最後の晩餐にはまだ早い


大阪・上本町「レストランコーイン」(2012関西食べ続け⑥)

 関西最終日の昼食は、約2年ぶりとなる大阪・上本町のフランス料理「コーイン」へ伺う事に、そして今回の食べ続けを締めくくるにふさわしい、圧倒的に美味な料理に出会う事になる。
 2年前の初訪問時には、上質な食材を採算度外視としか思えない程に大胆に使う料理に感嘆、それ以来再訪を願っていたのだが、店の研修旅行等とぶつかってしまい機会を逃していた、今回は旅行日程が決まった時点で真っ先に予定に入れ、前回同様ラスト訪問店にしたが、結果この選択は正解だった。

 食後に東京に帰るため荷物をホテルに預けてからレストランへ向かうが、12時の入店時には既に客席は殆ど埋まっていた、大阪は昼食の開始も早い。前回もそうだったが、この店は本気で作った結構硬派な料理を出し、店内も「蝶よ、花よ」という雰囲気はあまり感じられないのに昼は女性客が殆どだ、これは2,000円、3,000円のランチでも手を抜かず割安感があり、この分野の店が比較的少ない地域というのが理由かも知れない。
 この日の注文は予約の段階で昼の7,500円「おまかせムニュ」をお願いしていたが、これが予想を遥かに上回る内容だった。

(席が少し暗かったので、写りがあまり良くありません)
・アミューズ(フォアグラのクロケット)

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・前菜(ラパンのリエット、フォアグラのテリーヌ、ウニとカラスミ)

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・神奈川長井産ラングスティーヌのサラダとキャビア(別盛)

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・フォアグラ、トリュフのスープ、パイ包み

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・南淡路産ガシラ(オコゼ)のファルシ、白アスパラ

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・ブレス産鶏のベッシー包み、フォアグラクリームのソース、トリュフのライスボール

・プレデセール(ハイビスカスのジュレ)

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・「デセール・モヒート」葉巻をかたどったショコラ、ミントとラムのジュレとソルベ
・ミニャルディーズ(たくさん)

 フランス料理に詳しい方はおわかりと思うが、スープと肉料理は「ポール・ボキューズ」の料理が原型、ちなみに東京・代官山の店ではカルト2品で計2万円を超える(笑)。此処の料理人が凄いと感じる処は、決して形だけの模倣をしていない事で、食後テーブルまで来て「ベッシー包み」の説明をしてくれたが、要旨は以下のとおり、
「豚の膀胱は独特の匂いがある、これに鶏を包んで火入れしても嫌な匂いが移るだけ、ところがここへトリュフを入れ仲介させると、匂いが芳香へと劇的に変化する、同時に膀胱が湯煎の熱から鶏肉を守って穏やかに加熱が出来、ブレス鶏特有の肉厚な皮もそれを助ける、調理時間はかかるが優れたルセットだ。今フランスで使っている中国産の膀胱輸入が途絶えているため、国産に頼らざるを得ないが、国産豚は成長前に屠殺してしまうためか膀胱が小さい、これにブレス鶏一羽を入れるのは無理、そのため胸肉を四つに分けて入れ調理したが、これなら二人分でのカルトにも応えられる。」
 古典的調理法の優れた点を十分理解しつつ、それを現状に合わせて応用できる柔軟さがある、この料理人は頭で考えるだけでなく修羅場を何度も経験していて、状況により戦法を変化する事が出来る現場に強い優れた指揮官タイプと見た。
 同じように「ガシラのファルシ」については、料理人自らが説明しているので、これを読んでください。
http://koinkoinkoin.blog28.fc2.com/blog-entry-363.html

 肝心の味については、誇張ではなく「本家」をも上回るのではとも思った、私がフランスを頻繁に訪れていたのは今から十年程前、その頃訪れた「ラムロワーズ」「ラ・コートドール」といった当時の三ツ星店と、料理だけならまったく遜色ないと感じた。この料理人は技術も気力もその持続力もあり感覚的にも鋭い、この店の料理を体験してしまうと、どの世界にも上には上が、更にはその上もいるのだという事を知る、そして知ってしまった不幸も付いてくる、現在の東京にはこういう店は無い、あえて言えば今から20年位前の四谷「北島亭」などが少し近いが(今のでは無い)、それでも料理は明らかにこちらの方が一段突き抜けている。
 厨房は狭いし調理はサービス兼任の1人を入れて3人、それでこの料理が出せるのは、仕込みに相当時間をかける筈だ、それでも下の人間が逃げ出さないのは、料理長へのリスペクトによるものだろう、そして手間をかけ高原価な食材を使用したのに、この値段で出せるのは驚異的だ。

 この料理人は、大阪でも他の料理人達とは距離を置いているとも聞く、群れる事を嫌い孤高である事を保ちたいのかも知れない。食後に話をさせてもらったが、2年前に比べると尖っていた部分が丸くなり穏やかになった印象を受けた、マダムのサービスも格段に良くなっているし、料理と共に店も確実に進化している。
 ここは私にとって「大阪に来たら必ず寄りたい店」になった、いや「この店へ行くために大阪まで出かける」店だとも言える、レストランでの食事で言葉が出ず、ただ唸るしかなかったのは本当に久しぶり。この日の料理は前回をも上回り、過去30年以上続いた国内でのフランス料理体験の中でも、指折りの記憶に残るものになった。
 上質なレストラン空間で上質なワインと共に二人で料理を楽しみたいのなら「オテル・ド・ヨシノ」、マニア系の仲間とマニアックに料理を堪能したかったら「コーイン」(笑)、クラシック料理が好きなら使い分けをお奨めします、いや関西へ行くなら是非両店訪れて下さい。

 駆け足で回った3泊4日の食べ続けだったが、今回は前回にも増して素敵な人と料理に出会い「濃い」体験ができた、おかげで今は半分本気で関西移住も考え始めている(笑)。


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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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