最後の晩餐にはまだ早い


北千住「スザ ビストロ」

 経験した人は何の用だかお判りだと思うが、月一回位の頻度で北千住の某官庁へ出向く事になったので、当地のランチレポートをしたいと思う。
 リクルートが実施している「みんなが選んだ住みたい街ランキング 関東版」と云うものがあり、2016年版の首位が吉祥寺から恵比寿に交代した事は報道されていたが、別ジャンルで「(住むのに)穴場だと思う街(駅)ランキング」があり、ここでは昨年に引き続き北千住が首位との事、北千住駅は5路線が乗入れする利便性の良さに加え、4つの大学がキャンパスを構えたことで街に活気があり、大きく変貌をしているのが理由らしい。昭和の猥雑な雰囲気の北千住を知っている人間には信じられないが、時代も街も変わるものだ(笑)。街が発展すればいい飲食店が出来る、それがまた人を呼ぶと云う好循環が生まれる。
 この日まず行こうと思ったのが、このブログでも記事にした事のある、担担麺の美味しい「鶴亀飯店」だが、店まで行ったら前日に近くの建設現場で足場が強風で崩れ、一帯が交通規制された事により臨時休業の貼り紙があり落胆、「さて、何処入ろうか?」と井之頭五郎的に悩んだが(笑)、以前から行きたいと思っていたビストロがあったのを思い出し、少し歩くが訪れてみる事にした。

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 店は江戸時代から続く「日本五街道」の一つ日光街道沿いにある、店名は「スザビストロ」で、‘SUZA bistro et boulangerie’の仏語表記どおり、パン販売もしている。この店を記憶していたのは、WEB情報で料理人は六本木にあった「パ・マル」で働いていたとの情報があったからで、それなら名料理人と謳われた、故高橋徳男氏の直系になるので興味を覚えた。 
 11時半のランチタイムスタート直後に店へ到着、ドアを開けると入口近辺はパン売場になっている、美味しそうなパンが並んでいるので、これは後の楽しみにする事で、ランチを食べたい旨を告げカウンター席へ案内された。

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 思っていたより店内は広く、テーブル席&カウンターで20席以上ある、キッチン内は男性が一人、サービスは女性一人で担当するが、どうやらご夫婦みたいだ。テーブルには懐かしい赤白チェックのクロスで、雰囲気は1980年代のビストロだ(笑)。
 ランチメニューは1,000円(税別)、肉または魚を選び、サラダ&自家製パンを加えたワンプレートとドリンクになる、私は肉を選び+200円でスープを追加してもらった。

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・ベーコンと蕪のスープ

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・骨付き鶏モモ肉のコンフィー、ハチミツマスタード風味、パン、サラダとサツマイモ

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・コーヒー

 スープは神田の「パ・マル」で売っていた様なスープを期待したが、これは普通でした(笑)、値段を考えるとあまり原価はかけられないと思う。
 続くコンフィーは通常なら鴨の骨付きモモ肉で作る処を鶏肉にしている、皮目もパリっと焼かれて香ばしく、骨の周りまでしっかり火が入っていて美味しい、マスタードベースのソースが古典的でしっかりした味、「ああ、これは高橋氏のDNAだな」と思った(笑)。コーヒーも良かったし、何より自家製パンが美味。
 食後、料理人と少し話をさせてもらった、須崎さんと云う名前で店名は其処から付けたとWEB情報にあった。昨年5月に開業し、北千住を選んだのは奥様の親戚筋の地元だったからとの事、高橋徳男氏とは「アピシウス」退店後で、神田と六本木の「パ・マル」時代に一緒に働き、銀座「カイラダ」の料理長も仕事仲間になるそうで、ショップカードが置いてあった、高橋さんのお弟子さん達は今でも年に一回は集まって師を偲ぶそうだ。
 ランチタイムでその後来客があり、あまり仕事の邪魔をしてはいけないので切り上げたが、今度は夜に来て、高橋氏現役時代の話をぜひ聞いてみたいと思った(笑)。

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 帰りにパンを買って帰ったので、以下に紹介しておきたい、なおパンは須崎氏ではなく専任のパン職人が居る、つまり二業種が同一店舗で営業している珍しい形態だ、パンも自然派で余計な味を加えず美味しかった。

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・パン・ド・カンパーニュ1/4カット(税込280円)

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・ライ麦(140円)

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・クルミとレーズン(400円)

 こうしてブラリと立ち寄れるビストロがある街はいい街だと思う、私が住む場所にもビストロ欲しい(笑)。


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神楽坂「和しょく えびはら」

 以前はSNSを介して食事会の開催をしていたが、最近はすっかり面倒になってしまった(笑)、こうした事は大抵云い出した人間が幹事役になる、幹事になるとこれが大変で、参加者の招集、店の選択、店との調整、料理の内容、酒の種類を含めて参加費は幾らにするか等、事前に決めなければならない事が多い、更には開催直前に都合悪くなった人がいたりすると、その補充はどうするみたいに、前日まで頭を悩ませ、当日は皆時間どおりに来てくれるのかな?と、幹事は気が休まらなくてあまり料理も楽しめず、終わった時には疲れ切っていたと云う事になりがちだ(笑)。
 それもあって最近はもっぱら他力本願(笑)、誰かが誘って来るのを待つ位だ。あまり使われなくなったが「壁の花」と云う言葉がある、元は舞踏会で踊りに誘われず壁際に立っている女性を差し、そこからパーティー等で、会話の輪から外れている女性全般を呼んだみたいだが、今こんな言葉使うと「性差別」と取られかねないので、使わなくなったのだろう。食事会の誘いをPCやスマホの画面で待っているのは、「画面向こうの花」いやジェンダーフリーだから「花」とは限らないかと、余計な事を考える(笑)。

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 前置きが長くなったが、食関係の友人から誘いがあり、この夜食事会に参加する事になった、開催場所は神楽坂の「和しょく えびはら」で、東京で本格的な和食店へ行くのは久しぶりだ。
 店の場所は都営大江戸線の牛込神楽坂駅を出て、神楽坂上の交差点へ向かってすぐ角の場所、「駅に近い和食店」なら東京一番かも知れない(笑)。私はこの店から近いフランス料理店へ何回か行っており、店の存在は知っていて、以前から一度行ってみたいと思っていたので、今回のお誘いにはすぐ乗ってしまった。
 集合時間の19時少し前に入店、若い料理人夫妻に挨拶していたら、参加メンバーが集まって来た、まずは当日の料理を紹介するが、女将からの説明で、この夜は特別な集まりのための料理で、通常の夜献立とは違えているとの事、それを汲んで読んで欲しい。

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・先付 嶺岡豆腐、菜の花

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・前菜 山形産原木椎茸の炭火焼き

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・造り 鯵、ヒラマサ、墨烏賊、おかわかめ

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・八寸 揚げ薩摩芋白和え、そら豆、蛍烏賊のあられ揚げ、飯蛸の桜煮

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・椀物 鯛、こごみ、餅

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・焼物 甘鯛と筍挟み焼き、唐墨と大根

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・御飯 あさりご飯と赤出汁、香の物

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・果物 
 
 嶺岡豆腐は牛乳を胡麻豆腐状に固めたもの、原木椎茸は香り高く、造りの三浦産墨烏賊は舌に絡みつく食感で美味だった。
 八寸は薩摩芋を白和えにするセンスがいい、季節の飯蛸は旨味が凝縮されていた。椀は吸い地ではなく煮物椀的で、鯛、こごみと餅を揚げ、そこへ濃い目の出汁をかける、続く甘鯛と筍は繊細な焼物で皿上に春がやって来た、加えて自家製唐墨のネットリした舌触りはエロスを感じさせる(笑)。
 あさりご飯は関西ではあまり見ないと思う「深川めし」みたいに、浅利の香りを凝縮させたもの、これは美味しくてお替わりしてしまった(笑)。
 事前情報では、ご主人は京懐石の老舗「柿傳」で修業したと聞いたが、全体的に判り易く、美味しさが直に感じられる料理だと思った。神楽坂の和食は、上は客単価3万円の三ツ星店から、下は一皿300円?の格安居酒屋まで多種多彩で競争も激しい、その中で「この店ならでは」の個性を出し、固定客を掴んで行くのは難しい事が多いと想像するが、今年開店5年目を迎えるこの店、料理人夫妻の人柄が料理や接客に滲み出ていて安心して楽しめる、これからも続いて欲しいと願わずにはいられない。

 久しぶりの異業種間交流食事会は楽しかった、集まったメンバーの顔触れから、コアなグルメ話になるのかなと思っていたら、勿論それもあったが革財布や手造り万年筆の話まで出て、知らなかった業界話を色々聞く事が出来た、いつも同じメンバーばかりで固まっていると知識に進歩がない、年とって好奇心を失うとただの頑迷な老人になってしまう(笑)。
 電車がなくなってしまうので、最後中座させてもらい失礼しました、当夜参加の皆さん、美味しい場を提供していただいた海老原ご夫妻、夜遅くまでありがとうございました、また何処かでお会いしましょう(笑)。


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新橋「スブリム」(2016年4月)

 気儘なリタイア生活が何時まで続けられるのかは、預金残高の減り具合次第だが(笑)、平日昼間に動けるのはありがたい、レストラン特に人気店はランチタイムが狙い目だからで、まずは予約が取り易い、次いで価格面でお得だ、更にはブロガーとしては昼光の方が綺麗な写真が撮れるし、帰りの電車では大抵座って帰れる(腰の悪い私には、これが一番ありがたい(笑))と良い事が多い。
 この日、身内から退職と誕生日の祝いランチをしようとの提案があり、何処へ行こうと悩んだのだが、結局皆のアクセスがいい新橋の「スブリム」を選んだ、私は2回目の訪問になる。
 昨年10月30日に開店し私は翌月訪れている、1982年生れの若い料理長の料理は、フランスに北欧テイストが混ざった感覚で、面白さはあったがムニュ内の繋がりに少し硬さも感じた、経験豊富な山田オーナーが居るので、そうした点が5ヶ月経ってどう変化しているのかに興味があった。

 初めてレセプションに訪れた時は道に迷ったが、3回目それも昼間だと迷わない、店を通称「マッカーサー道路」と呼ばれる環状2号の北側ではなく、道を挟んだ南側にしたのは正解だったと思う、雑多な飲食店街を抜けて少し歩き、更には店前には神社と公園があるので、俗な環境から意識が逃れられるからだ(笑)。
 12時丁度に入店するが同時に1組来店、その後も来客があり、個室以外の4つあるテーブルは埋まった、レストラン飽和状態の東京で、平日昼席ながら好調な集客ではないか、既に料理マスコミ等でも注目され始めている。

 山田オーナーと加藤料理長に挨拶し、魚&肉料理両方ある6,500円(一方だと4,500円)のムニュをお願いする、料理は以下のとおり、 

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・ロイロム モルト

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・蕪

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・紀州うすい 自家製フレッシュチーズ

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・「エスキス」のパン・ド・カンパーニュ

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・アオリイカ セロリ パセリ

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・フランス産リ・ド・ヴォー アスパラガス

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・和歌山産ヒラスズキ オニオン 牡蠣 タラゴン

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・オーストラリア産仔羊背肉 スモーク

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・苺 ナッツ エルダーフラワー

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・栗の蜂蜜(フィナンシェ)

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・エイブルスキーパー
・エスプレッソ

 ロイロムは北欧で使われる白マス卵の事、鶏卵殻型容器に入れたのは蕪のポタージュ、「紀州うすい」は和歌山産のえんどう豆、これを自家製チーズと合わせ銅鑼鉢みたいな和の器に入れた前菜は、特に印象的な一品だった。
 イカとセロリは相性のいい組み合わせだが、スライサーで削った薄いセロリが面白い。油の中でコンフィ状に火を入れたと説明あったリ・ド・ヴォーは、関西で使う「油かす」みたいな食感、旬のアスパラガスが美味。
 料理長は和歌山で働いていた縁で、和歌山産の食材をよく使うが、ヒラスズキの食味感は抜群、低温調理ではなく皮目も身もしっかり焼き旨味を引き出している、牡蠣ソースも相性よかった。
 豪州産仔羊はポピュラーな食材だが、柔らかく火入れし、スモークした事により一段グレードの高い料理になっていた、上に乗せた苦味のある黒キャベツも効いている。
 デセールは割とあっさり目で、味的にはもう一工夫欲しいかな?とも感じた、最後の北欧風エイブルスキーパーは、日本のタコ焼き器で焼いたそうだ(笑)。

 ムニュ全体では前回より料理間の繋がりがスムーズになった印象、フランスと北欧がたまたま同席していた感じから、より融合して来たと思った。日本、フランスとデンマークで働いた料理人が日本へ帰り、学んだものを咀嚼して自分の料理にする、私は北欧のレストランは未訪問だが、加藤氏の料理は随所に「ああ、これは北欧のエッセンスだろう」と感じさせるものがある、少ない構成でピュアな美味しさを食材から引き出そうとするのは、和食にも共通性がある。
 前記事の「古屋オーガストローム」とは対照的だが、それぞれ存在感のある料理、こうして欧州最前線から帰って来た料理人達が東京の第一線で活躍し始めると、客としては嬉しいが、既存のレストランにとっては脅威でしかない(笑)。

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 失礼ながら一見茫洋として掴み処のない印象の加藤料理長(笑)、「項羽と劉邦」なら劉邦タイプだが、彼みたいな人が結局勝者になるのかも知れない、彼以下の厨房スタッフも皆若い、これからも料理は進化するだろう事は間違いないと思う。
 オーナーになって、すっかり貫録のついた山田氏も、不可思議なジョークは減ったが(笑)、これから東京を代表するオーナー兼ソムリエとして活躍してくれるだろうと期待している。
 気になった点だが、店内が少々殺風景な事、これが北欧調なのかも知れないが、レストランならもう少し「ときめき感」が欲しい気がする、進化が期待出来る店なので、次に店がどう変わっているのかも楽しみだ(笑)。


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赤坂「古屋オーガストロノム」(2016年4月)

 赤坂のフランス料理「古屋オーガストロノーム」の古屋賢介料理長は、ベルギー南東部、フランスとの国境に近い街パリウ‘Paliseul’にあったレストラン‘Au gastronome’で働いていた事から、店と料理長への敬意を込めて自店の名前にしている。
 古屋氏は当時ミシュランで二つ星評価をされていたこの店で1年間働いた後、一旦日本へ帰国するが、総料理長に懇願されて呼び戻され、約2年間実質的な料理長として勤め上げた。
 今年一月の初訪問時に彼の料理を体験して、この経歴は決して誇張ではないと思った。研修生として短期間働いて来たのではなく、店の重要な戦力だった事は、料理を食べればある程度は判る、ましてや料理長ともなれば、料理の全てに注意力と細心さが求められる、前菜、魚、肉料理、デセール、更にはパンまで焼くが、どれも平均点以上の高いレベルを維持し、体操競技なら種目別ではなく個人総合を戦えないと通用しない、「今日はパティシェが急病なので、デセールは業務用のアイスを使う」では、少なくとも星付き店の料理長は失格だ。

 この日、関西の食仲間が東京に来るのに合わせ、食事をする店の候補を考えた時に、真っ先に頭に浮かんだのはこの店だった。既に定評のある東京の名店より、まだ知名度は低いが、私自身が行って惹かれた店を、他のフランス料理経験値の高い人がどう評価するのかは、一番興味を持つ処だ(笑)。
 さらに友人夫妻も誘って、合計4人のうるさい食通?が赤坂に集まった。サービス担当の秋葉氏と、新規参入した石橋氏に挨拶し始まったディネ、古屋料理長が前夜寝ず?に考えたと聞く(笑)当日の料理は以下のとおり、

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・新玉葱のポタージュ、ホタルイカと春菊

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・自家製パン

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・ロワール産ホワイトアスパラガスのポッシェと帆立貝のクリュ

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・ブルガリア産フォワグラのポワレ、「関山桜」エキスのソース「春の装い」

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・松坂産地卵を66度40分で"温度卵"に、現代版ウッフ・ア・ラムーレット、フランス産黒トリュフ添え

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・宮城産スズキとイタリア産緑アスパラガス、ピエドムートン(茸)、マスタード風味のソース

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・イタリア産仔うさぎ 三種のプレパラション
背肉のロティ、アプリコットソース、ベルギービール「レフ」煮込みカルボナード、 レバーのソテー、エシャロットとシェリービネガーのソース

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・桜風味の苺パンナコッタ

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・ココナッツミルクのグラス、黄人参のピュレ、カカオ70%のチョコレートソース、チュイール
・エスプレッソ

 アミューズに前回同様ポタージュを出すのは、最近他店であまり見ないが、個人的には好みだ、新玉葱の香りが生きていた。季節の白アスパラと良質な帆立貝は見事なマッチで、これなら生ハムは要らなかったかも知れない。
 フランス産が禁輸なため、代替使用したブルガリア産フォアグラの質の良さに驚く、甘酢味と合わせるのは定番だが、桜エキスが面白いアクセントになっていた。
 ウッフ・ア・ラムーレットは前回も印象に残ったもので、元は家庭料理だそうだが、赤ワインを多く使いトリュフが加わると、豪華さが増すと共に旨味が凝縮する、伝統的なやり方だが、結局これが一番美味しい卵料理ではないかと思う。
 鱸は低温調理ではなくしっかり火を通し、濃い目のソースを使う、こうした手法も最近東京で見なくなった。
 仔兎の料理は、デル=ビュルゴ時代のPARIS「タイユヴァン」の「ラパンのデクリネゾン」を思い出した、これもしっかりと火を入れ、三種類のソースを使う事によって、繊細な仔兎の肉質が生きている。
 デセールがいいのも前述のとおりに古屋氏の特徴、黄人参とショコラソースの意外な相性は面白かった。
 厨房は現在古屋氏だけなので、当然ながら全て一人で作る、それでいて仔兎料理の三種ソースみたいに決して手を抜かない、この辺りに欧州の最前線で料理長をやっていた料理人の矜持みたいなものを感じた。
 私自身が理想とするのは、1990年代のフランスのフランス料理なのだが、どうやらそれは本国では絶滅寸前で、主流はベルギーへ渡ってから日本へやって来た、そんな印象も持った(笑)。

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 ‘Au gastronome’の総料理長だったミシェル・リポットのメッセージ

 サービス担当の秋葉氏の話は前回以上に濃く面白い、東京のフランス料理40年史を30分で聞きたかったらこの人をおいて他にない(笑)。当夜はレアな昔話に加え、門外不出?の貴重な資料も見せてもらい、集まったベテラングルメ達も思わず絶句した(笑)。 開店以来ディレクトールとして支えて来た秋葉氏だが、残念な事に4月以降は非常勤職の待遇になり、毎日は店に出なくなるそうだ、後任の石橋氏に期待すると共に、私が行く時には前もって知らせるので、秋葉さん出来るだけ来て下さいと、勝手なお願いをしておいた(笑)。
 現在の東京フレンチでは、モダンスパニッシュやモダンノルディックに感化された料理が増えているが、それだけではない伝統的なフランス料理は美味しいのだと云う事を、あらためて教えてくれる店、私が年齢を重ねたのもあるが、結局最後はこうした料理に還って来たいと思う(笑)。
 濃くて楽しい夜を提供してくれた、古屋料理長、秋葉・石橋両氏に感謝。


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綾瀬「手打ち蕎麦重吉」

 前記事で「老後は一人静かにお得なフレンチランチを巡る生活がしたい」と書いたが、それと同時に、いやそれ以上に実行したいと思っているのが蕎麦屋巡りだ(笑)。
 勤め人時代にもランチ時は蕎麦を食べていたが、路麺や街場の平均的な蕎麦店が多く、手打ち蕎麦店は少なかった、値段面や摂取カロリー効率を考えると、本格派の蕎麦店はどうしても分が悪い。
 手打ち蕎麦店巡りは老後の楽しみに取っておこうと、以前から思っていたが、どうやらその老後が近づいてきた、これから近場の足立や葛飾の蕎麦店中心に廻るつもりでいるが、ただ私は殆ど自転車で出かけるので、飲酒運転?ご法度につき、昼蕎麦が中心になると思う(笑)。
 まずは自分の中での「標準原器」を作る意味で、味を確認しておこうと向かったのが、このブログでも取り上げた事のある、千代田線綾瀬駅近くの「重吉」、自転車で行ける範囲では最も蕎麦が美味しいと思っている店だ。

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 元ミュージシャンでドラマーだったと聞く、異色の経歴を持つ店主が毎日昼夜2回打つ蕎麦は本格派、今では綾瀬を代表する名店として、雑誌やWEB記事でよく紹介される様になり、土日に店の前を通ると、外で順番待ちをしている客も居る。
 私は以前二ヶ月に一度位は訪れていたのだが、ブログを始めてからは、定番の店より新規訪問店の方が記事に書き易いと云う、邪悪?な動機もあり一年以上訪問していなかった、それに身近な名店は「いつでも行けるから」との安心感があって、意外と行けないものだ。 
 この日は平日昼、開店時間すぐに行ったので、一番乗りかな?と思ったら甘かった(笑)、既に2組4人の客が着席していた。

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 2人席に座り献立を見る、以前より少しだけ値上げしていたが、東京で本格的な手打ち蕎麦なら良心的な値段ではないかと思う。やはり目が止まったのが、「平日お昼のみ」とことわりのある4種の「お昼のセット」、この店は丼物も結構美味しいのだ(笑)、結局蕎麦だけのつもりが「親子丼セット」(税込1,080円)を注文する事に。

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 まず運ばれて来たのが、蕎麦屋ではお馴染みの蕎麦茶だが、この店のものは特に香り高くて美味しい。
 暖簾がかかっていてよく見えないが、厨房内には店主夫妻二人以外にもう一人男性の姿がある、これが足立地域本に載っていた店主の息子さんか?今、飲食店の後継問題は難しい事多いが、まずは手伝いから始めるのは、子供にその意思があるからと思っていいのだろう、しっかり続けて欲しいものだ。

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 暫しの待ち時間で先に出てきたのが、親子丼と漬物と蕎麦ツユで、蕎麦が来るのを待てず先に食べてしまう(笑)。

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 以前と変わらずに、蕎麦ツユに使う「かえし」の効いた濃口の味、「そう、これが重吉の丼味だった」と、脳の記憶回路が反応する、そして箸が止まらなくなる(笑)、自分でも親子丼を作る事あるが、どうしても味が薄くなってしまう、この味が出せない。

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 私は「早食い」なので(笑)、親子丼がなくなりつつある頃に「せいろ」蕎麦が運ばれて来た、何処の蕎麦を使ったのかは客から見える場所に掲示しているが、この日は京都と鹿児島の蕎麦を使っているとの事。
 この店では田舎蕎麦以外は二八割だったと思う、まずは何も付けずに蕎麦だけを食べてみるが、ブログ記事にした「舞扇」の蕎麦とはあきらかに違い、味も喉越しも柔らかな感じ、大阪「荒凡夫」で食べた福井の蕎麦を使った二八と似ている。
 続いてツユを付けて食べるが、江戸前の醤油風味の強いツユが鼻に抜ける、もしかしたら過熱をしない「生がえし」を使っているのか?とも思ったが、これは未確認。
 蕎麦切りの技法は江戸時代に確立したらしいが、それまでは殆ど蕎麦掻き状態で食べていた蕎麦粉を、小麦粉等で繋いでから延ばし、包丁で切り醤油ツユを付けて食べる事を考案した先人達の知恵にあらためて敬服、ラーメンからつけ麺が生まれた経緯みたいに、「そこにあるもの」をより良く改良するセンスは、昔から日本人の最も得意とする処か(笑)。

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 蕎麦湯はベジポタスープみたいなドロっとしたタイプ、これは茹で湯に後から蕎麦粉を加えていると思う。
 
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 久しぶりの重吉の蕎麦はやはり美味しかった、これを私のスタンダードとして他店を廻りたい、判断にブレが生じたら、またこの店へ帰って来たいと思う(笑)。


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御茶ノ水「ビストロ・ヌー」(2016年3月) 

 御茶ノ水(末広町)にあるフランス料理「ビストロ・ヌー」は、東日本大震災のあった2011年3月に開業したので、今年で5周年を迎える、私の初訪問は2013年の1月だが、以降ランチが殆どながら何回か利用させてもらっている。
 私の家からは地下鉄千代田線一本で行けるので、急にフランス料理が食べたくなったら、ランチのカウンター席ならまず予約しないでも滑り込めるのでありがたい。帰りには私の「第二の故郷」(笑)、秋葉原を歩く事が多いのでその楽しみもある。
 この日も店への到着は開店時間の11時半、先客がいたのでちょっと驚いた(笑)、磯貝料理長に挨拶し、いつもどおりカウンター席に座る。料理一人、サービス一人の体制は変わらず、今人材不足の東京ではランチは料理人一人、つまりワンオペでやっている店も増えているので、この店みたいに定着したサービスが就いている店は、それだけで「財産」と云えそう(笑)。

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 いつもの黒板ランチメニューは前菜+メイン∔コーヒーで税込1,620円だが、この他に黒板料理を主に組み合わせた「おまかせランチ」が2種あり、前回同様に2,700円の方をお願いした、提供されたのは以下のとおり、

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・カンパーニュ系のパン

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・カリフラワーのポタージュ

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・5周年記念一杯500円のペイドック・シャルドネ

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・イチゴとフォアグラのクリーム

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・ホワイトアスパラガスのサラダ

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・仔羊と野菜の煮込み

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・紅玉のタルト、バニラアイス

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・エスプレッソ

 ポタージュはこの店で何回かいただいているが、油脂はあまり使わず、カリフラワーの味・香りを強調したもの。次のグラスに入れたフォアグラクリームは新機軸で、なかなか面白い料理、個人的にはカットした苺とピュレ状にしたフォアグラの繋がりに、もう一工夫欲しいかな?とも感じた。
 季節のホワイトアスパラガスは茹でてから皮剥きで削ぎ切りし、スモークサーモンとポーチドエッグと合わせ、ビーツのピュレで食べる、これはまさに春を感じさせる料理で美味だった。
 肉料理はストウブのココットに入れたトマト味のナヴァラン、加えた白インゲン豆がいいアクセントになっている、プリフィクスのメニューではあまり煮込系を選ばないのだが、これはシンプルな美味しさで「もっと食べたいな」と思ってしまった(笑)。
 デセールもシンプルなタルトだが、パコジェットで作り立てのアイスが効いていて、キチンとしたレストランデセールになっている。
 全体的に安定さが増して、安心して楽しめるランチメニューだと思った。磯貝料理長はバーテンダーからフレンチ料理人になった異色の経歴の持主だが、同世代の麻布十番「ジャニコロ」の内野料理長とも共通点を感じる、変に素材をいじり過ぎず、主役がハッキリしていて「何を食べさせたいのか」の意図が明確だ。
 
 正午を過ぎるとテーブルは満席になった、予約なしで入って来た男性4人組は日本語と中国語で会話しているので、中国系企業とのIT関係等の商談だろうか?フランス特にPARISでは、ランチタイムに商談をするのは普通な事、日本もこうした時代になったかと、昔から女子ばかりのフレンチランチを見て来た私は、妙に感慨深くなる(笑)。
 食事後、秋葉原へ出て久しぶりに街中を歩いてみたのだが、平日ながら凄い人出だった。大阪難波&日本橋では中国・韓国の人達ばかりだったが、秋葉原は世界中から人が集って来ている、聴こえて来る言語も仏語にスペイン語、何処の言葉だか判別不能な会話もあった(笑)、その中で歩道にはメイドの格好をした美少女が立ち、笑顔で店のチラシを配っている、白日夢みたいなシュールな光景。
 大通り沿いにオープンした高級ハンバーガー店は多国籍な客で混雑している、値段は1,000円超だから「ここで食べるなら、少し歩けば1,500円ランチのいいビストロあるよ」と教えたくなるが、英語は苦手なので?やめた(笑)。
「もし東京に一日しか居られないのなら、秋葉原に行きなさい」と云いたい、とにかく刺激があって毎日カオス状態の不思議街だ。

 今から十年位前、仕事が忙しくて心身共に落ち込んでいた時、「苦しみしか感じない仕事は早く辞め、老後は一人静かにお得なフレンチランチを巡る生活がしたい」と願っていたが、どうやらその状態に近づいて来た(笑)、そんな目的にピッタリなのがこの「ビストロ・ヌー」、毎月は無理としても気軽に訪れたいなと思う、磯貝料理長これからも宜しくお願いします(笑)。


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後楽園「舞扇」

 文京区春日にある「舞扇(まいせん)」は、2008年にこの地に開業した手打ち蕎麦の店だ、私は長年近くに勤めていたので、以前から店の存在は知っていて、行ってみたいと思いながらも、昼休みで往復するには微妙な距離、帰宅時には反対方向になるので、つい行きそびれていた。諸般の事情により、この3月で勤務先を辞める事になったので、その前には行っておこうと、ある日思い立って昼に訪れてみた。
 店の場所は地下鉄後楽園駅から中央大学工学部へ向かい富坂を上り右手、都営バスの富坂上バス停前にあるが、隣が以前ブログで紹介したベーカリー「IENA」だ。

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 独特な引戸を開けると、意外な程にモダンな雰囲気でカフェみたいな店内、13時過ぎの入店だったせいか、思ったより空いていて、これなら1時間以内に帰れそうだ(笑)。夜7時のニュースを担当する、NHKアナウンサーの松村正代さんみたいな雰囲気の女性(笑)が、「どうぞ椅子席へお座りください」と云ってくれたので、壁を背にして座る、椅子席は10でカウンターが5席ある。

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 カウンター奥には酒類の瓶が並び、冷蔵庫の中にも何種類か日本酒があった、夜は蕎麦と酒の店になるみたいだ。
 ランチの献立は「野菜かき揚げせいろ」「ミニ野菜かき揚げ丼せいろ」「豚なんばん蕎麦」(以上税込950円)と「豚せいろ」(900円)の4種で、他に単品の蕎麦もある。初回と云う事もあり、あらかじめWEB上で調べて、かき揚げの評判がいいみたいだったので、この中から「野菜かき揚げせいろ」をお願いした。
 酒好きなら蕎麦が出来上がるまで、蕎麦系ツマミと日本酒でも飲みたくなるのだろうが、仕事の合間だとそう云う訳にもいかず(笑)、酒類が出ている席は無かった。

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 そう長い待ち時間でなく運ばれて来たのが「野菜かき揚げせいろ」、器類はそれ程高価とは思えないが、なかなか趣味のいい物を使用している、手前に細打ちの蕎麦、奥にかき揚げだが、噂どおりにこのかき揚げが厚い(笑)。 直径で10cm、厚さ5cm位だろうか?見た目はとても綺麗に揚がっている。

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 まずは蕎麦を蕎麦ツユ付けずに食べてみる、おそらく二八割だと思う、細打ちで喉ごしがいい蕎麦、東京で使われるのは北海道や茨城の蕎麦が多いが、大阪で食べた福井の蕎麦粉を使った二八とは少し違う、あちらが柔ならこちらは剛と云う感じだ、これは粉の違いか水の違いか、あるいはその両方なのかとなると、私の凡俗な舌では判別不能(笑)。

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 続いて野菜かき揚を崩しながら食べる、中身は人参、南瓜、長葱、当然だが中まで的確に火が通っていて美味しい、この厚さを揚げる技術は相当なものだと思う。
 蕎麦ツユも江戸前辛口で嫌な甘さがない、蕎麦⇒かき揚げ⇒蕎麦⇒かき揚げと交互に食べていくと止まらない、「蕎麦大盛りにすべきだった」と思う頃には完食。

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 最後は蕎麦湯で締める、これはオーソドックスなサラっとしたタイプ、満足至極な蕎麦ランチでした(笑)。
 帰り道「しまった、これはもっと早く来るべきだった、辞めるまでにはもう一度来よう」と反省して、すぐに再訪問をした。

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 この時に頼んだのが、同じランチ献立からで「ミニ野菜かき揚げ丼せいろ」、勿論蕎麦は同じだが、かき揚げをご飯の上に置く事を想定し厚みを薄くしてある、中身も前回と違い南瓜と玉葱が主で、丼タレは野菜に合わせたのか少し甘口に感じた。

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 どちらも美味しかったが、ご飯を食べるとどうしても蕎麦の印象が薄れる、個人的にはこうした本格的な手打ち蕎麦店では蕎麦を中心にしたいので、どちらが好きか?と訊かれたら、かき揚げだけの方を採りたい。
 いい蕎麦店でした、電車賃かけてまで行くか?となると答え難しいが、家や勤め先の近くにあったなら通いたい店だ、そう云いながらこれまで来ていなかったのを悔やんだのだが(笑)。
 東京ドームや小石川後楽園も近いので、何かのイベントや野球観戦に来た時には、寄ってみる価値ある店だと思う。


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麻布十番「ピッツェリア・ロマーナ・ジャニコロ」(2016年3月)

 去年新規訪問した店の中では、料理とデザートが鮮烈だった点で三指に入れたいのが、麻布十番のイタリア料理「ピッツェリア・ロマーナ・ジャニコロ」、ようやく2回目の訪問が出来た。
 今の東京は次々と新店が登場するので、定期的に訪れていた店に「行ってみたい店」を加えると、次の訪問が前回から1年以上経っていたと云う事もありがちだ、更には「今度行こう」と思っていたら、何時の間に閉店していたと云うケースもある(笑)。それだけ店の数に客の数が足りていなくて、熾烈な競争状態になっている。これからは決まった数の客を取り合うのではなく、今までレストランに来なかった客層を開拓する必要がありそうだ、少ないながら「子連れ客OK」の店も現れているのは、店側がそうした点を考慮して来たのだと思う。

 前回は予約しないでフリの訪問だったが、今回は前日に予約して行く事に。花粉症が酷くてマスクをしていたが、ガラス入りドアの前に立っただけで、オーナー兼サービスの渡邉氏が気付いてくれた、さすがは高級店の青山「サバティーニ」出身だけあって、一度でも来た客を忘れていない(笑)、プロは顔だけでなく身体全体の雰囲気で覚えるらしい。
 厨房に近い席に案内されて内野料理長に挨拶する、今回も前回同様に通常のランチメニューではなく「おまかせ」で事前にお願いをしていた、その内容は以下のとおり、

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・アーティチョークの世界

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・ローマ近郊の白、ソーヴィニヨン種

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・マテ貝と白いんげん豆

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・香草を巻いた豚のロースト、ポルケッタ

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・オーナーが見せてくれた、一本焼き上がった状態

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・桜海老と蕗の薹、ドライトマトのスパゲッティ

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・苺のスープに溺れた水牛のモッツァレラ・

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・チョコレートのヴァリエーション

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・エスプレッソとキャラメル(もう一品あったが画像撮り忘れ)

 アーティチョークは伊語で「カルチョーフィ(Carciofi)」、ウィキペディアによると15世紀のナポリ近辺で本格的に栽培が開始され、その後ヨーロッパ全土に広がったとあるので、イタリアが本家本元になる、アスパラガスと同じく春を告げる野菜、フリットがまるで筍の天ぷらみたいで「春が来た」と思った(笑)。続くマテ貝と白いんげんの料理は野菜の扱いが秀逸。
 肉料理は豚の三枚肉をロール状に巻き、蜂蜜と白ビネガーで調味しながらローストしたと聞く、あとで夜用に焼いたものを見せてくれたが、この艶は頬ずりしたい程(笑)。古代ローマ時代には蜂蜜をよく料理に使ったと文献で読んだが、この料理も古代にルーツを辿れるのかも知れない。味は酢豚みたいに甘味と酸味のバランスで豚脂身の旨さを引き立たせる料理、添えられた野菜も美味だし、何を食べさせたいのか明確で「こんな料理が食べたかった」と思わず膝を打ちたくなる(笑)。
 これで終わりかな?と思っていたら、通常のイタリア料理の順番をあえて外して出たのが桜海老と蕗の薹のパスタ、海老の出汁が細いスパゲッティーに絡まり病み付きになりそうに旨い、乾麺でこれだけ感嘆したのは初めてかも知れない(笑)。
 ドルチェが美味しいのも特筆すべきで、この日の2品は客単価2万位の高級店で出しても通用しそうと思った、内野料理長が全て作るそうだが、優れた料理人脳とパティシェ脳を両方持てる人は意外に少ないものだ。

 内野拓料理長は1980年生れ、調理師学校は出ておらずイタリアでの修行歴もない、学生時代にアルバイトで飲食に関わった事から料理に興味を持ち、青山「サバティーニ」で料理人歴をスタート、そこでサービスをしていた渡邉氏と出会い、この店をオープンして5年になる。
 マンガが大好きで尊敬する人は鳥山明と公言するこの料理人、ポロシャツを着て料理する姿は現在でもアルバイト学生に見えなくもない(笑)、決して広いとは言えない厨房で作るのは、人真似でなく皿の上で小さくチマチマとしない料理とドルチェ、何か突き抜けているものを感じさせる、これは新世代の新感覚料理人が現れたなと思う (笑)。
 独立するにあたって、内野氏をパートナーに選んだオーナーの渡邉氏の眼力も凄い、前回来た時はこの料理人の実力ならピッツェリアではなく、十分リストランテで通用する筈だが?と思ったのだが、今回少し考えを改めた、1,000円のピッツァランチも出すし、客の要望次第ではこうした本格的なメニューも同時進行で対応できる柔軟性、これから東京で生き残るのは、こうした店なのかも知れないと思った。

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 レストランでは初回の訪問で良くても、再訪問では「前回の方が良かったな」と思う事は多い、これはファーストインプレッションの新鮮さを超える事が難しいからではと思うのだが、今回再訪問して前回の料理印象を更に上回った、それだけこの料理人には将来性がありそう、現在第二店も計画中との事で、今後ますます楽しみな店になると思う、「グリグリ」「コティディアン」もあるし、やはり麻布十番に住みたい(笑)。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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