最後の晩餐にはまだ早い


2016年「今年印象に残った店」(デザート・スイーツ編)

 料理編に続いて、デザート&スイーツ編を記したい。
 まずは今年最も印象深かった一品からで、東麻布の新店「ローブ」平瀬パティシェール作の、
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・バラ 桃
 今橋料理長の南の風を感じさせる料理も良かったが、このデセールの味構築とビジュアルには感嘆した、フルーツを使って感動するデセールになかなか巡り合えなかったが、20年前のパリ「ランブロワジー」での‘Compote de peche’以来の衝撃。
 秋冬の料理&デセールを体験したいのだが、このまま行けないと春になってしまう(笑)。

 以下は大体訪問順になるが、麻布十番「ビストロ・コティディアン」の定番、
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・ラム酒風味のクレームキャラメル
 「ローブ」とは対照的だが、ビストロデセールは見かけ武骨でも、旨ければそれでいいだろうと思わせる力がある。
 
 パティシェ経験のある料理人、六本木「ル・スプートニク」高橋料理長の、
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・バナナとチョコレートのグラスの中にラムレーズン、ヘーゼルナッツ、キャラメリゼしたバナナ、上からラム酒入りの熱いチョコレート。ベジタブルゼラチンで包んだマンゴーとパッションフルーツ。
 名前が長いが(笑)、ガストロノミーレストランのデセールはこれであって欲しい見本みたいな一品、手をかけその場でなければ味わえず、消えるのが惜しく儚くも美しい。

 チョコレート系ならこれも挙げておきたいのが、外苑前「フロリレージュ」の、
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・贈り物、アマゾンカカオ
 ペルーの料理人から送られてくるアマゾンのカカオを使い、日本の赤紫蘇と合わせるセンスはこの店ならではの発想、地球の裏と表はこれで繋がった(笑)。

 もう一つチョコレート系では、稲荷町「キエチュード」の、
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・栗とホワイトチョコレートのフォンダン、バニラのグラス、ビスケットのクランブル
 モワルーショコラとグラスの組合せは定番だが、ホワイトチョコレートを使いクランブルを添えた組合せの妙が、また食べたい一皿になった。

 ショーフロワ(熱く冷たい)なら挙げたいのが、赤坂「古屋オーガストロノム」の、
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・パッションフルーツのスフレ、グラススペキュロース
 古屋料理長はパティスリー勤務経験もあるので、デセールが安定している、スフレを一人厨房で他の料理を進行しながら作るのは相当面倒だと思うが、そのハンデを感じさない見事な出来。

 これ迄挙げたデセールの乗ったテーブルを引っ繰り返す様な、反則技みたいなのが、大阪上本町「コーイン」の、
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・トリュフのブリュレとアイス
 黒く見えるのは全て黒トリュフで勿論仏産、これは真似したくても出来ない、普通の料理人なら理性が許さない(笑)、他の料理人は真似しない方がいいが、でもまた食べたいと思う「禁断のデセール」(笑)。

 以下はフランス料理店以外で、まず麻布十番「ジャニコロ・ジョウキ」の内野料理長が「ピッツェリア・ロマーナ・ジャニコロ」時代の、
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・苺のスープに溺れた水牛のモッツァレラ
 ビジュアル、味のバランスが抜群、漫画好きな料理長のセンスが溢れている(笑)。来春には新店でも登場すると思う。
 
 自分はやはり日本人だと自覚したのが、大坂高麗橋「桜花」の、
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・ぜんざい 蓮の実 揚げ餅 あんぽ柿団子 くこの実
 外国人に何と云われても甘い小豆餡は美味しい(笑)、これに添えられた一口珈琲のセンスも良かった、自分の最後の晩餐にはブラスの「チョコレートのクーラン」と思っていたが、これもありかも知れない(笑)。

 スイーツ専門店では、表参道「グラッシェル」での新作レセプションで提供された、
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・シャインマスカットのパフェ(試食用サイズ)
 店売りサイズではないが、それが「もっと食べたい」と思わせ、猶更印象深かった、来年の再登場時にはフルサイズに挑戦したい(笑)。

 地元にこんな優秀なパティスリーがあったのかと、今迄知らなかったのを悔やんだのが、竹ノ塚「アトリエ・エデュー」の、
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・マンゴープリン
 フルーツのスイーツは難しいのだが、これは見事に「マンゴーを超えたマンゴー」になっていると思った、これも来年のシーズンに買いに行きたい逸品。

 一年間ブログにお付き合いいただき、ありがとうございました。
 今年4月に長年勤めた職場を辞し、収入のない生活になったので、ブログの継続はもう無理かなと思っていましたが、何とか続けてこられたのも「読んでいる、面白いよ」との励ましの言葉があったからです。
 来年どうなるかの見通しもありませんが、例え近所の一杯650円のラーメンからでも美味しさを感じ取れる感性は保ちたいものです(笑)。
 老いを感じる身には、何かと生き難く棲み難い世の中になりつつあるのを感じますが、来年が皆さんにとって、より良い一年である事をお祈りします。


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2016年「今年印象に残った店」(料理編)

 今年も残り一週間を切り、ブログの更新もあと2回の予定、そのため毎年恒例の「今年印象に残った店」を挙げておきたいと思う、「料理編」と「デザート&スイーツ編」の2回に分けるが、誤解のない様ことわっておきたいのは、私が訪れて此処に挙げなかった店が、料理もデザートも駄目だったと言う訳ではありません、既にガイドブックなりベテラングルメなりに好評価され支持を受けているので、あえて挙げなかった店もあります。
 今年の自分にとって何かしらの強い印象を残し、来年どう変わって行くかの期待を持たせる、「発展途上である」事を感じさせる店とその料理が殆どです。

・赤坂「古屋オーガストロノム」
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 「今年の発見」はこの店に尽きる。「黄金の1990年代」を想起させる、古典料理へのリスペクトを感じさせながら、そこへ料理人の現代的感覚をプラスしている、しっかりとした技術と料理の構築と余韻、フランス料理好きな友人に勧めても概ね好評だった。これから有名店にありがちな国籍不明系な方向に進まず、このままで居て欲しいと願うのは勝手な思い込みか、今一番訪れるのが楽しみな店だ。
 料理はスペシャリテの「松坂産地卵を66度40分で"温度卵"に、現代版ウッフ・ア・ラムーレット、フランス産黒トリュフ添え」

・神楽坂「ビズ‘bisous’」
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 新規訪問でもう一店挙げておきたいのがこの店。一度会ったら忘れない濃い顔(笑)、モヒカン頭に大きな声の若い料理人は、見かけとは違い繊細で遊び心のある料理を作る、4,950円のディナーメニューは都内有数のキャリテプリではないか?国産ワイン提供に力を入れ、あまり教えたくないが、来年は更に人気が出そうな店。
 料理は「スペイン産イベリコ豚肩ロースの低温ロースト」

・外苑前「フロリレージュ」
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 今更私が何か云うべきレベルの店ではないが(笑)、川手料理長の視線は今世界へ向いている、追い付けない差で先頭を独走するマラソンランナーみたいだが、誰かに「今、東京で行くべき店は?」と訊かれたら、迷わず即答でこの店の名前を挙げるだろう。
 料理は6月訪問時の「花ズッキーニと仔猪」

・六本木「ル・スプートニク」
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 昨年開業して瞬く間に人気集中、今回一年ぶりの訪問だったが、ムニュ構成が開店当時から進化し、見事な展開を感じさせてくれた、外国人客も多く来店し、高橋料理長と田村支配人の見事な操縦で、魔界六本木を周回する輝く衛星になった(笑)。
 料理は「北海道白糠町酒井さんが育てた仔羊のロティ、そのジュ、ロックフォールソース、35年物のローズマリー風味、ローズマリーの枝」

・西麻布「ル・セヴェロ・ジャポン」
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 レストランでは同席するメンバーによって、楽しさが2倍3倍になると云う実例を体験した(笑)。勿論料理も良かった、ステーキ以上に感心したのが、パリ本店の作り方で作ったと云うパテ・ド・カンパーニュ、フランス人が日本のフランス料理を食べ、おそらく「足りない」と思う部分を再現している、俗な例えだが「美女の腋臭」みたいな、日本なら削いでしまうもの(笑)。
 料理はその「パテ・ド・カンパーニュ パリ本店のレシピ 厚切りお肉のテリーヌ」

・大阪上本町「コーイン」
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 私のブログを読んだ東京の或る料理人が、「この店だけは行ってみたい」と唸っていた(笑)。フェルナン・ポワンは「美味しさはスピードだ」と云ったそうだが、この店の料理には「美味しさは物量だ」と感じる(笑)、これだけ物量を投入してもバランスの取れた料理にするのが、料理人の特異な才能。
 料理は「ブッフブルギニョン」(こんなブッフブルギニョン、他であり得ない(笑))

・和歌山「オテル・ド・ヨシノ」
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 料理長は今年、農水省料理人顕彰制度「料理マスターズ」ブロンズ賞を受賞、今国内でも最も「来ている」料理人だと思う。彼のスペシャリテであるこの料理が出て来たら、水戸黄門が葵紋の印籠を出すみたいなもので、平民はただ平伏すしかない(笑)。
 料理はその「ジビエのトゥルト」

・札幌「プロヴァンサル・キムラ」
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 東京以外でもう一店挙げておきたいのは、この店のこの一品。太宰治の「斜陽」は「朝、食堂でスウプを一さじ、すっと吸ってお母さまが、『あ』と幽かすかな叫び声をお挙げになった。」で始まるが、私はこれを吸って「あ~」と唸りたくなった(笑)。これを食べる(「飲む」ではない)ためだけに、往復の飛行機代払って惜しくない、そう思わせる一品料理に最近あまり出会えなくなったが、久しぶりにそう思った。
 料理は「スープ・ド・ポワソン、ルイユとグリュエールチーズ」

 フランス料理ばかりになったので、イタリア料理を2店挙げておきたい、
・中野新橋「タクティー」
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 新鮮鎌倉野菜と鎌倉沖で採れた魚介が味わえる、意外な場所と云っては失礼だが、庶民的な街にある地域密着型のイタリア料理店、残念ながら来年4月で閉店予定との事だが、もっと客が来て盛り上がれば、もしかしたら延期があるかも知れない?
 料理は「8月・鎌倉野菜のサラダ」

・麻布十番「ジャニコロ・ジョウキ」
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 今年8月にオープンしたばかり、来年への期待を含めて選んだ。独学派の若い料理人の発想はユニーク、前店のピッツェリア時代に比べると料理にはまだ固さも感じたが、これから良くなって行く事は間違いないと思う。
 料理は「氷室豚の炭火焼きとほうれん草」

 料理に関しては、今年はモダン系より古典、料理人も1980年代生れの若い才能より、その前世代の料理に惹かれる事が多かった、私自身古典回帰しているのかも知れない(笑)。
 次回は「デザート&スイーツ編」を記事にします。


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2015年「今年印象に残った店」(デザート・スイーツ編)

 料理編に続いて、デザート&スイーツ編の「今年印象に残った店」を紹介、料理編と重なる店もあります。
 まずは、六本木「ル・スプートニク」の高橋料理長が、代官山「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」時代の、
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・苺とハイビスカス ヨーグルト
 味だけでなくビジュアルも美しいデセール、新店でのデセールはまだ大人しく感じたが、これからに期待したいと思う。

 続いて外苑前「フロリレージュ」の、
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・旬 チョコレート
 これは旧店舗時代の名作「青山の土」の新バージョン、この店も移転当初デセールは地味目だったが、ようやく旧店舗時代に近付いてきた印象を持った。

 料理もデザートも両方いい店は意外と少ないものだが、その一つ麻布十番の「ビストロ・コティディアン」から、定番ながら王道の、
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・チョコレートのテリーヌ

 チョコレート系が続くが、ドルチェも作る若い料理長のセンスが光る、同じく麻布十番「ピッツェリア・ロマーナ・ジャニコロ」の、
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・生チョコレートのタルトとビーツのヴァリエーション
 このビーツの使い方は、見た目も味も鮮烈だった。

 同じく1980年代生れの若手料理長がいる、新橋「スブリム」の、
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・ショコラ ヨーグルト ベリー
 独特な質感のプレートも含めて、A・タピエスの抽象画を思わせる様なビジュアルが印象的だった。

 東京以外では、新パティシェールに交替した和歌山「オテル・ド・ヨシノ」の、
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・四角いプラリネ、トンカフェのアイスクリーム

 薪による熾火調理の本流本家、神戸・元町「bb9」の、
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・薫香のアイスクリーム

 札幌ススキノ繁華街真中にある雑居ビル内ながら、本格的フランス料理を提供する「サヴール」の、
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・バトン・ド・ショコラ“フランボワーズ”

 行ったばかりで、まだブログにはUPしていないが、御茶ノ水(秋葉原)「ビストロ・ヌー」の、
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・ミックスベリーのタルトとバニラアイス
 間違えて発注してしまったらしい、タヒチ産の高級ヴァニラを使ったアイスは、今年一番の出来だった(笑)。

 レストランデザートは以上だが、今年は街場のパティスリーにも収穫があった、まず私の地元下町足立区に、これ程本格的なパティスリーが出来たのは驚きと思えたのが、梅島「ラヴィアン・レーヴ」の、
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・和栗のモンブラン

 勤め先近くに9月にオープンしたのは、春日「アヴランシュ・ゲネー」の、
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・モンドール
 この2店は共に秀逸だった、日本の材料でもこれだけ本格的なガトー類が作れる時代になったのかと、感慨深かった。
 そして最後になるが、このおかげでXmasが例年になく豪華になった(笑)、表参道「グラッシェル」のアントルメグラッセ、
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・「クープ・ドゥ・クール」

 今年一年間、このブログをお読みいただき、ありがとうございました。
 前記事でも触れたが、今年の東京はレストランの新規開店ラッシュだった、その一方で年内に閉店してしまった店も数多く、これを「世代交代」と云っていいのかどうか。
 レストランへ行く総人口は増えていない様に感じている、総数が一定の客を取り合うので、満席が続く店があったとしても、それは別の店から移って来た客でしかない。
 職場の若い人達と話しても、彼・彼女達は外食にお金を使わないなと感じている、「将来が不安だから貯金している」と答える彼等に、レストランの面白さ、こうした場所で大人の振る舞いが出来る楽しさを、もっと伝えるのが我々老境グルメ?の役割ではないかとも考えている(笑)。
 来年は飲食業種全体が、もっと元気になれる年であって欲しいものだ。
 皆様にとっても、来たる新年が希望の持てる一年である事を願っています、どうぞ良い年をお迎えください。

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2015年「今年印象に残った店」(料理編)

 今年も残りはあと一週間になった、ブログ更新も2回の予定なので、毎年恒例の「今年印象に残った店」を、自分の忘備録の意味でも残しておきたいと思う、昨年同様に「料理編」と「デザート・スイーツ編」の2回に分けたい。
 断っておきたいのは、あくまでも私の主観による「印象が強かった店」なので、今年行って選ばなかった店が「美味しくなかった」と云う訳ではありません、食ガイドのランキングや格付けとは全く意味が違うので、それを汲んで読んで欲しいと思う。
まずは料理編からで、

・外苑前「フロリレージュ」
 今年の東京フランス料理界で一番の事件は、フロリレージュの移転(3月)だったのではと思っている。ただ店が動いただけでなく、コンセプトが大幅に変わった、新店へ行っていない人には、「とにかく一度行ってみてください」としか言えないのだが、賛否両論ある事は承知の上で、これからの東京レストラン界を牽引する店である事は間違いないと思う。

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 料理は新店訪問一回目の「分かち合う 緑苺 (北海道産仔羊)」

・六本木「ル・スプートニク」
 今年、東京フレンチは新店ラッシュだったが、その中から一店選ぶとなると、やはりこの店だろう、前「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」料理長だった高橋雄二郎氏が、7月に開業した店。感性豊かな料理&デセールに定評ある料理長が提供する料理と、女性支配人田村さんの細やかなサービスが印象的、これから更に進化して行く店だと思う。

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 料理は3回目訪問時の「スコットランド産グルーズ(雷鳥)のロティとカイエット、内臓のソース」

・大阪上本町「コーイン」
 「私の大阪」ならこの店。誰にでも薦められる店ではない、ある意味「終末道場」みたいな、フランス料理を食べ尽くした人間が、最後に辿り着く店だと言える。高原価な食材と自ら作った野菜を、「これでどうだ」と料理に物量投入する孤高の料理人には、狂気と背中合わせの「醒めた理性」を感じて、毎回寒気を覚えてしまう(笑)。

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 料理は2月訪問時の「高知産雌鹿のロワイヤル、畑のジャガイモのピュレ」
「今年の一皿」は、これか前述の雷鳥かで甲乙付け難い。

・麻布十番「グリグリ」
 仏政府が提唱した「グー・ド・フランス」の日の特別メニューは、1990年代テイストでこの店へのイメージを変える料理だった、「フランスのフランス料理が、本当に美味しかった時代」を思い出させてくれた、この料理なら何度でも食べたい(笑)。そう云いながら、その後今年は行けなかったので、伊藤料理長すいません(笑)。

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 画像は「オランダ産リ・ド・ヴォーのフリカッセ、モリユとアスパラガス、焦がした粉のニョッキ、シャルトリューズ風味」

・札幌「プロヴァンサル・キムラ」
 今年もやはり札幌はキムラで決まりか(笑)。職人気質な料理長とそのまま「PARISのマダム」の絶妙コンビは健在でした、夫婦漫才同様に夫妻二人で営むフランス料理店は減少しているが、札幌では佳店がまだ幾つかある、「我家に招かれたみたいな」店へ行きたいのなら、迷わず札幌へ行くべき(笑)。

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 料理はこれが本場物の「ボーヤファーム産仔羊のキャレとタン、旭川野菜」

・池袋「シュヴァル・ド・ヒョータン」
・曙橋「ジュー・ドゥ・マルシェ」
 「女性活躍推進法」の意義はよく判らないが、女性料理人ならようやくこの業界に本格的な進出が始まったと思う、今年訪れた女性料理長の店は、共に非凡な才能を感じさせてくれた、来年は彼女達に続く人材が出現するのを期待したい。

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 前者からは「オーストラリア産仔羊芯のロースト、オッソイライティチーズ風味」

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 後者は「北海ホタテとシモタ農芸野菜のミルフィーユ、ハーブの香り」

 1980年代生れと云う、激若な料理人達が登場して来たのも今年の特徴、私が行った中で挙げておきたいのは、

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・稲荷町「キエチュード」の「アスパラガス サラダ フヌイユ」

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・麻布十番「ピッツェリア・ロマーナ・ジャニコロ」の「アナゴの白焼、スモモと水ナスのサラダ、オレガノ、バルサミコ」

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・新橋「スブリム」の「発酵マッシュルーム 卵」

 行きたかったが叶わなかった、名古屋「レミニセンス」の料理長は何と1985年生れとか、恐ろしい時代になって来た(笑)。

 フレンチ、イタリアン以外で特に印象に残った店では、

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・東上野「ハリマ・ケバブ・ビリヤニ」の「柔らかラムビリアニ」

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・大阪・長居「又三郎」の「熟成肉のカツレツ」

 この2店を挙げておきたい、前者は驚異的なキャリテ・プリで、後者は熟成肉提供のパイオニアとして、遠回りしてでも訪れたい店だと思った。

 デザート&スイーツは次回に。



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西尾益吉と「燕楽軒」

 TBS系列で放映中の「天皇の料理番」は、宮中で50年以上に渡って主厨長を務めた秋山徳蔵の若き日をモデルにしているが、とても面白く久しぶりに次回放映が待ち遠しいTVドラマだ。俳優陣もいいがスタッフ、資金、時間を十分に使った企画であり、料理と同じで人を感動させるものを作るには、それなりの手間とお金が必要だと云う事を、改めて認識させてくれた(笑)。
 このドラマで興味を持ち、秋山徳蔵の事を調べていて、明治期の日本人料理人達の名前を知った、その中で秋山以上に興味を惹かれる人物が居たので、今回はその話を書く事にしたい。

 料理人の名前は西尾益吉、「築地精養軒」の第四代料理長で、残念ながらドラマには登場しないが、実在の秋山徳蔵が渡仏前に精養軒で彼の下で働き、フランスでの厨房経験ある西尾が、料理長として大きな存在感を示し、流暢な仏語でメニューを記しているのに憧れ、秋山自身もフランス行を決意したと伝えられる。
 西尾が料理長だった築地精養軒は、外国からの要人接待の場として、明治5年に日本初の本格的な西洋料理店として開業する、現存する「上野精養軒」は、明治9年に開業した支店だ。初代料理長はスイス人のカール・ヘスで、西尾はこのヘスの下で学び、その後精養軒の出費で単身渡仏、ホテル・リッツで「近代フランス料理の父」とされる、オーギュスト・エスコフィエに師事している。この「師事」がどの程度のものであったか不明だが、同じ職場で働き、エスコフィエの厨房指揮ぶりを見たのは事実みたいだ。私が調べた限りでは、日本人が本場フランスで料理人として働いたのは、この西尾が最初ではないかと思う。
 築地精養軒は1909(明治42)年に旧建物を改築、ホテルを併設した3階建ての堂々たる建物になった、秋山徳蔵がフランスに渡ったのが同年なので、西尾の下で働いていたのは旧建物時代だと思う。

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・改築前の精養軒

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・3階建32室の新館
 この新館は1923(大正12)年の関東大震災により焼失、以後再建される事なく、精養軒本社は上野に移る事になる。

 エスコフィエ流の最新フランス料理を持ち帰った西尾の料理長時代、築地精養軒は日本を代表するフランス料理店として全盛期を迎え、政財界や文壇の名士達が集う場所になる。彼の下からは秋山徳蔵を始め、多くの弟子達が育った。
 やがて西尾は精養軒の取締役兼支配人にまで上り詰め、役員として経営側に回る事になる、料理人の地位が低かった当時としては異例の出世だ。しかしここから彼の人生に転機が訪れる、職人気質の西尾は、当時の精養軒幹部達の放埓経営ぶりを知り、義憤を覚え彼等と対立、社長を含む経営陣を追放する事を企てるが、結果抗争に敗れて自身が精養軒を去る事になる。
 このエピソードは西尾側からの見方で、精養軒側からの反論資料は無い、当然精養軒の歴史でも触れられていないので、どこまで真実なのか、今となっては確認出来ないが、帝国ホテルを退社し自店を開業するつもりながら叶わなかった村上信夫や、役員待遇の地位にありながら、後進のため自ら志摩観光ホテルを去った高橋忠之両氏とは、時代が違うとは言え、相当違った身の処し方だ。

 その後西尾は一時海軍省食堂の料理長を務め、1918(大正7)年にフランス料理店「燕楽軒」を開業する。場所は文京区(当時は本郷区)の本郷三丁目、この近くには中央公論社があった事から芥川龍之介、菊池寛、久米正雄と云った文豪達が来店し盛況だったと伝えられる、そして実際には一ヶ月にも満たないが、近くにあった菊富士ホテルに居た宇野千代が、この店で女性給仕として働いていた、こうして名前を並べただけで眩暈がしそうな役者が揃った、何とも凄い店だ(笑)。
 燕楽軒があった場所は、私の勤め先から近いので、この記事を書くにあたって訪ねてみた。本郷三丁目交差点を東大赤門に向かってすぐ左側、菊坂通りと接する角地で、現在はビルが建っている、一階はパチンコ店だったが、建物耐震補強のため閉鎖されていた。燕楽軒跡地だった事を示すプレートがあったらしいが、現在は撤去され当時を偲ぶ物は何もない。

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 中央公論社は「燕楽軒の前にあった」と書いている記事があるが、調べてみると実際は交差点の斜め向こう側、和菓子店の「三原堂」の裏手あたりだったそうだ。

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 WEB上で当時の燕楽軒の建物外観の画像を見付ける事が出来た、隣にある「明月堂」は明治25年創業のパン屋で、つい最近(去年?)まで営業していた、その店舗と較べると、燕楽軒の建物の立派さが判る。

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 西尾益吉の生年は1875年頃で没年も昭和の初め頃としか判っていない、肖像も探したが見つからなかった。燕楽軒自体は西尾の死後も続いていたが、戦災により建物は消失し、戦後の再建はなかった。
 西尾と彼の店は、「記録より人々の記憶に残る」料理人と店だった、こうした潔い本物の職人気質の料理人が居た事を知り、明治人の気概に憧れている(笑)。
(精養軒と燕楽軒の画像はWEB上から引用しました)


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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