最後の晩餐にはまだ早い


南千住「パスティチェリア・バール・アルテ」(6月)

 最近のマイブームは「東京下町イタリアン」、神楽坂を下町に入れていいなら、今年になってから訪れたイタリア料理店は全て下町エリアだ(笑)。
 何故好きなのかの理由は、青山や西麻布&六本木のイタリア料理店がお洒落な「ハレの日」の料理だとしたら、下町はもっと実質的、料理に余計な飾りが無くて素材の味がストレートに伝わる店が多い、値段も良心的で量が多いのも嬉しい(笑)。
 BS日本テレビで放映している「小さな村の物語・イタリア」という番組があるが、ここに出てくる家族経営の小さなリストランテやバールの様な、アットホームな雰囲気を味わえるのも下町の良さだ。

 この日は前回訪れて好印象だった、南千住の「パスティチェリア・バール・アルテ」を再訪する事に。南千住駅から歩いて行ったが、途中の歩道上は独特の雰囲気、全体に高齢者が多いがそれも普通のお年寄りではない(笑)、東京で一番ディープな地域だと思うが、社会見学としても東京人なら一度は訪れるべきだ、スカイツリーが下町の「表の顔」ならこの界隈は「裏の顔」、もちろん安全な街です(笑)。
 梅雨の合間に急に日差しが強くなった中を入店、この日はベビーカーを押した若いママグループもランチを楽しんでいた、帽子の似合う可愛らしいお店のマダムに挨拶し、前回同様2,100円のランチを注文する事に。

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・アンティパストミスト(イタリアンオムレツ、スフォルマート、カポナータ、メカジキのマリネ、鶏肉のインヴォルティーニ)

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・カルボナーラ、ローマ風のトンナレッリ

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・鮪頬肉のピッカータ

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・ドルチェ盛合せ[カプリ(伊版ガトーショコラ)、ミントとエスプレッソのジェラート]
・エスプレッソ

 店によっては、刻んで油と酢をかけただけの「前菜」に出会う事もあるが、この店のアンティパストはどれもちゃんと手をかけてある、特にスフレに似た「スフォルマート」があったのは嬉しい、手間がかかるのでこの値段ではなかなか出さない物だ。パスタの「トンナレッリ」は生麺、日本蕎麦みたいに断面が四角状のパスタで、カルボナーラの様な濃厚ソースとの絡み具合がいい、この自家製ベーコンを使ったパスタは特に美味しかった、鮪の「ピッカータ」はピカタの事で、これはランチとは思えない程の量がある(笑)、ドルチェは元々菓子職人出身の料理人なので丁寧な出来。
 2,100円のランチでも全く手を抜かず立派な内容、これなら銀座の「予約の取れない店」の行列ランチに並ぶより、余程いいと思うのだが(笑)。

 最後に料理長と話をしたが、この店はケーキ等の菓子も販売しているので、「これ全部一人で作るのですか、休む時間無いでしょう?」と訊いてしまったが、「そのとおりです」との事(笑)、店頭販売の菓子を作って生麺を打ち、昼夜のレストランの仕込みと調理をこなす、それを毎日続けるのだから凄い、此処はもっと評判になっていい店だと思うが、立地で少し損をしているか、それでも料理長はこの地域に根差して続けたいとの気持ちが強いみたいだ。
 我家からは思い立った時にすぐ行ける距離だし毎月でも訪れたい店だ、お土産に買ったビスコッテイも素朴で美味しかった。


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亀有「ティア・ブランカ」(2回目)

 この日の昼は急に思い立って、前回行って好印象だった亀有のイタリア料理「ティア・ブランカ」を再訪した。何週間も前から予約する人気のレストランを利用する楽しみを否定する訳ではないが、思い立った時に自転車で行ける距離にこうした店を発見出来たのは、とても嬉しい事だ。

 予約無しで11時半の開店時に伺ったのだが、既にカウンター席には女性客が一人、この後男女一組がやって来たが、こちらもカウンターを選び店主と話し始めた、この三人共リピーターみたいで、どうやら地元でも知られる店になりつつある。店主は私の顔を覚えていてくれた、「客の顔を覚える」のは飲食店では一番大事な点だ、特に一人客は多少不安を感じながら?入店するので、「この店は受け入れてくれている」という安心感を抱かせるのはリピートに繋がる。
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 ランチメニューはパスタ3種と一品料理からの選択で、一品料理は豚のソテーだったのであまり気乗りせず、前回と同じくパスタを選ぶ事に。

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・大根のスープとスペイン風オムレツ2種(ほうれん草、じゃが芋)

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・イイダコと香味野菜のラグーのスパゲッティーニ

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・ティラミスとコーヒー

 これで税込1,200円はランチとしても立派だと思う、スープは大根の繊維を残し胡椒を効かせピリっとした辛さがいい、オムレツは前回同様美味しくて今回は贅沢にも2種類、パスタは「魚介のミートソース」だが、これもトマトソースと香辛料の使い方が上手く飽きない美味しさだ、私は行っていない店だが日高良実氏の「アクア・パッツァ」のスペシャリテに「魚介のラグ―のパスタ」があるので、もしかしたらこの料理人はアクア・パッツァ系の店で働いていたのかも知れない。

 オープンキッチンなので、料理作業が全て見えるのだが、この料理人は実に楽しそうに料理をする、声も大きく明るく元気なので見ているこちらもその元気を分けてもらえそうだ(笑)、本当に料理が好きで人間が好きなのだろうなと感じさせる、カウンター越しに客と話しをするのが聞こえるが、その内容が子供の話や地域の話、こうした雰囲気はフランスやスペインの地方のバルやレストランの趣だ。

 見た処はスポンサーが付いている訳でもなく、何処かのチェーン店の匂いもしない、店造りもお金をかけている様には見えないが、自力でこの下町に自分の店を出し、洋食にはアレンジしない正統料理を出す意欲を買いたい、地元に根付いて欲しいし定期的に訪れて応援したい店だ。


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コーヒーはサロンでいかがですか?

 Facebookの日記に書いたデザートとコーヒーについての話が、予想外に反応があったので今回はこの続きを書きたいと思う、私の文章だけでは多分面白くないだろうから、3年前に訪れたフランス、オーヴェルニュ地方の三ツ星「レジス・エ・ジャック・マルコン」での画像と共に説明したい。

 ウィキペディアによると、英語のデザート(Dessert)の語源は、仏語のデセール(スペルは同じ)に由来し、これは「食事を下げる」「食卓を片づける」という意味の仏語‘デセルヴィール(Desservir)’から派生したとされる、つまり食事の皿を下げた後に出される食べ物を総称してこう呼ぶので、チーズも広義の意味ではデザートに含まれる、ちなみに「クラウン仏和辞典」で‘Dessert’を調べると、「~昔はチーズを含んだが、現在ではチーズの後に出る菓子・果物・氷菓」と注釈がある。ここは昔流を踏襲してまずはチーズ(仏語だとフロマージュ)から。

 フランス、特に地方のレストランではメニューの中にチーズが含まれるのが一般的、食後のコーヒーは通常別料金だが、チーズは料金内に含まれる事が多い、ただ最近のパリではそうでない店が増えているので、パリはやはりフランスではないのかも知れない(笑)。

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 客はワゴン(仏語だとシャリオ)に乗った各種チーズから好きな物を好きなだけ選べる、この店は山岳地方に在るのでドライなハードタイプの物が多かった。

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 「チーズと一緒に食べてください」の意味で、ナッツ、ドライフルーツ等が出る、客は食事時に飲んだワインをチーズのために残しておくか、あらたにグラスでワインを注文する人もいる、なおチーズと水は最悪の組合せなので避けた方がいいそうだ(笑)。

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 チーズを食べ終わると「プレ・デセール」になるが、この店では先に「ミニャルディーズ(小菓子)」を持って来た。フランスの高級店ではこのスタイルが多いが、「デセールが出来上がるまで、これで楽しんで下さい」という意味のようだ。

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 次はプレ・デセールの順番になる、以前日本では「アヴァン・デセール」と呼んでいたが、フランスでは「プレ‘pré’」が一般的、これは「プレ・オリンピック」「プレ・ロマネスク」等と同じで「~の前に」と云う意味、つまり真打のデザートがいてその前座に出るデザート、画像は柑橘系のムースとソルベだった。この時点ではまだコーヒーの注文は訊かれていない。

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 真打登場でやって来たのが本日のメインデセール「ピーチメルバ」。この時ソーテルヌの様な甘味の強いデザートワインを注文する人もいる、パリの三ツ星店ではここでシャンパンを1本開けるグループを見た。酒類を注文しない場合はコーヒーにするか、または紅茶やアンフィージョン(ハーブティー)を飲むか、メインデセールが運ばれる前後に聞かれる、前述のとおりメニュー価格には含まれず別料金になるので注文しなくても別に構わない。

 パリでは店が狭いため経験ないが、地方の星付きレストランではメインデセールを食べ終わると、「サロンに移りますか?」と訊かれる事がある、客席の固い椅子ではなく別部屋のソファーで寛いで下さいという意味だが、店側にとっては食卓を早く片付けられるメリットもある(笑)、注文したコーヒーやミニャルディーズの残りは移った席まで持って来てもらえる。一昔前はここでシガー(葉巻)を楽しむ人も居たが、今は飲食店の禁煙化に伴い室内では不可能になった、コニャックやカルヴァドスの様な強いリキュール系の食後酒を飲む客も少なくなったがいる。移動せず客席に居残ってもコーヒー類はメインデセールの皿が片付けられた後に出る。

 フランスのディナーは通常20時以降のスタートなので、これで最後のコーヒーを飲み終わる頃は23時を遥かに過ぎて日が変わろうとする時刻だ(笑)、時間配分を言えば食前酒からメインの料理で全体の5分の3、チーズ以降の「デザート」が5分の2位の割合だろうか、こうなるとマラソンを走っている様な感じで体力勝負(笑)。
 最近のレストランでは、デザートと同時にコーヒーを持ってくる店が多くなった、忙しい客がそれを求めているのだから全て否定する訳ではないが、「時間を使う贅沢さ」をもっと大切にすればいいのにと思ってしまう、でもこんな事を考える私は、もう旧いタイプに属する人間なのだろう(笑)。


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麻布十番「シプレ」

 この日の平日ランチは、前から一度行ってみたいと思っていた、麻布十番のフランス料理「シプレ」を初めて訪れる事に。
 麻布十番は以前交通のアクセスが悪く「陸の孤島」状態だったが、2000年に東京メトロ南北線と都営大江戸線が開通してからは、近くの六本木や広尾に比べて家賃が安かった事もあり飲食店が急増、特にフランス料理とイタリア料理店が増えた。
 この「シプレ」も2003年の開業、オーナー料理人は「ホテル西洋銀座」や大使公邸料理人等を務めた後独立したと聞く、店名の「Cypres」は店主の名前が小杉なので仏語の「杉」から取ったとの事だ、ただ仏和辞書でCypresを引くと「糸杉」とある、ゴッホが南仏で描いた縦に細長い杉で、日本にある杉の木はフランスには無いらしい。私ならもっと小さな店にして、「Petit Cypres」と洒落るかなと、詰まらない事を考えた(笑)。

 店の場所は商店街から細い路地に少し入った地下にある、一階が持帰り専門の弁当店なので、地下にこんな空間があるとは少々意外な感じがする、入口の向いには不思議なギャラリーがあっていい目印になっている。客席は24席との事だが地下でも明るく狭苦しさは感じない、予約した名前を告げ着席、マダムから料理の説明を受けるが、三種類あるランチから真ん中の3,000円のものを選ぶ事にした。

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・プチシュー

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・帆立貝のムースを詰めた煮穴子のガランティーヌ、新ゴボウとクスクスのサラダを添えて、ポートワインのソース

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・桜エビと筍、ルッコラのタリオリーニ

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・岩手白金豚のグリエ、粒マスタードのソース

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・アメリカンチェリーのタルト、レモンのソルベ

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・ミニャルディーズとエスプレッソ

 この値段でアミューズからミニャルディーズまで出るのは立派、デザートもエスプレッソもいい出来だ。
 料理は以前にこの店を利用した人から聞いていて、その情報と同じく野菜の使い方が上手く、力技系ではなく繊細で綺麗な料理、ホテル内厨房や公邸料理人の経歴によるものか、料理の実力と幅の広さを感じた、東大前にあるフレンチ「アン・プティ・トゥール」の料理と少し似た印象を受ける。フレンチなのにパスタが出る理由をマダムに質問したら、これは何度か訊かれた事があるみたいで、「シェフはイタリアンにも居た事があり、手打ちパスタも作っていた、日本人はパスタ好きなので(スープ替わりに)加えている」と淀みなく返事が返ってきた、このマダムが明るく素敵な人で、話し易く好感が持てる。

 食事の開始は貸切り状態だったが、途中に常連らしきOLさん?(バッグを持たないので)が一人で入店して来た、どうやらこの後にも一組来るみたいでそれでも3組、値段の割にはいい料理内容だと感じ、もっと客が入っても良さそうな気がするが、地下の店なのでランチでもフリでは入り難いだろうか。
 退店時には料理長が厨房から挨拶に現れた、カイゼル髭とまではいかないが特徴的な髭を生やし、饒舌タイプでは無く結構職人気質な料理人と見た。 
 私の好きな店のカテゴリーに入る、夫婦二人でやっている素敵な店だ、厳しい外食不況下でも何とか続いて欲しいと思うし、是非また来てみたい。


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私のカメラ遍歴

 昔からカメラは好きだった、あまり外出が好きでなく籠りがちな私にとって、オーディオと共に十代の頃から続けていた趣味だが、実はあまり機械には詳しくない(笑)。
 銀塩写真時代はまだ「ニコン神話」が生きていたので、「カメラはNikon、他のメーカーはカメラじゃない」みたいな事を言う先輩達の意見を鵜呑みにし、ニコンさえ買っておけば大丈夫だと思っていた、ただ当時の写真があまり残っていないので、私の場合カメラを買うまでが大事で、それから先はどうでも良かったのかも知れない(笑)。

 デジタル時代になって気軽に写真が撮れる様になったが、ニコンは対応が遅れていたと思う、そのため最初に買ったのはコンパクトタイプのキャノンのIXY200、液晶画面が極小であれで画像確認は無理(笑)、これは200万画素だったので使っている内に画質に不満を感じた、この後「デジタル一眼」がブームになり、各社が揃って新製品を発売した事もあり、続けて買ったのが同じキャノンのKISS-N、普及型の一眼レフだ、この頃から料理写真を撮りだした事もあり、これは色々な場所へ持って行き、海外旅行時も重いのを我慢して携帯していた。
 ただ、レストランで写真を撮る様になると、どうしても店や廻りの人間が気になる、私は初めて行く店では「写真撮って大丈夫ですか?」とあらかじめ断って撮る様にしているが、テーブル席はまだしも和食のカウンター席で一眼レフを取り出すのはどうも野暮ったく粋で無い、ある女性のエッセイストが、黒い一眼レフを「男性性器を連想する」と書いているのを読んだ事があるが、そこまで極端でなくても隣の席であれを出されるのは確かに唐突だ。そこで次に買ったコンパクトタイプがキャノンのIXY900、一眼レフと併用していたが段々一眼の方は使わなくなり、結果人に譲ってしまった。

 人間とは不思議で所有をしていないと新しい物が欲しくなる(笑)、そして衝動的に買ってしまったのが、パナソニックのLUMIX-G1、「マイクロフォーサーズ」と呼ぶ一眼レフの特徴であるペンタプリズムも内蔵ミラーも無くした小型・軽量の新型一眼、これは同システムの第一号機でなかなか名機だった、ただ欠点はズームレンズのため暗い場所に弱く、夜のレストランでは辛い時があった。単焦点の明るいレンズが欲しいのだが、レンズだけで3万円以上するので購入をためらっている、レンズ付キットだと安いが、レンズ単体だと高くなる日本独自の商法は何とかならないものか。MixiでもFBでもそして今年から始めたこのブログの写真は、殆どがこれで撮ったものだ。
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 最近になって、この機種も大きさが鬱陶しくなって来た、勤めを再開したので平日夜に食事に行く時に職場に持って行くのはかなり面倒、そのため新しい小型機が欲しいと思っていたが、遂に買ってしまったのがコンパクトタイプの最高峰とされるリコーのGR-Ⅳだ、まだ使い始めて日が浅く、特徴は掴み切れていないが今の処は良く撮れている、おかげでパナソニックの出番が無くなってしまった、また「誰かに譲る」→「新しい機種が欲しくなる」のスパイラルが始まりそうだ(笑)。
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 「昭和の名人」と呼ばれた写真家の木村伊兵衛は、愛用のライカで街中の対象を撮る時はまるで居合抜きのような素早さだったと伝えられている、レストランで写真を撮る時はそうありたいものだが、機械が良くなっても肝心の使い手は鞘から刀が抜けない愚鈍さが続いている(笑)。
 


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かつ敏「リブロースかつ」

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 「一番好きな食べ物は何ですか?」
 こう訊かれたら、フランス料理でも寿司でもラーメンでもなく「とんかつ」と答えると思う、これには忘れ難い想い出があるからだ。

 私が小学校4年生の時、学校の授業で描いた絵(水彩)が全国の小学生が描いた絵のコンクールで優秀賞?に選ばれた事があった、本人が知らないうちに担任の先生が出品してくれたものだが、賞状を貰ったのは後にも先にもこの時だけなので、一生に一度の「まぐれ当たり」だった(笑)。その表彰式が日本橋の三越で開かれ母と二人で出席する事になった、その日神田に勤めていた父が昼を一緒に食べようという話になり、行ったのが三越の道路を挟んで向かい側にある「かつ吉」だった、この店はそれから40年以上経った現在も同じ場所にあるが、その時に食べたロースカツの味はまさに「天上の美味」だった、それまで「とんかつ」と言えば家の近くの肉屋で売っている紙みたいに薄く固い物しか知らなかった、それが肉厚で肉汁が溢れ繊細に切ったキャベツと共に、「世の中にこんな美味しい物があるの」と子供心にいたく感激した、今思うとあまり勉強は出来なかった私が表彰された事が父母共嬉しかったのだろう、そのご褒美だったと思う。
 その父も母も既に彼岸へ旅立ったが、いまでも美味しい「とんかつ」を食べると、あの時の親子三人の光景が甦える時がある。

 「あの店は美味しい」と言われるとんかつ店は何軒も訪れたが、東京の名店と呼ばれる店は値段が高過ぎると思う、有名な上野の「とんかつ御三家」にしても何処も一人前3,000円前後だ、今はとんかつ一食に3,000円払うなら、ちゃんとしたフランス料理やイタリア料理店でデザート付きのランチを食べたいと思ってしまう、そして人気のとんかつ店では行列が出来ていたりするから、食べていても落ち着かない。
 支払いが1,000円台でそれなりの満足感があり、カウンターではなくテーブル席でゆっくり食事が出来る店として、最近よく利用しているのが、家から自転車で行ける場所にあるチェーン店の「かつ敏」だ、ここは傘下に回転寿司やラーメン店を持つRDCグループが経営している、1987年に埼玉県寄居に回転寿司をオープン、1999年にとんかつ店業種へ参入、現在は北関東を中心に数店で営業を続けている。
 飲食は個人オーナー店が好きな私だが、ゆったり出来る店の広さがあり、サービスもそれなりに良く、出てくる料理も味が均質化し安心して食べる事が出来るチェーン店の長所は認めざるを得ない、更には無休で営業時間も不変なのもありがたい事だ。
 
 利用する時は平日の昼、それも昼前に行けば空いているしゆっくり時間が過ごせる、この店での注文は、大抵は昼数量限定の「リブロースかつ定食」(1,029円)だ、「リブロース」は本来牛肉だけの名称で最も厚さがあるロース部分を指すが、最近は豚肉もこの呼び名を使う業者がある、肩ロースと通常のロース肉との中間部分になるらしい、ロースカツと比べると少し固めだが、噛んだ肉の旨さはこちらの方があると思う。

 さすがに最近は年齢のせいか以前ほど食べる機会は減ったが、それでも私にとって「とんかつ」は最高のご馳走である事に変わりない、そして或る日突然食べたくなるものだ(笑)。



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私のデザート・ベスト3

 おもにプロの料理人を対象に柴田書店が発行している雑誌「専門料理」、今月号(6月号)の特集が「デザート」で、その中に「仏伊シェフに聞く衝撃を受けたデザート&菓子 私のベスト3」という記事があり、現在第一線で活躍しているフランス&イタリア料理店の気鋭の料理人達が、各自の「ベスト3」デザートを挙げその想い出を語っている、書店で立ち読みしただけだが面白かったので、これに倣って私もベスト3を選んでみようと思った。

1 ミシェル・ブラスの「流れるチョコレートのクーラン」
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 ライオールの「ミシェル・ブラス(現メゾン・ブラス)」を訪れたのは2002年、ムニュを注文すべきかカルトにするか悩み、結局「オーブラック牛のステーキ」を注文したのだが、これが岩みたいな巨大な塊が3つ(笑)、本当にお腹がはち切れそうになり「もうデザートは無理、一口だけでも食べよう」と食べ始めたら、あまりの美味しさに止まらなくなり完食、皿まで舐めたくなった(笑)、思わず「おかわり」をしたくなった程だ。「生涯最高のデザート」と聞かれれば、やはりこれだろうか。
 その時の写真が無いので、画像はウィンザーホテル洞爺内のブラスを訪れた時のもの、美味しかったが味はライオールとは微妙に違っていた、これは技術より材料の違いだと思う。
 
2 三田コートドールの「ココナッツのブランマンジジェ」
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 料理でも名品揃いのスペシャリテが多いコートドールを代表するデザート、白い皿に盛られ白いココナッツソースに浮かんだブランマンジェはビジュアルも美しい、イタリアの現代美術家カステラーニの白いアートを連想させる、やっと自立する程にギリギリに抑えたゼラチン、控えた甘味、日本人が考える日本人が一番美味しいと思うデザート、「クーラン」が油絵ならこれは水彩画の繊細さだ、構成要素は少ないながら食材から「美味しさを抽出する」のは料理長の得意技で単純に見えて奥深い。フランスのレストランでも「ブランマンジェ」を名乗るデザートを食べたが、どれもガチガチに固め過ぎ、あれなら日本のコンビニで売っている杏仁豆腐の方が絶対美味しいと思う(笑)。

3 ラ・コートドールの「パンデピスのグラスとショコラのマカロン」
 1位、2位はすんなり決まったが、3位を選ぶのが難しかった、候補としては「ランブロワジー」のガトーショコラとバニラアイス、恵比寿に開店直後の「シャトーレストラン・タイユバン・ロブション」の栗とショコラのデザート、「レ・ヌヴェイム・アール」の森のベリーのデザート等が思い浮かんだが、ここは故ロワゾーに敬意を表し、ソーリューの「ラ・コートドール(現ベルナール・ロワゾー)」を2000年に訪れた時のデザートを選びたい、地元ブルゴーニュ名産のパンデピスをアイスクリームにしたセンスは見事、当時パティシェは店に6人いると聞いたが、個人が作ったと云うより優れた「工房作品」と感じた、これは残念ながら当時の画像が見つからなかった。

 私のベスト3は以上だが、どれも十年以上前に体験したものなので、次点として比較的最近のものを2つ紹介したい。

・エディション・コウジ・シモムラの「和栗のモンブラン」
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 ロワゾーに多くを学んだと言う下村氏が、ロワゾーの哲学に倣ったと感じたデザート、油脂使用を極力減らし、水を使って和栗のピュレを延ばしたもの、和菓子の様でいながら立派にフランス料理店のデザートとして存在している、フランス人が食べたら「甘くない、これはモンブランでは無い」と言うかも知れないが、繊細な味覚の日本人ならこの美味しさは理解出来ると思う。

・オテル・ド・ヨシノの「ティラミスのシュルプリーズ」
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 和歌山オテル・ド・ヨシノの名パティシェだった葛川氏渾身のデザート、見て楽しく食べて美味しく幸せになれる逸品、彼と手島料理長のコンビは近年の日本のレストランでは最高タッグだったと思う、なお葛川氏はヨシノグループを円満退社し、大阪市内に「カヌレ堂」というカヌレ専門店を開業した、今後の展開が楽しみ。

 こうして並べてみると、一口食べて「これは、とてつもなく旨い」と感動するデザートは1990年代までだったかなと思う、最近は油脂類・糖分を減らす傾向にあり、料理とトータルで完結する方向へ変って来た、時代的にそれが求められているのだろうが、私の様な古い人間には少々寂しい事でもある(笑)。


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亀有の新星「ティア・ブランカ」

 この日の昼に伺ったのは、私の実家があるJR常磐線亀有駅近くに去年11月に開店した「Pasta&Grill Tia Blanca(ティア・ブランカ)」、ここもWEB上で知った店だ。その情報ではオーナー料理人はイタリア料理出身だが、叔母さんがスペイン人で彼女から教わったスペイン家庭料理も提供したいとあり、興味を覚えまずはランチからと平日休みの日に行ってみる事にした。

 場所がなかなか判り難い処にあって、商店街から細い脇道に入った奥まったビルの一階、私の経験上の「いい店」の条件は備えている(笑)。店は小さいカウンターとテーブル併せても14席位、内装はあまりお金をかけていないが、店の雰囲気は明るくて寛げる、調理は店主一人でサービスは若い男性が担当、この二人のコンビがラテン系のノリで明るく元気で好感が持てた、ランチは980円でパスタ(三種)か一品料理のどちらか、これにデザートとコーヒーを加えても1,200円なので、パスタにデザートをプラスする事に。

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・ミネストローネとスパニュッシュ・オムレツ

・(フランスパンとオリーブオイル)

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・ムール貝、アスパラガスとフレッシュトマトのスパゲッティ

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・ガトーショコラ、バニラアイス、コーヒー

 ミネストローネはイタリア料理店のランチ前菜の定番だが、ここのものは濃度があってしっかりした味、スパニッシュ・オムレツはさすが本場スペインを感じさせる美味しさ、パスタは私の好みからすると少し柔らかめの茹で加減だが、良質のムール貝を多量に使いこれがいい出汁になっていて、量も下町的にしっかりある(笑)、デザートもキチンと作っているし、内容からすればこれで1,200円はコスパに優れ満足度が高い。
 ここはいい店だ、そしてまだまだ伸びそう、家が近いのに今迄この店を知らなかった事を悔んでしまった(笑)。

 他のテーブル席は小さい子供を連れた若いお洒落な夫婦とその友人?の三人組、子どもをあやしながらも料理が楽しんでいた、そこへ一人で現れたのが初老の男性客で、この二組共に常連客みたいだった、洒落た店内でイタリア&スペイン料理を昼間から楽しめるとは、昔の亀有を知っている人間には隔世の感がある(笑)、一品料理ランチでは白ご飯も出るがそれが不自然でないのが下町の良い処だ。

 最後にトイレに立った時に店主と少し話をした、35歳と聞くが本当に若い、夜は一品料理が主になるが、「タパス」と呼ぶ小皿料理も提供するとの事だ、料理やワインの値段も都心に比べたらはるかに安そうだ。東京では青山、六本木、中目黒、恵比寿にばかり新規出店が目立つが、若手料理人の中にこうして下町でやってみようと考える人達が現れたのは嬉しい事だ、頑張って欲しいし応援したい店だ。
 貰ったショップカードにはこんな事がスペイン語で書かれていた。
‘Amo les estaciones,Amo les les familias,Amo les cocina,Amo les Kameari ’
 「四季を愛し、家族を愛し、料理を愛し、亀有を愛します」
 いい言葉ですね。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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