最後の晩餐にはまだ早い


和歌山「オテル・ド・ヨシノ」(2015関西食べ続け②)

 去年9月に東京で「オテル・ド・ヨシノ」の手島料理長と話す機会があり、次回訪問の話になったのだが、その時「次は鳩をお出しします、今考えている料理があります」との熱いメッセージを既に受け取っていた(笑)、今回の遠征日程が決まった時に、真っ先に連絡を入れたのもこの店だった。
 レストラン利用はこれが7回目だが、過去のメイン料理は、「ジビエのピティピエ(パイ包み)」「牛ヒレのロッシーニ」「クッフ・ド・ブッフ」「ショーソン・オ・トリュフ」「鹿のロワイヤル」「プーレ・ベッシー」の順番だったと思う、まるで「古典料理のデパート」みたいだが(笑)、今年はこれにどんなコレクションが加わるのか、大変に楽しみであると同時に、いくらかの怖さも感じる訪問、さてどんな戦場が待っているか。

 階下のホテルから僅か1分で移動到着、18時半に昨年と同じく一番奥の厨房に近い席に案内される。ここは厨房内特にデセールセクションの作業が全て見られるので、パティシェの勉強をしている人にはピッタリの場所だと思う。去年まで居たビジュアル系?パティシェールは退店してしまったが、後任も若い女性なので、我々親父世代には彼女を眺めていられるという、邪な楽しみ?もある(笑)。
 値段の高い銘柄を飲んでいないからだろう、シャンパーニュは時に悪酔いするため(笑)、メートル兼ソムリエの松岡氏にお願いしたのは、アルザスのリースリング、これで長い宴が始まった。
 まず当日の全料理を紹介したい、

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・アンショワ風味のミニクロワッサン

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・フォアグラのムースを挟んだシュークリーム

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・真サバのマリネ、トマトのジュレと共に

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・ジビエのコンソメ

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・甲殻類のジュレ、足赤エビと雲丹、キャビアを添えて

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・和歌山産平スズキのエトフェ

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・ピジョンファルシ

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・プレデセール(柚子のソルベ、アネットのジュレ、ネーブルのコンポート)

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・四角いプラリネ、トンカフェのアイスクリーム

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・ミニャルディーズ

 食後感を云うと、まるで「無敵を誇った、ハンニバル率いるカルタゴ軍の戦法」だと思った、前菜とコンソメが重装歩兵の先陣で戦闘開始、甲殻ジュレと平スズキが騎兵による波状攻撃で守備側を混乱させ、鳩は最後の象部隊で、相手を踏み潰しにかける(笑)。
 個々の料理では、鯖料理は東京の吉野建氏のビストロ「ラ・トルチュ」同様にサーディン?缶に入れて出される、これは昔ロブションがエシレバターを籠のまま出したみたいに、「俗と聖」あるいは「貧と富」の意外性を表現したものか?鯖の質や白バルサミコを使った締め加減は申し分ない。
 定番ジビエのコンソメは万全、今回はデミタスカップで提供されたが、香りを凝縮するか拡散させるかの違いだが、個人的にはスープ皿の方が好みか。
 続く甲殻類ジュレは新機軸だと感じた、手島料理長は直近にフランスへ行き、主に日本人料理人の店を食べ続けたそうだが、そこから着想した料理ではと推測した。鱸は切り身を海藻等で包み間接調理したもので、「窒息」を意味する仏語を使う、鱸の水分を閉じ込め、海藻類の香りを加えたかったのだろう、この料理も鱸の鮮度と火入れが見事。
 そして主役がヴァンデ産の鳩、手島料理長によると「グラン・ヴェフェールの『レニエ三世』とラ・セールの『アンドレ・マルロー』、2つの料理のいいとこ取りです」との事、1970~80年代に一世を風靡した名料理を基にしたものだ。
 一人丸ごと一羽の鳩の中には、フォアグラ、トリュフ、縮緬キャベツ等で、凄い重量感があって食べても減らない(笑)、軽薄短小なモダンフレンチの対極にある料理だ、ソースも濃い。決して小食だとは思わないが、それでも今回完食は無理だった、でもこのキュイッソンは完璧、フランスでもなかなか出会えないものだ。おそらく料理長は半羽にするか1羽にするかで迷ったと思う、あえて1羽で出したのは、調理に自信があったからだと推測するが、残念ながら受け手はそのレベルに達していなかった、胃袋を鍛え直したいと思う(笑)。
 デセールは以前より繊細で、甘味を抑える東京風になった印象を受けた、個人的にはこの方向は好みだ。

 今回は料理長の気合に完全には付いて行けなかったが、豪壮華麗で稀有な料理である事は充分理解できた、ただ全体の流れからすると、鳩は半羽でもよかった気がする(笑)。最後は手島料理長と暫し歓談、フランスや東京のフレンチ最新事情を色々と教えてもらった。
 サービス陣に交替があったが、以前と変わらず1990年代のフランス名店の、色気ある濃密なアンビアンスを作ろうとする雰囲気を感じた、この店を夜利用するのは一人ではちょっと寂しい(笑)。
 初日から象に踏み潰されたみたいで、今回の食べ続けはあと4日、最後まで身体が持つのか心配になったが、まずは胃薬を飲み、そのままベッドに就寝する(笑)。 


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和歌山駅「丸美商店」&「キミノーカ」(2015関西食べ続け①)

 今回の「関西食べ続け」も例年どおりに過密スケジュール、それもヘビー級ばかりを相手にするので、途中で斃れないか本気で心配していた。土方歳三の辞世の句に倣って「たとえ身は道頓堀に朽ちぬとも」と上の句は思い付いたが、下の句が出て来なかった(笑)。そんな馬鹿な事を考えていたら、成田からあっと言う間に着いてしまった関空、其処から和歌山駅に向かうリムジンバスは実に快適、お腹の空きも忘れる位だった(笑)、この日は春節休み中にあたり、成田や関空、更にはこのバスでも中国人の姿と中国語が目立った。

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 和歌山駅到着は14時、去年は16時だったから、2時間違うのは大きい、ディナーまでには時間があるので、とりあえず何か食べておきたい、そうすると思いつくのは「和歌山ラーメン」しかない(笑)。
 別の店へ行く事も考えたが、食後も考えて去年と同じく、駅直結のショッピングビル「MIO」内にある「丸美商店」を再訪する事にした、前回の印象がなかなか良かったからだ。

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 地下にある店舗の暖簾をくぐり、去年と同じカウンターに着席する、懐かしいアルマイトやかんの水も変わっていなかった(笑)。

 メニューは中華そば(680円)にしたが、ランチタイム限定の「炊き込みご飯セット」(830円)があったので、炭水化物責めだがこれをお願いする事に。
 和歌山独特の早熟れすしやオニギリが置いてあるのも昨年同様、これも食べてみたかったが、夜は超ヘビー級宴が待っているので、さすがに控えた(笑)。

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 やがて運ばれてきた中華そば、スープを一口すすると醤油と魚介系出汁の香り、少し甘口なのが和歌山醤油の特徴で、これが味のベースになっている。続いて麺を啜るが、去年に比べると僅かだが茹で時間が長かったみたいで柔らかい、個人的にはもう少し歯応えを残して欲しかった気がする。チャーシューやメンマの出来はいい、昔懐かしいナルトが存在感ありだ(笑)。

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 続いてこの店では初体験の「炊き込みご飯」を、具はチャーシューと葱、これも和歌山醤油の味がベースになっていて、ちょっと癖になりそうな甘口で美味しい、何故か昔私の母が作っていた濃い味の炊き込みご飯を思い出した(笑)。和歌山県人も和歌山弁も、大阪に比べると印象が柔らかいが、それを表現する味だと思った。

 食後は一階に上がって、最近開設されたばかりのジェラートショップ「キミノーカ」でデセールを食べる事にした、この店は和歌山県海草郡紀美野町にある、農家が経営するジェラテリアの支店で、本店は不便な場所にありながらも、皆が車で押し寄せる観光スポットになっている。

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 売場は小さく、女性が一人で応対する、ジェラートは6種類で何にしようか迷うのだが、真っ先に目についた「紫芋」と店員さんのおススメで、「キャベツ&チョコ」とのダブル(380円)でお願いした。

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 特に印象的だったのがキャベツで、ジェラートのベースはあくまでも軽く、乳脂肪も少な目なのでキャベツの風味がストレートに伝わって来る、これは一度試してみる価値ありです(笑)。

 お腹も満たされたので、いつものとおり線路沿いを歩いて「ビッグ愛」まで向かう、ホテルにチェックインして暫し休息、何時の間にか一眠りしていた(笑)。
 夜の帳も降りてきたので、向かうは本日の「白いマットのジャングル」(笑)。

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 物凄い宴が始まるのだが、長くなるのでこれは次回にします。


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麻布十番「ビストロ・コティディアン」(2015年2月)

 寒い季節になると食べたくなるのが、フランス南西地方の郷土料理‘Cassoulet’(カスレ)、私にとって食べたくなるカスレは、本場トゥールーズで食べた物より、麻布十番「ビストロ・コティディアン」の物だ(笑)。
 建国記念の日、休日ランチに選んだのは、その「ビストロ・コティディアン」、須藤料理長から予約時に「ご希望なら、カスレをメインにしたメニューもお出し出来ますが?」との提案があり、そう云われると喜んで賛同してしまう(笑)。「お腹を空かしていらして下さい」との脅し?を受けて、覚悟を決めて麻布十番へ乗り込んだ(笑)。
 いつも平日昼に訪れていたが休日は初めて、麻布十番商店街を見物してから向かったが、若い人達で賑わっていた、でも人が集まっているのは客単価の低いカフェ的な店だけ、それと目立つのが菓子店で、「東京みやげ」に適当な、日持ちしそうな焼菓子類を売る店が増えた、浅草や神楽坂も同様だが、外国人や日本でも地方から来た人達の購買力が、今は何より頼りなのだろう。

 12時ちょうどに店へ到着、2階にある扉を開けてマダムに挨拶し、窓際の明るい席に案内される。スタッフが交替していて、厨房に居た料理人が退店、コックコート姿の若い男性が二人入店し、そのうち一人が店内サービスを担当していた。
 席に着いたら、席上には既に「本日のメニュー」が紙に書いて置かれてあった、これはブロガーにはとても嬉しい心配りだ(笑)。

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 まずはその全品を紹介したい、

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・ブランタード(自家製塩鱈とマッシュポテトのグラタン)

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・長崎産ブリのカルパッチョ、フレッシュトマトソース

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・ブルゴーニュ風エスカルゴ

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・天城山の猪とフォアグラのテリーヌ

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・フロマージュ・ド・テット(豚の頭のカリカリ焼き)、ラビゴットソース

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・フランス産鴨モモ肉コンフィのカスレ

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・チョコレートのテリーヌ

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・自家製サブレ
・コーヒー

 料理長から「少しずつ何品かお出しします」と聞いていたが、決して「少し」では無かった(笑)。フランスの伝統料理が中心だが、これを今の東京に住む日本人の好みに合わせ重くなく、それでいてフランスのエッセンスを失わないよう上手く変容させている。
 ブランタードの後は、雑味を感じさせない鮮度の良い鰤、酸味の使い方が巧く盛付けも美麗、これはビストロではなくガストロ料理だ(笑)、次のエスカルゴは一口ながら、定番のニンニク&パセリバターを使った本格派。続く猪テリーヌも練肉の旨味が際立っている、ガルニのピクルスもいい出来だ。
 この店では初めてのフロマージュ・ド・テット、これが良かった、ラビコットソースの酸味が脂を中和させ、ずっと食べ続けていられそうな気がする(笑)。
 そして真打登場のカスレ、須藤料理長夫妻は昨年の夏休みに渡仏、南西部の「三大カスレ産地」とされる、トゥールーズ、カルカッソンヌ、カステルノーダリを訪れ、連日カスレを食べたそうだ、その熱意と探究心も凄いが、それに付き合ったマダムも偉い(笑)。私も本場物を食べたが、コテコテで濃く塩分&脂分の多い料理だ、これを毎日食べたいとは思えなかったが、オリジンを知らないと判らない部分はある。それを知っていたので、料理が変わったのかな?と思っていたが、私の記憶では以前と殆ど変わっていなかった。
 一年位前に須藤料理長と話した時に、「今のカスレは麻布十番の客層に合わせ、塩分・脂分を抑えてあります」と云っていたが、その方向が決して間違いではないと、現地料理を体験して確信したのだと思う、そのためにお金を使ったのは決して無駄ではなく、「変えない事」に自信を持ったのではないかと感じた。
 この日の料理に合ったデセールはチョコレートだろうと、選んだテリーヌも濃厚で美味、ちょっと昔風のソースアングレーズがまた嬉しい(笑)。

 いや、お腹一杯になりました、あまりにも満たされたため、途中眠ってしまったみたい(笑)、このまま眠り続けられたら、それはそれで幸せな逝き方かも知れない。でもこれだけ食べてもそう苦しくないのは、前菜における酸味の使い方が巧みだったからで、肉食文化がDNAに染み付いていない日本人には、この酸味が何よりポイントになる、私の持論は「酸味を制する料理人は、フランス料理を制する」だ(笑)。

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 この店を始めて訪れた頃と比べると、マダムのサービスがとても柔らかくなり、笑顔が自然になった、開業して4年、すっかりマダム業が板に付いて来た様に見える。
 店名は「日常」だが、この店が提供してくれる上質さは、そう日常的にはない(笑)、この日も満席で、いい店はいつか知られてしまうものだ(笑)。東京が誇れる素敵なビストロの一軒だと思う。
 
 次回のブログ更新は23日(月)の予定です。


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金町「喝」(2015年1月)

 私の勤め先近くのとんかつ店が、ここ2年程で続けて3軒店を閉めてしまった、1軒は店主が死去、もう1軒は店主が高齢で後継者が居なかったからと聞き、もう1軒は居酒屋に業態変更した。今街中から個人経営のとんかつ店が姿を消している。
 とんかつは揚げる技術も勿論関係あるが、それ以上に、いかに調理に適した豚肉を仕入れられるか、それを値段は幾らで提供するかで勝負が付いてしまう、豚肉が高騰していると共に、ヘルシーで健康志向な食生活が注目される風潮では、個人経営主のとんかつ店が生き残るのは、とても難しくなっていると思う。
 以前のブログに書いたが、私の一番の好物はそのとんかつだ、実はフランス料理やコンビニスイーツより好きだ(笑)、でも家の近くにはとんかつ屋がない、昔は街には必ず1軒はとんかつ屋があっただけに、とても寂しい事だ。

 平日休みのある日、特に用事がなく、井之頭五郎的に「俺は今何を食べたいんだ?」と自問自答したら、頭に浮かんだのがとんかつ(笑)、我家から自転車で行けそうなのは、どれもブログに書いた店だが、チェーン展開している綾瀬「かつ敏」か、亀有の「有馬」、ちょっと無理をすれば金町の「喝」、こう思ったら、久し振りに「喝」へ行ってみたくなった、遠いがチャリの大敵である風もあまり吹いていない、とんかつ摂取カロリーは自転車走行で消費できる?と(笑)勝手に思い込んで、出かけてみる事にした。
 この店のランチタイム営業は11時からだが、少し早めに着いてしまったので、近くのスーパーで時間を潰し、11時10分位に入店した、入口のプラカード?は前回同様だが、以前あった「就活よりとんかつ」の名フレーズは無くなってしまった(笑)。

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 民芸調の木の扉を開けて奥へ着席、居酒屋みたいな雰囲気は全く変わっていない(笑)、メニューを見たが、最後に利用したのは一昨年の8月で、ランチに関しては殆ど値上げしていなかった、前回はヒレ、前々回はロースだったので、今回はロースランチ(税別1,300円)を注文する事に。

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 まず運ばれて来たのが、おしぼりとポメリーの空瓶に入れた箸、これが毎回謎だ(笑)。

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 続いては大きなビアグラスに入った水と突き出し?チーズとキムチとヒジキの煮物と云う、不思議な取合せも前回同様。 
 此処のとんかつは低温で長時間揚げるタイプなので、出来上がりに時間がかかる、その間は女性店員が持って来てくれた「danchu」を読んでいた。

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 暫くして、運ばれて来たのが、麦ご飯と赤だし椀、勿論白いご飯も可だが、食べる機会の少ない麦ご飯でお願いする。

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 続いて登場したのがロースかつ、肉厚で衣が白いのは低温油で揚げたからだが、この調理法は、昭和の始めに上野御徒町にあった「ポンチ軒」が発祥で、考案者は宮内省大膳部出身の島田信二郎とされている、そのポンチ軒の流れを継ぐのが「かつ吉」で、この「渇」の店主は「かつ吉」出身なので、正真正銘の正統低温派と云う事になる(笑)。

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 まずはソースも何も付けないで、真ん中の一切れを食べる、肉自体は美味しいが、以前に此処で食べたロースと比べると、ちょっと熟成が足りないみたいな印象で旨味が薄い、とんかつ単体で考えたら十分美味しいのだが、記憶にあるこの店のとんかつにしては、肉質が今ひとつ追いついていないと思った。
 後で調べたら前回のロースランチ体験は、2013年の5月で1年半前、その間に豚肉は2割値段が上がっている筈だ、値上げしないで提供するには、制約が大きかったかも知れない。
 金町は東京理科大学が一部移転して以来、若者の街に変貌しつつある、学生に対しては出来るだけ低廉なものを提供したく、値上げはしたくなかったのだろう、そこを「味が落ちた」とか簡単に言うのは酷と思う、上質なものを食べたかったら、ランチメニュー以外を頼んだ方がいい。
 例えばフレンチやイタリアンなら「今日のランチメニューは、豚肉が高いから鶏にしよう」と、メイン食材の差替えは可能だ、反面鰻やとんかつみたいな単品食材提供店は、食材値上げの影響を直に受けてしまう、この辺りが街中から「うなぎ屋」「とんかつ屋」が減り続ける理由の一つだと思う。

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 食後は甘味が欲しくなって、「店主の自信作です」と書いてあった、杏仁豆腐(350円)をお願いする事に、お酒(杏露酒?)が効いた大人の味でした(笑)。
 とんかつから様々な事を考えてしまったが、決して美味しくなかった訳ではなく、勿論また来でみたいと思う。
 個人店主には厳しい時代が続くが、これからも下町の名店として続いて欲しいと願って止まない。


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綾瀬「綾瀬飯店」

 今回記事にする「綾瀬飯店」は、私が悪い腰と頸の治療を受けている施術所の近くにあり、以前から存在は知っていた。でも場末感が濃く漂ってくるみたいな、あまりにも古びて冴えない外観から、入って食事をしようと云う気持ちになれず、ずっとスルーしていた(笑)。
 失礼ながら、やがて消えるだろうと思っていたのだが、意外にも続いている、やがてネット上でこの店の名前を知ることになる、「食べログ」にも掲載されているし、グルメライターとして知られる某氏もブログで取り上げていた、最初はその「綾瀬飯店」と私が知る店は別と思っていた(笑)、どうやら同一店だと気づいた時に、俄然この店に興味が沸いてきた。それに「消え行く昭和中華」を訪問して記憶に留めるのは、私のライフワークにしたいと思っている事だ(笑)。

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 腰の治療を受けたある日、意を決し?昼に訪れてみる事にした。店の場所は千代田線綾瀬駅東口を出て5分位、この界隈は夜だけ営業する飲食店が多いので、ランチタイム営業しているのは貴重な存在だ、あらためて見ると、サンプルケース内も凄いセンスだ(笑)

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 店内は想像していたとおり昔の中華料理店、カウンター席はなく赤いデコラテーブルの席が5つ、入店すると他の客は居たが、店側から誰も声をかけず不安になった、すると奥に座っていた高齢女性が立ち上がり、空いている席へ座る事を促した、この方が客席担当で、どうやら足が悪いみたいだ。
 席に座り、手元にあったメニューを見ると、ラーメン、餃子は勿論、ご飯物も数種類、今時珍しい手書きの菜単がいい(笑)、単品料理の欄には何と「アワビの醤油煮」(2,800円)などと云う本格料理もあり、店の外観とのギャップに驚いた(笑)、夜にしても此の店で誰か注文する人いるのだろうか?

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 初回なので、無難に「本日の定食」(税込700円)をお願いする事にした、意外にも?5テーブル全部埋まり、それも皆常連客と思われる人ばかり、やはり人間と同じく「見かけ」で判断してはいけないみたいだ(笑)。テレビはバラエティ番組を流し、本棚にはコミック本が並び、テーブル上にはスポーツ新聞と、お約束どおりの昭和中華スタイル、これは期待が高まる(笑)。
 少し長めの待ち時間で出てきたのが、

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・豚肉と長芋炒め

 
 まずは添えられたスープを一口啜ったが、「この味だ!」と脳が反応した、まるでプルーストにおける、紅茶に浸したマドレーヌみたいに、幸せだった?少年時代が蘇った(笑)、微かな酸味を感じる薄い醤油味の鶏出汁スープ、私が子供の頃は街場の中華料理は殆どこれだった、私は今昭和に還ることが出来た(笑)。
 続いて豚肉を口にするが、とても柔らかい、おそらく重曹や酒、砂糖などで下処理したものだと思うが丁寧な仕事、長芋はシャキっとした歯応えを残し、一緒に炒めたのは蕪の葉だと思うが、これが効いている。全体的に薄味で素材を生かしているのは好印象だ、ご飯もこの値段にしては納得できる質。これで700円ポッキリなら安い、職場の近くにあったら、毎週通うと思う。
 厨房内はよく見えなかったが、男性が一人で鍋を振っている、最初は店内の女性との夫婦だと思ったのだが、WEB情報には「親子ではないか?」とあった、そう言われれば男性は若そうだ、もしかしたら二代目なのかも知れない。

 すっかり気に入ってしまい、すぐに再訪する事に、つまり「裏を返した」(笑)。この時の定食が、

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・鶏と玉子と野菜の炒め

 鶏の唐揚げを玉子と野菜と炒めて、酢を効かせた味付け、初回のインパクト程ではないが、これもなかなか良かった。
 これまでで行っていなかった事を後悔した店、今東京の街中からは、こうした昔ながらの中華料理店は急速に姿を消している、代わりに登場したのがラーメン専門店と中国人経営による中国料理店、どちらもそれなりの味なのだが、私が知っている「中華料理」の味では無い。昭和中華はもう絶滅危惧種で、どの店も後継者難により現経営者の代で消える運命なのかも知れない。

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 同じ昭和を共有した人間としては寂しい事だが、何とか今のうちにこうした店を回っておきたいと思っている(笑)。


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神楽坂「オー・トレーズ・ジュイエ」(2015年1月)

 栃木県芳賀郡茂木町にある「うたし農園」は、有機農法に取り組んでいる農園で、農薬や化学肥料を一切使わず、農地に生える雑草も極力取らない農法を採用している。「雑草を取らない」と、地中の養分が取られてしまう様に素人は思うのだが、理論どおりに行かないのが自然界の面白さで、実際にこうした農法で野菜を作っている農家は他にもあると聞く、畑の様子を紹介したブログがあるので、まずはこれを見てください。
http://morimaru2014.hatenablog.com/entry/2014/05/29/222916
 雑草と作物の区別が付かないが(笑)、若夫婦が営むこの農園の野菜が、とても美味しいとの噂は聞いた事があった。私は焼物が好きなので、たぶん茂木町からそう遠くない、益子の陶芸作家のブログではなかったかと思う。
 「うたし」の名前は、「うれしい」「たのしい」「しあわせ」と感じられるような農業や生活をして行きたいとの、夫婦の思いからだそうだ。
 その農園の野菜を、私がよく行く神楽坂のフランス料理店「オー・トレーズ・ジュイエ」で使い始めたとの情報を得て、早速ランチタイムに伺ってみた、勿論佐藤料理長には、事前にこの野菜を食べたいと伝えてあった。夫婦二人でやっている農園なので、元々収穫量は少ない上、冬場で生育が遅いので、入荷する量は限られるみたいだ。

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 12時ちょうどに入店し窓際の本棚前に座る、この席はたぶん初めてだと思う、並んだ料理本を見ると、さすがに「NOMA」の本はないが(笑)、ラルースやエスコフィエの仏語本等、佐藤氏も独学派料理人だが、よく勉強しているみたいだ。
 まずこの日の料理を紹介したい、

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・うたし農園の温かいサラダ、小海老のアッシェ、アヴォカドのソルベ

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・Chateau du Coing de Saint-Fiacre Muscadet Sevre-et-Maine Sur Lie Comte de Saint-Hubert1997(長い!(笑))

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・フォカッチャ(改良版)

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・鱈のロティ、バスクのポーリング

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・仔羊肩肉のグラチネ、白菜のア・ラ・クレーム

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・ココナッツとベリーのタルト、サフランのグラス添え

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・エスプレッソ

 まずは第一の目的だった農園野菜は、大根類、蕪、人参の冬野菜がメイン、葉野菜はチコリであとは失念(笑)、アヴォガドのソルベをソースにするが、添えられたのは小海老のハンバーグ?まずは何と云っても野菜の味が濃い、濃いだけでなく苦味やエグミと云った野菜が本来持っている味がある、今迄にも有名農園の野菜は食べて来たが、それらとは少し違い、とても野性を感じて、食べられる事を拒否するような強さがある、個性的なので好みは別れるかも知れないが、私は惹かれた、但し塩を振っただけでも味が際立つので、かえって料理は難しいと思う、佐藤氏は経験豊富な料理人なので、その辺りは充分理解していると思う。
 続く鱈の料理も、鱈より「インカのめざめ」が特徴的、これは北海道から来たものだそうだ、なおポーリング‘Pouring’とは米国の抽象画家J・ポロックの表現技法の事で、日本で云えば「垂らし込み」にあたる。羊肩肉は煮込、トマトの酸味と白菜のクリーム煮を上手く使い、無難だが食べ応えのある料理になっている。
 デセールはちょっと盛り込み過ぎた印象もあるが、各パーツの味は良かった。毎回出していたフォカッチャを改良、焦がした小麦粉を混ぜたそうで、これはなかなか美味しい、レストラン用の冷凍種パン等を使うより、こちらの方が断然いいと思う(笑)。
 この日の料理は特に野菜の印象が強烈だった、この野菜が食べられるなら、毎月来てみたいなと思った位だ(笑)。

 かなり昔の話だが、フェアのため来日した、パリ「ランブロワジー」の料理長、ベルナール・パコーがインタビューで、「料理は食材を超える事は出来ない」と、語っていたのを覚えている、つまり自分の料理に使うには、日本の食材には不満があると、暗に言いたかったのだと思う。それから20年以上経った筈だが、若い層を中心に食肉や野菜作りに真摯に取り組む生産者が増えた、高級レストランのメートル職をなげうって有機野菜作りをする人も現れた(笑)。
 私は行っていないが、日本での「NOMA」料理は殆ど国産食材を使用していると聞く、海外から有名料理人が来ても「日本の食材は駄目だ」とは、もう云わせなくて済みそうだ(笑)。

 なお「オー・トレーズ・ジュイエ」で「うたし農園」の野菜が食べたかったら、収穫量、入荷量が限られるので、予約時に確認した方がいいです、なお野菜だけなら同じ神楽坂にある、この「E-to」でも販売しているとの事だ、
http://jam-studio.jp/e-to/
 これも毎日あるとは限らないみたいで、確認してから行った方がいいと思う。


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綾瀬「ラパンラパン」

 今ではスラム化しそうな雰囲気が漂うが、私が今の住居に引っ越して来た20年前は、この建物も新築物件で綺麗だった事もあり、客人が何人か訪れた。来たからには何らかの料理を出すのだが、和食は難しいので、フランスとイタリアが混じったみたいな怪しげな料理になる(笑)、料理のロークオリティは食器や音楽で誤魔化すとしても、困ったのがパンだった。
 我家の近くにまともなパン屋がなかった、あってもアンパンやクリームパンやコロッケパンみたいなパンを置く店だけ、料理に合わせたいバゲット等のハードパンを売っている店は皆無だった、仕方なく前日の仕事帰りに調達する事になるのだが、カンパーニュ系は別として、バゲットは日を置くとどうしても味が劣化してしまう。

 そんな「文化果てる地」だった我家周辺に、ここ5年以内で続けて数軒のパン屋が開業した。もちろん菓子パンや惣菜パンも売っているが、ちゃんとしたバゲットまで並んでいるのを見ると、「長生きしてよかった」と目頭が熱くなってしまう(笑)、ただ古くなった我家を訪れる客は居なくなってしまったが(笑)。
 バブル崩壊~リーマンショックを経て地価が下がり、若い人達が都内でマンションを探し、都心に比べて低価格の下町地区に定住する、今まで都心の賃貸アパートで暮らしていた彼&彼女達は、自分達の嗜好を下町に持ち込み新たな需要が生まれた、そして若いパン職人達が安いテナントを狙って開業する、その結果今まで無かったハードパンを販売する店が誕生する事になった。

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 今回紹介する、足立区綾瀬のブランジェリー「ラパンラパン(Le pain Lapin)」もそうした一軒で、開業は2011年8月。店の場所は千代田線綾瀬駅東口を出て北へ向かい、東京武道館の隣にある中学校の前、外観は実に足立区らしくない(笑)洒落た印象、シンボルマークは店名の「兎」だ。
 店主は恵比寿の「ブティック・ロブション」で働いていたと聞く、独立にあたって都心ではなく、あえて下町に本格的なブランジェリーを開業したのは前述の理由だろう。
 先ずはこの日買ったパンを紹介したい、

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・バゲット(税込270円)

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・パン・ド・セーグル・ミニ(130円)

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・クグロフ(320円)

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・ダークチェリーのデニッシュ(210円)

 バゲットは生地を長時間(10時間以上?)発酵させたものだそうで、粉の旨味が十分感じられる、これならフレンチレストランでも出せるレベルだ、焼きムラもなく、技術だけでなくオーブンも相当いい物を使っていると思う。
 パン・ド・セーグルもかなり本格派、フランス国内では「ド・セーグル」を名乗れるのはライ麦が65%以上の物だそうで、おそらくこれも同じだと思う、次も買いたいパンだ。
 クグロフとデニッシュは無難な味、「この店でなければ」みたいな特徴は感じないが、丁寧に作られている事は判った。

 実はこの店は久しぶりに行ったのだが、パンの味は以前より良くなっていると感じた、開業して3年が過ぎて、下町客の需要や嗜好と作る側の折り合いが付いて来たのかも知れない、それを証明する様に、例の「食べログ」では城北地区ではトップクラスの高得点だ(笑)。
 個人的な感想では、ちょっと優等生的で面白味に欠けるのが不満だが、これは「ブティック・ロブション」のパンがそうした傾向なので、学んだものは逸脱出来ないのだろう。でも、もし今誰かが我家に来るとしたら、たぶんこの店のバゲットを買いに行くと思う。あとは近隣の他店と比べると値段が高めな事で、これは「ロブション」の威光かも知れない(笑)。

 提供する側(店)と提供される側(客)は切り離せないもの、前者が後者を育てる事もあるし、その逆もある。昔「俺は地元の客は嫌いなんだ」と公言していた有名な蕎麦店主がいたが、何時の間にかその蕎麦屋は消えてしまった(笑)。
 このまま此の地で続く事を願うが、「この店が成功するなら自分も・・」と考える次の世代も、もっと出て来て欲しいなと、下町人間の私は切に思う。
 

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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