最後の晩餐にはまだ早い


神楽坂「オー・トレーズ・ジュイエ」(2014年2月)

 3月に亡母の7回忌法要をする事になり、集まって来る身内のために、法要後の会食場所を決めないといけなくなった。母が洋食好きで、その影響なのか身内にもヨコメシ好きが多い、菩提寺が四谷なのでそこからアクセスがいい店を思い浮かべて辿り着いたのが、このブログではお馴染みの、神楽坂のフランス料理「オー・トレーズ・ジュイエ」、この店で法事ランチ?をお願いする事にした。
 この日は打ち合せのためにランチタイムに訪れたのだが、それを口実に2月のランチメニューを試したかったのもある(笑)。

 もちろん予約をして行ったのだが、この日は平日ながらマダムランチのグループが2組利用し満席状態、更には遠方から中年男性の常連客が一人で訪問、「鳩が食べたい」と鳩料理とデザートだけを食べに来るなど盛り沢山だった。
 今回初めてカウンター席に座ったが、この席はマダム達のベンチシートから近く、彼女達に背中を見せる事になるので、ちょっと恥ずかしい(笑)、もう少し若いイケメンで締ったお尻があれば期待に沿えたのだろうが、残念な事でした(笑)。
 この店は昼4品のおまかせで2,800円、夜は7品で5,500円が基本メニューになる、1,000円~1,500円ランチが主流な神楽坂で、2,800円は高級ランチの部類だ、それを楽しめるのはやはり女性客、たとえ無料の水しか飲まなくても、日本のフレンチレストランの昼の主役は彼女達だ(笑)。

 2月のランチメニューは以下のとおり、

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・サワラのカルパッチョ、柑橘風味、蕪のフォンダン

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・白ワインは仏ブルゴーニュのTHOMAS MOREY

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・エゾカサゴのムニエル、蕎麦の実のリゾットとハマグリ

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・料長長から「少し飲んでみて」と勧められた、独FRIEDRICH BECKERのピノノワール、ロゼワインか?と思う様な薄い色、何かの本で大昔のブルゴーニュ赤もこんな感じだったと読んだ事がある、葡萄の果実味が直に伝わって来るタイプ。

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・牛タンのルーラード、早春の野菜添え

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・ウヴァ茶のシフォン、バナナミルク、リンゴとハイビスカスのコンポート

 前菜は魚偏に春と書く旬の鰆を、長時間低温で火入れし柔らかくした蕪をソースにして食べる料理、女性に受けそうなドレッセだが、男が食べても勿論美味しい(笑)。
 佐藤料理長が得意とする魚料理は、函館から直送のエゾカサゴで蛤のアクセントが効いている。肉料理は牛タンを広げてから、野菜と共に巻き(ルーラード)、クレピーヌ(網脂)を被せ焼いてからワイン風味の蒸し煮にしたもの。デセールはウヴァ茶のシフォンケーキが珍しかった。

 2,800円なら今の為替レートで換算すると20ユーロだ、ユーロ圏の主要都市である、パリ、ベルリン、ローマ、マドリード等で、これだけ手をかけた料理が20ユーロで提供出来るかとなるとまず無理な話で、パリではなくリヨンのブションなら20ユーロランチはあるが、料理はもっと雑だ(笑)。考えると日本のフランス料理は本当に安いと思う、別の見方をすれば、大金持ちになりたいなら設備投資にお金がかかり過ぎるフレンチシェフは止めた方がいい(笑)、料理を作る事が大好きで、採算抜きで客に喜んで貰う事を何よりも嬉しいと意気に感じる、こうした人でないと今の日本では、フレンチの料理人は続けられない(笑)。

 
 翌月の料理を打ち合せてから退店し、時間があったので飯田橋駅まで歩いたのだが、途中にあった或るイタリア料理店の店先に気になる貼紙があった、それは「当店では、料理およびメニューの写真撮影を禁じます」と云うもの、高級店では口頭で断る処もあるが、こうした低額店?でも禁じる様になったのかと、ちょっと驚いた。もうグルメブロガーが活躍出来る時代ではなくなったのかも知れない(笑)。


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亀有「ティア・ブランカ」(2014年2月)

 「関西食べ続け」を書いている間、都内で訪れた店が増えてしまったので、これから真剣に忘却の彼方になった記憶を呼び覚まし、記事をUPする事に(笑)。
 まずは2月初めに訪れた、下町亀有のイタリア料理「ティア・ブランカ」から。この店は過去何度か行っていたが全てランチタイムだった、そのランチメニューはデザート付でも1,200円と云う低廉価格ながら、内容に光るものがあって「亀有にも、ようやくまともなヨコメシ屋が出来た」と、まだ無名ながら注目していた店だった。

 今回は、遠方からの友人が常磐線沿線の柏に出稼ぎ?(笑)に来ることになり、「何処かで会いましょう」との話になって、我家からも柏からもアクセスがいいこの店に集合する事に、途中駅の金町在住の友人夫妻もお誘いし、総勢5名での集まりになった。
 日曜日の夜8時に集合したが、前日は都内に大雪が降った日で、街中の至る所には雪が山積み(笑)、このため冷蔵庫の中に居る様な寒い夜で、店は空いているだろうと思っていたが、何とほぼ満席、それも若い人が多くて驚いた。彼や彼女達向けの店が出来れば、やはり人はやって来るのだ、軌道に乗るまでは大変かも知れないが、これからフレンチ&イタリアンの新規出店を考えているのなら、東京は下町が狙い目だと思う(笑)。

 「ティア・ブランカ」の夜の部は一品料理がメインで、この日みたいに人数が多い時は、シェアしながら食べる事が基本、隣席の三人組もそんな感じだった。
 それなのでこの日の料理の注文は、「(スペシャリテの)スペイン風オムレツ、それと前菜を適当に(笑)、パスタは2種類を皆で分けられる位、肉は豚ローストで」と云ったアバウトさで、内容は店側におまかせしてしまった。

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・イタリア産生ハム、パルミジャーノ、ルッコラ

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・スペイン風オムレツ

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・アンティパスト・ミスト(前菜盛合せ)

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・レバーペーストのクロスティーニ、茄子のフリット

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・アサリとムール貝のスパゲッティ(2人前)

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・ラグーソースのフェトチーネ(2人前)

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・三元豚ロースのグリル、季節の野菜(2人前)

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・ティラミス誕生日バージョン(笑)

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・自家製ガトーショコラ

 この店の夜メニューは初めての体験だが、ランチタイムの印象とそう変わらなかった、判り易くて誰でも美味しいと頷ける料理。よく「レストランは夜に行かないと、本領は判らない」と云うが、それはたしかに真理だが、別の見方なら「ランチタイムが駄目な店は、夜行っても駄目」とも言える(笑)。ランチメニューが良い印象の料理なら、大体において夜も期待していい。中には「ランチは若い子達に作らせている」と料理人が堂々と言う店もあるが、こうした店は夜に行ってもまず料理は期待できないと思う(笑)。

 この「ティア・ブランカ」の福島料理長はまだ38歳の若さ、2011年の開業時に「葛飾経済新聞」が特集した記事があるが、店名はスペイン人の叔母さんの名前から取ったそうだ。
 http://katsushika.keizai.biz/headline/630/
 この記事にある様に、「かしこまって食べるイタリアンやスペイン料理のイメージを打破したい。みんなが集まりおなかいっぱい食べられるような店にしたい」とのコンセプトで始めたとの事、この日の料理もまさにそんな感じだった。
 ワインも泡物を除けば、全て2,300円均一と破格、イタリアやスペイン産が主になるが、料理の値段は抑えてもワインで儲けようとする下心も感じない(笑)。これだけ食べて飲んで、支払いは一人5,000円台、「これではあまり利益出ないのでは?」と、かえって心配してしまう(笑)。
 遠来の友人を囲んでの食事は、美味しくて楽しくて、そして財布の減りも少ないと云う、嬉しい夜になった。

 何でも都心だけに集中するのではなく、こうして一つの駅に一つのビストロとリストランテ(トラットリア)がある街が出来れば、東京も本当に「成熟した大人の街」になると思う、これからそうなって欲しいと願わずにいられない。


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大阪・岡町「古谷」(2014関西食べ続け⑨」

 長く苦しかった?関西食旅行も最終日、東京に帰る日になったが、ランチの前に寄ったのが、大阪福島にある市中央市場で、此処の市場関連棟にある、輸入食材と熟成肉を取り扱う店「フェリア」を訪問した。

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 「熟成肉」は現在各分野で注目されている食材だが、キチンとした物にするためには、保管設備と専任の取扱い知識が必要だ、此処は大阪では先駆的な卸売業者で、「ドライエージング」のための乾燥熟成庫を備えているので、見ておきたかった場所だ。
 訪問して参考になった、店の人に話を聞いたら、意外にも最近和食店から熟成肉の引き合いが多いとの事、献立の中に少量「熟成和牛の炭焼」みたいな感じで出す店が増えているそうだ、昔は日本料理で「四つ足」を出す事は「すき焼き店」等を除けば、先ずなかったと聞くので、時代と共に変わって来ているのだなと思う。
 提供する側(店)だけでなく、提供される側(客)の方も、もっと食材の事を学ぶ必要はあると思う。

 その後はJRで梅田まで出て阪急宝塚線に乗り換え、岡町駅で下車、最終訪問店である中国料理「古谷(ふるたに)」へ向かった。
 この岡町と云う駅と街は、この店へ行く事がなければ一生知らずに終わったと思う、東京なら東急東横線の沿線駅みたいな上品な街並みで、「金持ち喧嘩せず」みたいな雰囲気が漂っている(笑)、これまでに訪れた東大阪の布施や、南大阪の上本町とは同じ大阪でも随分と違う。
 店は駅から近く、隣にある花屋の奥はこの界隈でも知られた有名なイタリア料理店だそうだ。12時丁度に入店するが、店前には「本日は予約で満席です」の表示があった。

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 店内は狭山の「翠陽」を広くした様な雰囲気、モノトーンでモダンなインテリアで、カウンターと椅子席に別れていて全部で20席位か、個室もある。これを調理人一人、サービス一人の二人体制で対応するので、全席は埋めない方針みたいだ。
 ランチメニューは2,200円と3,500円の二種類で、点心を中心とした料理だが、予約時に後者の方をお願いし、更にプラス料金(500円)でフカヒレスープにアップグレード?してもらった。東京に比べ大阪の中国料理店は点心の品揃えが豊富だ、これは大阪人が点心好きだからなのかも?(笑)

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・前菜(くらげ、蒸し鶏、プチトマト、車海老、里芋)

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・フカヒレ入スープ

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・点心2種(海老餃子、小籠包)

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・ニラ玉の水餃子

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・揚げ点心2種

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・牛肉と獅子唐の味噌炒め

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・蟹肉とレタスの炒飯

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・デザート(杏仁豆腐他)

 とても折り目正しく正統派の中国料理で、特に点心は丁寧な作りだ、料理人は名門調理師学校を卒業、同校で教員を経験した後に有名ホテルで料理人として働き、一昨年この店を開業した。料理人として王道を歩いているし、料理にもその経歴が表れていると感じた、特に丁寧に取られた「湯」が全ての料理のベースになっていて、全体の料理を上品で深いものにしている。
 多くの利用客に支持される優等生的味だと思ったが、その反面、料理にもう少し面白味、何処かに「尖った」処があってもいいなと感じた、これは優等生とは遠い存在だった私の好みの問題で、店の場所の地域性もあり、一回利用しただけでこう指摘するのは余計な事かも知れない。現にこの日も満席になっているし、地域の人に支持されなければ、店はこの地盤では存続していけない筈だ。
 店内は女性客が多く、インテリアの雰囲気もあってまるでイタリアンレストランで食事している様な錯覚を覚えた。高級住宅地の地元民に支持されるお洒落な中国料理店として、やがてこの地を代表する名店となる事だろう。

 今回の関西4泊5日で廻ったのは昼夜9店、さすがに「食べ疲れ」しました(笑)。
 関西全体の景気は一時停滞し、街の活気もなくなっていたが、今回は景気回復の兆しを少し感じる事が出来た、特に大阪は外国(中国)人観光客が増えているし、東京と同じく市内各所で再開発が進んでいる。再開発後は高いビルばかり増え、一見東京とそっくりな街並みになってしまうのは、昔の大阪を知っている人間としては寂しい思いもある。でもそこに住む人間は昔とあまり変わっていないと思った、計算高いけれど人情に厚く、合理的だけど信心深い、体制に寄り添う事を嫌い、派手好きで目立ちたがり屋の大阪人、私はこんな彼・彼女達が好きだ(笑)、訪れる毎に元気を貰えて、明日の糧にする事が出来る。
 この旅行中にお付き合いしていただいた在関西の皆様、ありがとうございました、近いうちに再会できる事を楽しみに待っています。


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大阪・上本町「レストラン・コーイン」(2014関西食べ続け⑧)

 とても寒く小雪が降る関西最終の夜は、やはりこの店しかないと、上本町のフランス料理店「コーイン」へ向かう事になった。「オテル・ド・ヨシノ」と共に、私が関西フランス料理界にそびえ立つ「2本の巨大柱」と思っている店だ。
 この店を利用するのは、昨年2月以来なので1年ぶり、その間東京で「この店を超える、いや超えないまでも匹敵する店に出会いたい」と思っていたが、その願いは叶わなかった、東京ではこの一年間4割打者級の店は現れていない。「いや違う、此処がある」と言える店があり、これから紹介する料理が、この値段で出せるのなら、今すぐ教えて欲しいと思う、その位に今回も異次元級の料理体験になった。

 18時半に入店するが、この夜は他に2組が利用、入口側に女性2人組、奥には男女混合の5人組で、実はこの日バレンタインデーだったのだが、それとはあまり関係なさそうな客層だ(笑)。去年思ったのだが、此処は本当のフランス料理好きが「最後に辿り着く店」だと思う、言い方を変えれば「終末道場」みたいな場所(笑)。
 店頭で迎えてくれた湯浅料理長に挨拶し、真中の席に案内されるが、今日はこの3組で「満席」にしたみたいだ、自分の納得出来る料理を出したいがために、特に夜は客数を制限していると思われる。
 店内サービスはコックコート姿の若い男女が二人で担当、厨房も二人だが、料理長が皿出しもしている、自分の納得できる料理を出しながらも、若い料理人達を育てるのはとても難しい事だが、その両立を目指している様子に見えた。
 何が出てくるか、楽しみであると同時に怖さもあったこの日の料理(10,500円)、その全品を紹介したい。

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・グジェールトリュフバーガー

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・アミューズ(赤ピーマンのムース・蟹身・ウニコンソメジュレ、トリュフのタルトレット、トリュフバター)

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・自家製カンパーニュ系パン

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・長崎産トラフグのカルパッチョ、白子、トリュフ風味

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・土佐ジローの卵黄、自家製猪パンチェッタ、カブのピュレ、トリュフ

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・高知産猪のパテアンクルート、ベカスのパテ、トリュフとフォアグラのトーション

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・自家菜園の野菜のエチュベ、トリュフ風味

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・スッポンコンソメの膀胱包み焼き

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・静岡産泳ぎラングスティーヌのコロレ、ソースビスク

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・高知産雌猪のロワイヤル

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・自家製白カビトリュフチーズ

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・レモンと栗のハチミツのグラニテ

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・サトンゴショコラと苺のガトー、トリュフのアイスクリーム

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・ミニャルディーズ

 前回のブログ記事を見た人から、「(料理に使っているのは)中国産トリュフでは?仏産ならあの値段では出来ないでしょう」と言われたが、中国産を使ってもいいから、同じ料理を東京で作って欲しいと、本当は言いたいけどやめた (笑)。でもこの値段でこの料理が出せるのは、実際に体験しても信じ難い。
 特に「これは凄い」と唸ったのは、「自家菜園の蒸し煮」と「コンソメ」、前者は南大阪某所に小さな農園を借り、料理長が自ら畑を耕し肥料を加え、種蒔きして収穫した野菜を、自家製バターで蒸し煮した一皿、見た感じは「冬野菜のガルグイユ」だが、これは本家?を上回るのではと思う程の出来、土づくりから取り組んで、真面目に作った野菜は、肉や魚より贅沢な食材なのだと云う事を理解した。
 次のスッポンコンソメは「VGEスープ」の変形で、パイ皮をベッシー(豚膀胱)に変えたもの、香りの点ではパイ皮を超えている、面白いと思ったのが中に入れた「自家製キャベツの芯」で、本来は捨てる部分だが、あえてこの料理に使ったのは、食材を無駄にしなかったと伝えられる、北大路魯山人の料理哲学にも通じるやり方だ、このキャベツの芯が美味しいのだ(笑)。

 次のラングスティーヌは「泳ぎ」であって「活け」ではない、この両者は値段も味わいも相当違うものだそうだ、でも私も含め殆どの客は、その違いは判らないと思う、それでも泳ぎ物を使うのは、この料理人の「業」みたいなものだ(笑)。
 そしてメインは「猪のロワイヤル」、本来はリエーブル料理に使われる手法を転用したものだが、「ロワイヤル」とは「王の~」を指す、この場合の王は唯一人、アンシャン・レジームの頂点に君臨する絶対君主のフランス国王だ、「絶対王の料理」なら饗応の相手を平伏させ屈服させる料理であらねばならない、そうでなければ「ロワイヤル」を名乗ってはいけない筈だ、この贅沢な料理にはその資格がある、そう思った。
 残念だったのは、フランス料理4日連続が効いてきて、ラングスティーヌあたりで、胃が飽和状態になってしまった事、猪肉だけは何とか完食したが、ソースは残してしまい、これが心残りだった。この店は「少年の心と大人の財布」に加えて、「強靭な胃袋」も必要だ(笑)。
 今迄は手島料理が「剛」で、湯浅料理が「柔」だと何となく思っていたが、今回はそれが逆転した印象を受けた、料理後半は塩使いも攻めて来て、東京を通り過ぎてフランスに近いアセゾネ(味付け)だと感じた。 
 デセールも上出来で何とか食べることは出来たが、ミニャルディーズで遂に「ギブアップ」(笑)、お土産に包んでもらい、帰ってホテルフロントのお姉さんにあげたら喜んでくれた(笑)。

 この店を利用するのは4回目だが、今回は完敗と云うより討死だった(笑)、この料理人は客側が本気で斬りかかろうとすれば、それ以上の技で斬り返してくる。
 食後に湯浅料理長と話をしたが、「どんな料理でも、一度食べれば作る事は出来ます」と平然と話すこの料理人には、「絶対音感」ならぬ「絶対食感」があると思った、普通なら不遜とも取れる言葉だが、彼の料理を体験してみると、それが決して過信ではない事が理解できる。

 パリでも東京でもなく大阪、それも高級店が揃う北ではなく、俗な店も多い南地区に、この国でも最高レベルの料理力を持った料理人が存在するのは、一種の逆説・アイロニーにも感じてしまう(笑)。この料理人、バター、チーズに生ハム、サラミまで作り、更にはパンまで焼いているが、それでも満足せずに、畑を耕し野菜まで作り出した、この先は牛や豚まで飼い出すのではないか?(笑)、そして「料理長は器造りとか、やらないのですか?」と訊いた処、「やってみたいと思っています」との事(笑)。この料理人は全盛期のディエゴ・マラドーナみたいに、誰にも止められない(笑)。
 特別に濃くて寒かった関西最後の夜は、満腹を通り越し、苦しみの中にも快感を覚えながら終わった(笑)。



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大阪・新町「茶酔楼 時ノ葉」(2014関西食べ続け⑦」

 関西滞在四日目、この日は関東甲信越地方に記録的大雪が降った日で、大阪も朝から雪が降り続いていた、ホテルフロントの女性の話では、大阪でこうした本格的な雪降りは珍しいそうだ。
 昼は大阪・福島にある市設中央市場を見学し、場内の何処かで食事をしようと考えていたのだが、この雪で見学は断念。足場もよくないので、あまり遠出しないで済むホテル近くで昼食場所を探す事にした。幸いにもホテルは飲食店の多い西区新町にあるので助かった。
 余談だが、この新町は江戸時代までは遊郭だった場所で、江戸の𠮷原、京の島原と並び、日本三大遊郭の一つとされ、近松や西鶴作品の舞台にもなった。残念ながら今は史跡の案内板だけで、往時を偲ばせるものはなく、遊郭のあった場所には洒落たフレンチやイタリアン、カフェやバールが連なっている。
 夜はスーパーヘビー級のフランス料理なので、和食か中華だろうと考え、思い付いたのが、以前に夜昼共に利用した事がある、人気中国料理の「酒中花 空心」で、この店へ行ってみようと思った。

 未だにスマホを持たない(持てない)身なので(笑)、ホテルのレンタルPCで調べてみたら、従来店舗の2階に「茶酔楼 時ノ葉」と云う名前の、麺や粥、点心の店が出来ているのを知った、ここも面白そうと思い、とにかく店まで行ってみる事に。
 いつもは11時半の開店時間には数人行列が出来ている店だが、この日は雪のため並びは無かった、1階はランチが850円で定食2種類からの選択、2階は麺や粥を数種類揃えたメニューだったので、結局「時ノ葉」の方を選んだ。

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 少々怪しげなエントランスから2階へ上がり、中国風に赤く塗られた扉を開けて入店する。店内は1階同様それ程広い空間ではなく、窓際にカウンター席で、その他にテーブル席が数席、中国風のインテリアが置かれ、BGMも故弓による中国音楽と、ちょっと出来過ぎの感もあるが(笑)、なかなか洒落た空間だ。

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 女性店員にテーブル席に案内され再度メニューを見るが、ランチメニューは1,000~2,500円までの4種類、この価格帯が大阪ランチの標準になっている気がする、夜は客単価が1万円以上でも、昼は1,500円ランチを提供する店があるのが特徴的だ。
 麺ランチ(1,200円)にしようと思い、「翠陽」との比較もしてみたく「四川担々麺」に決めかけたが、その下にある「四川牛肉麺」の文字にも惹かれてしまい、結局これを海南ライスとのセットで選ぶ事にした。

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 暫くして運ばれてきた麺と飯、まずはスープからいただくが、いきなり辛味と酸味が来た、担々麺と酸辣湯麵を合わせたみたいな味だ。以前から東京味と大阪味の違いは何だろうと考えていたが、最近少し理解して来た。東京は一口目が勝負で、第一印象を重視する、一方大阪は一皿全体、汁物なら一杯食べ終えた時に頂点が来る、これが違う。それで云うとこの牛肉麺は東京風だ、いきなりガツンと来る(笑)、大阪人なら「味が濃い」と云われそうだが、東京人の私にこの味は合う。
 麺がまた独特で、かなり細い麺で加水量が少なく乾麺みたいな印象、これが刺激のある辛味と酸味のスープに合って美味しい、色々と試してみて、この麺に辿り着いたのだろう。そして嬉しいのは牛肉がタップリ入っている事だ(笑)。
 海南ライスはインディカ米を使った炊き込みタイプ、米単品だとパサついた印象だが、濃い汁気の麺との相性がいい。テーブルに置かれた壺には、自家製の搾菜漬が入っていて、これが食べ放題(笑)、醤油味中心のシンプルさで、添加物味がない滋味あるものだ。

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 デザートの杏仁豆腐は普通の出来だが、中国茶は何度も淹れてくれるので嬉しかった。
 このランチは良かった、次回はこれに点心と前菜が付く、2,500円のランチメニューも試してみたいと思う。

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 雪降る中をホテルに帰り、夜に備えて休憩?お腹を空かすためには、経験上「足湯」が有効だ、血流を良くするのが、消化を早めるのに効果があるみたいで、これに取り組む事にする(笑)。


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大阪・高麗橋「旬菜 桜花」(2014年関西食べ続け⑥」

 ある程度年配で食通の大阪人なら、ご存知の方いると思うが、以前船場に「丸治」と云う名前の割烹があった、私がこの店へ人に連れられて行ったのは30年以上前の話だが、その時の料理を今でも忘れない、今主流の「おまかせ」献立ではなく、客は木片に書かれた食品名から、自分の食べたいものを告げ、料理法を聞いて注文する方式。
 例えば「はも」とあれば、「今日の鱧はどんな料理?」と訊き、「湯引きと蒸し物です」と店の人が答える、「それなら、蒸し物にしてくれ」と、こんな感じだった。その鱧の旨さを知ったのも此処で、今でも大阪の和食と聞くと、まずこの店を連想してしまう。
 毎年大阪に食旅行に行く様になり、一店は和食を選ぶのだが、どうも「此処行ってみたい」と足を運びたい店が少ない、最近話題になっている大阪の和食店をWEB上で調べ画像を見ても、どうもその気になれない、料理は京風に綺麗にまとめているが、美味しそうなフェロモンを感じないのだ、「何も大阪で、京都の真似する事ないのに」と残念に思ってしまう、そこで思い出したのが前述の「丸治」だった。

 そんな事を考えていた時に、FBで親しくなった大阪の食仲間から、大阪の和食なら「桜花」が面白いよと云う話を聞いた。調べてみると此処の若い店主は、大阪の食材を研究し、「大阪食文化研究所」を主催、料理を探求しているとの事、WEB上で料理画像を見たが、これは面白そうと働きかけるものがあり、東京から予約し、この日の夜に訪れる事にした。

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 店の場所は地下鉄の肥後橋駅と淀屋橋駅の中間位、ビジネス街だが飲食店も結構あって、老舗フランス料理店の「ラ・ベカス」も近所だ。
 店は一見和食店には見えない、カフェみたいなモダンな雰囲気、入店時にカウンター席に案内されたが、奥のテーブル席はほぼ満席だった。夜のおまかせ献立は三種で、その中から6,000円のものをお願いしていた、その内容は、

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先附: 「立春大吉」塩蒸豆、たたみ鰯とクリームチーズの味噌漬けの博多、つぼみ菜に酒
粕クリーム、ちしゃ唐味噌漬け、松葉に黒豆、のし梅

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大阪地産の箕面ビール

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お造り: 河豚の炙り 五色の野菜添え

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 同 : かんぱち、よこわ(メジマグロ)、伝助穴子炙り

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箸洗い: 田辺大根のすり流し

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旬野菜の炊き合せ: 金時人参、原木椎茸、さやえんどう、田辺大根 太牛蒡黒胡麻、富田林海老芋

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旬菜の盛り合せ: 古伊万里の猪口内は鱈白子紅芯大根柚子酢和え、蛸柔らか煮、牡蠣オイル漬けになめたけおろし、公魚南蛮漬け、八尾若牛蒡信田巻、河内鴨たたき、ミニ大根、自家製薬味味噌かけ・明日香大根甘酢漬け

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季節の主菜: 鰤炭火焼と高山真菜おひたし

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御飯もの: 小豆粥と自家製塩昆布
菓子と抹茶: 和洋(コーヒー風味のアーモンド菓子)

 料理の前に、カウンター席で話した森田料理長の印象を先に述べたい、長身で体格がよく低い声で喋る、誰かに似ていると思ったが、TVのお宝鑑定番組で、書画を担当する男性鑑定士だった(笑)。そして料理を食べてから、もう一人印象がダブったのが、東京八丁堀のフランス料理店「シック・プッテートル」の生井料理長、どこか彼の料理と共通点を感じたのだ。二人共に独学派料理人で勉強熱心、特に野菜に注目して野菜料理が得意、メニュー(献立)構成も個性的で定式に拘らない、盛り付けも独特の色使いを発揮し美的センスを感じる。年齢もそう変わらない筈で、和食とフランス料理の違いはあっても、指向するものに大きな差は無い、風貌も茫洋として泰然、料理人として更に伸びそうな可能性を感じる点も似ている、私は森田氏を「和食界の生井祐介」だと思った(笑)。

 料理もこの印象と共通すると思った。繊細さと大胆さが共存し、優しい女性的な印象もありながら、時に男性的な潔さも感じた、そして色気がある。
 特に印象的だった料理を挙げると、まずは「すり流し」で、通常ならここは椀物で、澄まし椀が出る順番だが、あえて「箸洗い」と称し、「大根のすり流し」にしたのには、並でないセンスを感じた、続く「炊き合せ」もいい出来、この後は「八寸」ではなく「旬菜盛り合せ」と称した酒肴、この三品の流れは良かった。注文があるとすれば、最後の抹茶に添えた菓子で、これはもう一工夫あった方がいいと思う。
 この値段だから高級食材は使えないが、それでもまっとうな和食は出来るのだと思った、普通のサラリーマンにとって、夜に一人福沢諭吉さん1枚程度で済む、居酒屋では無い、まともな和食店を知っていれば本当にありがたい、東京にも欲しい店だ。
 次回来阪時にも訪れてみたいと思ったが、見処ありな店が人気になるのは嬉しい反面、「予約の取れない店」にはなって欲しくないなと、勝手な願望を抱いてしまう(笑)。
 「関西」の一言では括れない、立派な「大阪の和食」として推薦したい店だ。



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大阪・布施「パパノエル」(2014関西食べ続け⑤)

 「関西食べ続け」も煮詰まってきた三日目の昼、胃薬を飲みながらも向かったのは、これも大阪での定番になった、近鉄布施駅近くにあるフランス料理「パパノエル」。
 FBのおかげで大阪の食仲間が増えたが、その中の一人から、「何で東京人のあなたがこの店を知っているのか?」と驚かれた事、こう言っては失礼だが、大阪市内でもフランス料理があまり似合わないエリアにあるこの店、利用するのは殆どが地元客で、東京からこの店に来るのは、大阪人が東京の南千住や亀有のイタリアンを目指して来るみたいな、かなりレアな事になるみたいだ(笑)。
 私が自分の「食」に自慢できる事があるとしたら、常にオープンマインドでいたいと思っている点、星の数やランキング、食べログの点数等はあまり気にしなくなったし、美味しい店なら何処にあっても追いかけたいので、地域性は気にしない人間だ。

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 そして、この店がある布施と云う町が好きだ、東京下町で育った私の子供時代は、町中に家内制小工場が幾つもあり遊び場にしていた、今思うと危険な薬品も扱っていたみたいだが、誰も何も思わなかった、商店街には活気があり、忙しいけどあまり豊かではない、下町職人向けの安い惣菜を売る店が多く、夕方は人で賑わっていた。この布施の街を歩いているとあの時代を思い出す。人同士の繋がりが今よりずっと濃密で、皆お金はなかったけれど、もっと大事な何かを持っていた、その下町の原風景が蘇ってくる、何処か共通点があるのだ。

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 店の場所は、「フラワーロードほんまち」と云う名前の商店街中にある、去年は此の店でランチタイム限定の千円ロールキャベツを食べたが、今回は本来メニューの正当フランス料理、これが連続三日目だから、ボディーブローみたいに効いている(笑)。
 それでも気持ちを鼓舞して、いただくランチメニュー(4,200円)の内容は、

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・前菜(ベビーロブスターのサラダ、カレー風味のミートパイ、生ハムのカクテル)

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・優しい味のパン2種

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・ヤリイカとワイルドライスのギャレット

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・牛ほほ肉のビール煮込、グラタンドーフィノワ

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・キンカンのムース天津甘栗のモンブラン仕立、メローゴールドのゼリー、キャラメル風味のアイス、ココナッツミルクとバナナのフラン

 この店のスペシャリテである前菜盛り合せには箸が用意される、これで食べてくださいと云う事だが、この箸は肉料理まで使う事も可能で、大阪ではこのスタイルを他店でも見た、これへ辿り着くまで店主は葛藤もあった筈だが、これはいい事だと思う、日本それも大阪下町で営むフランス料理だ、周りの環境に合わせた変容はあっていいと思う。
 前菜はどれも優しい味、ベビーロブスターは和名だと「コシオリエビ」になるみたいだが、これはなかなか美味しい海老だ。ちょっと驚いたのが次のイカ料理で、モダンで繊細な皿、これは星付き店の料理としても通用しそう、見事に一本取られました(笑)。
 ビール煮込はベルギー伝統料理をリファインさせたもので、尖らず柔らかい美味しさだった。そしてデセールでまた驚かされた、こうした一人厨房の店では料理が良くても、デザートで落胆する事がありがちだが、どれも美味しい、特に「キンカンのムース天津甘栗のモンブラン仕立」は、「今年印象に残ったデザート」の有力候補(笑)。

 前日の「ぽたじぇ」が、疲れた息子を叱咤激励する「親父の味」なら、この料理は店名どおり「パパの味」だ(笑)、息子が道を踏み外して帰って来ても、優しく迎え入れてくれそうな、心の寛容さを感じた。
 無断で書いてしまうが、店主は昨年一時体調を崩して店を休んだ、その時に「お店、辞めないでください」と、近隣の人や常連客から激励する言葉をたくさん貰ったとの事、その経験によるものだろうか、以前より料理に肩の力が抜けて、柔らかく繊細になったと感じた。
 店内サービスは奥様が担当するが、この日は夫妻の娘さんも手伝っていた、別テーブルの客が、娘さんを見て「私、赤ん坊の頃から知っている」と話していたが、それだけ地域の人達に馴染んでいる店だと云う事だ。 
 赤い本の星は無くても、地域で支持される名店、少子高齢化が進み家族関係が希薄になる日本に、こうした温もりのある店がもっと増える事を望みたい。
 店主はまだまだ引退せず、我々中年の輝ける「星」でいて欲しいと思う(笑)、素敵な料理とおもてなし、そして素敵な午後をありがとうございました。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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