最後の晩餐にはまだ早い


札幌・西28丁目「ラ・ブランシュール」(2012札幌食べ続け④)

 札幌在住の友人と地下鉄の出口で待ち合せ、この夜に伺ったのは、円山公園近くアメリカ領事館向いのビル内に一昨年開店したフランス料理「ラ・ブランシュール」、初訪問になるが今回の札幌旅行では一番楽しみにしていた店だ。
 料理長は中本泰弘氏、「シェ・イノ」で井上旭氏の下で学んだ後渡仏、吉野建氏の「ステラマリス」、「エレーヌ・ダローズ」等で働いた後に札幌「コートドール」の料理長に就任、この店が三田「コートドール」と姉妹店だった事から、斉須政雄氏とも一緒に仕事をしている、つまり井上、吉野、斉須と日本のフランス料理を語る上で外す事の出来ない重鎮3人と仕事をした経歴を持つ料理人だ。
 私は今から5年前、彼が札幌コートドールの料理長だった時代に料理を体験している、その時の印象では、中庸で尖った処はないが、確かな技術を持っていて安定して美味しかった記憶があった、ただムニュ全体的には、何でも「詰め込み過ぎ」な気もしたので、この辺りが年齢と共にオーナーシェフとなり、どう変わっているのか知りたかった。

 店がある場所はひらまつグループの「ル・バルエンタル」からも近いが、夜になると人通りは少なく寂しい感じがする、札幌は殆ど車で移動するからだろうか、街中を歩いている人はススキノ界隈を除くと少ない。店は新しいビルの3階にあるが、ビル自体も店も名前のとおり「白」が基調色になっている、最近の東京では黒色の店内装飾が流行しているが、個人的には白い方が好みだ(笑)。

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 我々を迎えてくれたのが接客を担当する美しいマダム、この人肌がすごく綺麗(笑)、北国美人の典型で色が抜ける程に白く「羽二重餅」みたいに艶やか、おっとりとした口調で話すので、十二単の着物を着せたら「王朝絵巻」になりそうな雰囲気(笑)、元フラワーデザイナーと聞くが店内装飾は彼女のセンスなのだろう見事なものだった。
 シャンパーニュを飲みながら説明を聞いた8,400円のムニュは、

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・イカとコリンキー(南瓜の一種)のマリネ

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・フォアグラのテリーヌ、フランボワーズのピュレ

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・キタアカリのヴルーテ

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・ノドグロのポワレ、春菊のソース

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・栃木産仔猪のロティ、ジロールとトランペット茸、ニンニクのピュレ

・プレデセール(グラスに入れたブランマンジェ?)

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・タルトタタン、バニラのアイスクリーム

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・ミニャルディーズ

・ルイボスティー

 美味しかったが要素を盛り込み過ぎだった5年前のコートドール時代より、皿の上から余計な物が減り、全体的にシンプルで且つピュアな料理になったと感じた。この「皿から物を減らす」というのは、料理人にとっては勇気が要る事らしい、若い時は気力も体力も充実しているので、ガルニやソース類を必要以上に皿に載せがちだ、年齢を重ねて「引き算」を覚えるとそれが少なくなっていく、そして行き着く先は全ての贅肉を削ぎ落した料理、例えば現在の斉須政雄氏の料理はこの領域に入っていると思う。
 中でも特に感心したのはキタアカリのヴルーテとノドグロのポワレ、少ない要素から美味しさを抽出するテクニックは、前述の三大巨匠?の中では、特に斉須氏の手法を受け継いでいると感じた。
 食後、我々の席に挨拶に出て来た中本料理長と話をしたが、年齢を重ねたのもあるが(そう言っても、まだ40歳位の筈)、顔付きはコートドール時代に比べると穏やかになり、肩の力が抜けて自然体になったと感じた、先日来札して札幌コートドールでフェアを開催した斉須氏の話題等で盛り上がってしまった(笑)。

 ここはバランスの取れたいい店だ、インテリアも素敵だし、ちょっと「隠れ家」的な雰囲気もあるので、大切な人と二人で来る時などに是非お薦めしたい、勿論この日みたいに男同士でも充分楽しめますが(笑)。
 札幌の若手料理人の層の厚さと実力は凄いと思う、あえて言えばそれに客の方がまだ追い付いていないかも知れない(笑)。


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札幌・西21丁目・スープカレー「Lavi 円山」(2012札幌食べ続け③)

 札幌二日目の昼は、特に「食」の予定は入れておらず、天気予報に反して朝から晴れた事もあり、以前から行ってみたかった真駒内の「札幌芸術の森」へ出かけるつもりだった、ここの野外彫刻群は一見の価値があると聞いていた。行く前にアクセスを確認しようと、ホテルの供用PCで同所のWEBページを見たら、何と「熊の出没により野外美術館は休館します」との文字で脱力(笑)、残念極まりないがまだ現地に行ってから知るよりは良かった。
 ホテルの部屋に籠っているのも詰まらないので、歩いて行けそうな円山動物園まで出かける事にした、過去札幌は何回か訪れているがここは初めて、ホテルから歩いて40分位、散歩には丁度いい距離で「食べ続け」をするためには、歩くのは消化を助けるので大事だ(笑)。
 円山動物園では、市内の小学生が授業の一環として無料動物ガイドをやっていて、これが面白かった、男の子は概して原稿の棒読みだが、成長の早い女の子はそこへ少し自我が加わるので、これは断然女の子達の方が面白い(笑)。
 動物達の中ではさすが本場地元?だけあり、熊達が一番元気で見ていて興味深かった、カバやライオン等南方系の動物はおおむね「やる気なし」(笑)。

 動物園を出たらランチの時間になっていて、安めの寿司屋でも行ってみようかと思っていたら、途中にスープカレー店を発見、「そうだ、カレーも札幌の名物だ」と思い、飛び込みで入ってみる事にした。

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 場所は円山地区裏参道にある「Labi円山」という店、幾つか支店展開しているグループだが、この店はそう大きくはなくテーブルとカウンター合わせても20席位か、アジアンチックなインテリアの店内はなかなか洒落ている。札幌へ来る毎に感じる事だが、札幌人のインテリアセンスは優れている、全体にシンプルなデザインが好まれる様で、「北欧デザイン」にも似ているが、更に繊細な印象がする。この後訪れる事になるフランス料理店「ラ・ブランシュール」や「Miya-vie」は、この札幌センスを体現していると思った。
 野菜が食べたかった事もあり、注文は「八百屋の野菜カレー」(飲物付きで950円)を、十種類の野菜と茹で卵が入っている、カレースープは特別に「美味しい」と思う程ではないが野菜は美味しかった、北海道の野菜は大きくて味が濃い、これはカレーに負けない、札幌でスープカレーが流行ったのも、この野菜があってこそだと思う。飲物はラッシー、これは「普通」だった(笑)。

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 札幌市内だけでも100軒近いスープカレーの専門店があると聞く、何故これだけ増えたのかについてWEBで調べてみたのだが、結局理由はよく判らなかった、北海道の乾燥した空気にスープ系の食べ物が合ったと云う事だろうか。
 考えてみると、ラーメン、スープカレー、寿司、フランス料理と札幌で美味しいとされる人気料理は、どれも札幌にオリジンがある訳ではない、何時の間にか札幌に入って来て、何時の間にか進化して有名になったと云う感じだ、この良い物は出自を問わず何でも取り入れようとする札幌人のフレシキビリティが、「札幌には美味しい物がある」と言われる理由ではないかと思うし、札幌フレンチのレベルの高さの要因もこの辺にありそうな気がしている。

 食後もまた歩いて(笑)北海道立近代美術館まで行き、開催中の「藤田嗣治と愛書都市パリー花ひらく挿絵本の世紀」展を観た、その後はホテルに戻り暫し休憩、夜のフランス料理店訪問に備える事にした。


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札幌・西17丁目「そば喜香庵」(2012札幌食べ続け②)

 「ブラッスリー・マーシュでランチを食べると、その日の午後は何も食べたくない」、こう札幌在住の友人に脅されていたが、1,500円のランチでそんな事はないだろうと軽く考えていた、でも本当に彼が言ったとおりだった(笑)。それ位あそこで出た「十勝豚のステーキ」は強烈だった。
 札幌市内のホテルにチェックイン後、満腹感から横になり少し寝たがお腹が減らない、血流を良くするために風呂に浸かってみてもお腹が減らない(笑)。このまま何も食べずに寝ようかと思ったが、「食べ続け」が目的で来たからには何か食べないと申し訳ないとの使命感?から、ホテルの供用PCで歩いて行けそうな場所にある飲食店を検索してみた、そこで引っかかったのが日本蕎麦の「喜香庵」という店、WEB情報では店主は高名な蕎麦職人、高橋邦弘氏に師事したとある。胃の具合から此処なら大丈夫そうだと思い行く事にした。

 ホテルからは歩いて10分程、大通から見ると札幌医科大学病院の裏手にあたり、フランス料理店「バンケット」も近い、夜は人通りが少なく店の回りは結構寂しいが、隣は別の蕎麦店で二軒並んでいるのは不思議、東京でも東大病院や日医大病院の近くには蕎麦店があるので、病院と蕎麦は関係が深いのかも知れない(笑)。
 店は2階にあり、店内は結構広く座敷も含めて20席位、昼は不明だが夜は主人一人だけで営業している様子だ、沖縄県の仲井眞知事を若くした様な風貌の店主は40歳代だろうか、BGMはモーツァルト、店内装飾には一貫した美意識が感じられる。

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 この店は初めての訪問である事を伝えると、主人は「おしながき」の説明から始めてくれた、「冷たい蕎麦、温かい蕎麦、それぞれ並粉と田舎の二種がある、量が少な目なので+300円で大盛りに出来る、この他に季節の蕎麦で『かきせいろ』」と『かき南』がある」との事だったので、この「かき南」(1,100円)を田舎蕎麦で注文、大盛りは昼で懲りたので「普通盛り」でお願いした(笑)。

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 暫くして運ばれてきた蕎麦には大ぶりの牡蠣が数個入って、良い鰹出汁と牡蠣の香りが混ざり合い、ようやく食欲が甦って来た。蕎麦は割と太目でイタリア料理の手打ちタリオリーニみたいな感じ、荒挽き粉のボソっとした食感と香りは独特、産地は道産と長野産を使っているとの事だ、少しツユが甘めに感じたが、これは店主の好みかも知れない、満腹飽和状態でも完食出来る美味しい蕎麦だった。

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 興味が沸いてデザートの自家製「蕎麦茶のアイスクリーム」(300円)まで頼んでしまった(笑)、これも蕎麦の香りが立ち美味しかった。

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 食後に店主と少し話をしたが、高橋氏が山梨・長坂に「翁」を営業していた時に下で働いていたそうだ、氏は北海道に来たら必ず店に寄ってくれるとの事だ、池袋「大勝軒」の山岸氏とその弟子達みたいな関係だろうか(笑)。私位の年齢になると正直云って一日に昼夜フレンチは辛くなった(笑)、「間奏曲」としてこうした店があるのはとてもありがたい、近くへ来たら一度行ってみてください。


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札幌・大通「ブラッスリー・マーシュ」(2012札幌食べ続け①)

 過去の札幌行きは全てJALを利用していたが、今回は安さに惹かれてADO(エア・ドゥ)社の「スペシャル28往復」と云うプランを利用した、往復で19,470円なので東京大阪間新幹線往復運賃より安い、メジャー航空と何か差があるのかと思ったが、サービス等は全く変わらず、万一墜落した時の保証金等が違うのかも知れないが(笑)、自分が居なくなった後には、葬儀無用戒名無用で散骨を頼んでいる友人もいるし、その交通費以上のお金は必要ない筈だ(笑)。

 新千歳到着は12時前だが、市内へ向かうエアポート快速が40分位かかるので、札幌駅到着は13時になってしまった。今回の札幌食べ続けのスタートに選んだのは、大通公園テレビ塔近くのデパート「丸井今井」別館内にある「ブラッスリー・マーシュ」、この店を知ったのは札幌在住の友人からの情報で、「とにかくハイ・コスパの店だから」との話に惹かれて行く事に(笑)、始めはフリで行くつもりだったが、「予約はしておいた方がいい」との友人の助言で、前日夜に電話したのだが、その電話に出た女性の対応がとても感じが良くて、期待を抱かせるものだった。

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 入店は13時なので「空いているだろう」と思っていたが、既に満席で空き席を待つ客が数人居た、これは予約しておいて良かった。
 昼はパスタランチ(1,000円)とスペシャルセット(1,500円)の二種類、当然後者を選ぶが、サービス担当の女性が、「何品かは追加料金になり、メインの豚肉ステーキは400円プラスで厚切りに出来る」と説明した、こちらが「結構食べる客」と思われたみたいで(笑)、そう言われたら乗るしかない、でもこれを後悔する事になるとは・・。

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・ジャンボン・ペルシェ(これは料理長からのサービス)

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・キッシュロレーヌ(+100円)

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・ベーコンと茸たくさんのパスタ

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・厚切り十勝豚のステーキ、ケッパーソース、ラタトュイユ(+400円)

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・生姜のアイスクリーム

 常連からの紹介で来たと言ったためか、前菜をサービスしてもらい恐縮、でもこのジャンボン・ペルシェは次のキッシュと共に本格派、フランス料理の王道を外れていない、「ハーフサイズ」とあったパスタは東京なら十分「フルサイズ」(笑)、そしてサービスの女性が笑いながら持って来た十勝豚の皿を見たら、こちらは引きつった笑いが出た、厚さ3センチ縦15×横20センチ程の肉塊がそこにあった(笑)、「量が多い」とは聞いてはいたが想像を遥かに上回る恐ろしさ、300gは優に超え1ポンドあるかも知れない、でもこれは食べるしかない、こうした時は満腹感が襲って来る前に早く食べ切るのが肝心だ、食べ始めるとケッパーの酸味が効いていて、以外に軽い食感だが半分位でペースダウン、後は汗をかきながら口に運び何とか完食出来た、「自分で自分を褒めてあげたい」(笑)。
 いや恐ろしい肉体験でした、でも味付けは丁寧で「ブラッスリー」を名乗りながらも十分レストラン料理だ。

 サービスは青いエプロン姿の若い女性二人、とても教育が出来ていて感じ良く、快適な時間が送れる、東京の有名店の名前だけ掲げたデパート内レストランとは大違い(笑)。そして支払いはグラスワインを加えても何と2,499円、頭が混乱して来てしまった、会計時に料理長が挨拶に出て来たが、この人絶対普通じゃない、例えて言えば大阪のレストラン「コーイン」のビストロ版という感じだ(笑)。
 いや札幌初回から恐ろしいカウンターパンチを喰らいました、この後どうなる事やら。


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亀有「ティア・ブランカ」(5回目)

 この日は平日休みだが、午後から整体治療の予定があったので、ランチに出かけたのは、自転車で行けるご近所イタリアンの亀有「ティア・ブランカ」、これが5回目の訪問になる、もうすっかり「お馴染みさん」になってしまった(笑)。此処は思い立った時にすぐ行け、今の処は予約も必要ないのでありがたい。
 この日は昼間一番乗りの客になった、いつもと同じ窓際の明るい席に座り注文したパスタランチ(1,200円)の内容は、

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・前菜(スパニッシュオムレツ、カポナータ、ツナとジャガイモのサラダ)

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・キャベツとキノコのスープ

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・自家製サルシッチャとキノコのスパゲッティー

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・パンナコッタとコーヒー

 「サルシッチャ」はイタリア版生ソーセージで、そのままの形で食べるのは勿論、ほぐしてパスタ等の料理にも使う、この荒引き肉の旨味と適度な香辛料のバランスがいい。
 この店の料理人は若くて元気な大声で喋るが、味付けは繊細で塩気もきつくなく私好み(笑)、私は東京人の割には総じて「濃い味」が苦手だが、これは多分あまりお酒を飲まないのと関係あると思う。酒好きの人は濃い目の味を好むし、酒好きの料理人が作る料理も味が濃くなる傾向がある、中には「料理はワインと合せるもの」と言い、ワイン呑みながら料理をする料理人もいるが、個人的には遠慮したいタイプだ(笑)。

 都心以外の特に下町地区のフレンチ&イタリアンは、「長年、ホテルの厨房で働いていた料理人が、退職後に地元で始めた店」みたいなケースも多く、こう言っては失礼ながら、何処となく「場末感が漂う店」になりがちだった(笑)、去年オープンのこの店ではそうした印象は受けないので、新世代の料理人が現れつつあるのだろう、今は東京都心の外食店は飽和状態としか思えず、あきらかに供給過多に感じるので、これからは最初からこうした下町で開業するのも選択肢に入れた方がいいと思う、特に若い料理人には、こうした本格的横文字系料理に馴染みが薄い地域で開店後直ぐは客が入らなくても、「自分の料理で客を集めてみせる」みたいな気概が欲しいものだ(笑)。

 パリも「ネオビストロ」と呼ばれる、若い世代の料理人が始めた比較的安価な店が大流行だが、これも大抵は家賃の安いパリ周辺区の既存のカフェやレストランを改装した店からスタートしたケースが多い。
 料理人全員が銀座や青山を目指し、無理して借金して開業しても、客の方が追い付かず結局は破綻しかねない、それにパリと違い人間が住まず外食店ばかりでは、決して面白い街にはならないと思うのだが(笑)。

 次回のブログ更新は21日(日)の予定です。


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つけ麺は嫌い?

 私は若い頃「ラーメンフリーク」、今の呼び方なら「ラーメンオタク」だった(笑)、1980年代の第一次ラーメンブームの頃で、荻窪「丸福」、渋谷「喜楽」、池袋「大勝軒」あたりが「東京御三家」と呼ばれていて、どの店も長蛇の列が出来ていた、ただ今になって振り返ると何処も肝心の味はあまり覚えておらず(笑)、長時間並んで食べた事に意義を見出していただけかも知れない(笑)。その中で「大勝軒」だけは麺とスープを分け、蕎麦屋の「もり蕎麦」みたいに冷たい麺を温かいツユに付けて食べる形態のラーメンがあり、私の記憶では「もりそば」と呼んでいたと思う。
 今回ウィキペディアで調べてみたが、それによると現在主に「つけ麺」と呼ばれる物は、その大勝軒の店主が賄い食を転用し、商品化したのが発祥とされている。2000年代になってこの店主の下で働いていた若い人達が独立開業し、東京につけ麺ブームを起こしたと記してある、それが現在も続いていて、今では「大つけ麺博」なるイベントまで開催されている。

 私は長い間この「つけ麺」が好きではなかった、スープ麺と両方メニューに置いてある店ではまず注文しなかった、東京下町で育った人間にとって、子供の頃から「ラーメンはスープに浸かった麺を丼で食べる物」と云う刷り込みが出来てしまっていたからで、どうも冷たい中華麺には抵抗があった、その大勝軒で食べてみても何やら魚臭いスープが気になり、あまり馴染めなかった。
 その私が最近よく「つけ麺」を食べる様になった、理由は年齢を重ねスープ麺の脂の強さが苦手になって来たのと、年々酷暑が続く東京の夏には、スープ麺よりつけ麺の方が断然食べ易いからだ。
 ただ、もう昔みたいに電車に乗ってまでは食べに行かない、よく行くのは我家から歩いて行ける距離にある「わた井」という小さな店、つけ麺好きには知られていて、結構遠くからの客も来ている、若い店主夫婦二人で切り盛りしていて、国産小麦による自家製麺が特徴だ、確かにつけ麺の命である麺は美味しい、ノーマルなつけ麺(この店では「つけそば」と呼んでいるが)は650円、夜ならまず並ばずに食べられるのも有難い。

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 専門店では無いが、最近食べてみて感心したのが、日清食品で製造販売している冷凍麺の「日清太麺堂々つけ麺」シリーズ。

 醤油味の黒ラベル「濃厚魚介豚骨醤油」味
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 辛味噌味の赤ラベル「辛味噌坦々」味
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 最初は「冷凍麺?」と馬鹿にしていたが、たまたま安売りしていたのを買って半信半疑で試してみた処、意外な程に美味しかった(笑)、特に麺の仕上げはいい出来で、買ったのは一人前約150円だが、この値段でこれが売られていたら、街場のラーメン店の脅威になるレベルだと思った。
 業界に詳しい人に聞いた話だが、今は調理師学校や製菓学校を卒業しても、不安定な街場の個人店には勤めず、企業の商品開発部門等に就職する学生が増えているとの事だ、長引く不況はこんな現象を生んでしまっている。専門教育を積んだ優秀な人材が企業の潤沢な資金を使い商品開発に取り組んだら、街場の個人店はなかなか対抗出来ない、ユーザーとしては安価で美味しい物が食べられるのなら嬉しいが、その背後にあるものを考えると喜んでばかりもいられない。
 日本のラーメン&つけ麺を称賛する外国人は多い、年々経済が閉塞し輸出が先細りするこの国で、少なくなった「誇れる物」の一つと言えるかも知れない(笑)。


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神楽坂「オー・トレーズ・ジュイエ」(10月)

 料理人がピークの状態でいられるのは一体何年位なのだろう、料理人育成の世界で長年活躍され、尊敬している方にこの疑問をぶつけてみた事があった、私は「十年位ですか?」と訊いたのだが、その時は「五年位では」とのかなりシビアな答えだった。でもこれは当っているかも知れない、料理以外の他の分野、例えば美術、音楽、スポーツの世界を見渡しても、本当に良い仕事をしたと言えるのはせいぜい5年から10年位がいい処で、それ以上活躍する人は勿論いるが、例えば美術の世界では自分で過去の自分を模倣する様になり、名声を得るのと反比例して作品はつまらなくなりがちだ、葛飾北斎みたいな変な爺さんは特異な例だ(笑)。
 「ピーク5年説」を聞いて以来は、現在ピーク中またはこれからピークを迎えようとする料理人を探し、上り坂を登る事に立ち会いたいと思う様になった。そしてその料理人が見込みどおりに有名になれば、「あの店に客が入らず、連日貸切り状態だった頃を知っているぞ」と嫌な自慢話が出来そうだ(笑)。

 その私が今注目している店の一つが、神楽坂に去年10月に開店したフランス料理店「オー・トレーズ・ジュイエ」だ、オーナーシェフの佐藤氏は今年40歳なので「アンファン・テリブル」なデビューではない、雇われ料理長で実績はあったが、活躍の場が横浜だった事もあり、東京では殆ど知られていない料理人だった(と思う)。その店を知ったのは偶然で、勤め先から近くて良さそうな店は無いかとWEB検索している時にたまたま見つけたもの、今年7月の初訪問以来この日が4回目の利用で私としては異例の頻度だ、楽しみにしていた月替わりの昼メニュー(2,300円)の10月分は、

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・ブーダンノワール、バターナッツカボチャのグラッセ(これはメニュー外)

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・鯖のアルザス風マリネ、ポワローとポテトのクリーム、リンゴのカシスウーロン煮

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・ボルドーだがブルゴーニュ型のボトルを使う変ったドメーヌ‘Launay’の白ワイン、品種はミュスカデル中心で味も個性的(グラス800円)

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・メヌケのロースト、根菜のオレキエッテ

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・仔牛のロールステーキ、玉ねぎのキャラメリゼ、赤ワインソース

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・マシュマロとガトーショコラのカダイフ包み

 佐藤料理長は毎回感じる事だが、特に魚料理が上手い、前菜は本来だと鰊を使うアルザス料理を鯖に替え日本人に合せて軽やか、次のメヌケは皮目を強く火入れして根菜で作ったスープ仕立で供する、それぞれの魚の質に合せた火入れは的確、肉料理は食べた時に強目の酸味を感じたので、「バルサミコですか?」と訊いたのだが、意外にもビネガー系は使わず赤ワインだけだそうで、これだけ酸味を尖らす手法はフランス的だ、デザートも良くなった、カダイフはやはり料理に使うよりデザートに向いた食材だと思う(笑)。

 この内容でこの値段は立派だと思うが、料理長から聞いた話では平日昼の客入りはあまり良くないそうだ、これはこの店だけでなく神楽坂全体の傾向で、ランチタイムで賑わうのは何処も客単価1,000円以下の店、昼食に2~3,000円払う人はごく一部の人気店を除き皆無の現状らしい。帰りに飯田橋駅まで歩いてみたのだが、ランチタイム後という事もあるが、客が入っていたのはパン店と甘味店位で、以前に平日の麻布十番を歩いた時と同じ印象だった。
 飲食店にとって「冬の時代」はまだ続きそうだ、それでも厳しい時代に船出し、将来性が感じられる才能は出来る限り応援したいと思う。
 街を歩いていても280円の牛丼店ばかりでは、「食文化」は決して生れない筈だ。


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藤ノ木土平「斑唐津湯呑」

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 住んでいる区役所の納税課から封書が来たので、「何事か」と恐る恐る封を開けたら、「住民税を納め過ぎていた事が判明したため、相当分を還付します」との通知で、ランチ1回分位の金額が返ってくる事になった、これは嬉しいと思ったが消費するだけでは勿体なく、何か後に残る物を買いたいと思ってネットオークションを見る事に、結局は一番興味がある「陶磁器」に辿り着き色々探していたら、私の好きな作家である、唐津の藤ノ木土平氏の「湯呑」が出品されていて、出品価格が還付される額と大体同じだった事もあり、「これだ」と思い入札したら競合相手も現れず運良く落札出来た、数日後送られて来たのが画像の「斑唐津湯呑」だ。

 作者の藤ノ木土平は1949年新潟県生れ、最初は画家志望だったが、その後陶器の製作を開始、唐津焼、美濃焼の技術を学び、1981年から佐賀県唐津市に登り窯を築き独立、以降は桃山時代の唐津焼の再現を目指して作品を作り続けている。
 唐津焼とは安土・桃山時代に現在の佐賀県及び長崎県の一部で生産が始まった陶器の総称で、朝鮮から渡って来た陶工達により技術が伝わったとされている。初期の桃山時代に作られた物は「古唐津(こがらつ)」と呼ばれ、その希少性から骨董マニア垂涎のアイテムになっていて高額で取引されている。特徴は荒い陶土による豪快な造形で、萩焼などと比べると男性的な印象が強い。
 藤ノ木氏は自身のWEBページでも語っているが、この古唐津時代の作品を現代に甦らせる事を目指している。
http://doheigama.hananusubito.net/

 ただ、古作と寸部違わぬ物を作ってもそれは「模倣」でしかない、彼の作品には更にそれを超えようとする「新しさ」も感じられる。

 この湯呑で使われている「斑唐津(まだらからつ)」とは、唐津焼の技法の一種で、釉薬に藁灰を使って焼成し、その途中粘土中の鉄分が溶け出し表面に黒や青の班点が現れた物を呼ぶ、古くから抹茶椀などに使われていた。
 この湯呑は釉薬の下は唐津独特のザラっとした肌触りの土で、底を持ちあげる高台も無く、全体的には小振りな作りもあって、湯呑と云うより大き目の「ぐい呑み」の様な趣がある。見かけは荒々しい豪快さがありながら、持ち上げるとしっとりと掌に馴染む柔らかさも感じる、熱い茶を入れると温かみがじんわりと伝わって来る。昔から「一楽、二萩、三唐津」と、理想の国産抹茶椀三選に茶人達から選ばれ使われていたが、その理由も頷ける、荒い多孔質の粘土と厚い釉薬が生んだ「奇跡の焼物」と言えそうだ。

 これは飾って眺めてもいいが、やはり毎日の食卓で使いたい物だ、一番似合うのは熱い焙じ茶だろうか、ブラックコーヒーもいいかも知れない、「日常の贅沢」に、こういう本物をさりげなく使える大人でありたいものだ(笑)。 


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  2. 器・骨董
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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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