最後の晩餐にはまだ早い


綾瀬「手打ちそば重吉」

 私は行きたいフランス料理店があれば、東京に限らず関西や北海道、更にはフランス本国まで出かけるのは苦にならない(笑)、最近は関西にハマっているのでお金の余裕さえあれば毎月でも行きたい位だ。でもこれが寿司や蕎麦となると遠出してまで食べに行こうと思わない、ましてや相当前から予約が必要などと聞くと、それだけで行く気が萎えてしまう、この理由について我ながら不思議に思っていたのだが、最近何となくわかってきた、それは東京下町で育った私には、子供の頃からの感覚として、寿司屋、蕎麦屋は家の近所にあるもので、その日にぶらりと訪れるか出前を注文するのが普段の使い方だとの思いが、身に浸みついてしまっているからだと思う。
 
 昔は情報が少ないと云うより殆ど無かった、浅草に旨い寿司屋や天麩羅屋、千住に旨い鰻屋があったとしても、それを知る事は殆ど無く、ましてやそこまで行く事は考えもつかなかった、我家は大家族であまり裕福ではなかったのもあるが、家族での「ご馳走」はせいぜいデパートの食堂へ行く位だった。
 日本人全体が豊かになり、グルメ情報が氾濫する様になったのは、昭和50年前後からではと記憶している、今まで近所の店しか知らなかった人達が電車に乗って外食に出かける様になった、有名だった店は更に有名になり人が押し寄せ、近所の店は消えていく運命になる、今に続く飲食店の「格差」はこの時代に始まったと思う。

 前置きが長くなったが、我家から自転車で行ける距離に好きな蕎麦屋がある、それが千代田線綾瀬駅近くにある「手打ちそば重吉」だ。雑誌の「東京の蕎麦屋」特集等に時折掲載され、隣駅の亀有にある「吟八亭やざ和」と共に、この界隈では蕎麦好きには割と知られた店だ。
 穏やかな印象の店主は元ミュージシャンと聞く、電動の石臼を店内に備え、これで挽いた蕎麦を昼夜使う分だけ打つ、夜は蕎麦が無くなった時点で売れ切れ仕舞いの店だ。

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 久しぶりに訪れたこの日は平日昼だったので、平日限定のお得な「親子丼ともり蕎麦セット」(1,050円)を注文した、小丼に盛られた親子丼は濃目の甘辛のツユが懐かしく美味しい、これは基本の「かえし」がいいからだと思う、そして「挽き立て、打ち立て、茹で立て」で運ばれてきた蕎麦は以前と変わらず、喉越しと蕎麦の香りに秀でていて美味しかった、この店は蕎麦粉だけの「田舎蕎麦」もあるが、個人的には江戸蕎麦本来のつなぎを使った「二八蕎麦」の方が好きだ、少なくとも冷たい「せいろ」には向いていると思う。
 蕎麦屋の客は概して年齢層が高い、この日も私の他は年配の夫婦と思われる二組、一方は蕎麦が出来るまで静かに日本酒を飲んで待っていた。

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 自分が年齢を重ねたからだろう、最近はまっとうに作った寿司や蕎麦が本当に美味しいなと感じるようになった、特に東京では高い和食店に行く位なら、こうしたあまり有名過ぎず値段も良心的な蕎麦屋や寿司屋を見つけて通いたいと思っている、それが自分の家の近くにあれば、なお嬉しい事だ。


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下町の銘菓「モンテール」のプリン

 私は基本下戸で甘党だ、レストラン以外ではまず飲まないし、ましてや家で飲酒する事は滅多にない、そのため家の中には料理用の日本酒と味醂、海外土産のマデラワインがある位、父母共にアルコールは嗜まなかったので、その血を継いでしまったみたいだ。
 でも甘党だからと云って、有名パティスリーや和菓子店へ買いに行く事は滅多にない、本当に美味しいデザートは(料理も)作ったその場で食べるべきで、家に持って帰る物でないという変な信念があるからだ(笑)、甘い物が食べたくなったら、パン屋で菓子パンを買うか、スーパーやコンビニで売っているスイーツで満足出来る人間だ(笑)、ただメーカーには結構こだわる。一番多く見かける大手の「F」とか「Y」等はどうもマスプロ的で好きではない、もっと小規模ながら結構楽しめるスイーツを製造している会社がある、具体的な名前を挙げると「シャトレーゼ」「ドンレミー」「モンテール」等だ、今日はこのうち「モンテール」を取上げたい。

 ㈱モンテールは私の地元である東京足立区に本社がある製菓メーカーで、主にスーパーやコンビニで売られているスイーツ類を製造している、元は千住で昔懐かしい「金太郎飴」等を製造販売する小さな菓子工場から始まったそうだ、「ドンレミー」も同じで全国区になった「ヨックモック」もスタートは足立区、都内でも土地代が安いので工場立地が可能だったのだろう、スイーツとは関わりが深い地域だ。
 現在のモンテールの主力製品はシュークリーム、ロールケーキ、プリン等で、東京のスーパーで売っているシュークリームはこの社の製品が多い筈だ、私が特に好きなのはプリンで、既発売の「焼きプリン・モンブラン」と「北海道かぼちゃのプリン」は共に美味しい。

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 プリンの作りは柔らか過ぎず適度に固さがあり、上に乗ったクリームも上質で全体のバランスが優れている。勿論有名パティスリーの1個400~500円する高額スイーツに比べると使っている材料は違うし上品さには欠けるが、それでも1個200円以下でこの味を出せるのは立派だと思う。
 今年4月の期間限定で発売されているのが「ハニーナッツのプリン」で、メーカーのWEBサイトには、「蜂蜜の濃厚な甘みやコク、素材の味わいをふんだんに楽しめるプリンです。牛乳と蜂蜜をブレンドして仕立てたプリンに、ホイップクリームとハニーペースト、粒々ナッツをトッピングして仕上げました。」と商品説明がある。これもライトな感覚で美味しかった、期間限定では終わらない事を望みたい。
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 この社の製品をスーパーで見つけたら、一度試してみる事をお薦めする、東京・下町か誇る名スイーツメーカーと言っていい(笑)。



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北千住「ル・シュエット」のワンプレートランチ

 エッセイストの玉村豊男氏が著書の中で、「都市は南→東→西→北の順番で発展する」と書いていた、これは農耕と太陽光の向きと関係があるそうだが、「この順番なら東京は北部を代表する街、例えば北千住辺りが開発を終えると都市として完成する。」という主旨だった、これが書かれたのはもう20年以上前の話だが、どうやら現在の東京は氏の予言通りに北部の再開発が進んでいる、北千住は「つくばエクスプレス」が開通し、これでJRと東京メトロ(日比谷線、千代田線)、更には東武線も併せて東京でも有数のターミナル駅になった、5月に開業する東京スカイツリーへのアクセスも良く、今後更なる発展が予想される、そして今年は東京電機大学が神田から移転、駅東口に近未来的な校舎がオープンした。私みたいに昔の猥雑なこの街を知っている人間には隔世の感があるが、大学生や学校職員が増加するので、これから飲食店を開業しようという人には狙っていい街だと思う。

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 この街を訪れたのは最近、駅近くにカウンターフレンチの店が出来たとの情報を得て、それも昼は950円のワンプレートランチを出しているとの事を聞いて、我家からも近いので興味を抑えきれず平日休みに訪れてみる事にした。
 店の名前は「ル・シュエット」、仏語で「ふくろう」だ。場所は電機大学がある駅東口から至近で歩いて3分の便利な処だ、席はカウンターのみの10席程。調理もサービスも全てカウンター内の一人で担当している、この料理人がフレンチより居酒屋主人が似合いそうな渋い訳ありそうな男性(笑)、ネット上では「無愛想」と書かれているが、たしかに注文を聞く以外は喋らない、でも余計な気を使わなくて済みそう。
 この日特に予約なしで11時半の開店直後に入店したが他の客はまだ誰もいなくて、食事途中に女性二人組が入って来た。昼はワンプレートランチ(950円)のみで、デザート+コーヒーが別料金で500円、プレートに乗る肉料理が鶏、豚、仔羊3種からの選択になる、この日私は「仔羊挽肉のトマト詰め」を選んだ、他にはサニーレタスのサラダと五穀米のピラフを敷いた鯖のソテー、ミネストローネスープとパンが付く。

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 ミネストローネはトマトベースの普通の味だが、仔羊は思ったより良かった、小型のトマトを容れ物にして中に羊肉のミートボールを挟み、トマトの酸味で羊の脂を中和させる料理だが、これは定番の美味しさで作りも丁寧だった。鯖のソテーの火入れもいいが、骨抜きが完全でなく小骨が少し気になった、下に敷いた五穀米のピラフもあと一工夫欲しい。でも全体的にはこの値段を考えれば満足出来るランチだと思う、出来ればデザートも試してみたかったのだが、次の客の調理に取りかかっていて大変そうだったので、この日は遠慮した。
 テーブルには夜の一品料理を書いたカルトがあったので、見ていたら一品1000~2000円位ながら興味を惹かれる料理があった、本来は夜の営業がメインなのだろう。会計の時に「夜来る時は予約した方がいいですか?」と訊いたら、無口な主人が初めて笑顔になり「週末でなければまず大丈夫ですよ」と答えた、やはり夜に食べに来て欲しいのだとは思う(笑)。この地には今まで無かったジャンルの店なので、何とか頑張って欲しいし、そのためにもまた来てみたい。


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頑張れ街のパン屋さん

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 私はご飯も好きだがパンはもっと好きだ、その日の料理が寂しくても美味しいパンがあればそれだけでも満足出来るので、結構安上がりな人間だ(笑)、反対に美味しい料理を出すレストランでも、パンが美味しくないとガッカリしてしまう。
 ここ数年利用した中でパンが美味しいと思ったレストランは、和歌山「オテル・ド・ヨシノ」と東京・青山の「フロリレージュ」で、前者は自家製で後者は駒場東大前にあるパン店から仕入れていると聞く、食事にパンを吟味するレストランは料理にも気を使っているのは間違いない、ただ中には「今日食べた中で、一番美味しかったのはパン」という店もあるにはあったが(笑)。

 パンの種類としては、小麦全粒粉やライ麦を使用したカンパーニュ系を一番好むが、それとは対照的な街中の普通のパン屋で売っている惣菜パンや菓子パンも好きなので、どうやら私はパンに関しては、どんなタイプでも守備範囲にする「カサノヴァ型」と言えそうだ(笑)。私が住んでいる場所は下町なので、カンパーニュ系のパンを売っている店は近くには無い、ただ惣菜パンや菓子パン中心のパン屋は割と気に入っている店が二軒あった、ところがその内の一軒が急に閉店してしまった、聞く処によると此処は店主が脱サラで始めたが、その店主が高齢になり後継者もいなかったので、閉店を決めたとの事だ、おそらくは東日本大震災後に売行きも落ちていたのだろうと思う。

 今、街中のパン屋は相当厳しい現状だ、若い人や帰宅時間が遅い勤め人はコンビニでパンを買ってしまうし、常連客は高齢化して今後消費増は望めない、小麦や油脂等の原材料は年々値上がりしているが、デフレ時代にパンの単価を上げられない、また朝が早く体力勝負のキツイ仕事のため後を継ごうという若い人が少ない、三重苦や四重苦の世界になってしまっている。
 それでも、頑張っている街場のパン屋さんは応援したいと思う、スーパーやデパート内の企業系ベーカリーではパンは買わず、多少買いに行くのが不便でも、地元のパン屋で極力買う事を今後も続けたいと思っている。
 「頑張れ街のパン屋さん」。



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南千住「パスティチェリア・バール・アルテ」

 この日初めて訪れた南千住のイタリア料理「パスティチェリア・バール・アルテ」は、知人のフランス料理店主に教えてもらった店だ、場所は南千住駅から浅草に向う途中「泪橋(なみだばし)交差点」の近くになる、泪橋と聞いてすぐ「あしたのジョー」を思い浮かべるのは私以上の年齢の人だろう、梶原一騎原作、ちばてつやの原画によるこのボクシング漫画は昭和40年代に爆発的な人気を呼んだ、この物語の舞台になったのがこの辺りで、現在では近くの商店街には「あしたのジョーのふるさと」との横幕も掲げてある。地名にはないが通称「山谷」と呼ばれ日雇労働者が集まる街、日本の高度経済成長期には、毎朝ここで人足を集めては工事現場へ向かうのが日常だった。
 その山谷も今は様変わりし、当時の日雇労働者は高齢化、中には生活保護を受けながら昼間から酒を飲んでいる、彼等を相手にする食堂もあるが、全体にひっそりと営業していて利用者も静かだ、彼等に替わってこの街の主役になっているのが外国人観光客、数年前から都内でも宿泊費が安いこの地のホテルや旅館を利用する外国人が増加している、その彼等も去年の東日本大震災後は街から一斉に居なくなったと聞く、今年になってからようやく戻って来たみたいで、この日も店へ着くまでに数人とすれ違った。
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 この「パスティチェリア・バール・アルテ」は、店のWEBページによると、その名前のとおり、もとはこの地で続く洋菓子店だったそうだ、それが7年前にリニューアルし、菓子販売に加えてイタリア料理店として営業している。WEB上では下町では意外?な程に本格的なイタリア料理が食べられるとの評判があり、以前から行こうと思っていたが、ようやくこの日の昼に初訪問となった。
 店は一見ケーキショップだが、その奥がダイニングで12席とカウンター、更にショップ付属のカフェ席でも食事が出来る。
 この日は2,100円の昼メニューを注文、その内容は、

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・前菜四種盛合せ(鶏と豚の冷製、カポナータ、野菜入オムレツ)

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・カンパチのマリナーラのビゴリ

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・牛バラ肉のブラザード

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・ドルチェ(大麦のトルタ、プリン、エスプレッソのジェラート)
・エスプレッソ

 パスタの「ビゴリ」は押出成型で作られる生麺、牛肉の「ブラザード」とは仏語の「ブレゼ」だろう、赤ワインを使った煮込みだ。
 料理はこう言っては失礼ながら、予想していたよりはるかに本格派だ、全体的に濃い目の味付けで芯が通っていて存在感がある。私は銀座や青山辺りのお洒落な雰囲気の、イケメンのサービスが運ぶ鳥の餌みたいな少量イタリア料理店は大の苦手で、普段利用する事は滅多にない、残念ながらイタリアには行った事がないので判らないが、イタリア現地で食べる料理はあんな物では無い筈と思っていた。この店の料理には根っこに太いものが感じられ、これは「地」の料理に近いのではと思った、この点では去年利用した大阪・日本橋の「ラ・バッロッタ」の料理と共通するものがあった。ケーキショップ併設だけあってドルチェ類も手をかけてあり美味しい、内容からすれば値段も安いと思う。場所柄から若い女性を誘って行くのは躊躇するかも知れないが、美味しい物を食べ慣れた人間ならこの穴場感はかえって嬉しいし、思い立った時に利用出来る気安さがいい、此処はもっと早く来るべきだった。

 食後に紹介してくれた料理人の名を告げたら、厨房から相越料理長が出て来てくれた、料理と同じで骨太で強面と言ったら失礼(笑)だが、これは美味しいものを食べさせてくれそうな料理人だ、黒板には夜のメニューが書いてあり馬肉や猪肉の料理もあってこれは面白そう、近い内にまた訪れたいと思う。





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本郷「鵜飼商店」の鰹本節

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 今から二十年以上も前の話になるが、実家から独立した時に誓った事がある、それは「どんなに忙しくても、味噌汁の出汁は鰹本節を削って使う」事だった。上野の刃物専門店で鰹節削りを大枚8千円出して購入、削る鰹の方は築地かアメ横で買って、さすがに毎日は無理だったが、折につけ削った鰹は一体何本になるだろう、書道家は書に取りかかる前に硯で墨を擦る時間を大切にするが、それと同じく鰹節を削る行為は、精神を落ち着けるために大事な「儀式」にもなった(笑)。

 WEB上で知った情報だが、長年勤めた職場の近くにプロの料理人が利用する鰹節問屋があると聞き、去年の暮れに初めて訪れてみた、店の名前は「鵜飼商店」(文京区本郷2-30-9)、店自体は戦前から続いていて、当初は秋葉原にあった神田青果市場の近くで営業していたそうだ。現在の店主は若い男性でまだ30歳前後にしか見えない、この男性と母親の二人で店を切り盛りしている、店主の話では昔からの馴染み客である銀座の高級料亭や、そこから独立した個人営業の店主も変わらず贔屓にしてくれているそうだ。

 この若い店主、とにかく話好きで鰹節の事になると松岡修造みたいに熱くなって止まらない(笑)、教えてもらった事は、一口に「鰹節」と言っても様々な種類がある、まずは材料の鰹だが網漁で獲ったものに比べ、一本釣りで釣り上げたものの方が身の傷みが少なく値段も高い、その後どれだけ手をかけて鰹節にするかだが、製造業者によって相当差が出てしまうそうだ、この店では鰹節の本場、鹿児島枕崎の業者の中から選別しているとの事で、それについては販売先の料理店の評価が大事で、製造元を指定して買って行く料理人が多いそうだ。更にはカビ付けした「本節」とカビを付けない「荒節」、本節にも1年物から3年物まであって、削り易さと味わい重視なら1年物、香り重視なら3年物、また吸物に向く背中側の雄節、煮物等に向く腹側の雌節、更には両方をブレンドして使うとか、単純そうに見えてこの世界は実に奥深い。

 「家庭用の鉋で削るのならこれがいい」との店主の助言により、枕崎産の一年物本節の背中側を買って使ってみたが、これが見事な香りと味で、それからはこの店で買った物だけを使いたいと思ってしまった。一本2,000円前後で決して安くはないが「本物」を使いたいのなら納得の品物だ、食べ物に限らないが良い物を使いたいのなら、それを扱っている良い店を見つけるのに限ると云う事をあらためて理解した。


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亀有「鮨なかや」

 亀有の寿司店は以前のブログで「導らく」という新しい店を紹介したが、実はもう一店地元では名前が知られた店がある、それが「鮨なかや」という名前で、こちらは100年近く続いていて現在は五代目店主になる。ビルの建て替えにより暫く休んでいたが、去年暮れに再開し随分とモダンな雰囲気になったと聞いたので、興味を覚えランチ狙いで行ってみた。
 場所は駅南口を出て商店街を歩いた付き当りの斜め向かい側、近くには蕎麦好きには知られた店「吟八亭やざ和」もある、店は外装・内装共にモダンでスタイリッシュ、一見寿司屋とは思えず、青山あたりのカウンター付きのイタリア料理店みたいな雰囲気だ、お茶を運ぶ女性店員も白シャツと黒スラックス姿、これは当然女性客を意識しているのだろう、この日も後から若い女性陣が4人で入店して来た。

 私はだいぶ前になるが先代の握った寿司を食べたことがある、下町に似合わず上品で小振りな寿司だった記憶があるが、この先代が40代の若さで早世してしまったそうだ、その後は職人を雇って店を維持していたが、最近になって四代目の息子が後を継いだと聞く、フランス・ヴァランセの三ツ星レストラン「ピック」に似ている(笑)。

 注文は昼のランチ握り(1,500円)を、

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・紋甲イカ

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・コハダ

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・鮪(ボストン産)

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・平貝

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・鯛

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・イクラ軍艦

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・甘海老

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・出汁巻き卵

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・叩き梅と鮫軟骨の巻き物

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・茄子の糠漬け

・浅蜊の味噌汁
・デザート(黒糖ゼリー)

 この日握ったのは五代目ではなく、別の職人だが寿司の印象は先代の時とそう変わらなかった、小振りで繊細な寿司でそのため少し物足りなさはある、でも女性には食べやすいし受けると思う。
 普段は回転寿司を利用している若い客層を取り込むために、今迄にないお洒落な雰囲気の店造りにするのは賛成出来る、ランチでも月一回こうした店を利用する事が業界全体の底上げに繋がると思うし、何処に行ってもハンバーガーと回転寿司ばかりの街というのも感心しない、地盤沈下が進む下町の活性化のためにも、こうした歴史ある個人店は頑張って欲しいと思う。


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曽我蕭白「雲龍図」

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 先日行って来た、東京国立博物館で開催中の「ボストン美術館 日本美術の至宝」展、これを観ていてどうしても気になる作者がいた、その名は曽我蕭白(そがしょうはく)(1730~1781)江戸時代中期に活躍した絵師だ。人物や対象の細密描写と鬼気迫る異様な構図は日本人離れしていて、一度見たら忘れられないもの、名前はもちろん知っていたが、その特異な作風に興味を覚えあらためて調べてみた。

 京都で商人の家に生れたとされるが異説もあり、資料が少なく詳しい事はわからない、伊勢や京都に作品が多く残され、両方の地を中心に活躍していたと推測される、作風は自由奔放で他の流派に属せず、時に奇怪で見る人間を不安にさせる。「狩野派」が描く絵画が正統でアカデミックな、ニーチェが言う「アポロ的」なものとすれば、それとは正反対な創造、陶酔型の「ディオニソス的」な芸術家だった、数々の奇行から同時代人からは特異な人間と見られ、自らも「狂人」と名乗っていた。
 「恐ろしく腕の立つ絵描きだが、変人で絵も不気味、気分が乗れば描いてもらえるが、機嫌が悪いとどんなに金を積んでも描かない奴」
 おそらくはこんな評判が行き渡っていたのだろう、その伝説から生前から蕭白を名乗る「贋者」がいたらしい(笑)、電話もTVもインターネットも無かった時代だ、本人かどうか確認するのは絵を描かせるしかない、それでも気分が乗らないふりをして描かないでいればしばらくはバレなかったし、周りが疑り始めたら逃げ出せば済んだ(笑)。

 蕭白と運命的に対比されるのが伊藤若冲(1716~1800)で、同じく京都の商家に生れる。家業を継ぐも商売を嫌い家督を弟に譲って40歳で隠居、以降細密な花鳥画ばかりを描き続ける、変人ぶりでは蕭白に引けを取らないが、描いた絵はより正統的だ。
 蕭白も若冲も生前は人気作家だったが、その後日本では一時忘れられた存在だったとされる、再評価されるきっかけは、明治の開国以降外国人に人気で、彼等が熱心に収集を始め、やがてコレクションとして公開される様になってからだ。これは現代の日本のアニメが欧米で高く評価されているのに似ている、特に蕭白の絵は「劇画調」なので、外国人にも訴えるものが大きかったと思われる。
 蕭白を知りたければ、現在開催中の展覧会を観る事をお薦めしたい、とくに巨大な「雲龍図」は必見だ。


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浅草「オマージュ」(3月)

 この日は3月一杯で退職する人の慰労会を、お馴染み浅草のフランス料理「オマージュ」で開催する事に、この方は晴れて任期満了だが、今年職場で目立ったのが定年前に辞める人が多かった事で、その理由の殆どが「親の介護のため」と聞いた、今の日本では80~90歳の親を看るのが60歳の子供達という時代になってしまった、税金は高くても公的介護の充実した北欧の社会制度が全ていいとは言えないが、介護のために職を辞さなければならない現実を「最小不幸社会」とは決して言えない筈だ、超高齢化が進むこの国で早急に検討しないといけない問題だと思う。この日集まったのはそろそろ自分が介護される側になりそうなシニア達5名、つい年金や老人ホームの話題が出てくる(笑)。
 この日の料理は山田支配人と荒井料理長に、あらかじめ予算を言ってワインと共に全てお任せしてしまった。

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・アミューズ・ピクニック(料理長顔入りシール付サンドイッチ(笑)、からすみのムース、黄人参のポタージュ試験管入)

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・フォアグラのクレーム・ブリュレ、ヴァニラ風味、グラニー・スミスのソルベ添え

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・和歌山産釣り鰆のロティ、ジュ・ド・ポワソンと春菊のクーリ

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・西オーストラリア産仔羊のペルシャード

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・苺とパセリのヴァシュラン仕立て

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・ミニャルディーズ

 アミューズは「ピクニックのお弁当」をイメージしたそうだ、流行の北欧料理にインスパイアされたものだろうか遊び心満載。フォアグラのクレーム・ブリュレは他店でも出している料理だが、青リンゴのソルベがいいアクセントになっている、鰆のキュイッソン(火入れ)は抜群、南半球産の仔羊はこの店で何回も食べているが、低温調理で表面を削いでフィレ状にしたものより、この日みたいに骨付きで料理した方が、羊本来の味と香りが感じられて好きだ、デセールも良かった。
 現在地に移転してからの料理は個性を出そうとしてか、時としてディティールに拘り過ぎかなと思えるものもあったが、この日の料理は主役がハッキリとしていて明確、ソースも適量で軽快、この料理なら充分「一つ星」として通用すると思う。
 ワインは山田氏の選択でシャンパーニュと白はアルザスのリースリング、赤はモンテプルチアーノ「カサーレ・ヴェッキオ」と大盤振る舞いしてもらった、私は酷い花粉症であまり飲めなかったが、参加したメンバーは喜んでいましたありがとうございました。

 この店を夜に利用するのは久しぶりだが、昼とはまた違った客層で男女混合客のテーブルが多くなった、そして常連客が多いみたいで皆落ち着いて料理を楽しんでいる、やはり夜のレストランにはこうした艶のある雰囲気が似合う、私が夜に一人でレストランを利用する事がまず無いのは、一人だとどうしても浮いてしまうので、店の雰囲気を壊したくないからというのもある。そしてこの店がある場所は、見番や古くからの料亭もあり、吉原も近く浅草でも独特の界隈、駅まで距離があるし夜一人で帰るのは少々寂しい(笑)。

 浅草は商店が早仕舞いで飲食店の客が退けるのも早い、隣席のアベックは8時に来て10時前には帰ってしまった。我々は結局最後の客になったが、おかげで料理長も交えて記念撮影、皆元気で居られる事を祈り(笑)再会を願って店を後にした。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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