最後の晩餐にはまだ早い


護国寺「アドジ(Adosi dal2017)」

 今回紹介するイタリア料理店を知ったのは、札幌のフレンチ料理人からの情報だった。
 勉強のため東京に来た時に、数店回った中で「なかなか良かった」と聞いていた。場所が護国寺なので我家からのアクセスはよくない、暫く行く機会はないかなと思いながら調べたら、何と以前「パ・マル・レストラン」があった店舗だった。
 低価格プリフィクスフレンチの走りとして、料理人の井川氏が始めたグループ店の一つで、昼1,000円、夜でも2,300円で前菜とメインが数種の中から選べるスタイルは斬新だった、当時私は文京区内に勤めていたので、職場仲間と連れ立って出かけたものだ。数年前に閉店し、その後別のフレンチになった事は知っていたが、其処から更にイタリアンに変わっていたのは知らなかった、2017年12月の開業との事だ。
 当時が懐かしくなり、センチメンタルジャーニーの意味も込め、イタリア料理店になってから行った事あると云う友人を案内役に、昼に伺う事にした。
 店の場所は、護国寺駅から地上に出て、日大豊山高校の前を通り、首都高護国寺出入口を過ぎ日本女子大方面へ向かう道の右側、周辺は私がパ・マル・レストランへ行っていた頃と殆ど変わっていない、東京は至る処で再開発が進行中、高層ビルが次々と生えるように建っているが、この地帯だけは取り残されたみたいに静かだ。

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 イタリア国旗を掲げた店舗外観に当時の面影はないが、建物の角に貼った「PLACE DE LA BASTILLE(バスティーユ広場)」の表示板だけは、イタリア料理店になった今も当時のまま、理由は訊かなかったが、あえて残している。
 面白いと思ったのが入口で、客は来訪のベルを押す、中から扉が開いて入店するスタイルで、「親しい人の家に招かれたような感覚」を表現しているのだと思った。
 マダムにドアを開けてもらい入店、店内も完全に別の店だ、テーブル3卓12席、昼夜3組までしか客を取らないと聞く。店内装飾、食器やリネン類、カトラリーなど、とてもセンスに溢れた空間、私みたいな雑な高齢男性には勿体ないが(笑)、若い女性達はきっと反応すると思う。テーブル上に提供できる中国茶を並べているのが珍しい。
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 磯田伸一料理長にも挨拶し、始まったMenu Pranzo(税別3,500円)は以下のとおり、
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・サーモンマリネ、ラスサンプーチョンの香りを付けたクリーム

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・イタリアン風ポテトサラダとカボチャのパフェ仕立て

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・自家製のフォカッチャと野菜パン

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・オリーブオイル2種(シチリアとプーリア産だったと思う)

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・仔牛のサルティン・ボッカ、埼玉県小川町産無農薬野菜を添えて

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・豚頬肉のグアンチャーレを使った、パスタアマトリチャーナ

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・モンテビアンコ(モンブラン)

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・エスプレッソ

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・食後の中国茶
 私は興味を持って、食中もワインではなく「中国茶ペアリング」(3杯1,500円)をお願いしてみた、内容は龍井茶(中国西湖)、鉄観音(台湾)、凍頂烏龍茶(中国香山)だった。

 料理全体の印象は、まず盛付けが綺麗、磯田氏は丸ビル内の高級店「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ」出身なので、ビジュアル映えする見栄えのいい料理でありながら、ポテサラみたいな親しみ易さも表現している。
 サーモンは良質なもの、サルティン・ボッカは仔牛肉で生ハム、セージを巻いた、イタリアンでは割とポピュラーな料理だが、料理人の技術と経験によりレストラン料理に高まっている。
 日本だけだと思うが、パスタをメニューの最後にするイタリア料理店が増えている、日本人ならではの「〆のラーメン」的な発想だろう。西欧では食事の最後にデザートをしっかり食べ、時に食後酒を飲み血糖値を高め満足感を得ようとするのに対し、日本人はご飯や麺の炭水化物で血糖値を高める、その究極が「ラーメン+炒飯」とか「お好み焼き+ご飯」(笑)。このアマトリチャーナは「もっと食べたい」と思う位に秀逸だった、自家製グアンチャーレの風味が効いている。
 ドルチェのイタリア風モンブランも美味、フレンチでもデセールの重要性は年々高くなっていると感じるが、イタリアンでも同様。店売りスイーツではなかなか美味しいモンブランに当たらないが、持ち帰りの時間を考えると作りが難しいのかも知れない、あとはレストランへ来て食べるしかない(笑)。
 マダムが考える中国茶ペアリングも良かった、アルコール飲まない人増えているし、将来性はあると思う。茶の長所でも短所でもあるのが、飲むと頭が冴えてしまう事で、これは客に気持ちよく帰ってもらいたいレストランに向いていない、アルコール無しでも酔わせるとすれば、あとは「香り」を使うしかない。私は仕事で「香道」の講座に参加した事があり、最上級の香木を嗅がせてもらったが、匂いだけで酔えた(笑)。その意味で中国茶の方が日本緑茶よりレストランでの食中飲料に向いていると思う。

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 夫妻の感性が詰まった素敵な店でした、日本女子大が近い事もあり、どちらかと云えば女性向けの店作りに感じるが、男性同士でも楽しめる(笑)。「隠れ家的な店で、静かに記念日を祝いたい」みたいな設定には最適だと思う。
 お二人に見送られて退店、雨が降り出して来たが、余韻に浸たりながら、隣駅の江戸川橋まで歩いてしまった。


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蔵前「パティスリー FOBS」

 今回紹介するパティスリーは、台東区在住のフレンチ料理人から教えてもらった店、彼の奥様は現役ではないがパティシェールで、休日には夫妻でパティスリー巡りをする事が多いとの話だった。
 台東区内でお勧め出来る店の一つと聞いたのが、今回訪れたパティスリー「FOBS」。
 店の住所は台東区寿で、駅はメトロ銀座線田原町駅か都営大江戸線蔵前駅が近い、また都バスの寿三丁目停留所から直ぐ、ただ今回私は御徒町からバス通りを歩いて行った、人間はまず足から弱るから(笑)、筋力を付けるために歩けそうな距離は歩く事にしている。
 「浅草国際通り」と呼ばれる広い道に面していて、2016年10月の開業。とても興味深いのは、隣の店舗が違うパティスリーで、こちらは2013年9月の開業だから、FOBSの方が後から登場した事になる。パティシェ同士が知り合いだったのかは不明だが、隣に開店したのは、なかなか度胸が要ったと思う(笑)。同じ通りには有名なとんかつ店やベーカリー、そのベーカリーがやっている行列必至のカフェが並んでいて、ちょっとしたグルメストリートになっている。
 この地域は上野と浅草二つの繁華街に挟まれて寺社も多く、比較的地味な下町地区だったが、ここ数年来蔵前を中心に若いファミリー層向けの高層住宅や商店が増えていて、今後注目される地域だと思う。

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 店の外観だけ見ると、とても洒落たデザインでPARISにあってもおかしくない位、エクステリアの雰囲気なら隣店には勝っている(笑)。

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 扉を開けると、其処は直ぐパティスリーの顔とも云うべきガラスケース、外観同様にガトー類のビジュアルはいい(撮影許可は得ています)。

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 最近の傾向に沿った小ぶりなガトー類だが、生クリーム(クレームシャンティ)を使った白い物が少なく、カカオやプラリネを使った茶色い物が多い、これは私好みだ(笑)。殆どがホールケーキをカットしたのではなく、最初から単品として作ってある。

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 店の入口近くには焼き菓子類が並べてある、狭いカウンター4席だがイートインスペースも設けている、この日は雑誌の撮影なのか、カメラマンが来ていて撮影スペースに使っていた。販売担当は女性が一人、奥がラボになっているが中はよく見えなかった。
 特に初めてのパティスリーでは何を買うか迷う、モンブランは大体どの店にも置いてあり、店の実力を判断するには最適なアイテムなのでまず選ぶ、その近くにあったティラミスも良さそうに見え、あとは「今日初めて来たのですが、あと何がいいでしょう?」と店の女性に訊いてしまった、結果選んだのは以下の3点、食べた印象と共に紹介する。

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・タルト・オ・フォグ(税別530円)
 「季節限定品なので」と云うお勧めに沿って購入。厚めのタルト生地の上にシナモンが微かに香る少量のカスタードクリーム、その上に良質のイチジクをカットして乗せている、割とシンプルな作りだが、素材の良さが際立っていた、フルーツを使うスイーツは難しいが、これはタルトにした必然性を感じさせる。

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・ティラミス(560円)
 今回、これが一番気に入った。商品説明には「淹れたてのエスプレッソを染み込ませたジュワっとした生地と、滑らかで軽いマスカルポーネクリームの組み合わせ。」とある、素材の良さは抜群、当然だがコンビニで売っているティラミスとは違う(笑)、軽やかでいながら食後感充実、これあったら買うべき品だと思った。空いたグラスは日本酒飲む時に使える(笑)。

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・モンブラン(550円)
 寿司屋なら鮪握り、フレンチならフォアグラ、これに匹敵するのはパティスリーならモンブランだと思う、モンブランとシュークリームを食べれば、店の大まかな実力は判る。
 期待していたが、意外と普通のモンブランだった、中は古典的な焼メレンゲ、カシスのジュレを乗せてマロンクリームで包んでいる。美味しくなかった訳ではないが、他の2品が良かっただけに、この店ならでは更なる個性が欲しいと思った。

 モンブランは期待が大き過ぎて、少し不満が残ってしまったが、あとの2点は秀逸だった、値段もそう暴力的でないし(笑)、蔵前や浅草方面へ出かける時は、寄ってみたいパティスリーの良店。あとで知ったのだが、ゴーフルが店の看板商品だそうで、次行く時は試してみたい。

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 なお店名の「FOBS」は、Farine(粉)、Oeuf(卵)、Beurre(バター)、Sucre(砂糖)の、パティスリーには四大要素と云える素材の仏語による頭文字を並べたものだ。


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御徒町「鴨to葱」

 JR御徒町~上野駅間のアメヤ横丁には月一回行っているが、去年夏に小さなラーメン店がオープンした、JR高架下の店舗で、店がある一角は昔から輸入衣料品や化粧品等を売る店が多く、飲食店は珍しい。 
 ひと月ほど前、店前を通ったら行列が出来ていたので気になり、WEB情報を調べると、既にラーメン好きには知られた店のようだ。店名は「鴨to葱」で鴨出汁と鴨肉を使うのが特徴との事、どうも店名が「鴨が葱背負って来た」を連想してしまうが、値段もそう高くないのでボッタクリもなさそう(笑)、珈琲豆を買いに行くついでに寄ってみる事にした。

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 店の場所は文字通り「ガード下」、都営地下鉄上野御徒町駅、メトロ上野広小路駅、同仲御徒町を地下道で無理に繋げているが、連絡通路のA7出入口を出て1本隣の道、駅出口近辺は低価格帯の飲食店が増えたと思う、増加する外国人観光客の需要も狙っているのだろう。
 ガード下に店舗、それも飲食店が在るのは世界的には珍しいらしく、先日もTV番組で外国人客がガード下店舗を利用する実態を特集していた。

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 開店時間は11時からだが、5分前に着いてしまったので店前で待つ事に、すると店内から女性が出て来て、食券販売機の囲いを外して「先に食券を買って、こちらでお並びください」と指示する、慣れたものだ。気付いたら私の後ろに数人男性が並んでいた、皆開店一番を狙って来たみたいだ。

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 少し迷ったが、「鴨らぁ麺」に「鴨to葱の小親子丼」のセット(税込980円)に決め、選べるトッピングは白葱と漬け玉ねぎにした、3種類のうちの2種選択だから、選ぶ意味がイマイチ判らないが。
 開店時間になり、先ほどの女性が「順番で先から詰めて座って下さい」との指示に従い着席、食券は渡してあるから、後は出来上がりを待つだけ、隣席はビールを注文していたので、あらかじめ席に冷えたコップまで置いてある(笑)。
 個人的には食券システムは好きではないが、こうした行列が出来る店では仕方ないのだろう、飲食店に限らないが、サービスを提供する人間が直接現金対価を受け取らないのは、キャッシュレス時代が浸透すると共に、これから顕著になって行くと思う。

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 水はセルフ、従業人不足からこれが当たり前になったが、厨房内には男性2人に女性1人、客さばきのために女性1人居るので、この種の店にしては充実している。カウンターだけの11席。

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 まずは鴨肉の親子丼から到着、卵は鶏だから厳密に云うと「親子」ではないが(笑)、まあ細かい事はいいでしょう、卵にあまり火を加えずトロトロに仕上げている、個人的な好みを云うと、もう少し火を入れて欲しいなと思う、全体的な味わいは濃い目だが悪くない、ただ後のラーメンとの相性は今一つシックリしないと思った。

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 鴨と葱を使う意義?を語っている。

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 背の高い変わった形の丼で鴨らぁ麺登場、盛り付けは綺麗でインスタ映えする(笑)。

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 丼のせいか小盛りに感じてしまう。具は鴨の切り身、焼き葱に刻み白葱と玉葱。丼の下は他店なら板張りのカウンターだが、此の店では畳(耐水性だろう)を使っているのが珍しい。
 まずはスープを一口、第一印象は「甘い」と感じた。以前牛骨スープのラーメンを食べた時も同様に甘いと感じたが、鶏と豚以外を使うと傾向が似るのかも知れない。トッピングに煮た玉ねぎを選んだのも、甘いと感じる要因だろう、出汁の良さは感じた。
麺は自家製ではないと思うが、中細ストレートのしっかりした食感、良質なものだった。

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 鴨肉は薄切りが2枚、これは正直云って寂しい、1,100円の「鴨コンフィ麺」には7枚入っているそうだから、鴨が食べたかったら、そちらを選びなさいと云う事か・・。

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 値段はともかく全体の味は悪くなかった、ただ、食券購入⇒待ち⇒着席⇒食べる⇒退店の一連の動きが何か機械的で、慣れないせいか違和感を覚えた、もっともこれはこの店だけではなく、行列店共通の事だろうが。
 「親父さん、今日はラーメンお願い」「あいよ、久しぶりだね」などと云った、フェイスtoフェイスのやり取りを懐かしむのは、自分がもう古い世代の人間なのだと、あらためて思った(笑)。
 昭和人間はそのまま2駅分歩いて、フレンチ料理人に教えてもらったパティスリーに行く事に、この話は次の記事で。


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  2. 麺・ラーメン
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神田小川町「ZeCT(ゼクト)byLm(バイエルム)」

 衰退、特に若者の利用離れが伝えられるFacebookだが、このままだとMixiと同じ道を辿りそうな気もしている。ただ私にとっては短いセンテンスで、自分の云いたい事を伝えるための無料文章学習の場と思い続けている(笑)。ブログほど構えて文章を捻り出さなくて済むし、また未訪問飲食店の情報を得るには、それなりに役立っている。
 今回紹介するイタリア料理店も、FB友人がウォールに書いていて知った店、何より惹かれたのは、ランチタイムにパスタ5種類にサラダ、デザート、ドリンクを含み、支払い2,000円ポッキリと云う、聞いただけではちょっと信じられない内容、場所も千代田区の神田小川町だから、十分都心だし我家からのアクセスもいい、他の予定を飛ばして、平日昼に早速行ってみる事にした。

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 店は「ZeCT(ゼクト)byLm(バイエルム)」と云う不思議な名前。場所は靖国通りと本郷通りが交差する小川町交差点の近くで、都営新宿線小川町駅、メトロ丸ノ内線淡路町駅、同千代田線新御茶ノ水駅が繋がっている(無理やり繋げたとしか思えないが(笑))地下通路のB6出入口を出てすぐの場所だ。
 私は一時この近くで臨時雇いながら働いていて、また店のある通りは知人が以前喫茶店をやっていたので、土地勘があったから店はすぐ見つかった。隣は行列が出来るラーメン店、他にもこの周辺は近くで働くサラリーマン向けの低価格な飲食店が多い。
 この種の店には珍しい11時の開店時間、店のドアが何故か開かないと思ったら引き戸だった(笑)。

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 カウンター8席ほどの小さい店、中には体格のいい男性料理人と小柄なサービス担当の女性、夫妻かな?と思ったが空気感が違う、あとでネット情報見たら夫婦ではないそうだ。
 ランチメニューは4種類で、これは最初からCランチ(税込2,000円)に決めていた、内容は全てお任せになるので、アレルギーや苦手食材を訊かれるだけ。料金に含まれるドリンクも10種から選べ、1杯だけでなく2杯でも可能、この太っ腹なサービスは素晴らしい(笑)。

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 ランチョンマットを使ったセッティング、最初はアイスコーヒーをお願いした。

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 黒板には本日のパスタの案内が、北海道での地震直後で、客が注文する毎に100円募金した事になる、支払う値段は普段と変わらないので店側の負担、これも太っ腹。

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 まずはグリーンサラダ、サニーレタスの水切りよく、ヴィネグレット(イタリアでは「ドレッシング」にあたる言葉がなく、あえて云うなら「Condiment」になる)も良質。
 以下は当日の5種類パスタを登場順で、

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・牛ひき肉とミニトマトの塩味

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・長芋、ゴーヤと胡麻の冷製

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・自家製フェットチーネ、ベーコンとポテトのバジルクリーム

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・ボンゴレビアンコ

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・ナスと挽肉のトマトソース

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・バジルのパンナコッタ

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・エスプレッソ
・ラムネ菓子(笑)

 時間が早く他の客が居なかったので、まるで「わんこそば」みたいに次々と出て来る、「美味しさはスピードだ」は、伝説の名料理人フェルナン・ポワンの言葉とされるが、この早さに付いて行くため客も真剣にならないといけない(笑)。
 5種類中、手打ちのフェットチーネ以外は乾麺で、茹で時間を考慮してだと思うが、細麺のフェデリーニか?茹で置きなどはせず、その場で茹でてソースと和えている。
 全部を説明すると長くなるので細部は割愛するが、味のトーンは一定している、料理人は見かけマッチョだが、割と穏やかで優しい味付け。やはり手打ちのフェットチーネが一番印象に残った、あとは冷やし中華みたいな冷製パスタとボンゴレ。
 食後は別の飲み物も提供可との事で、エスプレッソをお願いした。

 昼のピーク時間前だったので、料理人の藤枝氏と少し話をする事が出来た。イタリアでは2011年に半年ほどトスカーナ地方で働いていたそうだ。「この値段では利益出ないでしょう?」と単刀直入に訊いてしまったが、「本当の事を云ってしまうと殆ど出ない、続けているのは、料理を気に入ってくれた客が夜にも来てくれるのを期待しているから」との話だった。今レストランもネット重視で宣伝費を結構使っているが、それを店でやっていると云う事だ。
 時折、ラーメンを店で出す事があるらしく、これはおそらく隣のラーメン店が行列しているので、それへの対抗心ではないかと思う。私は学生時代も社会人になってからも非エリートだったので、こうした気骨ある、別の言い方をすればイカれた料理人は好きだ(笑)。
 メニューを見せてもらった夜の料理も魅力的、間違いなくまた来てみたい店だ、今迄知らなかったのを悔やむ。なお変わった店名は、友人や世話になった店と料理人の頭文字を繋ぎ合わせたものだそうだ。
 支払いはこれ全部で本当に2,000円ポッキリ、今年行った某店のグラスワイン1杯の値段だ(笑)。東京には私の知らない、訪れるべき店がまだ幾つもあるようだ。


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足立・大谷田「バーガーハウス のみなる(Nominalu)」

 我家から自転車で行ける距離に、忽然とハンバーガーショップがオープンしたのは今年6月、環状7号線大谷田陸橋近くの割と古いマンションの1階で、以前は近所の住民や勤め人が利用する大衆食堂だったが数年前に閉店、シャッターが閉まったままだった店舗を改装した。
 店内工事をしていた時に前を通り、「何が出来るのだろう?」と思っていたら、ハンバーガーそれも高級バーガーの店だと知り驚く、何故ならすぐ近くには、巨大ハンバーガーチェーンのドライブスルーがあるからで、例えれば「丸亀製麺」や「はなまる」の店前に、讃岐うどんの個人店を出すみたいな感じだ(笑)。
 その後WEB情報で1個千円前後の値段と知り、「この場所でその値段で大丈夫か?」と心配する気持ちも起きながら好奇心も沸き、電車賃もかからないので、とにかく一度行ってみようと思った。
 アクセスは良くない、公共交通だとJR亀有駅から大谷田方面行きのバスに乗るか、メトロ北綾瀬駅から15分歩く、車だと駐車場は無いので、近くのコインパーキングに駐車するしかない。

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 店名は「バーガーハウス のみなる(Nominalu)」と云う、ちょっと変わったもの、店の正面ガラスには、バーガー、クラフトビール&カルフォルニアワインと、提供するものが書いてある。

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 商品持ち帰り可である事を説明、ランチメニューの内容も貼っている。

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 自動ドアが開き店内へ入ってみると、思っていたより広くカウンター席とソファー席に分かれ、カウンターは厨房から距離を置いた二重構造になっている、此処へ座った。

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 ランチメニューは税別900円から1,200円の5種類、ランチサービスとしてソフトドリンクが無料になる。
 この分野は全くの不案内、何を選んでいいか判らず、店の男性に思わず「どれが一番人気ですか?」と訊いてしまった、彼の話では「マリブクラシックを注文される方が多い、辛いのが好きならラホヤレッドがお勧め。」との事で、無難そうな「マリブクラシック」(1,200円)を、自転車で来たのでビールではなく、ジンジャエールでお願いした。

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 この日店内は若い男性一人で回していた、店主かな?と思ったが、聞いたらオーナーではなく料理人だそうだ。

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 店内にはサーフボードやスケートボードが置かれ、オーナーの趣味との事だ、インテリアは米西海岸辺りをイメージしている、店内装飾も殆どオーナー自身が手掛けたらしい。

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 ジンジャエール、自家製ではなく瓶入りのものだった。

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 これがマリブクラシック、店側のメニュー説明には「これぞ王道!!粗挽きパティにブラックペッパー&岩塩でグリル!!(トマト・チーズ・レタス・グリルオニオン)」とある、同じ皿にはフライドポテト、ケチャップ、ピクルスが乗っている。

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 運ばれて来たままの状態だと食べ難いので、金串を外し紙に包んで食べる、食べ慣れてないので、脇腹から色々はみだしてしまい、手にくっついてベタベタになる、どうもハンバーガー食べるのは苦手だ(笑)。
 肝心の味はなかなかいい、特に粗挽きのハンバーグ部分は良質だと思った、私の好みからすると、輸入していると聞くバンズは少々柔らか目に感じた。WEB情報では「量がショボい」と指摘されていたフライドポテトは、まあ普通の味なので、これ以上量があってもあまり嬉しくはないが(笑)。

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 京都醸造(KBC)のクラフトビール品揃え、名前が面白い。

 前述のとおり、私はこの分野の経験値は殆どない、以前に当時の勤務先近くの人気店「ファイアーハウス」を利用した位。
http://toshioncle.blog.fc2.com/blog-entry-347.html
 同等レベルの実力はあると思うが、値段もそう違わないので、地域住民が受け入れ利用するかとなると心配も残る。地元の店それも個人資本なので、個人店が消える一方の地域を盛り上げる意味でも続いて欲しいなと思う、また行ってみるつもりだ。
 なお、変わった店名は宇宙漫画?に出て来る号令と、ハワイ語の挨拶と聞いたが、若いセンスには追い付いていけない(笑)。
 

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三ノ輪「ビストロ ルミエル」(2018年8月)

 過去2回ランチタイムに利用して、料理が好印象だった三ノ輪の「ビストロ ルミエル」、夜4,800円のムニュデギュスタシオン(お任せ)を試してみたくなり、食仲間を誘って訪問する事にした。最近の外食活動は殆ど昼だが、三ノ輪は我家から近いので、帰りが12時過ぎになる事もない、夜遅いのが辛くなった高齢者にはありがたい場所だ。
 日比谷線三ノ輪駅を出て、昭和通りを入谷方面へ向かって歩く、昼間とは違った景色で、2軒並んだ和菓子店と金太郎飴本舗も既に店仕舞い、昭和通りを歩く人も少なく、行き交う車と視線の先にある東京スカイツリーだけが目立つ。
 昼と夜では距離感が違うので、「駅からこんなに歩いたかな?」と自分の記憶を疑る頃に、店の灯りが見えたので安心する、店名に違わず夜を照らし、人を迎える「Lumiére(光)」だ。

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 ドアを開けて入店する、入口近くの席では地元住民らしい妙齢?の女性達が、夜の女子会を敢行中。加藤夫妻に挨拶するが、2日前まで家族でニューヨークに夏休み旅行をしていたそうだ、「覆面料理人」を名乗る加藤氏だから、プロレスの殿堂マジソンスクエアガーデンで、ひと暴れして来たのかも知れない(笑)。
 友人も到着し、始まった料理から紹介したい。

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・ジャガイモの冷製ヴィシソワーズ、ローズマリー風味

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・自家製パンとオリーブオイル

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・ルミエル風小籠包(挽肉、トマト、バジル、コンソメ)

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・豆乳のババロワ、枝豆のアイス

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・揚げ茄子とクリーム、上に海老、帆立、カニ、ウニのジュレ寄せ。

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・アナゴ、山芋、パルメザンチーズのフリット(かき揚げ)、蜂蜜風味

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・三重県産真鯛のポワレ、白バルサミコ風味のナージュ仕立

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・北海道産チェリーバレー種鴨胸肉のロースト、コーヒー風味

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・長野県川中島産白桃とホワイトチョコレート

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・下にプリン、上に山梨産ピオーネのコンポート、チュイール
・コーヒー

 まずは「手で摘まんで食べて」でない、スープのアミューズはスタイルとして古いのかも知れないが、私みたいな古い人間には嬉しい(笑)。
 一番楽しみにしていたのがルミエル風の小籠包、本当に小籠包だった(笑)。料理長オリジナルだそうで、これは続けてもらいたい一品だ。
 ババロワ、ジュレ寄せ、かき揚げと続く前菜3種は、「これ税込4,800円で大丈夫か?」とこちらが心配になる程、ただ品数を揃えただけでなく、どれも丁寧に作ってあり美味しい、これは相当経験を積み、厨房で数々の修羅場を潜り抜けて来た料理人だなと思った。中でもかき揚げは英字新聞に包んで出すセンスと、揚げ立てのコロッケにかぶりつく様な、直球の美味しさに脱帽。
 真鯛ポワレは白バルサミコの酸味が印象的、行ったのはだいぶ前なので記憶は怪しいが、加藤氏が働いていた「オテル・ド・ミクニ」の酸味の使い方に似ていると思った。
 肉料理の鴨は火入れと味のまとめ方に非凡なものを感じる、コーヒーを使う事により鴨の余計な脂味が消え、大き目の切り身でも最後まで飽きずに味わえた。20年近く前の体験だが、PARIS「グランヴェフェール」での「仔羊のコーヒー風味」を思い出した。
 デセールがいいのもこの店の特徴、フルーツもただ切っただけでなく、しっかり手をかけているのが判るし、その作業が無駄になっていない。

 圧巻の9品だった、この日の料理を値段云わずにフレンチ好きに食べさせて、「このムニュ幾らだと思う?」と訊いてみたい気がする、おそらく最安で6,000円、最高で10,000円位の間だろうと予想する(笑)。
 料理の特徴として感じたのは酸味と甘味で、随所に隠し味ではなく鮮明に表現する。この使い方は「オテル・ド・ミクニ」譲りだと感じた、それもそのままではなく、加藤氏独自の使い方をしていると思った。師の仕事を真似しただけでは、模倣や模写でしかなくオリジナルは越えられない、其処に自分なりの個性を表現しないと創造とは見なされない、特に長い伝統がある欧州ではそうだ、これは料理だけでなく全ての表現活動に云える事。
 初めての店や初めての料理を体験する時には、「今日の料理は大体この程度ではないか?」と大方の予想をする、最近はそれを外れる事が殆どなくなった、年取って感性が鈍くなったのもあるが、それだけ今の東京フランス料理は格差が少なくなったと思っていた。でも、この日の加藤氏の料理には、何か突き抜けたものを感じ、久しぶりに胸のつかえが取れたみたいな爽快さがあった(笑)。
 過去レストラン行脚を重ねて、店と料理人には幼年期、青年期、壮年期、老年期があると考えていた、其処へ初めて行くのがどの時期なのかによって、店への印象も変わる。この料理人は青年期それも前半だなと思った、これからまだ大きくなりそうな期待を抱かせる、私にとって追いかけていたい店になった、当然ながらランチ時の印象を大きく上回る。

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 自称「覆面料理人」の加藤氏なので、他の客が引けた後に「覆面姿を見せて」と無茶なお願いをしてしまった(笑)、快く引き受けてもらい画像も撮ったのだが、これは誤解されるといけないので、ブログでの公開は控えたい、興味のある人は店へ行って直接お願いしてみてください(笑)。
 素敵な加藤夫妻に見送られて退店、まだ暑さは終わらないが、歌でも歌いながら家まで歩いて帰りたい位に、二人のおかげで忘れ難い夜になった。


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綾瀬「中華食堂居酒屋 みなみ」

 持病の腰痛治療のため、十年近く通っている綾瀬の整体治療院の帰りに、何処かで昼飯を食べようと、周辺を自転車で探していたら、入った事のない中華料理店が営業していた。「また新しい店か?」と思ったが、店の看板「中華食堂居酒屋 みなみ」は見覚えがある。

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 今迄は夜だけ営業だったが、最近ランチタイム営業を始めたみたいだ。元々千代田線綾瀬駅周辺は、京成電鉄の堀切菖蒲園や立石と一括りで雑誌等に紹介され、食堂やレストランより居酒屋系飲食店が多く、そのため昼より夜営業メインの店が目立った。
 勤め人より住民利用が増えて来たのか、それとも働き方改革によるものかは不明だが、従来の夜型店も昼営業をする店が増えている気がする、これは夜活動を殆どしなくなった?今の私にはありがたい(笑)。

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 店前の黒板には「二品定食 厚揚と豚角煮の煮込み+野菜料理」¥680+税との表示がある、日本語としては「角煮の煮込み」は変なので、これはきっと大陸の人がやっている店だなと思った、「大陸系中華」と一言で云っても玉石混淆で当たり外れがあるが、値段も高くないし、好奇心から自転車を停めて入ってみる事にした。

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 店内はこの種の店にしては割と綺麗で、厨房には中国人と思われる男性が一人、店内サービスはハーフパンツ姿の若い女性が一人で、この女性眼鏡がよく似合うが、日本語が流暢でないので中国の人だろう、店名入りの揃いのTシャツを着ている。

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 黒板メニューの他にも定食類が充実している、料理を見ると一応四川系みたいだ、他の料理も気になったが、初回なのでとりあえず黒板メニューの「二品定食」でお願いした。

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 水はピッチャーごとテーブルに置く、飲食店では人手不足からこのスタイルが増えている、レモンを入れて水道臭さを消しているのは、小さな工夫だが好感持てる。

     180905-6「厚揚と豚角煮の煮込」
 やって来たのが「厚揚と豚角煮の煮込み」(店表示のまま)、奥はスープではなく何故か味噌汁、キュウリと人参の和え物、コンニャクの味噌炒め。
 過大な期待はしていなかったのだが、特に煮込みが良かった、微かに五香粉みたいな香りを感じるので、八角を使って豚バラ肉を煮込んでいる筈。濃い目の味わいだが、ベタっと甘くせず、日本人に媚びていない味だ(笑)。
 日本に居るフランス人が作ったフランス料理にも感じるのだが、「日本人はこうした味を好む」みたいな刷り込みがある気がする、この煮込み料理にはそれが無かった。副菜も何気ないものだが、ちゃんと作ってあった、味噌汁だけがイマイチか?(笑)。
 帰ってからこの店をWEB上で調べたら、経営は近くにある同名の串焼き店で、運営は中国人従業員とあった。以前このブログで紹介した同じ綾瀬の「一駅族」もそうだと聞くが、最近この形態が増えているように思う。それだけ日本人従業員が足りないのだろう、日本人と中国人を混ぜて使うより中国人だけに店を任せる、その方が上手く行くのかも知れない。

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 初回で気に入りすぐに再訪問、つまり「裏を返した」。この時は麺を試してみようと「牛肉麺」(税別880円)にする、注文時に眼鏡のお姉さんが、「牛肉麺は辛くしますか?本場では辛くないが、日本の人は辛いのが好きなので」と云ったので、「少し辛くして」とお願いした、牛肉麺は四川ではなく広東発祥で本来は辛くないそうだ。
 牛バラ肉をやはり八角等を使い、醤油味で煮込んで麺の上に載せている、コクのあるスープに細麺、モヤシと青ネギも効いている、これも日本人が決める中華味とは少し違うと思ったが、十分美味しかった。

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 大陸系中華では時に美味しくないご飯に当たる事あるが、此処は安物でない国産米を使っている、経営が日本人なのも大きいと思う。

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 この後に店は盆休みに入り、休み明けにまた行ってみたら、メニューが少し変わって税込表示になり料理人も以前と違う人だった、この時は「ホイコーロー定食」(税込780円)をお願いした。味は普通に美味しく、味噌汁から卵スープになったのはいいが(笑)、以前より全体の味わいが少し日本的中華になった気がした、料理人が代わったせいなのか、たまたまだったのか、また確認しに行かないといけない。

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 綾瀬駅周辺の中国料理店は「綾瀬飯店」「たまき」「一駅族」とブログで紹介して来た、この店も含め何処もガイドブックに載る有名店では無いが、それぞれ特徴ある佳店で値段も安い。綾瀬は隠れた中華王国になって来たのかも知れない、自転車で回れる場所なので、老後の楽しみが増えた(笑)。


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没後50年 河井寛次郎展―過去が咲いている今、未来の蕾で一杯な今―

 今回は食レポートではなく、先日訪れた、新橋駅近くのパナソニック汐留ミュージアムで開催中の、「没後50年 河井寛次郎展―過去が咲いている今、未来の蕾で一杯な今―」を紹介したいと思う。
 河井寛次郎(1890~1966)は、近代日本陶芸界を代表する作家の一人。島根県安来生れで、実家は大工だったが、少年時に地場産業の窯業に興味を持ち、東京高等工業学校窯業科に入学、此処でのちの人間国宝濱田庄司と出会い生涯の友人となる。卒業後は京都市立陶磁器試験場で中国や朝鮮の陶磁器研究を行いながら、制作を開始する。
 その後濱田の紹介で、民芸運動の提唱者である柳宗悦と会い思想に共鳴、「用の美」に基づく生活陶器を制作、関西を中心に評価が高まる。1937年京都五条坂に自宅兼作業場を自ら設計し、以降この場所で創作を続ける。
 戦中戦後は陶芸材料の不足から木彫や詩作にも手を染める、その後再開した陶磁器は戦前とは趣を変え、大胆な造形と彩色により新境地に至る。
 文化勲章、人間国宝(重要無形文化財保持者)、芸術院会員等の推薦は全て辞退し、最後まで無位無冠の陶工としての生涯を送った。
 今回の展示は、河井寛次郎記念館所蔵品、山口大学所蔵の初公開品に加え、パナソニック創業者松下幸之助のコレクション等が公開されている。今年は没後50年にあたり、そして私が行った8月26日は、奇しくも河井の誕生日だった。

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 汐留ミュージアムは2回目、パナソニック東京汐留ビルの4階で、総合ビル内の一角。出光美術館みたいに企業スペースと隔離していないので、独特の雰囲気がある。1階がリビング関連のショールームで、そちらも見て下さいと云う狙いもあるようだ(笑)。
 入口受付で入館料を払うが、館内展示品の一部が撮影可であるのを知る、ちょうどコンデジカメラを持っていたので、数点撮影させてもらった、最近他の美術館でも増えているが、いい事だと思う。以下特に印象に残った作品を紹介したい。

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・白地草花絵扁壺 昭和14年作
 戦前の到達点とも云える、河井の代表作品。ミラノ・トリエンーレ国際工芸展のグランプリを受賞、それも自らが参加したのではなく、友人が勝手に出展したと伝わる。
 受賞時には取材に応えて「私はモノを競うことに興味を持たないのです。仮に貰えるとしたら、それはモノが貰うので、私個人が貰うものではないと思うのです。」と、実に河井らしい言葉を残している。

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・呉須刷毛目大壺 昭和14年頃(左)
・三色打薬双頭扁壺 昭和36年頃(右)
 戦前と晩年の制作変遷を対峙する意味で、この2点を並べたのだと思う、左は「白地草花絵扁壺」と同年なので、迷いのない堂々たる一品。
 右はこの展覧会のポスターにも使われているが、河井が晩年辿り着いた、奔放な造形と彩色による表現。

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・練上鉢 昭和31年作
 「用の美」から脱却し、独特の造形や彩色に集中する時期のもの、現代抽象美術とも通じるオーラがある。

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・呉須泥刷毛目扁壺 昭和30年頃
 もし「今回の全作品中から一点好きな物をあげる」と云われたら、私ならこれか。床の間(我が家には無いが)にさりげなく置きたい(笑)。

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・白地三色打薬扁壺 昭和32年頃
 晩年の境地を表現する作品、岡本太郎の絵画にも通じる、爆発的な美を表現している。

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・木彫像 昭和29年頃
 最初は椅子かな?と思ったが違った、用の美から離れ実用でないものを作りながら、凡作に陥らないのが河井の真骨頂、会場内には数点木彫が展示されていた。

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・言葉「いのちの窓」より(複製) 昭和23年頃
 河井のもう一つの顔である詩作、格言も展示されている、会場ではTVドラマ「アンナチュラル」に出演していた、井浦新氏の朗読音声が流れていた。

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 晩年の河井寛次郎、「いい料理人は、いい顔をしている」は私の持論だが(笑)、「いい表現者は、いい顔をしている」と言い換えても通じると思う、少なくとも昭和世代まではそうだった。

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 ミュージアムショップで見つけて、思わず買ってしまったのが「猫」、木彫作品の意匠を金属製のカードスタンドにしている、自宅で飼っていた猫らしいが、巨匠が彫るとただの猫ではない表情になる(笑)。
 数はそう多くないが、事前に予想していたより充実した展覧会だった、特に陶芸好きな人にお勧めしたい、尚9月16日(日)迄の会期で水曜休館。
 観に行く時はWEBページ上の100円割引券があるのでお忘れなく(笑)。
https://panasonic.co.jp/es/museum/discount/


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
人はそれぞれに「見方、感じ方、考え方」が違います。私が美味と思ってもそう思わない人が居て当然です、味覚とはそれだけ不安定で不完全なもの、あくまでも筆者個人の嗜好による感じ方である事を承知の上で読まれてください。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに赤坂、麻布十番等。
混雑電車が苦手で加齢による朝型人間化のため、ランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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