最後の晩餐にはまだ早い


神戸・三宮「ラ・カスエラ」(2020関西食べ続け-2)

 関西二日目の昼は、古くからの友人である料理人が雇われ料理長を務める、神戸三宮の駅直結ビル内にあるスペイン料理店「ラ・カスエラ(La Cazuela)」を、去年に続いて訪れる事に。
 限られた日程の中で行く店を選ぶのは難しいのだが、私の場合はどうしてもフランス料理店がメインになる、若い頃なら昼夜でも行けたが、さすがにこの齢になると厳しくなってきた。夜にフランス料理の日は昼に別ジャンルの料理を選びがちだ、それでも饂飩一杯では寂しいとなると、候補店は限られてくる。其処で去年行って印象の良かった此の店で、軽目に済まそうとの考えだった。此の日は風があり寒い日で、駅から歩かないで行けるのは結果ありがたかった(笑)。 
 約束の時間12時より早めに到着したので、店の入っている商業施設「三ノ宮ミント」内をブラブラ歩き見ていたが、新型コロナの影響だろう、去年より人出が少なく感じる、7階8階にあるレストランエリアも「どの店に入ろうか」と、店定めをしている人は少数、来た人は大体行く店を決めている様子だ。
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 12時になったので入店、岩瀬料理長に挨拶して入口右奥のカウンター席に座った。
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 前回は肉料理迄全部出るフルコースランチだったが、夜を考えて軽めに昼限定の「パエリアランチ」メニューから選ぶつもりでいた。「(パエリアは)3種類あるので選んでください」と云われたので、ランチメニューを見たら目に入ったのが「平日限定!魚介のアロス・カルドッソ(スペイン風雑炊)¥1200+税」の文字、瞬間「これに決めた」と思った(笑)。
 「アロス・カルドッソ(カルドソ)Arroz caldoso」はスペイン・カタルーニャ地方発祥とされる米料理で、バレンシア地方発祥のパエリア(パエージャ)が日本の炊き込みご飯なら、これは雑炊くらい汁気が多い食べ物で寒い日には最適。東京でも提供する店はあるが、スペイン料理店は夜だけ営業が多く、なかなか昼には食べられない。「本日のお米料理」とあるので、毎日提供できるものではなく運が良かった(笑)、これに前菜とデザート(ポストレ)を追加してもらう事に。

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 まずは岩瀬氏自らサービスしてくれた、スペイン・バスク産チャコリ(微発泡白ワイン)「TALAI BERRI」、果実味ある辛口でオリーブオイルを使う料理全般に合いそう。

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 タパス盛合せ(左から:ローストビーフサラダ、トルテージャ、スモークサーモン、田舎風パテ、梨と生ハム)。

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 グリーンピースのスープ(温)

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 ビル地下にも売場がある、神戸「ローゲンマイヤー」のバゲット

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 海老とマッシュルームのアヒージョ

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 アロス・カルドッソ

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 デザート盛合せ(チーズケーキ、クレームブリュレ、カシスソルベ)

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 コーヒー

 前菜はどれも丁寧に作ってある、スペイン本国より塩分は少なめに感じるが、味はふやけていない、トルテージャが特に好みだった、別にスープが出るのも嬉しい。
 アヒージョは去年感心したもの、オリーブオイルだけでなく別の油もブレンドするそうで、日本人に合った味になっていると思う。
 そして期待していたアロス・カルドッソ、魚介のスープにご飯を入れた、あるいは魚介リゾットのスープが多くなったと云う印象だが、質のいい魚出汁がベースになっている。スペインでパエージャは食べたが、これは残念ながら無いので、現地物に近いのかは何とも云えないが、美味しいか否かと訊かれたら、十分美味しいものだった。料理人は高知で働いていたので、魚介の質には敏感だと思う、ベースの魚出汁もいい。
 日本で日本人に食べてもらうのだから、「現地そのまま」のオリジンに拘るより、食べる人を旨いと唸らせる料理を出すのが一番だと思う。
 デザートは無難な盛合せだが、どれも安心して食べられた。去年もそう思ったが、神戸は水がいいので大阪より珈琲が美味しく感じられる。
 
 軽く済ますつもりだったが、雑炊でお腹が膨れ、甘味で満腹感が増し、満足過ぎるランチになってしまった(笑)。商業施設内のスペイン料理店と聞くと、そう過大な期待はしないが、此処は値段も含めお勧めしたい店だと思う、ワインがもっと飲める人なら更に楽しい筈だ。
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 8階から見たJR三宮駅周辺
 食後、折角だから神戸観光をして帰ろうと思ったが、外へ出たら風が強く寒い、小雨も降り出したので駅を一回りしただけで撤退、そうだ此処は「六甲おろし」の本家本元だった、帰りも阪神電車に乗り、その甲子園球場を眺めながら大阪に戻った(笑)。


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入谷「サルデスカ‘Sardexka’」

 外食好きな人なら、皆大抵「次に行きたい店リスト」があると思う、このリストに載せてすぐ実行できる店と、ずっと載せたままと云う店に分かれるが、行けないでいる理由は様々、私の場合、家から遠い店や夜しか営業しない店はどうしても後回しになりがちだ。
 私が約一年間ずっとリスト上位にしていた店をようやく訪問する事が出来た、それが地下鉄日比谷線入谷駅とJR鶯谷駅の中程にある、スペイン・バスク地方の料理を提供する「サルデスカ‘Sardexka’」だった。
 フランス南西部からスペイン北西部に繋がる一帯がバスク地方で、昔から独自の言語と文化を持つ事で知られる、スペイン側バスクを代表する街がビルバオとサン・セバスチャン(バスク語では「ドノスティア」)で、前者が商工業や芸術の中心地なのに対し、後者は「食」で知られる街だ。星付きレストランから街中のバル、会員制の「美食クラブ」迄多種多彩、スペイン版「食い倒れの街」と云える(笑)。
 このサルデスカは東京でバスク料理専門、それも城北地域では私の知る限り、唯一の店ではないかと思う、2016年5月の開業、店主は深田裕氏でWEB情報によると都の西北大学教育学部卒と云う、料理人らしくない?経歴で、スペインと日本のバル数店で働いた後に独立したとある、変わった店名はバスク語でフォークの事。
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 店の場所はJR上野から鶯谷へ向かう途中、上野郵便局の並びで車道に面しているので判り易い。開店時間になって店のドアが開き、中から女性が出て来た、この方が店主の奥様みたいだ、店内は奥に4人掛けのテーブル、あとはカウンターが9席の造り、店奥の壁には店名に因んだ各種フォークが飾られている。
 おまかせの料理は5,500円と8,000円の2種、違いは食材みたいで、あらかじめ後者の方でお願いしていた。バスク産シードルで乾杯、始まった料理は以下のとおり、

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・バスク産ピキージョ(赤ピーマン)、冷製

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・淡路産アジのマリネ、黄色いガスパッチョ、じゅんさい

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・肉羊羹(鴨・豚・黒インゲン豆)、鮑、ういきょうのピクルス、ビーツ

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・トウモロコシのスープ(温製)、白アスパラ、サマートリュフ

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・ホタテとハモンセラーノ、ブラバスソース

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・炙った穴子、雲丹を包んだクレープ?

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・オオモンハタのポワレ、ピルピル、シーアスパラ

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・フランス産仔鳩のグリル、万願寺唐辛子と鳩の内臓のソース

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・ホワイトチョコレートのムース、日向夏のソルベ、ダークチェリー

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・ルイボスティー

 まずはバスクを代表するピキージョでスタート、血を連想するような鮮烈な赤い色は、バスク人の情熱を表す?続く鯵は予想外の一品だが味のまとめ方はいい、じゅんさいを合わせるセンスに非凡なものを感じた。
 肉羊羹は乾いたブーダンノワールと云う印象、これに鮑を合わせるのもチャレンジだが、味は外れていなかった。とうもろこしスープは冷製かと思ったら温かいものだった、この温度が白アスパラとサマートリュフの香りを引き出している。
 スペイン的なハモンと帆立の一品は折り返しで、一旦スタートに戻る印象、ブラバスソースとはバスクではなくカタルーニャ発祥の万能ソースの事。続く穴子は「和」を感じた一品、次の魚料理と共に、日本人料理人ならではの火入れと塩味の頂点の作り方が繊細で絶妙だ。
 そしてこの日最も強く印象に刻んだのが肉料理の鳩、過去鳩料理は国内外で何度も味わってきたが、5指に入れたい見事な火入れ、表面の焦げ具合と身の血の回り方が完璧、更に驚くのは、これを焼き鳥店で使うみたいなグリルで調理する事、手元がよく見えないので「炭ですか?」と確認したらガス火だそうだ、この料理人は火を支配し制圧できている、只者ではないと思った。
 デザートも皿盛りの組合せで、スペインと云うよりフランス的だが美味だった、コーヒーではなくルイボスティーがデフォルトなのも面白い。
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 深田氏は大学在学中、飲食店でのアルバイトをきっかけに料理に興味を持ち、辿り着いたのがバスク地方のバルで提供するピンチョス料理だったと聞く、現地と日本で働いた後、奥様の実家近くに独立開業した。「いい料理人はいい顔をしている」は私の持論だが、その例に漏れず、いい顔、特に料理する時の眼がいい(笑)。
 バスク料理専門店と聞くと、どうしても大阪本町の「アラルデ」と比較したくなるが、アラルデが楷書でキッチリ表現するバスクなら、サルデスカはもう少し柔らかく描く行書や草書のバスクと云う印象。ガストロ料理をバルスタイルで出すのがアラルデ、バル料理をガストロ的にバージョンアップしたのがサルデスカと云うと、なんとなく分かってもらえそう、どちらもいい店です(笑)。
 決定的に違うのが、ワンオペのアラルデに対して奥様がサポートしている事で、存在は大きいと感じた、個体の小さい鳩のジャストな火入れは、営業中でも調理に集中出来る時間が持てるからだと思う。
 マニアックな話になるが深田氏の料理は、サン・セバスチャン旧市街の人気バル「ラ・クチャラ・デ・サン・テルモ」を連想させるものがある、働いていなくても食べに行った事はあるのでは?と思う、次に行った時に訊いてみたい。
 平日夜ながら満席、フリで来た客を断っていた、分かっている人達はいい店は見逃さない。現在は夜だけの営業だが、此の店なら家から近いので、苦手な夜行動も何とか出来そうだ(笑)、また来たい店だ。


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神戸・三宮「ラ・カスエラ」(2019関西食べ続け-2)

 関西二日目の昼は、大阪から西に向かい、神戸三宮まで遠征する事に、目的は古くからの付き合いである友人料理人が働くスペイン料理店を訪れるためだ。
 関西に詳しくない東京人にとって、大阪それも宿泊している南側から神戸へ行くとなると、相当時間がかかるのでは?と思うが1時間で到着、何の事ないこれなら十分通勤圏内で、東京なら「通勤1時間で行けるなら羨ましい」と云われる(笑)。
 店は駅と直結している「ミント神戸」と云う名の商業ビル内で、この日朝から雨が降っていたので助かった。約束の時間より早く着いたので、同じビル内に入っている他店のランチ価格を見たが、東京の商業ビル内の飲食店と殆ど変わらない、この価格で且つ雨の平日昼なのに各店とも結構賑わっている、行き交う人の話し言葉も南大阪とは少し違って聴こえるので、電車で1時間でも違う文化圏に来た気がする。
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 店の名前は「ラ・カスエラ(La Cazuela)」、スペイン語でキャセロール「鍋」の事だ。運営は大阪本社の中央フードサービスで、隣にある和食店と同経営。東京でも同じだが、今こうした商業ビル内の飲食店は、企業でないと参入は無理、保証金も高額だし、人材不足は全国共通だから、個人資本では年中無休営業の運営はまず出来ないと思う。
 店前に着くと、照明を落としてなかなかいい雰囲気、初訪問の客でも「入ってみようかな?」と云う気にさせる(笑)、これが多店舗展開しているグループの上手いノウハウだろう。
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 友人の岩瀬料理長代行?(笑)が迎えてくれ、カウンター奥の席に座る、目の前にはハモンイベリコが鎮座している、店内はカウンターとテーブルで40席位か、BGMはスペイン語によるカンテ。私がスペインを初めて訪れたのはユーロ統合前の1997年で、マドリードのバルにも入ったが、こんな雰囲気の店はあった。スタッフは厨房内が3人、店内サービスも店長以下の3人。
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 これは夜の小皿料理、此の日の料理は友人に任せていたが、本来なら2人前からのランチペアコースを基本に出してくれたみたいだ。

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・タパス盛り合せ
 手前右から:炙りフォアグラ、トルティーヤ、豚肉の田舎風パテ、鳴門金時のサラダ、
 奥:マグロ&アボガドのクロスティーニ、ハモンイベリコ&チョリソ

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・海老とマッシュルームのアヒージョ

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・イニエスタ コラソン・ロコ ティンソ
 ヴィッセル神戸所属、アンドレス・イニエスタ所有のワイナリー産

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・イベリコベジョータのグリエ、彩り野菜

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・海の幸とハモンイベリコのパエリア

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・クレマカタルナ

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・店長からのサービスでペドロ・ヒメネス

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・コーヒー

 実は少し心配していたのだが、岩瀬氏は洋食出身でもスペイン料理店で働いた事はない筈で、大丈夫かな?と思っていたが、食べてみるとこれは立派なスペイン料理だ(笑)。「エル・ブジ」以降のモダン・スパニッシュではなく、バルなどで提供するトラディショナルな料理が中心。
 前菜は少しフランスやイタリアが混ざるが、どれも丁寧に作ってあり美味しい。ハモンイベリコはスペインで何度か食べたが、此の店で使っているのは素性のしっかりしたものだ。
 特に感心したのが次のアヒージョ、他店で食べるとオリーブ油とニンニクの香りが強く、少し食べればいいか?と思うのだが、これは優しい味わいで幾らでもいけそう、訊くとEXヴァージンではなく、ピュアオイル使用で他のオイルも混ぜる時があるそうだ。
 肉料理のイベリコペジョーダは安心の美味しさ、楽しみだったパエリアも日本米を使い、油も塩も抑え気味なので、しっかり最後まで食べられる。
 友人は洋食時代にプリンが得意だったので、それを炙ればクレマカタルナになるから?(笑)、中身は手馴れていて美味しい。そして神戸は水が良いからか、大阪で飲むコーヒーより美味しく感じる。
 全体的に日本それも関西人向けに、油も塩も抑えて優しい味わいにしているが、スペイン人に食べさせても「これは自分の国の料理だ」と云うはずだ(笑)。
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 イニエスタのサインがあるユニホームを店内に飾っている。

 やはり日本人は器用だなと思う、それまでスペイン料理をやっていなくても、頭が柔軟で応用が効くからか、お金を取れる料理になっている。日本人料理人はフランスを中心に世界で評価されているが、こうした特質があるからだろう。友人だからと褒めているのではなく、現に満員の客席が何よりの証明、関西人は料理のクオリティに加え値段にもシビアだ(笑)。岩瀬さん、安田店長、お気遣いありがとうございました、外は雨だったが気分は爽やかな午後になりました。
 神戸に来たのに観光は何もせず、食べ終えたら大阪に帰り夕食へ備える、食べ続けは始まったばかりだ(笑)。


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代々木八幡「アルドアック」(2018年11月)

 ランチ仲間と話していて、「アルドアックヘ行った事がないので、一度行ってみたい」と聞いたのは結構前、「それなら今度ご一緒しましょう」と話しながら、実行出来ないままだったが、ようやく実現する事になった。「その店今度行きましょう」と云ったままになっているのは他の人にもあるが、忘れている訳ではありません、諸事情(主に経済的問題で)により先送りしているだけで、自分では「云うだけ番長」のつもりではない(笑)。

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 店の場所が分かり難いので、千代田線代々木公園駅前のナチュラルローソンで待ち合せ、昭和の雰囲気そのままの青年座前を通り、何度見ても笑ってしまう「春の小川」の壁画が描かれたトンネルを潜ると、アルドアックの入ったビルがある小さな商店街へ出る。
 2階に上ると、踊り場で先客2人組が開店を待っていた、間もなく中から扉が開き、酒井涼氏が顔を出す、この閉じた隠れ家感は夜も昼も同じ、紹介制の店ではないが、同行者が居ないと一人では入り難い雰囲気大。
 前のカップルに続いて入店し、酒井氏が目の前で調理をする砂かぶり席?に座った。私は去年12月以来、昼夜合わせて通算5回目の利用だと思う。
 土日だけ昼営業するが、ランチメニューは3,600円一種、この日の内容は以下のとおりだった。

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・バターナッツ南瓜のスープ、ムールと洋梨、クミンの香り

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・此処へ来たらやはりチャコリ(バスク産微発泡白ワイン)、この日は‘AGERRE’

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・九州産真ハタ、浅利のスープ、サルサベルデ、蕪と万願寺唐辛子

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・何かと話題の「365」のバゲット

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・山形産平牧金華豚のロースト、カタルーニャ風ソーセージ、白いんげん豆、パブリカ、シェリービネガーソース

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・赤はリオハの‘VALENCISO’2011

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・イカ墨のパエージャ

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・アイオリを添えて
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・定番のトルタケソ(バスク風チーズケーキ)、栗のペースト
・カフェソロ

 アルドアックを「スペイン料理」と一言で片づけるのは少し違う気もする。今年2月に同じワンオペスタイルの、大阪・本町「アラルデ」を利用したが、あちらがバスクに特化した料理なら、酒井氏はスペイン各地方料理に加え、フランス料理も取り入れているのでは?と感じる、「スペイン料理の哲学に基づいた酒井料理」と呼ぶべきではと思う。
 一品目はフランス料理店でも使う機会が増えたバターナッツ南瓜のスープ、其処へムール貝と刻んだ洋梨を加えるのが面白く味的にも外していない。
 ハタは繊細な身に浅利の出汁が絡んで、この味を嫌う日本人はまず居ないだろうと思う。続く金華豚はとんかつ店でお馴染みの平田牧場産、これを人数分一度にローストした火入れが抜群、舌に絡みつく様なネットリとした肉質はエロスも感じる(笑)、少し癖のある自家製ソーセージとのコンビもいい。
 イカ墨パエージャは文字どおり鉄板の美味しさ(笑)、隠し味として鰯の出汁を使うそうで、その下品になる一歩手前の風味が効いていると思った。

 スペインとフランスの違いはあるが、酒井氏と御茶ノ水「ビストロ・ヌー」の磯貝料理長は雰囲気が似ている、1980年と1981年なので同年代、二人とも若くしてオーナーシェフになり、特定の師には付かない独学派とも云うべき料理人。酒井氏はサッカー、磯貝氏はバスケットと元スポーツマン、どちらもイケメンで奥さんも美人(酒井氏妻は会っていないが皆の噂)、その結果当然として子供も可愛い(笑)。どんなに忙しくても飄々と料理を作る姿勢も同じ、何時も肩の力が抜けているように見える。若くして全てを手に入れたみたいな二人だが、話していても慢心は感じないので、謙虚さと向上心は、これからも失わないで欲しいと願ってしまう。
 2012年6月に始まったアルドアックだが、今では食通の間に知られる人気店として定着したと思う、私が「今後もこのスタイル(ワンオペ)で続けるのです?」と酒井氏に訊いたら、「店がこの狭さだし、誰かを入れてもあまり意味ないので、当面はこのまま続けるつもり」との応えだった、自分のやりたい事を続けるには、マイロードマイペースが最善で、結果長続きすると云う事かも知れない。
 店の形態はあくまでもバル的でありながら、スペインでは此処まで凝った料理を出すバルは見なかった、入り難さはあるが、興味のある人はまずはランチから行かれてみては如何だろう、但し予約は必須だが。
 次のブログ記事では、アルドアックの帰りに寄ったセレクトショップの事を書くつもりです。

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大阪・本町「アラルデ」(2018関西食べ続け①)

 今年もこの季節がやって来た(笑)、ただ今回はインフルエンザの後遺症によるものか体調万全とは云えず、例年より無理をしない事に決めた、そのため遠出は毎年の紀州参りぐらいで、大阪それも南大阪中心の食べ続けになった事をお断りしておきます。
 
 オーボエ奏者でエッセイストでもある茂木大輔氏の著書で知ったのだが、オーケストラ団員には独特の符牒があり、その中では「コンマス」(コンサートマスターの略)が割と有名だが、他にも「ノリウチ」と云う言葉がある、これはオーケストラが客演等でその土地に「乗り込んで」、同じ日に演奏会を行うつまり「興行を打つ」事を呼ぶそうだ、そうすると移動したその日に外食に行くのは「ノリメシ」と云える(笑)。
 今回のノリメシ、何処へ行こうか悩んだのだが、月曜日なので大阪も東京と同じく休みが多い、「月曜営業をしている店」でWEB上を探してみて、引っかかったのがバスク料理を提供する本町の「アラルデ」だった、以前から行ってみたい店だったし、この日同行する在阪の友人も興味ある店との事だったので、ネット上で予約して伺う事に決めた。

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 店の場所は本町駅西側、地番では阿波座一丁目になる町中の一階角地で、飲食店としてはなかなかいい物件だ。
 料理人は山本嘉嗣氏、奈良県生れで日本料理から料理人歴を開始、その後アルゼンチンを経てスペインバスクの港町オンダリビアで働く、帰国後は大阪本町靭公園近くのバスク料理店「エチョラ」の料理長に就任、2016年2月に同じ本町の南側に独立開業した。店名の「アラルデ(Alarde)」はバスク語で「プライド」の意味で、オンダリビアの祭りにこの名前が付いているそうだ、店内にはその祭りの音楽が流れている。
 店内はカウンター8席の他に個室風なテーブル席も2卓ある、ただ現在は山本氏一人のワンオペ対応なので、全席は埋めていないと思う。
 カウンター席に座り、始まった5,500円の料理は以下のとおり、

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・バスクと云えば、まずは現地の微発泡白ワインのチャコリ、バルで使う平べったいグラスではなく、ワイングラスを使っている。

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・ピンチョス風の前菜(手前は最中皮の中にチーズ、奥左からペドロヒメネス風味のフォアグラのテリーヌ、パートブリックの中にブランタード、溶かしたチーズのスナック)

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・ハモンイベリコ・ベジョータ(上にパン生地で作ったスナック)

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・鯖のマリネ、金柑のコンフィチュール

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・不思議な容器から注ぐ苺風味のガスパチョ、皿中に熟成させた鱸の切身

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・塩ダラのトルティージャ

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・ハチノス(牛胃)と豚足の煮込み

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・兵庫県産豚肉の炭火窯焼き、ピモンデスプレッド、万願寺唐辛子

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・トルタケソ(チーズケーキ)

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・スペイン・リオハ産ハーブティー

 事前にWEB上の店情報はあまり見ておらず、何となくだがスペインのサン=セバスチャン(バスク語ではドノスティア)のバル街で出る、ピンチョス的な料理が続くのかな?と想像したのだが、もっとガストロ的で各皿の量もしっかりあり、「今日は何を食べた」が後になっても思い出せる料理、アセゾネ(味付け)も現地風にしっかり加えていると感じた。フランス料理みたいにソースには凝らず、素材の良さを前面に押し出し、構成要素も少なくして、客に何を食べさせたいのかが明確だと思った。
 特に印象に残ったのはガスパチョ、ベースに日本の赤苺を使いながら甘味を抑え、熟成した鱸の切身と合わせたのは、山本氏のオリジナルとの事だが、意外と云っては失礼ながら、いい相性になっていた、また変わった容器を使ったプレゼンも面白い。
 工務店に特注して作ってもらったと聞く、煉瓦製の炭窯で焼いた豚は脂の旨味が印象的、これで焼く他の肉類例えば熟成赤身牛だったら、どんな味だろうと想像してしまう、これはまた来ないといけない。
 実はこの店の事を、昨年末に東京代々木のスペイン料理「アルドアック」の酒井氏から聞き、彼の店でもデザートに「トルタケソ」を出すので、どう違うか食べるのが楽しみだった、見た目はとてもよく似ている、食べてみるとこちらの方が甘さや味わいが穏やかと感じる、後を引く味の濃さでアルドアック、料理の余韻を消さないまろやかさならアラルデ、そんな印象だ。

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 同行した在阪友人が、「バスクってどんな処?」と訊くので、サン=セバスチャンへ一回だけ行った経験だが、「道を尋ねると、一緒に付いて来てくれる人が居る」と答えたら、すかさず友人は「まるで大阪のオバチャンみたいやな」との事、この瞬間に私は何故大阪でバスク料理店が存在出来るのか、その理由が分かった気がした、「大阪人とバスク人は気質的に似ている、元を辿れば同じ民族か」この新説?を今度何処かで発表したいと思っている(笑)。
 山本料理長は大阪の料理人にしては珍しく、積極的に自分から話すタイプではないが、料理や食材を説明する言葉には、熱い思いが伝わって来る、真摯な姿勢には5年後10年後の、この店への期待を抱かせる。心配なのはワンオペ営業なので、健康&体力面だけだ。
 食べ続け初日は初訪問ながら良い店と出会えた、この後4日間も素晴らしい食体験が出来る吉兆だと思いたい(笑)。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
人はそれぞれに「見方、感じ方、考え方」が違います。私が美味と思ってもそう思わない人が居て当然です、味覚とはそれだけ不安定で不完全なもの、あくまでも筆者個人の嗜好による感じ方である事を承知の上で読まれてください。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに赤坂、麻布十番等。
混雑電車が苦手で加齢による朝型人間化のため、ランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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