最後の晩餐にはまだ早い


麻布十番「グリグリ」(2017年2月) 

 「あなたの店選びは変わっている、何が基準なの?」こう云われる事があるが、私自身はそう深くは考えていない(笑)。訪問のメインにしているフランス料理店にしても、アクセスの良さや、料理マスコミ注目度の低さ(「高さ」ではない(笑))で選ぶ事が殆どだ、ただ年齢や経験を重ねて、以前と変わったなと思うのは、料理人一人で厨房を回している店を選ぶ事が多くなった、前記事の「MAMA」や、人に勧めることの多い「古屋オーガストロノム」「ビズ」「ビストロ・ヌー」や札幌の「プロヴァンサル・キムラ」「リアン」等、厨房一人サービス一人の最小布陣店、「理由は?」と訊かれたら、「料理人の考えがよく理解出来るから」と答えると思う。
 調理スタッフが増えればそれだけ仕事は精密になり、見栄えを含め料理一皿の完成度は高くなる、だがそれを味わった時に、何か料理全体の繋がりに不自然さを感じてしまう時があるのだ、極端な例えだが、4楽章の交響曲を1楽章ずつ違う指揮者とオーケストラが演奏した印象と云えば、音楽好きな人なら判ってもらえるかも知れない。
 まあこれは私が変わっているからで、多くの人はそんな事考えないだろう、厨房もサービスも人数が多ければ、より快適な時間を過ごせる筈、まずはそうした店を選んでください(笑)。
 在関西のフレンチ好きの食友人が東京に来る事になり、私が推薦したのは、やはり料理人一人の夫婦で営む店で、このブログでも数回取り上げた麻布十番の「グリグリ」、賛同してくれたので麻布十番の夜に合流する事になった。

 フレンチディナーは今年初だ、最後まで眠らないで居られるか不安だが(笑)、週末で賑わう麻布十番商店街を抜け、店が入ったビルに辿り着くが、階下のテナントが美容室に変わっていた、次来る時まで続くのかなと、余計な心配をしてしまう(笑)。
 テーブル席で始まったディナー、まずは全品をお見せしたい、

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・アミューズ(ブリオッシュの上に桜の葉のバターと桜の花の塩漬け、カマンベールと青リンゴのイカ墨タルト)

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・卵黄とブイヤベース、パルミジャーノとミガスパウダー

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・北海道産毛蟹、身と味噌、パパイヤ、アーモンドのソース

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・帆立のスープ仕立、百合根、レモングラスとバイマックルー風味

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・北海道産鱈、緑豆、イカ、ミントのソース

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・金目鯛のポワレ、牛蒡チップ、トリュフとトランペット茸のピュレ

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・ブレス産仔鳩、胸肉と春菊、しし唐

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・同 モモ肉をスパイス唐揚げに

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・同 内臓を使ったスープ

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・ピマンエスプレットのソルベ

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・ショコラと栗、上に金箔

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・ガレットブルトンヌ

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・ベトナム産チョコレートを使った自家製板チョコ
・アンフィージョン

 伊藤憲料理長の料理を一言で表現すると「抽斗の多さ」だろうか、同世代の「オテル・ド・ヨシノ」手島料理長が一つの料理を時間かけて精緻なものにするなら、伊藤氏は過去の料理に固執せず、新しいアプローチを常に試している印象。今回特に感じたのはスパイスの多用で、帆立スープに加えた「トムヤムクン」風な香り、あらかじめソミュールに浸けたと聞く鱈の味わい、金目鯛に添えられたピュレの複雑な味、鳩モモ唐揚げの多彩スパイス、プレデセールのピマンエスプレッド味等、積極的に攻めている印象を受けた。
 同行者が「フランス人料理人が『アジア』を取り入れた料理が一時流行したが、それを思わせる、日本人料理人がやると単なるフランスの『物真似』になりがちだが、そうではなくフランス的俯瞰からの料理になっていると感じた」と語っていたが、なかなか鋭い指摘だと思う(笑)。
 以前この店でディナーに鳩が出て栃木産だったが、食肉として飼育された歴史の長いブレス産はそれとは違う、優劣ではなく脂や肉味の存在として違っているので、当然調理法も変わって来る、その辺りはフランスで長く働いた伊藤氏は熟知していて、今回の3種調理は最近では出色の鳩料理だった。
 全体的には、フランス料理経験値の高い客向け構成だなと感じる、随所に刺激があるので眠くならなかった(笑)。あえて言うならメインデセールが、飾りの金箔は要らないと思うので、もう少しチョコレートの質を高めれば更に良くなると感じた事か。

 伊藤マダムとも話をしたのだが、今東京フレンチは質、量共に凄い事になっているが客の数が追い付いていない、全体数が決まっていて、新しい店が話題になると皆は其処へ向かうので、その分何処かの店から客が減ってしまう(笑)。業界全体が発展するにはインバウンド客招致も必要だが、国内需要、特に若い層の客を呼ぶのが課題になる、そのためには何が必要なのかを、これから店も客側も考えないといけないと思う。「グリグリ」みたいに、他店とは少し違う独自なコンセプトの料理方向は、個性表現としていいと思った、あとは客とどう折り合いを付けるかだ。
 食べる側としても考える事の多い、なかなか刺激をもらえる料理で楽しい夜になりました、伊藤夫妻ありがとうございました(笑)。


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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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