最後の晩餐にはまだ早い


神楽坂「オー・トレーズ・ジュイエ」(2013年2月)

 濃厚体験だった「関西食べ続け」のダメージ?から回復し、旅行後に東京で最初に訪れたのは、定点観測中のフランス料理店、神楽坂「オー・トレーズ・ジュイエ」、訪れるのは昨年末に私が企画し、東京圏を代表する名だたるグルメ達?を集めて開催した、「ノエルとマリアージュの集い」以来だ(笑)。
 今回は職場の仲間を連れて行ったので、食の達人を揃えた前回とは違って気楽な集り(笑)、この店は職場のある駅からは都営大江戸線一本で至近だし、駅からも近いのでありがたい。
 2月のディナー「ムニュ・クリアティフ」(4,800円)の内容は、

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・牡蠣のフラン

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・ハム、人参、青菜でファルスを包んだ前菜

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・パンのスープ、その下にはアリゴ

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・ハムとブロッコリー、黒キャベツ

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・カスベ、トマトのタタン

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・鹿児島産馬肉を野菜とブロシュット仕立で、バルサミコと竹炭

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・ダックワーズ、ミルクのカプチーノ
・エスプレッソ

 料理は口頭での説明のため、記憶力が衰えているので(衰えているのは記憶力だけではないが(笑))、食材や料理名は間違っているかも知れません。
 この全7品で4,800円のムニュは納得の内容、高級食材は使わなくても、工夫ある組合せと的確な調理で、充分楽しめる料理構成になっている、特に料理長が得意とするのは野菜と魚料理、この日もカスベとトマトを「タルトタタン」状にしたものと合わせた一皿は特に良かった、肉料理は鹿児島産馬肉、赤身で歯応えがあり、フランスで食べる牛赤身肉に似た食感だ、これは料理人が特に気に入った食材との事で、可塑性もあるし面白いと思う。
 話は逸れるが今年全欧州を騒がせた馬肉混入問題の報道で、英国と周辺国では馬肉を食べない事を初めて知った、彼等にとって馬は乗るものであって、食べるものでは無いらしい(笑)。
 
 関西で体験して来た「オテル・ド・ヨシノ」や「コーイン」のクラシック料理がヘビー級ボクサーなら、この店に限らず今の東京フレンチは、総じてライト級やウェルター級ボクサーだなと感じる(笑)、この店みたいに基本にクラシックがあるのは感じさせても、それを都会的・現代的にリファインさせた「ネオ・クラシック」が主流だと言えそうだ。
 ちなみに私はどちらも好きだし(笑)、「美味しければ、どっちもあっていいじゃないか」と、原典主義とは遠い人間だ(笑)、ただこの日も職場の女性を連れて行って感じた事だが、フランス料理フリークではない、「普通の」女性客には、こうしたライトでお洒落な「東京フレンチ」のスタイルの方が受ける事は間違いない、特に4割打者は必要とされていない気もする(笑)。

 この日の料理で、関西方面にばかり熱くなり過ぎていたと反省(笑)、東京フランス料理の料理人達の実力と層の厚さを認識した夜だった。


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「4割打者は何故消滅したのか」(2013春関西食べ続け-あとがき)

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 濃厚な「関西食べ続け旅行」から帰って来てからは、ヘビー級ボクサーと殴り合いをした後みたいで、しばらくは頭が朦朧としていた(笑)。少し時間が経ち、パンチドランカー状態から立ち直りかけてから、ずっと疑問に思っていた事があった。それは「何故、関西では、時に飛び抜けた若手料理人が現れるのか」と云う事。

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 フランス料理界だけを見ても、今回訪れた和歌山「オテル・ド・ヨシノ」の手島(以下、敬称は略させてもらう)、大阪・上本町「コーイン」湯浅の料理は抜き出ていた、更にはスペイン料理だが、富雄「アコルドゥ」の川島、大阪・堺筋本町「Fujiya1935」の藤原も、この「飛び抜けグループ」に入れたい気がする。
 あくまでも個人的感想だが、今の東京圏でここまで傑出した料理人に出会えていない、どの店もサービスや環境も含めた総合力向上を目指す傾向にあり、肝心の料理はどうも細部のいじり過ぎが目立ち、料理を食べ終わった時に、涙腺が緩んで来るような感動を受ける事がない。もちろん全体のレベルは上がっている事は認めたい、フランス料理界の「偏差値」を東京と大阪で比べたら、これは東京の方が上だと思う、平均値は高い事を認めた上で、私の様な「すれからし」の料理好きの期待に応えてくれる、4割打者みたいな料理人が東京にも現れて欲しい、こう考えた時に思い出したのが、米国の古生物学者、グールド博士の唱えた「4割打者は何故消滅したのか」論だった。

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 名門ハーバード大学教授だった故スティーブン・ジェイ・グールド(1941~2002)は、古生物研究の第一人者で生物進化の著書を多数残しているが、同時に大のベースボールファンで知られ、野球関係のエッセイも多く書いていた。その彼が1941年のテッド・ウィリアムスを最後にMLBで4割打者が出現していない事に注目、科学者らしく「何故、4割打者が生れないのか」と云う単純な疑問から始まり、過去の記録を検証してみた。
 その結果、MLB全体の打者記録を調べてみて、打率上位5選手の平均打率と下位5選手の平均打率の差が年々少なくなって行く事を発見した。20世紀前半の4割打者が頻繁に生まれた時代には、下位には打率1割前後の打者が相当いたそうだ、博士はこの検証の結果、「技術の向上は均質化をもたらす。」という結論を導き出す。つまり、現在のMLBは飛び抜けて傑出した選手は居ないが、どう仕様もないペケな選手も居なくなった、全体のレベルが向上し、最高と最低の差が少なくなった事で、「MLB打者」という「種」は、各自の能力差が少ない安定した進化の状態になっていると、生物学者らしく結論付けた。

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 私はこの説を知って、思い当たったのが東京のフランス料理店の状況、これに似ているのではと思っている(笑)。今から20年前の「コートドール」斉須や、「アピシウス」高橋の料理はまさに4割打者の料理だった。現在、東京全体のレベルは向上し、最低に会うことは少なくなったが、飛び抜けた存在も無くなった気がする、打率なら2割8分から3割2分の間に何人も集まっている感じだ(笑)、そして同じ印象はフランス、特にPARISの料理にも共通して感じていた事だった。

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 関西料理界にはまだ4割打者が居た(笑)、これは関西の関係者に怒られるかも知れないが、全体としては「進化の途中」だからとも言えそう。そうすると関西の4割打者を東京に連れて来れば良いのではとも考えるが、過去他チームの4番打者を連れて来て、あまり上手く機能しなかった在京有名球団の例がある様に、4割打者が存続するには土壌と環境が大きく影響するみたいだ(笑)。
 料理界の4割打者に会いたかったら、迷わず関西へ行くべき、それも今のうちでないと、やがては種全体の「進化」により淘汰されてしまうかも知れない(笑)。
 (なお画像と本文とは、直接の関係はありません。)


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大阪・南船場「うさみ亭マツバヤ」(2013春関西食べ続け⑨)

 関西最終日は昼を何処かで食べてから帰ろうと考えていたが、前夜の「コーイン」の料理イメージが凄まじくて(笑)、変な店へ行く位なら何も食べずに帰ろうかなとも思ってしまった。
 取りあえずはお土産を買おうと心斎橋の大丸まで行き、食品売場を見ていたらやはり何か食べたくなり(笑)、2日目に狭山に住むグルメ仲間と、「松葉屋」の饂飩の話をしていたのを思い出し、ここから近い筈と、いただいた地図を鞄から取り出し行ってみる事にした。

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 店の場所は南船場、大阪を南北に貫く繁華街「心斎橋筋」の東側にある、以前は「松葉屋」だと思ったが、現在は「うさみ亭マツバヤ」と云う名前に変わっていた。
 船場は昔から商人の町として栄えた、明治26年創業のこの店も、近隣から集まった浪速商人達が、忙しい仕事の合間に立ち寄り饂飩をすすっていたのだろう、店構えもレトロそのもの、でも東京の老舗高級蕎麦屋みたいな、一見客を拒む雰囲気は感じられず、あくまでも家庭的な親しみやすさがある。
 11時の開店直後だったので、先客が一人だけだったが、この後続々と入店して来た。この日は土曜日なので心斎橋での買物ついでという感じの客が多く、年齢層は高目だ。お茶を持ってきたのはご主人だろうか、先代主人はTV番組や料理雑誌で何回か見たが、既に故人になられたと聞いた、この男性が発したのが「なんにしまひょ」の言葉、「これ、これ」(笑)、この言葉を聞くのは何十年ぶり、昔は大阪の飲食店に入ると大抵この大阪言葉を聞いたのだが、最近聞く事が絶えて無かったので、とても懐かしく嬉しくなった(笑)。

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 この店が発祥とされる「きつねうどん」と迷ったのだが、この日は寒かった事もあり、これもこの店がオリジナルと聞く「おじやうどん」(750円)を注文した。

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 しばらくして出て来たのは四角い鉄鍋に入った饂飩で、具は卵、鶏肉、蒲鉾、椎茸、青葱、油揚げ、紅生姜、ここへご飯が入る、最初「おじやうどん」と聞いた時は、おじやの中に饂飩が入った物を連想したが、実物は饂飩の中にご飯を間違って落とした感じの量(笑)、でも全体のバランスからすればこの位がいいのだろう。
 まずはツユを飲んでみるが、昆布出汁と薄口醤油と味醂が交じり合った関西味、長く大阪を離れた人間がこれを一口飲めば、きっと記憶が蘇って涙ぐむ味だと思う(笑)、東京人の私でも何故か懐かしい味で美味しいと思う。
 饂飩は讃岐系とはあきらかに違うコシが無い柔らかなもの、これが本来の大阪饂飩らしく、麺に拘る讃岐、出汁に拘る大阪という感じだろうか。

 関西旅行の最後の食に、大阪庶民の味を選んだがこれは良かったと思う、札幌に札幌ラーメンがある様に、大阪に饂飩が健在なら「食都」として安心だ(笑)、今の大阪の饂飩店は讃岐系が席捲しているみたいだが、こうした出汁を味わう大阪風は残して欲しいと思う、また近くまで行ったら寄ってみたい店だ。

 3泊4日の関西旅行、すごく濃い内容でした、ハード過ぎて同じ日程は関西初心者にはお勧め出来ないが(笑)、でもとても楽しかったです。やはり関西文化は「もてなし」という点に関しては、歴史の厚みが違う気がする。
 今回の「食べ続け旅行」で何らかの形でご一緒出来た皆様、色々とありがとうございました、また楽しい「食の場」で会える日が近い事を願っております。


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大阪・上本町「レストラン・コーイン」後編「2013春関西食べ続け⑧」

(「レストラン・コーイン」の続き)

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・静岡産活けラングスティーヌのフランとスピラル

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・マダムビュルゴーのルーアン鴨、オレンジ風味ロースト

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・上をエギィエット(薄切り仕立て)にしたもの、ガルニは、オニオンフォンデュ、トリュフタルト

 魚料理は、前がアンクルート、メインが鴨ローストと、オーブンでのキュイッソンで神経集中する料理間だから、普通なら魚切り身のポワレ等で「逃げたい」処だが、安易な方法を採らないのがこの料理人の真骨頂、フランの火入れとすり身をスパゲッティー状にして巻き付ける手間は気が遠くなりそう(笑)、当然だがそれが料理の出来に反映していると思う。

 そして登場して来たのが、ルーアン鴨の丸ごとロースト、これもビジュアル的には相当エロイ(笑)、「鳥類は丸ごと調理に限る」はこの料理人のポリシーだが、これ一羽で2人前、提供するのは胸肉ともも肉の一部だけなので、相当「余り」が出る筈だ、一部は翌日のランチメニューで転用出来るかも知れないが、かなり思い切らないと使えない料理、それでもこの料理人は「一番旨いものを出したい」と云う信念は曲げたくないらしい。
 ルーアン鴨はシャラン鴨の原種にあたるそうで、大きさは少し小ぶりになる、もちろん人為的に飼育されたものだが、食べた印象ではシャラン鴨が人工的な養殖ハマチとすれば、ルーアン鴨はもう少し天然ブリに近いと感じた(笑)、肉質は舌にまとわりつく妖艶さがある。
 「鴨とオレンジ」はパリの名店「ラ・セール」の往年のスペシャリテだが、コーインの料理ではオレンジに甘味の強いベニマドンナ種を使用、果汁はソースには混ぜず、鴨肉と果肉を一緒に食べる事で「鴨とオレンジ」を表現、胸肉はあえて古典的な薄切りのエギュイエット仕立にし、「古典料理へのオマージュ」にしたとの説明があった。残念ながらラ・セールで「鴨とオレンジ」は食べていないが、おそらく今回の料理を上回る事は無い筈、そう思わせる程料理の完成度は高かった。私自身は鴨はそれ程得意な食材ではなく、カルトの場合選ぶ事は少ないのだが、この料理とソースには唸った、魯山人でも「山葵と醤油で食った方が旨い」とは多分言わないと思う(笑)。

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・プレデセール(トリュフのブリュレ、トリュフのグラス)

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・ガトー・マルジョレーヌ、ピシュターシュのグラス

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・ミニャルディーズ(フィナッシェ、マカロン他)
・人参のアンフィージョン

 プレデセールのブリュレとグラスは、生トリュフを砕いて加えたもの、メインデセールは「ガトー・マルジョレーヌとピスターシュグラス」、何故これになったのかは大体想像つくが、語ると長くなるので割愛する(笑)。料理人は納得出来る形にするため、本家の「ピラミッド」のルセットを元に試作を繰り返したとの事だ、去年同じ大阪の「びすとろ・ぽたじぇ」でいただいたものは、濃厚華麗な1960年代マルジョレーヌだが、それに比べると現代的に軽くなっていて、ぽたじぇ版がアメ車のキャディラックなら、コーイン版はハイブリッド車のプリウス(笑)、どちらも優れたデセールだった。
 プティフール(ミニャルディーズ)が盛り沢山なのも、この店の特徴の一つ、「食べ切れなかったら持ち帰ってください」との事だが、このスタイルは1990年代のフランスでは多かった、これはあの贅沢だった時代へのリスペクトと解釈するべきだろうか、それぞれの出来は以前よりレベルが上がっていると感じた。

 前2回にも増して強烈な料理体験だった、満腹なのに不思議と食べ続けられるのもこの店の特徴、回を増す毎に料理が進化・洗練されているし、次行った時は一体どうなっているのだろうかとの恐怖心もある(笑)。
 正直言うと「この店を知らない方が良かった」と思う時もある、古陶磁好きに「焼き物は李朝と信楽で大往生」との言葉があるが、数奇を極めた先に辿り着くのがこの焼き物二つで、これに嵌ったら一生抜け出せなくなると云う意味だ、それと同じで、この店は「フランス料理好きが最後に辿り着く店」だと思っている、私は辿り着いてしまったので、あとは「大往生」が待っているだけかも(笑)。

 「今、関西で何処行ったらいい?」と訊かれたら、「オテル・ド・ヨシノ」と答える事に変わりはないが、それを体験し更に次のステージで闘いたい?人には、この店しか残っていない、ただ此処は食べる側の知力・体力・経験値が試される店だ。一応「紹介制」(笑)らしいので、本気で体験したい人は予約時に、「このブログを見た、是非行きたい」と言えば、「満席」でさえなければ多分入れてもらえると思う(笑)、でも生半可な気持ちで行くのはお勧めしない、料理人と刺し違える位の覚悟が必要(笑)。
 私が今やらなければいけないのは、東京を引き払い大阪に引っ越し、この店に毎月通って料理人と真剣勝負をする事ではないかと思い始めている、でも今は百回挑んでも百回共勝てない気はするが(笑)。


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大阪・上本町「レストラン・コーイン」前編(2013春関西食べ続け⑦」

 遂にこの店の順番が来てしまった(笑)、正直に言うとこの店の料理と料理人については書き難い、理由はクラシック料理に関しては、他を引き離す圧倒的なクリエーションを感じて私の筆には余るからで、それを承知の上で読んで欲しいと思う、そして長くなるのでこの店に関しては、前後編2回に分けて書く事にしたい。
 
 関西旅行最後の夜は、やはり此処しか考え付かなかった、大阪・上本町のフランス料理「レストランコーイン」、私が日本いや世界でも比類ないフランス料理を出すと思っているこの店を、去年に引き続いて訪れる事にした。
 全2回の訪問時は昼だったが、今回は初めての夜訪問、昼間はランチマダム達で賑やかだが、夜はぐっと落ち着いた雰囲気、店の入り口には「予約制・紹介制」の文字と「本日は予約で満席です」の文字を書いた額?が掲げてあり(笑)、知らない人が見れば「排他的な店」と思うかも知れない、隣の焼肉店と間違えて入って来る客が過去何人もいたためとも聞いた(笑)。
 店内は5つのテーブルが全て埋まり「看板に偽りなし」だった(笑)、何処かで見た客と思ったら、一昨日「オテル・ド・ヨシノ」で食事していた若い男性だった、料理人らしいが、それでも関西で「オテル・ド・ヨシノ」と共にこの店を選ぶとは、「おぬし、出来るな」と思わず言いたくなってしまう(笑)。

 去年まで客席に出ていた美人マダムは産休中との事で、サービスは若い料理人2人が兼務している、料理長を含めて3人体制でこれから紹介する料理が滞りなく出せるのだから、その点でもこの店は凄いと思う、あらかじめ「前2回と違う料理で」と頼んだこの日の「おまかせムニュ」(10,500円)は、

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・ラデッシュトリュフバター、グジェールバーガー
・トリュフのタルトレット

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・ホタテトリュフ

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・トリュフ卵(丹波地鶏卵黄、ジュ・ド・トリュフ、赤うしモワルとグラス・ド・ビアン)

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・バター2種(無塩と自家製藻塩入り)

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・前菜:ベキャスのアンクルート(間違いではない)、ソースペリグー、山盛りトリュフのサラダ

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・コンソメジビエ(おじろ鹿、おじろ猪、マセドアンレギューム)
(以降の料理は次回)

 これを書いている今になっても、何故この料理がこの値段で出せるのか不思議だ(笑)、素人の私がそう思うのだから、これを読んでいるプロの料理人もおそらく同じ思いだろう。日本は勿論フランスでも、これだけ高原価な食材(特に仏産トリュフ)を惜しげもなく使いながら、この低価格で提供している店はおそらく無い筈、「原価率3割」の常識が通用しない、これだけでもこの店は「タガが外れている」(笑)。

 世界中何処のレストランでも、「ベキャスのアンクルート、ソースペリグー」が前菜で出てくる店は、特別注文でもしない限りまずあり得ないと思う、このアンクルートは後で料理長が説明してくれたが、
「ベキャス1羽を1枚開きにして内臓とフォアグラ、トリュフで作ったファルスを詰め、手練りのパイ生地で包んで焼く、ソースはジュ・ド・ベキャスとジュ・ド・ブッフで作ったペリグー、自家菜園ベビーリーフとトリュフのサラダを添えた。」
 との事だ、この料理が出ていたのが5卓中3卓、と云うことはこの3卓が「おまかせメニュー」を注文していた事になるので、低価格メニューが中心のランチとは、客層はかなり違う(笑)。
 この料理人が得意とするのは古典料理、それもアンクルート(パイ包み)、ベッシー(豚の膀胱)包み、トーション(布巻)によるポシェ等、手間がかかる割には歩留まりの悪い手法を好んで用いる、古典を実践してみて、その優れた点を把握し今的にリファイン出来る根気と探求心が並外れている、一歩間違えば「偏執的」になり兼ねないが、ギリギリの処でバランスが取れている(笑)。肝心の料理は、「前菜」としては料理の完成度が高過ぎで、文句は付け様がない、本当ならここで食事をいったん中断し、シェスタでもしたい気分だった(笑)。
 後半で出てくる肉料理も「焼き物」なので、前菜と主菜で時間差を見極めながらオーブンを管理している事になる、これは考えただけで心拍数が上がりそうだ(笑)。
 
 次のコンソメジビエは、兵庫産の「おじろ鹿」と「おじろ猪」の赤身を使用したもので、「オテル・ド・ヨシノ」のものと比べると軽く繊細な味わい、これはムニュの流れの中では、あくまでも「間奏曲」としたかったみたいだ

 魚料理以後は次回にします。


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大阪・北新地「天麩羅 ひらいし」(2013春関西食べ続け⑥)

 関西3日目は、これまで「観光」らしき事を全くしていなかった(笑)ので、午前中は雨降る中を、大阪中之島の「大阪市立東洋陶磁美術館」を見に行く事に、私が特に好きな美術館で、収蔵品の高麗青磁や李朝白磁、中国元・明時代の陶磁器は毎回必見、この日は濱田庄司の茶碗展も同時開催されていた。収蔵品の陶磁器類は旧安宅産業の企業コレクションが主だが、日本が高度経済成長で浮かれていた時期に、よくこれだけの逸品群を収集したものだと毎回感心する、安宅産業も既に無く、収集の中心だった安宅英一も故人になったが、遺された物はこうして輝き続けている、この美術館は大阪が世界に誇れる文化施設だと思う。

 この日の昼食は、中之島から歩いて行ける距離の、大阪を代表する繁華街「新地」にある天麩羅店「ひらいし」を訪問する事に、この店も去年に続いての訪問になる、実はこの日の夜もフランス料理なので(笑)、昼は「縦メシ(和食)」にしようと、色々と店探しをしてみたが、去年行って好印象だったこの店に結局行き着いてしまった(笑)。
 店の場所は北新地の中心地で、近くには創作鉄板料理?で知られる「カハラ」がある、雑居ビルの3階にありテナントは以前バーだったと聞く。今回は行けなかったが、カウンターフレンチで人気上昇中の「グラン・シャン」も、同じ新地のビル内なので、不況でバーから業種替えするテナントが増加中みたいだ。
 入店は12時、カウンター10席の店で、私の後には女性一人客、その後に若いアベックが入店して来た、どちらも予約客だが、この店はなかなかフリでは来られないと思う。店主に挨拶していただいたのは昼の5,000円コース、

・突き出し(若牛蒡、塩昆布とレタス)

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・車海老の頭

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・海老二種(画像は大葉を巻いたもの)

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・タラの芽

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・雅鮎(もう漁が始まっているそうだ)

・ヤングコーン(沖縄)
・筍(奄美大島)

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・白魚

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・椎茸(鳥取)

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・行者ニンニク

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・穴子

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・蕗の薹

・牡蠣(北海道)

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・天丼(小海老のかき揚、赤だし、香の物

・デザート(トマトのコンポート、ジュレかけ)

 海老、白魚、穴子と云った定番の天麩羅種の美味しさは勿論だが、特に野菜が秀でていた。特に印象深かったのは、タラの芽、筍、蕗の薹と云った春の活力を感じさせる物と椎茸、この超肉厚な鳥取産椎茸は、鶏肉みたいな食感で、外国人に食べさせたら、「ジャンボマッシュルーム」と云っても多分信じないと思う(笑)。締めの食事は天茶か天丼どちらかの選択になる、前回が天茶だったので、今回は天丼を選んだが、小海老のかき揚げを載せた天丼は鮮烈な美味しさ、沢山食べた後なのに「おかわり」したくなった(笑)。

 あらためて思ったのだが「天麩羅」は凄い料理だと思う、構成要素は粉と水と卵だけ、主材料をこれにくぐらせて油で揚げるという単純な手法だ。例えればフランス料理がワーグナーの楽劇やヴェルディのグランドオペラだとしたら、天麩羅はバッハの無伴奏ヴァイオリンソナタかチェロソナタみたいな印象、これ以上何も削れない単純さだが、無伴奏ソナタの音楽的感動がワーグナーやヴェルディに決して劣らない様に、優れた料理人の揚げる天麩羅から受ける感動は、フランス料理に比して劣るものではない。

 店主の平石氏は名門調理師学校卒業後、最初は和食へ進んだが、天麩羅の名店を食べ歩くうちに、自分の天分はこれだと思い、大阪には珍しいカウンター天麩羅の店を開業した、場所柄夜は外国人客も来店し、人気店になりつつある、ランチは夜来られない女性客を意識して営業しているそうだ、銀座程ではなくても家賃の高い新地で、この内容でこの値段ならかなり「勉強価格」だと思う。
 雨が上がった窓からは、障子を通して明るい光が差し込み、気持ちも穏やかになっていく、今の時代にランチに5,000円は高いのかも知れないが、この店で供されるものを考えると決して高くない、むしろ「安い」と思ってしまった。
 次に大阪に来た時も、また寄りたい店だ。


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大阪・本町「びすとろぽたじぇ」(2013春関西食べ続け⑤)

 関西二日目の夜は、この店も関西訪問時には必須となった、大阪・本町の「びすとろぽたじぇ」を訪れる事に。
 3度目の訪問になるが、毎回我儘と言うより嫌な要望を出している(笑)。一昨年の初訪問時には、通常4人前からになる、ポール・ボキューズ直伝の「スズキのパイ包み焼」を、3人で食べたいと言って困らせ(笑)、去年の2回目にはフェルナン・ポワンの伝説のレストラン「ピラミッド」の定番デセール「ガトー・マルジョレーヌ」を食べたいと、再び困らせた(笑)。今年の我儘は「牛ヒレのロッシーニ風」を昔の作り方で食べたいと、これまた困ったお願いをしてしまった(笑)。
 なぜ「ロッシーニ」なのかと言うと、2年前に和歌山「オテル・ド・ヨシノ」にて、手島料理長の華麗な「ロッシーニ」を体験し、また都内で「立食いフレンチ」で人気のチェーン店が、この料理を1,280円という超低廉な価格で提供している事が話題になっているため、原典に近い?作り方の料理を味わっておきたいと思ったからで、プリフィクス5,700円のビストロで、こんな無理な注文をしてはいけません(笑)。

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 夜6時半の入店時には既に女性2人組が食事中、私の後は男女ペアが2組来たが、そのうち1組は来店30分前の電話予約、実はこの日はバレンタインデーだったが、そんな日でも当日予約で来るカップルと、それに応える店の懐の深さ、こういう店があるのはとてもいい事だなと思う、何ヶ月も前からこの日のために「勝負店」を予約するのもレストランの楽しみ方なら、こうして「あの店行ってみよう」と、当日思い立って行ける店があり、その料理のレベルが高いとすれば、その街の食文化が成熟している実例だと思う。
 「ロッシーニ」をメインにして、迷った末に前菜を2種選んだ結果は、

・アミューズ(人参のスープ)

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・河内鴨のタタキ風

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・温製魚のパテ、ソースアメリケーヌ

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・牛ヒレ肉のロッシーニ風

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・付合わせの手打ヌイユ

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・デセール(好きなだけ)

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・選んだのは、パンナコッタ、モンブラン、パンプディング、パイナップルのグラス

 冷前菜は河内鴨特有のネットリした食感を生かし、濃厚な「鳥刺し」みたいで旨い。パテは白身魚のすり身をハンペン状に成形し加熱、そこへ甲殻類で取ったソースアメリケーヌをかけるもの、これは美味しくない訳無いのだが、それぞれの素材を吟味しているから更に旨さが引き立っている、甲殻類特に「エビ好き」な関西人には受ける事間違いない(笑)。

 「割増料金になっても構いません」と頼んだ「ロッシーニ」は、あえてプリフックス5,700円の範囲内で作れるものにしたそうだ(笑)、こうした心意気には感涙してしまう(笑)。
 「牛ヒレ肉のロッシーニ風」仏語なら「トゥルヌド・ロッシーニ(Tournedos Rossini)」は、大作曲家の名を冠した料理、ロッシーニ本人は享楽的な性格と華麗な容姿で女性に大変もて、且つ美食家だったと伝えられ、私は爪の垢が残っていれば煎じて飲みたい人物だが(笑)、ロッシーニが活躍し実際に住んでいた当時のフランスはグルメブームで、「ロッシーニ風」と名付ける事は即ち「グルメな食べ物」を意味していたらしい、日本で云えば「魯山人風」みたいな感じだろうか(笑)、この料理もロッシーニが考案したとされているが、真偽は不明(笑)。
 ソテーした牛ヒレにフォアグラを乗せ、トリュフを加えたマデラ酒のソースにするのが「お約束事」の様だ。こう書くと簡単だが、それまではフォアグラは前菜、牛肉がメインと決まっていた筈なので、それを一緒に料理するというのは、焼き魚の上に刺身を載せて食べる(笑)みたいな意外性があったと思う。でも淡白な牛ヒレとフォアグラの相性は抜群で、名料理として100年以上経った今でも残っている。この店の料理ではモワル(骨髄)を使っているのが特徴、これによりフォアグラとの繋がりが良くなり、コストダウンにも成功している筈、ソースは濃厚そうだが見た目よりは軽かった、グランシェフの話では1970年代以前の作り方になるそうだ、これは貴重な体験をさせてもらった。手島ロッシーニが楷書体なら、このロッシーニはもう少しくだけた行書体という感じ、どちらもエピキュリアンだったロッシーニを連想させる「色気」は十分だ(笑)。

 デセールは息子さんのシェフが作ったもので、数種類が食べ放題、おかわりも可能だが今回は止めといた(笑)、質はどれも高い。
 今は年に1回しか来られないのが本当に悔しい素敵なビストロ、大阪に住んでいたら毎月いや毎週でも訪れたい店だ(笑)、家庭的な雰囲気のサービスも温かく、店を出る時には「行って来ます」、店に来た時には思わず「ただいま」と言ってしまいそう(笑)。次は1年待たない内に来たいと思っている。


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大阪・堺「かん袋」の「くるみ餅」(2013春関西食べ続け④)

 南大阪・狭山のイタリア料理店「オステリア・デラ・カンティーナ」で、野菜中心の健康美味なイタリアンを満喫した後は、「かん袋」のくるみ餅を食べに行こうとの話になり、隣市の堺まで友人の車に乗せてもらう事になった。
 「かん袋」とは堺市内で鎌倉時代末期から続く菓子舗で、提供するのは「くるみ餅」一品だけ、それでも大阪でも「堺のかん袋」と言えば、「ああ、あの店ね」と殆どの人が知っている有名店だ。店名の「かん袋」とは紙袋の事で、「猫をかん袋に押し込んで」という動物虐待の歌(笑)に出て来るあれだ、命名はかの豊臣秀吉だとの事、詳しい由来は店のWEBページに記載があるので、興味のある人は読んでください。
http://www.kanbukuro.co.jp/original/
 堺は茶聖千利休を生み、仁徳天皇陵を始めとした史跡も数多い、歴史の地層が違う感じがする。

             130301-1.jpg

 「かん袋」へは車で行ったため、店の場所をうまく説明出来ないが、南海本線の堺と湊の中間位、近くを市電が走っている、自前の広い駐車場もあり、この店を目的に遠方から車で来る客が多いらしい、この店の近くには「銀シャリ屋ゲコ亭」という、これもまた有名な定食屋?がある。
 友人の話によると、開店時間は10時から17時だが、「売り切れ仕舞い」なので、17時前に閉店してしまう日も多いそうだ、この日は16時に近づいていたが、運良く営業していて店内も空いていた、「こんなに空いているのは珍しい」と友人が言っていたが、土日などは行列必至だそうだ。品書きは「くるみ餅」と氷をかけた「氷くるみ餅」の二種類だけ、友人の勧めにより氷くるみを頂戴する事に、客は注文時にお金を払い、「木簡」みたいな番号札を渡される、出来上がったら席まで持って来てくれるが、お茶はセルフサービスだ。

            130301-2.jpg

 注文後しばらくして運ばれてきたのは、見かけは東京で云う「かき氷」、地味なビジュアルだった、スプーンを入れると中から「くるみ餅」が現れる、胡桃餡ではなく白玉団子を餡で「くるむ」からそう呼ぶらしい、赤ん坊を包む「おくるみ」に見立てているのかも知れないと思った、この餡が独特で緑色をしていて結構甘味が強い、おそらくは「うぐいす餡」に使う青えんどう豆を使用しているのだろうと思うが詳しい事は不明、白玉団子は水分が少なめで少し歯ごたえがある。
 一口食べた時は、「美味しいけれども、車で来て行列までする店かな」と疑念が起きたが、食べ終わると不思議に「もう少し食べたい」という気持ちになる(笑)、そのため「大盛り」ならぬ「ダブル盛り」も用意されている。冬でも氷付きが人気あるのは、氷が強目の甘味を中和して、あっさり食べられるからだと思う。

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 店のWEBページによると店の創業は鎌倉時代で、看板商品の「くるみ餅」の原型が出来たのは室町時代、それに氷を入れるようになったのは明治時代だそうだから、これ一杯で800年近い「日本史」が学べる、とてもありがたい食べ物だ(笑)、それが350円なのだから、これはお得だろう。
 いい勉強になりました、また堺へ来る事があれば寄ってみたいと思う、庶民に愛されるものとは「飽きない味」なのだろう(笑)。



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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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