最後の晩餐にはまだ早い


代官山「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」(2015年3月) 

 先日の関西食旅行でも感じたのだが、最近レストランにおいて「デザート」の占める重要度が増しているのではないかと云う事。これは幾つかの理由が考えられるが、フランス料理に関してなら、アラカルト料理提供店が減り「おまかせメニュー」、今風に言えば「カルトブランシュ」の形態を採る店が増えた事に加え、全体的に客の飲酒量が減っているのも関係あると思う、更には若手料理人達のレベルが向上し、結果各店の料理に特徴差が少なくなっている事も大きいのではないか。
 最後のデザートの出来で、その日の食事全体の印象が決まってしまうのだ、マラソンレースに例えれば、ずっと数人で先頭集団を形成していたが、ゴールがあるスタジアムに入り、トラックの走力で勝敗が決まるみたいな感じだろうか(笑)。
 こうなると店側もデザートに力を入れる事になる、レベルを上げるための一番の近道は、料理人の他に優秀な専任パティシェ(パティシェール)を雇う事だが、当然相応の人件費がかかってしまう、それなら「デザートを作れる料理人」または「料理を作れるパティシェ」が居たら、こんな便利な事はない。これから料理人を目指すなら、まずは製菓から入るのが将来重宝され、独立するに際しても有利になるかも知れない。
 本年3月一杯で退店する高橋料理長時代最後の訪問になる、代官山「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」での食事後、そんな事を考えた。

 実は前回の訪問で「最後」と思ったのだが、どうしも再々訪問したくなり、有休を貰って平日ランチに駆け付けた(笑)、まずは当日の料理を紹介したい、全12品の昼夜共通のムニュになる。

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・米の泡をまとった真鯛のライムマリネ

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・ワカサギの牛蒡フリット

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・兵庫産岩牡蠣、トマトのジュレ

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・藁で燻した鰆 山菜と筍、蕗の薹のブールノワゼット

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・''薔薇''ビーツのチュイル フォアグラ

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・新玉葱とヤリイカ

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・モリーユ茸とホワイトアスパラのクレープ、プチポワのブルーテ グラストリュフ、ポーチドエッグ

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・萩産甘鯛のウロコ焼き、桜海老のビスク パスティス

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・北海道酒井さんのジゴダニョーロースト、同腿肉のメンチカツ、ジュ・ダニョー ロックフォール

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・苺とハイビスカス ヨーグルト

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・蜜柑のヴァシュラン

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・トンカ豆のブランマンジェ、塩キャラメルのシューアラクレーム

 高橋料理長は料理人出身だが、パリではパティスリーでの勤務経験もあり、「デセールを作れる料理人」だ、この経験は料理にも影響していると思う。まず何と云ってもドレッサージュ(盛付)が綺麗だ、それも二次元ではなく、高さもある彫塑的な美しさが表現出来る、一例として薔薇の花を模したフォアグラ料理だが、日本のそれも街場のレストランで、ここまで美しく料理出来る料理人を他に知らない、見た目だけで美味しくなければ評価できないが、勿論食べて美味しい。
 そして料理が構築的だ、以前の記事で緻密且つ構成力のある高橋料理をモーリス・ラヴェルの音楽に例えたが、その代表作「ボレロ」みたいに、料理はアミューズからメインの肉料理まで、ずっとクレッシェンドで上昇し、そしてデセールで華麗なフィナーレを迎える、その持って行き方が巧みだ。

 特に印象に残った料理を挙げておくと、まるで土佐料理の「鰹のタタキ」みたいな鰆料理、薫香と絶妙な火入れが見事。新玉葱と烏賊は「白+白」の組合せが斬新で、双方の甘味の相性が抜群だった。続くモリーユとアルペルジュを巻いたクレープは、香りを閉じ込めるために使った筈だが、これもパティシェ的発想だなと思った。国産ジゴ・ダニョーは繊細な美味しさ、大阪「ぽたじぇ」の骨付一本ローストとは対照的な調理だが、「どちらも美味しい」としか言い様がない(笑)。
 そして高橋料理を何より印象付けるのが秀逸なデセール群で、素材として難しい果物を上手く使い、「果物以上の果物デザート」にしている。
 昼間の窓際席で、自然光に映える美しい料理とデセール、食べるだけでなく画像を撮っていても楽しくなった(笑)。

 友人が今年パリに行き、現地で話題の日本人料理人のフランス料理店を数軒回って来たが、帰国後言っていたのが「今は東京の方がいい料理人居るのでは?」だった(笑)、多分そうだろうと思う、この料理なら、パリに持って行っても十分通用するし、おそらく星1つは貰える筈だ。
 退店時に挨拶のため階下へ降りてきた高橋氏と少し話をしたが、今年中に都内で独立予定だが場所等は未定との事だ、まずは海外へ「才能流出」しない事を喜びたいが、どんな店になるのか今からとても楽しみだ、とりあえずは6年間お疲れ様でしたと言いたい(笑)。


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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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