最後の晩餐にはまだ早い


代官山「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」(2015年3月) ※閉店、高橋料理長は「ル・スプートニク」開業

 先日の関西食旅行でも感じたのだが、最近レストランにおいて「デザート」の占める重要度が増しているのではないかと云う事。これは幾つかの理由が考えられるが、フランス料理に関してなら、アラカルト料理提供店が減り「おまかせメニュー」、今風に言えば「カルトブランシュ」の形態を採る店が増えた事に加え、全体的に客の飲酒量が減っているのも関係あると思う、更には若手料理人達のレベルが向上し、結果各店の料理に特徴差が少なくなっている事も大きいのではないか。
 最後のデザートの出来で、その日の食事全体の印象が決まってしまうのだ、マラソンレースに例えれば、ずっと数人で先頭集団を形成していたが、ゴールがあるスタジアムに入り、トラックの走力で勝敗が決まるみたいな感じだろうか(笑)。
 こうなると店側もデザートに力を入れる事になる、レベルを上げるための一番の近道は、料理人の他に優秀な専任パティシェ(パティシェール)を雇う事だが、当然相応の人件費がかかってしまう、それなら「デザートを作れる料理人」または「料理を作れるパティシェ」が居たら、こんな便利な事はない。これから料理人を目指すなら、まずは製菓から入るのが将来重宝され、独立するに際しても有利になるかも知れない。
 本年3月一杯で退店する高橋料理長時代最後の訪問になる、代官山「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」での食事後、そんな事を考えた。

 実は前回の訪問で「最後」と思ったのだが、どうしも再々訪問したくなり、有休を貰って平日ランチに駆け付けた(笑)、まずは当日の料理を紹介したい、全12品の昼夜共通のムニュになる。

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・米の泡をまとった真鯛のライムマリネ

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・ワカサギの牛蒡フリット

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・兵庫産岩牡蠣、トマトのジュレ

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・藁で燻した鰆 山菜と筍、蕗の薹のブールノワゼット

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・''薔薇''ビーツのチュイル フォアグラ

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・新玉葱とヤリイカ

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・モリーユ茸とホワイトアスパラのクレープ、プチポワのブルーテ グラストリュフ、ポーチドエッグ

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・萩産甘鯛のウロコ焼き、桜海老のビスク パスティス

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・北海道酒井さんのジゴダニョーロースト、同腿肉のメンチカツ、ジュ・ダニョー ロックフォール

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・苺とハイビスカス ヨーグルト

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・蜜柑のヴァシュラン

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・トンカ豆のブランマンジェ、塩キャラメルのシューアラクレーム

 高橋料理長は料理人出身だが、パリではパティスリーでの勤務経験もあり、「デセールを作れる料理人」だ、この経験は料理にも影響していると思う。まず何と云ってもドレッサージュ(盛付)が綺麗だ、それも二次元ではなく、高さもある彫塑的な美しさが表現出来る、一例として薔薇の花を模したフォアグラ料理だが、日本のそれも街場のレストランで、ここまで美しく料理出来る料理人を他に知らない、見た目だけで美味しくなければ評価できないが、勿論食べて美味しい。
 そして料理が構築的だ、以前の記事で緻密且つ構成力のある高橋料理をモーリス・ラヴェルの音楽に例えたが、その代表作「ボレロ」みたいに、料理はアミューズからメインの肉料理まで、ずっとクレッシェンドで上昇し、そしてデセールで華麗なフィナーレを迎える、その持って行き方が巧みだ。

 特に印象に残った料理を挙げておくと、まるで土佐料理の「鰹のタタキ」みたいな鰆料理、薫香と絶妙な火入れが見事。新玉葱と烏賊は「白+白」の組合せが斬新で、双方の甘味の相性が抜群だった。続くモリーユとアルペルジュを巻いたクレープは、香りを閉じ込めるために使った筈だが、これもパティシェ的発想だなと思った。国産ジゴ・ダニョーは繊細な美味しさ、大阪「ぽたじぇ」の骨付一本ローストとは対照的な調理だが、「どちらも美味しい」としか言い様がない(笑)。
 そして高橋料理を何より印象付けるのが秀逸なデセール群で、素材として難しい果物を上手く使い、「果物以上の果物デザート」にしている。
 昼間の窓際席で、自然光に映える美しい料理とデセール、食べるだけでなく画像を撮っていても楽しくなった(笑)。

 友人が今年パリに行き、現地で話題の日本人料理人のフランス料理店を数軒回って来たが、帰国後言っていたのが「今は東京の方がいい料理人居るのでは?」だった(笑)、多分そうだろうと思う、この料理なら、パリに持って行っても十分通用するし、おそらく星1つは貰える筈だ。
 退店時に挨拶のため階下へ降りてきた高橋氏と少し話をしたが、今年中に都内で独立予定だが場所等は未定との事だ、まずは海外へ「才能流出」しない事を喜びたいが、どんな店になるのか今からとても楽しみだ、とりあえずは6年間お疲れ様でしたと言いたい(笑)。


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京都・祇園「MAVO」(2015関西食べ続け⑨)

 もはや「苦行」としか言い様のない、食べ続け旅行だったが(笑)、やっと最終目的地に到着した。場所は千年の都京都、中でも高級飲食店が立ち並ぶ祇園だ、その一等地に昨年7月にオープンしたフランス料理「MAVO」、此処が今回最後の訪問店になる。
 料理長は西村勉氏、神奈川小田原でフランス料理店‘La Matiere’を営んでいたが、更に進化する事を考えて、夫人の出身地である京都に移転して来た、変わった店名は進化の言葉を加えた「matiere+evolution」から名付けたそうだ。
 私は小田原時代から評判を聞き、更には西村氏が大阪「コーイン」の湯浅、札幌「リアン」の木下両料理長とはそれぞれ仕事仲間だった事を知り、以前より行ってみたいと思っていたのだが、日程や同行者の都合などで何回か計画が流れて、遂に伺えないまま閉店してしまい残念な思いをしていた。
 今回の関西行が決まった時点で、祇園の店訪問を計画に入れたのだが、万全を期すために既に訪問済みの「南大阪のドン」氏に、「ご一緒しませんか?」と誘ったのが事の発端。そこから話が急に広がってしまい、当日集まるのは何と15人と云う大変な事態になってしまった、これはもう引き返せない(笑)。

 店の場所は八坂神社近く、「舞風館」と云う名前の小旅館の一階部分で、宿泊客に朝食も出していると聞く、集合時間の12時少し前に入店したら、既に大部分の人は集まっていた、関西のグルメな方達は行動が早い(笑)、この日集まったメンバー構成は詳しく触れないが、とにかく皆凄い人達ですとだけ書いておく(笑)。
 全員が揃った時点で、始まった特別ムニュは以下のとおり、まずは料理画像を紹介したい。

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・薄茶

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・始まりはたまご~

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・prologue de mavo

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・赤穂牡蠣の抹茶ベニエ“vert”緑

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・コンソメW冬と春の狭間

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・大地のテロワール“滋味”

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・和歌山産天然真鯛“春ほろ苦く”

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・リセット/柑橘と雁金茶、緑レンズ豆の蜜煮

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・鹿児島出水無双網 尾長鴨、松ぼっくりのフェマージュ

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・苺と生姜のスフェール、ソース・ガストリック

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・小菓子
・エチオピア コチュレ単一品種熟成珈琲、ハンドドリップ50℃

 厨房は料理長以下4人、サービスはマダムともう1人だが、この日は特別にヘルプの女性が来ていて総動員体制、それだけ15名分の料理を同時に出すと云うのは大変だ、この点では私が言い出した事で、料理長以下には大迷惑だったと思う。
 そしてこの日は私自身初体験で「ティーペアリング」に挑んだ、これは料理長の発案で、各料理に合わせた茶をワイングラスで提供するもの、茶だけでなくスパイス類を加えて、複雑な味のテクスチャーを出そうとしている、茶の本場京都ならではの試みでとても興味深かった、海外からの非アルコール飲客にも対応可能で、発展性は大いにあると思う。ただワインと違い茶は飲む程に感覚が冴えて来る、戦国時代の武将達に喫茶が盛んだったのは、他国との策謀や戦略を練るのに酒より向いていたからだろう、だから料理を楽しむと云うより、分析や批評になる可能性はある(笑)。

 料理に関して、上記の事を踏まえて尚且つ移転して未だ半年、「オテル・ド・ヨシノ」手島、「コーイン」湯浅両料理長みたいに、長くホームで戦えている人達と同列に比較するのはフェアではないが、あえて言わせてもらうならば、料理に「京都のテロワール」を表現したいのは理解出来ながらも、少々未消化な部分も感じた。以前に利用した祇園のイタリア料理店では、もっと自然に「京都的なもの」を感じたが、この点ではやや硬さを受けてしまった。手間と時間をかけた料理である事は十分判るのだが、全体の流れの中で、食べる人間の首根っこを掴んで、「どうだ、旨いだろう」と卓に組み伏せるみたいな大技と云うか、印象的な部分が欲しかったか。それとパティシェールが一生懸命なのは判るが、デセールが少し弱い印象も受けた、これからの改善を期待したい。
 繰り返すが、15人同時のサービスは厳しい条件だった筈、西村料理長はホテル勤務時代のバンケット等で経験済みなので、破綻を感じさせずに対応出来たのだと思う、次訪れる時は少人数で、印象がどう変わるか確認したいものだ。

 この日は春節休みにあたり、京都市内も中国系の人達が闊歩していた、東京とは少し違う意味で「国際化」が進んでいる京都で、既存の和食店等と競合しながら高級フランス料理店が存続するのは、難しい事が多いと思うが、店のシンボルマークの様に、此の地で輝いて欲しいと願う。
 食後、参加メンバーにより最新の吸排気システム完備のオープンキッチン見学も続いたが、私はこの後東京に帰るので先に失礼させてもらった。

 4泊5日の関西食べ続け巡礼、最後の方はかなり疲労困憊だったが(笑)、実に楽しかった。この間お付き合いしていただいた皆様、ありがとうございました、東京に来た時には、これだけ誠意ある接待は出来ませんが、極力お付き合いしますので、遠慮なくお知らせください。
 次回の関西行では、訪問必至の店も増えてしまったが、それも今から楽しみだ(笑)。


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大阪・高麗橋「旬菜 桜花」(2015関西食べ続け⑧)

 関西最終の夜は土曜日だった事もあり、同行者がいなくなってしまった(笑)。昼は一応ヨコメシなので、中華か和食と思ったのだが、アウェーの地で初訪問の店へ夜一人で行くのも結構勇気がいる(笑)、できたら料理人を知っている店へ行きたいと考え、そうだ去年行って好印象だった、高麗橋の和食「桜花」がある、あそこへ行ってみようと決め、事前に「一人でもいいですか?カウンター席でおとなしくしています」と予約を入れた(笑)。店がある場所はビジネス街なので、土曜夜は割と席は確保しやすいみたいだ。
 店には四ツ橋から30分近く歩いて行き19時に到着、この位歩かないとそれまで食べた物を消化しない(笑)、和食店らしくない入口を通り、大柄な森田料理長に挨拶してカウンター席に座らせてもらった。

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 店内は7割程の入りで、前回は平日夜で勤め帰りのサラリーマン風客が多く、団体利用もあったが、今回は少人数客ばかり、同じカウンター席には私より年齢が上と思しき男性一人客も居て、ちょっと安心した(笑)。
 連日の食べ続けで胃も相当疲れて来て、この日は白ワイン一杯と烏龍茶で勘弁してもらい、出していただいた料理は、前回と同じ6,000円のもの、料理のテーマは昨年同様「立春大吉」だった。

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・前菜―村さんの寒ボラの龍皮昆布巻、芽キャベツ乾酪和え(紙下)、桝に塩蒸し豆たたみ鰯肝醤油挟み

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・小吸椀―天然四万十川のり、花柚子

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・割鮮―河豚の炙り、わけぎ、マイクロアマランサス、酢味噌醤油

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  鰹、鰤、剣烏賊、松葉独活、紅立、山葵、辛子醤油、造り醤油

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・炊き合せー若牛蒡稲荷、田辺大根、牛蒡黒胡麻煮、門真蓮根、金時人参、包大根、粉山椒

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・旬菜―河豚煮凝り、鮟鱇肝ポン酢、大根味噌漬け、寒ボラとそのソロバン炭火焼き、牡蠣オイル煮蕪巻、琵琶湖産子持公魚、スルメ雲丹和え、吹田慈姑、紅白長老喜、蕪寿司

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・主菜―蓮根饅頭、蟹真薯包、鱈白子すり流し、軸法蓮草、水辛子

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・御飯―ごま鯖出汁茶漬け、刻しば漬け、焼海苔、生姜

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・甘味―ぜんさい赤飯団子

 全体の印象から云えば、前回は酒肴が続いた感じも受けたが、今回はしっかり「食事をした」と云う充実感がある、料理の流れに起承転結がハッキリして来たと思った。一例として椀物だが、去年はここで「箸洗い」と称して、「大根のすり流し」が出たが、今回量は少な目ながら、クリアな吸い地の椀物、私みたいな古い人間はどうしても「和食の華は澄まし椀」との発想が抜けないので、此処でこれが出るのは王道だなと感じる、でも美味しくなかったら如何し様もないが、上質な昆布出汁が感じられるいい椀だった。
 続く造りは無難だが、炊き合せが良かった、冬野菜を大阪特有の甘味の多い煮物地で煮含める、質のいい野菜が野菜以上の味になっている。

 「旬菜」は通常なら「八寸」だが、九谷の古皿に盛られた魚と野菜料理、これにかけた手間は相当なものだ。この日は土曜なので夜のみ営業だが、平日は近くのビジネスマン&OL相手に850円のランチも出している、その営業後にこうした夜の料理を仕込むのだから、考えただけで大変だ。京都みたいに4~5,000円でランチをやれば昼夜共通の料理も出せるが、此処は財布の紐が固い大阪のビジネス街なのでそうも行かない、それでも低廉なランチを続けるのは、昼来た客が夜にも来てくれる事を考慮しての事だろう、この旬菜盛合せと続く主菜の蓮根饅頭はとても良かった。
 そして「ごま鯖」を使った出し茶漬けが秀逸、私みたいな非酒飲みは、こうしたものがとても嬉しい(笑)。前回、改善の余地ありと書いてしまった最後の甘味も工夫が感じられた、これが少しあると食後感は結構変わるものだ。

 東京でもお酒の飲めない女性を和食に誘うと、「和食って、酒の肴みたいなものばかり並ぶので、飲まない人間にはつまらない」と云われた事があるが、この日の料理なら下戸でも充分楽しめると思う(笑)。
 手のかかった料理内容は、値段を考慮すれば立派だと思う、京都や東京なら8,000~10,000円は覚悟しないといけない(笑)。
 森田料理長が一人客に気を使い、色々と話しかけてくれる、私は決して喋りが得意な人間ではない?が、料理や器の話になると、俄然熱くなってしまう、この日も九谷や漆器の話から始まり、和食の四次元性?や尾形光琳、湯木貞一や「へうげもの」まで話は尽きず、もう一人の年配男性まで交ぜて話が煮えてしまった、おとなしくしているつもりが、一人喋っていた気がする(笑)。同じカウンターの女性客などは「あの親父達、何か変な話で盛り上がっている」と、きっと訝られた事だろう、失礼しました(笑)。
 向学心旺盛な森田氏、一年後は更に良くなっているだろうとの、これからへの期待も持てる料理人だ、再々訪問してそれを確認したい店だ。


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神戸・元町「bb9」(2015関西食べ続け⑦」

 関西食べ続け巡礼もようやく終盤になった4日目、大阪から足を伸ばし向かったのは神戸元町、目指すは以前から行ってみたかった、薪の熾火により全ての調理をするレストラン「bb9」だ。
 私が関西で訪れる店を選ぶ際に、一番ポイントにしているのが「東京には無い店」だ、フランス料理で云えば前記事の「コーイン」などはまさにそれ(笑)。ところがここ数年関西、特に大阪で開業するフレンチはどうも東京スタイルばかり、見かけは現代スペインと北欧が混ざったみたいな、モダンながら少量多皿で細部に拘り過ぎの料理を並べる店ばかりで、料理画像を見ただけで「またか」と、行く前にがっかりしてしまう。
 パリとリヨンの料理が違う様に、東京と大阪(関西)の料理も違っていい筈、せっかく交通費払って来たのに、東京的料理はパスしたい、もっと関西ならではの、個性を感じさせる店へ行きたいと考えていた時に、思い付いたのがこの「bb9」だった。

 料理人の坂井氏は、スペイン・バスク山中にある薪焼き料理専門店「エチェバリ」で働き、帰国後2011年に、神戸元町で同じく薪焼き専門の「ヌーダ」を開業、昨年店をリニューアルしたのに伴い店名も変更した。
 この店に興味を持ったのは、在京のグルメ達の評判がすこぶる良かったからで、それもベテラングルメほど賞賛している、これは一度行かねばとずっと思っていた。今回は大阪の友人が同行してくれる事になり、何と約40年ぶりの神戸訪問(笑)。途中阪神電車の車窓から甲子園球場の実物や、震災で倒壊した阪神高速が見えて、ちょっと感動した。
 元町駅到着後に時間があったので、商店街を散歩してみた、店頭に女性用下着が山積みされる大阪のバタ臭さとは違い、どこか都会的だけれど庶民的な温かさを感じる、東京なら阿佐ヶ谷の商店街みたいな雰囲気だった。

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 店の場所は、商店街から1本駅側の細い路地から更に横道に入った判り難い場所にある、ファサードには店名等の表示はなく、知らない人がフリで入れる雰囲気ではない。
 店内に入ると迎えてくれたのは、サービス担当の西川氏でソムリエも兼ねる。窓際席に案内されるが、暗い店内に窓から差す光、木部剥き出しのテーブルにウェグナーのチェア、BGMはジョスカン・デ・プレか?ちょっと「やり過ぎ」なまでに非日常感を演出していて、まるで中世ロマネスク建築の礼拝堂内みたい(笑)。
 西川氏セレクトのバスクの微発泡白ワイン、チャコリで乾杯し、昼夜共通の8,500円ムニュをいただく、当日出された料理は以下のとおり、

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・明石さより、薪焼き

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・自家製バター(トリュフ)

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・いいだこ薪焼き

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・淡路なごやふぐ、薪焼き

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・自家製河内鴨チストーラ、薪焼き

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・季節野菜(キャベツ、黒大根、若ごぼう、ロマネスコ、九条ねぎ、大根、蜜芋、黄かぶ、カリフラワー、ルッコラ、ツタンカーメン、マーシュ、おおたにわたり)

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・淡路天然ひらめ、薪焼き(ソースはピルピル)

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・トリュフと卵のカルボナーラ風スパゲットーニ

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・熟成牛肉の薪焼き(ガルニはパースニップ)

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・チョコレートのアイス、苺のソース

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・薫香アイスと薫り茶

 食べ終わって、これは「利休の朝顔」だなと思った。秀吉が訪れる際に、庭の満開の朝顔を全て切り取り、中の一輪のみを茶室に生け、花の存在感を表したとされる千利休の故事みたいに、他の料理人とは発想からして正反対のやり方だ。
 料理されたものの背後には、多くの料理されなかったものがある、それをどう感じるかで、この店に対する評価が180度変わる。受け取る側によっては「こんな炉辺焼きみたな料理が続くのが、独創なの?」と訝る人もいる筈、そしてその感じ方が間違いとは云えないのも真理だと思った。
 私自身はどう感じたかは、昨夜「コーイン」の豪壮華麗で長大なグランドオペラ的料理を体験した後だったので、余計にこうした無伴奏ソナタみたいなやり方は、多様性としてあっていいと思った。素材を裸にする、最良質な部分を抽出する方法は、西洋料理より和食、それも天ぷらや寿司の思考に近い、肉類より魚と野菜に惹かれたのもそれが理由かも知れない。
 薪焼きによる火入れ、薫香は確かにプラスにはなっているが、この料理人が一番やりたい事は、この「抽出」と云う手法ではないかと思った。

 料理を絶対的、具象的なものと考え、ピラミッド型の階層を築いて来たフランス料理、これに対して季節や時間軸、相手の経験値により変化する抽象的な日本料理、この店が提供しようとするのは後者ではないかと感じた。それだからこそ、日本や世界中の名店を訪れた、経験値の高いグルメ達を刺激するのだと思った。
 食べ終わって大阪のホテルへの帰り道で、「絶対と相対」「具象と抽象」「西洋と東洋」等々、考える事が実に多かった、知能を刺激するレストラン、「また来たいか?」と問われれば、私は「Yes」と答えたい。


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大阪・上本町「レストラン・コーイン」(2015関西食べ続け⑥)

 今回、関西でレストランをご一緒した数人の方から「ブログ見ていますよ」と、激励の言葉をいただき、身に余る光栄?であり、あらためて間違った知識や下品な事は書けないと、気持ちだけは身が引き締まる思いだった(笑)。
 長く食べ歩きの経験を積むと、その日初めて行く店でも料理人の経歴や年齢、店の場所や価格帯等で「今日は大体こんな料理が出るだろう」と予想をする、それが大きく外れる事はあまりなくなった、それだけ日本特に東京の料理人は平均化し、且つレベルが高くなったと云う事なのだろう。
 そんな私でも、極まれにだが予想の斜め上を行く料理に出会う事がある、そうした店を代表するのが、この日一年ぶりに伺う大阪上本町の「レストラン・コーイン」、関西三日目の夜は、「ワルプルギスの夜」が始まる魔窟に招かれるが如く、またこの店へ来てしまった(笑)。

 「本当に営業しているの?」と、疑りたくなる位に照明を落とした入口扉を開けると、笑顔で迎えてくれたのは、現在サービスを担当しているガンジー君(笑)。厨房に近い席に案内され、湯浅料理長にも挨拶し始まった長大なディネ、先ずは当日の料理を全てお見せしたい。

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・トリュフ、オニオン、自家製猪パンチェッタのタルトレット(左)
・グジェールバーガー、トリュフ、自家製鹿生ハム、トマト、ピクルス(右)

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・赤ピーマンのババロア、カニ身とウニ、あかうしのコンソメジュレ

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・長崎トラフグ、パテ・ド・カンパーニュ、ブルノアレギューム

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・セロリラブ、土佐ジロー卵黄、あかうしモアール、トリュフ、赤ワイングラスビアン、ブリオッシュクルトン、チョリソー
―ここまでがアミューズ(笑)。

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・フォアグラカナールとトリュフのテリーヌ、生コショウのソース

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・畑(芽キャベツ、スティツクセニョール、赤キャベツ、コールラビ、黄色人参、ルコラ、マスタードツリー、スイスチャード、ビーツの芽、バジル、ラディシュ、カブ、紫カブ、オニオン新芽)野菜皮を煮たブイヨンとバターのソース、キャビア

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・オマールブルーのコンソメ、リードヴォー、クードオマールブルー
―ここまでが前菜(笑)

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・オマールブルーのブーダン、ソースアメリケーヌ
 (ケンイカ、ラパン、オマールブルー、トリュフ等を詰めて)

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・高知雌鹿のロワイヤル、畑のジャガイモのピュレ

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・自家製フロマージュ(高知県ヤギミルクのシェーブル、北海道ミルクのアオカビ、シロカビ&トリュフ、ジオトリカム(酵母))

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・畑のサツマイモのクリーム、リンゴのグラニテ、ライム、メレンゲ、グラスロワイヤル

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・自家製マスカルポーネとショコラのキャレ(自家製マスカルポーネのムースとヘーゼルナッツのジョコンド、塩キャラメルのアイス、キャラメルショコラソース、ショコラの板)

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・ミニャルディーズ(持ち帰った(笑))

 前菜が終わったあたりで、あまりに馬鹿馬鹿しくなり笑い出したくなった、この時期東京で「トリュフコース」を名乗り、2万円超でムニュを出す店があるが、その量たるやカンナ屑みたいなもの(笑)、「トリュフとはこれ位使う物だ」と、この店みたいに開き直られたら初めから勝負にならない、あとで出て来た湯浅料理長に「今年は黒トリュフ幾らです?」と怖々聞いたら「1キロ20万円位」と、まるで「それがどうした?」と云わんばかりで、もうこれで負けた(笑)。
 米国人の健康オタクを皮肉って「健康になるためなら、死んでもいいと思う人達」と云うが、この料理人は「自分が納得出来る料理を作れ、客の驚く顔を見られるなら、店が潰れてもいい」なのかも知れない(笑)。

 全料理の解説は長くなるので、特徴的だった料理だけに留めるが、まずは卵黄とトリュフの皿で、卵とトリュフの相性は良しとされるが、食感が違うので意外と料理が難しい、この料理はモワル(骨髄)とセロリラブを加える事で両者の繋がりが良くなり、蠱惑的な一品になった、各素材の質も申し分ない。
 フォアグラの皿は刺激ある胡椒の香りが素材を引き立てる、ここでもトリュフが存在を主張している。自家菜園の野菜料理は前回とスタイルを変えたとの事だが、畑の風景を再現したみたいな印象で、各野菜の味も際立っていた。
 特筆すべきはコンソメで、手島コンソメがハルク・ホーガンをLCCの座席へ押し込めた様な凝縮型とすれば、湯浅コンソメは甘味と芳香を発散する妖艶な印象、籐椅子に座った、映画「エマニュエル」でのシルビア・クリステルみたい(笑)。
 そして肉料理は鹿のロワイヤル、前回が猪ロワイヤルだったので、何故同じ料理?と訝ったが、食べてみて納得した、食べる側に違いを感じて欲しかったのだ、猛々しい若者然とした猪に対し、今回の雌鹿はしなやかな肢体の美少女(笑)、繊細な肉質ながら濃厚に舌に残る味がある。本来「ロワイヤル」は野兎(リエーブル)を使う料理だが、今回の鹿は輸送でストレスを受けた兎を上回るのでは?と思った。
 
 自家製フロマージュは精度を増し、やはり自家製のマスカルポーネを使ったデセールも秀逸だった。この日の料理は瑕疵が全く感じられず、食べ手側の知識と経験値を試す企み等、冷静な知性まで感じさせた、この料理人は熱くなりながら醒めている。
 私は1977年頃からフランス料理店に通っているが、その短くはない経歴の中でも十指に入れたい料理だった、勿論国内外を含めてだ(笑)。

 この料理人を或る人が「無冠の帝王」と呼んだが(笑)、まさにそんなイメージ。二日後に京都五条の河井寛次郎記念館を訪れるのだが、人間国宝(重要無形文化財)等、官からの栄達を全て辞退した、河井の独自な作風にも似た、孤高なアルチザン精神を感じた。
 最後のアンフィージョンを飲み終えたら、ワーグナーの楽劇全曲を聞き終えたみたいな充実感と疲労感、長大で過激な料理内容に比べたら、支払いは驚く位に安い、他店を全て蹴散らす様なこの料理人に、今回も完敗だった(笑)。


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大阪・狭山「讃岐うどん いってつ」(2015関西食べ続け⑤)

 関西三日目は、ただ食べ続けているだけでは能がないので、少しは観光的な事もしようと、大阪難波にある「日本工芸館」に行き、全国各地の素朴な焼物等を見ていたのだが、途中で携帯電話が鳴り出した、着信相手は関西の飲食店主が恐れる「南大阪のドン」からだった(笑)。
「今日の昼は洋食か饂飩、どちらに行きたいです?そう饂飩、それなら狭山の『いってつ』でしょう、今何処におるの?えっ難波、それなら南海電車で1本やさかい、宜しゅう」
 一時間後には片道440円払い、饂飩を食べるために狭山駅に降り立っていた(笑)、「マインドコントロール」なる言葉も頭をかすめたが、まあ時間もあるので細かい事はよしとしましょう(笑)。
 それから車の助手席に乗せてもらって向かったのは、狭山市茱萸木(くみのき)にある、讃岐うどんの店「いってつ」だ。店へのアクセスはよくない、近い駅は南海高野線の金剛駅だが歩くと15分位かかる、近隣住民以外は車でやって来る客が殆どで、このため駐車場は店前と別場所に完備している。

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 入店は13時だったが既に8割の入り、店の真ん中に共有の大テーブル、他に少人数用のテーブル席と小上がりの座敷もある、この日は平日昼だったが子供連れも数組、この後も客が頻繁に入れ替わりしていた。

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 初訪問で全くのアウェー店なので、注文は相客に従う事にした、彼のお勧めは「朝引き淡路鶏むね肉使用とり天ぶっかけうどん釜抜き」(長い(笑))(850円)だそうで、これをお願いする事にした。
 店内はモダンな雰囲気でBGMはジャズと、なかなか非日常感のある洒落たセンスだが、座敷席を希望する家族客も多く、一人で来るより二人以上で来る客が殆どだ。
 蕎麦と違い饂飩は茹でるのに時間がかかる、何事につけイラチ(せっかち)な大阪人だが、皆大人しく出来上がりを待つのは、それだけ饂飩文化が浸透しているからだろう(笑)。

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 やがて運ばれて来たのが、饂飩と鶏胸肉と南瓜の天ぷら、まずは饂飩のツユを一口飲む、昆布とイリコ出汁の香り、そこへ醤油味が溶け合う、おそらく讃岐の醤油ではないかと思うが、深くて奥行きのある味、続いて饂飩を啜るが、歯応えと喉越しが申し分ない。「釜抜き」とは、茹でた饂飩を水で洗わずに使う事で、表面が締っていないので、出汁との相性が良くなるそうだ。カレー塩を付けるのがお薦めの「とり天」は絶妙な揚げ具合、鶏の旨味を逃がさず閉じ込めていて、ご飯のおかずにもいけそう(笑)。前夜の満腹感がまだ何処かに残っていたが、完食しました(笑)。
 電車賃払って来たかいがありました(笑)、とても美味しかったです。東京だと神保町の「丸香」あたりでないと食べられないレベルだと思う、いつも蕎麦ばかり食べているが、饂飩の美味しさに開眼した思いで、近くに住んでいたら通いたい店だ。

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 食後、また車に乗せてもらったのだが、「まだ、お腹に余裕ありますよね?」との寒くなる一言を聞き(笑)、向かったのが堺市内にある「深清(ふかせ)鮓」、持ち帰りの穴子寿司専門で、古くから続いている店だそうだ、お腹一杯ながら此処で買ったのが6個入600円の穴子寿司、この日は夜に重厚長大な多幕物フレンチが控えているので、翌朝のホテルでいただく事にした。

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 時間は前後するがホテルで食べた感想は、食事と云うより軽食おやつ的感覚、一晩経っているが煮穴子はふっくらしていて美味、酢飯がもう少し上質ならなお良かったが、この値段ならまあ納得の味だった。

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 これで大阪に帰れるかなと思ったが、人生はそう甘くない、いや甘いものがあった(笑)。それから行ったのが、同じ堺市内の甘味舗「本家小嶋」、この店の「芥子(けし)餅」は絶品だそうで、堺に来たなら是非買うべきとの事。店は「深清」同様古い建物で「知る人ぞ知る」と云う感じの店構え、中に入ると菓子が並べてあるが、予約しないで買えるのは「芥子餅」と「ニッキ餅」の2種、どちらも1個125円(税込)と割とお手頃価格だ、これも明日の朝に食べようと2個ずつ買ってみた。

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 これも翌朝でも充分美味しく初回で気に入った、堺に行ったらまず買いたい物だと思ったが、これが「芥子餅」なら、大阪のデパートで売っているのは「芥子餅もどき」ではないか?と思った程にクオリティが違う、あまり日持ちしないのが難点だが、堺土産には是非ものです(笑)。

 最後は堺伝統産業会館で包丁見るオマケまで付いた大人の遠足、楽しかったです(笑)、お付き合いありがとうございました。堺東駅まで送ってもらい、なんば駅からホテルへ帰ったらもう16時を回っていた、18時からは次のフレンチが控えている、2時間でお腹を空かせないといけなくなった(笑)。



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大阪・本町「びすとろぽたじぇ」(2015関西食べ続け④)        

 関西食べ続け巡礼第三番札所は、私が「大阪の我が家」と勝手に思い込んでいる(笑)、地下鉄本町駅近くの「びすとろ・ぽたじぇ」を訪問する事にした、2011年の開店以来、年1回訪れているからこれが5回目になる。
 この店は肥田親子とそれぞれの奥様が4人で営む家庭的なビストロ、そう云っても提供されるものは、フランスの正統派直球料理、今までは専門書でしか見る機会がなかった、先人達が作りルセットを残した料理を、実際に見て食べる事が出来、それでいて支払いはビストロ価格と云う、私みたいなオールドファンには堪らない魅力を持った店だ(笑)。

 今回も関西在住の食仲間が参加を表明してくれた事もあり、この店では「グラン・シェフ(以下Gシェフと略す)」と呼ばれている父上に、「ジゴ・ダニョーが食べたい」と、また我儘な注文を出してしまった(笑)。ジゴ・ダニョー‘Gigot-d'agneau’とは仔羊の腿部分を指すが、料理名としては骨付きで1本丸焼きしたものを呼ぶ。フランスではビストロの定番料理の一つだが、日本では羊嫌いの人も居るし、1本焼いても注文が無いと無駄になってしまう、なかなかお目にかかれない料理の一つだ。
 18時半の開始時間にカウンター席に着いた所で、Gシェフから本日の料理について説明があった、
「今日のメインは注文のジゴ・ダニョー、そして1品目は鹿のパテ・アン・クルートを作ったので、これを皆さんに食べてもらいます、2品目の皿だけ選んでください。」と、もう有無を言わせない(笑)、もちろん当方も望む所だ。
 悩んだ末に、これも伝統料理の「鯛のじゃが芋ウロコ焼」をお願いした、出てきた料理は以下のとおり、

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・リエットとバゲット

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・マグロとアボガドの一口タルト

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・ポタージュ

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・鹿のパテ・アン・クルート

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・鯛のじゃが芋ウロコ焼

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・ジゴ・ダニョー

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・エマンセした一人前、ガルニはゴルゴンゾーラ風味のグラタン・ドーフィノワ

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・デセール全部(笑)、まずはミカンのソルベ、牛乳のアイスクリーム

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・(手前から)コーヒー風味のブランマンジュ、モンブラン、パングラタン、グレープフルーツのハーブと赤ワイン煮、皮部分のコンポート、プリン生地のタルト、パウンドケーキ、ガトーショコラ

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・ヴェルヴェーヌのアンフィージョン

 Gシェフが「知り合いがパリに行ったので、パテ・アン・クルート(容器の事)を頼み、ドルイアン(レ・アルにある厨房機器専門店)で買って来てくれたので、久しぶりに作ってみた」と云う「鹿肉のアン・クルート」、とても丁寧な作りで塩分を抑えた優しい味で、非酒飲みの私好み(笑)。でもこれは「明日はうるさい連中が来るので、普段食えない料理を作ってやろう」ではないかと睨んだのだが、そうハッキリ云わないのがGシェフ世代の含羞だと思う(笑)。過去「オテル・ド・ヨシノ」や「コーイン」でも秀逸なパテ・アン・クルートを体験したが、それぞれの料理人を反映して、違いがあってとても面白い、まさに「料理は人なり」だ(笑)。
 鯛の料理は、じゃが芋を薄くスライスし切り身に貼りポワレし、酸味の効いたブールブランソースを合わせる、今時こんな手間のかかる料理を何処もやらないが、食べると記憶を刺激する(笑)、フランス料理ってやっぱり美味しい、ソースあってこそだと、涙腺が緩んでしまう。
 
 そして登場したジゴ・ダニョー、このままこれを抱えて布団に入りたい位(笑)、8~10人分位あるそうだが、心配になって「残った分どうするの?」とGシェフに訊いたら、「明日、サンドイッチにすると旨い」との事、でもこの日は団体の利用があったので、綺麗になったみたいだ(笑)。
 味付けも調理も文句なし、ソースもガルニも的確美味。以前リヨンのブラッセリーで食べた物とは肉質は少し違うが、この日はニュージランド産との事で、その違いだと思う、肉も魚も骨付き調理に優るものはない、家庭ではまず無理なプロの料理人が作るプロの料理だ。
 シェフ(息子さん)の作るデセール類は、どれもホッとする美味しさで全種類制覇した、お腹に余裕があればもう一回りしたかった(笑)。

 お父さんが「どうだ、お前ら旨いだろう、腹一杯食べな」と並べた料理を子供達(我々)が頬張る、何かそんな場面を連想したこの日の料理、いや本気で満腹になりました(笑)。
 そして支払いは驚く位に安い、大阪に住んでいたら毎月いや毎週でも来たい店だ。肥田Gシェフ&シェフ、お気遣いありがとうございました、私はもっと勉強して、次なる特別注文料理を考える事にします(笑)。


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大阪・北新地「天麩羅 ひらいし」(2015関西食べ続け③)

 関西食べ続け巡礼二日目、和歌山駅から紀州路快速に乗って向かったのは、今回もメインの訪問地大阪。余談だが和歌山から有料特急に乗ると「大阪」駅には着かず、天王寺か新大阪で乗り換えないといけないので要注意、東京人は同じ線路を走っているものと思い込むが、違うのですね(笑)。
 大阪駅を降りて、歩いて向かったのが大阪を代表する飲食街「新地」、東京なら銀座のネオン街だが、雰囲気は少し違う、「ママチャリ通勤のホステスさん」がTVで話題になるが、そうした庶民性があって銀座程はお高くとまっていない(様に見える)、特に昼時は「ランチ650円」なんて看板も出ているし(笑)、夜はムニュ10,000円のフレンチ店が、ランチは1,000円と云う落差が激しいのも大阪ならではだ。

 この日の昼に訪れる「天麩羅ひらいし」は、その新地の真ん中にある雑居ビルの3階、東京より安いとは言え、家賃を聞いたらたぶん心筋梗塞になりそうな場所だ(笑)。此の店を訪れるのは2年ぶりで、大阪では希少な天ぷら専門店、それも昼営業しているのはありがたい。私の年齢になると1日2フレンチは正直キツイ、そんな時に別ジャンルで、フレンチ&イタリアンと同等以上にレベルが高い店があるのは、日本ならではと思う。
 引戸を開け店主の平石氏に挨拶し、掘り炬燵式のカウンターに着席、白ワインをお願いして優雅な天ぷらランチが始まった、

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・八尾牛蒡の煮浸し

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・塩昆布レタス

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・車海老の頭

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・車海老

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・車海老を大葉で巻いて

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・琵琶湖のモロコ

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・たらの芽

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・筍

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・メゴチ

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・蕗の薹

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・白子(トリュフ塩で)

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・行者にんにく

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・白魚

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・白いか

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・さつま芋

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・芝海老かき揚げの天茶

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・フルーツ(苺とマンゴー)

 「こんなに出して、大丈夫なの?」と、こちらが心配する位に次から次へと秀逸な天ぷらが出てきた(笑)。
 季節は早春、生きもの達が活動を始める時期だ、この漲る生命力を衣で包んで凝縮する、それをいただく訳だから、身体に活力が湧いてこないとおかしい(笑)。
 前回も感じた事だが、特に野菜が素晴らしい、たらの芽、筍、蕗の薹などは生のままではまず食べられないが、油をくぐらせる事によって、芳香と美味に劇的に変化する。そして約30分揚げ続けた「さつま芋」、これが絶品だった、甘いだけでなく儚いまでの歯応え、舌に残る繊細な後味、これを平石氏の発案でブランデーを付けながら食べる、長く記憶に残る一品になりそうだ。「もう、お腹一杯」と思っていたが、最後の「天茶」を一口啜ると、その美味しさから瞬時に完食、お代わりしたくなった位(笑)、甘味の熊本産と聞く大ぶりの苺が秀逸、これは変に手を加えたくない。
 
 店主の平石氏は日本料理出身、食べ歩きが大好きでワインへの造詣も深い、修業中に江戸前天麩羅に出会い、「自分の進むべき道はこれだ」と開眼し、大阪では珍しい専門店を独立開業した。今回2年ぶりにお会いして、以前より話術が磨かれた印象を受けた、「関西では、料理人は料理に加えて、客と喋れて一人前」と、これは料理人に聞いた話だが、どうやら海千山千の客達の相手で、鍛えられ進化したみたいだ(笑)、最近では外国人客も増えているそうだ。
 大阪で正統派天ぷらを食べるなら、まずお勧めしたい店だ。

 「フレンチの合間に軽くランチを」と考えていたが、この決して軽くない満腹感(笑)、夜のビストロ訪問が心配になったが、とりあえずはホテルまで歩いて、カロリーを消費する事にした(笑)。
 

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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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