最後の晩餐にはまだ早い


大阪・堺「ファーマーズオリジン」(2018関西食べ続け⑩)

 濃くて重かった関西食べ続けも、遂に最終訪問店に辿り着いた(笑)。
 友人の車で向かったのは、堺市美原にある「ファーマーズオリジン」、赤身熟成肉と農家直送野菜を提供するレストランだ。
 建築内装関係の工務店が経営する店舗は2015年のオープン、当初はカフェ的メニューが中心だったが、料理長が替わって昨年リニューアルした、新しく就任した安井料理長は、こちらへ来る迄は東京で働いていて、当時からの知己だったので、今回訪問を楽しみにしていた店だ。

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 アクセスはよくない、一番近い駅は南海高野線の北野田だが、かなり歩く事になる、車か自転車でないと行き難い。一見ファミリーレストランみたいな造りで、広い駐車場に2階建ての横広い店舗、2階は夏場ビアガーデンとして利用可能らしい。親会社が工務店なので内外装やテーブル等は自社製みたいだ。

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 通常のランチメニューは1,000~2,500円位だが、今回は友人の計らいで熟成肉を中心に、特別メニューを組んでもらう事をお願いしていた。

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 店入口近くにある肉熟成用の冷蔵庫、熟成肉についての説明書きも貼ってある。「牛肉本来の美味しさを最大限に引き出した」と説明しているが、詳しく知りたい人は「乾燥熟成肉」でWEB検索をしてみてください、数年前からブームが続いている。
 まずは当日の料理から、

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・ウツボのタタキ

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・ウツボの唐揚げサラダ

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・熟成和牛(広島県産黒毛、40日熟成)のココットロースト

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・同 切り分けて

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・穀米

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・タブレットPCを使ったデザート紹介

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・パリブレスト
・コーヒー

 いきなり出て来たのが、なんとウツボだった。私はたぶん人生2回目だと思う、ウツボはウルトラ怪獣のジャミラみたいな顔をしているが(笑)、海で出会ったら道?を譲りたい相手、でも食べてみると見かけよりずっと繊細な白身の肉質で美味しい、鱧を更に味濃くしたような印象、「たちじゅう 園」の太刀魚とも共通点あり、細長くて身をくねらせて海を泳ぐ魚は、味の傾向が似ているかも知れない。
 安井氏は高知県の生産者や漁業者と繋がりがあり、今回も「鰹のタタキ」を出すつもりだったが、いい鰹が入らなかったのでメンバーを考えウツボにしたそうだ、タタキ、唐揚げ共に珍味で美味だった。
 熟成肉は3人分を野菜と一緒にココットでローストにしたもの、過去熟成牛肉は大阪長居「又三郎」、東京西麻布「ル・セヴェロ」で体験したが、前者が炭火直焼き、後者がフライパンによるソテーと、この店を含めて3店で調理法が違うのも興味深い、熟成肉自体の個性が強く、それだけ汎用性があると云う事か。
 今回は風味と旨味が印象的だった、私は熟成肉を深く語れる程の経験値ないが、赤身熟成ながら黒毛和牛特有の脂がある、これが熟成により味わいが複雑になるのではと感じた。添えられた野菜も美味だった、近隣農家のものが中心との事だが、土の香りが感じられるような、しっかりとした野菜本来の味がする、野菜はブランドより鮮度が一番大事なのだろう。
 デザートはもう一息、これは今後の向上を期待したい、あとスープor汁系が一品あると良かったと思う。
 うるさい親父達が来るからと、朝から気合入れて待って居たらしい、安井料理長とスタッフの皆さんお手数かけました、ありがとうございました(笑)。

 テラス席と云うか屋根囲いある別スペースは犬と同席可なので、愛犬を連れた客も車でやって来る、そのため犬用メニューも揃えていて、店前では一緒に記念撮影をしている。少子化&インスタ映え時代なので、こうした店は今後流行りそうな気がする、狙いはいいと思った。
 可愛らしい犬達とは残念ながら外見が違うが(笑)、我々おじさんグループも最後店前で記念撮影、これで全ての店訪問が無事に終わった。
 友人の車で南海泉ヶ丘駅まで送ってもらい、リムジンバスで関西国際空港へ直行する、途中関空自動車道を走っている時に窓外に見えた、大阪湾に沈む夕陽がいい景色だった。

 今回の関西食べ続け、インフルエンザ後で体調万全でなく不安もあったが、大阪と和歌山の人達から元気を貰いました、やはり関西の魅力と財産は人間だと思う、「どや、これ食べて、元気出し」、何かそんな声が今でも聞こえてくる気がする(笑)。
 お会いした皆さま楽しかったです、この場でお礼を申し上げます。また今回お会いできなかった方失礼しました。老後の心配等これから気持ちが萎えそうな時には、元気を貰うためにまた西へ向かおうと思います(笑)。



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大阪・狭山「パン ビヨリ(Pan Biyori)」(2018関西食べ続け⑨)

 今回の関西食べ続けも、ようやく最終日になった、でもそう簡単には帰れない(笑)。
 此の日は堺市美原区平尾にある、熟成牛肉を提供するレストランでのランチが目的だが、その前に寄った狭山駅前にあるブランジェリーを紹介したい。
 南海電鉄なんば駅の大階段は、まるで宝塚歌劇場だなと毎回思うのだが(笑)、南海高野線に乗って降りたのは狭山駅、在阪の食友人と同行するためだが、この狭山駅周辺には商店が殆どない、住民は結構居るが買物は車で郊外型スーパーへ行ってしまうみたいだ。駅西口近くには美容室等があり、その一角に突然出現したのが「パン ビヨリ(Pan Biyori)」、昨年7月の開業で、店主は多店舗展開している「メゾンカイザー」出身と聞く、開店以来友人の御用達ブランジェリーだ(笑)。

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 狭山住人には失礼ながら、「鄙にも稀な」と云いたくなるような、とてもお洒落な店舗外観、隣は美容室だがこの一角だけ切り取れば、大阪本町辺りと云っても通用しそう(笑)。

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 扉を開けると、並んだパンが目に入る、こうして低い位置に広く並べるのは東京でも流行っている、対面販売ではなくトレー式、値段は安いと感じた。店内にパンの発酵臭と焼いた小麦のいい香りが漂う、美味しいパン店に共通する匂いだ。

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 ブランジェリーの看板商品バゲット、売れ残りロスが出易いので、バゲット類を置かない店もあるが、やはりこれを置かないと「パン屋」で、あれば「ブランジェリー」だなと思う(笑)。

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 窓際に置かれた角型のレーズンパン、場所を上手く使っている。
 店手前が販売スペースで、奥がパンを成型・焼成する作業スペース、仕切りがなく全て見えてしまうので、毎日の整理清掃は必須だろう(笑)。
 結構若い店主が製造し、店内は女性二人が販売を担当する、友人の話では一人は店主の奥様との事。平日昼ながら次々と客がやって来る、開店後一年以内だが、既に地域に馴染んでいる様に見える、車移動がメインの交通手段になっているエリアだが、駐車場はなかった。
 買ったのは以下の4点、食べた感想と共に紹介したい。

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・クロワッサン(税別140円)
 ブランジェリーの定番商品だが、値段が高い店が多いので、フランス人に倣って普段は買わないが(笑)、値段も味も十分納得出来た。実はこれだけ関西国際空港で、飛行機待ちの時間に夕食代わり?に食べたのだが、それまでの胃内蓄積もあったので十分夕食になった(笑)。同じく発酵バターを使用するメゾンカイザーのクロワッサンは税抜200円だから、お買い得だと思う。

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・バゲット(260円)
 同じくブランジェリーの定番、此の店では「長(時間)熟成、コントレックス(硬水)使用、沖縄塩、石臼小麦」と商品説明がある、カイザーのバゲットに比べ両端を丸めているのが特徴、味はノーマルで中庸、いい小麦を使っていて味の質が高いのは分かった、個人的好みを云えば、もう少し焼きを強くした方がいいかなと思った。

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・カンパーニュ(ハーフ)(150円)
 「ライ麦、全粒粉、酵母入り、しっかりしています」との説明あり。これはもう少しカンパーニュならではの質量感と硬さ、酸味が欲しいと感じた、ただ場所柄あまり高尚なものを作っても、売れなかったらどう仕様もないので、客の要求との兼ね合いになると思う。

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・レーズンクルミチャパタ(値段不明)
 パンだと思って買ったらチャパタだった(笑)、チャパタとはイタリア出自のパンで、意味は「スリッパ」の事、プレーンタイプの物は平べったい形なので、そう呼んだらしい。粉本来の旨味が感じられる素朴な味、レーズンと胡桃が入る事により美味しさが増している、カマンベールやブリー等柔らかいチーズと相性良さそうだ。

 全体的な印象では、どれもいい材料を使い真面目に作ったパンだと思う、値段も安いと感じた、あとは地域住人とどう共存していくかだろう。
 私自身パンはスーパーやコンビニでは買わず、遠くても自転車に乗って専門店へ買いに行くが、消費人口が減少する現在の日本で、地域の飲食店を盛り上げ長く続けてもらうには、住人達の応援が必要だ。やがて狭山の誇れる名店になって欲しいし、その可能性はあると思った(笑)。
 この後、友人の車に乗せてもらい、最終訪問店へ向かう事に、続きは次の記事で。


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大阪・上本町「レストラン・コーイン」(2018関西食べ続け⑧)

 私が「レストラン・コーイン」を初めて訪れたのは2010年3月、それからほぼ年1回のペースで通っていて、今年は9回目になる。その間スタッフは替わったが、料理長から「どや、誰も真似出来ないだろ」と云われているみたいな、物量攻撃的料理には磨きがかかり、今大阪で最も訪れたい店、いや私にとっては、此処を訪れないで大阪に行く意味ないと迄云える店になった。問題は此処へ行ってしまうと後の店が霞んでしまう事で、大抵最後の夜に利用する事にしている(笑)。
 店内を担当するコックコート姿の女性が一人増え、総勢3名体制になっていた。客数も絞っているみたいだが、料理人がやりたい事だけを続けたら、レストラン特にフレンチは儲からないと思う、以前別の料理人が「儲けようと思ったらレストランは出来ない、社会への文化還元活動をしていると思わないと続けられない」と云っていたが、フランスみたいに店と料理人を地域の中でもっと盛り上げて行かないと、個人資本の店は厳しくなる一方ではないかと思う。
 前述のとおり、今回は「P・ボキューズに関連した料理を食べる」がテーマだったが、湯浅料理長には事前に希望は伝えていなかった、ただ「ぽたじぇ」と「オテル・ド・ヨシノ」ではこの料理を食べる予定と云っていたので、おそらく何か仕掛けて来るだろうとは思っていた、結果はそのとおりになった(笑)、まずは料理をご覧ください(画像少し暗いです)。

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・生ハムのクロワッサン

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・鳥取産ミンククジラのタルタル、キャビアとトリュフ

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・トリュフバター

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・(左から)バスク産ピエール・オテイザ仔豚のテリーヌ、フォアグラ、パテアンクルート

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・車海老のビスク

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・フランス産モリーユと白アスパラのフリカッセ

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・オテイザ仔豚スネ肉のポトフ、仏産茸(ピ・ド・ムートン、ピエ・ブルー、ムスロン)

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・ブレス産プーラルドのベッシー包み(まずは全姿)

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・ベッシーを破った処

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・胸肉をソース・アルビュフェラで

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・同 モモ肉のトリュフサラダ仕立て

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・蜜柑とゼラニウムのソルベ

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・ガトーオペラ、ショコラのグラス

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・ミニャルディーズ

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・マカロン(伏せたショットグラスに入れて)

 何処までがアミューズで前菜なのかは不明だが、まずは前回も出た鳥取産ミンククジラのタルタルで頭を殴られる(笑)。車海老ビスク迄はいつものコーイン節だが、次のモリーユとアスペルジュの組合せが秀逸、その後は魚系かな?と思っていたら、出て来たのがバスク豚を使ったポトフ、まずスープの香りと旨味が脳髄を刺激する、加えたフランス産茸も効いていて、微かに淫靡な香りも感じる、スネ肉のゼラチン質がプルプルで、これもエロスな食感だった(笑)、かのボキューズも一番好きな料理として、ポトフを挙げていたと思う。
 続いて肉料理として登場したのが「ブレス産プーラルドのベッシー包み」、この料理に最適とされるブレス鶏を使っている。これこそ「スープV.G.E」「すずきのパイ包み」と共に、P・ボキューズを代表するスペシャリテ。「びすとろ・ぽたじぇ」の記事で触れた「ボキューズさんちの家庭料理」(新潮文庫)にもルセットが出ているが、家庭で作ろうとする人はまず居ないと思う(笑)。
 豚のベッシー(膀胱)に肉類を詰めて調理する技法は中世からあって、イタリアでは膀胱で包んで熟成させる生ハムもあると聞く、内部に含まれるアンモニア(つまり尿臭)が肉に香りや旨味を加えるとされる、今回の料理では加熱した膀胱の中で酒類と反応し、雑臭が芳香に変化する。ボキューズの店があるリヨンはブレス地方にも近く、鶏のベッシー包み料理を提供する店は他にもあるが、世界に知らしめたのはボキューズだった。
 実は以前にもコーインで「ベッシー」を体験していたが、その時は大きい膀胱がなく、あらかじめ切り分けたブレス鶏を使っていた、今回は国産豚でギリギリ入る膀胱が入手出来、本来の一羽丸ごと調理が可能になったとの事。
 サービス担当の松下さんが卓上で膀胱を破るのだが、これがエロティシズム満開(笑)、まるで最後の一枚を脱ぐみたいで、中から現れるのは上気した白い裸身、肌の下には血管ではなくトリュフが透けて見える。雌鶏は一旦調理場に下げられた後、まずは胸肉がフォアグラを使ったソースを纏って登場、その身はしっとりとして噛み応えありながら、ソースと一体になり妖しい香りを放って溶けていく、この口腔感覚もエロスだ。続いてモモ肉がサラダ仕立でやって来た、胸の柔らかさを堪能したら、腿は筋肉の弾力と噛み味、頂点は過ぎてやがて一夜の夢は終わる。
 プレデセールは珍しいゼラニウムの香りを使ったもの、この後はショコラ系のデセールが食べたいなと思ったら、期待どおりのオペラだった。
 ミニャルディーズは以前の満貫節から少し整理されたが(笑)、それでも圧倒的だった。
 前回は「トリュフ祭り」みたいな、圧倒的なトリュフの物量攻勢だったが、今回はベッシーをメインにした事もあり、もう少し正統的な料理と感じた、でもポトフの後にベッシーを出す料理人は他には居ない筈(笑)。これだけ手間と時間をかけた料理を、ランチ営業をやりながら殆ど一人で作る料理人には、敬服するしかない。

 P・ボキューズについては、あらためて偉大さを理解した、料理自体は独創とは云えない部分もある、V.G.Eスープはロシア料理、ベッシー包みは中世料理に原型があり、パイ包みも宮廷料理に存在した、それらを上手くアレンジして「ボキューズの料理」に変え、世界にプロデュースしたのが一番の業績だったと思う、その料理は客席で見映えする華やかさと色気がある、現在の「インスタ映え」流行の遥か前から先行していた(笑)。
 日本なら誰だろう?と思ったのだが、湯木貞一や辻喜一ではなく、近いのは料理人とは云えないかも知れないが、北大路魯山人ではないか?魯山人も何よりプロディース能力に長けていた。
 最後に客席に出て来た湯浅料理長、「一人ライザップ」を敢行しているそうで、前回よりかなりスマートになり哲学者みたいな風貌になった、今度ノウハウを教えて貰おうと思う(笑)。私は湯浅氏の事を「上本町の無冠帝王」と密かに呼んでいるが、今回もそれを確認できた。
 帰りは満タンになった身体と口福に満ちた気分で天王寺まで歩いたのだが、湯浅氏の顔が浮かび、また「王将」の歌を口ずさんでいた、阪田三吉や桂春団治(初代)に連なる、大阪ならではの「常識破りの奇人」は、今なら彼かも知れない(笑)。
 

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大阪・阿倍野「P.L.T(パティスリー・ラボ・ツジ)」(2018関西食べ続け⑦)

 私は小学生時代から、およそ「学校」と名の付く場所が苦手、理由を簡単に云えば集団活動に馴染めなかったからで、集中力がなく授業中もよく窓の外を見ていて教師に怒られた(笑)、今なら何か疾病名が付くのかも知れないが、およそ優等生ではなかった。
 そのため、恐る恐る「東大」の門をくぐるつもりでいたが、此処には門はなく自動ドアだった(笑)。この学校は調理科、製菓科の他に、大学なら大学院に相当する専門課程があり、今回訪問したのはそちらの校舎。

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 この入口にもP・ボキューズを記念するコーナーがあった、先代校長とボキューズの関係は深かったと聞くが、掲げてあるのは現校長との写真、若い学生達はもう先代の業績を知らないだろうなと思う。
 建物には受付もインターホンも無いので、スマホからFBメッセージにて本人に到着を知らせる、ハイテクなのかローテクなのかよく分からないが(笑)。そして久し振りに会ったレジェンド教授はお元気そうだった、入口近くで記念撮影?をするが、20代の頃からTVで見ていて(「そんな齢違わないだろ」と、突っ込まれそうだが(笑))、此処の卒業生でもない私が、開高健の著書にも登場する方と並んで写真を撮る機会があるとは、ブログやFacebookをやっていなければ知己になる機会もなく、続けていて良かったなと思う(笑)。

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 そして教授と一緒に伺ったのが、同じ建物内にある「P.L.T(パティスリー・ラボ・ツジ)」。此処はWEBページにもあるが「教科書が店舗に!」をテーマに、学校の製菓部門の教員が製造から販売までを行うパティスリーで、「フランスを中心としたヨーロッパのクラシックなお菓子を、プロフェッショナルでクオリティの高い商品として販売します。」をコンセプトにしている。以前は近くの商業施設「あべのキューズモール」内に出店していたが、家賃等の関係もあって、校内にスペースを確保し2016年6月に移転して来た。 

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 失礼ながら大阪的バタ臭さを感じないセンスある店内(笑)、壁面には焼き菓子等が並ぶ。

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 種類は少ないながらパンも売っている。

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 メイン商品の生ケーキ類、最近流行のケーキ上に何か飛び出たデザインや、和的な要素を取り入れたケーキではなく、ベーシックなものが並ぶ。何を買おうか悩むが、結局定番のシュークリームと、翌日になっても大丈夫そうなハードベイク系を選んだ。
 レジェンドとは再会を期して別れた、次は東京でお会いしましょう(笑)。
 ホテルへ帰る途中、再び「たちじゅう園」の前を通ったら7、8人の行列が出来ていた、WEB情報どおり繁盛している。
 この日買ったものは以下の3点、ホテルで食べた印象と共に紹介したい、

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・カルディナールシュニッテン(税込350円)
 「2種類の生地、イチゴクリーム」と商品説明あり。販売担当の女性が「他店ではまず見ない、此処ならではのケーキ」と話すので購入した。ウィーン出自のケーキで「カルディナール」とは枢機卿の事、元はメレンゲ生地とスポンジ生地を交互にして長方形に焼き、コーヒークリームを挟むそうだが、季節からか苺クリームに代えている。ハード系に見えたが実際には軽い味わいだった、個人的には何かもう一捻り欲しい気もするが、基本に忠実なのは分かった。

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・フラン・ナチュール(360円)
 「パイ生地に濃厚なカスタードクリームを詰め焼成」との事。このタルトは当日ではなく翌朝に食べたのだが、タルト生地に味が馴染んで美味しかった。私は苺ショートみたいな生クリーム系をあまり好まず、こうした見かけ地味だがしっかり味系が好み。玉出「びすとろ・ぽたじぇ」の定番デザート「プリン生地のタルト」にも似ている。

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・シュー・ア・ラ・クレム(240円)
 「クッキー生地、シュー生地、生クリーム入りカスタードクリーム」と説明あり。「シュークリーム」ではなく「シュー・ア・ラ・クレム」と名乗っているのは、さすがのアカデミズム(笑)。パティスリーはモンブランとシュークリームを食べれば、大体の実力が判ると思っているが、さすが正統派で美味しい。大手コンビニで2月に限定発売だった、上にチョコレートのかかったシュークリームにクリームの味がそっくり、推測だが商品開発には此処の製菓卒業生が絡んでいると睨んだ(笑)。

 全体の印象は「教科書が店舗」の言葉どおりだなと思った、製菓の学生は本で見るだけでなく実物を知り味わう事が出来るし、これからパティスリーを開業しようとする人達にも、欧州菓子の原点を知る事が出来る店だ、利益優先ではないから値段も安いと思う。反面スイーツ店を廻り歩くマニア系の方には、優等生的で少し物足りなさはあるかも知れない。

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 これでデザートタイムは終わり、夜の一戦に備えて一時間ほど仮眠する。大阪は東京に較べ日没が20分位遅いが、辺りが暗くなり始めた頃歩きで北へ向かい、目指すのは私にとって大阪と云えば此の店、営業しているとはとても思えない暗いエントランスの扉を開く。
 この続きは次の記事で(笑)。


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大阪・阿倍野「たちじゅう園」(2018関西食べ続け⑥)

 関西食べ続け4日目、夜はまた重量級の一戦になりそうで(笑)、昼はあまり重くないものにしようと思った。
 事前に大阪在住の食友人へ「今回の遠征はあまり遠出しないつもり」と知らせていたら、「此処へ行ってみたら如何?」と教えてくれたのが、天王寺駅南側にあたる阿倍野の「たちじゅう園」。そう云われれば私も旅行前に「宿泊先近くのランチ処」を検索していた時に、WEB上で見て「面白そう」と思った店だ、日本でも此処だけになるらしい、太刀魚料理の専門店との事。
 食事代以外は倹約旅行を心掛けているので、交通費使わずに歩いて行ける場所は嬉しい(笑)、WEB上では席待ち行列する事もあると書いてあったが、行って無理だったら他を探そうと、とにかく店まで行く事にした。

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 店の場所は、天王寺駅とあべのハルカスに沿った広い道を、「あべのキューズモール」を右手に見ながら南に進み、阪神高速道路の高架下で左折、直進すると道が二又に別れるが左側の道沿いに在る。そのまま進むと「料理界の東大」とも呼ばれる名門調理師学校がある、私は2012年2月にこの学校を見学させてもらった事があり(入学のためではない(笑))、周辺に記憶はあったが、店は2012年3月開業なので、その時はまだなかった。
 開店は11時半からと調べていたが、11時15分位に店前に着いたら既に行列、それも大阪のオバチャン達なので一瞬ひるんだ(笑)、でも数えたら10人以内で一巡目に入れそうなので、このまま待つ事にした。店から若い女性店員が出て来て、人数と注文を訊いている、開店時間前から準備するみたいだ。昼は「たちじゅう」(税込1,350円)か「たちまぶし」(1,500円)のいずれかで、違いは「お出汁」が付くか否か、後者はだし茶漬けとしても食べられるとの事、だし茶漬けは一昨日「桜花」で秀逸なものを経験済みなので、基本の「たちじゅう」でお願いする事に。なお店名は「たちじゅうえん」ではなく、「たちじゅう その」と読むそうだ、店主の名前だと聞く。

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 入口にはアルバイト募集の張り紙が、此処でも人材難みたいだ、時給970円は東京より少し安いと思うが、2種類あり片方に「辻調生 女性 かけもちOK」とあるのが具体的(笑)。

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 お品書きには他に「かばなま」と「たち中華」が書いてあるが、誰も頼んでおらず詳細は不明(笑)。
 11時半の開店時間になり、順番で店内に案内され、一人客なのでカウンター席角に座る、厨房内の煙が客席に回らない様、透明アクリル板で仕切ってあった。厨房内は主人と思しき男性一人が太刀魚を焼いていて、店内は若い女性二人が対応している。20席に満たない店内にオバチャン達の大阪言葉が飛び交い、大阪はこうした気取らない店が一番似合うなと思う(笑)。

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 まずはお茶と突き出し的なサラダ?が出て来た、野菜の上に太刀魚の中骨を揚げたものが乗っている、何気ないものだが面白い食味だった。

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 昨夜のカレーうどん程は待たずに運ばれて来たのが「たちじゅう」、太刀魚の重箱だからそう呼ぶ。

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 蓋を開けた処、見かけは「うな重」の蒲焼だ、まずは端から少量を食べてみる、身は鰻同様にふっくらして柔らかさあり、蒲焼ダレと味も似ているので、知らない人に黙って食べさせ、「これうな重だよ」と云っても通じるのでは?さらに食べ続けていると、太刀魚の方は味が薄いと云うかあっさりしていると感じる、鰻の身は特有の風味があるが、あれが感じられない位で、人によってはこちらの方が好きだと云う人は居る筈、太刀魚の名前どおり日本刀の刀身みたいな姿だが、蒲焼に合うとは知らなかった、ご飯の質もいい。

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 赤だし椀、最近あまり出会わなくなったが、久し振りに渋味の感じられる旨いものだった、しっかり出汁を取り、ちゃんとした八丁味噌を使っていると思う。

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 太刀魚はあっさりしているだけに味が単調になり易い、そのため途中で加えるのが練り七味、内訳は不明だが、唐辛子、山椒、柚木等を混ぜ合わせていると思う、ラーメンに加える胡椒や酢みたいに、味が変化するので飽きさせない。

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 この練り七味は販売もしている、「あの二人」とはどの二人だろう?(笑)。
 初体験の太刀魚重、予想以上に美味しかった、今は東京のまともな鰻店でうな重を注文したら、ランクにもよるが3,000~5,000円はする、それ考えれば1,350円はお得だし満足感もある、天王寺辺りに宿泊する時はまた来てみたいと思った。
 鰻が高騰する現在、他店で取り入れても良さそうだが、太刀魚を一年安定して確保するのが難しいのかも知れない、此の店では和歌山港から仕入れていると聞く。

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 食後、気分良くお茶を飲んでいて、何気なくスマホを見たらFacebookメッセージがあり、「寄ってくださいよ」とあった、あて先は近くの料理界東大の、それも「レジェンド」とも呼べる方からで、思わずお茶を噴きそうになった(笑)。
 私がこの店に居る事は、早速UPしたFBのチェックインで知ったらしく、これは訪問しない訳にはいかず、そのまま東大へ向かう事に、続きは次の記事で(笑)。


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大阪・天王寺「うどん和匠」(2018関西食べ続け⑤)

 「オテル・ド・ヨシノ」での華麗なる午餐会が終わり、和歌山駅から大阪へ帰る前に、和歌山土産を買おうと、JR和歌山駅に直結した商業施設「MIO」に寄ったのだが、一階にあったコーヒーショップが何時の間にか無くなり、ガチャガチャ置場になっているのに驚く。

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 以前「オテル・ノ・ヨシノ」のディナーへ行った時は、階下のホテルに泊まり、朝食は摂らずに駅まで歩き、此処のモーニングサービスを注文していた、店のオバチャン達が実にいい味を出していたのだが、撤退はとても残念。同じフロアに残っているのは、全国展開しているコーヒーチェーンとベーカリーカフェ、機械でコピーしたみたいに何処へ行っても同じスタイルの店になり、面白くなくなってしまった。人間が営んでいた店の後が自販機等の機械が並ぶスペースになるのが、今の日本を象徴している気がする。
 紀州時快速の中では爆睡(笑)、天王寺駅で降りてホテルへ戻ると、もう夕方5時近くになっていた。食べ疲れもあって、このまま部屋で寝てしまおうかと思ったが、せっかく食べ続けに来たのだから、一食パスは勿体ない?(笑)、なにか軽いものでいいから近くを探そうと思った。旅行前に在阪の友人から教えてもらった、カレーうどんが美味しいと聞く店にも惹かれたが、地下鉄往復なので和歌山で満タンになった身体が重い、うどん店なら近くでもあるだろうと、スマホ検索で引っかかったのが、讃岐うどんを提供する「うどん和匠」と云う店、此処もカレーうどんが名物との事なので、行ってみる事にした。

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 店は天王寺駅前交差点から玉造筋を東に進み、南河堀の交差点を左折、天王寺中学校の道路を挟んで斜め前辺りになる、2015年9月開業だから比較的新しい店だ。
 入店したらほぼ満席、カウンター席の奥が空いていたので、「此処(座って)いいですか?」と厨房内の店主と思しき男性に訊いたら、「時間かかりますが、いいですか」との事、どうもこの日たまたまだと思うが、店主一人の対応つまりワンオペになっていて、料理出しが遅くなっている様子だ、これからまた別の店へ行くのも面倒だし、お腹が空いている訳でもないから(笑)待つ事にした。

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・メニュー

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・店名物カレーうどんの種類
 この中から「ちく玉天カレー」(750円)を注文する。

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・洒落た箸袋

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・讃岐なので砥部焼の器を使っている。

 店内はカウンター8席の他に小上がりみたいな座敷があり3卓12席、これ料理を作りながら一人で回すのは大変だ、東京同様に大阪も飲食の人材不足と聞いたが、その実態を見た思い。
 その後、中国系らしき若い女性が三人で入店して来た、ガイドブックでも見て来たのか、店主が相当待つ事を伝えたのだが日本語が通じない、見かねた一人の男性客が英語で、混雑していてかなり待たなければならない事、現在三人の席が無く店内が狭いので外で待つ事になるのを伝えたら、諦めて出て行った。店が頼んだ訳でもないのに、こうした事を進んでやるのが、やはり大阪人だなと感心する(笑)。

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 そんな事もあって結構待ったが、ようやく順番が来て、店主が運んで来たのが「ちく玉天カレー」、見た目のインパクトはかなりある(笑)。
 ちくわ天は一本を縦半分に切り、玉子は半熟に茹でたものを揚げてある、カレーは割と粘度のあるタイプで、辛さ・スパイシー感は少ない、何処か懐かしく分り易い味で、これ決して悪口ではないのだが、ボンカレーの味に傾向が似ていると感じた、大塚食品も大阪だから、これが受け入れられるのではないかと思った。
 饂飩と出汁はなかなかいい、出汁は昆布ベースにイリコ等を加えた混合だと思う、当たり前だが駅スタンドの饂飩とはレベルが違う、でも個人的には「南海そば」の饂飩も好きなのだが(笑)。
 これで750円なら安いと思う、電車賃かけて行くと云うより、家の近所に在れば月一位では行きたい店だ、従業員が安定して就く事を願ってしまう。

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 店を出て、ホテルへ帰る途中に見上げると、其処には「あべのハルカス」が光を放っていた。西城八十作詞、船村徹作曲で村田英雄が歌った「王将」の中に、「空に灯がつく 通天閣に おれの闘志が また燃える」とあるが、今なら通天閣ではなくあべのハルカスだなと思い歩いていたら、何時の間にか「王将」の歌を口ずさんでいた(笑)。


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和歌山「オテル・ド・ヨシノ」(2018関西食べ続け④)

 関西三日目は、前半戦のトリとも云える毎年恒例の紀州参りを敢行、和歌山「オテル・ド・ヨシノ」を訪れる事に。宿泊先が大阪天王寺だったので、JR紀州時快速に乗れば1時間10分で和歌山駅に着ける、駅からはタクシーなど乗らず線路沿いを歩き、まずは胃の中を空にしないといけない(笑)。
 12時過ぎに「ビッグ愛」に到着、エレベーターで12階に昇れば、其処に「オテル・ド・ヨシノ」と「カフェ・ステラマリス」が入った一角がある。

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 レセプションで女性サービスに挨拶し、調理場近くの円卓に案内される、この日は曇り空だったが、窓際に置かれたベネチアングラスの燭台と、眼下の高い建物の少ない和歌山の街並みが、不思議なコントラストを見せる。着席時は空席もあったが、13時過ぎには大体満席に、カフェスペースも混んでいるし平日昼ながら集客力は秀でている。
 今回食べ続けのフレンチ部門は、前記事のとおり「P・ボキューズに関連した料理」がテーマだったが、手島料理長には「スープV.G.E」を作って欲しいと、あらかじめお願いしていた。1975年ボキューズが料理人としては初めて、仏政府からレジオン・ドヌール勲章を授与され、それを記念したエリゼ宮での午餐会のために創作した料理で、「V.G.E」とは当時のフランス共和国大統領、ヴァレリ・ジスカール・デスタン(Valéry Giscard d’Estaing)の事。この午餐会ではボキューズの他にも、当時の名料理人達が各自のスペシャリテを提供し、伝説的な会食になった。
 手島料理長はおそらくこの故事に因んだのだろう、私の希望はとんでもない結果を生む事になってしまった(笑)、まずは以下をご覧ください。

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・グジェール

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・「びっくりトリュフ(truffes surprise)」、隠元、マーシュ、ミュスカジュレ(ルイ・ウーティエ)

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・店オリジナルのパン

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・「スープ・オ・トリュフ・ノワール・ヴェ・ジェ・ウ( Soupe aux truffes noires V.G.E)」(ポール・ボキューズ)

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・縮緬キャベツとフォアグラと黒トリュフのテリーヌ(吉野 建)

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・和歌山県産ヒラスズキのエスカロップ、マリニエール風(ジョルジュ・ブラン)

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・本州鹿背肉のロティ、牛蒡、シュペッツレ、ジロール、ジャガイモのムースリーヌ(マルク・エーベルラン)

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・細川メートレス兼ソムリエールセレクションの白赤

・和歌山黒沢牧場の牛乳ソルベ(Aya 杉江:「オテル・ド・ヨシノ」シェフ・パティシェール)※失礼、画像失敗しました。

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・金柑とキャラメルのムース、パッションフルーツのグラス、キャラメルソース(同上)

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・和歌山県産アンフィ―ジョン

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・ミニャルディーズ(ショコラマカロン、タルトノア、カヌレ)

 料理名後のカッコ内は、その料理の原型を考案した料理人名、ボキューズ以外はエリゼ宮午餐会の料理人達より少し後の世代になる。フランス料理に詳しい人なら知っている名前なので各自には触れないが、もし興味を持ったらWEB検索してみてください。
 「びっくりトリュフ」とはフォアグラを丸めてトリュフの微塵切りで覆い、一見トリュフだが中身はフォアグラと云う意外性を狙った前菜、以前流行したが最近あまり見なくなった、トーストしたブリオッシュと合わせると、超高級なトーストスプレッドと云う印象(笑)。
 期待していた「スープV.G.E」、似た構成の料理は国内他店で経験したが、こうしたパイ生地を載せるタイプは、1999年にリヨン近郊の本店訪問以来で実に19年ぶり、微かな記憶を辿れば、全体量は向こうの方がフランスサイズで多かった、中のトリュフ&フォアグラをサイコロ状にしていたのに対し、手島バージョンはトリュフを薄切りして、他にトリュフを混ぜた鶏のクネルを入れている。スープのベースは同等レベルだと思ったが、あちらは僅かに苦味を感じたのを覚えている、それを後で手島氏に話したら、「それはアルコールが飛んでいなかったのでしょう、かなり(酒類を)入れている筈です」との事だった、彼はボキューズ系では働いていないが、本店には食事に行ってこのスープを体験している。
 吉野建氏のスペシャリテである、縮緬キャベツテリーヌを此処に入れたのは憎いなと思った、スープV.G.Eの後に肉厚キャベツの旨味は、まるで肉を食べているかの様な錯覚を起こす。
 ジョルジュ・ブランのスペシャリテである鱸のエスカロップは、今回V.G.Eと共に最も印象に残った料理、ソースの酸味の尖らせ方に「ああ、これフランスだ」と溜息?が出た、日本では何処かに妥協や和合を感じてしまうのだが、それがない。
 鹿は古典的な一皿で、洗練されている様で何処か田舎臭さを感じるアルザスを連想させる(笑)、これもソースの濃い旨さが印象的。
 デセールは「オテル・ド・ヨシノ」パティシェールのオリジナル、巨匠達の料理の後では、高齢介護にあたる若いケアワーカーみたいにも思えるが(笑)、健気に頑張っていました。

 まるで自分が午餐会の招待客になった気分、実際には2回生まれ変わってもあり得ない話だが、この和歌山でそれに近い稀有な体験をさせてもらった。一方で客側の経験値と知識が試される怖いムニュでもある(笑)。
 手島料理長は最近フランスとベルギーへ行って来た直後で、現地の最新料理も体験している、それでも今回の料理を並べたのは、名作を模倣したのではなく、古典料理への帰依、リスペクトなのだと思った。
 女性陣が中心になったサービスも柔らかく、快適に時間を過ごせた、フランス的と云うより、高級料亭や旅館と同質のきめ細やかで日本的なもの。
 エリゼ宮に招待された後、歩き(á pied)で帰る人はまず居ないと思うが(笑)、満ち足りた気持ちで和歌山駅へ向かった。今回誘って参加出来なかった人は、これを見て行かなかった事を後悔すると思う(笑)。
 手島料理長、スタッフの皆さんお世話になりました、次回が今から楽しみです。


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大阪・玉出「びすとろぽたじぇ」(2018関西食べ続け③)

 今回の関西食べ続けのフレンチ部門にはテーマを持っていて、それは今年1月20日に91歳で亡くなった、フランス美食界の法王ポール・ボキューズのスペシャリテ、若しくは関連した料理を食べる事だった。
 この日の夜に伺う「びすとろ・ぽたじぇ」の肥田料理長は、フランスリヨン近郊コロンジュ・オ・モン・ドールにある「ポール・ボキューズ」本店で働いている、ボキューズ直系の料理人なので、テーマには最適な人物、あらかじめ「今回はボキューズ翁に関連した料理を作って欲しい」と我儘なお願いをしていた(笑)。

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 一年ぶりの玉出駅、駅の出入り口と同じ通りに店はあるので分かりやすい、この界隈は東京なら山谷辺りに似た大阪のディープゾーンだが、店までの道は静かで何も問題なく歩ける、去年覚えた階段を昇った2階店舗に到着する。

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 入口を開けると、カウンター席の向かいにボキューズのメモリアルコーナーが設けてあった、本店のメニュー、直筆サイン、私も持っているが肥田氏が翻訳した「ボキューズさんちの家庭料理」の本等々、晩年はすっかり萎んでしまったみたいだが、店に出ていた現役時代の堂々とした威容を思い出す。
 この日も在阪の友人達と同席、まず肥田氏より料理の説明がある、
「アミューズの後はフォアグラ、その後ムールのスープ(ボキューズのスペシャリテ)、ソール・フェルナン・ポワン(同じく)は揃えてあり、肉料理は好きなものを選んで欲しい、デザートにはウ・ア・ラ・ネージュ(同じく)を用意した」との事で、異存ある訳なく、それで進めてもらう。

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・ニュージーランドのゲヴュルツトラミネール

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・アミューズ(玉ねぎキッシュ、サーモンマリネ、ジャンボンペルシェ)

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・オーベルジュ・ド・リル風フォアグラのテリーヌ、無花果のコンフィチュール

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・ボキューズ風ムール貝スープサフラン風味

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・ボキューズ風ソール・フェルナン・ポワン

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・この日の黒板メニュー

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・私が選んだ鹿肉のパイ包み焼

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・デセールシャリオ(制限なし(笑))

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・ボキューズ風ウ・ア・ラ・ネージュ

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・チョコレートのテリーヌ、コーヒー風味のブランマンジェ、ハッサク&王林のソルベ

 アミューズ中のサーモンもボキューズのスペシャリテだと思った、3品共手をかけたフランス伝統の前菜、リル風フォアグラは盤石の美味しさ、脂肪肝気味の我身には多分良くないと思うが、此処でこれを食べなければ悔やむ(笑)。
 ムールのスープは予想より軽やかな味、輸送が不便だった時代に、内陸地のリヨンでこの料理を出したのは先駆的だったと思う。
 次の「ソール・フェルナン・ポワン」は今回最も期待していた料理、フェルナン・ポワンはボキューズが働いていた、同じローヌ県ヴィエンヌにある「ピラミッド」の伝説的料理長、そのメモリアル料理だが、肥田氏の話では文献を調べても、ピラミッドの料理に同じものは見当たらなく、おそらくボキューズが「ピラミッド風」として考えた料理だろうとの事、舌平目の肉質とクリームソースの濃厚な旨さが脳を刺激する、やはりフランス料理はソースだと、あらためて認識する。
 舌平目料理が食べ応えあったので、正直肉料理では一杯一杯になってしまった、この満腹感もボキューズ本店と同じ(笑)。でも手をかけた料理であり、調理器具も限られていた時代に、肉をパイ皮で包む事により間接的に火を通したフランス伝統の調理法、21世紀になっても残っているのは、それだけ優れた技法なのだろう、この料理もソースと一体となった旨さが印象的。
 デセールの「ウ・ア・ラ・ネージュ」は、前述の「ボキューズさんちの家庭料理」にも紹介されていて、ボキューズの祖母伝来のものだそうだ、構成要素は卵と牛乳と砂糖の少なさだが、これだけ豊かな味が出せるのは、「それがフランスなのだ」としか云い様がない。シャリオデセールももっと戴きたかったが、もうこれ以上は無理と云う臨界点で止めておいた(笑)。

 こうして体験してみると、料理に手間と時間をかけられた時代が間違いなくあった、今より物資の流通が悪く、調理器具もアナログだった時代に、先駆者たちが知恵を絞って考えた料理は今食べても美味しい、何でも便利になったからと、絶やしてはいけないのではないかと思う。
 ボキューズについてはあらためて偉大な料理人だったと思う、何と云っても料理が分かり易い(笑)、頭で考える前に本能が旨いと反応する。絵画はカンバスに、音楽は楽譜に残せるので、同時代には認められなくても後世に評価される事はある、ゴッホの絵画やマーラーの交響曲等はそれだが料理は残せない、まずは同時代人に理解してもらわないといけない、ボキューズ料理には過去にも現在にも通用する普遍性があると感じる。
 この日集まったメンバーも濃かったが、料理も濃かった(笑)、長時間大料理人の話で盛り上がったが、肥田料理長ありがとうございました、また若いスタッフの皆さんもこうした料理を作れるのは貴重な経験になったと思う、是非次の世代にも伝えて行って下さい。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
人はそれぞれに「見方、感じ方、考え方」が違います。私が美味と思ってもそう思わない人が居て当然です、味覚とはそれだけ不安定で不完全なもの、あくまでも筆者個人の嗜好による感じ方である事を承知の上で読まれてください。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに赤坂、麻布十番等。
混雑電車が苦手で加齢による朝型人間化のため、ランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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