最後の晩餐にはまだ早い


赤坂「古屋オーガストロノム」(2018年5月)

 十年来の友人である「元ジャニーズ、現在は小栗旬似の料理人」(あくまでも自称です(笑))が、北国から神輿を担ぐためやって来ることになり、大役の前に会う事になった。フランス料理、それもクラシック系が好きなので、選んだ店は赤坂の「古屋オーガストロノム」、今東京でまともな古典派料理を提供、平日ランチ営業していて「昔の名前で出ています」みたいな店を除けば、まず此処だろうと決めた。

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 成田着の飛行機遅れも考慮し13時集合だったが、もう一人の友人と時間少し前に店へ着いたら、既に友人は来店していた。彼とは去年の10月以来、此の店も11月以来になってしまった。
 サービス担当の石橋氏と古屋料理長に挨拶し、始まったのは以下の料理、

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・‘Amuse-Bouche’アミューズ・ブーシュ(2色アスパラガスのスープ)

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・‘Le Thon’熊本県産マグロのタルタル仕立て、うずらのポーチ・ド・エッグ添え

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・‘Le pain’自家製トマトベースのパン

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・‘Le Foie gras’ハンガリー産フォアグラのポワレ、ベトラーブのゴーフル、カカオ72%ショコラのヴィネグレット

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・‘Le Poisson du jour’青森産天然活締め平目のムニエル、春キャベツとエンガワのソテー、5種のスパイスソース

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・‘Le Caille’ヴォージュ産ウズラの3プレパラション、胸肉のロティ、キュイスのブレゼ、リ・ド・ヴォーのセルベラ、ロワール産ホワイトアスパラガスとモリーユ茸

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・‘Avant Dessert’レタスのソルベと苺

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・‘Grand Dessert’オレンジのグラティネ

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・  同    ピスタチオのアイスクリーム

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・‘Le Vin’ 石橋氏セレクションのワイン

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・‘Café express’エスプレッソ

 まず料理全体の印象から云うと、以前より一皿の構成要素が増え料理が精緻になったと感じた、「一人厨房で此処までやらなくても」と思ってしまう皿もあるが、「此処までやらないと気が済まない」のが古屋氏の料理力なのだろう。
 マグロのタルタルは二つに分け、一方はうずらポーチ・ド・エッグ、もう一つは上にブリニみたいなパンとハーブを乗せる、ラディッシュの陰に隠れているのはキャビアを乗せたポーチ・ド・エッグ、一人厨房でよくこんな事をやると思う(笑)。
 フォアグラはハンガリー産だが、上質な鴨の生状の物で、短時間加熱すると鱈白子みたいな食感、カカオソースとベトラーブを加えたゴーフルを添える、カカオは高級品の伊ドォモーリ製を使っているが、この三者の相性は抜群。
 青森産平目は少々懐かしいカレー風味のソースが印象的、ロブションやジャック・ボリーがカレーソースを流行らせたが、最近あまり出会わなくなった。キャベツとエンガワは別にソテーし身の下に敷いている。
 カイユ(ウズラ)の3プレパラション(Trois Préparations)とは、3種の調理法の事で、胸肉はシンプルなロティ、腿肉はワインを使った煮込、端肉はリ・ド・ヴォーと合わせセルベラ(ソーセージ)仕立にしている、添えたのはモリーユと白アスパラ。古屋氏は同じ食材を2種・3種の調理法を使って一つの皿に仕上げるのが得意で、これは彼が働いていたベルギー南部にあった「Au Gastronome」譲りのやり方だそうだ。ただ気を付けないと主役がハッキリせず曖昧な料理になる恐れもあるが、さすがは経験豊かな古屋氏は巧い、手をかけたソースが全体を纏めている。
 デセール2種も万全、果物のグラタンも懐かしいものだが、クレームパティシェールが上質で現代的に軽やか、添えたピスターシュのグラスがいいアクセントになっていた。

 食後、挨拶に来た古屋氏と色々と話をするが、彼が「先日初めて来たお客さんが、『東京でこうした料理が味わえるとは思わなかった、今迄は●●●へ行っていたが、もう行かなくて済みそう』と話していた」との事で、成程フランス料理それも古典系が好きな人は、視点が同じだなと納得する、なお「●●●」は差し障りありそうなので伏せ字にしておくが、皆さんで想像してください(笑)。
 私がこの店を訪れるのは10回目だが、同行者2名はそれぞれ2回目と初訪問なので、古屋氏がフランス・ベルギーで働いていた時代の話をあらためて聞く事に。初めは言葉も話せず頼る人もなく、他に日本人が居ない様な街で料理長まで務めた彼だが、最前線で戦い身に着けた料理力は今になって生きていると思う。
 私が以前から訊きたかった事を訊いたのだが、それは「古屋さん位の実力があれば、向こう(ベルギー、フランス)で店を出す事は考えなかったですか?」で、それに対しては「考えなかったですね、やっぱり日本はいいです」との応えだった。そう云えば以前代官山「レクテ」の佐々木料理長も同様な事を話していた、二人とも1973年生れだ。
 白洲正子は芸術家で作家の赤瀬川原平を「若い頃西洋に傾倒したが、年齢を重ねて日本文化へ回帰した、だからこそ信用できる」と、たしか書いていたが、一時期西洋を相手に本気で格闘した人ほど、最後には日本へ帰って来るのかも知れない。
 時計を見たら何と午後4時、気付かず長居をしてしまった。古屋料理長、石橋さん、遅くまでありがとうございました、私からではないですが、美味しいスープカレーラーメンを楽しんで下さい(笑)。


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南青山「MAMA」(2018年5月)

 『フランス料理の哲学、技術に基づく、素材そのまま(MAMA)の持ち味を大切にした料理』をコンセプトに、高級フレンチ出身の料理人、サービス担当の二人が2015年5月南青山にオープンさせた、新しい感覚のレストラン「MAMA」、私は夜に初訪問した後、ランチに3回訪れて「イベリコ豚の定食」を、とんかつ、カツカレー、とんテキと3種類制覇して来た。この完食者に限り、次回特別メニューを体験出来る特典があり、引換券?を貰っていたので、それを行使するため遠路を訪れる事にした(笑)。 
 来る毎に思うのだが、不便な場所に店を作ったなと思う、表参道、渋谷、広尾、六本木で囲まれる真中あたり、一番近いのは表参道駅だが歩くと15分はかかる。店の近辺は商業地ではなく、大使館や学校がある位で静かな住宅地の中、特に昼利用するのは地域住民がメインだ。

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 過去の訪問記をブログ記事にしているので、「其処って、どう云う店?」と訊かれる事あるのだが、これが説明難しい、「お勧めです、行ってみてください」としか云えないのだが、いい料理といい酒がある事は間違いない、気になる人は以下を読んで判断してください(笑)。
 客席担当の平垣内氏、市村料理長に挨拶、この日厨房にはヘルプの女性が一人来ていた。当日の料理は以下のとおり、

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・前菜にあたる時代朱塗盆に並べた小鉢類、基本仕様より増えている気がする(笑)。
 手前右:ビーツのマリネ、左:ポテトサラダ、斜め左:白アスパラのスープ
 奥右から左へ:ウドの煮浸し、ホタルイカ煮、キャロットラペ、グリーンサラダ

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・水では寂しいので、平垣内氏に「白を一杯ください」と云ったら、出してくれたのが、
 Meursault 1et Cru CHARMES1998 Romuald Valot
 私にこんな高級ワインは勿体ない、ただ「美味しいワイン」としか云えない(笑)。

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・特別メニューは「イベリコとんかつ」を使った「かつ丼」でした。添えたのはこれもイベリコ豚を使った豚汁。

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・自家製べったら漬、嫌な甘さがなく美味。

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・何とメインのpart2があった(笑)。

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・ストウブ製プチココットの中はタイ風グリーンカレー、これをジャスミン米にかけて食べる。

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・切子のグラスに入れたマンゴージュース。

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・「ショコラ&ショコラ」(ガトーショコラとショコラガナッシュ)、焙じ茶。

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・堀口珈琲をハンドドリップで。
 
 小鉢類は昼夜共通だと思うが、手をかけた物を少量ずつ並べるのは面倒極まりない、このやり方は提供する二人の美意識だと思う、7皿の料理を一つにまとめたとも云えるが、それぞれの作りは優しく、味がブレていない。
 マル秘メニューはイベリコ豚を使った「かつ丼」でした、カツが美味しいのは勿論だが、ベースの丼ダレが後を引くので、あとで市村氏に「『かえし』を使っていますね、中身を教えて下さい」とお願いしてしまったが、市村オリジナルで私が作るものとはかなり違っていた。
 「かつ丼美味しかった、満足」と思っていたら、平垣内氏が「この後、もう一品あります」と意表を突く一言(笑)。続いて出て来たのが「タイ風グリーンカレー」で、市村氏が働いていた店がタイ・バンコクでフェアを開催、その時に現地の料理人から作り方を教えてもらったそうだ。カレーベースは鶏とオマールの出汁にバイマックル、具は鶏、小海老、茄子、香辛料は客層に合わせて抑えているが、ジャスミン米との相性抜群、「完食出来るかな?」の不安も忘れる(笑)。
 デザートも良質、添えられた焙じ茶、平垣内氏が淹れた珈琲も美味でした。
 この二人の実力なら今流行の、席数10前後で昼6,000円・夜12,000円位、おまかせムニュ1本で固定客中心と云う店も出来た筈だ、それをしないでもっとカジュアルに、一品料理それもカツ丼だけでも注文可な店にしたのは賛成、これからの高齢化社会を考えると、レストランの在り方も変わって行くべきだと思う、私も家の近くにこの「MAMA」みたいな店があれば週一位で通いたい、ランチなら年金生活になっても出来ると思う。平垣内氏の話によると、弁当宅配も好調だそうで、一個からでも注文出来る(配達は専門業者に依頼する)、それなら歩けなくなっても利用可能だ(笑)。

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 料理もフレキシブルだが店の体制も柔軟で、フルタイムではないながら店のヘルプに来てくれる人が居るそうだ、その中の一人がパティシェ経験ありで、作った菓子類も販売する様になった、「いいですね」と見ていたら、何とお土産にいただいてしまった(笑)、ありがとうございました。

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 オープンして3年経つと色々と行き詰る店があり、3年持たなかった店も知っているが、「MAMA」に関しては店のポテンシャルが上がって来ていると感じる。これから独立を考えている料理人やサービスの人には、いい店の実例として見ておく事を勧めたい、勿論食べる目的だけに行っても、十分楽しめて満足出来る店だ(笑)。


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亀有「洋惣菜 亀洋」

 実家のある亀有に洋風惣菜店が出来たと知ったのは、WEB掲示板の地域情報からで、パテ・ド・カンパーニュ等も売っている本格派との事、場所は人通りの多い南口駅前の商店街ではなく、北口の環七通り沿いらしく「そんな場所で本格惣菜売って、客来るのかな?」と、元亀有住人は疑ってしまった(笑)。
 とにかく行ってみようと自転車で向かう事に、WEB情報を元に探してみたら、小さな店で目立たない場所に在った。亀有駅北口を出て金町方面へ進むと環七へ出るが、それを大谷田陸橋へ向かって北へ進む、右手に「肉の万世」が見えるが、その手前のラーメン店の隣、間口が狭いので通り過ぎそうになる。

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 店の名前は「亀洋」、亀有で洋惣菜だからこの名前にしたのだろう、分かり易くストレートそのもの(笑)。

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 入口に貼ってあるチラシ、4月14日にオープンしたばかりで、「8坪のお店で40種類のお惣菜」の文句が目を惹く。

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 店を入るとすぐ左側が惣菜を並べた冷蔵ケース、チラシどおり種類が多い、後ろが作業スペースになっている。若いイケメン系男性が一人居るが、この人が製造と販売を全てやっているみたいだ。
 目で追ってみると、ラタトゥイユ、タプナード、ローストチキン、鶏モモのコンフィ、冷製パスタ等かなり本格派、これだけ見ていると此処が下町亀有とはとても思えない(笑)。
 男性に話を聞いてみると、去年まで都心の地中海料理店で料理長として働いていたが、自分で起業をしようとこの店を開いたとの事、話しぶりと作品から相当経験は積んでいるなと思った、でもこれ全部を一人で毎日作るのは凄い。

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 開店祝いの花が置いてあった。

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 男性の話では現在は総菜販売だけだが、いずれこのスペースを使ってバルも営業する予定との事。亀有でパテ・ド・カンパーニュをツマミにワインを飲める店が出来るとは、昔の赤提灯しかなかった亀有を知っている人間には、夢のまた夢のような話(笑)。
 「雇われ料理長の方が、待遇もいいし気楽だったのでは?」と、嫌な事を訊いてしまったが、彼は「今は昔と違いシェフでも収入低く、月25(万)位がいい処で、拘束時間も長いです、オープンしてから一応売上は好調で、起業して良かったと思っています。」との応えだった。
 何を買おうか迷ったが、結局パテ・ド・カンパーニュと煮込みハンバーグに、サラダ類を3種類買ってみた。
 以下家で食べた感想と共に紹介する、

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・これ全部で税込1,350円は安いと思う。

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・パテ・ド・カンパーニュ(1カット300円)、粒マスタードは無料で付けてくれる。「パテ・ド・カンパーニュを食べれば、料理人の実力が分かる」は、付き合いの長い料理人の言葉だが私も同感、ついでに云うとあと焼物、例えば仔羊ローストにワインを使った肉煮込料理を試せば、実力の7割は判断出来そう、それが駄目なら見切った方がいい。
 肝心の味だが、香辛料は控え目で優しい味わい、練り肉の旨味は十分感じられた、脂の入れ方もいい、これは十分合格点出せる(笑)。

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・ギリシャ風ポテトサラダ(100g250円)、中身はジャガイモ、フェタチーズ、胡瓜?
 ギリシャ特産の山羊乳を使うフェタチーズを加えているので「ギリシャ風」、味のバランスはいい、付け合せに最適。

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・左:キャロット・ラペ(100g150円)、右:ベーコンと空豆のクスクス(100g250円)
 人参サラダはピーラーで幅広に切り作っていて、これも味のバランスは良かった、油・酢共に良質。クスクス(スムール)は好物なので、つい買ってしまう(笑)、次の煮込みハンバーグに合わせて食べたが、いいマリアージュでした。

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・煮込みハンバーグ(1個400円)
 ソースはトマト味ベース、肉は割合不明だが牛&豚だと思う、これも香辛料は控え目、パンだけでなくご飯にも合いそうだ。

 予想以上に本格派の惣菜だった、これならレストラン行かなくても楽しめる(笑)、ファミレスの遥か上を行っているし、デパ地下で高い総菜買うより断然お勧め(笑)。全て一人で作っているので、全体に味のポリシーが共通している、地域性も考慮していると思うが、高踏的でなく優しく穏やかな味わい、作った人間の性格まで推し量れそう。
 今、借金を重ねてレストランをオープンしても、まず従業員集めに苦労する、それなら一人で出来る事から始めようとするのは賛成、あとは地域がこのスタイルを受け入れてくれるかどうかだ。
 これは応援しないといけない店だ、自転車に乗る体力を維持する必要あるが、老後の楽しみが一つ増えた(笑)。


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御茶ノ水「ビストロ・ヌー」(2018年5月) 

 食仲間から「今、磯貝さん一人で店やっているよ」と聞き、気になったので様子見と云うか、激励?のため半年ぶりにランチに訪れたのは、御茶ノ水(末広町)の「ビストロ・ヌー」。
 店は今年3月で開店7周年を迎えた、バーテンダー出身と云う異色の経歴を持つ磯貝氏が、母親がやっていた喫茶店を改装して始まったビストロ、私が初めて訪れたのは2013年の1月だが、それから「常連」とはとても云えない頻度だが、秋葉原に行く用事がある時はランチに寄らせてもらっていた。今は「ビストロ・ヌーへ行くついでに秋葉原へ寄る」と云った方が正確かも知れない(笑)。
 今までサービスを担当していた奥様が、第2子出産のために産休に入ったので、当面は磯貝氏が一人つまりワンオペで対応するようだ。

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 黄金週間の谷間日だが、この界隈は電気関係の小企業が多いからか、昼時働いている人が結構居る。種類は不明だが店前にある樹も随分と大きくなった。
 昼の開店時間直後に入店、磯貝氏に挨拶してカウンター奥「いつもの席」(笑)に座る、奥様は間もなく出産との事だが、いずれ復帰を考えているそうで、その間は何とか一人で続けるつもりらしい、夜は以前から一人の時はあったので慣れているし、昼はプリフィクスの品数を絞って対応するとの事だった。東京の飲食業界は慢性的な人不足で人件費も高騰している、人を雇って得られるものと失うものを天秤にかけ決めるしかない。あとは客側も協力と云うか理解すべきだと思う、「料理の出が遅い」と感じたなら牛丼店へ行った方がいい(笑)。
 今の私は一時間で戻らないといけない会社人間ではなく、我儘でデフォルトのランチメニューに前菜を一品増やしてもらった、料理は以下のとおり、

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・ジャガイモの冷製スープ

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・自家製カンパーニュ系パン

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・コート・ド・ローヌ白

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・ホタルイカとラタトゥイユ、タプナード、ピマンデスペレット

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・カツオのグリエ、白アスパラ、ビーツソース

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・仔羊のトマト煮込み

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・マスカルポーネとブルーチーズのケーキ

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・コーヒー

 料理は従来のビストロ・ヌーのスタイルで変わりなく、初夏らしさも感じさせいい料理だった、旬のホタルイカとラタトゥイユを合わせたセンスは秀逸、続くカツオは磯貝氏がよく使う、ピーラーで削った白アスパラを乗せビーツの味を重ねる事で、日本の「カツオのタタキ」とは違った味わいで面白い。
 仔羊の煮込みは私の好物であるクスクス(スムール)を敷いて出て来た、柔らかく煮込んだ羊肉だが、煮込み過ぎる事なく旨味が消えていない、添えた野菜の扱いも良好で十分美味しい、「クスクス風仔羊煮込み」とも云えそうな料理だった
 スペシャリテのチーズケーキは独特の味わいでユニーク、チーズ好きの人は嵌ると思う。ワンオペながら毎日自家製パンを作るのは立派だ。

 磯貝氏の料理は、先日訪れた新富町「メゾンミッシェル」の小山氏の料理と共通点あると思う。大体同時期にPARISで働いていて、小山氏は10区のブルターニュ料理「Chez Michel」、磯貝氏は17区のバスク料理「‘L’Entredgeu’」、どちらも人気店で磯貝氏の話では週末は3回転する日もあり、死にそうになったそうだが(笑)、そうして鍛えられた料理力を感じる、だから何とか対応出来るのだろう。忙しくてもパニックにならない冷静さ、ブレない料理の味付けや乱れない盛付など、一人厨房では必須なものを持っている。
 磯貝氏はたしか1980年生れだから今年38歳、まもなく2児の父親となり、これから料理人として一番いい時期を迎えるのではないか?約5年通った人間としては、星など付いて白いクロスを使う店になり、値段が上がらない事を願うばかり(笑)。「応援している店なのに、何故そんな事云う?」と思われるかも知れないが、私の云いたい事を分かってくれる人は居る筈だ。

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 ワンオペ対応になったので、ランチタイム営業を止めてしまうかな?との懸念もあったが、磯貝氏は「閉めても夜の仕込みをしているので、あまり変わりない」との事で、その心配はしなくて済みそうだ、もしランチタイムに行って、注文が立て混んでいたら理解してあげてください。
 この日も私の他にはテーブル席に2組、カウンター席に2名の客が同時に居たが、料理出しも停滞する事なく、また客の方もリピーターなのか心得たもので、皆静かに食事を楽しんでいて、磯貝氏に話しかけようとするのは私だけだった(笑)。
 客が店を育て、育った店が客を育てる、こうした関係が生まれれば理想的で、仏語で「オーナー」の意味に使われる「パトロン‘patron’」の語源は、古ラテン語の「パトロヌス‘patronus’」で「保護者」を表す、対になるのが「クリエンテス‘clientes’」、現在使われる「クライアント」の語源で「被保護者」を表す。元の意味では両者の関係は一方通行ではなく、相互扶助関係であったとされる。
 現在は何でもお金が全てみたいな風潮になってしまったが、お互いに助け合う店と客の関係があっていいと思う、それが出来るなら、東京はもっといい食の街になる筈だ(笑)。


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金町「クレージー餃子」

 葛飾金町に不思議な名前の面白そうな中国料理店がある事を知ったのはWEB情報からで、東京で増加中の大陸系中華だが、店名が「クレージー餃子」、たしかに変わっている(笑)。餃子専門店かな?とも思ったが、そうではなく中国料理全般を提供する店みたいだ、場所は移転して来た東京理科大学のある北口側、我家から自転車で30分かからない筈なので、天気のいい日に行ってみる事にした。
 中川に架かる飯塚橋を渡り直進、左手に葛飾清掃工場の大きな建物が見えたら右折し、進むと東京理科大学の広いキャンパスに出る。

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 今の学生はいい環境で勉強出来るのは羨ましいが、学校側としては少子化で学生を取り合う訳だから、設備等提供するものを整えないと選んでもらえなくなる、当然資金がかかる事になるので大変だ。
 このキャンパスを通り過ぎ、JR金町駅に向かう途中に店がある。

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 結構大きい建物だが2階以上はアパートになっている、その角に赤字で大きく張り付けた店名表示にインパクトあり(笑)、こうしたセンスはなかなか日本人では出来ない。

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 2017年3月の開業、客席は広くて50席以上ありそう、厨房前の壁際席に座る。厨房内は3人で皆中国系の人だが、女性料理人が一人居るのが珍しい。サービス担当の男性は日本人みたいだが中国語も達者だ。

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 ランチメニューは17種類、日本人が好きそうな一般的な料理が多い。

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 一品料理、ランチタイムでも注文可みたいだ。値段は格安店の多い大陸系中華の中では少し高めの部類に感じる。

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 点心類メニュー、店名にもなっている「クレージー餃子」(税込5個580円)が載っている。
 初回なのでまずランチメニューから一番気になった、「四川風まぜそば(激辛可)」(850円)に決めるが激辛は止めた(笑)。そして折角だからと、話題の「クレージー餃子」も追加で注文する事に。
 厨房は活気があると云うより騒がしい、何を喋っているのか不明だが、まるで喧嘩しているみたい(笑)、見ていると女性と男性一人ずつが料理人で、もう一人の男性が点心担当みたいだ。最近都内のフランス料理店では、オープンキッチンスタイルでも静かな雰囲気が多く、昔みたいに怒鳴り声が聞こえる事は殆どなくなった、それに慣れてしまったので、このノイズは中国らしくて新鮮(笑)。

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 まずやって来たのが「四川風まぜそば」、汁なし担担麺みたいなものか?と予想していたら外れた、麺が涼麺だった、丼の底には辣油ベースのタレ、麺の上にはピーナッツ、青ネギ、豆板醤、他には野菜サラダ、卵スープ、漬物、杏仁豆腐。

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 サービスの男性が「全体をよく混ぜてから食べて下さい」と云うので、箸と木匙で掻き混ぜる、中太麺に辣油と唐辛子が絡んで、食べると麺の旨味と唐辛子の辛味、其処に山椒の風味が加わる、砕いていないピーナッツが面白いアクセントになっている、全体の味バランスは良好。注文時に「辛いですよ」と注意されたが、それ程でもなかった。

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 これがクレージー餃子、まず見かけからして変わっている(笑)、どうやら餃子を羽根付き状に焼き、その上に溶けるチーズを乗せて、上火かバーナーで焼いたものだと思う。
 「何も付けずに食べてみて下さい」との事なので、そのまま食べてみる、中身は海老と野菜(アスパラ?)、具の質は悪くない、これがチーズと不思議な相性を生む、粉+海老+野菜+チーズなので、味わいはミックスピザに近い(笑)、後を引く味で、これはなかなかの逸品だ、考えた人のアイディアの勝利だと思った。

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 WEB情報ではオーナーは餃子の本場満州出身との事、他にも「トルコ焼き餃子」など謎のメニューもあり、アイディアマンでもあるようだ。
 この記事を書いている今も、画像を見てクレージー餃子の味を思い出し、また食べに行きたいと思い始めている、そう思わせれば飲食店の勝ちだ(笑)。
 私は自転車が一番便利なので、次に行く時もランチタイムになるが、メニューは豊富なので夜も楽しめる店だと思う。
 

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代官山「レクテ(Recte)」(2018年4月)

 3回目の訪問になる代官山「レクテ」、佐々木料理長の料理を味わってから、個人的に東京で好きな店の一つになったが、これで「馴染み客」にもなった。以前にも書いた事あるが、江戸時代の遊郭言葉で、初めての登楼を「初見(しょけん)」と云い、2回目を「裏を返す」、3回目の登楼で「馴染み客」になる、最高位級の花魁となると、この3回目でようやく床を一緒にする事が出来たそうだ。だから「気に入った店があったら3回通え」は私の持論(笑)。
 平日昼の正午を過ぎた店内は既に女性客達で埋まっている、過去2回同様に個室に案内されたが、隣のスペースも埋まりほぼ満席となった。マスメディアで取上げられる機会は多くないが、わかる客特に値段と料理クオリティについて見方の厳しい女性客は、いい店を見逃さない。
 斎藤支配人とサービス&ソムリエの辻氏に挨拶し始まった料理、まずは料理から紹介したい。

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・富山産ホタルイカ、ブッラータチーズ

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・石巻産サワラ、大鹿村山菜(蕗の薹のソース)

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・音更町庄司農園はるきらり、ライ麦(自家製パン)

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・那須産グリーンアスパラガス、エスカルゴ

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・漁師藤本、神経締め鱸(山葵根とニョッキ)

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・豚足ファルシ(山葵菜)

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・辻ソムリエセレクションのワイン、ブルゴーニュ白とボルドー赤

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・江連農園、無農薬イチゴ(練乳のグラスを添えて)

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・細かく選べる食後ドリンク

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・パナマ、ラ・エスメラルダ農園ゲイシャ(+500JPY)

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・ミニャルディーズ

 まず黒い皿に盛られたホタルイカのアミューズが鮮やかない色合いと味、これからの料理へのいい序曲になる。続く鰆は皮目だけを炭火で炙ったとの事だが、長野県大鹿村の山菜の緑と合わせ春を感じさせる。
 緑アスパラとエスカルゴの組合せは初体験で、意外な相性に感心する。魚料理の鱸は絶妙な火入れ、「神経締め」の魚は注目されているが幾つか方法があり、通常は網や釣り上げの魚を船上で処理するケースが多いが、今回の鱸は「活け越し」と呼ぶ方法で、一旦生け簀に放してから翌日以降に締めたものだそうだ、船上締めに比べ魚がストレスを忘れて?いるので、身の味わいが増すと云われている。佐々木料理長の魚料理は毎回感心するが、この日も秀逸な皿だった。
 メニューに「豚足」の文字を見た時に「やられたな」と思った(笑)。フランス人の国民食でもある豚足だが、日本人は韓国料理のイメージからかあまり高級料理と思わない、でも皮と中身を分け他と合わせファルス状にして、赤ワインベースにして煮込んだと聞く、手の混んだ調理法によりガストロ料理に格上げされている。「古屋オーガストロノム」の豚足ファルスのグリエと共に、記憶に残る料理になった、豚足嫌いの友人にも食べさせたい(笑)。
 デセールも更に洗練されて良くなっている、若いパティシェールなので進化も早いと感じる。
 そして前回記事をUPしてから、「エスメラルダのゲイシャ」がプラス500円で飲めるのは凄いと、その筋?から云われたコーヒーを躊躇わずに飲んでみる事に、豆の市価100g2,000円以上のこの珈琲は格別だった、まず深い酸味が舌に来てその後を軽やかなコクと苦味が追随する、余韻も飛び抜けていて極上のブルゴーニュ赤、それもコートドニュイだなと勝手に解釈する(笑)、これは飲んでみる価値あり、どの世界にも上には上が必ずあるものだ。

 料理全体の印象を云うと、初訪問の昨年9月時から少し料理は変化して来たと感じた、季節的な傾向もあるだろうが、野菜や野草を多く使い軽快さも出して、日本のそれも東京代官山の客層に合わせていると思った。
 食後、客席に挨拶に来た佐々木料理長、「レクテ」になってから一年、顔付きも初めて会った頃に比べて少し穏やかになった気がする、PARIS時代に佐々木氏の下で働いていた料理人を知っているが、「佐々木さん怖かったですよ」と今でも云う(笑)、「でも仕事中以外は穏やかな人だった」との事で、日本に帰って来て月日が経ち、日本人に合わせ料理も変えなければならないし、何時も怒ってばかりもいられなくなったのだろう(笑)。
 私が「フランス時代と料理のアセゾネ(味付け)、バターの量等変えていますか?野菜はもっと火を入れていましたか?」と訊いたのだが、佐々木氏は「特にバターの量等は変えていない、野菜はフランスでは殆ど茹でて(ブランシール)提供していたが、今は焼きが多くなった」との事。たしかにこの日の野菜は浅く火を入れたか、加熱しないものが多かった。現在国産食材を中心にしているので、日本の繊細な野菜に合わせ、且つ日本人の好みに沿わせて来たのだと思う。
 サービスも良質で心地よく、支払いも安いと感じる、これは女性達が見逃さない筈だ(笑)、だからと云って、道の向かいにあるフェミニン系フレンチとは方向は違う。フランス料理初心者からフレンチフリークまで、バランスの取れた良店としてお勧め出来る店だ。


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東上野「ハリマ・ケバブ・ビリヤニ」(2018年4月)

 久し振りになってしまった、このブログではお馴染みの「ハリマ・ケバブ・ビリヤニ」、上野・御徒町のインド&ネパール料理店のランチは何店か行ったが、結局この店に帰って来てしまう、料理も勿論いいが、値段も含めて考えると一歩抜けている気がする。
 この店では「ビリヤニ」「ニハリ」「パヤ」と代表メニューを食べて来たので、普通のインドカレーも食べてみたい、でもやはりスペシャリテの「ラムビリヤニ」がいいかな?と店に着く前歩きながら悩んでいた(笑)。

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 昼の開始時間直後に入店、真中位の壁際席に座り、あらためてメニューを眺める。

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 前回来た時は「ラムビリヤニ」だったので、今回は通常のカレーを食べる事に決めた、そう云えばこの店では、他店で一般的なカレー&ナンorライスみたいな料理を食べた事がなかった。
 カレーセットは950円~1,750円の5種類、「大きなタンドリーチキン」が含まれるとの記載に惹かれ、「タンドリーチキンセット」(税込1,235円)に決め、ナンではなくサフランパスマティライスでお願いする事にした、この店のパスマティライスはビリヤニで美味しいのを確認していたからだ。2種類選べるカレーは「薫るチキンカレー」と「豆と野菜の日替わりカレー」にした。

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 入店後次々と来客があり、昼前にはかなりの席が埋まった、昼のインド・ネパール料理店はフランス料理店と違い男性客、それも一人客が多いのが特徴。この日は珍しく女性一人客もいた。

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 サラダ、インド&ネパール料理店では定番のサウザンドレッシングではないのがいい、上にあるのはインドのチーズ「パニール」かな?と思ったが、絹漉し豆腐だった(笑)。

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 インドのスープ「ラッサム」、少量だがピリっとした辛味で目が醒め、胃も活動を始める。

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 まずタンドリーチキンが来た、「大きい」と書いてあったが本当に大きい、ビストロランチ等に登場する「鶏のソテー」位の大きさがある。骨付き鶏の窯焼ローストを「タンドリーチキン」、骨を取ったものは「チキンティカ」と呼ぶが、これはメニューどおり前者。値段から輸入鶏の可能性あるが、それでもスパイスが効いて美味しい。

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 日本の焼き鳥には練芥子や粉唐辛子を合わせるが、タンドリーチキンにはミントソースを付けるのが正調との事、これだけ舐めても不思議な味だが、チキンに合わせると味が立体的になって、最後まで飽きずに食べられる。

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 カレー2種類とパスマティライス、これは見た目綺麗な炊き上がりで、実際に食べて美味しい、南インド系のカレーには抜群に合う。日本の粘りあるご飯も美味しいが、あれは粘度の高い洋食風カレーの方が相性いいと思う。

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 右がチキンカレー、左がダル(豆)カレー、気付かず鶏が被っていた(笑)。カレー自体は他店と比べて飛び抜けて美味しいと云う程ではないが、ライスが美味しいのでカレーが引き立つ、縦の糸がカレーなら横の糸はパスマティライス、合うべき味は食べる人間を仕合せにする(笑)。

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 ドリンクはホットチャイ、選べる時は夏でも大抵ホットチャイを頼むが、味は店により様々、薄いチャイは苦手だか、此の店は割と濃くて美味しい。

 久し振りのハリマ・ケバブ・ビリヤニだったが、美味しかったし値段も相変わらず安い、他店も回ってみるとそれが理解出来る。最大50席あるそうだが、昼夜満席に近い盛況なのも頷ける。
 今何処の飲食店も従業員不足が深刻だが、大陸系の中国料理店とインド・ネパール系のインド料理店に関しては、自国に幾らでも労働力はあるので、就労さえ認められれば人材に悩む事はない、これは強みだ。今の東京で、個人経営で日本人を雇用して飲食店を維持するのは、今後更に厳しくなりそうな気がする。
 上野駅から浅草へ向かう浅草通りの稲荷町駅近辺は、昔は仏壇仏具店しか無かったが、この店に加えて「キエチュード」「稲荷屋」と、ブログでも紹介した良店が続いて登場し、隠れたグルメスポットになりつつある。歩道も広くなり電線も地中化され歩きやすい、合羽橋の道具街も近く、自信があれば浅草まで歩いて行けない事もない(笑)。ランチを食べた後の街歩きもお勧めしたい。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
人はそれぞれに「見方、感じ方、考え方」が違います。私が美味と思ってもそう思わない人が居て当然です、味覚とはそれだけ不安定で不完全なもの、あくまでも筆者個人の嗜好による感じ方である事を承知の上で読まれてください。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに赤坂、麻布十番等。
混雑電車が苦手で加齢による朝型人間化のため、ランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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