最後の晩餐にはまだ早い


大阪・阿倍野「たちじゅう園」(2018関西食べ続け⑥)

 関西食べ続け4日目、夜はまた重量級の一戦になりそうで(笑)、昼はあまり重くないものにしようと思った。
 事前に大阪在住の食友人へ「今回の遠征はあまり遠出しないつもり」と知らせていたら、「此処へ行ってみたら如何?」と教えてくれたのが、天王寺駅南側にあたる阿倍野の「たちじゅう園」。そう云われれば私も旅行前に「宿泊先近くのランチ処」を検索していた時に、WEB上で見て「面白そう」と思った店だ、日本でも此処だけになるらしい、太刀魚料理の専門店との事。
 食事代以外は倹約旅行を心掛けているので、交通費使わずに歩いて行ける場所は嬉しい(笑)、WEB上では席待ち行列する事もあると書いてあったが、行って無理だったら他を探そうと、とにかく店まで行く事にした。

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 店の場所は、天王寺駅とあべのハルカスに沿った広い道を、「あべのキューズモール」を右手に見ながら南に進み、阪神高速道路の高架下で左折、直進すると道が二又に別れるが左側の道沿いに在る。そのまま進むと「料理界の東大」とも呼ばれる名門調理師学校がある、私は2012年2月にこの学校を見学させてもらった事があり(入学のためではない(笑))、周辺に記憶はあったが、店は2012年3月開業なので、その時はまだなかった。
 開店は11時半からと調べていたが、11時15分位に店前に着いたら既に行列、それも大阪のオバチャン達なので一瞬ひるんだ(笑)、でも数えたら10人以内で一巡目に入れそうなので、このまま待つ事にした。店から若い女性店員が出て来て、人数と注文を訊いている、開店時間前から準備するみたいだ。昼は「たちじゅう」(税込1,350円)か「たちまぶし」(1,500円)のいずれかで、違いは「お出汁」が付くか否か、後者はだし茶漬けとしても食べられるとの事、だし茶漬けは一昨日「桜花」で秀逸なものを経験済みなので、基本の「たちじゅう」でお願いする事に。なお店名は「たちじゅうえん」ではなく、「たちじゅう その」と読むそうだ、店主の名前だと聞く。

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 入口にはアルバイト募集の張り紙が、此処でも人材難みたいだ、時給970円は東京より少し安いと思うが、2種類あり片方に「辻調生 女性 かけもちOK」とあるのが具体的(笑)。

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 お品書きには他に「かばなま」と「たち中華」が書いてあるが、誰も頼んでおらず詳細は不明(笑)。
 11時半の開店時間になり、順番で店内に案内され、一人客なのでカウンター席角に座る、厨房内の煙が客席に回らない様、透明アクリル板で仕切ってあった。厨房内は主人と思しき男性一人が太刀魚を焼いていて、店内は若い女性二人が対応している。20席に満たない店内にオバチャン達の大阪言葉が飛び交い、大阪はこうした気取らない店が一番似合うなと思う(笑)。

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 まずはお茶と突き出し的なサラダ?が出て来た、野菜の上に太刀魚の中骨を揚げたものが乗っている、何気ないものだが面白い食味だった。

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 昨夜のカレーうどん程は待たずに運ばれて来たのが「たちじゅう」、太刀魚の重箱だからそう呼ぶ。

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 蓋を開けた処、見かけは「うな重」の蒲焼だ、まずは端から少量を食べてみる、身は鰻同様にふっくらして柔らかさあり、蒲焼ダレと味も似ているので、知らない人に黙って食べさせ、「これうな重だよ」と云っても通じるのでは?さらに食べ続けていると、太刀魚の方は味が薄いと云うかあっさりしていると感じる、鰻の身は特有の風味があるが、あれが感じられない位で、人によってはこちらの方が好きだと云う人は居る筈、太刀魚の名前どおり日本刀の刀身みたいな姿だが、蒲焼に合うとは知らなかった、ご飯の質もいい。

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 赤だし椀、最近あまり出会わなくなったが、久し振りに渋味の感じられる旨いものだった、しっかり出汁を取り、ちゃんとした八丁味噌を使っていると思う。

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 太刀魚はあっさりしているだけに味が単調になり易い、そのため途中で加えるのが練り七味、内訳は不明だが、唐辛子、山椒、柚木等を混ぜ合わせていると思う、ラーメンに加える胡椒や酢みたいに、味が変化するので飽きさせない。

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 この練り七味は販売もしている、「あの二人」とはどの二人だろう?(笑)。
 初体験の太刀魚重、予想以上に美味しかった、今は東京のまともな鰻店でうな重を注文したら、ランクにもよるが3,000~5,000円はする、それ考えれば1,350円はお得だし満足感もある、天王寺辺りに宿泊する時はまた来てみたいと思った。
 鰻が高騰する現在、他店で取り入れても良さそうだが、太刀魚を一年安定して確保するのが難しいのかも知れない、此の店では和歌山港から仕入れていると聞く。

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 食後、気分良くお茶を飲んでいて、何気なくスマホを見たらFacebookメッセージがあり、「寄ってくださいよ」とあった、あて先は近くの料理界東大の、それも「レジェンド」とも呼べる方からで、思わずお茶を噴きそうになった(笑)。
 私がこの店に居る事は、早速UPしたFBのチェックインで知ったらしく、これは訪問しない訳にはいかず、そのまま東大へ向かう事に、続きは次の記事で(笑)。


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大阪・高麗橋 「桜花」(2018関西食べ続け②)

 今回の食べ続けは天候にも恵まれて、五日間一度も雨に会う事なく、また東京に較べて暖かかったので有難かった、帰りに成田空港に降り、第3ターミナルからの連絡通路を歩いていたら、思わず「寒い」と呟いてしまった(笑)。
 関西二日目は、高麗橋「桜花」のランチへ伺う事にした、過去数年は夜に訪れていた和食店だが、今年は諸事情により初めて昼食を体験する事に。店はビジネス街にあるので、近隣のサラリーマン&OLさん向けに週4日だけランチ営業をしている、高級和食店ではランチを開けない店が多いが、此の店はWEBページにあるように、「日本料理の粋はそのままに、敷居の高さを感じずに、和やかに楽しんで頂ける粋な時間を知って欲しい」との、店主の考えによるものみたいだ。
 昼は「だし茶漬け」一種との事で、昨日の夜も今日の夜も重量級の料理なので、高齢者の領域になった私にはかえって嬉しい(笑)。

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 店前の緑も夜とは違う雰囲気、考えてみればこのエントランスを使えるのは贅沢な事だ、銀座の鳩居堂前より安いとはいえ、此処は中之島も近い一等地、一平方の地価は幾らだろう?と、つい下世話な事を考えてしまう(笑)。

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 ランチ内容の紹介が分かりやすい。

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 店主の森田氏に一年ぶりの挨拶をして、カウンター席に座らせてもらう、ガラスの急須に入ったお茶は、その都度お替りをお願いしなくて済むので、客も気兼ねなく過ごせる、ランチタイムにはいいやり方だと思う。

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 昼のせいか雰囲気がいつもと違うと思っていたら、去年とは内装を変えていた、カウンターを椹(サワラ)の白木板に、また黒白2色のPタイルだった床をカーペット敷きにした事により雰囲気が落ち着き、より日本料理店らしくなった。思わず森田氏に「お金かかったでしょう?」と訊いてしまったが、以前から替えたいと思っていたので、儲かったからではないみたいだ(笑)。
 前述のとおり、昼席はだし茶漬けだが、遠来の私のために追加で前菜を出す事は出来ますが如何ですか?との事で、喜んでお願いした。ただこの日は比較的空いていたから可能だったので、頼めば出来ると云うものではないです。

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 雛祭りを思わせる、雅な器に盛り込んだ前菜、右:赤貝、葱、中:ホタルイカ、大和まな(青菜)、ぬた、左:キビナゴの手毬寿司、手前:玉子焼き、どれも見かけどおりに繊細で雅な味でした。

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 「だし茶漬け」一式、通常はこれに温度玉子が加わり税込950円で提供している。

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 刺身は鯛と鯵、上にかかった加減醤油が独特で、茶漬けに合わせた店主オリジナルとの事、不思議な風味があるので内容を訊いたら、「そんなものを使うのだ」と驚く珍しい物を加えている、企業秘密になるから此処には書かないが、味覚に自身のある人は店へ行って食べて当ててみて下さい(笑)。

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 奥は日替わりの「おかず」と称している、鰆のから揚げみぞれ餡、中が梅干と漬物で、手前が大阪能勢町の原田ふぁーむ作の有機米。今は何処へ行ってもクローンみたいに同質のコシヒカリばかりになったが、このご飯はサラっとしていながら香りもあり、茶漬けに最適だと思った。

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 温度玉子に替えて無理を云って作ってもらった「だし巻き玉子」、東京では甘い玉子焼きが殆どなので、正調関西風のものが食べたいとお願いしたのだが、お手数かけました、とても美味しかったです。

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 東京にも「だし茶漬け」専門のチェーン店があるが、ハッキリ言ってこんな繊細な味ではない、桜花のだし茶漬けは上質な昆布出汁を長年使ってきた関西ならではの、はんなり優しくて後を引く味だった、これ950円で食べられるのなら毎週でも来たいと思ってしまう(笑)。
 同じ高麗橋にある超高級高額和食店も、先代が開業当時「鯛茶漬け」で有名になったと聞く、こうしたものは大阪の和食の歴史が育んだ一つの文化だなと思った。
 今まで夜だけ行っていた店も、昼行くと別の顔を見る事が出来ると思った、食事中に女将さんも到着、一年ぶりに会えたのは嬉しかった(笑)。
 森田料理長に女将さん、お気遣いありがとうございました、この次はまた夜に伺います。


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札幌・ススキノ「町のすし屋四季花まる すすきの店」(2017札幌食べ続け②)

 札幌二日目は昨夜の雨が嘘のような晴天、旅行前の東京は雨続きだったので、青空を見るのは久しぶりだ(笑)、札幌の秋空は抜けるように青い。
 この日の夜もフランス料理だが、昼の予定はノープランだった。まずはホテルから歩いて行ける狸小路へ行き靴を買う事に(笑)、昨日雨の中を歩いていたら、靴の中に水が浸みてきた、旅行中歩くだろうと履き慣れた古い靴で来たのがいけなかった。靴店は3ヵ所あり一応全部行ってみたが、結局最初に行った地元の店へ戻ってセール品を買う事に、結構時間が経ってしまった。
 これからの移動は混雑する正午過ぎになるので、近くで適当な店は無いかと探す、こうした時にスマホは便利だ。検索した中にチェーン展開する寿司店を見つけ、「そうだ、札幌へ来たから、寿司も食べておこう」と思う、1店は東京資本、もう1店は北海道資本なので当然後者に決める、狸小路からすぐの場所だ。

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 店の名前は「町のすし屋四季花まる すすきの店」、すすきのメインストリートに面した外資系大型ホテルと同一の建物内にある。運営は道内根室市出自の㈱はなまるで、回転寿司店からスタートし、その後「回転しない」寿司店も展開、東京にも進出し現在では全15店を抱えるグループチェーン、今回は回らない方の店だ(笑)。
 開店時間の11時直後、カウンター席に案内される、目の前には普通の寿司店みたいにガラスのネタケースがあり職人が立っている。注文でお願いしようかと思ったが、サービス担当の女性からランチのセットメニューが3種ある旨の説明があった。夜の事も考え財布の中身も心配して(笑)、ここは様子見?で握り十貫の1,160円(税込1,252円)のランチをお願いする事にした。

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 割と早く出て来たランチセット、目の前の職人が握ったのではなく、回転寿司店でよくあるバックヤードで作られたものだ、手前右に鯛の潮汁、左が茶碗蒸しで、奥に握り十貫が並ぶ。

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 まずは潮汁を一口、味は濃くなく淡過ぎず丁度いい塩梅、身が結構付いている鯛アラが嬉しい(笑)、家ではこうしたものはまず作らないので、久し振りに味わった。

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 握り、結論を先に云ってしまうと、可もなく不可もない内容で普通だったか、決して美味しくない訳ではなく値段相応、中では烏賊と雲丹がさすがに地元物(たぶん)で良い質だった。

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 少し物足りなさも感じてしまい、追加で「トロにしん」(2貫で税込388円)を注文した、これは目の前で職人が握ってくれる、そのためか美味しかった(笑)、東京の回転寿司店も同じだが、こうした店では注文により握ってもらうのが鉄則みたいだ。
 支払合計は1640円也、内容を考えたらまあ納得、もし次利用する機会があれば、セット物はパスして注文で握ってもらおうと思った。

 食後は歩いて行ける場所にある二条市場を見学する事に、私は何十年ぶりだろう?前回が何時だったか思い出せない位前だ(笑)。
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 時間も午後だったが、狸小路に比べると人出は少なく寂しい雰囲気。昔はもっと賑わい観光客も多かった記憶があるが、中国系観光客が少し居るだけ、それも今の大阪黒門市場のカオスな無国籍さと比べたら大人しいものだ、市場全体の活気はあまり感じなかった。

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 店先の目立つ場所に置いてあるのは、タラバ&毛ガニとメロンの高額商品。

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 土産物屋も人が居なくて静か、店先に置いてある恋占い機?とアニメポスターが、ちょっと場違いでシュールな雰囲気(笑)。
 市場全体に寂れた印象がするのは何なのだろう、もう少し観光客に向けPRとかしないと、人はやって来ないのでは?と思う、「ウチは昔からこのやり方、客には媚びない」は、もう通用しない時代、商店主は東京築地やアメ横、大阪黒門を参考にして、そのまま取り入れるのではなくても、何か改革する必要があると思った。

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 その後は大通公園に向かって歩く、途中の創成川に沿って置かれたオブジェが面白い、これは安田侃作の「生棒」で、なかなか意味深なタイトル(笑)。札幌は殆ど電線が地中化され空気が乾燥しているので、写真映え、最近の言い方ならインスタ映えする街だ。

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 札幌テレビ塔から東へ進み、元ビール工場跡の「サッポロファクトリー」に着く、此処のレンガ館は札幌でも好きなスポットの一つ、道内のアート&クラフト・工芸雑貨等を展示販売するショップが並んでいて、見るだけでも時間つぶしには最適だ。
 ギャラリーショップを見ていたら、好きな陶芸作家の一人で、旭川市在住の工藤和彦氏のマグカップがあったので、自分用のお土産に思わず買ってしまった、靴と同じく予定していない出費だったが、これも旅の想い出に。
 この日は歩いた、天然温泉付のホテルへ帰り一風呂浴びて、次のフレンチヘ出発する、食べ続けに休息はない(笑)。

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大阪・高麗橋 「桜花」(2017関西食べ続け④)

 和歌山「オテル・ド・ヨシノ」から大阪のホテルに帰ったのが17時過ぎ、このままベッドに入って眠りたかったが、19時からは夜の部が始まる。お腹は空いていないが、とにかく胃薬を飲み(笑)、バスタブに湯を張って足湯に浸かった、これは体内血液を循環させ、少しでも胃内の堆積物を消化させようとする、食べ続け旅行で覚えたやり方、「おまじない」みたいな部分はあるが(笑)。
 夜は此処も毎年訪問している、市営地下鉄淀屋橋駅から近い和食店「高麗橋 桜花」、大阪中心の食材を料理人の現代的感覚で料理、「自分は決して喋りが得意ではない」と云いながら、料理や食材の事になると黙って居られない森田氏と素敵な奥様、調理を補助する美少女料理人和田さん、それぞれの個性が光る店だ。

 淀屋橋駅を出たら小振りの雨が、これ大阪名物の「小ぬか雨」だと思う、駅出口からは歩いて5分もかからないのでありがたい。入店したら同席者が既に待っていてくれた、この日は関西在住の食通男性二人と同席で、昼とはまた違う濃い話になりそうだ(笑)。
 森田夫妻に挨拶し、始まった早春の料理は以下のとおり、主題は「桃の節句」との事。

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・白酒代わり

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・白魚の酒蒸し 菜の花辛し和え 金時人参 大根おろし

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・なんば葱のぬた 蛍烏賊 さるぼう貝 白蒟蒻 雛あられ

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・椀物 桜道明寺蒸し(甘鯛しんじょう、椎茸、手毬麩)

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・造り(金剛山千早川の鱒)

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・造り、その二(あいなめ、ぼら、はり烏賊)造醤油、のばし梅

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・春のちらし寿司

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・焼物(鰆の西京焼き 門真蓮根、赤蕪)

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・強肴(桜鯛 卯の花和え 防風)

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・麺(にゅうめん、あさり、あおさ海苔)

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・香の物(辛子和え、昆布佃煮)

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・甘味(白あずき餡、苺、蕗の薹団子、小豆、バジル)

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・薄茶

 桜花料理の特徴は、高価な材料をふんだんに使って「どうだ、旨いだろう」みたいな力強さより、一品一品は穏やかな仕上げだが、全て食べ終わった時に「今日の料理美味しかったな」と思う安堵感、そして支払いの段階で「こんなに安くていいの?」と驚かされる。
 「はしり」の高価な筍などは使わず、一部の和食店等で取り入れている、強肴に和牛を出す事もない。基本は大阪の野菜と近海の魚介が中心、それでいて「ウチは京都と違う、大阪料理や」と変に力んでいる訳ではない(笑)。
 この料理、京都ならもう少しいい器や店内の設えはあるが、黙って一万だなと思う。他店であまり使わない野菜や魚を探して提供しているのも、価格を抑えて和食の門戸を広げたい店主の意向があると思う。「同じ産地の鯛をこの大きさで十匹揃えてくれ」みたいな注文の仕方が、仕入値段が一番高くつくそうだ、これはバンケット等で、希少な野禽類を一定数揃える時のフランス料理と同じ。数量が揃わず他店で使わない魚、未だ知られていない新品種の野菜、こうした物を使って献立を組むのが価格を抑えるに際し大事だが、料理の組立にセンスがないと、ブランド名に依存しない分、注目されず凡庸なものになり兼ねない、桜花の料理にはその心配は感じられなかった。

 料理中特に印象に残ったのは、まずは和食の華である椀物、春の訪れを感じさせる甘鯛に肉厚の椎茸、上質の昆布出汁の組合せが美味しさを生み出す。意外にも料理の途中で出た「ちらし寿司」も秀逸、料亭の味と云うより何処か家庭的な穏やかさだった。造りでは大阪府内の金剛山麓の鱒が記憶に残る、千早川は名勝地として知られ水も綺麗な地との事、今は養殖でもこれだけ高品質のものが提供出来る時代になった。
 珍しいバジルを添えた甘味の後に出たのが、金沢出身の和田さんが立てた薄茶、森田氏が「僕が淹れるより美味しい」と云っていたが、汚れない綺麗な心を反映しているのかも知れない(笑)。

 昼間の男性陣に比べると、体力は追い付かないかも知れないが、人生経験なら負けていない?親父が三人、森田氏と女将、そして年配男性客に人気があると聞く和田さんも含めて、濃い話になりました、特に和田さんとの話は際どいのもあったが、サラリと受け流すのは見事な親父あしらい、きっと大物料理人になれる器だと思った(笑)。
 森田氏と彼女のやり取りは、昔流行した「サインはV」みたいなスポ根TVドラマの、スパルタコーチとヒロイン的(笑)、「涙は心の汗だ」と森田氏が云えば、「コーチ、私にも出来るのでしょうか?」と和田さんが答える、これを見た親父世代客が彼女に味方する、少し離れた場所から二人を見守るのは、星明子的な優しい視線の女将(笑)。
 店はビジネス街にあるので、昼は格安定食も出しているが、先日料理人一家の家庭事情で一週間休んだ処、「あの店は潰れた」「夜にえらく儲けたのでランチやめた」みたいな変な噂が立ち、再開後客足が途絶えたそうだ、以来「意地でも続けてやる」と森田氏は思っているみたいで、やはりスパルタコーチにもなれる骨のある料理人だ(笑)。
 雨で潤った夜に楽しい宴になりました、次回もこのトリオに会えるのを楽しみにしています。

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北千住「天麩羅いもや」

 神田神保町にある「天ぷらいもや」は、1964年(昭39)前回の東京オリンピックの年に開業した老舗天ぷら店だ、東京の老舗と聞くと敷居が高く入り難い店もあるが、此処はいたって庶民的な値段で、ファストフード等が登場する前から、神保町に出没するサラリーマン、学生&予備校生に親しまれた、「ああ、あの店ね、行った事ある」と思い出す人も居ると思う。現在でも「天ぷら定食」が700円、昼時には席待ちの行列が出来ている、近くには姉妹店の「天丼いもや」と「とんかついもや」がある。
 この店で働いた職人が独立し各地で開業しているが、「いもや」の名前を継ぐ、つまり暖簾分けをした店が幾つかある、今回紹介する北千住の「天麩羅いもや」もその一軒で、WEB情報によると1967年の創業、一門では最も古い店だと思われるが、現在でも修業先の名前を守っている。
 店の存在は知っていたが、休みが一緒だったりして過去行く機会がなく、今回北千住に行く用事があり、ようやく初訪問となった。

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 店がある場所は北千住駅西口を出て、国道4号線(日光街道)へ向かう商店街を直進、3番目の信号を右折して進み左側、この道はあまり広くないが、ハンバーガーの有名店「サニーダイナー」本店や「ビストロ・タケ」、最近出来たイタリアンもあり、隠れたグルメストリートになっている、店の外観は典型的な下町個人経営飲食店の造りだ。

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 11時半の開店時間を狙って入店するが、店先の「天麩羅いもや」の暖簾が相当古びて擦り切れている、もしかしたら50年前の暖簾分けした当時の物かも知れない。
 「一番乗りかな?」と思っていたら、既に初老の男性が一人カウンターに座っていた、私も同じく着席するが、この後次々と中高年男性それも一人客が来店し、カウンターはほぼ満席に、天ぷら屋はシニア男性のオアシスか?(笑)。

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 メニューは卓上の手書き、定食か丼か迷うが、結局「上天丼」(税込1,150円)に決めた。他客の注文も天丼が多い。

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 店の奥には座敷席、雰囲気が懐かしく下町的だ(笑)。

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 この箸入は最近見なくなったが、昔の食堂では一般的な形だった、白木のカウンターはよく手入れされて綺麗、美味しいものが出て来る雰囲気充分。

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 目の前では使い込まれた鉄鍋で天ぷらを揚げている、WEB情報では現在二代目で、割と若い男性が調理を担当、他に年配女性が二人手伝い、あとから年配男性も出て来たが、この人が初代か?

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 お待ちかねの上天丼登場、なかなか迫力ある外観、海老2本、小海老と長葱のかき揚、キス、茄子、ししとうだと思った。
 まずは海老からで、小さいながら質のいい物、かき揚げは千住名産である白葱を使っているのが嬉しい(笑)。浅草にある老舗の黒い天丼とは違い、現代的に軽く揚げているのは好みだ。途中「かどやの胡麻油」を鍋に足していたが、おそらく胡麻油だけでなく白絞油等も混ぜていると思う。
 天ツユもベタっとしない江戸前辛口タイプ、ご飯の質や炊き方もまずまずだった。

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 味噌椀は白味噌仕立て、具はシンプルに豆腐と三つ葉、「てんや」などもそうだが、天ぷらには白味噌が合うと思う、とんかつなら赤だし椀が相性いい。

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 また井之頭五郎の名言「お新香の旨い店は、料理も旨い店だ」を思い出す(笑)、お金を取れる漬物。
 
 最近天丼は格安チェーンの「てんや」ばかりで、こうした本格派天丼は久しぶり、当然ながら美味でした、家の近くなら月一位で通いたい(笑)。
 店内のシニア男性達は皆寡黙に天丼を食べている、隣席の男性だけ「上天ぷら定食」で、天ぷらを食べながら昼間からビールを旨そうに飲んでいた。年金支給月なので、老後のささやかな楽しみか、私も間もなくそちらの世界に入れてもらう予定だ(笑)。
 江戸前の粋を感じさせる天ぷら店、今迄来なかった事を後悔する、次回は更に具がグレードアップすると聞く「平成天丼」(1,400円)を狙うつもりだ。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
店の点数評価等はしません、「食と人」を描きたいと思っています。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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