最後の晩餐にはまだ早い


亀有「中華そば 敦」

 「お前のブログは、フランス料理かラーメンのどちらかだな」と指摘されそうだが、これはレストランばかりだと財政破綻してしまうからで、どうか温かい目で見てください(笑)。でもラーメンは美味しい、今の日本が世界に誇れるものは、「アニメ」「カメラ」「ラーメン」がベスト3ではないか?
 実家のある常磐線亀有駅周辺は、都内でも有数のラーメン激戦区だそうで、たしかに専門店は沢山ある、ただこの中で十年続いた店は一軒も無いと思う、フランス料理店も同じだが、ラーメン好きな客は新しい店が出来るとそちらへ行ってしまうので、客定着率が一番低い職種かも知れない、店を長く続けて行くためには、他店との違いをどうセールスしていくのかが重要になりそうだ。
 その亀有に今年オープンしたラーメン店が、「自家製麺、無化調」を詠っているのを知り、「どんなラーメンか、美味しいのか?」と興味を覚え、平日昼に出かけてみる事にした。

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 店の名前は「敦」、店主の名前から取ったみたいで、場所は環状七号線の亀有から北へ向かう途中、駅からだと7~8分程歩く、この店は以前別のラーメン店だったが、経営者が替わり居抜きでそのまま営業しているみたいだ、店の半分を自家製麺の機械で使い、残り半分を客席にしている。
 「自家製麺」は説明するまでもなく、自店で粉から練り麺を作る店の事だが、今は少なくなった、機械が大型で高価だし、製麺業者も結構いい麺を作る様になったからだが、こだわり店主の中には「どうしても自分の作った麺でやりたい」と思う人がいる、これは一応ラーメン好きから一目置かれる店にはなる。
 「無化調」は、化学調味料(うま味調味料)を使わないでラーメンスープを作る事で、これも一部ラーメンフリークからは支持がある、ただ使わないからと言って、それが美味しいラーメンになるかどうかはまた別の問題だ(笑)。

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 店のメニューは割と少なく、「中華そば」「味玉そば」「叉焼そば」「特製そば」の4種類、この中から味玉そば(750円)を注文した。
 店内は黒色を基調にした少々独特の雰囲気、カウンターと椅子席で9席と少ない、カウンターと厨房の間にスペースがあって、熱気が伝わらないようにしたのだろうか、これが少し不思議な感覚だった。
 暫くして若い店主が自ら運んできたのが「味玉そば」、見かけは昔の東京でよく見た感じの懐かしいスタイル、縮れた中太麺と醤油色が際立った脂分の少ないスープ、私の世代には「シナチク」と呼びたいメンマ、脂の少ないチャーシュー、見ていると何処か「昭和」を連想してしまう(笑)。

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 まずは一口スープを飲むと、最初は醤油の香り、その後に鶏と煮干しの香りが追って来る、最初は頼りないが飲み進むうちにコクを感じる。麺は最近あまり見なくなった縮れの強いタイプで、水分が多いのか今の流行からすると少し柔らかめに感じる、このタイプは「つけ麺」には向かないが、スープ麺それも東京風の醤油味には一番合う、チャーシューはおそらく豚モモ肉を使用していて、脂が少なくこれもあっさりしたスープと合う。
 食べていると、今はもうなくなってしまったが、銀座の歌舞伎座近くにあった、「味助」と云う姉妹でやっていた店のラーメンを思い出した、やはり何処か昭和感覚だ(笑)。
 丼一杯を食べ終わる頃には、「もう少し食べたいな」と云う感覚になる、そしてこの文章を書いている今は、無性にもう一度食べたい(笑)。スープを一口啜って「旨い、恐れ入りました」と云う味ではないが、後でじわじわと美味しさがやって来る、これが無化調の特徴なのかも知れない。
真面目な料理人が真面目に作ったいいラーメン、若い人達にも脂まみれではないが、こうしたラーメンも美味しいのだと、つい教えてあげたくなってしまう(笑)。

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 完成度としてはブログに紹介した、この店からも遠くない「たいせい」の方が現時点では上だと思うが、この店はこれからもっと良くなりそうな気配がある、また行ってみたいと思う。


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神楽坂「オー・トレーズ・ジュイエ」(2013年7月)

 神楽坂のフランス料理「オー・トレーズ・ジュイエ」は、去年から今年へかけ最も数多く訪れたフランス料理店だ、私はたぶん変わっているのだろう、人気店に行くより、未だあまり知られていない店を開拓する方が好きで、これは投資の世界なら「先物買い」、外食業界なら「これから化けそうな店」と呼ぶ(笑)、これを捜すのが何より面白いと感じる、中には見込み違いだった事もあるが、過去「これは化ける」と思った店は大体当たっていた(笑)。
 「クレオパトラ」みたいな完全無欠美女より、「あと此処を変えれば良くなる」状態の、「マイ・フェア・レディ」や「プリティ・ウーマン」みたいな店と料理人に惹かれてしまうのだ(笑)。

 その「オー・トレーズ・ジュイエ」だが、今年4月末に天井から漏水する事故が発生し、予期せぬ休業をする事になってしまった。この店舗が入っているのは結構古いビルで、階上はマンション住居になっている、原因はここからの配管詰まりによるもので、営業日だったために相当慌てたと聞く、事故直後が5月の連休だったため改修工事着工も遅れ、結局約2ヶ月の休業になってしまった、天井と壁を含め内装全体の改修が終わり、7月第1週から再開の運びとなったので、激励も兼ねランチタイムに訪れる事にした。

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 改修後店内は明るくモダンな雰囲気になった、以前は居抜き店舗をそのまま使用していたので、この店の料理感覚と微妙にずれていたが、アン・マッチがなくなったと思う(笑)。現在古いテナントで営業している店は、同様の事態が起こり得るので、店主に事後の対処法について聞いておいた方がいいかも知れない(笑)。
 現在は昼夜共に10名以内に客数を抑えていてテーブルも減らした、この日も平日昼ながら予約客で丁度10名の入店があり満席になった。ランチメニューは2,300円と4,500円だが、おそらく全員が2,300円のものを注文している、これに前菜を1品特別に追加してもらう事にした。

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・トマトのジェラート

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・赤パブリカ豆腐のサラダ、やさしく火を入れた海老

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・爽やかで且つコクが感じられるスペインの白、‘Louro do Bolo’2011

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・夏鹿とポーチ・ド・エッグ、ワッフルと紫キャベツ(追加料理)

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・凾館産鱈のポワレ、ズイキ、葉わさびのソース

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・冬瓜と豚肩肉のポシェ、ほうれん草のヴルーテ

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・ボルドー土産(マカロン、リレ、アニゼット)

 鹿や鱈と云った、本来なら冬の食材を積極的に使用、鹿は農作物被害対策のため許可のあるハンターが撃つ物で、冬鹿とは違った食感、鰹で云えば「下り鰹」みたいな脂の少ない精細な美味しさ、また鱈は身に関しては冬より夏の方が美味しいとされるし、通念上の「旬」を外せば、良質な食材が安価で入手出来る事もあり、限られた予算で作らないといけないランチメニューに関しては、こうした食材を見つけて、いかに上手く使うかに、料理人のセンスが問われると思う。
 料理全体的には「夏の料理」と云うのもあるが、以前に比べるとフランスの地方のレストランで感じる様な、「もっさりとした重さ」みたいな部分が薄れ、より繊細になった印象を受けた、いい意味でだが「トウキョウ・フレンチ」になって来たと思う(笑)。
 
 佐藤料理長は2ヶ月の間、他店を食べ歩いたりしていたそうだが、後半は料理人としてのモチベーションを保つのが大変だったみたいだ、でもこうして再開後の料理を味わってみると、いい充電期間になったのではと感じる(笑)。
 最近、フランス料理店には「登竜門」である、業界人向け雑誌「シェフ」にも掲載され。これからが人気店になるかどうかの本当の正念場だ、今回の事故が「災い転じて福となす」になったと思う時が、きっとあるに違いない(笑)。


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亀有「ティア・ブランカ」(11回目)

 この日は定期的にランチに通っている、亀有のイタリア料理店「ティア・ブランカ」へ行く事に、前回訪れてから2ヶ月以上経っていて、店主から私の顔を見るなり「久しぶりですね」と言われてしまった(笑)。店に飽きてしまった訳ではなく、此処の処ずっと満席で、それもママ友達の集会所みたいになっていて(笑)、騒がしいのでちょっと敬遠していた。
 この日は大変暑い日で、「今日はそれ程混んでいないだろう」と期待して行ったのだが、これは甘かった(笑)、11時半の開店直後には既に女性4人組が来ていて、この後も続々と来店、ベビーカー押しのヤンママも現れて、いつもの風景になってしまった。

 この「ママ友ランチ」と云うもの、昔は無かったと思うが、一体何時頃始まった風習なのだろうとWEBで調べたのだが、どうもよく判らなかった、そしてこんな記事を見つけてしまった、「Yahoo知恵袋」と云う相談サイトだが、「幼稚園のママランチ会が苦痛です・・・。」とのタイトルで匿名相談が書かれ、それに対する匿名回答が幾つかある。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1482586139
 これを読むと、見かけより結構厳しい世界なのだなと同情してしまった、サラリーマンなら、上司から仕事後に飲みに誘われる事や、嫌いな宴会に出る事に近い、皆が喜んで参加している訳ではなく、「断りたくても断れない」集まりもあるのだと知り、これからは多少騒がしくても、もう少し温かい目で見たいものだと思う(笑)。

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この日のランチは、いつもの様に1,200円のデザート付のものを選んだ、

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・カップに入ったミネストローネ

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・スパニッシュオムレツ、カポナータ

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・サルチッシャとブロッコリーのスパゲッティーニ

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・自家製ガトーショコラとコーヒー

 オムレツもカポナータもすっかり馴染んだ味、少しオムレツが小さくなった気もするが、これは後述する理由だろう、パスタは私の好みからすると少し柔らか目だが、まあ許容出来る範囲、店主が「デザートは事前に作って置ける物しかなくて」と恐縮していたが、自店で焼いているガトーショコラは結構美味しい。
 この内容で1,200円なら文句は言えない(笑)、ママ友達でなくても、可能なら週一位のペースで来たくなる(笑)。

 この日もカウンターに座ったので、店主と少し話をしたが、話題は「食材料の値上げ」で、円安の影響で6月初めから軒並み値上げが続いているとの事だ、オリーブオイル、ワイン、乾燥パスタ、小麦粉と、イタリア料理店に不可欠な食材が値上げされ、更には鶏や豚と云った食肉も近日中に値上げになると、業者から事前通告されているとの事、考えてみればイタリア料理で使う食材や調味料&油等は、他で代用出来ない物が多く、今回の値上げではフランス料理店以上に影響がありそうだ。
 ランチタイムはどの店も原価率ギリギリでやっているだろうから、必然的に値上げしないと厳しい処だが、そうすると移り気な客達は別の店に流れてしまう、ランチタイムに千円前後で食べられる店は日本では幾らでもある。こうなると各店で「チキンレース」をやっているみたいなものだ、値上げしないで頑張っていたら、いつか崖から落ちていた、などと云う事が無い事を願いたいもの。この店では自衛手段として前菜のオムレツやデザートを小さくしたかなと云う気がするが、嫌な質問になるのでこれは訊いていない(笑)。

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 「安定政権」が外食産業にとっていい事なのかどうかは判らないが、大手や企業系だけが生き残る業界であって欲しくないと思う、小さい個人店にもっと光を!(笑)。


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八丁堀「シック・プッテートル」(2013年7月)

 「料理は食べてみないと判らない」と言うが、相当経験を積みお金を使った人の中には、料理画像を見ただけで美味しいか否かが判る人がいる(笑)、私はとてもその域には達していないが、優れた料理人やグルメの中にはこの達人が居るみたいだ。
 中島敦の小説「名人伝」は、修練を極めた末に武器である弓の存在を忘れる弓の名人の話だが、食べなくても料理の味が判るようになれば、もうこれに近い(笑)。

 最近ブログにUPした店の中で一番反響?が大きかったのが、八丁堀のフランス料理「シック・プッテートル」だった、私の料理画像を見て実際に店まで行ったのが、私の知る限り2組、両者共に既にリピーターになっている(笑)、「行きたい」との希望を聞いたのも数人、こうなると紹介者としては黙って眺めている訳には行かない、彼らに遅れたら「予約取れない店」になってしまう(笑)。そうした理由で、この日「裏を返す」2回目の訪問をしたのだが、料理は前回を更に上回る出来で、正直この記事は書きたくなかった。「2回目は期待外れだった」と書けばいいのかも知れないが、やはり嘘は書けない(笑)。

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 前回利用は昼だったが、今回は夜で店界隈の雰囲気は変わる、八丁堀は僅かながらも「下町の情緒」的なものが残った街で、至る処にあるのは居酒屋的な客単価の低い店、その中で正統的なフレンチを続けて行くのは大変だろうなと同情もしてしまう、立地的には浅草「オマージュ」と似ていると思う。
 18時半に入店し、オーナーと料理長に挨拶をして席に着いたら、星オーナーから「今日は料理長の希望で、少量ずつ多皿で料理を出したい」との説明があり、これは断る理由もなく喜んで乗る事にした、何が出るかは料理人任せの「八丁堀カルトブランシュ」だ(笑)。
 照明の具合で映りの良くない画像もあるが、全品をお見せする。

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・バスク豚のサラミ

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・クミンシードのビスコッティ

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・白いガスパッチョ、ラトビア産キャビア「スターレット」

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・時知らずのミ・キュイ、イクラ

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・水ダコ、サマートリュフ、ジャガイモ、プチオニオン

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・蝦夷アワビとアワビ筍、鶏のトサカ、香菜の花

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・穴子のヴァプール、リ・ド・ヴォー、ズッキーニ

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・熟成千代幻豚の藁焼き、信州野菜

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・キャラメルのムース、ゲランド塩のシャンティ
・一口サブレ
画像以外に自家製パンが2種(パプリカ、イカスミ)

 水ダコの料理あたりから、体内にアドレナリンが湧いているのが判った(笑)、東京のレストランで此処まで興奮したのは久しぶり、予想を上回る料理が出ると寡黙になってしまうものだが、この日も唸ってばかりだった、繊細と大胆さが同居したこの料理を、特別な器具や調理法を使う訳でなく、料理人一人で全て滞りなく作るのは凄い、パンまで2種類焼いている。この日は平日夜で5割の入りだったが、満席でこの手間掛けた料理作って大丈夫なの?と心配してしまう(笑)。この中で特に面白い食材がラトビア産の「スターレット・キャビア」、世界一小さいチョウザメの卵で、希少さから「幻のキャビア」と呼ばれる、腹を裂かず人間が手で押し出して卵を採るそうで、帝王切開ならぬ「介助付自然分娩」だ(笑)。
 前回訪れてから、生井料理長の料理は誰かに近いと思っていた、「似ている」と云うのではなく、食材の組合せ等の独特な感覚が何処かで体験したと感じた、この日それが判った、フランス南西部の小村ピュイミロールで、独自の美学で料理を展開する料理人ミッシェル・トラマ、彼の料理だった。トラマは1947年生まれ、初め美術を志すが、経済的事情により料理人に転向、誰にも師事せず独学で料理を習得、特にそれまで脇役だった野菜を料理の主役にした事で有名になる、私は2002年に訪れたが、料理も店造りも実に美的センスに溢れていた。
 聞けば生井氏も調理師学校は出ていなくて、フランスで働いた経験も無いそうで、料理人になった経緯は下記の記事が語っている、これはトラマに似ている(笑)。
http://www.eatpia.com/restaurant/chic-hatchobori-french

 日本人料理人は優秀だが、少しオリジナリティに欠ける傾向はあり、トラマやブラス、ベラサテギみたいな「独学派」の料理人が現れるのは、もう少し先だと思っていた、その予想が外れる事になった。私も過去若手料理人は何人も見て来たが、今までにいなかったタイプ、これから先はどうなるのだろうとの期待と不安両方あるが、これは常時マークしていないといけない凄い才能が現れた。
 最後は料理長とオーナーの笑顔に見送られ退店、この店のおかげで夏の湿気を忘れる素敵な夜になった。


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秋葉原「ビストロ・ヌー」(2013年7月)

 この日の平日ランチは、これが3回目になる秋葉原のニューカマーなビストロ、「ビストロ・ヌー」へ行く事に、この店はカウンターがあるので一人でも気兼ねないし、昼前に入店なら今の処は予約しないでもまず大丈夫なので、「当日思い付き」で行く時には好都合な店だ(笑)。
 店がある場所は秋葉原の外れで、駅は地下鉄の末広町が一番近いが、私は千代田線利用なので湯島駅で地上に出て十分程歩いて行く、3年位前まではこのルートは、秋葉原の石丸電気(後に「エディオン」に合併改名)にレコード&CDを買いに行くために、30年位通ったのでとても感慨深い、周りの景色は昔と随分変わってしまったが、秋葉原は増殖と変容を繰り返し発展して行く街、ある意味では最も東京らしいスポットと云えるかも知れない。

 11時半の開店直後に入店したが、既にテーブル席には4人客が着いていた、この後も続いて客が来店し、椅子席は全て埋まりカウンター席も半分塞がった、店主に「毎日こんな感じですか?」と尋ねたら、「今日はたまたまです、昨日は空いていました」との答えで、客入りにはムラがあるみたいだ、これがランチメニューを提供するレストランには一番難しい処(笑)。
 プリフィクスのランチは黒板メニューから選び、前菜+メイン+コーヒーで1,500円、中にプラス料金の料理がある、デザートを加えても1,800円とお得だが、ビジネスランチだと時間の制約もあり、デザートをパスする客もいる。

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 まずはこの黒板の字が見易くていい(笑)、パリのビストロでは筆記体のそれも癖字が多いので、解読には時間がかかり食材は読めても料理法が判らず、「これでいいや」と頼んだら、予想とはかなり違う料理が出て来た事は何回かある(笑)。
 この中から選んだのは、

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・パテ・ド・カンパーニュ

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・自店で焼いているカンパーニュ系パン

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・サーモンのミ・キュイ、レモンのソース

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・ホワイトチョコとパイナップルのタルト

 開高健の著書で、昔の香港では料理人を採用するか否かの試験に、玉子炒飯と青菜炒めを作らせたとあったが、単純で普遍的な料理ほど料理人の実力が判ってしまう、それと同じで、フランス料理の料理人の実力を推し量るには、この店で前回体験した「バベットステーキ」と、今回の「パテ・ド・カンパーニュ」を作らせれば大体判りそうだ(笑)。この出来なら合格を出せる、パテはこの値段なので豚の端肉と背脂を使うと思うが、それで美味しさを出せるのがセンスがある料理人だ。そして自店で焼いていると云うパンも美味しい。
 鮭のミ・キュイはパリの「ステラマリス」を初め、日本人料理人が得意とする料理だが、通常は時間管理がしやすい真空調理や燻製機で火入れする事が多い、この店ではオーソドックスなフライパンでの火入れで、両面ソテーしたらフライパンごとオーブンに入れる、表面は固まって白くなるが、中は文字通りの「ミ・キュイ」、立て混んでオーダーが集中するランチタイムでこのキュイッソンは立派だ、レモンのコンフィチュールとの相性もいいし、皿全体のドレッセも「現代PARIS風」で洒落ている(笑)。タルトもフランス人好みな甘味十分なタイプだ。
 料理好きなパリのフランス人にこの料理を食べさせて、「幾らだと思うか?」と訊いてみたい気がする、これが1ユーロ130円換算で税&サービス料込13.8ユーロで食べられるとは、とても思わない筈(笑)、東京ランチは世界の主要都市の中でも安く、そのクオリティはかなり高いと思う。

 磯貝料理長は若干33歳という若さ、パリの人気ネオ・ビストロで働いていて、一昨年此の地に日本版ネオ・ビストロをオープンさせた。一昔前なら国内フレンチの料理長を経て独立と云うパターンだが、今はいきなり独立する(笑)、これはパリで若手日本人オーナーシェフが次々と誕生しているのと同じ往き方だ、でも私は若いうちに独立するのは賛成だ、過去料理に光るものがあった料理人は、おおむね早くに自店を立ち上げている、オーナーの意向や先輩の色合いに染まる前に、自分のやりたい事をやった方が、こと料理に関しては良い結果を生む事が多いと思う。
 あとは「いい客」が何人着いてくれるかだろう、これから楽しみな店の一つだ。
 

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大崎「おはらス・レストラン」(2013年6月)

 ブログとSNSをやっているおかげで随分と交友関係が広がった、これはありがたい事だ、ネットを使っていなかったら、これだけグルメ関係の知人が増える事は無かったと思う。私の年齢になると通常交友は広がるより狭くなる、同年代の人間は身体の何処かが悪くなるのは当たり前、既に早世してしまった人もいる、集まると話題は病気や老後の話と辛気臭い事この上ない(笑)。
 ところがこれが「食」で知り合った仲間だと、年齢、職種、収入、性別等々を乗り越えられる(笑)、話してみると自分の知らない業界の話など実に面白い、まさに「見分が広がる」のだ。
 この日もFacebookで知り合った関西のグルメな方から、「東京に行くので、食事を後一緒にいかがですか?」のお誘いがあり、場所も「おはらス・レストラン」との事で、大好きなこの店に行かない訳にはいかないと、万難を排して?伺う事になった。私はどういう訳か関西人と親しくなる事が多い、自分の先祖について調べた事があり、父親は東京生まれだが、祖父は愛知県豊橋出身、更にその前は福井に居た事までは判っていて、もっと前は関西出自だったのかも知れない(笑)。

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 「おはらス・レストラン」は、今年2月の初訪問以来これが3回目と、私には珍しい程の頻繁さだ、今回は初めてのディナー。約束していた18時に入店したら、既に友人は待っていてくれた、これが初対面なのだが、そうは思えないのがネットを通じて知り合ったグルメ仲間で、座った途端に「千年の知己」の様にグルメ話に入れる(笑)。
 私の顔を覚えていたマダムから渡されたムニュを拝見する、夜は基本が7,350円で、前菜・スープ・メイン・デザート・コーヒーの構成、それぞれ選択肢が多いのがこの店の特徴、悩んだ末に選んだ料理は、

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・アミューズ(マンゴーの生ハム巻)

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・ロワール産ホワイトアスパラガス、ソース・ヴィネグレット

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・ガスパッチョおはらス風(+525円)

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・イベリコ豚のロースト、シンプルなジュで、(二人分+2,100円)

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・生落花生のブランマンジェ

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・ミニャルディーズとライチ

 アスパラガスは蒸して火入れし、シンプルなヴィネグレットで食べる、美味しかったがやはり旬は少し過ぎたかなとの印象は持った。ガスパッチョは液体の中にガスパッチョで作ったフローズンを加えた新感覚の冷製スープ、これは60歳過ぎた料理人の感覚とは思えない(笑)、ピリっとした辛味が下品にならないギリギリさで、これはもう少し飲みたかった(笑)。真打のイベリコ豚は肩と腹肉の部分を二人分一度に焼き、エマンセ(薄切り)して皿に盛る、付け合わせはジャガイモのグラタンドーフィノワ、ジロールに根野菜、これはジワジワと来る美味しさ。ブランマンジェは三田「コートドール」のココナッツ風味と似ているが、より濃厚で妖艶な味だ。

 小原料理長の料理は切り口がとても穏やかだが、一皿食べ終わった時に頂点が来る、そして全ての料理を食べ、最後のコーヒーを飲み終わった時に一回目の満足感が訪れる、小原夫妻に見送られ店を後にして、家に帰った頃に「また行きたい」と思う(笑)。若い料理人の料理が一口食べた直後に「旨い」と思うが、最後には「次は暫く先でいいな」と思う事がありがちなのと対照的だ(笑)、これを恋人との関係に例えれば、一緒に過ごす時間より別れた後に、「逢いたい」と思う気持ちが増すみたいなものか(笑)。
 江戸時代に隆盛を誇った吉原遊郭の大門には「見返り柳」と呼ばれた柳の木があり、客が遊女とのひと時を名残惜しみ、この辺りで遊郭を振り返った事からこの名前が付いたと言われる、客にこう思わせるのが最高のサービス業だとしたら、「おはらス」の地下への入口は、「見返りゲート」とでも呼びたい形をしている(笑)。

 最後に挨拶に出て来られた小原料理長に、「昔、シベリア鉄道に乗ってフランスに行かれたと聞きましたが?」と尋ねたら、「1968年です(5月革命があった年)、パリは騒然としていました」、「最初の店はアラン・サンドランスが買収する前の『ルカ・キャルトン』でした、それから『ヴィヴァロワ』に行きました」と、私の様な若輩者?の質問にも実に丁寧に答えていただき、恐縮する事しきりだった(笑)。
 この店は本物の大人が楽しめる本物のレストラン、私は参加するのが遅かったが、この店の常連になる事は、「本物の大人」への近道かも知れない(笑)。
 素敵なご夫妻に見送られて、この素敵な店を後にした。


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千駄木「天外天」の担々麺

 辛い物が特別好きな訳ではなく、どちらかと言えば激辛系は苦手なのだが、「担々麺」は好きでよく食べる、ただどうも「これはいい」と思える店に当たらずに不満を抱えていた、そのためこれから機会を見つけて「美味しい」と言われる店で担々麺を食べてみて、いつかマイ・フェバレットを見つけたいと思っている。

 まず向かったのは、文京区千駄木にある四川料理の店「天外天」。私はかなり前に夜の食事で2回来た事があるが、担々麺を食べたかどうかが記憶にない(笑)。この店の中川料理長は、担々麺を日本に広めた四川出身の名料理人故陳健民の直弟子にあたる人だ。
 そもそも担々麺は、中国四川省で売人が担いだ天秤棒に道具をぶら下げ、野外で売り歩いていた汁の無いタイプの麺で、食事と云うより小腹が空いた時の軽食的な食べ物だった、これをスープ好きの日本人に合わせ汁を多くし、一杯で一食の大きさにしたのが陳健民で、このタイプが日本中に広まる事になる。

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 「天外天」では担々麺は看板メニューなので、ランチタイムでも当然提供される、お得なセットメニューがあって、「チョイス小皿」として「蒸し鶏の四川ソース」か「海老のフリッター」のどちらかを選び、これに担々麺(汁ありor汁なし)、デザート4種からの選択で1,300円になるので、この日はこれを注文する事にした。

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・コーンスープと搾菜

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・海老のフリッター揚げ、マヨネーズソースかけ

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・担々麺(日本風汁ありタイプ)
*これにお櫃に入ったご飯が付く

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・マンゴープリン

 スープも前菜?もご飯も一度に出てくるのは、ちょっとファミレス的(笑)、こうしたサービスメニューにつく副菜類は、「やっつけ」で作ったとしか思えない位に酷い物に当たる時もあるが、さすがにこの店ではそれはなく、スープにしても海老の点心にしても、一応ちゃんとした中国料理店の味になっている。肝心の担々麺は唐辛子の赤色を際立たせ「美味しそう」に見える、まずスープを一口飲むと胡麻の香りが広がり、その後に唐辛子の辛さが追って来る、このバランスはいい、辛さが選べるので「中辛」を頼んだのだが結構辛い、麺は細麺で日本の蕎麦みたいに断面は四角、口当たりも蕎麦に似ている、麺自体は悪くないが、このスープに合わせるには少し弱いかなと云う気はした。この麺なら汁ありタイプより、汁無しの元祖形の方が合うのではないかと思う。
 感心したのはデザートのマンゴープリンで、この手の店でこの値段だと、業務用の出来上がり品や粉末を固めただけの物もありがちだが、これはちゃんとこの店で作った物だと思う、美味しかった。

 事前にこの店の事を例の「食べログ」で調べたのが、「サービスに妙にテンション高い人が居る」と書かれていて、これが誰だかすぐに判った(笑)、たしかに独特な感じだが、東京下町に育った私は、子供の頃からこうした人は見慣れていたので、さして気にはならなかった、高級店にありがちな「慇懃無礼」なサービスよりよほど気が楽だ(笑)。
 この担々麺単体なら1,300円は高いかも知れないが、スープ、前菜、デザートを含めたランチメニューと考えると、納得できる内容だと云える、隣席の客が食べていた麻婆豆腐も美味しそうだったし、近くまで来る事があればまた寄ってみたいと思う。
※不忍通り沿いの本店は閉店し、現在は旧別館のみで営業している様です(2013.11)
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湯島「ビストロ・タカ」

 この日は、前に同じ部署で仕事をした仲間達との半定期的な集まりで、湯島天神近くのフランス料理「ビストロ・タカ」へ、私は2回目の訪問になる。
 食べ歩き仲間との集まりも同じだが、皆なかなか自分からは「やりましょう」と言わない、言い出した人間が結局店選びやメンバーへの連絡と云った幹事役をやる事になってしまうので、皆「後出しジャンケン」を狙っているのだ(笑)、ただ昔と比べてメールで連絡出来るのはありがたい、メールの無い時代は全て電話で調整していたので、まあ時間がかかったものだ(笑)。今回は幹事役がいたので、私の役目は職場から近い場所で知っている店を何店か挙げただけで済んだ。
 夕方、早目に湯島に着いてしまったので、店の近くの湯島天神へお参りし、絵馬を眺めていたらこれが面白かった、学問の神様なので入学祈願が一番多いが、一枚の絵馬に志望校を何校も書いている絵馬が多い、この時期から「二股・三股」は良くないのでは?と余計な事を考えてしまった(笑)。

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 集合時間の18時半に入店したら、「本日は満席です」の張り紙があり、我々のテーブル以外は全て埋まっていたのにちょっと驚いた、東京のディナーの開始時間は「東早西遅」で、浅草と同じで上野近辺も早いみたいだ。
 この日は総勢7人の集まりだったので、事前に店側と相談し、5,000円の「おまかせ」メニューをお願いしていた。

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・アミューズ(バジルのスティック)

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・ホワイトアスパラガスのパートプリック、鱧のフリット&トマトのマリネ、玉葱とパセリのヴィネグレット

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・新玉葱の冷製スープ

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・自家製もち豚ハムのシャルキトリー風、アスペルジュソバージュ

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・フルーツのコンポート、ライチのソルベ

 前菜は茹でたアスパラガスをパートプリックで包み揚げた物と、骨切りしフリットした鱧を別容器のヴィネグレットを付けて食べる、酸味がいいアクセントになっている。旬の新玉葱のスープは優しく穏やかな味わい、メインは豚を一旦ハムにして、ピクルスを使ったシャルキトリーソースで煮込んだものだ、肉の下はクリストフ・ポコ譲りのフランス的なポム・ド・ピュレ、デセールは夏を意識して軽く仕上げていた。
 全体的には夏場と云う事もあるが、日本人向けに軽く仕上げたビストロ料理と云う印象、料理人は神楽坂の「ルグドゥム・ブション・リヨネ」の出身だが、あそこのリヨン風ブション的な料理とは少し路線が違うと思う。でもこれはこれで実質的で判り易い味で美味しいし、特にこの日みたいな気の置けない仲間との集まりには向いていると思う(笑)。
 店内のサービスは女性が一人で担当するが、14席と少ない事もあり、不自由さは感じない、ワインも1本3,000円から揃えていて、割り勘の会計の心配もあまりしないで済む(笑)。

 昔の職場仲間との語らいは楽しいもの、すぐに「あの時代」に帰れる。同世代の人達とは、ついバブル景気時代の話になり、我々より若い世代にそれを若干大げさに伝える事になる(笑)、BMVが「六本木のカローラ」と呼ばれ、東京の至る場所で「不夜城」が出現し、週末の夜はタクシーが捉まらなかった、昔は客が行列していたタクシー乗り場は、今はタクシーの方が行列している(笑)。
 でも、あの時代には都内のまともなフランス料理店で、食事をしてワインを飲んで支払いが一人6,000円台で済む事は考え難かった、それを考えると「失われた20年」で失ったものは多いが、外食での楽しみに関しては、プラスになったものもあると思いたい。
 マスコミを賑わしている「アベノミクス景気」だが、食材料やワインの値上がり等、個人店には相変わらず厳しい状況が続いている、こうした語らいが持てる場所が、存続できる社会でありたいものだ。
 


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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