最後の晩餐にはまだ早い


外苑前「フロリレージュ」(2016年3月)  

 今年初の訪問になる外苑前の「フロリレージュ」、前回利用が昨年11月だったので、その後店はミシュラン東京2016版で一ツ星を獲得(旧店では一時付いていたので復活)、更には"ASIA'S 50 Best Restaurants"で「注目のレストラン賞」を授賞した。これがどの位価値がある事なのかはよく判らないが、スタッフのモチベーションを高めた意味では十分意義があったと思う、一ファンとしては素直に喜んでいいのだろう、あらためておめでとうございます(笑)。
 一応フランス料理店訪問歴30年を超えると、今上り坂にあるレストランは、そうでない店に較べて、「この店、何かが違う」と感じる事が出来る、この夜がまさにそんな印象を受けた、席に着くと前回とは店の空気が微妙に違うと思った、ゲストとキャストが繰り広げる、心地よい緊張感が伝わって来る。

 レセプションで他のメンバー達と集合し、カウンター席のメインダイニングに案内される、川手料理長が挨拶に来たが、揃ったメンバーを見て「うわ、濃いな」と笑って一言、その言葉どおりこの夜はかなり濃いメンバーで、お祝いディネには最適だった(笑)。
 キッチン内にはサービス担当が整えた、「海」をイメージした飾り付けが客の目を惹く、各自に今日の料理が記された小さな紙が配られ川手劇場が始まった、まずは当夜の料理全品を紹介したい。 

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投影 蕗の薹

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懐かしみ 鰯

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芽吹き ホワイトアスパラ

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コンフィ すっぽん

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コントラスト フォアグラ

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本質 海老

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和の風味 甘鯛

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分かち合う 塊肉(経産牛のロースト)

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ヘテロ感 パッションフルーツ

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お似合い 落花生

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春の訪れ よもぎ

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苺のパートフリュイ
コーヒー(新登場)

 料理全体は「春」を感じさせるもの、まずは鰯とドライトマトの一皿で客のハートを一掴みし、白アスパラは活力と再生を感じさせる、次のすっぽんはこの日一番印象に残った料理だが、玉子豆腐状のフランの上にすっぽんのかき揚、そこへすっぽんのコンソメが加わる、まるで和食の椀物みたいな構成だが、日本人女性陶芸家の円錐型磁器に盛られると、やはりこれはフロリレージュの料理だと納得してしまう(笑)。
 禁輸前に入手したと聞く仏産フォアグラ&トリュフに続くのは、高級和食でも使えない位の見事な海老、次の甘鯛は添えられた和風な出汁との相性が抜群。
 そして「私たちひとりひとりの食べ方、飲み方で地球は変わる!」と題された、食品廃棄物を減らそうと云うメッセージの紙が配られた後に、「分かち合う塊肉」として提供されたのが宮崎経産牛のロースト。経産牛とは文字通り出産を経験した雌牛の事で、通常食肉にされる未経産牛よりランク下にされ加工品等に回されていたが、最近食材として注目されている肉牛。以前この店でカルパッチョを食べた事あるが、ローストは初体験、その味は俗な言い方をすれば「熟女の味」だ(笑)。脂肪部分に独特の風味があって、最初「過去食べた牛肉と違う」と脳内が混乱するが、食べ進むうちに「これは美味しい牛肉だ」と納得する、処女牛と較べると少し雑味はあるが、噛み続けるとそれが複雑さになって飽きさせない、これが若い雌牛にはない経産牛の魅力だろう、熟女に嵌ると抜け出せなくなるかも知れない?(笑)。
 デセール3品はシンプルな作りながら、レストランならではのアシェットデセールで楽しめた、各素材の質も高い。
 
 料理人でない私からすれば僭越な言い方だが、料理&デセール各皿の構成はそう複雑ではない、食材のアイテム数も決して多くない筈、それでいて各食材に絶妙な伴奏(調理)で寄り添い、実力以上のアリアを歌わせるのが川手料理の特徴、名指揮者の指揮棒により11皿の料理達が演じる見事なオペラ作品が完成する。
 今回の訪問は、まさにジャストタイムだったなと云う印象、店が上り坂を駆け上がろうとする時に同乗出来たのは幸運で、過去でもこうした経験はそう何回もあるものではない。支払いはそれなりにするが、充足感を考えれば決して高いとは思わない、前にも書いた事だが、此処は少年の心と大人の財布を持った人にこそ来て欲しい店だ。
 「料理が美味しい」「料理が変わっている」だけの店なら他にもあるかも知れない、ただこの店みたいに、ゲストもスタッフも一緒に輝ける場所はそう無い、客は傍観者ではいられず、一緒に楽しんで一期一会のアトモスフィアを作らないといけない、そのセンスが問われる(笑)。

 最後は川手料理長と濃いメンバー揃って記念撮影。ここ数年の東京では「忘れ難いレストラン体験」の筆頭になりそうな濃いディネでした(笑)、この夜この店に集った全ての人に感謝。


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大阪・狭山「讃岐うどん いってつ」(2016年関西食べ続け⑨)

 まるで苦行みたいだった関西食べ続けも、やっと最終日を迎えた(笑)。
 この日は関西を訪れる毎にお世話になっている「南大阪のドン」ことH氏に会う事になっていて、氏からランチのリクエストを聞かれたが、16時関空発のLCC(最近はこればかりだが)に搭乗のため、時間的に可能な場所とジャンルからお願いしたのが、大阪・狭山市内にある讃岐うどん「いってつ」だった。去年2月の食べ続け中に訪れていて、出汁と饂飩のバランスの良さ、美味しさが印象的だった店だ。
 一日中雨だった昨日とは違い快晴、南海高野線の北野田駅で待ち合せH氏運転の車に乗せてもらう、今回は奥様も来てくれた。そこから車で15分位だろうか?まだ開店前の店に着き、少し離れた場所にある専用駐車場に車を停める。
 時間があったので店の近くにある農家の野菜直販所を見学、この辺りはまだ農家も残っていて、喧騒の地だった難波から来ると、穏やかで平和な場所に感じる(笑)。

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 時間になったので入店、日曜日だった事もあり、開店早々を狙って既に数人の客が集まって来た。

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 店中央にある大テーブルに座る、眼の前には販売用の天かす?が並んでいる。

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 メニューはテーブル上に置かれたカードケースに入れたものと、壁に張り出した紙、前回は「とり天ぶっかけうどん」だったので、今回は違うものにしようと考えたが、壁に貼った「店長の気まぐれメニュー!!キーマカレーうどん」(1,000円)が気になってしまい、結局これに決めた。
 続々と客がやって来て満席に近くなった、駅からは遠い事もあり、殆どの客は自家用車だ、この辺りは車がないと移動や買物は困難を伴うと思う。

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 やがて運ばれて来たのが「キーマカレーうどん」、もっとツユの多い一般的な「カレーうどん」を予想していたのだが、見事に外れた(笑)、キーマカレーライスのライス部分を饂飩に変えたみたいな外観、サービスでご飯も付いている、添えられた野菜は揚げた南瓜と茄子。
 饂飩にカレーを絡めて食べると、カレーは結構スパイシーな本格派、この店の饂飩はコシが強く歯応えあるので、カレーも和風よりこうした個性あるタイプが合うのだと思う。挽肉も多く入いって結構お腹一杯になる、最後に残ったカレーにご飯を入れて〆る、画像あるが見苦しいので割愛した(笑)、美味でしたご馳走様。

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 食べ続けの最後だったので、あっさりしたタイプの饂飩を選ぶべきだったが、つい見慣れない物を注文してしまうのは、まだ人間が出来ていない(笑)。H氏奥様が選んだ「梅うどん」の味見をさせてもらったが、これは繊細な出汁と饂飩のバランスが絶妙で、加えた梅干の風味も効いていた、美味しゅうございました。

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 食後また車に乗せてもらい、堺市が誇る史跡の仁徳天皇陵を見学する、市のボランティアによる説明があって、この御陵は仁徳天皇の墓とするには学術的に合わない部分があり、研究が待たれるが所管が宮内庁であるため調査が難しい等、興味深い話を聞かせてもらった、これだけ巨大な物を作ったのは、大陸から船に乗ってやってくる外国人達へ、「ドーダ、我が地にはこれだけ立派な建造物があるぞ」と見せつける意味があったとの事、当時は大阪湾からこの場所まで一望出来たらしい。どうやら日本の土木工事好きは、今から1500年遡るこの辺りにルーツがありそうだ(笑)。
 最後は堺の老舗甘味処「南曜堂」に寄り、名物の小槌型最中をお土産にいただく、ありがとうございました。

 4泊5日の濃すぎた関西食べ続け、これで終わりますが、関西は人と人との距離が近く濃密で、道を尋ねても返ってくる返事の内容が長い(笑)、このサービス精神は独居老人でも引き籠もりにはさせないと思うので、煩わしさはあっても老後を過ごすには楽しそうだ。
 首長が替わり外国人観光客の急増があっても、昔と変わらずに関西が元気でいて欲しいと思う、そうでないと日本が画一的でつまらなくなる。
 今回の食べ続けに付き合っていただいた皆様に感謝です、また日程の都合でお会い出来なかった方も含め、今度は東京でお会いしましょう(笑)。

 

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大阪・北新地「グランシャン」(2016関西食べ続け⑧)

 大阪最後の夜は、以前からお付き合いさせてもらっている、尊敬する関西食のオーソリティー二人と同席出来る事になり、大阪を代表する繁華街北新地にあるフランス料理店「グランシャン」に集まる事になった、私は初訪問になる。店のオーナー料理人は太田浩氏、日本ではホテルダイニング出身、その後渡仏し、カンヌの名店「ムーラン・ド・ムージャン」やPARISの「ロブション」、更にはロンドンやスイスでも働き、計8年を欧州で過ごし帰国、2012年5月に開業した、店名は名字に因み「大きい田」の仏語訳。
 ホテル時代には大阪「コーイン」の湯浅、京都「MAVO」の西村両料理長と働いたそうで、その興味からも以前から訪れてみたいと思っていた店だ。

 北新地は過去天ぷら店へ行くため何回か来た事あったが、すべて昼間で夜は初めて、雨の中を地図見ながら歩いていたら道に迷ってしまった(笑)、こうした時にスマホがないと自分が居る場所が判らなくなる、仕方なく店に電話したら、マダムが道順を丁寧に教えてくれた、忙しい中ご迷惑をおかけしました。
 店はBARが多い雑居ビルの3階、歓楽街中のビル階上となると、札幌ススキノのフランス料理店「サヴール」とロケーション的に似ている。少し前なら夜咲く花や蝶が毎夜舞っていた場所だろうが(笑)、長引く不況のせいか静かな気配だ、ドアを開けると笑顔で迎えてくれたのが電話で対応してくれたマダム、コートをあずけて客席に案内された。
 カウンターだけの8席、この夜は土曜夜という事もあり満席だった。先着の二人に挨拶をして始まった新地ディネ、まずは料理を紹介したい。

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・アミューズブッシュ(グジェール、クレソンのフィナンシェ)

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・コンソメジェルミニ、オゼイユ

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・高知のフルーツトマトと車海老のタルタル、キャビアを添えて

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・2種のカネロニ(蟹とマッシュルーム、ほうれん草・イカ)

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・ラパンと魚介のソーセージ、パイ包み焼き

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・ブルターニュ産コート・ド・ヴォーのロースト

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・フロマージュ2種

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・ヴァンショーのシャーベット

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・色々なショコラのヴァリエーション、キャラメルとグラスを添えて

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・ミニャルディーズ
・アンフィージョン

 料理全体の印象は、やはり「コーイン」と共通な傾向を感じた、主役がハッキリしていて料理の背骨がしっかりしている、欧州での8年は大きなキャリアになっていると思う、お客として研修生で行っていた訳ではなく、重要な戦力になっていただろう事は想像出来る。モダンスパニッシシュや北欧色に染まっていない頃の、正調フランス料理と云う印象。
 最近の東京ではまず出る事ないコンソメジェルミニは「固めていない茶碗蒸し」(笑)、ベースのコンソメがしっかりしているので美味、「ラパンと魚介のソーセージ」はこの日一番印象的だった料理、「黄金の1990年代」を思い出すみたいな古典ながら、食べてみると決して古さを感じさせない。
 肉料理のコート・ド・ヴォーも的確な火入れにより、次元の高い皿になっている、料理全体に何処か南仏を感じさせるのが、この料理人の特徴かも知れない。
 料理全体のクオリティの高さに比して、デセールが少し弱かった印象がする、でもこの狭い厨房で、熱い料理とコールドを作るとなると、おのずと限界があると思うが。

 痩身の太田料理長は、大阪の料理人としては珍しく寡黙なタイプ、半袖のコックコートを着て、柳刃みたいな細い包丁を持つ姿は一見寿司職人みたいに見える、「桜花」の森田料理長と並んだら、殆どの人が森田氏の方をフレンチ料理人だと思う筈(笑)。全て客の目の前で作業をするが、食材の扱いや盛付等とても丁寧で余計なノイズが聞こえない、勿論スタッフを注意叱責する声もない、これはオープンキッチンでは必須だと思うが、それが出来ない料理人が居る。スタッフは料理長とマダムの他にサービス兼任の男性2名、計4名で8席の客を相手するので手厚い体制だ。
 これは料理とは直接関係ないが、新地と云う場所の特殊性について、よく東京銀座と比較されるが、私が夜行き帰りに歩いた印象では、銀座だけでなく新宿歌舞伎町や𠮷原のエッセンスも加わっていると思った(笑)、人間の根源的な欲望が渦巻く街、訪れる客層もかなり特殊であろう事は想像出来る。余計な事かも知れないが、この街で将来も今のスタイルでフランス料理店を続けていくのは、最良の選択なのかとなると少し不安も感じた。おそらく太田氏もそれは判っているだろうと思う、やがては次のステップがありそうな気がする、その時料理がどう変わっているのかも楽しみだ。

 食の同士二人との会話は何時にも増して濃かった、アウェーの私は静かにしているつもりでいたが、どうも料理それも20世紀のフランス料理の話になると、つい口角泡を飛ばして喋ってしまう(笑)。
 楽しい夜になりました、何処かでこの続きをまたやりたいものです、太田料理長ありがとうございました、次は街がもっと静かなランチタイムにでも、こっそり伺いたいと思います(笑)。


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大阪・南森町 「香味」~「荒凡夫」(2016関西食べ続け⑦) 

 関西4日目は朝から雨、この降り方は「雨の御堂筋」の歌詞中にある「小ぬか雨」だと思う、やはり大阪にはこれが似合う(笑)。
 歌の中では傘をささず歩いて移動するが、私は市営地下鉄に乗りランチに向かう(笑)、店は南森町駅から近い「中国菜 香味」、店名は「シャンウェイ」と中国語読みする。ここの矢谷料理長とは前夜の「アニエルドール」藤田氏等と同じ食事会で同席、やはり「今度店に伺いますから」と約束していた(笑)、本当は夜に行きたかったのだが、今回はフランス料理で埋めてしまっていたので、ランチタイムに寄らせてもらう事にした。

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 予定より早く着いたので、駅近くにある天神橋筋商店街を通って、大阪人が「天神さん」と呼んで親しむ大阪天満宮を訪ねる、この商店街は黒門市場とは違って地元民が利用し、地域密着型の人間味が感じられる、入口にあるベンチが有名で、先日NHKのTV番組でこの場所が取り上げられていた。天満宮は何の御利益なのか判らぬままお参りし、取りあえず「脂肪肝と体重がこれ以上悪化(増加)しません様に」とお願いしたが、天神なので学問の神様だった(笑)。

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 「香味」がある場所は、京阪道路から大阪地方裁判所や法務局がある界隈へ向かう途中、法律事務所等が多い一角だ。ドアを開けるとすぐ矢谷料理長と目が合い気付いてくれた。以前はラーメン店だったと聞く店内はカウンターとテーブルで18席位、大きな店ではない、店内を担当する奥様の案内で一番奥のテーブル席に座らせてもらう。

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 ランチは3種類(税込850円)から選ぶが、この店を利用した友人からお勧めのあった、金・土曜限定の「四川麻婆豆腐定食」、これに即決した。この日は土曜日で裁判所は休みだが13時過ぎでも客は次々やって来る、殆どの人が麻婆豆腐を注文している。

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 その麻婆豆腐が来る前に、料理長の好意で提供してくれたのが前菜4種、ジャガ芋、カリフラワー、若牛蒡に人参だったと思うが、野菜の四川風和え物で、どれも優しくて穏やかな美味しさ、料理人の人柄が反映されていると思う、勉強家の矢谷氏は東京の有名店や中国本土へもよく食べ歩きに行くそうだ。

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 続いてやって来たのが麻婆豆腐定食、ずっと食べ続けなのでライスは小盛りにしてもらった(笑)、スープ、生野菜と茄子漬物?が付く。まずは麻婆豆腐を一口、前菜同様に刺激を抑え優しい味で、後で料理長が話してくれたが、裁判所の職員も来るので、昼間はニンニクも使わず辛味も控え目にしているとの事、それでもベースの調味料や湯がしっかりしているからだろう、十分美味しい。私がよく利用する春日「川国志」の麻婆豆腐は辛味と山椒の痺れ感を強調するが、それとは対照的な作り、どちらもありだなと思った。連日の食べ続けで胃の中は飽和状態になっているのに完食、美味でしたご馳走様、次は夜バージョンの物も食べてみたいと思った。
 ここで止めておけばよかったのだが、在阪の友人から「香味の近くには美味しい蕎麦屋があるよ」と聞いていたので、次回のため場所だけでも確認しておこうと、矢谷氏に店の場所を聞いて歩いて行く。

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 もう14時近くなので閉めているかなと思ったら暖簾が下がっている、それを見てついフラフラと?入店してしまった(笑)。
 店の名前は「荒凡夫」、「あらぼんふ」と読むが「自由で平凡な男」の意味だそうだ、実は此処の店主橋本氏とも以前に会った事があり、アポなし入店だったが私の顔を覚えていてくれた。店は2014年10月に現在地に移転開業、それまでは三重松坂で営業していたそうだ、席はカウンターだけの7席で、橋本氏一人だけで対応するワンオペ店。

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 麻婆豆腐を食べたばかりだが、「蕎麦は別腹」と自分で自分を鼓舞して(笑)、「できますもの」と書かれた品書きを見る、橋本氏に「何がおすすめ?」と訊いてみたら、「『そば三昧ざる』は、通常なら二八、十割、粗挽き十割の三種だが、十割が切れてしまったので、二八と二種類の粗挽き十割の計三種で出しますが、如何です?」と提案があり、それでお願いする事に。
 カウンターだけの店で、東京の趣味系高級蕎麦店みたいな堅苦しさは無い、昼だけの売り切り仕舞い営業なので、昼間でも蕎麦の前に酒を飲む客が居た。

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 まずは福井の二八からで、蕎麦粉8割小麦粉2割の江戸蕎麦の基本、私は子供の頃から馴染んでいるので、安心して美味しいと感じる、喉越しの良さが特徴。

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 続いて同じ福井の粗挽き十割、二八に比べると蕎麦の香りが増し、素朴な感じになる、これは温かい蕎麦でも美味しいのではないかと思う。

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 最後は徳島の粗挽き十割、前者に比べると急に鄙びた?感じになる、田舎のお婆さんが打ってくれた蕎麦、何かそんな印象を受けた。

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 最後は蕎麦湯で〆る、織部の器がいい。ツユもキレのある辛口でもちろん本山葵を使っている。
 正調本格派の香り高い蕎麦で美味しかったです、「蕎麦は東京」だと思っている人多いが、大阪でも江戸時代から蕎麦切りは提供され、有名店の「砂場」は大阪発祥だ。現在でも蕎麦専門店は多くあり、饂飩で有名な「今井」や「美々卯」でも蕎麦を提供している、大阪人も結構蕎麦好きだ。
 正直に言ってしまうと、ランチダブルはキツかった(笑)、時間の無い方以外お勧めしないが、もしどうしても両店行きたい場合は、私とは逆に「荒凡夫」⇒「香味」のルートが正解です。
 この日の夜はまたフランス料理、それに備えて「こぬか雨」の中を「南へ歩く」事にする(笑)。


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大阪・阿波座「アニエルドール」(2016関西食べ続け⑥)

 「コーイン」「オテル・ド・ヨシノ」と、関西では東西両横綱級の店を訪れた後、この2店を超える店はもう思い付かず、今迄毎年訪れていたビストロは閉店しているので、このまま東京へ帰ってもいいかなと思ったが、毎年同じ行動パターンだと進歩がない(笑)、今回は「若い大阪」も体験しておこうと、関西食べ続けの後半戦は2軒のフランス料理店を選んでみた、両店共に若いオーナー料理人で開業後まだ数年の店だ。
 まずは西区阿波座駅近くにある「アニエルドール」からで、開業は2013年8月、料理人は藤田晃成氏、名門調理師学校卒業後渡仏、バスクとノルマンディー地方、最後はリヨンで働いた後に帰国し32歳の若さで開業した、夜でも5,500円のおまかせムニュ1種だけの提供で、すぐに人気店になった。
 私は一年前にある食事会で偶然藤田料理長と会い、少し立ち話をして「今度お店へ伺いますから」と約束していたが、一年経ってやっとそれが果たせる事になった(笑)。

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 店の場所は市営地下鉄の阿波座駅から歩いて5分程、近くには「靭公園」と云う大きな公園がある、ビジネス街なので夜は寂しい雰囲気になるが、その中にある明るい外観のこの店は、新しい事もあって爽やかな外観を見せている。
 ドアを開けるとすぐオープンスタイルのキッチンと客席、フルフラットで段差も仕切りもなく、青山「L’AS」の旧店舗と似ている。客席は12席でカウンターはない、19時の入店だったが既に満席だった、Tシャツ姿の藤田料理長に挨拶し、2人用卓に着席する。

 まずは当日の料理を紹介したい、現在ムニュは6,800円になり、コーヒー等の飲料は別料金。

        
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・安納芋とフォアグラ

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・ヨコワとチョリソー

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・鳥取次郎猪、原木椎茸、ワサビ

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・烏賊、鱈”子“、菊芋、柚子

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・珍しいコルス(コルシカ島)産のピノ・ノワール

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・和歌山産鴨、キャベツ、白インゲン、根菜、“ガルビュール”

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・本日の鮮魚(鳥取活け〆真鯛)、貝、海藻

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・スペイン産鶉、海老、人参、レモングラス

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・イチゴ、蕎麦、フロマージュ・ブラン

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・カカオ、牛蒡、柑橘

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・ミニャルディーズ
・コーヒー

 料理全体の印象は、まず細部までとにかく手をかけていると思った、厨房は料理長を含めて3人でサービスも兼務する、この少数精鋭で此処までやるの?と心配したくなる程にディティールをおろそかにしない、一皿の構成要素も多い。
 味付けは初め浅くてそれから徐々に盛り上げるタイプ、東京の嗜好より若干塩が浅いなと東京人の私は感じたが、大阪のビジネス街で営業し、この夜もそうだが女性客が中心となると、これ位が好まれるのだろう。
 バスク、ノルマンディー、リヨンで働いたと聞くと、もっとコテコテの料理と味付をイメージするが、そこは若い感性で咀嚼し、今の日本に合ったコンテンポラリーな料理にしている。特に魚介類の扱いと火入れは繊細で、さすが関西の料理人だなと感心した、デセールも見かけも味も凝っていて楽しめる。
 反面、全体的にもう少し食材を減らして、何が中心なのかをハッキリさせた方が食後感はさらに増すのでは?とも感じた。ただこれは、直前に行った超重量級フランス料理2店との比較なので、そう思うのは多分私だけかも知れないが(笑)。
 若い料理人は何でも試してみたくなるもの、若さも体力もあるので睡眠時間を削ってでも自分のやりたい事をしがちだ、始めはそれでいいと思う、やがて「引き算」を覚えて行くのだが、これは誰かに言われたからと直すのでは駄目で、まずは自分が「これは必要ない」と考え納得して初めて引き算が成立する。今回では「オテル・ド・ヨシノ」の手島料理長の料理が、皿の上から余計な物を飛ばし始めた印象を持った、彼が40歳なので、藤田料理長もあと5年位経って、料理がどう変わっているのか楽しみだ(笑)。

 満席の客達が引けた後、藤田料理長と色々と話をした、4月からスタッフが2人増える事、将来はオープンキッチンからクローズスタイルのレストランに変えたい意向、そして星も欲しい事(笑)等、これからの抱負を語ってくれた。
 レストランは変容していくものだ、ミサイルみたいな早さで進んでいる現代社会、レストランだけ十年変わらず同じ事やっていては時代に取り残されるだけ、人々が外食に求めるものも急速に変化している、経験も大事だが時代と共に走れる若い感性と体力は必要だ、藤田料理長には大阪を牽引する意気込みで走ってもらいたいなと思う。
 この日は一人ディネだったが、料理長とスタッフ達のおかげで楽しい夜になりました、お気遣いありがとうございました(笑)。
 


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大阪・難波「釜たけうどん」~千日前「丸福珈琲店」(2016関西食べ続け⑤)

 大阪三日目の昼は、当初の予定が事情によりキャンセルになったため、宿泊先近くの難波周辺を探訪する事にした。
 過去大阪で利用していたのは四ツ橋のホテルが多かったが、大阪全体のホテル不足によるものか急に値段が上がってしまい、今回は更に安価なホテルを求めて南下、決めたのが日本橋(大阪は「にっぽんばし」と読む)駅近くのチェーンホテルだった。この辺りは、ここ数年中国人や韓国人の団体観光客で様変わりしたと聞いていたが、実際は想像を超えていた。
 まずは昼を食べるため向かったのは、日本橋駅と難波駅の中間程の千日前にある「釜たけうどん」。私の世代で「千日前」と聞くと連想するのが、昭和47年に起きた「千日デパート火災」、死者118人と云う日本のビル火災史上最悪の惨事になった現場だが、現在は大型カメラ&家電量販店のビルが建ち、当時を思わせるものは何もない。

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 店がある場所は、「吉本新喜劇」で全国に名前を知られる「なんばグランド花月」の裏手、近くには東京なら「かっぱ橋」に相当する道具街がある。
 開店時間の11時に店前へ行ったら、まさかの長蛇の列で「これは駄目だ」と思ったらよく見ると隣の店舗だった、此処は「ハラミ焼肉丼」が有名な店らしく、「(気の短い)大阪人は行列が嫌い」と云われていたが、最近は変わってきたのか?

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 「釜たけ」は開店直後で空いている時間帯だったので、待ち時間なくレジ近くの2人席に案内された、そんなに広い店内ではない、カウンターはなくテーブル席だけ、混雑すると相席になるらしい、壁面には吉本の芸人達か、サイン色紙が沢山並べて貼ってある。
 一応メニューを見るが、在阪の友人から「釜たけへ行ったら、これを食べるべき」と聞いていたのが「ちく玉天ぶっかけ」(780円)、迷わずこれに決めた。
 続々と客が来店する、隣席には韓国人と思われる若い男女4人組、用意してあるハングルのメニューを眺めている、もちろん中国語のメニューもあった(笑)。

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 生饂飩は蕎麦と違い茹で時間が長い、暫く待って運ばれて来たのが「ちく玉天ぶっかけ」だ、大きな丼の中には太目の饂飩が大盛り、その上には竹輪と茹で玉子の天ぷら、刻んだ青ネギに櫛切レモンまである。
 まずは饂飩を一口、WEB情報によると、大阪出身の店主が讃岐うどんに出会い、美味しさに惚れ込んで香川で修業後、大阪に讃岐うどんの店を開業し、以降人気店になったとの事、だから饂飩自体は讃岐風の歯応えを強調したものだが、少し大阪人向けにアレンジしていると思う、麺自体は普通に美味しい。かけた出汁は東京人の私には少し甘口に感じた、店の説明どおり玉子の天ぷらを崩して、カラボナーラ的に食べると、また違った味わいになる、大きな竹輪天ぷらは存在感あり(笑)。
 最初は「多いかな?」と思った一杯だが、問題なく完食しました、美味しかったが使っている食材考えると780円は、東京都心ならともかく大阪では少々高いのでは?とも感じた、でも客は続々やって来ていて、私が出る頃には席待ちのため外で待機する客まで居た、人気店である事は間違いない。

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 食後はなんばグランド花月の前を通って難波駅界隈を散歩、中国人観光客の多さが目立つ、そのまま東へ向かって黒門市場に入る。「今、黒門へ行っても中国人だけですよ」と、事前に聞いてはいたのだが、此処も予想以上だった。

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 私は2011年に近くにあったイタリア料理店へ行くため、この市場を通ったが、その時は一人も居なかったと思う中国人観光客達が大挙押し寄せていた。各店頭では焼き雲丹やホルモン煮込み、握り寿司のカウンターまで出来ている、もう「なりふり構わぬ」カオス状態、これは長居する場所では無いと、早々に逃げ出す事に(笑)。
 このままホテルに帰るのも詰まらないので、向かったのはここからそう離れていない場所にある「丸福珈琲店千日前本店」、以前から訪れてみたいと思っていた店だ。

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 創業は昭和9年(1934年)、現在の千日前に本店を構えたのは戦後まもなくの事、以降大阪を代表する珈琲店として歴史を刻んで来た、現在では全国に20以上の支店がある、私は秋葉原の「ヨドバシAKIBA」内でこの店を知り、一度本店を訪れたいと長く思っていた、今回それが叶う事になった。

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 「店内に入ると其処は昭和だった」、第一印象はそれ。内装にはお金をかけているが、何処か洗練されていなくてバタ臭い(笑)、でもこれが美点でもある。
 注文したのは丸福ブレンド(560円)と名物のホットケーキ(600円)。

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 大倉陶園のカップに入ったコーヒーは深煎りで濃い、ストレートで飲むより砂糖&ミルクを入れたいタイプ、ホットケーキは断じてパンケーキではない(笑)、どこか懐かしく昭和に戻れる味だった。
 店内は喫煙可なので、煙草の臭いがNGな人にはお勧めしないが、昔の喫茶店の雰囲気に浸りたいなら一度行ってみる価値ある店だ。
 でも昭和は遠くなったなと思う、「逢坂の 過ぎし日思い 苦き味」か(笑)。


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大阪・高麗橋 「桜花」(2016関西食べ続け④)

 関西二日目は強行軍で、和歌山「オテル・ド・ヨシノ」から大阪のホテルに戻ったのが午後5時過ぎ、ここで胃薬を飲んで、バスタブにお湯を張って足湯に浸かる、消化を早めたい時はこれが一番効くと経験で学んだ。ベッドで横になりたいのを我慢し、休む間なく6時を過ぎたらまた夕食へ出かける、自虐的とも云える「食苦行」だ(笑)。
 向かったのは今回唯一の本格的和食で、これが三年連続になる「高麗橋 桜花」、昨年の利用後に「旬菜 桜花」から改名したが、今大阪の食通からも注目される店になりつつある。

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 地下鉄御堂筋線の淀屋橋駅で下車、5分も歩かずに店に着く、店内に入ると去年と雰囲気が少し違うと感じた、森田料理長を手伝うのが従業員から奥様に替わり、同時に空気感も変わった。
 この日は在関西の友人が参加してくれたので、静かにしているつもりでいたのだが、結局またも料理や器、日本文化等のマニアックで且つ難しい話をしてしまった、一期一会の食事時に迷惑をかけました(笑)。
  
 まずはともかく、当日の料理をご覧ください、昼がフランス食文化の究極形だとしたら、これは日本の食文化の粋、「どちらが優れている」ではなく、これだけ秀逸な食体験が一日で出来るのが、今の日本の凄い処だ、料理名は後で森田料理長から説明があったものをそのまま記しています。

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・前菜
 つぼつぼにするめ烏賊塩辛 辛味大根柚子おろし 八尾若牛蒡の稲荷巻 市田柿にクリームチーズ味噌漬け 牛蒡炭煮

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・煮物椀
 蟹真丈 春子椎茸 蕾菜 香茸醤油煮

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・割鮮
 太刀魚 きうち うるい 白葱けん 金時人参 防風 山葵 鰹 大葉 おかひじき 造り醤油 ぽん酢にかんずりおろし もろみ醤油

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・揚げ物
 さば河豚竜田揚げ ばちこ天麩羅 酢橘 蓮根饅頭おかき揚げ 海老芋芥子の実揚げ 

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・主菜「しもつかれ」
 鮭 粕汁 厚揚げ 金時人参 煎り大豆 からし菜 聖護院大根鬼おろし 煎り唐墨・雲丹散らし

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・能勢米煮えばな

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・酢の物
 公魚 蕪 牛蒡黒胡麻煮 土佐酢 木の芽 氷餅

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・御飯 能勢米 
 おかず味噌 海老佃煮 千枚蕪 昆布佃煮 白菜浅漬け 河内鴨炭火焼き 菜の花胡麻よごし 

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・甘味 ぜんざい 蓮の実 揚げ餅 あんぽ柿団子 くこの実 珈琲

 料理全体の印象では、前回より肩の力が抜けて柔らかくなったと感じた、店名が変わっただけでなく、目指す方向性も「旨いものを提供する場」から、より本格的な懐石料理店を目指している様に受け取った。
 各料理は食べた一口目で唸らせるのではなく、一皿食べ終わった時に頂点が来る仕上がりになっていると思う。器も大阪で使われる事の多い派手目な色絵磁器は使わず、染付磁器や織部等の陶器が中心、これは個人的には好ましく感じた。
 まずは「煮物椀」と称した懐石の花形である椀、鰹出汁は控え目に最上質の真昆布を使った出汁が秀逸で、疲れ始めた胃に浸みて行く(笑)。造りでは「この季節に?」と疑ってしまった鰹が意外な程に美味で、ちょっと驚く。
 「しもつかれ」とは元は栃木県の郷土食で、初午(2月)に神社に奉納する行事料理、鮭頭や節分で使った大豆、野菜を酒粕と煮込む、三寒四温の時期にこれを食べると病気にならないとの謂れもあるそうだ。森田料理では勿論料理屋的にアレンジを加えている、北大路魯山人が家庭料理について書いた文章の冒頭で、「世間の人は、自分の身近にある有価値な、美味いものを利用することに無頓着のようだ。」と語っているが、そうは言っても家庭で作る郷土料理を、店でお金の取れる料理にするのは難しいものだ、食材を少し整理するなど細部を詰めていけば、これから面白い料理になると思う。
 ご飯を炊き込みではなく白飯で提供し、煮えばなと炊き上がりの2回に分けて出すのは賛成、甘味の「ぜんざい」も良かったし、それに添えた珈琲が面白いアイディアだと思った。

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 何時の間にか、厨房内には女優の黒木華さんみたいな美少女が登場、4月から正式採用予定の女性料理人だそうで、現在は調理師学校との兼務、これは男性客に楽しみが増えたか?興味のある人は実際に店へ客として行ってみてください(笑)。
 しっとりとした艶と雰囲気が増した感がある「桜花」、これから更に楽しみな店になりそうだ。森田料理長と女将さん、心温まるおもてなしありがとうございました、家庭と仕事の両立は大変でしょうが、またお会い出来るのを楽しみにしています。


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和歌山「オテル・ド・ヨシノ」(2016関西食べ続け③)

 「コーイン」の翌日に向かうは和歌山「オテル・ド・ヨシノ」、これは曙と対戦した後に全盛期の小錦とぶつかるみたいな事で、関西滞在時間が少なく体力に自信のある人以外はお勧めしません(笑)。私は2000年にフランスで「アラン・シャペル」「ラムロワーズ」「ラ・コードドール(現「ベルナール・ロワゾー」)」を3日間で回ったが、結果それに匹敵するハードな行軍だった(笑)。

 今回は在阪の友人料理人が以前から「行ってみたい」と話していたので、この訪問をメインに計画したもの、定休日が同じなのでわざわざ店を閉めて来た。
 最近「オテル・ド・ヨシノ」の利用は夜が多く、食事後そのまま階下のホテルに宿泊していたが、今回は昼席、快晴に恵まれ大きな窓外には和歌山市内が一望出来る、個人的にはこの場所昼の方が好きだが、「カフェ・ステラマリス」でのランチ客のすぐ後ろがアプローチになるので、それだけが気になる処、日常空間から非日常空間へトリップするには、何か一工夫欲しい気もする。
 セルヴーズの案内で一番奥の丸テーブルに着席、手島料理長に挨拶して本日の‘Menu Spécial’が始まった。今回は食事後に料理長から料理について詳細な説明があったが、そのまま載せると長くなるため要約して記します。

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・グジェール

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・ジビエのコンソメ
料理長『多くの人にジビエを理解して味わっていただこうと思い、(以前より)丸く作っています。』

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・和歌山産足赤エビのジュレ アボカドのエスプーマ
『ずっと作っている足赤エビのジュレです。上の海老せん含めガストロノミーらしく、パーツが多く手間と時間のかかる料理ですが、完成度を上げていきたい。』

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・ベキャスのビスク トリュフ風味
『丸のベキャス2羽と2羽分の骨、その肝臓、心臓と下茹でしたニンニク、フォワグラ、アルマニャックを、ジビエのコンソメで柔らかくなるまで煮て、内臓、骨ごとミキサーにかけなめらかになるまで漉す、仕上げにごく少量の生クリーム、牛乳、バターでまろやかさを調整しています。』

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・ジャガイモと鴨コンフェ、ガチョウのフォワグラのテリーヌ
『田代シェフの「イワシとジャガイモのテリーヌ」、吉野シェフの「縮緬キャベツと黒トリュフのテリーヌ」お二人の偉大なスペシャリテに啓発されて作った料理です。今迄自分の料理と呼べる料理を殆ど作った事なかったですが、40歳を良い機会として少しずつ「創造」をしていこうかなと思っております。』

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・和歌山産平鱸のシャンパーニュ風

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・ジビエのトゥルト
『真中はスコットランド産野鳩、フォワグラ、和歌山産鹿ロースで、周りのファルスは鹿・猪・キジ・野鳩・兎・豚・フォワグラ・ジビエのアバ(内臓)です。フィユタージュは成田さん※の物を使いました。ずっと作り続けていずれ僕を代表する料理になってくれればと思う料理です。ソース、パート、ファルス、キュイソン、ジビエの扱い等、フランス料理の高度な技術の粋を集めた料理だと思っています。』
※銀座「エスキス」シェフ・パティシェ

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・日本では滅多に頼まないフロマージュまで注文してしまった、状態いい。

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・プレデセール(栗のプディング)

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・チョコレートのスフレ

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・ミニャルディーズ

 コンソメは料理長が語るとおり、前回より尖った部分を抑え柔らかくしていて、後の料理との繋がりが出て好ましく感じた。続く足赤エビ料理のアボガドはもっと少量でもよかったかも知れない、そして中盤のハイライトがビスク、通常は甲殻類で作るが、希少なベキャス(山鴫)を使用する贅沢バージョン、これは凄かった、皿からベキャスの生命感が立ち昇って来て、思わず「成仏して」と手を合わせたくなった(笑)、この一皿だけで遠路和歌山まで来る価値あると思う。
 続くテリーヌはこれからスペシャリテとして進化する料理だろう、魚料理は伝説の名店「ピラミッド」の「ティルボ・シャンパーニュ」が原型、魚をまるで肉の様に扱い重厚な食後感を残す、これぞフランス料理と云う印象。
 そして真打が「ジビエのトゥルト」、私は6年前にこの場所で「ピティピエ」の形にした別バージョンを体験しているが、完成度に進化が感じられる、味の密度と重量感が増しデザインも良くなった。中にこれだけ要素を詰め込むと、味の方向性が散漫になる事もあるが、さすがはスペシャリテとして作り続けて来ただけあって、ソース、パート、ファルスの味積層が見事。A+B+C=の計算結果をDにして、より次元の高い領域の味にするのはフランス料理伝統の手法、各パーツのクオリティも文句なし、これぞ足し算の美学だ。
 現在のパティシェールが作るデセールは、味の決め方が私好み、「関西圏の中では」と書くと誰かに怒られるかも知れないが(笑)、量も甘さも見かけも現代的に洗練されている。

 去年まで居たベテランメートルが抜けたので心配していたが、メートレスを筆頭に若いサービススタッフの対応はとても良かった、関西の飲食は東京以上に女性の活躍が目立つが、この店も剛腕料理人の重量級料理と彼女達の細やかなサービスが不思議なバランスを保っていて、素敵な時間が過ごせた。
 今回は料理長が「伝家の宝刀」ばかり並べた印象あるが、やはり美味しいものは美味しい、宝刀も磨かなければ錆びるし、誰かに見せないと価値がなくなる(笑)。
 まるで自分がロイヤルファミリーの一員になったみたいな、優雅な午後でした(笑)、手島料理長そしてスタッフの皆さんに感謝です。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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