最後の晩餐にはまだ早い


代々木八幡「アルドアック」

 食にかける労力とお金は私など足元にも及ばず、日頃から尊敬しているグルメなご夫妻のお誘いに応じて、この夜に初めて訪れたのは、小田急線代々木八幡駅&メトロ千代田線代々木公園駅から近い、モダン系スペイン料理「アルドアック」。夫妻が最近「一押し」で、私自身も「行きたい」と思いながらも、我家から遠いのと夜しか営業していない事もあり、行きそびれていた店だった。

 店の場所は、富ヶ谷交差点近くの商店街の中にある小さなビルの2階で、目立たずフリの客は来ないロケーション、近くに自然派パンの店「ルヴァン」があり、そこへ来ていたからすぐ判ったが、土地勘の無い人は迷うと思う、2階に上ると店名の書いていないドアがあり、「本当に此処?」と不安になりながら開けると、カウンターが目に入って来て一安心(笑)。
 この店は料理人一人で全て対応する、料理の仕込みを行い、客が来たら酒を注ぎ、調理をして盛り付ける、もちろん会計まで担当する。このため店内はカウンターだけの9席、この日は我々を含め6名の利用で、それも時間差があったので問題なかったが、これで同時に満席になったら、さぞ大変だろうなと想像してしまう。

 料理人は酒井涼氏、まだ33歳の若さだそうだ。WEB情報によると都内の有名スペイン料理店で働き、料理長も務めた後に独立、2012年6月にこの地に開業した。スペイン本国では食事に行った時に内緒で厨房を手伝った?程度で、特に修行歴は無いとの事だ。
 此処へ来たかった理由は、この日同行した夫妻を始め、食仲間の評判がとても良かったからで、この点最近では「シック・プッテートル」と双璧の店だ。

 イケメンの酒井氏と挨拶を交わし、始まったこの日の「ムニュ・デギュスタシオン」(こうメニューに書いてある)(7,500円)全品を紹介する、

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・チャコリを注ぐ酒井氏、チャコリはバスク産の発泡白ワインで、バルでピンチョス(タパス)を味わうにはベストマッチとされ、この様に高い位置からグラスに注ぐのが一般的。

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・スナップエンドウの鞘のスープ

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・アミューズ(鰯のマリネ、塩鱈のブニュエロ、生ハムのクリームコロッケ、エンパナディージャ、ナンプラーバターを詰めたオリーブ、リンゴとブルーチーズにミルクチョコ)

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・蛸の煮込み、生ハムで出汁を取ったスープ

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・イカのプランチャ

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・アホブランコ、ハモンイベリコ

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・ミロの絵画を思わせる、ピキージョ(赤ピーマン)と椎茸の詰め物

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・長崎産黒鯛、鯛の白子、スープ仕立

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・イカスミのパエージャ

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・煮込んでからプランチャした岩中豚、赤ワインビネガー風味

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・エスプレッソのプリン、バニラとペドロヒメネスのアイス?

 店の規模と事前のWEB情報で、この店ではサン=セバスチャンのバル、例えば旧市街にある「ラ・クチャラ・デ・サン・テルモ」みたいな、ちょっと凝ったピンチョス的料理を出すのかなと思っていたが、予想とは少し違った。バルと云うよりもっと体系的に流れを考えた料理で、料理構成は日本の板前割烹の「おまかせ」に近い感覚だ。ブログに書いた、大阪「桜花」の料理をスペインの料理法でアレンジしたら、こんな感じになるのでは?とも思った(笑)。
 特に印象的だった料理を挙げておくと、先ずは「アホブランコ」を含むスープ3種、さりげない物だが丁寧な仕事が感じられた、それと「アミューズ」と表記しているが、紛れもない「ピンチョス」である皿盛りの前菜、これは和食なら「八寸」だ(笑)。
 鯛の料理とパエージャもいい出来、中国料理の技法を応用と話していた豚料理は、酸味が「酢豚」みたいで面白い。料理全体的に酸の使い方が巧いし、スペイン現地料理より塩分・脂分が抑えてあるので、酒飲みでない私には嬉しい(笑)。
 一人厨房ながら盛付けも丁寧で、よくここまでやると感心する。その割にテンションを高くしている訳ではなく、話しかけても応えてくれるし、淡々と料理を進めて行く姿は、今までいなかったタイプの「新世代的料理人」と言えそうだ(笑)。

 これは噂に違わない店だ、そしてこれからも上昇しそうな勢いがある。僅かながら「一人調理の限界」も感じないでもなかったので、スタッフが増えれば更にポテンシャルは上がると思う、でもそうなると次はこの店の容量では足りなくなるし、値段も上がってしまう事になるが(笑)。
 ここはまた来てみたいし、特にモダンスパニッシュの本場?である、関西の食通の友人達を連れて来て感想を聞いてみたいと思った(笑)。我家から遠いのが難だが、ローテーションに入れたい店がまた増えてしまった、いい料理でした。



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北千住「ライカノ」

 久住昌之原作、谷口ジロー画のコミック「孤独のグルメ」は、ブックオフの立読み?で見た事あるが(笑)、テレビ東京で実写ドラマ化され放映していた事は去年まで知らなかった。知人から「面白いから一度見てみろ」とは言われていたが、放送時間帯が深夜で且つ我家には録画する機器がないため(笑)、その機会がなかった。ところが、昨年大晦日から今年の正月三が日にかけて、昼間の時間帯にテレビ東京系列のBSジャパンで一挙再放送されたため、全編は無理ながらかなりの部分を見る事が出来た、そして見事にハマってしまった(笑)。
 物語は主人公の井之頭五郎が、仕事の合間に独りで立ち寄る飲食店で料理を食べる、ただひたすらに食べると云う単純なストーリーだが、何処かペーソスと食文化へのアイロニーも感じさせて大変に面白かった。これは主役を演じた俳優松重豊のキャラクターに負う処が大きいと思う、舞台出身の人みたいだが、表情をあまり変えずにただ黙々と料理を口に運ぶ演技?は実に味がある、人が物を食べる姿は決して美しく見えないが、彼はそれを逆手に取って見る側を圧倒する、「快優の怪演技」と云っていいだろう(笑)。

 この「孤独のグルメ」に出て来るのは実在の店だ、それも高級店ではなく庶民的な店が多いのが特徴。主人公の見事な食べっぷりに惹かれ、どこかを訪れてみたくなった(笑)。
 調べてみると我家から一番近いのは、北千住のタイ料理「ライカノ」で、天気の良い日に遠路チャリを飛ばして行ってみた。

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 店はJR北千住駅西口を出て、足立都税事務所や一部が移転して来た東京芸大校舎へ向かう途中にある。この界隈は以前ディープ極まりない飲み屋街だったが、若者の増加により急激に変わりつつあり、店の近くには洒落たイタリア料理店も出来ていた。

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 平日11時半の開店直後だったが、既に5割の入りでこの後も次々と来店、噂どおり人気の店だ。メニューが豊富で何を選ぼうか迷うのだが、初回なので無難そうな「豚のレッドカレー」をセット(995円税別)で注文する事にした。

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・磨き込まれた銀のコップに入った水

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・タイ風春雨サラダ

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・白菜スープ

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・レッドカレー

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・デザート(タピオカココナツミルク)

 注文後に直ぐ出てきた春雨サラダは、タイでは「ヤム・ウン・セン」と呼ぶそうで、通常ナンプラーとレモン果汁で味付けする、これは「酢の物」みたいで日本人の味覚に合う。次の白菜スープは一見何気ない物だが、海老の出汁みたいでとても上品な風味を感じ美味しい。
 主役のレッドカレーが運ばれてきた、インド料理店と同じで料理の出は早い、これは料理が仕込み中心で、その場での二次調理時間が少ないという事だろう。ご飯は期待していたタイ米ではなく日本米、場所柄仕方ないのかも知れないが、これはちょっと残念だった。
 肝心のカレーの味は、見かけ辛いかな?と思った割には意外とそうでもなかった、砕いたピーナッツ?の風味と豚ひき肉がベースで、そこへ辛味と酸味と甘味が加わる。全体的に塩分が強くて「塩辛い」と感じてしまったが、滅多に食べないタイ料理なので、これがベーシックなのかこの店独自の味なのかは不明。
 デザートは「おまけ」みたいな物で普通でした(笑)。

 WEB情報によると、この店は脱サラした元セールスマンのオーナーが、タイ出身の妻と20年前に此の地に開業し、タイ人料理人が調理にあたっているそうだ、早くから雑誌等マスメディアで紹介され人気店になった。店内はタイの民芸品や写真、この店を訪れた著名人のサインを飾っている、期待どおり松重豊氏のサインもあった(笑)。
 まだ「エスニック」と云う言葉が一般的でなかった時代から、都心ではなく下町のこの地で、あまり日本人には馴染がなかったタイ料理店を続けて来たのには、相当苦労もあっただろうと想像する。

 もし近くに来る事あれば、また寄ってみたいと思う、スープが印象に残ったので、次はタイ風のスープ麺も食べてみたい。この店は一人で行っても料理の出が早く、待たされないので「孤独のグルメ」を気取るのに向いている(笑)。
 北千住は再開発が進んでいるし若い人も増えている、これから面白いと思う、今後出店を考えている料理人は、候補にしていい街だ。
 


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六本木「トレフ・ミヤモト」

 のちに「バブル」と呼ばれる事になる狂騒の時代の終わり頃、東京・勝どきの倉庫街に「クラブ・ニュクス」と云う名の不思議なフランス料理店があった。元倉庫を改造した店舗で、暗い店内には枯木が置かれ、「モノリス」みたいな壁がそそり立ち、上から水が流れる異次元空間、初めて見た時は「これは、お化け屋敷だ」と思ったものだ(笑)。
 私が訪れた時の料理長は、現銀座「マノワール・ダスティン」の五十嵐安雄氏、その五十嵐氏が独立した後に料理長に就任したのが、この夜行く六本木のフランス料理店「トレフ・ミヤモト」の宮本雅彦氏だった。
 宮本氏はその後西麻布で独立開業、それから銀座~六本木と移転していた。キャリアのある料理人なので、以前から「行ってみたい」と思っていたが、六本木が我家からも職場からも行き難かった事もあり、なかなか機会がなかった。今回は同じくこの店に興味を持っていた大阪の食仲間と約束し、彼が東京に来る日に合わせやっと初訪問をする事になった。

 店の場所は六本木交差点を西麻布に向かって進み、コンビニがある道を右に入って行く、店の前には出雲大社の分祠、更に道を進むと話題の「龍吟」がある。この界隈はバブル時代から小規模飲食店が多いが、今目立つのは客単価の低い店ばかりだ(笑)。
 店にはテラスがあって、夏場はここも食卓として利用しているみたいだ、ドアを開けると、迎えてくれたのはマダムで、華やかで陽性な印象の方、久しぶりに「レストランのマダムらしいマダム」に出会った(笑)。
 店内は落ち着いた雰囲気、所々に飾ってあるインテリア小物類は洗練され、位置皿やカトラリー等は、時間をかけて集めた事が判るどれも品のいい物だ。

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 友人も到着し、発泡の甲州ワインで乾杯して始まったこの日のディナーは、

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・アミューズ(白子のグラティネ、マテ貝のラヴィゴットソース、ホタルイカのパセリソース、糖度10度アイコトマトのクーリ)

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・フォアグラのソテー、ソースペリグー

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・全て自家製の天然酵母パン

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・黒人参のムース、ハーブ入リフロマージュブランのタルティーヌ、雲丹、ダブルコンソメのジュレ

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・スペシャリテのクロメスキ(フォアグラとトリュフのスープコロッケ)

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・黒ムツと平貝、季節の野菜、ソースベルシーとオランデーズ

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・北海道ボーヤファーム産仔羊のデクリネゾン

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・あまおう苺のピュレとソースボール、パンナコッタ、濃縮牛乳のアイス

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・ミニャルディーズ

 料理全体の印象は、とにかく手間と時間をかけて丁寧に作っている。料理人は築地市場に行き魚貝を仕入れ、店に帰ればフォンを仕込みコンソメを採る、そして天然酵母のパンまで毎日焼いている。最近の若い料理人なら食材は現地直送や既製品で済ませ、機械を導入して省力化を図る処を、あえて従前のやり方で料理を続けている、でもこのローテクさが良い方向で料理に反映していると思った。薄っぺらでない滋味と、フランス料理が本当に美味しかった時代の、いい部分を受け継いでいるなと感じる事が出来た。
 「知性は向上したが、感性は希薄になった」と云う言葉があるが、一部の若い料理人達の、その場の流行を追うだけの頭でっかちな料理に遭遇し、「またこれか」とがっかりする事がある、この宮本料理にはそうした処はまったく感じられなかった。
 
 店のWEBページによると、宮本料理長は1988年に渡仏、「ミシェル・ゲラール」「ジョルジュ・ブラン」等で研鑽を積んだ後、イタリア・ミラノの美食倶楽部「トレフ(3fff)」の料理長に抜擢された、現在の店名はそこから付けたそうだ。
 古典料理をベースに、そこへ自分の個性を出す事をコンセプトにしているとの事で、そのイデーはこの料理から充分汲み取れた。ソースペリグー、コンソメドゥーブル、ソースオランデーズは、まともなものに最近出会えなくなったが、ちゃんと作ったものは美味しいと云う、当たり前の事を再確認した、難しい果物を使ったデセールも秀逸だ。

 食後テーブルに来た宮本料理長と話をしたが、黒いコックコートに黒いタブリエ、貫録があって、これで兜と鎧をつけたら戦国武将のイメージ(笑)。鉄人番組を筆頭に以前はマスメディアによく出ていたのでその話になったが、20年位前にTVで見た、「アフリカへ行って、マサイ族にフランス料理を出す」の話で盛り上がってしまった(笑)、「あの時は殺されそうになったのです」と淡々と話していたが、この料理人には何があっても動じない「胆力」があると思った、だからバブル崩壊後の激動の東京で生き残れたのだろう。

 楽しい夜でした、宮本料理長にマダム、遅くまでお付き合いありがとうございました。また昔の話と美味しい料理を体験しに行きたいと思います(笑)。


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五反野「パティスリー・シフォン」

 フランス料理店のブログUPが続いたので、このあたりで息抜きのために(笑)、地元のパティスリーを一軒紹介したい。

 或る日、例の「食べログ」を検索していたら、我家から自転車で行けそうな場所に、割と評価ポイントの高いパティスリーがあった、店の名前は「シフォン‘Chiffon’」で「シフォンケーキ」から取ったものだろうか、場所は五反野、東武伊勢崎線(スカイツリーライン)の五反野駅を出て、都立江北高校へ向かう商店街の中にある、早速行ってみる事にした。
 五反野と聞いて「五十嵐」が思い浮かぶのは、相当ディープな在京グルメだ(笑)、銀座のフランス料理店「マノワール・ダスティン」の五十嵐料理長の実弟が、元居酒屋を居抜きで開業、フランス風居酒屋料理を出す店がこの近くにあった、その後北千住へ移転し営業を続けていたが、結局其処も閉店したと聞く、今あの人何処で何しているのだろう?

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 話がそれたがこの「シフォン」については、婚活情報サイト?が詳しく記事にしている。
http://woman.zwei.com/column/turningpoint/06.html 
 同じ有名ホテルで働いていた男女が知り合い、やがて恋に落ち結婚、二人で小さなケーキ店を始める、何やらTVドラマみたいな話だが本当にあった。「主人の夢は私の夢でもあるから・・」のくだりは、読んでいて思わず涙ぐんでしまった(笑)。
 2010年10月の開業だそうだが、横丁の角にある小さな店舗で、この奥様の趣味なのか少々メルヘンチックな装飾、親父一人でケーキを買いに行くのは、ちょっと気後れする(笑)。
 ありがちな「無口な店主と活発な奥様」を想像していたのだが、店を入ったら最初店主だけが居て、私が品選びに迷っていたら、「何でも訊いてください」と話しかけてきた、これは無口な店主ではない(笑)。あとから奥様も出てきたが、この記事の印象通り、とても明るくて素敵な方だ。パティスリーはスイーツだけでなく「夢」も提供する場所だと思うので、陰気で心塞ぐような対応はNGだろう(笑)。
 
 看板商品のシュークリームが売り切れだったのは残念だが、買ったのは以下の品で、食べた感想と共に紹介したい。

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・モンブラン(380円)
 これも看板商品の一つで、焼メレンゲをベースにした伝統的な作り方、フランス産のマロンペーストを使っているみたいで、味は結構本格派だ、比較するのは失礼だが、コンビニで売っているモンブランとはクオリティが違う、その割には値段が安いのは嬉しい。


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・ショコラバナーヌ(380円)
 知人のパティシェが「製菓学校を出たのに、今の若い子はケーキがまともに切れない」と嘆いていたが、このケーキの切り口は見事、これだけ「スパっと切れる」のは、ホテルでの長い経験によるものだろう。「黄金の組合せ」とも言えるチョコレート&バナナだが、良質のチョコレートを使っているのは判った、ベースはジェノワーズではなく、ちょっと変わったクリスピー食感のスポンジ。

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・ケークフリュイ(190円)
 これは生ケーキではなく焼き菓子だが、こうした物は素材の良さ悪さがストレートに出てしまうので誤魔化しが効かない、これは良質の素材を使っていると感じた。

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・フィナンシェ(190円)
 ケーキフリュイ以上にシンプルで構成要素が少ない、そのためか良質のバターと粉の旨味を感じる事が出来た、これなら煩い食通への手土産にも使えそうだ(笑)。

 全体的な印象は、確かな技術で丁寧に作られていると感じた、サイズが小さめな気もしたが、今はこの位が丁度いいのだろう。
 記事にもある様に、多くを望まず地元に支持される店として続けたいみたいだ、この日も地元住民と思える家族連れが買物に来ていた。有名ホテルで働きながらも独立するにあたっては、地元民を念頭にした小規模店を下町で開業する。孔子の言葉「心の欲する所に従えども矩を踰えず」を連想してしまった(笑)。

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 今は少子高齢化とコンビニスイーツの台頭で、街場のパティスリーは本当に大変だと思うが、頑張って欲しい店だ、また買いに行ってみたいと思う。



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  2. スイーツ・和菓子・パン
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八丁堀「シック・プッテートル」(2014年3月)

 この日は2月に和歌山「オテル・ド・ヨシノ」で同じ卓を囲んだ、在阪のグルメな方が東京に来る事になり、八丁堀のフランス料理店「シック・プッテートル」のランチをご一緒する事になった。

 関西で「オテル・ド・ヨシノ」や「コーイン」を利用されている方を、東京の中途半端な店に連れて行く訳にはいかない(笑)。今の東京でこうした「極めグルメ」な人でも大丈夫そうな店となると、まずは青山「フロリレージュ」だが、ここはそう簡単に予約が取れない、その次は何処だろうと考えると、思い浮かんだのはこの店、ご本人もこのブログを見て「行ってみたい」と思われていたそうだ。
 直前予約が難しくなって、テーブルがプラチナシートになりつつある店だが、「大丈夫かな?」と心配しながら電話したら、土曜昼ながら運よく席が確保出来たので一安心、私は去年5月の初訪問以来5回訪れたが、11月以来となってしまった、決して店や料理に飽きた訳ではなく、すっかり人気店になってしまったので、高止まりした株みたいに、少し「様子見」をしていた(笑)。

 季節は春の彼岸の週末、天気も良く絶好のランチ日和になった(笑)、個人的にはこの店がある界隈の雰囲気は夜より昼の方が好きだ、神楽坂辺りはその逆だが。
 この日のお任せランチ(4,800円、現在は6,000円?)は以下のとおり、
 

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・ラングドック産の三日月形グリーンオリーブ

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・バスク、キントア豚のサラミ

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・パルメザンとキャラウェイのクッキー(埋まったバージョン(笑))

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・ピスターシュをまとったフォアグラの小さなテリーヌ、シードルビネガーのレディクシオンとショコラブランのムース

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・ホタルイカとチョリソのスープ、トマトとランティーユ

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・トリップのトマト煮込みのグラタン仕立

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・サバのマリネ、タマリンド風味、キタアカリ、新タマネギ

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・春のロワイヤル(蛤、のれそれ、空豆)、筍のクリームソース

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・骨付き仔羊のロティ、クミン薫るアニョのジュ、カリフラワーのエマンセ、ロックフォールのニョッキ

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・キャラメルショコラをアマレットのエスプーマで包んで
・ココナッツのサブレ

 生井料理長は去年から変わる事なく好調を維持、料理が更に洗練された気がしたのは、年末から調理場に料理人が一人加入して二人体制になったのも大きいと思う。特に高原価な食材は使っていない筈だが、料理を全て食べ終わると、とても充実した満足感がある、これは「生井マジック」と呼べそう(笑)。メニュー中「面白い」と思ったのはトリップのグラタンで、前後の料理の流れに関係なく、ここでこのベタなビストロ料理が出て来たのにはちょっと驚いた(笑)。
 「フロリレージュ」の川手料理をモーツァルトの交響曲に例えたが、それに倣えば生井料理はマーラー、その交響曲は深刻で流麗な旋律の中に、突然通俗的とも言える民謡調のメロディーが現れる、これが曲全体の厚みを増す事になるのだが、それに似た感覚だった。
 あと印象的だったのは、北欧調の片寄盛付は好きではないが、味のバランスが秀逸だった鯖の皿と、それに続くロワイヤル。以前は弱点かなと思ったデセールもかなり良くなった。
 この日同席した大阪の友人も、「これはキレキレの料理ですね」と、繰り返し呟いて感心していたので、お連れした私も安心した(笑)、この店にして良かったと思う。

 店内サービスは星オーナーとセルヴーズのコンビネーションが更に良くなり、安心して美味しい時間に浸る事が出来る。「フロリレージュ」の雰囲気が「川手料理長と仲間達」なら、この店は弦楽四重奏団みたいに、各スタッフの個性が際立っている、こうした店がこれから増えるなら、日本のフランス料理店ももっと面白くなると思う、長生きはするものだ(笑)。素敵なランチでした。


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神楽坂「オー・トレーズ・ジュイエ」(2014年3月)

 この日は亡母の七回忌の法要だった。
 午前中に四谷の菩提寺で法要を執り行い、集まった身内を連れて食事処にしたのは、ブログではお馴染みの神楽坂のフランス料理「オー・トレーズ・ジュイエ」、タクシーなら1,200円位で行けるので、この日みたいに人数が多い時には近い場所がありがたい。
 和食系ではなくあえてフランス料理にしたのは、母親がこうした料理が好きだったからで、80歳過ぎてもこの手の料理をちゃんと一人前食べていた(笑)。
 あらかじめ佐藤料理長と打合せていたのは、5,000円のおまかせランチ、こちら側の要望は、「参加者は年寄りが多いから、魚&野菜を中心、肉は牛か豚で」とお願いしていた、その意を汲んで、料理長が考えてくれた内容は以下のとおり、シニア向けなので、通常出るメニューとは内容が違うと思う(笑)。

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・ホタルイカと白魚のカクテル、ブロッコリースプラウト、プチトマト、レフォール入りマヨネーズ

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・墨イカとオマールをホワイトアスパラガスと合わせて、カシスのソース

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・パースニップのロースト、フォアグラクリーム、パセリのピュレ

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・青森産桜マスのポワレ、ハモンセラーノとピメンデスプレッドで煮た白インゲン豆、原木椎茸、ピメントピキージョ、ルッコラセルバチカ

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・北海道熟成短角牛のロースト、季節の野菜

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・桜色のデセール(桜のペーストのティラミス、苺、ピンクグレープフルーツのジュレ)

 ワインも白(フレンチ・バスク)、赤(イタリア・バルバレスコ)を料理長に選んでもらった。
 料理はこちらの要望通りに、野菜中心で考えてくれてありがたかった、中でも面白かったのがパースニップ、以前「フロリレージュ」でもガルニとして出たが、今回は一品料理、これは「サトウニンジン」の別名があり、形は人参に似たセリ科の根菜、独特の甘みがありフランスではポトフ等に使われるらしい、これは火を入れて美味しく可塑性があり、これから注目される食材だと思う。
 桜マスは一度ポワレした皮付きの身を、レモン風味のフォン・ド・カナールで軽く煮た手の込んだもの。熟成短角牛は、レストラン専門の卸食肉業者からいい状態の物が入手できたので使ったとの事だ、サーロインの部位になるそうだが、黒毛和牛とは違い噛んで旨味の判る肉質、個人的には黒毛よりこちらの方を採りたい。
 

 私自身も最近はこうした野菜中心の料理に惹かれる事が多くなった、それだけ歳を取ったと云う事だろう(笑)、パテ→フォアグラ→肉→チョコレート&クリーム系デザート、こうした構成の料理はもう厳しくなりつつある、やはり日本人はフランス人にはなれないと判った(笑)。それでも最近日本人料理人が世界的に認められているのは、それとは逆の行き方の、繊細な味覚で勝負できる環境になったから、つまり世界的な健康志向から、ヘルシーな料理が求められている事と大いに関係があると思う。

 母が死んで6年、前回同じメンバーが集った三回忌には「次の七回忌には、誰がいなくなっているか?」と憎まれ口を叩いた人がいたが、この日は無事に?皆が集る事が出来た、次の十三回忌にこの全員が無事でいられるかとなると、多分無理だと思うが(笑)。
 子供は親が死んだ後も、どこかで親の視線を背中に感じているものだ、今はもう彼岸へ旅立った父親・母親の、期待に違わない生き方が出来ているとはとても思えないが(笑)、こうした素敵なフランス料理が、自分の財布で食べられる位には、何とか生きて来られたので、それで十分と思う事にしたい(笑)。

 佐藤料理長、色々とお気遣いありがとうございました、もし母が生きていたら、この料理を食べさせたかったです、きっと「美味しい」と喜んでくれだ事でしょう。
 


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青山「フロリレージュ」(2014年3月)

 その店へ行く日は、前日からワクワクしてあまり眠れず、当日はソワソワして他の事が手に付かない、こうした気持ちになれる店はそう何軒もあるものではない(笑)、私自身で云えば、東京ではかつて三田の有名某店だったが、現在はこの日行く南青山の「フロリレージュ」、此処にまずは指を折りたい、1月にはランチに訪れているが夜の部は去年6月以来になってしまった。

 親しい業界関係の方と「今度フロリレージュへ行きましょう」との話をしていたら、これも親しくしているパティシェールの方が「行きたい」と参加表明、更には前者の友人のグルメな方も加わって、男女混合4名それもかなり「濃い」メンバーで卓を囲む事になった(笑)。
 この日は火曜日夜で、19時半の開始時間にはまだ空席はあったが、我々の後に続けて2組が来店し、当然の如く満席になった、毎回感じるのだがこの店の客層は他の高級店と比べて若い、夜は男女ペアが多く騒がしさはないが、我々の隣席は間違いなく料理人の2人組だった、キィジニエは独特の匂いとオーラを放つものだ(笑)。
 4月からようやく?値上げする事になったが、2009年の開店以来一度も上げていなかった、この日のカルトブランシュメニュー(10,500円)は以下のとおり、

 
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・蕗のとう(1個はムースにしてあり、それを食べる)

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・定番のグリーンオリーブパン

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・白アスパラガスの塩釜焼、ホタルイカのソテー

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・フォアグラのポワレ、黒トリュフのシフォンケーキとセリを添えて

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・真鯛のロースト、アーモンドのスープ、レンコンとシビレのサラダ

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・ブレス産仔鳩の網焼き、髭ニンジン、レモンの塩漬けのコンデマン

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・鳩の二品目は「ポトフ」をイメージして

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・プレデセール(モッツァレラと苺)

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・チョコレートのオムレツ

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・金柑のパート・ド・フリュイ

 この店のスペシャリテである白アスパラの塩釜焼きには、ホタルイカのアクセントが上手く効いている、フォアグラとシフォンケーキを合わせたのはユニーク、この時期の鯛が美味しいのは勿論だが、的確な調理で「火を入れて自然な料理」になっている、ブレス産の仔鳩は、日本でよく使われるラカン産に比べると少し小型になり、肉質は繊細な印象、これを網焼つまり「焼き鳥」的手法で提供する(笑)、これがこの鳩の繊細さを生かしていると思った、余計なソースを排しレモンのピュレだけにした思い切りがいい、イメージ的には焼き鳥+辛子or柚子胡椒の印象だ(笑)。
 デセール2品は文句のない出来で、スペシャリテの「オムレット・ショコラ」は初回訪問時以来だが、更に美味しくなっていると感じた。

 優れたムニュとは、前の料理と今の料理が有機的に繋がり、その後の料理への展開が期待できる、音楽で云えば多楽章の交響曲みたいなものだと思う、川手料理長の料理はモーツァルト、それも最晩年の三大交響曲ではなく、「ハフナー」とか「プラハ」みたいな、疾走する美しい旋律に満ちた珠玉の作品群を連想してしまう。あまり「天才」と云う言葉を使うのは好きではないが、悔しいがこの言葉位しか思い浮かばない(笑)。

 実は私が風邪でこの前日まで体調が万全でなく、「最後まで大丈夫かな?」との不安も抱えての食事開始だったが、食べているうちに風邪を忘れた(笑)。
 「レストラン(Restaurant)」の語源は、仏語で「回復させる」を意味する動詞‘restaurer’だ、いいレストランの料理は弱っている人間に活力を注入し、回復させる事が出来る、この日あらためてそれを理解した(笑)。
 サービスは近藤支配人の後を継いだイケメンの宮垣氏が中心になっている(笑)、以前よりカジュアルで親しみやすい雰囲気になった気がする、店全体としては「川手料理長と仲間達」と云った感じで、ベクトルがいい方に向かっているなと思った。

 いつも決まったメンバーでテーブルを囲むのもいいが、この日みたいに初対面同士の多いメンバーはとても面白かった、最初の緊張はいい料理ですぐに打ち解けられ、最後には「千年の知己」みたいに変わるもの、新たな刺激を得る事が出来た(笑)。
 楽しいディネでした、参加した皆様、そして「フロリレージュ」スタッフの皆さん、ありがとうございました。


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秋葉原「ビストロ・ヌー」(2014年3月)

 以前に同じ職場で働いていた人達と、半年に一回位定期的に集まっているのだが、最近は私が店選びをする事が殆どだ(笑)。どんな店でもいいと云う訳ではなくて、幾つか条件があるのだが、特に重要なのは「職場から近い」事と、「予算が一人7~8千円位」だという事、でもこれは我々だけでなく、日本の一般的サラリーマンに共通するのではないだろうか?客単価3千円の居酒屋には行くが、一回の食事に1万円以上出す人は少ない、これはお金を持っているか否かではなく、外食にどれだけお金を使うかと云う、その人の価値観みたいなものだと思う。
 過去の開催場所は、職場からアクセスのいい神楽坂や湯島等に出る事が多かったが、今回もこの辺りで「何処かないか?」と考えてみて思い付いたのが、ランチタイムに何回か利用している、秋葉原(末広町)のフランス料理「ビストロ・ヌー」、この店でお願いする事に決めた。
 夜のメニューは3,600円からあるが、電話予約の時に磯貝料理長に予算を伝えて、料理は一人5,000円で内容はお任せする事にした。

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 ランチタイムは料理人一人で対応する事もあるが、夜はサービス担当の女性が手伝っていた、アルバイトみたいだが、この女性がとても感じ良くて、日本のフランス料理店を支えているのは、提供する方もされる方も女性だなとあらためて思う(笑)。テーブルはクロス無しで紙ナプキン、カトラリーは基本使い回しと昼と変わらず、サービス料を取っていないのでこれで充分だと思う。
 料理の内容は以下のとおり、

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・自家製カンパーニュとサーモンディップ

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・広島県以島産牡蠣のコンフィ、サラダ仕立て、レモンのソース

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・ピエ・ド・コションのパート・ブリック包み

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・アイナメのポワレ、カリフラワーと白子のクレーム

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・シャラン産鴨胸肉のロティ

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・ムース・オ・ショコラ

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・フランボワーズのマカロン

 パン・ド・カンパーニュとサーモンディップは、何気ない物だが泡物系には合う。良質な牡蠣をコンフィにした前菜はレモンの風味が効果的、豚足を使った前菜は春巻のイメージだろうか(笑)、アイナメは香ばしく焼いた皮目とふっくらした白身が白子を使ったソースとよくマッチしている、肉料理は通常はプラス料金になる事が多いシャラン鴨の胸肉を、この値段で出せるのは立派、デザートはフランス的に甘さのしっかりしたもの、マカロンもいい出来だった。
 以前にも書いた筈だが磯貝料理長はまだ34歳の若さ、だから料理の感覚も若い。パリのネオ・ビストロで働いていたので基本はしっかりしているし、考えるより先に手が動くタイプだと思う(笑)。
 この店はもともと彼の母親がやっていた喫茶店を受け継いでレストランにしたもの、そのため固定費はアルバイト人件費と光熱水費だけ、それだからこの値段で提供出来るのだと思う、社会保険料の雇用者負担がある正規従業員を雇い、高額な家賃を払う東京の他のレストランでは、この値段維持は無理な話だ(笑)。
 イケメン従業員の至れり尽くせりなサービスをレストランに求める人には向かないが、安くて美味しい物が食べられるのが、何より一番と思う私みたいな人間には嬉しい店だ(笑)、そして料理には非凡なセンスがある。客層も若いし、これから客と共に成長して行くだろう予感を感じさせてくれる。
 ただ「喫煙可」なので、「煙一切お断り」の人は、利用を控えた方がいいと思う。

 
 昔の仲間との話は尽きない、皆歳月と共に年齢を重ねているのだが、同じメンバーが集ると、いつでも「あの時」に戻れる、いいレストランのテーブルは、時にタイムマシンにもなるものだ(笑)。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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