最後の晩餐にはまだ早い


青山「フロリレージュ」(2014年1月)

 この日は、今年になって初めての青山「フロリレージュ」のランチへ、勿論2ヶ月前に予約した席だ、風邪など引いていられない、仕事は休んでもこの店は休めない(笑)。
 行かれた人なら知っていると思うが、店へ向かうには東京メトロの外苑前か、表参道のどちらかで地上へ出る、私は後者だ。フロラシオン青山を過ぎ住宅街へ入ると歯科医院があってこれが目印で、そこを左折して更に細い道を奥へ進むのだが、大抵いつもこの辺りで、フロレリージュへ向かうと思われる客と出会う(笑)、この日も前を歩く若い女性二人連れがそうだった、入店がバッティングしない様に遅めに歩いたのだが、結局追い付いてしまった、いいレストランへ向かう道は、ゆっくり歩くのは難しい(笑)。

 入店後、新しい支配人に案内されたのは奥の個室、この部屋は2回目だが、周りを気にせず喋れるので気が楽だ、特にこの日は若い人達が多かったので、年寄りは混ざらない方がお互いに良かったと思う(笑)。
 サービス担当が4人になっていたので、「サービス増えたのですか?」と訊いたら、今までホールに出ていた女性は料理人で、今度厨房に入る事になり、代わりに若い男性がホール担当になるとの事、彼もフランス帰りの料理人だが、まずはサービスから開始するのはいい事だと思う、店によって客層は違い当然嗜好も違う、客が何を求めてこの店に来るかを知ってから料理を作るのは、プラスの要素が大きい筈だ。
 支配人から説明を受けた1月のプリフィクスメニューから選んだのは、

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・焼き芋(笑) ※これはメニュー外

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・定番の四角いグリーンオリーブのパン

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・背景のタイル壁に映える(笑)「ル・ルソール」のパン

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・北海道産鱈白子のムニエル、墨イカと下仁田葱

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・宮崎産カルガモのロースト

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・二品目は鴨肉ミンチと白菜のポトフ

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・宮崎産日向夏とフレッシュチーズのムース

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・苺のパート・ド・フリュイ

 この時期、鱈の白子は美味しくない訳がない(笑)、それでも和食の様なイカの墨和えと合わせたセンスは、やはりフロリレージュの料理、柚子を効かせた酸味のあるマヨネーズ風なソースが後を引く。
 カルトには‘canard japonaise’と表記された網捕りのカルガモは、お堀端を親子連れで歩くのと同じ種類なのか不明だが(笑)、青首鴨とは違った味わい、個性があまり強くないので食材としての可塑性はありそうだ、内臓を使うサルミソースが実に軽やかな味わいだった、ガルニの細牛蒡が面白い。二皿目は白菜を使ってポトフ仕立てにしたもの。鴨のソースサルミ&ポトフと聞くと、イメージするのは重い料理だが、そうならないのがこの料理人の非凡さだ。
 デセールは奔りの日向夏を使った、軽くてあっさりしたもの、これはもう一捻り何かアクセントがあった方が良かったか。
 何度も書いているが、この充実した内容で4,200円は破格だと思う。

 私がこの店を初めて訪れたのは3年前だが、それ以降でも料理は進化している、開店当初から通っている客はたぶんもっと変化を感じている事だろう。料理人の個性表現がより明確に伝わってきて、誰のものでない川手料理になりつつあると感じた。
 パリとリヨンの料理が違う様に、国内でも東京と大阪、札幌のフランス料理は違っていい筈だ、何処も同じフランス食材を並べるだけの料理は、もう卒業していい時代ではないだろうか、日本人料理人のポテンシャルはそこまで来ていると思う。
 そして今の東京という、巨大で複雑な街の個性を表現出来る料理は何処なのだろうと考えると、私が訪れた店の中では、この「フロリレージュ」を第一に置きたい。古いものと新しいものが混然一体となり、絶えず増殖と変容を繰り返す、この街を体現する「同時代‘Contemporain’」が、此処には存在する。

 最後は川手料理長の料理本にサインを貰うと云う、実にミーハー的行為をして(笑)、いつもの様に料理長と支配人の見送りを受けて退店。
 「一回来ればいいか」と思う店はあるが、此処みたいに「次の訪問が待ち遠しい」、「次は料理人がどんな球を投げて来るか」、こう期待出来る店は、東京でもあっちにもこっちにもある訳では無いと、あらためて思ってしまう、次回の予約もしないといけない(笑)。


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四谷荒木町「懐石 大原」

 東京・目白にあった懐石「和幸」は、近江・八日市の「招福楼本店」と共に、私が若い時から「いつか行ってみたい店」だった、料理雑誌等で紹介されて、茶の美学に沿った佇まいと、写真で見る料理の端正さに憧れていた、「いつかこの店に相応しい大人の風格と財布が身に付いた時に訪れたい」そう願っていた店だ。やがて年齢を重ねて「招福楼」は訪れる事が出来たが、「和幸」は主人の高橋一郎氏の逝去により閉店、「叶わぬ願い」になってしまった。
 この「和幸」で働いていた料理人が独立し、四谷で板前割烹を開業したのをWEB上で知り、「今度こそ行くぞ」と意気込んで、食べ歩きで知り合いになった料理人とグルメ美女を誘って、この日の夜に訪れる事にした。店は客の都合を待ってくれない、気が付いたら予約の取れない店になっているか、閉店しているかどちらかになってしまう(笑)。

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 店の名前は「大原」、場所は新宿区荒木町1番地と云う判り易い住所だが、小さなビルの2階でひっそりとした佇まい、目立つ看板を出さないのは店主の意向だろうか、一昨年の6月に開店したので、この地で1年半が経過した事になる。
 店内はカウンターが3席に椅子が8席の計11席、和食を楽しむには一番いい大きさ(小ささ)だろう、この日はカウンターに三人陣取る事になった。客から見える板場には店主の大原氏が一人、下手の厨房には女性料理人が二人で、このうち一人が配膳を担当する、あとでこの方が店主の奥様だと知った。
 料理は9,000円(サービス料別)の一種のみで、この日の料理は8品、内容は以下のとおり、

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・造り  (左から)ホウボウ、平目、メジナ

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・椀物  すっぽんの玉子豆腐、海老

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・八寸  (手前から時計回り)海老芋、黒豆&ちょろぎ、数の子、もろこ、とこぶし&蕗

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・焼物  甘鯛の幽庵焼、長芋

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・煮物  牡蠣、天王寺蕪、味噌仕立て

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・酢の物 鱈白子、ポン酢仕立て

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・御飯  新潟産こしひかり、蓬麩の白味噌碗、鮪山かけ、香の物

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・おかわりは染付碗で

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・茶と菓子 百合根の練り切り、抹茶

 料理全体の印象は端正で清新、店主は和幸時代から茶事の出張料理も担当していたそうで、そうした経験が料理に反映していると思った、盛り付けが綺麗で丁寧、人を驚かす手法はなくても、淡麗でいながら深い味わいを感じた。
 特に惹かれたのが和食の花形である「椀物」、上質の鰹節を使うと香りが立つし、昆布は旨味を出す、更にそこへスッポン出汁を加えると「強さ」が出る、まるで筋肉増強剤を加えるみたいだ(笑)、これは料理人としては使いたい食材、しかしスッポンは見栄えが悪いので、そのまま椀物にするのは茶懐石の美学に合わない、そこで身を刻んで玉子豆腐に包み椀種にする、この料理人のオリジンなのかは不明だが見事な解決法だ、こうした処はさすが茶懐石の名門出身だと思う。

 八寸、焼物、煮物の出来と流れもいい、食べ終わって、「もう一品位あってもいいかな」と感じたが、家に帰って今日の料理を振り返ると「いい料理だったな」と頂点が来る、これも茶懐石の考えに沿ったやり方だろう。最近は京都の和食でも「強肴」と称してローストビーフが出たりするが、そうした変化球は投げたくないみたいだ。
 器は特に高価な物は使用してはいないが、料理の印象に共通して、端正で料理を引き立てる物が多い、和幸から引き継いだ器も幾つかあるそうだ。

 店主はまだ38歳の若さ、饒舌ではなく尖らず穏やかな話しぶりだが、料理や食材の話になると語り始める(笑)。今年6月には第一子が誕生予定との事で、料理人としても父親としても、今年が本番の年になりそうだ。
 最後は店主夫妻を含め三人揃っての見送り、一階へ降りると荒木町の賑やかで「俗」な世界へ帰る事になるが、それまでは「聖」なる世界へ留まっていた事になる、この階段は二つの世界を隔てる「結界」と云う事だ(笑)。 
 この店はまた来てみたい、料理人は更に進化しそうな気配がある、私の予想ではあと2年後の40歳位が一回目のピークが来そうなので、それを見届けたい店だ。


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銀座「サーラ・アマービレ」

 この日は身内の新年会をやろうと云う話になり、更にメンバーの中に還暦を迎えた人間がいるので、そのお祝いを兼ねて集まる事になった。場所は花の銀座中央通り沿いのビル内にあるイタリア料理店「サーラ・アマービレ」、高級イタリア料理店「アロマフレスカ」の隣にあり、同グループが運営するレストランだ。
 「銀座、ビル内、グループ経営」の三題は、私が普段利用しない店のキーワードだが(笑)、この日は還暦人間の希望があって、私も「怖いもの見たさ」?があり(笑)、参加する事になった。

 場所は銀座2丁目、メルサの向かい側にあるトレシャスビルの12階、エレベーターを降りると右が「アロマフレスカ」だが、夜のみの営業なのでランチタイムなら間違える心配はない(笑)、その反対側に入口がある。
 割と広く天井の高い店内、窓からの採光も十分過ぎる程で明るい、フロアにはグランドピアノが置かれ、ディナータイムには生演奏もあるとの事、今回は一室ある個室を利用させてもらった。
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 休日ランチは7,000円の1コースのみ、うち5,800円が料理で1,200円がフリードリンク代になる、税・サービス料込なので、グループでの利用時には会計がやりやすい(笑)、当然客層もグループ利用が多く、この日も女子率95%で「女子会」が殆どだった、これは日本ならではの光景だが、銀座の女子会ともなると、皆さんお綺麗だし着ている服や持ち物が違って見える(笑)、私みたいな下町人間はただ口を開いて眺めるだけだ(笑)。
 この日の料理全てを紹介したい、

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・ブリのカルパッチョ、3種のハムとピアディーナ、ニョッコフリット、フォアグラのフラン金柑のマルメッラータとコンソメジュレ

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・季節野菜のバーニャガウダ

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・白魚のカルトッチョ仕立てパブリカ風味

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・マテ貝の薫草バター

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・甘海老とトマトのカペッリーニ

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・アジアの香りと車海老フライ

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・真鱈白子のセモリナ粉フリット、トリュフ添え

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・仔羊のロースト、粒マスタード

 
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・パルミジャーノのサラダ

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・帆立貝とカリフラワーのリングイネ、クリーム仕立て

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・仔牛の煮込みと山菜のタリアテッレ、タレッジョ風味

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・熱い栗と栗のジェラート(+300円)

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・小菓子

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・キース・ヘリングのカップを使ったエスプレッソ(ドッピオ)

 飲物はビール、ワイン(白・赤)、サングリア(白・赤)、スプマンテ(+500円)、ジンジャエール(辛口・甘口)、ブラッドオレンジジュース、ウーロン茶等、これらが飲み放題、居酒屋みたいにボトルごと持って来るのではなく、グラスが開いた頃に注ぎに来るし、途中で別の飲物に変える事も可。
 サービス全般は、さすが高級店を抱えるだけあってよく教育が出来ている。

 肝心の料理の印象は、一品一品は美味しいのだけれど、ポーションが小さいので、どうも欲求不満になる、「これ美味しい」と思った時には料理がなくなってしまうのだ、云わば「イタリアン版飲茶」(笑)。そしてこれは私だけだろうが、不満に感じたのが「作った人間の顔が見えない料理」である事、料理で何を表現したいかや、食材と格闘した形跡とかが見えてこない、上品で尖らず、その代りサプライズも無い、「こうした料理なら銀座に来る女子達は喜ぶ筈」と云う計算が透けて見えてしまう、食べて美味しいのだけれど気持ちが高揚してこない。
 でも店内は満席の賑わい、需要と供給の面で考えたら、こうした料理を好む人が集る店なのだろう、マニア向けの尖った料理を作っても客が来なかったら如何し様もない。

 「今の東京で流行っているのは、どんな店か」を体験する意味では勉強になった、「どうだった?」と訊かれたら、「美味しかった、女子会には向いていると思う」と、たぶん答えると思う(笑)。コーヒー一杯千円以上の店も存在する銀座で、休日ランチを優雅な雰囲気の中でゆったり楽しめ、それが「沢山飲んでも7,000円ポッキリ」の明朗会計で済むなら、お得と思うべきなのだろう(笑)。



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春日「四川料理・川国志」

 昼休みに職場から行けそうな食事処となると、どうしても固定化してしまう、その店へ往復する時間も考えると一時間は短いからだ。そして注文してから料理が出て来るまで、時間がかかり過ぎる店も困る、立ち食い蕎麦店、カレーショップ、牛丼店は値段だけでなく、その意味でも「サラリーマンの味方」だ、私も結構行っている(笑)。でもこうした店ばかり利用していると、「心の荒廃」とでも呼ぶべきか、何か寂しくなる時がある、「腹を満たせばいい」だけでは、人間は仕事しないものだ(笑)。
 ある日、「職場から行けそうな店で、面白そうな店はないか?」とネット検索していたら、引っかかったのが都営地下鉄春日駅近くにある四川料理店「川国志」(せんごくし)だった。ネット情報によると、「麻婆豆腐が美味しい」「担々麺もいける」「値段が安い」「サービスのお兄さんが面白い」?と割と高評価で、何とか往復出来そうな場所だったので、天気の良い日に訪れる事にした。

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 場所は春日駅の西片寄り出口を出て、白山通りを白山方面へ歩いた左側の雑居ビルの4階にある、このビルは1階がパチスロ、2・3階が焼肉、4階がこの四川料理、5階がベトナム料理、6階がカラオケと云う、歌舞伎町にあるみたいなカオスなテナントだ(笑)。
 店に入ると左の窓際にカウンター席、右側にテーブル席が、更に奥には円卓も備えているが満席に近い、入店後間髪を入れずに奥から「いらっしゃいませ~」と、大声が聞こえた、これがネット上で有名なサービスのお兄さんだ、「中国の『のびた君』」との失礼?な書き込みもあったが、たしかにそんな雰囲気はある(笑)、彼の案内でカウンターに着席、窓からの眺めは良くスカイツリーまで見える。
 初回の注文はやはりスペシャリテの「四川マーボー豆腐定食」(800円)をお願いする事に、辛さは三段階あって、「結構辛いですよ」の言葉から微辛にしたのだが、これは後で中辛にすべきだったと悔やんだ(笑)。

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 割と早目の待ち時間で出てきたのが、大き目の変形鉢に入った麻婆豆腐とご飯、それに焼きワンタンと搾菜&キュウリの和え物、少しセロリの風味がする玉子スープが付く。先ずは麻婆豆腐を口にすると、山椒の香りが立ちその後に豆板醤の辛さが来る、それを豆腐の柔らかさが包み「三位一体」となった美味しさ、豆腐もいい物を使っている、この料理の主役は豆腐、主役が駄目なら舞台(料理)全体が駄作になってしまう。焼きワンタンも玉子スープも、少量ながらいい味だ。
 食べていて化学調味料味をあまり感じなかった、この値段だから使っていない事は無いと思うが、使っても気になる量ではない、昼休みに中華料理を食べると、午後ずっと嫌な喉の渇きを覚える事があるが、この店ではそれが殆ど無かった。

 サービスは前述の元気のいいお兄さんと、女性2人の計3名、少しだけ見えた厨房も3人いて中国語で会話しているので、どうやら全員中国人または中国系だ、経営自体も中国人がやっているみたいで、店名も「三国志」から付け、「三」の字を縦にして「川国志」としたらしい(笑)。
 事前情報どおりこのサービスのお兄さんが面白い、とにかく元気で声が大きく日本語が達者、行く先々のテーブルやカウンターで客に話しかけている、中には煩わしいと思う人もいるかも知れないが、彼はどうにも憎めない個性を持っていて、ついペースに乗ってしまう(笑)、例えば私の後に来て隣に座った、馴染客と思われる体格のいい男性には、「よう、いい男!今日は麻婆激辛?」こんな調子だ(笑)。昭和の東京では、商店街に行くとこうした威勢のいいお兄さんがいたものだが、今は絶えて見なくなった、それに代わって経済成長中の中国に現れたと云う事か(笑)。このお兄さんとは、この日以降色々と話をする事になるのだが、それは次の機会に書きたいと思う。

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 会計の時にスタンプカードを貰い、十回ランチに来てスタンプ貯めると、ランチが1回無料になるそうだ、これはあと9回来ないといけないなと、それから通い出す事になった(笑)、「川国志十番勝負」だ、この後4回分の料理を挙げておく、料理の総括?は十番勝負終了後に書く事にしたい。

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・第二戦目 「担々麺と炒飯(小です(笑))」

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・第三戦目 「回鍋肉と焼餃子」

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・第四戦目 「酸辣湯麺と炒飯(小)」

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・第五戦目 「青椒肉絲と春巻」

 「東京いい店うまい店」に載る様な店ではないと思うが、千円でお釣りが来るランチとしては、十分なクオリティを感じる、この近くで昼飯処を探す時はお勧め出来る。
 ただ唯一残念なのは、店内が禁煙でない事かな。


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本郷「ビストロ・アバ」

 地下鉄の本郷三丁目駅と水道橋駅の中間辺りになるが、本郷壱岐坂近くにあるビストロ「Abats(アバ)」は、カウンター9席、テーブル6席の小さな構えながら、一部の肉好きには知られた店だ。現在のWEBページでも「季節のメニュー」として、「ヒグマ、蝦夷鹿、猪の内臓いろいろあります」と自己紹介があり、これは間違いなく普通の?フランス料理店では無い(笑)。
 この店の予約を取らないランチが凄い、と云う噂は以前から聞いていた、中でも一番の人気メニューである、数量限定の「豚のロースト」は、税込1,050円の低廉な価格ながら食べ切れない量があるとの話だった。
 私の勤め先は此処から近いのだが、昼休み1時間で往復するのは難しい距離、行ってみて席待ちだったりすると、もうそれでアウトだ。それもあって、なかなか行く機会を持てないでいたが、昨年末のある日この店の近くに用事が出来、それも丁度昼時だったため、これはチャンスと思い行ってみる事にした。

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 開店時間の11時半にはまだ店が開いておらず、男性が一人待っていた、近所を一回りして来たら更に男女二人組が増えていて丁度店が開いた、カウンターに座ったが、この後も次々と来店し、正午前には満席になった、昼前に一杯になるレストランは大阪みたいだ(笑)。厨房に料理人が一人、サービス担当の女性が一人の体制だが、WEB情報では最近まで料理人だけでやっていたらしい。
 ランチメニューは以下の5種類で、値段はサラダとパンが付いて950~1,050円と事前情報どおり安い。
・鴨もも肉のコンフィ
・豚肩のロースト
・若鷄もも肉と舞茸の煮込み
・白レバーのムース
・若鷄のバロティーヌ

 ここはやはりスペシャリテの豚だろうと、豚肩ローストを注文した。注文後、いきなり出てきたのがグラスとピッチャー(笑)、水は自分で注いでくださいと云う事だ。

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 暫くして出てきたのが、豪快極まりない、

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・豚肩のロースト

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・これにサラダとパン(自家製?)が付く

 画像では大きさが判り難いが、一辺10㎝はある塊、あらかじめ焼いていた大きな肉から切り分けたので、切り口がロゼ色だ、肉の下にはキャベツのブレゼとマッシュポテト、ソースはトマトソースとデミグラスを混ぜたみたいな味だった。一口食べると意外にあっさりした口当り、それでもこの大きさだ、食べ切るにはスピードが不可欠、冷めてしまっては余計腹に応える(笑)。食べていて思い出したのが、札幌「ブラッセリー・マーシュ」の「厚切り十勝豚のステーキ」だった、質量はあれに近い。
http://toshioncle.blog.fc2.com/blog-entry-84.html
 キャベツもマッシュポテトも軽い味付け、全体的に味が濃くないので助かる、自家製と思われるパンも結構美味しい、サービスの女性が「パンのお代わり出来ます」と言ったが、それは危険なので止めた(笑)。
 何とか完食できたが、デザートは用意していないみたいで、別料金のコーヒー(150円)だけ頼む、グラス売りワインはあるが、店内見渡しても全員が水だった。
 
 予想以上のボリュームとクオリティだった、これで1,050円では原価を考えたら利益は僅かだろう、それでもランチタイム営業をしているのは、近所の住人やOLさん達へのサービスの一種だと思う、「ランチで気に入ったなら、誰か夜にも来て欲しい」、そんなメッセージにも受け取った。
 オーナーシェフは北海道出身らしい、「ブラッセリー・マーシュ」を連想したのもそれが理由かも知れない、私の知っている北海道人は皆チマチマした処がなく大らかだ(笑)。

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 黒板には夜の料理が書いてあり、これもなかなか魅力的、夜にも来てみたいと思う、そしてこれからもこの激安ランチは続けて欲しいと願ってしまう(笑)、いい店だ。


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亀有「すし泉さわ」(閉店)

 以前このブログに書いた店だが、私の実家がある葛飾・亀有に「導らく」と云う変わった名前の寿司屋があり、主人一人で切り盛りしながらも、かなり本格的な寿司を出す事に感心した店だった。ところがこの店、急に休みが続いたと思ったら、その後何時の間にか天麩羅店に変わってしまった、寿司職人の主人は「前に店を潰した事がある」と言っていたので、商売は上手くない職人なのだろうかと思っていた。この店の事を忘れかけていたが、最近になりその職人が、亀有で寿司屋を再開(再々開?)したと云う噂をWEB上で知り、場所を調べてこの日の昼に行ってみる事にした。
 前店からは200m位離れた新築の小さなビルの一階、店の名前も「すし泉さわ」に変わっていたが、店主は久しぶりに会う同じ人だった(笑)。店はカウンターが9席に個室が一つ、白木のカウンターが映えて、以前の店より高級感が増していた。

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 店主は私の顔を覚えていたが、「(亀有に)居ない間は何処でやっていたのですか?」と訊いた答えは、「あまり上手くいかなかったのです」と笑っただけで詳しくは語ろうとしないので、それ以上は詮索しなかった(笑)
 昼の「おまかせ」握りは2,000円と3,000円の二種で、「導らく」時代より少し値上げしていた、この日は後者でお願いする事に、

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・白いか

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・平貝

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・あこう鯛

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・鰊(珍しい)

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・鯖(三陸産)

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・まぐろ赤身

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・まぐろ中トロ

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・まぐろ大トロ

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・才巻海老

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・玉子焼き

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・かんぴょう巻

・味噌汁
・果物(リンゴ)

 内容は9貫+玉子+巻物+味噌汁で、握りの出来は以前より更に良くなったと思う、これ銀座ならランチでも5,250円は取れる(^^;)。そしてこの様に一貫ずつ出す事がポイント、江戸前の寿司は料理として留まれる時間が極端に短いので、握った瞬間から劣化する、出されたら間髪を入れずに食べるのに限る(笑)。
 私はフランス料理店程には寿司屋は行っていないし、批評できる知識も浅い事を承知で読んで欲しいが、まずは何より寿司の姿がいい、以前の店と同じく寿司飯は赤酢を使用しているそうで、砂糖の量は少なめで舌に残る変な甘味も無い、以前は砂糖無しで握った事もあったが、客に受けなかったので少量加えているそうだ、米の質や炊き方、握り方は申し分ない、米の粒が潰れる事も無く口の中に入れるとハラリと解けていく。
 鮪は特別好物ではないが、それでもこうして赤身→中トロ→大トロと出されると、その意味が理解できる、特に感心したのは肉厚の平貝と鰊、特に後者は寿司で食べるのは多分初めての筈だが、生の鰊がこれ程美味しいとは不覚にも知らなかった。クレームブリュレみたいな自家製玉子焼きも面白いし、かんぴょう巻もこれ程美味しい物は久しくなかった。

 此処は潰れないで続いて欲しいと思う(笑)、今は回転寿司店に入っても、調子に乗って食べていると一人2,000円を超える事がある(笑)、それを考えればこの3,000円の内容は立派、使っている食材を考えたら安いと思う。
 この日は日曜日で私の他に三組の来店があり、カウンターは塞がった、それを店主一人で捌いているので、後から来た客は待たされたりするが、それを補って余りある寿司だった、幸い私は平日休みがあるので、次は平日の昼狙いで行きたい(笑)。
 あまり知られて欲しくないが、もし亀有まで行かれる事があれば、穴場としてお勧めしたい(笑)。
※2014年1月末で「店主の一身上の都合により閉店」との事です、大変に残念。


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雑司ヶ谷「オー・ボン・コワン」

 のちに「バブル崩壊」と呼ばれる事になる、狂騒のカラ景気が終わったのは、1990年代初めとされているが、東京ではこの頃から「プリフィクス・レストラン」が流行した、それまでのフレンチレストランでは、メニューとアラカルトを揃えていて、メニューの方は固定されたコース料理で、前菜やメイン料理の差し替えは出来なかった、そこへ料理の選択が出来るシステムの店が出現した、主に前菜・メイン・デザートの3皿構成で、それぞれ5~6種類用意された中から自分の食べたい料理とデザートを選び、自分でコースを構築するやり方だ、もとはフランスから来たもので、仏語の‘prix fixe’は、「何を選んでも値段は均一」を表す意味だった。

 パリでは200フラン前後でのプリフィクス・メニューが多かった事から、それを当時の為替レートに換算したのが、夜3,800円メニューの店で、「サンパチレストラン」なる呼び方をしたものだ(笑)、更にはそれより低額な値段設定の店も登場、夜でも2,000円台と云う今なら「価格破壊的」なフレンチだった、井川氏が運営するグループ(「ラ・ディネット」「バザパ」「パ・マル・レストラン」)等が特に知られ、此処で働いた料理人が独立したのが、白山「プルミエ」や高田馬場「ラミティエ」で、これは今でも続いている。
 やがてこのプリフィクスの流行は下火になる、理由は幾つか考えられるが、一番は食材ロスが多く、店側の利益が上がらなかった事によるものだろう、最近では低価格帯の店でも、店主導の「おまかせメニュー」の構成を取る店が増えた。

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 この日、お誘いを受け昼に初めて訪れた、豊島区雑司ヶ谷に昨年オープンしたフランス料理店「オー・ボン・コワン」でメニューを開いた時に、あの1990年代が蘇った(笑)。ランチメニューでも前菜6種、主菜5種、デザート5種からの選択で、前菜+魚+肉+デザート+コーヒーと、全部注文しても2,730円と格安、そして料理もあの時代を思い出す名前で目移りしてしまった(笑)、悩んだ末に選んだものは、

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・サツマイモのクリームスープ

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・自家製パン

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・コブ鯛のポワレ

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・仔羊とかぶの煮込み“ナヴァラン”

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・ルバーブのクランブル、キャラメルのアイスクリーム

 見てください、このお爺さんが集って来たみたいな地味な色合い(笑)、これが1990年代の、余計な装飾を排したプリフィクス色だ、サイマイモのスープはスープ皿一杯に盛られ、余計な脂肪分を感じない、コブ鯛は皮目をしっかり焼いた香ばしさに、醤油の様な風味を感じるソース、ナヴァランはどこか「ほっとする」優しさ、洗練されたレストランの味と云うより、‘goût de grand-mère’(おばあちゃんの味)とでも呼びたい美味しさだ。
 デザートもこの値段にしては丁寧な作りで、何よりパンが自家製なのが立派、これを食べてしまうと、最近レストランで使う事の多い冷凍種パンを美味しいとは思えなくなる。

 料理長の市毛氏は、神楽坂のカジュアル系フランス料理店「サン・マルタン」の出身と聞く、独立して自店を立ち上げても価格帯は同じにしているが、自分の本分を見極め背伸びしない、これは云うのは簡単だが実行は難しい事、料理人は皆独自のプライドを持つものだ。食後に厨房から出て来たので挨拶したが、料理人と云うより壮年ミュージシャンと云った雰囲気の人だった(笑)。
 赤や白や緑色を多用したビジュアル優先で少量ずつの多皿料理ではなく、食べ終わって「こういう料理が食べたかった」と思わず膝を打ってしまう、「今日は何を食べた」が家に帰っても思い出せる料理だ(笑)。
 店の場所は雑司ヶ谷の目立たない小さな商店街の中にある、店名のとおり「(道の)角の旨い物屋」と云う雰囲気、あとで地図を見たら、私がかつて頻繁に通った、今は無き護国寺の「パ・マル・レストラン」の場所からそう離れていない、料理を食べていて、あの時代を思い出したのも偶然ではなさそうだ(笑)。

 帰りは鬼子母神前から久しぶりにレトロな都電荒川線に乗ってみたが、これがツボにはまった(笑)、都電車両の低い窓から見える街は、電車から見る景色とは違う生活に密着したものだ。
 この店は副都心線の雑司ヶ谷駅からも行けるが、出来る事なら早稲田方面からでも三ノ輪方面でも都電に乗って行く事をお勧めしたい、「あの時代」を体験した人なら、きっとトリップできると思うからだ(笑)。
 この日はとても寒い日だったが、この店と都電のおかげで心温まる午後になった。


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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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