最後の晩餐にはまだ早い


代官山「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」(2015年1月)

 去年一年間に初訪問した店の中で、料理に関しては最も鮮烈な印象を残したのが、代官山と恵比寿の中間にある、フランス料理の「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」、1977年生まれと云う若い高橋料理長の料理は、アイデアと構成力、遊び心とアーチスト精神を感じさせ、「これは注目すべき才能」と瞠目、それまで訪れていなかった事を後悔した店だった。
 再訪問を願いながらも、代官山が我家からも職場からもアクセスが悪く、なかなか機会がなかったのだが、今回高橋料理長が今年3月一杯での退店を発表したため、慌ててグルメ仲間を誘って駆け付ける事にした(笑)。
 今の時代店は人を待ってくれない、「何時か行こう」と思いながら日程や面子が揃うのを待つ間に店が無くなり、料理人も居なくなっていた事が過去に何回かあった(笑)。

 前回は昼だったが今回は夜、レストランの本領発揮は夜の部なのは理解しているつもりだが、加齢により最近は夜遅いのが辛くなり(笑)、昼食中心の外食生活になっていた。それでも「今日は勝負」と云う時はやはり夜だろう、特にこの週は前半に「フロリレージュ」を夜訪れていたので、同世代の才能ある料理人が同価格帯でどんな料理を提供するのか、興味と期待が大きかった。
 まずはその料理(税込12,400円)14品を紹介したい、なお料理名は後で料理長に確認したもの、

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・米の泡をまとった真鯛、ライムマリネ

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・薩摩芋(五郎島金時) チュロス、紫芋のコルヌ・ブーダンノワールムース

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・ワカサギの牛蒡フリット

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・徳島県産カワハギのカルパッチョ、その肝と洋梨のヴィシソワーズ

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・蜜柑風味のテリーヌドゥフォアグラ、スパイスチュイル、キャラメルナッツパウダー 、ピスタチオソース

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・北海道産毛蟹のコンソメ・パイ包み、蟹味噌、セロリラブとハーブの香るクネル

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・鰤大根のミルフィーユ、山葵菜のソルベ

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・鱈の白子、カリフラワー、シャンパンのエミュリション

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・萩産甘鯛のヴァプール、鮑とその肝、タラの芽、九条葱のリゾット

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・茨城県産コルヴェール、ソースサルミ

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・その腿肉と内臓のクロケット、紅苔菜と紫芽キャベツ、人参のクーリー

・黒トリュフのグラス、じゃがいもとイヴォワールのムース、フランボワーズ、トリュフの森(すいません、画像撮り忘れました)

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・熊本県産晩白柚の冷たいミルフィーユ、ヴィーニュリヨネーズ、バジル

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・トンカ豆 ブランマンジェ、アールグレイ オレンジ シューアラクレーム

 料理全体の印象から云うと、前回は8月盛夏の料理だったせいか、全体に軽やかで随所に緻密な遊び心があり、何処か北欧調も感じさせる料理だったと記憶している。ところが今回は途中からフランスへ航路を戻したみたいな印象、「自分のオリジンはあくまでもフランス料理」と高橋料理長が宣言しているみたいで、少し意外感もあったが、考えてみれば彼はパリで「ルドワイヤン」「シェ・ラミジャン」と云った、高級店とビストロそれぞれを代表する名店で働いている、根源にあるものはあくまでもフランスそれもクラシック料理なのだろう、本当にフランスのいい部分を学んで来て、それを忘れないでいるのだなと感じた。だからと云って決して古臭くなく現代の東京料理として昇華している、これが彼のセンスだと思う。

 全品を解説すると長くなるので簡単に留めるが、ワカサギは前回の稚鮎と同じくゴボウのフリットに泳がせたもの、冷たいカワハギの後にはフォアグラで舌を中和させ、その後には熱いパイ包み焼きスープ、そして冷菜の鰤ミルフィーユ、更には白子の温かいヴルーテ、ここまでが前菜になるが、温度差と食感の違う緩急の付け方が見事、他店ではなかなか味わえない優れたコンビネーションだった。
 魚料理は鮑とタラの芽の苦味の扱いが印象的、そして肉料理は茨城産のコルヴェール、奇しくも同じ週に行った「フロリレージュ」と同じ食材、これは偶然ではないと思いたいが(笑)、両者全く対照的な料理だった。塊肉を軽めのソースで鋭利なテーブルナイフを使い食べさせる川手料理に対し、エギュイエット(薄切り)仕立てで、ソースサルミと云う伝統的手法で提供された高橋料理、勿論現代的に軽くリファインしているが、予想とは違うアプローチだったので、不意打ちを受けたみたいだ(笑)。この鴨料理は古典へのリスペクトを感じて、フランス料理はやはりソースだなとあらためて思う。
 デセール3品はビジュアルや味面で文句なし、今の東京では料理人が作るものとしては最高レベルではないだろうか?これならパリの超高級店でも通用する筈だ。

 前回にも増して見事な料理構成、トリュフやキャビアみたいな飛び道具(笑)を使う訳では無いし食材は殆ど国産だが、とてもフランスの風を感じさせる。そして「フロリレージュ」の川手料理と同じく、「この次」にも期待が高まってしまう。私見だが、この二人は今の東京を代表する若手料理人だと云える、技術があるだけでなくフランスのフランス料理と、日本人が美味しいと感じるフランス料理を知っている、これは大事だ。各自の特徴を一言で云えば「感性の川手、構成の高橋」だろうか?作曲家なら川手料理がC・ドビュッシーで、高橋料理はM・ラヴェル(笑)。
 退店時には一階まで降りてきた高橋料理長に挨拶、4月以降については書いていいのだと思うが、独立を視野に入れているみたいだ。これは「フロリレージュ」の新店同様に、今年の東京フレンチの目玉イベントになると思う。でも今のうちに行っておいた方が、将来「私はこの人気理料人が雇われだった時代を知っている」と、自慢出来る事になるかも知れない(笑)。


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青山「フロリレージュ」(2015年1月)

 南青山の超人気フランス料理店「フロリレージュ」の開店は2009年の6月だが、私の初訪問は2011年の2月、それから訪れた回数は、昼夜合わせても10回以上20回未満だと思う、決してディープな常連客ではない。
 それでも誰かに「今の東京で何処がいい?」と訊かれたら、迷わずにこの店の名前を挙げると思う、それだけ此処の川手料理長の料理には惹かれていた。
 料理の美味しさ、サービスや居心地を含めたレストランとしての総合点なら、同レベルの店はあると思うが、川手氏と他の料理人が決定的に違うなと感じるのが、誰かの物真似でないオリジナリティーと創造性、現在東京で出会える料理人中では、アルチザンではない最もアーチスト的な感性表現を感じる、これは過去美術業界に片足入れた経験のある私には、料理人を評価する際の大きなポイントになる。

 「何かを得るためには、何かを失わなければならない」と云う言葉があるが、私の場合フロリレージュに行くために、他店を諦めねばならない事もあった、薄給の身では致し方のない事で、以前は通っていたのに全く行かなくなった店もある、「あいつ、全く来なくなった」と思っている料理人も多い筈だ(笑)、そう思われても悔いないだけのものを、この店での料理体験で得たと思う。
 そのフロリレージュが2月15日で一旦閉店する事になった、以前から噂のあった移転に伴うものだが、それを知って昨年末にこの日の席を予約した。
 ようやく道順を覚えたのに、住宅地外れの判り難い場所にある店を訪れるのは、「フロリレージュ」としては多分これが最後になってしまう(笑)。「終り良ければ、全て良し」とも云うが、最後にどんな料理で迎えてくれるのか楽しみだった、そして結論を先に云ってしまうと、大変素晴らしく記憶に残るディネ体験になった。
 まずはその料理を紹介したい、

・春菊と菊芋の石焼き(画像ブレのため載せられず)
・四角いグリーンオリーブ(定番)

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・赤穂産 牡蠣と原木椎茸のフリカッセ

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・フォアグラと山菜のブリーニ、レモンの香りを添えて

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・平目のフリット、カブとジャガイモのエクラゼ

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・茨城産 青首鴨のロースト

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・そのエロチックな(笑)肉断面

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・(二品目)モモ肉を使ったリゾット

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・苺とメレンゲのヴァシュラン仕立て

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・青山の土に埋れた黒トリュフ(クレームショコラ)

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・金柑のパート・ド・フリュイ

 前菜は上質な牡蠣に軽く火を通し、薄く削いだ椎茸との斬新な組合せ、続く山菜と合せたフォアグラと共に、何処か「和」的なものを感じさせるのだが、それでいて間違いなくフランス料理だ、この「誰かやっていそうだけれど、誰もやっていなかった」と感じさせるのが、川手料理の特筆すべき個性だと思う。
 魚料理は、これだけ肉厚の鮃をこの値段のムニュで使っていいの?と心配にもなったが(笑)、その厚みを生かすためにあえてフライにした大胆さと思い切りがいい。
 そして「今日の肉料理は何だろう?」と期待しながらも、過去に体験した豚やパンタードでなければ嬉しいなと、口には出さなかったが思っていた(笑)、その期待を大きく上回ったのが茨城産の青首鴨で、仏語で‘ Col-vert’と呼ぶものだが、完全な野種ではなく、半飼育‘Demi Sauvage’物らしい。
 私は過去鴨料理で「旨い」と唸ったのは、大阪「コーイン」のルーアン鴨と、札幌「プロヴァンサル・キムラ」の滝川鴨位で、正直云うとあまり相性のいい食材ではなかったが、この日の鴨はいきなり先頭に躍り出た(笑)。絶妙な火入れと的確なアセゾネ、一羽骨付きのまま焼いたそうだが、鳥類はやはりこれが一番美味しいと思う、暫く記憶に残る鴨料理になりそうだ。
 デセール2品も単品の完成度だけでなく、2皿が有機的に繋がり充足感が大きい。

 例えば大阪「コーイン」の料理が、食べ終わった後に「参りました、もう入りません、降参です」と白旗を挙げたくなるガルガンチュア的料理なら、この日のフロリレージュ料理は「この先は何があるのか、何が待っているのか、覗いてみたい」と思う料理、結果新店への期待感が膨らむので、それを計算しているとしたら、この料理人はやはり只者ではない(笑)。

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 旧店舗最後を飾るに相応しい素敵な料理体験になった。退店時には毎回同様に店外で待っていた川手料理長、彼の立姿、特に夜は「白鳥の騎士・ローエングリン」みたいにも見えるが(笑)、新店の豊富などをあらためて語ってくれた、「自分のやりたかった事を表現する、全く新しい店になります」と云っていたので、今からとても楽しみだ。
 なお開業は3月末から4月初めを予定しているとの事で、まずは予約競争に参加しないといけない(笑)。
 此の店で過ごせた時間への感謝と、新たなるステージへの期待を持つ夜になった。


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亀有「グリーンフィールド」

 常磐線の亀有駅からは少し歩くが、葛西用水親水路沿いにある「グリーンフィールド」は、夫婦二人で営む小さな店だ、パン屋は仏語で「ブランジェリー」、英語で「ベーカリー」だが、この店は「ベーカリー」の呼び名が似合う(笑)。
 店名はパン屋らしくないが、WEB情報によると店主が「来てくれる人に憩いを提供したいと思って、『緑の広場』と名付けた」との事だ。
 店の場所は亀有駅北口を出て、昔は「曳船川」と呼ばれた旧葛西用水、現在は親水路として整備されているがその道沿い、近くには巨大な水車があるので目印になる、店の並びには東和商店街もあり、昔は結構賑わっていたが、今は殆ど「シャッター通り」となり往時の盛況は見る影もない。再開発により街は綺麗になったが、人は来なくなると云う皮肉な現状になってしまった。
 店主は元々ベーカリー業界にいた訳ではなく、築地市場で食品卸の仕事に就いていたそうで、元々パン好きだった事から、やがて独立を視野に入れ専門店で修業後、2012年6月に開業した。

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 客は一度に3~4人位しか入れない小さな店舗だ、この店の近くには以前ブログで紹介した、極小店舗の米粉ベーグル専門店「123ベーグル」があり、他には小さな美容室等も出来ている、若い人達が「とにかく始めてみよう」と、駅前から離れた安価なテナント狙いで出店している。全部成功する訳ではないと思うが、個人商店が激減している中で、企業資本のチェーン店やコンビニばかりになっても地域は活性化しないし、街が面白くない、チャレンジ精神ある若者がこれから増えて欲しいものだ。
 営業時間は早朝6時半から19時半まで、夫婦二人だけで営業していて、夫がパンを焼き妻が販売を担当している、パンの製作数は少なく、昼過ぎに行っても殆ど売り切れてしまう(笑)。油で揚げないタイプの「つけカレーパン」と云う商品が名物だそうだが、毎日限定10個で、これを買うために朝6時半にやって来る客がいる!!そうで、私も見たこと無い、云わば「幻のカレーパン」(笑)。更には週休二日な事もあって、あまり商売っ気を感じない、「有名になろう」みたいな下心は全く感じられないのだが、先日TVの街歩き番組で紹介された後は、客が押し寄せて大変だったみたいだ(笑)。

 この日、店に行ったのは昼近かったので、もうかなりパンは少なかった、本当はプレーンなバゲットやパン・ド・ミみたいなものを食べたかったのだが置いておらず、買ったのは以下のとおり、

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・ビノール(税別210円)
 ポーランド発祥のパンだそうで、玉ネギ、ドライトマト、溶けるチーズが上に乗っている。

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・明太フランス(160円)
 これは美味しかった、中の明太子クリームも良かったが、肝心のミニバゲットが美味しい、本音を言うとこのバゲットだけ食べたい(笑)。

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・洋なしのデニッシュ(220円)
 カスタートクリームは少なく素朴な味でそれがかえって好印象、作る人間と作った物は、やはり似てしまうみたいだ(笑)。

 全体的に粉の旨味が十分感じられ、余計な添加物が少ないピュアなタイプのパンだ。これなら惣菜系や菓子系でない、例えばカンパーニュ系のパンも作らせても美味しいだろうと想像するのだが、そこが下町のパン屋の難しい処で、高踏的なパンを並べても売れなかったら如何しようもない、現在こうした街場のパン屋のメイン客は子供と高齢者だ、彼&彼女達が食べてくれるものを作らないと、自分達が食べていけなくなってしまう(笑)。

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 この国で急速に進む少子高齢化とそれに伴う個人消費の減少、これから個人商店はどう対応すべきなのか、主は皆悩んでいるに違いない。この店みたいに人を雇わず儲けようと背伸びせず、地域に根差して自分達が仕事を楽しみながら、長くやって行こうとする店が、結局生き残るのではないだろうか?
 厳しい時代だが、この地で続いて欲しいと、願わずにいられない。


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池袋「シュヴァル・ド・ヒョータン」

 この日ランチタイムに初訪問したのは、池袋のフランス料理「シュヴァル・ド・ヒョータン‘Cheval de Hyotan’」、変わった店名は「瓢箪から駒(馬)」から付けたそうだ、珍しいのは店名だけでなく、料理人が女性で夫がサービス担当と云うコンビも日本では少ない。
 フランス特にリヨン近辺で女性料理人が多かった、これは絹織物生産と貿易で稼いだブルジョワ家庭専属で雇われていた彼女達が、やがて蓄えた金で街場に自らの店を出したからで、店名に‘Mère ~’(母)が付く店は、殆どそれが起源と云われている。
 日本でも女性の社会進出が進んで来たが、料理業界ではまだまだ遅れているなと感じる、これからの日本は若年労働人口の減少と云う重い課題を抱えている、この分野でも能力を発揮する女性は多く居る筈なので、もっと業界に参加して来て欲しいし、その環境を整えないといけないと思う、その意味でも成功を願いたい店だ。

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 店の場所は池袋駅西口を出て東京芸術劇場を過ぎ、要町通りを立教大学へ向かう途中で通りに面している、外観はフランス料理店より美容室か小洒落たカフェと云った印象なので、気を付けないと通り過ぎそうだ。
 店内に入り、サービス担当の男性(あとでこの方が料理長の夫君だと知る)に名前を告げる、カウンター席もあるがこの日は平日で割と空いていたので、ベンチシートに座らせてもらった。店内は予想以上に広くパーテーションで仕切れる個室もあり、カウンターも含めると20席以上ある。トイレブースも2つだし、内装には結構お金を使っている、インテリアは北欧調で、クロスもマットも使わず食器&グラスは直置き、卓上にはナイフ&フォークの他に箸も用意されていた。

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 座って気が付いたが、店内はフラットでフルオープンキッチンだ、洗い場まで見えるためゴミの出し方も注意しないといけない(笑)、料理長の他に若い女性料理人が一人厨房に入っている。

 ランチは3種類、この中からメインとデセールを選ぶ2,800円のものをお願いした、

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・アミューズ(鯖のマリネを炙ったもの)

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・10種の野菜のテリーヌ、ポワローソース、黒オリーブの粉

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・Frederic Magnienのブルゴーニュ・ピノノワール2012(グラス1,000円)

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・オーストラリア産仔羊芯のロースト、オッソイライティチーズ風味

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・ピスタチオとイチゴのクリームブリュレ

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・マドレーヌ

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・エスプレッソ

 アミューズはしめ鯖?を炙ったもので、なかなかいいセンスだ。続く野菜のテリーヌは綺麗で丁寧な仕事、ポワローのソースもいいが、今はファミレスでも提供している料理なので、味の面でもう一捻り何か欲しかった気もする。
 4種類の中から選んだメインは仔羊、骨と脂を外して筒状に成形し羊の脂を巻いてローストしている、おそらく低温長時間調理だと思うがこの火入れは見事だ、パブリカソースに癖のあるオッソイライティ(バスクのチーズ)を使ったのは、ちょっと脱日本的でフランス風な組合せに感じた、ガルニの野菜も美味しい、デセールもなかなかいい出来だ。
 これで税込2,800円、結構充実した内容だと思う、他の料理も食べてみたくなった。
 
 サービス担当の川副氏に聞いたのだが、妻(料理長)は専業主婦だったが、料理を学ぼうと有名料理学校「コルドンブルー」に入学、卒業後に更に料理を極めるため、「ランス・ヤナギダテ」や「ラール・エ・ラ・マニエール」の厨房に入った、そして夫の協力もあって2012年にこの店を開業、当初は別の料理長が居たが、現在は彼女が中心になっている。この経歴は出張料理人を経て、現在料理プロデューサーになっている狐野扶実子さんとちょっと似ている。
 料理やサービスに何処となく、良い意味でのアマチュアリズムを感じたのも理解できた、儲けようとか有名になろう、星を取ろうと云ったギラついたものが感じられない(笑)。「(店作りに)お金かかったでしょう?」と、穏やかそうな夫に余計な事を聞いてしまったが、彼はニヤリと笑って「いや、フェラーリ買ったと思えば・・」とさりげなく答える、この人見かけより只者ではないかも知れない(笑)。

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 私も過去に若い店、若い料理人を相当数見てきたが、此処は他に類系のない新世代のレストランだと感じた、今後もっと面白い店に進化して行く期待は充分持てる。池袋はフランス料理店が希少だ、これから人気レストランになりそうな予感はある(笑)。
 座っていると不思議にリラックス出来る居心地もいいし、また訪れたい店だ。


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梅島「パティスリー・ラヴィアンレーヴ」

 足立区内の梅島に、かなり本格的なパティスリーが昨年9月に開店したとの噂は聞いていた、店主は都内の高級ホテルのスイーツ部門の二番手を務め、洋菓子のコンクールで優勝歴のある人物だそうで、いつも行くパン屋の店主が先行訪問して「一度ぜひ行ってみて下さい」と勧められていた。

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 正月休みに読んだ、池上俊一著「お菓子でたどるフランス史」(岩波ジュニア文庫)が面白く、読後に「今すぐケーキが食べたい」と熱くなってしまい(笑)、この店を思い出し、営業中を確認した上で自転車を飛ばして行ってみる事にした。
 店の名前は「ラヴィアンレーヴ‘LA VIE UN REVE’」、仏語で「夢の人生」の意味、エディット・ピアフの代表曲‘LA VIE EN ROSE’に倣ったのかも知れない、店の詳細についてはこの足立経済新聞の記事が伝えている。
http://adachi.keizai.biz/headline/83/ 
 これを読むと、料理より洋菓子業界の方が、コンクールが多い理由が判る気がした。「何処の調理師学校を出て、どの店で誰に何年就いていたか」こうした経歴部分が重要視される料理界に比べて、パティシェの世界はより実績主義なのかも知れない、受賞歴が就職は勿論の事、独立するにあたっての融資等が受けやすいアイテムになり得るみたいだ。

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 店の場所は東武伊勢崎線梅島駅を出て、環七へ向かう途中で、ブログ記事に書いた坦々麺の「ふうりゅう」や、蕎麦店の「本郷」からも近い。
 事前にWEB情報にあったとおりに、外観はかなり本格的な店舗構えで足立区らしくない、ただ店の右隣がいかにも下町チックな居酒屋なので、そのギャップにかえって安心する(笑)。

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 訪れたのは正月3日だったので門松飾りがあった、入口を入ると目の前がケーキを並べたガラスケース、右手に焼き菓子やジャム等が並べてあって、左手には小規模ながらカフェスペースもある、思っていたより広い店内だ、奥には作業場で中はよく見えなかったが、2、3人の姿はあった、売り場担当は若い女性が2人で対応している。
 並べたケーキを見ると値段は1個500円前後、これは足立区内では高い部類だ、今迄このブログで取り上げた店は大体400円前後なので2、3割は高い、各ケーキの外見は本格的で、下町だからと変に子供向けに作っていないのは好感が持てる。
 何を買おうか迷うのだが、真っ先に目についたミルフィーユと、販売の女性に聞いた人気商品を購入、自転車なので揺らさないよう気をつけて持ち帰った、食べた感想は以下のとおり。

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・苺のミルフィーユ(税込500円)
 上に乗った生クリームは多過ぎで、ちょっと野暮ったいが、パイ皮と挟んだカスタードクリームはとても上質、レストランデセールでミルフィーユの美味しい物に当たらないのは、厨房の熱気と湿気で生地の管理が難しいからではと思うのだが、(「ガトー・マルジョレーヌ」は逆転の発想で、あらかじめ湿らせた生地を使っている)このパイ生地は軽やかさがあり、パティスリーならではの完成度の高さがある。

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・和栗のモンブラン(490円)
 土台はメレンゲやカステラではなくタルト、上に乗った和栗クリームは、栗の香りの感じられる上質な物、濃さも甘みもあるが「アンジェリーナ」程ではない(笑)、久しぶりに美味しいモンブランを食べたと思った。

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・ショコラスペシャリテ(540円)
 WEB情報によると、これがコンクール優勝作品との事。ビジュアルは大変美しい、濃厚なチョコレートクリームの上には、「あんこ玉」みたいにチョコレートのゼリー?をかけてある、これが独特の食感で好みの別れる処、面白さと美味しさは感じるが、個人的には普通のチョコレートケーキの方が食べたかった(笑)。

 全体にクオリティが高く、今までブログで紹介してきた地元パティスリーに比べれば、使っている材料もおそらく違い、明らかに1ランク上のレベルを狙っているなと感じた。
 都心に開業しても話題になりそうな店だが、あえてこの下町で勝負を挑んだのが吉と出るか凶と出るか?この値段を納得して買いに来る客が付くかどうか判断するのは、もう少し時間がかかると思う。
 どの世界にも「上には上がある」事は知っているが、このレベルを維持出来るなら都心までわざわざケーキ買いに行く事ない、私はまた行ってみたいと思っている(笑)。


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廣永窯の器

 多芸多才な活動から「東の魯山人、西の半泥子」とまで称された川喜田 半泥子(1978~1963)は、本業の百五銀行頭取業の傍ら、文化面でも明治・大正・昭和を生きた典型的なディレッタントだった。中でも陶芸は素人の枠を超え、財界人引退後は自宅内に窯を築き、主に茶陶作りに没頭した。終戦直後の1946年に三重県の長谷山山麓に登窯を開設、これがのちに「廣永窯」になる。
 半泥子没後は直弟子の坪島土平(1929~2013)が窯を継承してきた、現在は登窯を含む五種八基を設置し、茶陶を中心に陶磁器制作を続けている。今回、紹介したいのがこの廣永窯の器だ。
 私がこの器を知ったのは、地下鉄神楽坂駅近くにある「うつわや釉」と云う店で、何気なく入った店内で、値段は高めだが使い易そうな食器達に惹かれた。

 十年以上前の話だが、最初に買ったのはこの平皿だと思う、
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 直径約17cm、高さ2.5cmの陶器、藍色で中に数か所鉄釉を垂らし込んでいる。

 続いてはこの青磁皿、
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 直径約16cm、高さ2cm、青磁と云いながらも、半陶半磁みたいな印象だが、

 同じ系統の皿で、
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 直径約14cm、高さ1.6cm、これは鉄絵で線描きをしてある。

 これは我家にある廣永窯唯一の磁器製の中皿で、
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 直径約25cm、高さ3.5cm、染付による紋様。

 陶製の中鉢で、抹茶碗にも使えるかなと思い買ったが、茶碗には大き過ぎた(笑)、
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 直径約14cm、高さ7cm、鼠色で側面に鉄絵の紋様がある。

 つい最近オークションサイトで入手したのが、ゆるやかな四角鉢で一辺約18cm、高さ6cm、
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 中には崩した松の絵が描いてある。

 廣永窯全体的に云えるのは、陶器も磁器も厚手で重量感がある、そして丈夫だ、洗っている時に何かとぶつかっても、まず欠けたりしない、これは日常使用するのに一番大事な点だと思う。
 表現が古すぎるが、有田や京焼の繊細で薄手な磁器が「深窓の令嬢」だとしたら、普段着で丈夫で長持ちする近所の親しみやすいお姉さんと云った印象(笑)、それでいて決して野暮ったくなく、見ていて味があり食卓でも使い易い。
 器の嗜好と云うのは年齢と共に変わり、若い頃は白磁や青磁ばかり集めていたが、最近はこうした土物系が何よりも落ち着いていいと思う様になった、廣永窯の器の出番が増えている。
 前述の神楽坂の店で聞いたのだが、この廣永窯は地元だけでなく、日本全国から陶土を取り寄せ、混ぜて使っているとの事で、それが何処にもないが、それでいて何処かで見た様な、不思議な懐かしさを感じさせる造りになっている理由だと思う。
 おそらく有田みたいな分業制ではなく、少人数制で作っている筈で、手仕事の良さが伝わってくる器だ、同じ窯で陶器と磁器を作っているのは、全国でも珍しいらしい。

 この記事を書こうとしている時に、長く廣永窯を主宰していた坪島土平の、工房物ではなく個人が作ったとされる青磁壺を偶然ネットオークション上で見つけ、思わず落札してしまった。ネットなので100%真作と云えない可能性あるのだが、届いた品物を見ていて、廣永窯に共通する「野暮にならない洒脱さ」みたいなものは感じている。
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 たしか白洲正子の言葉で「骨董は見る人間が本物と思えば本物、偽物と思えば偽物になる」と云うのがあったが、これは名言だ、それを信じて真作だと思う事にしている(笑)。



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亀有「須田」の穴子重

 明けましておめでとうございます。加齢と共に行動範囲が狭くなり(笑)、取り上げるのは地元の店が増えそうですが、今年もこのブログを宜しくお願いします。

 このブログに一度も登場していない料理ジャンルが「鰻」で、決して嫌いな訳ではなく、若い頃は結構食べたし、家からアクセスのいい南千住には、鰻好きには知られた有名店があり、昔は行列に並んで食べた事もあった。
 それが最近食べなくなったのは、報道されるとおりの価格高騰が一番大きな理由だ、その有名店では「うな重」が4,300円、これを高いと思うかは人それぞれだが、ちなみに「フロリレージュ」のランチが4,500円だから、「どちらに行きたい?」と訊かれたら私なら断然後者だなと思ってしまう(笑)、そこまでの高級店でなくても、今2,000円以下でまともな鰻を食べるのは困難になった。
 鰻は食べなくなったが、穴子は好物で寿司屋(最近は回転系が多いが(笑))では必ず注文するし、スーパー等で「穴子寿司」を見るとつい買いたくなってしまう。
 この日も急に亀有「須田」の「穴子重」を思い出し、食べたくなってチャリを飛ばして向かう事にした。

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 この店は以前「鳥孝」と云う名前の焼鳥店だったが、何時の間にか本格的な和食店に変わっていた、一応「会席料理」を謳っていて、軍鶏鍋や自家製豆腐を使った料理が名物だそうで、根津や羽田空港にも支店を出している。
 夜の懐石料理は4,860円からと、下町亀有にしては結構高級店だ、私も夜は利用した事はない(笑)、昼に限り丼や重箱の一品料理を安く提供している。
 店の場所は亀有南口から「ゆうろーど」と名付けられた商店街を進み、果物屋の角を右折し少し歩いた右側、この店の裏手にはブログに何回か書いた、イタリア料理店の「ティア・ブランカ」がある。この二店の間には細い路地があり、餌をもらえるみたいで、猫が一匹棲み着いている、きっとグルメな猫なのだろう(笑)。

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 昼の開始時間に入店し(最近これが多い(笑))、掘り炬燵席に案内される。昼は2,500円と3,800円の懐石があり、一品物は親子丼等もあるが、この日は穴子狙いだったので、迷わず穴子重(税別1,800円)をお願いした。

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 穴子が出来上がるまでの間に運ばれてきたのは、この店の名物である「すくい豆富」、「豆腐」と表記しないのがこの店の拘りか?凝固後に型に入れず水分を含んだ状態の豆腐を「掬った」もので、柔らかい口当たりが特徴。これを塩だけで食べる、大豆の甘みと香りが感じられる。個人的には木綿豆腐の歯応えが好きなのだが、これはこれで美味しいと思う、軟弱な口腔の現代日本人にはこちらの方が受けるだろう(笑)。

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 続いて運ばれて来たのが穴子重、ご飯には醤油味で煮た椎茸が混ぜてあり、その上に焼いた穴子の切り身が6切れ、漬生姜の千切りが添えてある、ご飯に穴子を乗せて食べると、穴子の甘みと旨味が程良いバランス、欲を言えばもう少し身が厚くふっくらしていたら尚良かったが、何でも値上がりしている現状では、これが原価に合うレベルなのだろう、焼き方や味付けは申し分ない。

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 味噌碗は豆腐、なめこ、三つ葉で、香の物は沢庵と胡瓜糠漬、どちらもちゃんと作ってあり、変なものではない(笑)。

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 デザートは抹茶アイス、おそらく自家製ではないと思うが、少しでもあると嬉しいものだ。

 この内容で支払いは税込1,944円、亀有と云う地盤を考えると高級ランチだが、店内はゆったりしているし長居も可能、雰囲気も悪くないので、まあ納得できる内容だと思う、ただ望むのは喫煙可なのは場所柄仕方ないとしても、せめて喫煙席と禁煙席を分けて欲しい事で、これがちょっと気になった。

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 今は何でも都心に集まってしまうが、北千住の「明日香」等と共に下町で頑張っている「雛にも稀な」和食店、これからも続いて欲しいと願わずにいられない。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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