最後の晩餐にはまだ早い


神田錦町「かつぎや」

 担担麺(担々麺や坦々麺ではなく、こう書くのが正しいそうだ)の発祥は、四川料理の本場中国四川省成都で、行商料理人が天秤棒に道具をぶら提げ、担いで売り歩いたのが起源とされている。「担担」とは運ぶために使う天秤棒を指し、それを使って売る麺だから「担担麺」と呼ばれる様になった。
 その担ぐ事を店名にしたのが、神田錦町にある「かつぎや」だ、店名から判るとおり担担麺をメイン商品にしている。
 店の場所は駿河台交差点と小川町交差点の中間位、靖国通りから一本大手町寄りの道で、神田警察署の裏あたりになる、店主は担担麺の名店として知られる「希須林」出身で、2009年8月に現在地で独立開業したとWEB情報にある。
 この店のありがたい処は、昼から夜まで通し営業している事で、この日も訪れたのが午後3時と云う中途半端な時間帯だが、他の飲食店が中休みに入っている中で開いているのは嬉しい。

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 店名は「神保町かつぎや」となっているが、住居表示は神田錦町で、都営地下鉄の駅も神保町より小川町の方が近い筈だが、まあ細かい事はいいでしょう(笑)。
 入口扉を開けると右手はカウンター席と厨房、左手には食券自販機がある、初回はベーシックな汁ありの「かつぎや担々麺」(850円)に決め、ライス(100円)もお願いする事にした。

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 席に座ると、頭上には「新じゃがバター」や「旨辛もつ煮」と書いた紙が下がっている、担担麺専門という訳ではなく、特に夜はこうして酒肴も出しているみたいだ。厨房内は男性一人で、食券を出すと「辛さはどうしますか?」と訊かれるが、「普通」でお願いした。

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 この店に限った事ではないが、最近ラーメン店で増えているのが、水のセルフサービス、最初から卓上にピッチャーとグラス(割れ難い物)を置き、客は勝手に水を注いで飲む、人件費節約で仕方のない事なのだろうが、ちょっと味気なくて寂しさも感じてしまう(笑)。

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 やがて出てきたのが担担麺、赤い唐辛子分の多いスープの中には割と太目の麺、野菜はモヤシとニラで注文毎に炒めていた、昔の街場の中華料理店では、麺に乗せる野菜は大抵炒めていたものだが、最近の麺専門店では回転を良くするためか、茹でるだけの店が殆どだ、私は旧い人間なので、こうした昔風の炒めた野菜は好みだ(笑)。挽肉はあらかじめ味付けした物みたいで、他に茹で玉子半分、炒り胡麻が多目に振りかけてある。
 まずはスープを一口啜ると、粘度があって胡麻の香りが漂う、それから辛味がやって来る、醤油味も結構感じ何処か懐かしい味、私が子供の頃は担担麺を扱っている店はなかったが、それでも何故か昭和の記憶を呼び覚ます(笑)。やや太目の麺は少し縮れがありラーメン専門店等でよく使われるタイプ、炒めた挽肉は甘辛い味で、どうやら懐かしさを感じたのはこの味だと思う。
 スープ、麺、具のバランスはなかなかいい、全体的に尖った味ではなく、優しくホッとする印象で、毎週でも食べたい味だ、炭水化物過剰摂取は危険だが(笑)、ご飯も美味しくスープとの相性も良かった。

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 初回で気に入ったのですぐに再訪し、汁なし(850円)を注文してみた、本場四川省では担いで売っていたので、本来はスープの無い物が「正調」になる。日本風のスープが多い担担麺は、「四川飯店」の陳健民氏の発案と聞くが、これには異説もあるそうだ。最近の東京では汁なしの方が好まれているみたいに感じる。
 この店は「汁なし」と云っても少しスープが入っているので「半汁」みたい(笑)、これも悪くなかったが、個人的には汁ありの方が好みか。

 神保町の書店街からも歩いて行けるので、近くに来た時にはお勧めしたい、また以前ブログで紹介した「雲林房・秋葉原店」もそう離れていないので、胃袋に自信がある人は、2店制覇する担担麺散歩に挑戦してみては?味も刺激感ある「雲林房」に対し、穏やかさの「かつぎや」と、対照的でとても面白い(笑)。



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外苑前「フロリレージュ」(2015年4月)

 今年の1月、「フロリレージュ」旧店舗最後の訪問時に、食後挨拶のため店外へ出てきた川手料理長が、「自分のやりたかった事を表現する、全く新しい店になります」と、強い抱負と自信を語っていたその新店舗が、遂に3月19日にオープンした。
 私は予約開始日に繋がらない電話をかけ続けて、やっと希望する日の夜席を確保、そして待ちに待った「その日」がやって来た(笑)。
 新店舗の場所は国道246号の北側、地下鉄外苑前駅からラグビー場へ向かって上り、細い路地を左へ折れ直進、熊野神社隣に出来た新しい商業ビルの地下。ドライエリアに繋がる階段を降りると、オープン祝いの蘭の鉢植えが見える、入口が判らず文字どおり戸惑っていたら、自然と内側からドアが開いた(笑)。

 新しく出来たレセプションで名前を告げ、ソファーで一旦待機した後にダイニングに案内される、これは国内外の高級店で採用している方式、茶会と同じく本席に入る前に客に「待つ」時間を与えて、別世界へのトリップを感じさせるやり方だ、狭かった旧店舗ではやりたくても無理だった(笑)。
 不思議な自動ドア―が開くと、そこが噂に聞くメインダイニング、テーブルトップに石?を使ったカウンター席が、フルオープンキッチンを取り囲む「コ」の字型に配置されている。席数は16で、入店時は気付かなかったが左手奥に個室も備えている。席間は広く天井も高いので、少々圧迫感があった旧店とはかなり雰囲気が違う。
 目の前では料理人達が作業を進めている、手前が配膳台とコールドセクション、奥にレンジ類を配置し、洗い場は客から見えない様ドア外にしている。場の第一印象は「川手工房」、そして料理がスタートすると「川手劇場」になった。

 カウンター上には本日提供されるムニュが記された小さな紙が置いてある、料理名ではなくメッセージと食材名があり、それに沿って以下全13品の画像を紹介したい。

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・投影    ハコベ 人参芋

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・敬意    ホワイトアスパラ

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・変遷    椎茸 鴨

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・繋がり   烏賊 春菊

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・駒場「ル・ルソール」の蒸しパン

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・風土    筍 ヨード

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・分かち合う 緑苺 (北海道産仔羊)

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・本質    海老

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・記憶    鱒 クレソン

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・破壊と創造 スッポン 緑茶

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・原点    仔兎

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・用の美   日向夏 ヨモギ

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・再生    ミルク

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・不朽    卵 米

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・茶     フレッシュハーブティー、煎茶、国産烏龍茶からの選択

 舞台上手にあたる右奥のストーブ前には川手料理長、火を使う調理が済むと配膳台で料理人達がドレッセを開始、その皿を料理人が運んで料理の説明をする、私は未訪問だがこのやり方は「NOMA」が始めたと聞く、今までは裏方で作業していた料理人達が、舞台へ出てスポットを浴び台詞を発する事になる。
 料理にはそれぞれテーマがある、例えば「分かち合う」と名付けた料理が出る前には、調理された仔羊肉の塊が登場し、「これを皆で分かち合います」と説明がある。「再生」では被災地岩手の牛乳を使用し、復興を祈念したとメッセージがあった。
 全体に国産食材を多用し、和食的なテイストを感じる料理もある、前店を知っている客の中には「フランス料理から和食になった」と思う人は居ると思う、カトラリーが箸ならそう云っても通用するかも知れない、私自身の感想は「もう国やオリジンに拘らなくていいのでは?これは『川手料理』で充分完結している」だった(笑)。

 各料理に触れると長くなるので、全体的な印象を記すに留めるが、一言で云うと「川手劇場の第二幕開場、なお上演時間は3時間半」(笑)。
 シェークスピア時代の劇場みたいに、客は観ているだけでなく、その場の一員として参加する、それにはまず驚いて呆れる事(笑)、そして五感を研ぎ澄まして、料理人が発する直球メッセージを、身体の正面で受け取る必要がある。
 客側からキッチンが劇場舞台に見えるなら、キッチン側からの客席の見え方を想像すると、丁度ダ・ヴィンチ描く「最後の晩餐」の構図になる筈、そうすると今日のイエスは誰だ、ペテロは誰だと当て嵌めるのも面白い、因みに私が座ったのはユダの席辺り、銀30枚は入っていないが、思わず財布を握りしめたくなった(笑)。

 オープンキッチン内では、若い料理人達とサービス陣が見事な動きの連携を見せる、聞いて不愉快な叱責や命令口調の言葉は一切無く、これだけのオペレーションを僅か一ヶ月で作り上げた川手料理長は、今更ながら凄いなと感心する、「悪いオーケストラはない、悪い指揮者がいるだけだ」と云う有名な言葉を思い出した(笑)。
 ディネの支払いは一人2万円以上、安い金額ではない、でも店を出た後の充足感を考えると決して高くはない、「少年の心と大人の財布を持った大人」にこそ行って欲しい店だ。
 この記事を読んで新しい「フロリレージュ」に興味が湧いたら、今すぐ電話する事です、そして空いている日があったら迷わず予約を、もしその日に仕事が入っていたら、仕事はキャンセルすべきです、人生にはもっと大事なものがある筈(笑)。

 ドリンクペアリング等まだ書きたい事はあるが、初回はこの位に留めたい、勿論次回の予約を入れたが、暫くは「フロリレージュ症候群」になりそうだ(笑)、私にとって今年の東京レストラン界最大の「事件」だと云える、もう今から次の訪問が待ち遠しい。

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西片「石井いり豆店」

 文京区西片にある「石井いり豆店」の創業は明治20年(1887)、因みにこの年に何が起きたかウィキペディアで調べたら、・ヴェルディ「オテロ」の初演・所得税法公布・中央気象台発足・ヴィクトリア女王在位50年式典等がある、同年に生まれた著名人は、バーナード・リーチ、アルトゥール・ルービンシュタイン、マルク・シャガール、ル・コルビュジェ、折口信夫、中山晋平等がいる、「シャボン玉飛んだ」の中山晋平が生まれた年に始まった店が、現役で続いているのは奇跡的だ(笑)。

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 此の店を利用する様になったのは比較的最近で、職場から近く店の存在は知っていたが、店舗が古び暗くて入り難い雰囲気があり、いつも前を素通りするだけだった。ところが「何か適当な手土産を売っている店が、自分が買いに行ける範囲にないか?」と、ネット上で調べていたら、店の豆菓子を推奨している記事を見つけたので、ある日思い切って入店し、豆菓子類を数点買い土産に持って行った処、予想以上に喜ばれたので、それ以来私の定番になった(笑)。2月の関西旅行時もこの店の菓子を持って行ったのだが、概ね好評だったと思う。

 店の人に聞いたのだが、創業当時は店前の言問通りは今の半分位の道幅で、その道に沿って建っていたが、道路拡張に伴い現在の位置にセットバックしたそうだ、残念ながら建物自体は創業時のものではなく、昭和になってから建て替えたらしいが、それでも店内には昔の商家の雰囲気が残っていて、昨年札幌「開拓の村」で見た、明治開拓時代の北海道商家にも似ている。実際住んで居るかは不明だが、住居と製造と販売が同じ場所で、店頭にも機械がありその場で豆を煎っている。

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 店内には商品である豆菓子が数種類平置きしてある、そのレイアウトが簡潔で綺麗、色合や季節感を考えてあり見て楽しい、この画像は2月に撮ったものだが、一番目立つ場所には雛あられが、この少し前には豆まき用の豆が並んでいた。豆菓子がメイン商品だが、他にも「かりんとう」や「あられ」等も置いてある。

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 毎回何を買おうか迷うのだが、「お土産にするので」と云うとキチンと包んでくれる、この包み紙がシンプルながら、「江戸の粋」を感じさせてくれる洒脱さで、とてもいい(笑)。

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 この日買ったのは、まずは「いそふね」と名付けられた豆菓子、誰かが「たこ焼きの味がする」と云っていたが(笑)、海苔と青海苔の香りが特徴的、個人的にはこの店で一番好きな商品。

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 豆ではないが「かりんとう」、今の東京では「麻布かりんとう」や「日本橋錦豊琳」みたいなお洒落系かりんとうが人気だが、それらとは違い昔ながらの駄菓子的印象、私が子供の頃食べていた、上品ではないが遠い記憶を呼び覚まし笑顔になれる味だ(笑)。

 テナント料、人件費、原材料費が上がり続けている今の東京では、レストランに限らず、食べ物を扱う店の入れ替りが激しく、10年どころか5年持てば「長く続いている」と云われる(笑)、それが120年以上続いているのは、本当に凄い事だ。
 「食べ物屋と屏風は広げると倒れる」と云うが、この店は支店も出さずデパートにも出店せず通販もやっていない(筈だ)、商品を買うには実際に店へ行って選ぶしかない、昔ながらの販売方法を貫いているが、それが長続きした何よりの理由だろう、人が食べる物は、その食べ物を作っている人から買うのが最善の方法だ。

 この店がある言問通りの並びには、地味ながら佳店と呼びたい飲食店が並んでいる、根津方面へ向かう隣にはオムライスで知られる「ツムラ」、更にはブランジェリーの「アトリエ・マヌビッシュ」に、ブログでも紹介したアップルパイの「マミーズ」がある。反対方行の白山通りへ向かうと、暴走族みたいな名前の人気ラーメン店「信濃神麺烈士洵名」等があり、隠れたグルメスポットだ。本郷台地を上がると、昔から「西片町のお屋敷街」と呼ばれる界隈になる、東大に近いので学者や医師が多く住んでいて、彼・彼女達に支えられた店が存続してきた、店と客は切り離せない関係がある。
 この近辺に行く事があれば、お土産購入にお勧めしたい店、ただし日曜・祝日が休みなのでご注意を。


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千石「モンプチコションローズ」

 格安牛丼チェーンの過酷な労働実態を表す言葉として、すっかり有名になってしまった「ワン・オペレーション」、略して「ワンオペ」、その店舗の労働全てを一人だけで回す事を呼ぶが、悪い意味で使われる事が多い、ところがこのワンオペ、東京のフレンチやイタリアン、更にはモダンスパニュッシュやバル系の店で増加している、理由の第一は飲食店における深刻な労働力不足だ。
 時給1,200円出してもアルバイトすら来ない、来たとしても長続きせずにすぐ辞めてしまう。「そして誰もいなくなった」みたいに、朝来たら料理人もサービスも消えていたと云う店の話も聞いた、オーナーとしたらこれは堪らない。新しい人間が来てもまた最初から教えないといけない、その繰り返しでは疲労感とストレスが増すだけだ。
 もう「他力」をあてに出来ないなら、夫婦二人いや自分一人だけで店をやる、料理人兼サービスでも回せるよう、開店当初からワンオペを想定した店造りをする、こう考える料理人が、若い世代に増えて来ていると感じている。

 この日初めてランチタイムに伺う事になった、文京区千石のフランス料理「モンプチコションローズ」もカウンター8席だけのワンオペ店だ、店主は市原氏で、元々千葉市内で同じカウンターフレンチを営んでいたが、2012年に現在地に移転して来た。
 店の場所は都営地下鉄千石駅を出て巣鴨方面へ向かい、左側の道を入って、小さな商店街の中にある、間口の小さな店なので気を付けないと通り過ぎそうだ(笑)。

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 扉を開けたら目の前がすぐカウンターだった、店主に予約の名前を告げて入口側の席に座らせてもらう。
 ランチメニューは3,000円(税、サービス料別)のおまかせ一種のみで、肉料理が豚か仔羊の選択、ここは店名に因んで豚を選ぶ事にした(笑)。
 以下当日の料理、

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・焼いたメレンゲの中には蟹のムース

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・自家製ベーコンとヤリイカ、食用花

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・自家製バゲット

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・千葉県産豚ロースのロースト

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・変わったデザート用カトラリー

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・自家製シフォンケーキ、飴の球体の中に苺とキウイ、牛乳のアイスパウダー

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・飴を割った中身

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・自家製キャラメルポップコーンと豚の頭を模したホワイトチョコレート

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・エスプレッソ

 事前情報では「ガッツリ系」の料理かなと勝手に想像していたが、アミューズ、前菜&デセールは創作的で繊細な料理だった、他店で見た記憶もあるが、焼きメレンゲのアミューズは丁寧な作り、続く自家製ベーコンの出来が秀逸且つ烏賊との相性も抜群で美味しい。メインの豚ローストは量も塩使いも男前(笑)で、結構食べ応えがあり、ガルニのガルバンソと野菜のトマト煮も良かった。
 面白かったのがデセールで、自店で焼いたシフォンケーキに、飴細工で球体を作りその中には苺とキウイを入れた物、更にはパコジェットで作ったミルクパウダーを添えると云うかなり凝ったもの。その後に出たキャラメルポップコーン、豚の頭のチョコも自家製、そしてバゲットまで粉から練って焼いているそうだから凄い。
 この料理人は人任せにするのが嫌いなのだろう、何でも自分がやらないと気が済まず、納得のいく仕事をするために席数を減らし、自分のスタイルを判ってくれる客だけに料理を提供したい、そう思う人なのだ。

 市原料理長の風貌はスキンヘッドでTシャツ姿、一見強面でちょっと怖い(失礼)が、調理の合間に話してみると結構気さくに喋ってくれる、料理には熱い人なのだなと云うのは、話していて判った。
 この日は私の他に男女カップルが1組、後で近くの六義園で桜を観てきたと云う中年女性3人組もやって来た、一斉スタートではないし、8席埋まると一人では大変だろうと思うが、この日見ている限り、あまり停滞もなく料理を出していた。
 ワンオペでやるには仕込み作業も大事だが、同時に料理の順番を考える応用力等、かなり知力を使う事になる、これは頭が良くないと出来ない(笑)。例えば将棋の達人が将棋盤を三台使って三人を相手にするみたいな感じだろうか、通常のやり方でワンオペ営業の料理人は、認知症になり難いのではないか?反対に客側に一斉スタートを強いる店の料理人は、早く呆けるかも知れない(笑)。

 奥に座ったカップルは何と、「夜も空いていますか?」と確認して同じ日のディナーを予約していた、その間は桜を観ているそうだ、地方から来た客ではなさそうだし、これは凄いと思った。まだまだ私の知らない名店や凄いフレンチフリークが居るみたいだ、人生は短いが食べ歩きの道は終わりがない(笑)。
 レストランに「痒い所に手が届く」みたいな、ベタなサービスを求める人には向かないが、作り手と対面で対決するみたいな、ライブ感溢れる料理に興味のある人や、これから一人で店を始めようと思っている人は、一度行ってみるのをお勧めしたい店だ、参考になる事は多いと思う。
 


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竹ノ塚「洋食かちゃくり」※閉店されました

 たまたまWEB情報で知ったのが、昨年2月にオープンした、足立区内竹ノ塚駅近くの「洋食かちゃくり」、料理画像を見ていて「良さそうじゃないか?」と訴えるものを感じたので、天気も良く風もなかったこの日の昼に、我家から自転車を飛ばして行ってみる事にした。
 変わった店名は、厨房でコックさん達が使う言葉だそうで、フライパン等の中にある肉等をひっくり返す作業の事、「おい、それをかちゃくってくれ」みたいに使うらしい。WEB情報では、店主は何処かのホテル内厨房でフランス料理を作っていて、独立に際し地元の足立区で洋食店を選んだとある。
 店の場所は、東武伊勢崎線(スカイツリーライン)竹ノ塚駅東口を出て北へ向かい、都営アパートの並ぶ住宅地にある、ちょっと判り難いが、店の裏側には塩ラーメンで有名な店や、近くには「シロノワール」で有名な「コメダ珈琲店」もある。

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 店の外装に木をデッキ状に縦に並べ、フライパンに「か」の字を入れたシンボルマークが面白い(笑)。

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 入口は中が見えず、ちょっと入り難い雰囲気だったが、思い切って中に入ってみた、11時半の開店直後ながら、既に2組着席していて、店主の奥様と思しき女性に、一人である事を告げると、「こちらでどうぞ」と、入口側の2人掛け席に案内された。店内は思っていたより小さい、カウンター席はなく椅子席だけで10席、一部ベンチシートなので詰めてもあと1席位か、奥が厨房で店主らしき中年男性が一人で料理を作っている、開店してまだ1年なので店内は綺麗だが、内装等はわりと簡素な造りだ。

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 卓上にあったランチメニューには「本日のランチ」が2種類、他に単品料理が数種あった。見ていて気になったのが「スペシアル」(1,500円)の文字、フランス語風発音表記だ(笑)。サービス担当の奥さんに「これは、どんな料理ですか?」と訊いてみたら、「海老フライ、唐揚、コロッケ等を一皿に盛ってあり、『大人のお子様ランチ』みたいなものです。」との答えだった、「大人のお子様ランチ」の言葉に反応してしまい、思わず「それ、お願いします」と云ってしまった(笑)。

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 まず運ばれて来たのが、温かいトマトのスープ、少し白っぽいので牛乳を加えてある?油脂分や塩気が強くなく優しい味でホッとする美味しさだった。
 このあと少し待つ事になるが、やがて登場したのが、この「大人のお子様ランチ」、ちゃんと店名を書いた旗が立っていた(笑)。

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 旗を外した皿は、右からハンバーグ&ドミグラスソース、鶏の唐揚、シラスのコロッケ、海老フライ、ハラミステーキ、付合せはレタスと人参、大麦のサラダだった。

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 まずは洋食店の基本とも言えるハンバーグから食べてみるが、小さ目ながら練り肉の美味しさと丁寧に作ったドミグラスソースは好印象、洋食店はこのドミグラスソースと、魚介フライに添えるタルタルが駄目だったら如何し様もない、その点ではこの店は合格だ(笑)。
 鶏唐揚、珍しいシラスを使ったコロッケ、海老フライもキチンとした下仕事が感じられるいい出来、ハラミステーキも悪くはないが、他とのバランスでこれはなくても良かったか(笑)、付け合せの麦サラダが秀逸だった。洋食店はご飯も大事だが、この店のご飯は質も炊き方もいい。

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 これで終わりかと思ったら、コーヒーカップに入ったミニデザートとコーヒーが付いてきた、低廉なランチでもこれを付けるのは、フレンチ出身料理人の意地みたいに感じた(笑)、客にとっては嬉しいサービスだ、この日は練乳と苺を使ったものだった。

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 この内容で1,500円、値段を考えればそんなにいい食材は使えない筈だが、十分満足できる内容で、料理人の確かな技術と経験を感じさせてくれた。店内は何時の間にか満席になり、その後も客がやって来たのだが、食事を終えた先客が自発的に席を空けた、こうした処が下町ならではと思う(笑)、私以外はリピート客みたいに見えた。
 実はこの日、店を探すのに道を迷ってしまい、入店時に奥さんに「道に迷いました」と告げていたのだが、退店する時に「この次は迷わないで来られますよ」と云われてしまった、でもこうした親しみを感じさせる一言はいいなと思う(笑)。

 独立するに際し、都心ではなく自らの地元を選び、これから地域に密着して続けて行こうとするのは、同じ区民として嬉しいし、夫婦二人だけで回せる小規模な店にしたのは、今の時代を考えると賛成だ、我家からだとちょっと距離はあるが、また来てみたい店だと思った(笑)。 


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麻布十番「グリグリ」(2015年3月) 

 この日の夜は「グー・ド・フランス」の特別メニュー狙いで、私が現在注目しているフランス料理店の一つ、麻布十番「グリグリ」で友人達と集まる事になった。
 「グー・ド・フランス‘Goût de France’」とは、フランスの美食とワインを世界に紹介するため、「1,000人のシェフが1,000のメニューを世界5大陸で」をスローガンに、3月19日に世界各地で「フランス式ディナー」を提供するイベント、仏政府が音頭を取りアラン・デュカス他が名を連ね、世界各地の料理人に呼びかけて今年実現した。
 背景にはスペインや北欧、更には日本やアジアの料理人達が台頭し、「レストランランキング」等でも、フランスが料理界の頂点ではなくなりつつある事に危機感を募らせたのが大きい、日本国内では60店以上が参加表明、この「グリグリ」もその一つだ。他の参加店を見ると、フランス人料理長や過去フランスで働いた料理人の店が多いみたいだ。

 店には集合時間の19時少し前に到着、今日はどんな料理が出るのかは知らされていなかったので楽しみにしていたが、これが予想以上の内容だった、まずは以下に画像を紹介したい。

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・アミューズ:トリュフとフロムダンベールのグジェール、

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・(同)トマトのデクリネゾン

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・(同)プチ・ポワとキャビア 新玉ねぎのムース

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・冷前菜:人参、オレンジのジュレ、ローリエ風味のヨーグルト、長胡椒風味

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・温前菜:オランダ産リ・ド・ヴォーのフリカッセ、モリユとアスパラガス、焦がした粉のニョッキ、シャルトリューズ風味

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・甲殻類料理:ブルターニュ産オマール「プロヴァンスへの旅」

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・肉料理:ラングドック産コート・ド・ヴォーの骨付ロースト、そのジュ

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・フロマージュ三種

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・デセール:ホワイトチョコレート、苺、ルバーブ、シャンパーニュのムース

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・ミニャルディーズ:ショコラのトリュフ

 あとで伊藤料理長から、「フランスらしい伝統的な料理をお出ししました」と説明があったが、特に温前菜以降はこれまで「グリグリ」に抱いていたイメージとは、少し違う料理だった。
 私が毎年の様にフランスを訪れていたのは、1997年から2009年まで、ユーロ圏統合により、通貨がフランからユーロに変わった時期だが、その前後に主に地方の名店で味わった料理を思い出した。シャニー「ラムロワーズ」のジャック・ラムロワーズ、ソーリュー「ラ・コートドール」のベルナール・ロワゾー、ラ・ロシュ=ベルナール「オーベルジュ・ブルトン」のジャック・トレル等、今でも前菜からデセールまで何を食べたか思い出せる、印象深く芯があって力強かった彼等の料理、あれだった。
 リ・ド・ヴォーはいい食材に出会えないので、日本ではまず注文しない料理だが、このオランダ産は上質でフランスで食べた物と遜色ない。「ブルターニュのオマールがプロヴァンスへ旅をした」とのイメージで作ったオマール料理も秀逸、続くコート・ド・ヴォーも、ヴリナ氏が健在な頃のPARIS「Taillevent」で味わった料理に近かった。ムニュの中にフロマージュが含まれるのも、ちょっと前のフランススタイルだ。
 
 ここまで正統派でトラデショナル且つまともな料理は、現在では和歌山か大阪上本町でないと味わえないと思っていただけに、東京の麻布十番で再会できた事が驚きだった(笑)。「やられた」と思ったし、「こんな料理が食べたかったのだ!」と思わず唸りたくなった(笑)。
 これは想像で書くのだが、伊藤料理長も私とあまり違わない時期に、フランスの伝統料理とフランスで初めて出会い、美味しさに驚嘆した経験があり、当時の印象とリスペクトを表現したかった、この料理メッセージはそれではないかと思った。
 「やっぱりフランス料理は美味しい」との認識を新たにすると共に、こうした料理を料理人が作らなくなり、客が食べなくなったのは何故なのだろう?と思いを巡らせてしまった、ライト&ヘルシー嗜好、「重厚長大」より「軽薄短小」を求める時代だからか、肉とソースとガルニを作為的に3皿に分けたみたいな、意味不明なモダン料理を見るにつれ考える事多いが、「どうだ、こっちの方が旨いだろう」と云う説得力は、やはり伝統料理側にありそうだ。

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 実は私はレストランで開催される「フェア」の類は、値段が高くなる事や客が多い事等の理由でまず行かないのだが、この日は行って良かったと思った、原価率だけ考えても凄い内容だ(笑)、来年も開催されるなら、また「グリグリ」で集まりたいものだ。
 懐かしくて美味しく、過ぎ去った日を懐かしんで涙腺が緩む料理でした、「Vive La France!(フランス万歳)」(笑)。


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六町「ベーカリーショップ ルーシー」

 ブログで取り上げた事のある、つくばエクスプレス六町駅近くのベーカリー「にこにこパン」がリニューアルし、内装を変更したのに伴って、店名も「ベーカリーショップ ルーシー(BAKERY SHOP LUSY)」になった。
 リニューアル後に訪れて、店主の加藤氏から話を聞いたが、今迄はオーブンのある厨房とレジが離れていたのを統合、店内の展示スペースもまとめて、動線を少なくしたとの事だ。

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 2010年の開店時以来、加藤氏とペアでパンを作っていた女性が寿退職する事になり、これからは夫婦二人でやって行こうと決め、パンの種類や焼菓子類も少し減らしたみたいだ。
 店名はチャールズ・M・シュルツ作「ピーナッツ」に出て来る女の子の名前、これに因んでか、店内は1950~60年代アメリカ的な感じを出そうとしている(笑)、今迄はどちらかと云うと子供向けな印象もあったが、少し大人的でオールディーズな雰囲気に変わった、加藤氏が「ピーナッツ」ファンとの事だ(笑)。

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 一番心配だったのは、リニューアルによって、パンの味、値段が変わってしまわないかと云う事だったが、買って食べてみた限りにおいては変わっていなかったので安心した、最近購入したパンを紹介したい。

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・ライ麦パン(180円)
 旧店では販売していなかったライ麦パン、個人的には作ってくれるのは嬉しい、食事用に最適。

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・ツナ&キュウリ、ポテトサラダのサンドイッチ(240円)
 何と云ってもベースのパンが美味しい、これを食べてしまうと、コンビニサンドはちょっとパスしたい(笑)。

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・カレーパン(160円)
 中身のカレーがいい、うずらの茹で玉子入りが面白い(笑)。

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・アスパラガスと桜海老のピザ(200円)
 最新作、テーマは「春」か?

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・自家製シュークルートのホットドック(190円)
 スパイシーなソーセージと酢漬けキャベツの相性抜群。

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・まめぱん(130円)
 旧店舗からの定番、和菓子屋なら「豆餅」みたいなもの(笑)。

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・チョココロネ(150円)
 「チョココロネ、太い方から食べますか?細い方から食べますか?」と云う質問を思い出した(笑)、小さ目でコロンとした形。

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・むしぱん(130円)
 これも旧店舗からの定番、うぐいす豆の入った春バージョン。

 この店主は根っからの職人だなと判るのがレシート、店によっては「パン1」「パン2」等と表記する店も多いが、パンの名前と値段が全てちゃんと書いてある、もし種類や値段を変える時は、レジのプリセットも全部変えなければならないが、それでもこうしているのは、自分の作ったパンに愛情があるからだろう。

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 先日、六本木を歩いていたら、或る飲食店に貼り紙があり、「アルバイト募集、時給1,200円」とあった、東京では遂に時給1,200円の時代になった、それでも人が集らないみたいで、飲食店における労働力不足は深刻だ。これをまだ東京迄は時給が上がっていない大阪の料理人に話したら、「1,200円時給を払って人を雇ったら、1,000円のランチは出せません」と言っていた(笑)。
 高い人件費を払って誰かを雇っても、その人間が店にとって戦力になるかどうかは、ギャンブルみたいなもの、そんなリスキーな事をする位なら夫婦や家族だけでやろう、自分達の身の丈に合った仕事をしよう、こうした考えをする飲食店主がどうやら増えている。
 パンみたいな単価の低い商品を、店舗型で売り続けるのは、今の時代には割の合わない仕事になりつつある、でもスーパーやコンビニのポリエチレン包装のパンは、味気ない事この上ない、街から個人経営店が消えない事を願うばかりだ。
 真面目にやっている小規模個人店は、何とか応援したいものだと思う。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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