最後の晩餐にはまだ早い


「ボルディエ」の海藻入りバター

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 画像はフランスへ旅行されていた方からいただいた「ボルディエ」のバターで、有塩海藻入りのもの、私も名前を聞いた事はあったが、実際に食べるのはこれが初めてだ。
 フランスのバターと言えばエシレ(ECHIRE)が有名だが、これは中西部ポワトゥー・シャラント地方の酪農で知られた村が産地、昔からフランス国内外のレストランではよく使われていた、無塩バターが主流でレストラン等のパン用に出す時は、別に岩塩などを添える事もある。
 一方、このボルディエは北西部ブルターニュ地方の海に突き出た城壁都市サン・マロにあるフロマージュリエ(チーズ店)の名前、店主がジャン=イヴ・ボルディエ(Jean-Yves Bordier)氏で、その名前を採ったものだ、ショップの製品なのでエシレに比べたら生産量は少ない、ブルターニュでは無塩タイプもあるが、海に近く豊富な塩を使った有塩バターが主流との事だ。
 このボルディエについては、大阪の辻調グループのサイトで詳細な紹介があるので、こちらを見てください。
http://www.tsujicho.com/oishii/recipe/letter/totteoki/butter.html

 この店があるサン=マロは、カンカルの「メゾン・ド・ブリクール」とモン=サンミシェルへ行くために2003年に訪れているが、その当時もこの店はあった筈だが全く気が付かなかった、マスコミにもそれ程知られておらず、地元の人だけが利用する店だったのだろう、リヨンの星付きレストランが揃ってその店のチーズを使う、「メール・リシャール」にしても市場内のごく普通のチーズ店だったし、名店というのは何処も目立たず、意外とさりげないものかも知れない(笑)。

 海藻入りバターは、ブール・ダルグ(Beurre d’algue)と呼ばれ、海苔の様な独特の香りがする、例えはよくないが「青海苔煎餅」みたいな風味(笑)、これをパンに付けるが、この場合は「塗る」と云うより「付ける」「載せる」感覚に近い、身体には良くないと思うが、チーズやフォアグラみたいな感じだ。料理に使ってもいい、ポトフの仕上げに少量入れるだけで味がグレードアップする。
 味は濃厚だがあまりしつこさは無い、材料の牛乳、塩が良質なのだろう、幾らでも食べられる気がして、ちょっと恐い(笑)。これと美味しいバゲットかパン・ド・カンパーニュがあれば、後は何もいらない気がする、パンと一緒にこれを出すレストランもあるが「美味し過ぎる」のが欠点(笑)。

 世界的な健康志向から「バターは身体に悪い」が定説になり、日本では品不足もあって、一時レストランでテーブルからバターが消えかけた時があったが、最近になって復権して来た様に感じる、やはりパンには最高のパートナーである事は間違いない。
 私は過去人間ドッグで「初期の脂肪肝」と指摘されてから、極力フォアグラ、チーズ&バターは控えていたが、こうした美味しいバターを経験してしまうと、もう我慢が出来ない(笑)、いただいた物は殆ど無くなってしまった。

 もし明日世界が終るとしたら「最後の晩餐」には、近江「招福楼」で白いご飯を食べると思っていたが、その次にはこのバターをタップリ美味しいパンに載せて食べたい、それで思い残す事はもう無い(笑)。


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青山「フロリレージュ」(11月)

 この日は毎回楽しみな青山「フロリレージュ」でのランチ、2ヶ月前に休暇を取って予約の電話、2ヶ月後に再び休暇を貰って本番というパターンが定着した(笑)、でもそこまでして利用したいと思うのはこの店位であり、私は決して予約競争マニアではない(笑)、「予約の取れない店」は出来るだけ敬遠し、「まだ人に知られていない店」を発掘?する方が好きなので、他の人が行っている有名レストランは、あまり利用していないと思う、この店が例外なのは毎回料理に新鮮な驚きがあるのと、特にランチでのキャリテ・プリの高さに感心しているからだ。

 予約時間の12時丁度に入店、この日は珍しくかなり年配の女子会四人組が利用していて、若い人が多いこの店ではちょっと浮いていた、でもその次は多分私の席だろうから、女子会が奥の個室でその反対側の壁際が私達、真中を若い客にしたのは王道の席配置だと思う(笑)、私が店側の人間でもそうする。隣席の3人組は食業界の人だろうか、どう見ても「堅気」の雰囲気ではなかった(笑)。
 ランチは4,200円のプリフィクスで、隣席がそうだったがあらかじめお願いすれば、更に料理をプラスする事も可能みたいだが、この日も通常メニューから選ぶ事に、

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・アミューズ(オリーブのパン・これは毎回同じ)

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・和歌山産足長海老とセップのソテー

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・本日の内臓料理(アンドゥイエット、蕪と芽蕪)

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・同 二皿目(牛シビレ、ブーダンノワール)

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・パイナップル風味のリ・オ・レ、ショコラムース、ショコラの卵、コーヒーソース

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・卵の格納庫?(絵はスタッフが描いたそうだ)

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・ミニャルディーズ(ホオズキのパート・ド・フリュイ)

 前菜は四品、メインは三品からの選択、メインの肉料理はシャラン鴨か内臓料理かで迷ったが、シャラン鴨は美味しいのは認めるが、どうしても養殖のハマチみたいな「作り物」の印象があって、ここはあえて他の人が殆ど頼んでいないアンドゥイエットにしてみた(笑)、それにしても他店ならまず追加料金のシャラン鴨を同料金で提供するのは立派だ。
 足長海老の身はブリブリした新鮮な食感、そこへ泡状のソースが絡み、極薄に切ったセップ茸が良いアクセントになっている、頭がベニエになって付いていて、サービスが「お好きでしたら食べてください」と言ったが、勿論全部食べた(笑)。
 アンドゥイエットは内臓を荒挽きにして食感を残し、豚バラ肉で包んだもの、想像していたよりずっと繊細で食べ易く、これは日本人料理人ならではの料理だ、ガルニの蕪グラッセとの相性も抜群。肉料理二皿目は牛シビレ、シビレとは胸腺&膵臓で仔牛なら「リー・ド・ヴォー」になる部位、これを軽く焼いてブーダンノワールをソースにして食べる、こう書くとコテコテの料理になる気もするが、あくまでも軽く仕上げるのがこの料理人の優れたセンスだ。
 そしてこの店の特徴でもあるのがデセールの美味しさで、これは都内のレストランでも出色、専任のパティシェはおらず料理人が知恵を出し合って作るそうだが、この日選んだのは、「玉子かけご飯」をイメージしたと云う、米を使った「リ・オ・レ」、フランス流の作り方だと重くなるので、この店は色々試してみた結果、パイナップルのピュレを混ぜ酸味を加えているとの事、アイディアと遊び心満載でそれでいて食べて美味しいと云う、ありそうでなかなか無い美味しさだった。そして毎回思う事だが、駒場東大「ル・ルソール」のパンは料理との相乗効果が素晴らしい。

 この内容をランチとしても4,200円で提供されたら、周囲の店は大迷惑だろう、私がフランス料理の料理人ならこの店の近くでは営業したくない(笑)。サービスも過不足なく快適、欠点が見つからない店だが、あえて言えば和食器みたいなプレートが個人的にはあまり好きでは無い事と、店の責任ではないが「予約の取り難さ」か。
 この若い料理人には、ショパン本人の演奏を聴いたシューマンが言った有名な言葉、「諸君、脱帽したまえ、天才だ!」と降参するしかない(笑)。


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浅草「オマージュ」(11月)

 この日はFacebookを通じて親しくなった大阪のグルメなご夫妻が上京、ランチをご一緒しましょうと云う話になり、私のホーム?でもある浅草「オマージュ」で合流する事になった。夫氏は大阪でも名の知れたブロガーであり、会うのは楽しみでもあったが、前夜は青山「フロリレージュ」に行かれたそうで、その後の店は分が悪いのではとの心配も実は抱えていた(笑)。

 日曜日の浅草は凄い人出で、一時少なくなっていた外国人も増加、全体的に訪れる人は若くなっている気がする、今の若い人達に浅草という街は魅力があるのが不思議な気もするが、スカイツリー効果もあるし、あまりお金をかけず歩いているだけで観光気分になれるのがいいのかも知れない(笑)。
 最近のオマージュは土日は殆ど満席、平日でも7割前後の入りと聞くので、フロリレージュ程では無いにしても、外食不況下の東京では充分人気店に入れていいと思う、客層も「わざわざこの店に来る事が目的」という感じの人で埋まっていた。

 12時に集合後ご夫妻と挨拶を交わし、あらかじめお願いしていた6,300円の昼メニューは、

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・アミューズ・ブーシュ(蟹とキャビア、茄子のピュレ&クルトン)

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・フォアグラと生ハムのルーロー

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・セルフィーユ・チュヴェロのヴルーテ、帆立貝のポワレ

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・和歌山産コロ鯛のポワレ、ジュ・ド・クリュスタッセ

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・蝦夷鹿シンタマのスパイシーパン粉焼き、ソース・ポワヴラード

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・トンカ豆の香るショコラのガトー、ローストしたトンカ豆のアイスクリーム

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・ミニャルディーズ(人形焼型のマドレーヌ、みたらし団子のマカロン、「小桜」のかりんとう)
 
 荒井料理長の料理は一時「ア・ラ・アサクサ」を強調していたが、この日はミニャルディーズ以外そうした面は薄れていて、原点回帰と云うかフランスそれも荒井氏が働いていたレジス・マルコンの料理を連想させるものがあった、「セルフィーユ・チュヴェロ」は根菜の一種で、最近フランスでよく使われている食材らしい、このヴルーテと帆立の相性は良かった。続くコロ鯛も甲殻類のジュとの取り合せはいいが、上に乗った海老は大き過ぎた気もする。蝦夷鹿の料理は簡単に云うと「鹿カツ」(笑)で、皿中央のソースを付けながら食べる、何となく大阪の「串カツ」を連想し、「二度漬けはアカン」と言いたくなってしまう(笑)、パン粉の量はもう少し減らした方がいいかも知れない。
 前回食事後のブログで、「パンとデセールはもう少しクオリティを上げて欲しい」と書いたが、今回のデセールはなかなか良かった、思わず山田支配人に「作る人替わった?」と確認してしまったが、現在臨時のパティシェ担当が応援に来ているそうだ。
 札幌でも思った事だが、今はフランス料理の技術に関しては、日本の若手料理人は高いレベルで拮抗していると感じる、あとはレストランとしての満足度を左右するのはデセールやパン、そして店のアンビアンスとサービスの筈だ、特にデセールの重要度は高くなっている、出来ればこのレベルを保って欲しいし、あまり美味しいと思えない今のパンも替えた方がいいと思う。

 グルメなご夫妻とは在阪、在京レストランの「裏話」などで盛り上がってしまった(笑)、色々と差し障りがあり、残念ながら此処に書けない話が多かったが(笑)。でも同好の士とはすぐ打ち解ける事が出来るもの、「食」を巡る会話は昼の最後の客になるまで続いた。
 最後に荒井料理長が挨拶に現れたが、それまで食べた繊細な料理と作った人間のギャップに驚かれたみたいで(笑)、特に奥さんの方は「大阪に連れて帰りたい、お笑い芸人(兼料理人)になれるキャラですね」と太鼓判を押していた、関西人が認めるなら本物だろう(笑)。
 H氏夫妻、荒井料理長、マダム、山田支配人ありがとうございました、楽しい午後になりました、次は私にはアウェイの大阪で第2戦目ですか(笑)。


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高原敏作「備前丸壷」

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 食レポが続いたので、今回は口直しの意味も込めて(笑)、「焼物」の話をする事にしたい。画像は先日ネットオークションで落札した、備前の物故作家高原敏作の壺で、高さ17cm、直径20cmの丸型、丁度茶室の床等に花を飾るのに適当な大きさの物だ。

 備前焼はご存知の方も多いと思うが、岡山県備前市で焼かれる炻器(せっき:陶器と磁器の中間的性質を持つ焼き物)の総称で、遠く平安時代からからの歴史を持った、「六古窯」と呼ばれる日本古来より続く陶磁器産地の一つで、特徴は釉薬を使わずに焼成、窯の中で火の力によって生じる「窯変(ようへん)」と呼ぶ独特の模様が個々に違う事。桃山時代には茶の発展と共に茶陶として人気になったが、江戸時代以降は茶道の衰退と有田等による磁器生産が増加した事により人気が衰える。昭和になってから後に人間国宝となる金重陶陽らが桃山陶への回帰を目指し、芸術性を高めた器を製作、北大路魯山人等も高く評価した事から復興に繋がった。
 焼物好きは、最初は染付磁器あたりから収集が始まり、最後はこうした無文様、無釉薬の焼締陶器や白磁・青磁に行き着くと言われている、絵画で言えば具象絵画から抽象絵画の世界へ行く様な感じだ。

 この壺の作者、高原敏は昭和9年(1934)生れ、備前で最も歴史が古く金重陶陽を輩出した金重利陶苑で修行し、個人作家として独立後は陶歴を重ね受賞歴多数、息子の高原卓史も備前焼作家として活躍中だ、惜しくも昨年78歳で逝去してしまった。作風は男性的で豪快な作家が多い備前の中では、比較的優しく女性的な印象がする。実はこれが驚くほどに安く入手出来てしまった、ここに書くのを遠慮したくなる程の金額だった。

 長期デフレが蔓延するこの国だが、衣料品や食品、外食などの値段が安い事に目が行きがちだが、ここ20年で一番値段が下がったと感じるのが、骨董・中古品の書画や陶磁器類、TVのお宝鑑定番組では相変わらず馬鹿みたいな高額の鑑定が行われているが、現実はもっとシビアな世界で、値崩れ的に価格が下落している。特にネットオークションが頻繁になったここ10年は、以前なら数万円のレベルだった李朝や中国の陶磁器などは、物によっては数千円などという値段で取引されている、長引く不況で皆「買う」より「売る」になってしまった結果の様だ。
 日本の焼物でも値段がそれなりに付いているのは「人間国宝」の作家位で、他は惨憺たるものだ、骨董業の人に聞いたのだが、今は特に「お茶」を嗜む人が激減し、茶碗等の茶道具が売れず、売却に持ち込まれるのもこれらの品物が多いそうだ。

 コレクターとしては、昔ならとても買えなかった物が安価になるのは嬉しい事なのだが、器作家や流通業者はそれを売る事によって生計が成り立つ世界だ、考えたら喜んでばかりもいられない。料理も同じだが、作り手が精魂込め作ったものが適正な価格では売られないとなると、これは「文化」とは言えないし後継者も育たない。
 総理大臣や日銀総裁が変わってもデフレが続くのがこの国が抱える一番の問題、早急な対策をしないといけないと思う。


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札幌・西18丁目「プロヴァンサル・キムラ」(2012札幌食べ続け⑦)

 3泊4日の札幌食べ続け旅行もついに最後の店になってしまった。
 4日目の昼に訪れたのは、道立近代美術館近くのフランス料理「プロヴァンサル・キムラ」、2年ぶり再訪問になるこの店を最後に選んだのは、美味しくて幸せな気持ちで札幌を旅立ちたかったからで(笑)、料理もそうだがこの夫婦二人で営む温かいおもてなしの店は、一度行ったら忘れられない魅力に満ちている。

 遠くからでも目立つ見覚えのある黄色い外観の店に入ったのは昼の12時だが、既に2組着席していて、私の後に来た夫婦も含めて全て常連客みたいで、接客を担当するマダムと皆親しげに会話をしていた、現在調理場は団体客が入った場合等以外は全て一人で担当しているらしく、そのためか料理人は客の退店時しか客席には出ない、調理場一人客席一人の最低限の配置だが、それでも全く不都合は感じさせないのは立派、このあたりは先行して個人レストランとして経験を積んでいる強みもありそうだ。

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 通常のランチコースではなく、あらかじめお願いしていた夜昼共通の「旬のおすすめコース」で、肉料理は3種あるうちから獲れてからまだ日が浅いと聞く、蝦夷鹿を注文する事にした。

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・アミューズ(イカと野菜のグラタン)

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・ビーツのコンソメジュレとカブのムース、カラスミとイクラ

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・カナダ産リー・ド・ヴォーとキノコのソテー、生ハム

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・タスマニアサーモンのポワレ、旭川の産直野菜

・パスティスのソルベ

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・フレッシュな蝦夷鹿のステーキ、ソース・ポワヴラード、リンゴのピュレ、黒大根と栗

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・イチジクのコンポート、ロックフォールチーズソース

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・栗のクリームを包んだビオの栗粉のクレープ、マダガスカル産バニラのグラス
・ミニャルディーズ(マカロン、カリソン他)

 木村料理長の料理は私とケミストリーが合う(笑)、「Miya-Vie」の鋭角な洗練や「ラ・ブランシュール」の凝縮した端麗とは違って、あくまでも手法は正攻法でフランスそれもプロヴァンスに根差したもの、30歳代の若手料理人達が作る、スペインや北欧が混ざった最先端の料理とは少し方向が違うが、食べてどこか懐かしく温かく、しみじみと美味しい。フランスそれもパリではない地方都市の、地元民に愛され支持されているレストランで食事をした時みたいな感じと言えば、フランス通の人なら多分判ってもらえると思う(笑)。

 北海道の野菜は美味しいが、特にこの店は料理長の実父が旭川で農園をやっていて、そこから直送される野菜を主に使い、新鮮で輸送ストレスの少ない美味しい野菜を食べる事が出来る、この素晴らしい野菜達がある事で、北の地で「プロヴァンス」を再現出来るのだと思う。
 肉料理で料理長が「特にお薦めしたい」と言った本場の蝦夷鹿は、若鹿の猟をしてから日が経たず、寝かせて(熟成させて)いないもの、ノエルの頃に東京で食べられる熟成した赤身の鹿が「戻り鰹」だとしたら、これは初夏の頃のフレッシュな「下り鰹」の鮮度で、この若々しい美味しさは東京ではまず味わえないだろうと思う。
 この店のデザートはフランス的に甘さも濃さもあり、今回訪れた店の中では最上位に挙げたいものだった。

 そしてこの店の魅力を更に増しているのが、ソムリエールも兼ねる素敵なマダムのサービスで、常連客達も彼女と話をするのが楽しみで来ている様にも感じられた。
 他の客が帰った後に料理長とマダムと揃って話しをする事が出来たが、9月にプロヴァンスとパリに研修に行かれて来たそうだ、そのせいだろうかこの日の料理には日本のフランス料理とは少し違う、フランスの香りが十分感じられるものだった。
 最後は二人のお見送りを受け、素敵で名残惜しい時間は終わってしまった、この店は次に来る時には、思わず「ただいま」と言ってしまいそうな気がする(笑)。

 3泊4日駆け足で巡った札幌食べ続け、今回も素敵な料理と素敵な人達と出会う事が出来た、東京と同じく「外食不況」の厳しさも感じるが、札幌の飲食店で働く人とそこへ集まる人達は皆笑顔が素敵だ、真面目な仕事をしていれば何時か人は認めてくれるもの、この日本が誇れる美食の街が、これからも健在である事を願ってやまない。


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札幌・東本願寺前「らーめん五丈原本店」(2012札幌食べ続け⑥)

 前日の夜とこの日の昼、そして翌日の昼とフランス料理店訪問が続くため、この日の夜は間奏曲として、これも札幌名物のラーメンを食べに行く事にした(笑)。札幌でラーメンと言えばやはりこの店しかない「らーめん五丈原」、本店で食べるのはこれが3回目になる、この店はなかなか説明し難い場所にあって、ススキノから西に向かった繁華街の外れ、店の前には「東本願寺」があり夜は結構寂しい場所だ、それでも深夜3時まで営業しているので、昼は学生中心の若い層、夜はタクシー運転手等に人気で、行列が出来ている事もある。

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 入店は6時半頃だったが、この日は札幌ドームでクライマックスシリーズの試合があった影響か行列はなかった、店の人気メニューは「とんしお」「みそ」ラーメンに「チャーシューおにぎり」だが、この日は新作の「牛肉麺」を試してみる事にして食券を購入した。
 店長が自ら作った牛肉麺、細目の麺にポタージュみたいに乳化したとんこつベースのスープは「とんしお」等と同じだが、そこへ「ブフ・ブルギニョン」の様に煮込んだ牛肉が加わる、更に背脂がかかって、ここまででも凄いボリュームだが、そこへ普通は入らない筈のチャーシューまで入っている(笑)、こうなると丼の中はムニュ・デギュスタシオン状態、「この日は軽く済ませよう」とした期待?は見事に裏切られた(笑)。

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 全部は食べられないかなとも思ったが、見た目より軽目の味でスルスルと入って行き、結局完食、少し甘く味付けした牛肉は柔らかさと塊肉の旨さを感じるもので、友人の言葉を借りさせてもらうと、「旨い旨い旨い最高大満足美味美味美味!」(笑)。
 実はこの店のラーメンは本店以外でも何回か食べているが、やはり本店で食べるのは格別、ライヨールの「ブラス」と「トーヤ・ブラス」位の違いはある、全国の皆さん、何処かでこの店のラーメンを食べて「美味しい」と思ったら、一度は本店まで食べに行きましょう(笑)。

 1回の食事に1万円使う札幌フレンチも勿論いいし、千円でお釣りが来る札幌ラーメンも美味しい、これは「食都」として考えた場合すごく重要な事だ。上の方ばかり注目されていてもこれは「砂上の楼閣」みたいなもので、土台になる日常食のレベルが充実していないと、やがて衰退する運命だと思う。スペインのサン=セバスチャンが食都として世界的に注目されたのも、三ツ星レベルのレストランの充実度と同時に、客単価の低いバル街のレベルの高さがあったからだ、この点札幌は大阪と並んでピラミッド型の図式が上手く機能していると感じる。

 食に携わる人間のモチベーションの高さを感じるこの街、市街地だけでもラーメン店は300軒以上あるそうだが、東京と同じく長期デフレと不況に苦しんでいても、志の高い人達は必ず残ると信じたい。
 外は急に寒くなったが、作った人間の人柄が感じられる、心に沁みる温かく美味しいラーメンでした。

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札幌・西23丁目「レストランMiya-Vie」(2012札幌食べ続け⑤)

 「札幌食べ続け」もかなり煮詰まってきた3日目(笑)、この日の昼に訪れたのは地下鉄円山公園駅から南に向って暫く歩き、住宅街に現れるフランス料理店「Miya-Vie」だ、オーナー料理長は横須賀雅明氏、レジス・マルコンの「オーベルジュ・クロ・デ・シーム」等で働いた後に、ウィンザーホテル洞爺内の「ミシェル・ブラス・トーヤ・ジャポン」の日本人料理長に就任、現在は仏オンフルール「サ・カ・ナ」のオーナーになった、アレックス・ブルダス料理長と名コンビを組んだ後、2007年に現在地にて独立開業した、私はこの店が始まった年に訪れており、今回5年ぶりの再訪問になった。
 前回は開店後間も無かったので、店内は何処となく落ち着かない印象も受けたが、打ち放しコンクリートの壁面は経年で変化して、なかなかいい雰囲気になっていた、店内装飾には何処か「ブラス」を連想させるものがある。

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 12時の入店時には既に数組が食事を始めていた、札幌は大阪と同じく昼の開始が早い、入口に近い丸テーブルを独占し、サービスの女性から渡されたのは3種類のメニュー、このうち4,500円のものは肉料理が前回来た時と同じ牛肉だったので、2,800円のメニュー「Hana」を注文する事にした。

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・プチブシュ「レンズ豆、フロマージュブランと鶉の卵、黒糖と酸味をアクセントに」

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・Miya-Vieのシンボルマークから、葉野菜、実野菜、根野菜を海の香りでつつみ、

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・自家製パンは2種類、

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・生姜とココナッツの香る冷たい大根のスープ、マイカ、ブロッコリーと三つ葉、オクラを添えて、

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・蒸し焼きにした新冠産黒豚肩ロース、茄子、磯の香りのクリーム、熟成にんにくのペースト、オレンジ、

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・サングリアでコンポートしたプルーン、フレッシュチーズのクリーム、赤紫蘇のシャーベット、胡麻のサブレ、

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・ミニャルディーズ(生姜のパウンドケーキ、わらび餅)

 食べているうちに、不思議と身体がリラックスして、何故か北海道の豊かな緑と真っ直ぐな道を連想してしまった、それだけ料理は自然に根差していて繊細で鮮烈、「大根のスープ」は和食の「擦り流し」の様な形態の料理で、繊維を残したピュアな大根のスープが連日の食べ続けで疲れた胃に浸みて、身体が清浄になれる気がした(笑)。
 新冠産黒豚肩ロースの蒸し焼きは、ブラス・トーヤで体験した仔羊の火入れそのままで、まるで出来立ての餅の様な柔らかく弾力のある食感、イタリア産の白ナスがいいアクセントになっていて、これは今回の札幌旅行中の「べスト・プレート」になりそう。
 感心したのはパンの美味しさ、粉が良いからだろう、札幌で食べるパンは概ね美味しいが、中でもこの店のライ麦粉を使ったパンは格別だった、「パンは大きく焼いて切り分けて食べるのが美味しい」は私の持論だが、この料理人も一番美味しい食べ方を知っている。
 
 以前にはなかった「箸」が置いてあり、隣席の女性達はそれを使って食事していた、この5年間に料理人は「和」へ傾倒して行ったと感じるが、横須賀料理長と浅草「オマージュ」の荒井料理長はレジス・マルコンの下で働いていた同僚、現在オーナーシェフとなった両者共に「和」へ接近しているのは興味深い、和食の調味料や技法を積極的に使いながらも、スタイルはフランス料理の枠内で仕事する荒井氏と、形態としては和食を取り入れながら、料理はフランスから外れない横須賀氏の違いは面白い。

 この値段でこの料理内容は「お見事」の一言、決して高級食材は使っていないが、「ミシェル・ブラス」の自然と食材へリスペクトする精神は十分受け継いでいると感じた。
 サービスは開店時に居たベテラン男性は交替したが、男女二人による丁寧なサービスは心地よかった。退店時に挨拶に現れた料理長に開店直後に訪れた事を話したら、覚えていてくれたみたいだ。
 此処は札幌を代表する名店になれる要素は備えている、更なる躍進が期待出来そうな店だ。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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