最後の晩餐にはまだ早い


六本木「GALLERIA 645」

 皆様明けましておめでとうございます。
 去年は日本と世界で大きな事件が続き、更には予想もしていなかった結果になった事も多く、先行不透明な世相は今年も続きそうです。
 このブログも6年目になりました、現在は失業中の身なので地元の千円ランチ訪問が多くなりそうですが、時間潰しにでも読んでいただければと思います(笑)。
 数回は旧年中の店訪問記事になりますが、初回は少し趣を変えて器の話から。
 
 六本木の器ギャラリー「GALLERIA 645」は、東京ミッドタウン近くのあまり目立たない場所にあり、古い木造家屋をリニューアルして使用している。
 此の店を知ったのは、ネット上で自分が使いたいマグカップを探していた時に、通販サイトを見つけてから。
http://www.galleria645.com/
 品揃えが一貫していて、主に佐賀有田と沖縄のそれも大規模工房ではなく個人作家中心、値段も高価な物は少なく、庶民が少し贅沢をしようと思った時に買える物が多い。通販で2回購入した後、「この店へ一度行ってみたい」と思っていたのだが、12月に六本木のフランス料理店のランチへ行く機会があり、その帰りに立ち寄る事が出来た。
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 場所は東京ミッドタウンのイースト館至近、首都高からミッドタウンに向かう途中、坂道になっていて、脇の小さな階段を昇ると古い木造家屋が見えるがそれが店、フランス料理好きな人なら「リューズ」の近くと云えば判りそう、店名の「645」は住所の「六本木4丁目5番」から付けたのだと思う(笑)。 
 普通の民家みたいで少々入り難いが、並べてある器が窓から見えるので大丈夫だろうとドアを開けるが、中には器が沢山並べてあった。新作だけではなく明治期位の染付や色絵の有田焼も置いている。
 男性が一人で店番をしているが、器好きは同じ匂いでわかる(笑)、柔和な印象だがこの人は相当な器好きだと思った。以前通販で買った事を告げて、私の好きな作家を中心に見せてもらった。
 この日の分も含めて店から買った器を以下に紹介したい。

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・千葉光弘「灰粉引鎬カップ」
 通販で最初に購入。岩手県釜石出身だが、現在は愛知県常滑で作陶している中堅作家、急須が得意みたいで、作風は無彩色の一見地味な物が多いが、見続けていると妙味が感じられる、鎬(しのぎ)は朝鮮から伝わった技法だが、余計な部分を削ぐ事によりシャープな印象になる、持ち手が大きいので安定して使い易い、大き目なので紅茶向き。

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・金城有美子「ペルシャマグ」
 沖縄出身の女性陶芸家、鮮やかな色の釉薬を厚めに使った陶器が特徴、このターコイズブルーは彼女の得意色みたいで、他にも幾つか作品がある。マグカップやフリーカップ等小物が多く、軽くてとても持ち易い、小振りなサイズなので食後の濃いコーヒー用に向いている。

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・壹岐幸二「染付蕾唐草3.5寸皿」
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・壹岐幸二「染付蕾唐草草色差7寸皿」
 京都生まれだが沖縄で陶芸を学び、作陶も沖縄で続けている、沖縄伝統の琉球陶器を研究し、現代に合ったアレンジを加えている、染付が得意で大胆な唐草紋様を駆使する。7寸皿は深さがあるので「冷やし中華」にピッタリ(笑)。

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・福田和祐「朝鮮唐津小皿」
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・福田和祐「朝鮮唐津鉢」
 佐賀県唐津市で父親と共に「王天家(おおあめや)窯」を営み、慶長年間から続く唐津焼の伝統に沿いながらも、現代の食卓でも使える器を作る若手作家。「朝鮮唐津」とは、鉄分の多い黒釉と藁灰釉による白釉をかけ分けた造り、人気があり桃山時代の古唐津の物なら、恐ろしい程の値段が付く。

 どの作家も伝統や古典を学びながらも、そこへ自分流のアレンジを加えている、この辺りは料理人の往き方と似ている、「古典なんか興味ない、全て私の独創である」などと云うのは、陶芸家も料理人も偽物なのかも知れない(笑)。

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 ショップカードにも「普段使いの古陶磁磁器と若手作家応援ギャラリー」と記してあり、店のコンセプトは明確、料理人も同じだと思うが、先物買いと云うか「有名になる前に買う(行く)」は鉄則、人間国宝なんかになると値段は高く、作風は詰まらなくなりがちだ(笑)。
 器好きの人は、六本木ランチの帰りにでも寄ってみる事をお勧めしたい、勿論見るだけでも可です。

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廣永窯の器

 多芸多才な活動から「東の魯山人、西の半泥子」とまで称された川喜田 半泥子(1978~1963)は、本業の百五銀行頭取業の傍ら、文化面でも明治・大正・昭和を生きた典型的なディレッタントだった。中でも陶芸は素人の枠を超え、財界人引退後は自宅内に窯を築き、主に茶陶作りに没頭した。終戦直後の1946年に三重県の長谷山山麓に登窯を開設、これがのちに「廣永窯」になる。
 半泥子没後は直弟子の坪島土平(1929~2013)が窯を継承してきた、現在は登窯を含む五種八基を設置し、茶陶を中心に陶磁器制作を続けている。今回、紹介したいのがこの廣永窯の器だ。
 私がこの器を知ったのは、地下鉄神楽坂駅近くにある「うつわや釉」と云う店で、何気なく入った店内で、値段は高めだが使い易そうな食器達に惹かれた。

 十年以上前の話だが、最初に買ったのはこの平皿だと思う、
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 直径約17cm、高さ2.5cmの陶器、藍色で中に数か所鉄釉を垂らし込んでいる。

 続いてはこの青磁皿、
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 直径約16cm、高さ2cm、青磁と云いながらも、半陶半磁みたいな印象だが、

 同じ系統の皿で、
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 直径約14cm、高さ1.6cm、これは鉄絵で線描きをしてある。

 これは我家にある廣永窯唯一の磁器製の中皿で、
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 直径約25cm、高さ3.5cm、染付による紋様。

 陶製の中鉢で、抹茶碗にも使えるかなと思い買ったが、茶碗には大き過ぎた(笑)、
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 直径約14cm、高さ7cm、鼠色で側面に鉄絵の紋様がある。

 つい最近オークションサイトで入手したのが、ゆるやかな四角鉢で一辺約18cm、高さ6cm、
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 中には崩した松の絵が描いてある。

 廣永窯全体的に云えるのは、陶器も磁器も厚手で重量感がある、そして丈夫だ、洗っている時に何かとぶつかっても、まず欠けたりしない、これは日常使用するのに一番大事な点だと思う。
 表現が古すぎるが、有田や京焼の繊細で薄手な磁器が「深窓の令嬢」だとしたら、普段着で丈夫で長持ちする近所の親しみやすいお姉さんと云った印象(笑)、それでいて決して野暮ったくなく、見ていて味があり食卓でも使い易い。
 器の嗜好と云うのは年齢と共に変わり、若い頃は白磁や青磁ばかり集めていたが、最近はこうした土物系が何よりも落ち着いていいと思う様になった、廣永窯の器の出番が増えている。
 前述の神楽坂の店で聞いたのだが、この廣永窯は地元だけでなく、日本全国から陶土を取り寄せ、混ぜて使っているとの事で、それが何処にもないが、それでいて何処かで見た様な、不思議な懐かしさを感じさせる造りになっている理由だと思う。
 おそらく有田みたいな分業制ではなく、少人数制で作っている筈で、手仕事の良さが伝わってくる器だ、同じ窯で陶器と磁器を作っているのは、全国でも珍しいらしい。

 この記事を書こうとしている時に、長く廣永窯を主宰していた坪島土平の、工房物ではなく個人が作ったとされる青磁壺を偶然ネットオークション上で見つけ、思わず落札してしまった。ネットなので100%真作と云えない可能性あるのだが、届いた品物を見ていて、廣永窯に共通する「野暮にならない洒脱さ」みたいなものは感じている。
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 たしか白洲正子の言葉で「骨董は見る人間が本物と思えば本物、偽物と思えば偽物になる」と云うのがあったが、これは名言だ、それを信じて真作だと思う事にしている(笑)。



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北海道「斜里窯」中村親子の器

 今回は料理の話ではなく容れ物、器の話をしたい(笑)。
 話は今年2月に遡るが、「そごう柏店」で開催されていた、「北海道の観光と物産展」に出店していた「札幌五丈原」のラーメンを食べて帰ろうとした時、会場内の一角で足が止まった。それが「斜里窯」と名乗った道産窯元の陶器を並べたコーナーで、一目見てなかなかいい焼物ではないかと直感し、器好きの本能?が目覚めてしまった(笑)。素朴な中にも力強さがあり、古陶みたいな鄙びた雰囲気も感じさせる。
 その時売場には誰もいなかったが、気にしないで幾つか焼き物を見ていたら、「どうぞ、手に取ってご覧ください」と、大柄な男性が明るい声で話しかけてきた。
 このコーナーの売場担当かと思ったら、デパートの人間にしてはカジュアルな格好をしている。もしかしたらと思い「作家さんですか?」と聞いてみたら、そのとおりだった。

 男性の話によると、この「斜里窯」は北海道斜里郡斜里町にある窯元で、中村さんという親子二人が制作している、この方は息子の中村しんさんだそうだ。
 器好きはお互いの匂い?で判るもの(笑)、そこから器話になってしまったのだが、やはり私が見込んだとおり、北海道産の陶土と薪を使って登窯で焼いているとの事、薪窯特有の自然な色合いと素朴な造形がいい。
 立ち話だけで帰るつもりが、焼物話に高じているうちに結局皿と茶碗を買う事になってしまった(笑)、まずは父親である中村二夫さん作の「粉引平皿」(3,150円)、直径19.5cm、高さ3cm。

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 朝鮮出自の古い井戸茶碗に多く、古陶磁好きが「琵琶色」と呼ぶ赤みがかった独特の色合い。鉄分の多い陶土とガラス質の長石釉を使い、薪窯の木灰が混ざるとこの色が出やすいと聞く、同じ窯の中でもこうして赤く焼ける物と灰色に焼ける物があり、後者は周りに灰が多く降り積もり、一種の酸欠状態になると現れるらしい。
 全体的に武骨で男性的な作り、作為がない自然さで鄙びた風情も感じ、これは相当数をこなしてきた作家だと思う、裏返すとしっかりとした高台付近は、ザラっとした荒い陶土で、意外にも九州の唐津焼と似ている。
 持ってみると皿全体はズシリとした質量があるが重過ぎる程ではない、表面に凹凸があって均質ではなく、この皿に乗せるのは魚の切り身や、鴨の抱き身、ローストビーフ等が合うと思う。

 続いては息子さん作の刷毛目茶碗(6,300円)

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 同じ琵琶色でもこちらの方が明るい仕上がり、かけ流した白い化粧土の模様が抽象画みたいで面白い、若い世代が作った物だけあって作風も若々しい。
 分類すれば大振りな飯腕だが、抹茶碗としても使える大きさだ、名碗中の名碗とされる井戸茶碗の風格も備えている。実際に手で持ち上げてみると、手の小さい私には大振りに感じるが、全体のバランスがいいので不釣合いさはない。裏を返すと高台は小さく、高台周りには釉薬が爛れたみたいな状態になっている、これを昔の茶人は「梅花皮(かいらぎ)」と呼び、茶碗の景色つまりそれぞれの個性として珍重した。日本の茶人特有のディレッタンティズムなのだが、まあ外国人には最も判り難い分野だと思う(笑)。
 多孔質の厚い陶器は熱さを伝え難いので、熱い物を入れても手が耐えられる、このためお茶漬けに使う等の用途には最適だ。

 親子の作品を見て、昨今の備前や信楽みたいな有名処と違い、作品全体に作為が無く、中世の朝鮮陶器に共通する真摯で大らかな作風だ、父と息子で微妙に印象が違うのも面白い。
 買ってから約4ヶ月経ったが、器とそれを使う人間が歩み寄るには、最低でも半年位使い続ける必要がある、ようやくお互い馴染んで来た頃だろうか(笑)。  
 作品になるまでの手間と造りを考えたら、この値段は安いと思う。

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 この斜里窯は、「日本最北東端の登窯窯元」だそうで、場所は知床半島の付け根あたり、カフェもやっているそうなので、これは是非に一度見に行ってみたいと思っている。北海道在住で器に興味があり車の運転が出来る方、連絡お待ちしています(笑)。
http://bigfis2.wix.com/sharigama/


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増田勉作「三島五寸鉢」

 先日、いつもの様にオークションサイトの陶芸ジャンルを眺めていて、「これいいな、欲しい」と思って、入札してしまったのが増田勉作の「三島鉢」、直径16㎝程の小ぶりの鉢、結局競争者が現れず出品時の価格で落札する事が出来た。
 送られて来た物を見たら、予想以上に良い出来で安価で買えた事が嬉しい(笑)、見た目より軽く、これは日常で使いたい器だ。ネットオークションで器を買うのはハズレを引く事もあるが、最近はデジタル写真の向上により、画面で見た印象とそう違わなくなった。

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 WEB情報によると作者の増田勉は1954年東京生まれ、日大芸術学部美術学科卒業後、美術教師に就きながら独学で陶芸を学び独立、現在は神奈川県津久井にて作陶を続けている。作風は「李朝」の焼き物を範とし、粉引、刷毛目、黒釉、灰釉といった古来より伝わる技法を使い、シンプルで日常の暮らしの中で使える器を作っている。

 李朝とは1392年から1920年まで続いた朝鮮半島最後の王朝を指すが、骨董の世界ではこの時代に作られた工芸を総称して呼ぶ、陶磁器については殆どが民衆の日用雑器だったが、室町時代頃から日本に伝わり、千利休が広めた「侘び茶」の精神と繋がるものがあり、特に戦国時代に武将達がこぞって求め、以後日本では骨董陶磁器の代表的収集品となっている。豊臣秀吉による朝鮮戦役への出兵に駆り出された武将達は、同じ物を作りたいと朝鮮の陶工達を連れ帰り、日本で作らせた物が萩焼や唐津焼の始まりとなった。

 「三島」とは李朝以来の装飾技法の一種で、成形した半乾きの陶土へ、波形や丸紋、菊花紋等を型で押判して凹ませ、その上から白化粧土を掛け拭き取ると凹みの中に白い文様が浮き出る、これに透明釉薬を掛けて焼成するやり方、韓国では「粉青沙器」と呼ぶ。なぜこれを日本で「三島」と呼んだのかについては諸説あるが、有力なのは伊豆三島で作られていた「三島歴」に文様が似ていて、これを見た日本の茶人達が「三島みたいな文様の茶碗」と呼んだとの説で、室町時代の茶会記には既に「みしま」の名前で記録されているそうだ。

 ちなみに我家で所蔵する門外不出(笑)の、李朝初期おそらく15~16世紀頃と思われる三島鉢を紹介しておく、大きさ深さ共に今回の増田勉作の物より一回り大きい、買ったのは骨董ブームの頃で恐ろしい値段がした(笑)、全体に傾いでいて高台も小さく実用にはあまり向いていない(笑)。

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 伝世品と全く違わない物を作ってもそれは「コピー」でしかない、技法の研究にはなるが、それを作って売るとなると、現代の生活に沿って実際に使われる物にする必要がある、この増田勉が作った器にはその実用性を感じる事が出来た。

 今は105円ショップで皿、茶碗、グラスと何でも揃えることが出来るが、あれを自宅で使いたいとは正直思わない、スーパーの安売り豆腐でも、いい器に盛れば美味しくならなくとも、心は少し豊かになれる(笑)、かの北大路魯山人も金の無い時代に、無理して買った高価な切子のガラス器に、安い豆腐を入れ食べていたそうだ。
 今の時代に気持ちが豊かになれる事にお金を使うのは、無意味な事ではないと思いたい(笑)。


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六本木サボア・ヴィーブル「竹下鹿丸展」

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 ブログにUPしようと思いながら遅くなってしまい、既に会期は終わってしまったが、今月初めに行った、六本木の器を中心としたギャラリー「サボア・ヴィーブル」で開催されていた「竹下鹿丸展」の報告を。

 竹下鹿丸氏については以前ブログで紹介した事があるが、1977年生まれの益子の若手陶芸家、釉薬を使わない「焼き締め」と呼ばれる陶器を中心に制作活動を続けている、私は5年前に同じ場所で開催されていた個展でこの作家を知り、片口鉢を購入してからファンになった、ただこの片口鉢は、普段は器としては使わずそのフォルムの美しさから、骨董品の銭箱の上に置いてインテリアにしているだけ(笑)、今回は出来れば日常的に使えるものを選びたいと思いながら、会場へ向かった。

 サボア・ヴィーブルは六本木AXISビル内にあり、1881年からここで食器類を中心に販売をすると共に、主に若手作家達の発表場所としてギャラリー活動を続けている。1980~1990年代初めはバブル景気の真最中、このビル辺りから飯倉、六本木と西麻布一帯は「バブルの聖地」だった(笑)、今は「つわものどもが夢のあと」だなと、近くにある「ドン・キホーテ」の建物を見ると妙に感慨にふけってしまう(笑)。この店が長く続いた理由は、こうした若手作家を紹介する事で、新しい潮流を生んでいったからではないかと思う、竹下鹿丸氏の器もこの店がある事によって、話題の日本料理「龍吟」で使われる様になったと聞く。

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 伺ったのは金曜日の夕方、入店後に奥の個展会場へ入ったら、赤いパンツ姿で独特の髪型の長身男性が居た、前回も会った作者本人だ(笑)、2011年の震災で使用していた穴窯が崩落、更に昨年は北関東を襲った竜巻で自宅兼作業場が半壊するという二年続きの災害に見舞われながらも、この作者はどこか肩の力が抜けていて軽やかな自然体だ、話し方も穏やかでこれは無骨になりやすい焼き締め器を、見た目以上に軽く仕上げる作風にも共通していると感じた。
 作者に以前から気になっていた「土」の事を聞いてみた、今は益子でも備前でも良質な陶土が枯渇し、他地方から「輸入」しているとも聞いていたからだが、これに関しては、「自分は他の人が使わない粗い土を好んで使うので、地元益子の土で足りている」との答えだった。これ食材と料理に似ていると思った(笑)、皆が同じ食材を使い出すと、需要と供給のバランスが崩れ希少価値になり値段が高くなる、「他の人がやっていない自分だけの仕事をする」事が大切なのは、優れたクリエーターに共通だと思う(笑)。

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 会場内を30分くらい見て回り、一番惹かれたのは「南蛮花入」(26,250円)だったが、今日は実用的な物を買いたかったので次回への宿題とし、李朝の名品「伊羅保茶碗」を思わせる飯碗の大(4,200円)と、古越前焼の風格が感じられる小(3,300円)の二つを購入する事に、別に夫婦茶碗にする訳ではなく自分でどちらも使いたい(笑)、小さい方は炊立ての白飯を、大きな方はお茶漬けか小丼向けと思っている。

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 全体的な作風は5年前とは少し違った印象を持った、その時は織部釉みたいな実験的作品もあったが、今回は原点回帰していると思った、日本人は「この道一筋」みたいな作風が好きだが、オランダでも個展を開いたこの作家は、世界に認められるためにも、こうした変容はあっていいと思う。
 
 誤解を恐れずに書いてしまうと、料理人にも言える事だが、一般論として物造りに関わる人間は、名前が有名になり年齢を重ね「大家」になるに従い、作った物が詰まらなくなる気がする(笑)。この作家の作品は今ならまだ私でも何とか買える金額なので、しばらくは追いかけていきたい才能だ。

※なお店内撮影は作者の承諾を得ました。
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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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