一人増え二人体制になったと聞いていたので、料理がどう変わるのか楽しみにしていた。
 古屋氏にも挨拶して始まった6月の料理は以下のとおり、

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・グジェール

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・プティポワのスープ

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・穴子、フォワグラ、炒めた新玉葱、リンゴのソテーのミルフィーユ仕立、フォアグラとフォアグラのアイス、ビーツとビーツのワッフル

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・帆立のグリエとリドヴォー、ドイツ産白アスパラ オレンジとソーテルヌのソース

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・自家製パン

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・スズキのポワレ、アスペルジュソバージュ、カレー風味のソース

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・ブレス産仔鳩のロティ

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・一人分にミニキャロットと空豆、ポムドピュレを添えて、タイム風味の赤ワインソース

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・メートレスの高野さんが選んでくれたコート・ド・ローヌ白と、メルローを使ったノンアルコールワイン

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・メロンクリームソーダ(笑)

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・ブランマンジェ、ココナッツとレモングラスのグラス、チュイール

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・ミニャルディーズ
・エスプレッソ

 料理全体の印象は、やはり二人厨房になったのは大きく、特に各料理細部が緻密になり、料理の盛付けやデセール&ミニャルディーズの作り、パンの美味しさにそれが表れていると思った。
 夏でも料理の序曲にスープが出るのは嬉しい、日本人は西洋人に比べ唾液の量が少ないとされるので、和食の椀物と同じく料理の冒頭で口内を潤すのは理に適っている、そして此のスープは上質だ。
 続く前菜は穴子、フォアグラ、炒めた玉葱をミルフィーユ状に重ね仕立てたもの、マルティン・ベラサデキが広めた鰻×フォアグラは脂の相乗で旨いが、それを穴子に応用した料理、ビーツのワッフルがまた泣かせる(笑)。
 帆立、リドヴォー、白アスパラと「白」を組み合せた料理は、素材の良さが光っている、古屋氏が好んで使うドイツ産アスパラは肉厚で味も濃い。
 魚料理は無難な仕上げだが、旬の野生アスパラと状態の良い鱸の旨味に、カレー風味のソースが合う、古屋料理の特徴はこのソース。そう云えば以前「ソースのジョー」と名前が付いた料理人が居たが、それに倣えば「ソースのケン」か(笑)。
 鳩料理は割としっかり目に火入れしたアンティエ(一羽丸ごと調理)で、鳥類はこれが一番旨いと思う。ソースにワインをこれだけ使えば当然一皿の原価が高くなる、それでも古屋氏は「こうあらねばならぬ」みたいな一線は崩したくないようだ。外車に乗るほど儲からないが、自分は単車でもいいから納得できる料理を作り客に還元する、その職人的姿勢には共感したい(笑)。
 デセールも以前より見栄えが良くなりお洒落になった、厨房スタッフは製菓出身者との事で、その効果が出ていると思った。

 高野さんのサービスは優秀だと思う、客に変に馴れ合わず目立たないが客席を観察しながら支配し、文字通りの「支配人」になっている(笑)。訊けば以前は半蔵門の高級レストランに居たとの事、彼女は昼だけで夜は別の男性がサービスを担当するが、飲食サービス人材難の中、働き方改革の面でも、変則的だがこうした人材登用があってもいいのではないかと思った。
 食後、調理を終えた古屋氏と色々話をするが、コロナショックを経ても何とか元気そうだったので安心した、来月には開店5周年を迎える此の店、茶色系料理の好きな我々コアなファンのために、この禍を乗り越え続いて欲しいと願ってしまう。
 あえて難を云えば、料理内容に比べて店内が少々殺風景な事か、ウィルス対策で入口扉は開けたまま、昼間の外光が入って店内が明るいから余計そう思った、トイレインテリアはなかなか良いから、客席ももう少し改善した方がいいと思う。
 ブログを続けている関係で、都内では同じ店ばかり行かないようにはしているが、それでも「あなたが本当に好きな東京のフランス料理店は何処?」と訊かれたら、3店挙げるうちの一つには入れたい店だとあらためて思った。そしてやはり外食は楽しい、一人より同行の士が居れば猶更だ(笑)。


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稲荷町「キエチュード」(2020年5月)

 新型コロナウィルス感染予防のため発令されていた緊急事態宣言、東京都に於いては5月25日に解除されたが、まず行こうと思った店が上野稲荷町のフランス料理「キエチュード」で、地理的に新型コロナウィルス感染の影響を特に受けた店だった。本当に微力でしかないが、利用する事で少しでも応援になればと、此の日食仲間を誘って昼に訪問する事に。
 店の目の前にある下谷神社は、「商売繁盛」「家内安全」にご利益があるとされる千年以上の歴史ある神社、今年の例大祭は中止になってしまったが、社務所も再開したのできっと店を守ってくれる筈だと思う(笑)。
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 エントランス扉には『感染拡大防止の為、最少人数にて営業を行っております。ディナータイムは当面22:00までの営業です。』との掲示がある。換気のために扉は空けたままにしていた。
 12時半の予約時間に入店、テーブル席では1組食事中だった、いつもなら厨房内に3~4人スタッフが居るが、此の日は荒木料理長一人で対応、他のスタッフは自宅待機させているそうだ、一人厨房は大変だろうが、他人の作業が加わっていないピュアな?荒木料理が味わえるのは初めての機会と、個人的には期待する気持ちにもなる、客とは勝手なものだ(笑)。そしてランチメニューではなく、あらかじめ夜の料理をお願いしていたから、提供する方は大変だろうが更に期待は高まる。
 当日の料理は以下のとおり、

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・ホワイトアスパラ ミルク 生ハム

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・Chateau Rives-Blanques Dédicace2018 南仏産、シュナンブラン種

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・仏産フォアグラ 金柑 黒にんにく

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・バゲット

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・仏産仔牛 マッシュルーム 熊本野菜

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・小笠原諸島 尾長鯛 桜エビ いんげん豆

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・ハンガリー産鴨胸肉 グリーンピース かぶ 蕎麦の実

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・ピスタチオ ごま 紫蘇

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・チョコレートタルト ナッツ ラズベリー

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・コーヒー

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・ミニャルディーズ

 全体の印象から書くと、通常のランチメニューが万人向けで瑕疵の無い無難な料理と云う印象だったが、今回は塩使いも強めでムニュ構成も攻めているなと感じた。成程、荒木氏が本来やりたい料理はこれだったのだと理解した。
 まずはムース状にした白アスパラから始まり、黒大蒜の風味を加えたフォアグラは少量ながら印象的。
 続く仔牛料理は此の日特に印象に残った皿で、仔牛のブランケットを作り、それをパートブリックで包み、春巻のように揚げて荒木氏の郷里である熊本産の野菜と合わせると云う手の込んだもの、客の評判もいいそうで、スペシャリテとして残して欲しいと思った。
 尾長鯛は桜海老の風味を加えたのが味のアクセントになっている、俎板みたいな木皿に乗せ、泡のソースを合わせるのが荒木料理の特徴。肉料理の鴨はドミグラスみたいなソースを使い割と無難な料理だったが、火入れも塩の効かせ方も的確だった。
 デセール2品+ミニャルディーズは、酒も飲むが甘い物も好きだと云う荒木氏なので、見映えだけでなく食べて美味しく印象に残るもの、特にピスタチオのアイスがよかった。

 提供する席を絞り、スタッフも最小限にしていたが、それがかえって此の店の実力を表現していると思った。いつもとは違う味の方向性みたいなものを感じたし、料理人の本気度が伝わってくる料理だった。
 子供時代から料理が好きだったと云う荒木氏、熊本出身の若者が料理人を志して大阪の名門調理師学校で学び、フランスで働いた後に世界各地を歩き、調理師学校時代に知り合った製菓出身の東京女性と結婚、特に縁がある訳ではなかった下町の上野稲荷町に自店を開業して5年、経営的には安定していたが、今回のコロナ騒動で経験した事のない混乱を迎えてしまった。当初の予約も全てキャンセルになったそうだが、ようやく此処へ来て復活の兆しが感じられる。
 何より安心したのが、荒木料理長の表情が暗くなかった事。6月からは以前のスタッフが戻り、新規採用者も含めて従来のキエチュードとして再開するそうだ。此の日、常連と思しき年配女性が日常どおりと云う感じで訪れ、カウンター席でランチメニューを食べ帰って行ったが、支えてくれる客が居る限り大丈夫だと思う。
 個人的には、最初から最後まで荒木氏が全て作る料理をまた食べたいと思うが、それは何時か別の機会での楽しみにしたい(笑)。
店のWEBページ 
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六本木「ル・スプートニク」(2020年5月)

 引き籠り生活と地元の飲食店訪問を暫く続けて居たが、或る日食仲間より「『ル・スプートニク』が18日(5月)から営業再開するので、一緒に行きせんか?」と誘われた。
 このブログでも何回か取り上げている、六本木のフランス料理「ル・スプートニク」は、新型コロナウィルス感染拡大により、4月当初より通常営業を中断、以降は「BOX」と称した宅配の梱包料理セット販売のみで縮小営業を続けていた。感染者数減少に伴い緊急宣言解除前だが営業再開を決めたみたいで、「見切り発車」と思う人は居るかも知れないが、業界内では注目店なので追随する店はある筈、無事通常営業が再開出来るよう、店のファンとしては応援したい、誘いを断る理由はないと賛同する。結果18日にリスタート一番乗り客として参上する事になった、18日以降は席数を減らし、昼夜共通の13,000円ムニュのみで暫く続けるとの事。
 私は千代田線の空いている電車に乗って行ったので、車内でも「密」のストレスは無く、乃木坂駅から歩いて到着、店前に着いたら千葉支配人が笑顔で扉を開けてくれる。
 いつもは角卓を置いている入口右側のスペースに円卓を移動、この席に座った。アルザスのピノ・ブランで乾杯して始まった、全14品のムニュを紹介したい、料理・素材名は私がメモから起こしたので、実際と違っているかも知れません、責は筆者にあります。

・アミューズ(ジュンサイ、とろろ芋、トマトジュレ)

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・スイートコーンのシフォンケーキ、ベーコンの香りを加えた燻製ホイップクリーム

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・右:ファーベ(小空豆)のタルト、左:パテ・ド・カンパーニュを載せたパン・ド・カンパーニュ

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・試作を繰り返したと聞く自家製カンパーニュ系パン、バーミキュラ鍋に入れて焼く

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・滋賀県産天然サクラマスのマリネ、フェンネルとディルを加えて

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・緑茄子を敷いた入梅鰯。

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・牛タンとポーチドエッグを仕込んだスフレ、緑アスパラ。

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・長野県天竜川若鮎のフリット、小メロン、胡瓜、トマティーヨ

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・茄子、フォアグラと穴子

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・甘鯛のウロコ焼き、帆立のポワレとムース、グリーンピースとスナップエンドウのソース、帆立出汁のエキュム

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・北海道白糠町「羊まるごと研究所」の酒井氏が育てた仔羊腿肉のロティ、パブリカを加えたソース

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・苺のパンナコッタ(この上に液体窒素で固めたミントが乗る)

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・甘夏と山椒のスフレグラッセ、甘夏のパウダーとソース
    
・ショコラガナッシュ
・カモミールのアンフィ―ジョン

 全品説明すると長くなるので、特に印象に残った料理を挙げていくと、まずスイートコーンのシフォンケーキ、デザートのルセットに沿った作りで、パティスリー勤務経験のある高橋料理長ならでは、狙いも出来もいい、これ店の新しいスペシャリテになると思った
 そして以前唯一此の店で不満だったバゲットが、自家製のカンパーニュ系パンに変わった、これは秀逸な出来でお土産に持って帰りたい位にグレードが上がった。
 サクラマスはこの時期しか味わえないもので、旨味があり臭みの全くない肉質に、酸味を効かせたソースが鮮烈。
 牛タンのスフレは一品目のシフォンケーキと似ていなくもないが、食べてみるとやはり違う存在感あり。続く鮎は奔りもの、緊急事態宣言下でも季節は進み初夏が近づいている。
 茄子とフォアグラは相性いいが、其処に良質な穴子が加わると、三位一体とも云いたい印象的な料理になっていた。
 続く甘鯛と帆立の皿もよかったが、私はこの辺りで胃と食道が満杯になり、仔羊料理の途中で不覚にもギブアップしてしまう(笑)。
 久しぶりのフルメニューだったので、普段ウォーキングだけの人間がいきなりフルマラソンに出場したみたいな無理感があり、もうかつてのように量が食べられなくなったと悟る。ただ「別腹」のデセールは完食(笑)、和歌山出身の若手パティシェール谷本さんが参入して、見た目も味の方向も少し変わって来た印象、これから期待出来そうだと思った。
 料理全体として、以前は「高橋個人商店の料理」と云う印象が強く、chefに調理スタッフやサービスが追いつけない位のスピードと創作性を感じたが、今は他者と協力して完結する「チーム・スプートニク」の料理に変わって来たように感じる。各料理の波の振幅が小さくなり、優れたムニュとして安定していると思った。
 13,000円のランチと聞くと、高いのでは?と思う人は居るかも知れないが、使っている材料、各料理にかけた手間と時間、什器や六本木の家賃を考えたら決して高いとは思わず、世界の有名店レベルのムニュ価格に比べたら、この料理内容を考えれば安価だと思った位。

 調理を終えた高橋氏と話をするが、店内営業中断してからは前述のとおり配送中心の料理提供をする事で、スタッフのモチベーション維持にもなっていたそうだ。料理から全く離れていた料理人も知っているが、この差は再開後に現れて来ると思う。またホテルやバンケットの需要減により、行き場の無くなった食材料の生産者にも協力しないといけないと思ったとも話す。
 今年の7月に開店5周年を迎える此の店、料理人も店も成熟して来たと思う、「いつもの店でいつもの料理を味わえる」のもレストランの魅力だが、「今日はどんな料理に出会える?」との期待と高揚感があるのがル・スプートニクの特徴、これからも前衛と成熟を両立させて行って欲しいと願っている(笑)。
「dressing」の取材記事 
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御茶ノ水「ビストロ・ヌー」(2020年5月)

 緊急事態宣言期間は延長されたが、STAY HOME週間は昨日で一旦終わった筈と勝手に解釈して、御徒町アメ横に珈琲豆を買いに行くが、生鮮食品を売る店は殆どシャッターを閉め、その前に簡易な露店を作りマスクや消毒薬を売っている、いつものアメ横とは違うシュールな光景だった(笑)。
 ついでに何処かで昼飯と思ったが、ラーメンやカレーは地元で営業している店もあるので、急にヨコメシのフレンチ系が食べたくなった、「たしかFBページで、ビストロ・ヌーがランチのみ営業していると書いていた筈」と思い出し電話してみたら、磯貝chefの奥様が営業しているとの返事で向かう事に。いつもなら歩いて行くが、引きこもり生活で足が弱っている(笑)、念のため銀座線に乗り末広町から歩いた。
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 店は遠目で見ると、リアルな緑とフェイクの緑が混ざり、なかなかいい雰囲気の外観になって来た、道路を挟んで目の前にある有名な路麺店が閉店していたのに驚く、これもコロナの影響か?
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 此の日は5月7日だったが、引き続きランチタイムだけの営業、この後12日よりディナー(17:30~20:00)を再開した。
 正午前の入店で奥様に挨拶するが、既に3人が食事中だった、それも一人客ばかりで皆リピーターと思われる人。考える事は同じで、家食や弁当にはもう飽きたのかも知れない(笑)、此の店も一部料理をテイクアウト販売している。
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 メニューは前菜+メインで1,275円(税別)、通常は他に2種類のおまかせコースがあるが、食材調達の関係だろうプリフィクスの選択になる、作り立ての料理が食べられるだけでありがたい(笑)。少し悩んだ末に、前菜盛り合わせに豚バラ肉ソテー、デザートにガトー・ショコラをお願いした。

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・ALSECE Veilleue de Nuit Riesling2016 (グラス920円)
ヒノキ花粉が終わらないので一杯で止めておく(笑)。

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・前菜盛り合わせ(+700円)
 右上から時計回りで:自家製ピクルス、紫キャベツのマリネ、鶏胸肉の冷製、パテ・ド・カンパーニュ、生ハム、チョリソー、キノコマリネ、ラタトゥイユ(真中)。
 どれも店の定番料理なので安心して楽しめ美味しい。特にパテ・ド・カンパーニュはこの価格帯の店では抜き出ていると感じる。始めて此の店へ来たら、まずこれを注文してみたら如何だろう。

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・自家製パン
 製菓専門学校出身でブーランジュリー勤務経験ある奥様製作のパン、料理に合っていて美味しい。

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・豚バラ肉のソテー
 此の店のランチタイム定番料理、塊の豚三枚肉を約6時間低温で加熱調理して、注文の度にスライスして両面を温めソースと付合せを添える、安心できる味と云うか、トンカツとはまた違った豚肉の旨さが味わえる。

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・ガトー・ショコラ(+500円)
 これも定番のデザート、丸型ではなくテリーヌ型で焼いた長方形のケークをスライス、キャラメルのアイスクリームを添えている、ランチタイムは市販業務用のアイスを使う店も多い中、此の店は自家製それも注文の毎にパコジェットを回して作るので、新鮮度抜群で美味しい、反面作動ノイズが気にならないでもないが、旨いものを食べたいなら我慢しましょう(笑)。

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・コーヒー
 メニューの品数は絞っていたが、久しぶりのフランス料理だったので、家での食事とは気分が違うから嬉しい(笑)。私はフランス料理自体も好きだが、同時に料理を提供する店、人間、そして店を目的に集まって来る客が醸し出す雰囲気、フランス語なら「アトモスフェール(atmosphère)」が好きなのだろう、これは家食では望めない事だ。
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 開店9年を過ぎ、来年3月に10周年を迎える此の店、今とてもいい状態になっていると感じる、いい店にはいい客が集まって来るものだ、同じカウンターに座った女性客は、以前にも会った事あり、毎週ランチに来ている人だと思う(笑)。
 同じ「ビストロ」を名乗っても、私が毎年伺っている大阪・玉出「ぽたじぇ」の伝統的料理とは違った新鮮感覚の料理だが、色々なアプローチがあって正解は一つではない筈。
 磯貝家の若き御曹司?にも会えたし、急な訪問だったが行けてよかった。
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 帰りに中央通りに出てみたが、こんな人の少ない秋葉原は初めて見た、いつも角々に立っているメイド姿のお姉さん達も居ない。車も少ないので、信号の無い処でも平気で横断出来る。人で賑わってこその秋葉原なので、早く以前の景色に戻って欲しいものだ。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
人はそれぞれに「見方、感じ方、考え方」が違います。私が美味と思ってもそう思わない人が居て当然です、味覚とはそれだけ不安定で不完全なもの、あくまでも筆者個人の嗜好による感じ方である事を承知の上で読まれてください。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに赤坂、麻布十番等。
混雑電車が苦手で加齢による朝型人間化のため、ランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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