最後の晩餐にはまだ早い


赤坂「古屋オーガストロノム」(2018年10月)

 身内の誕生日祝いをする事になり、何処の店にしよう?と考えながらも、すぐに答えは出た、去年も同じ場所だったし、私が現在最も料理を信頼している店の一つ、赤坂の「古屋オーガストロノム」に決め、支配人の石橋氏に電話し、平日昼の席確保をお願いした。
 札幌食べ続け遠征でのフレンチ若手3人と、乃木坂のジャンヌ・ダルク(笑)の料理を体験した後で、1978~1984年生れの彼&彼女達と、1973年生れの古屋氏の料理がどう違うのか、確認してみたいと云う気持ちもあった。
 一ツ木通りを曲がり、飲食店の多い狭い道を進むと、右側にすっかりお馴染みになった、大きな「f」の字と小田原ナンバーの原付バイクが見える、前回利用からもう半年経っていた、月日の急流に追いついていない。
 石橋氏に案内され奥の席に着く、古屋料理長も挨拶に出て来て、始まった10月のメニューは以下のとおり、

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・アミューズ(オーストラリア産緑アスパラガスのスープ)

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・仏ベルジュラック地方、Château VARIの白

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・鳥取産大和鹿のパテ、フォアグラのアイスクリーム

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・自家製パン(トマト味)

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・スコットランド産ラングスティーヌのソテー、ピュイ産のレンズ豆、豚足のタタン

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・ランド産フォアグラのポワレと切り干し大根、ダブルコンソメ仕立て

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・山口県萩から届いた鰆のポワレ、タケイファームのキャロット添え、ルッコラ風味のソース

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・イタリア産仔牛イチボのロティ、牛タンとイカの紫白菜のファルシ、粒マスタードソース

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・洋梨のコンポートとソルベ

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・クレープで包んだバニラアイスクリームのフリット、チョコレートソースで

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・替え玉(笑)のアイスクリーム

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・エスプレッソ

 私が此の店を利用するのは、2016年1月の初訪問以来通算11回目になり、古屋氏も何を出すか悩んだと思う(笑)。
 デセール以外の6皿のうち主食材が外国産の料理が4皿、国産食材を積極的に使う料理人が多くなった中で、あえて「その時良い物なら国籍を問わない」スタイルが、まず特徴だと思う。
 10月に緑アスパラのスープは、一瞬季節ではない?と思うが南半球なら旬盛りだ、美味しさは食べれば納得する。当初予定に無かった鳥取の鹿を使ったパテはフォアグラアイスが面白い、鹿肉は風味があるが脂分が弱い、そこを補うために添えるのはフランス料理ならではの足し算。
 ラングスティーヌ、レンズ豆、豚足は、異種格闘技みたいな組合せだが、絶妙にバランスを取っているのが古屋氏の真骨頂。続くフォアグラと切り干し大根を合わせたセンスにも唸る、両者が良質のコンソメに浸かって気持ちよさそう(笑)。
 鰆も和食では字の如く春の魚だが、この時期は身が大きくなって脂が乗り和食では使わなくなる、そこでフランス料理で使ってしまおうと云う事、ルッコラを使ったソースが脂を中和し最後まで飽きさせない。
 肉料理は仔牛の火入れも良かったが、牛タンとイカを紫白菜で包んだガルニが印象的、一人厨房でよく此処までやるなと思う(笑)。
 デセール2品も秀逸、特にアイスのクレープ揚げは見映えはイマイチだが、クレープ、アイス、チョコレートが上質で三位一体になった味は抜群、今年のレストランデセールではベスト3に入れたいと思った。

 古屋氏や代官山「レクテ」の佐々木料理長の料理で一番感じる事は、何と云ってもムニュ構成の巧さだ、高原価な食材ばかり並べなくても、店からの帰路「今日はとてもいい料理だったな」と、充足した気持ちで帰る事が出来る。直球だけでなくチェンジアップも上手く混ぜ、緩急のある投法により最後まで飽きさせない、優れた読物と同じで起承転結がある。
 若さと閃きで、一皿だけ秀逸な料理が作れても、それを組み入れ優れたムニュを構築するとなると、若さだけでは届かない経験が要る、三田「コートドール」斉須料理長の著書に「調理場という戦場」があるが、幾つもの戦場を潜り抜けて来て、こうしたものは身に着くのでは?と思っている。
 調理が終わり我々の席へ話に来た古屋氏、「僕の料理はインスタ映えしません」と自ら認めるが、その後に云いたかったのは「でも美味しい料理です」だと思う(笑)。彼はあまり他の料理人と群れないし、流行りのコラボフェア等もやらない、地に足を付け自分のポジションを守っている印象がある。料理も含め「今風」のやり方ではないと思うが、ブレない自分を表現するには、料理人、言い方を変えれば表現者は孤独でないといけないのかも知れない。
 2015年7月に始まった此の店、それまでこうした料理は和歌山か大阪上本町に行かないと無理と思っていただけに、登場はありがたかった。以前より利用客も増えているように感じる、先日行った同じ赤坂エリアの「タンモア」も同じだが、クラシック料理はそれを求めている人が居る限り廃れない、私もその一人でありたいものだ。


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上野広小路「KANAME」

 上野広小路に或る上野風月堂は、社史によると1905年(明治38年)の開業だが、その前身は江戸時代の1747年、大坂出身の大住喜右衛門が江戸京橋に開業した菓子舗「大坂屋」で、通算すると創業371年になる老舗中の老舗だ
 明治時代から現在の場所で営業しているそうだが、2階には古くから続く飲食スペースがあり、主に洋食やサンドイッチ等の軽食を提供していた。私も数回利用した事あるが、昔ながらの上品なパーラーと云う印象だった。
 この場所が昨年11月に大幅リニューアル、「ビストロ感覚で楽しむ、モダンな洋食」をコンセプトにした新しいレストランに生れ変った、店名は「KANAME」、扇の要から取ったそうだ。信頼出来るサイトの評判も良かったので、上野で人と待ち合せる場所に選び、初めて利用してみた。店前は何度も歩いて通っていたが、店内に入るのは思い出せない位に久しぶりだ。

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 メニューを掲げている店の入口は一応別だが、店舗一階からも上がれるようになっている、帰りに気付いたのだが一階の菓子販売スペースもリニューアルされ、小さいながらカフェスペースも設けてあった。

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 階段を上るとレセプションで、空席待ちに使う椅子も並べてある。

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 店の真中にあるソファー調の席に案内される、天井が高く明るく広いスペースは74席あるそうだ、配られたメニューを見る。
 各種洋食メニューが中心で結構種類が多い、平日限定のワンプレートランチが3種類あり、この中から「デミグラスハンバーグプレート」(ドリンク付税込1,880円)にランチデザート(400円)を追加して注文する事にした。
 平日昼の客層は様々、隣の席は制服OL3人と上司らしき男性1人、これ奢りだろうか?と、どうでもいい事考える(笑)、窓際にはママ友仲間みたいな2人組、1人客も数人居る。

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 私は注文しなかったが、同行者の選んだランチスープ(300円)、マッシュルームを使ったクリームスープで美味しいとの事だった。

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 やって来たハンバーグプレート、WEB上の紹介では「特製デミグラスソースをかけた北海道産十勝アンガス牛のハンバーグと有頭海老フライのプレートです」とある。
 ハンバーグは最近流行の粗挽きではなく、昔ながらの細かい挽肉を使ったもの、牛だけでなく豚、少なくとも豚脂も使っているのでは?と思ったが、確認はしていない。練り肉の旨味感じるし肉汁も逃げていない、個人的には粗挽きよりこちらのタイプが好み、下に敷いたジャガイモピュレは本格派、特にドミグラスソースがいいと思った、同じ皿に乗った有頭海老フライも質や揚げが秀逸だった。

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 ご飯も美味しい、米の栽培法や炊飯器具が進歩したからだろう、最近は外れ飯?に当たる機会は少なくなったが、此の店は洋食系に合う銘柄だと思う。

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 コーヒーも手抜きなく普通に飲める。

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 このカップ最近よく見かけるが、英国「Steelite International」の物、ホテル・レストラン仕様に開発された食器みたいで、代官山「サンプリシテ」でも使っていた、気に入って個人的に欲しいのだが、ネット上では個人向け販売が見つからなかった。

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 デザートは風月堂の看板商品であるゴーフルを使ったもの、間に挟んだのは栗のクリーム、上には加熱したリンゴ、さすがは創業371年の菓子舗、丁寧に作ってあり美味しい(笑)、これ400円は安いと思った。

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 WEB情報によると、リニューアルにあたりスタッフも刷新、新しい料理長は銀座「ベージュ」や「アマン東京」にも居たフレンチ出身者と聞く、それはポム・ド・ピュレやソースに伺い知る事が出来た。
 店は老舗が生き残りをかけて本気で取り組んだなと云う印象、向かいにある上野松坂屋は新館を建て直して「パルコヤ」に変わり、新しい食エリアが出来た、旧態依然としたやり方では取り残されてしまう。京成上野駅にやって来る、外国人観光客の取り込みも考えている筈だ。
 値段は少し高めかなと思ったが、店内の雰囲気は良好だし、一人でも多人数でも利用可能な応用性がある。料理もデザートも含め予想以上の内容、上野らしい親しみあるサービスも含めて、また利用したいと思ういい店だった(笑)。
 

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乃木坂「タンモア」

 食関係の友人から「明日の昼、乃木坂にあるタンモアと云う、女性シェフの店に行きます、宜しければご一緒に如何?」との急な誘いがあった。
 私に声かけたのは「お前の好きそうな店だぞ」と、暗に云われている事だ(笑)。実は店の存在はWEB情報で知っていて、特に若い女性オーナーシェフの小規模店で、提供するのは古典派フランス料理だと云う点に興味を覚えた。近いうちランチにでも行ってみようと思っていただけに、誘われたのは好都合、急遽参加者に混ぜてもらう事にした。
 行く前に店情報をもう一度調べたが、料理人は田中いずみさんという方で、1984年生れ、女性の生年を公表していいのかな?とも思ったが、レストラン紹介サイトでも書いてあるので、大丈夫だろうと勝手に解釈した(笑)。東京生れで幼い頃から料理を食べるのも作るのも大好き、料理人になると進路を決め専門校卒業、横浜「修廣樹」、鎌倉「ミッシェル・ナカジマ」で働いた後に渡仏、約3年間現地で働いたとの事。今年9月に独立オープンしたが、「ジビエ料理が大好き」と公言している、これは期待出来る料理人だなと思った。

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 店の場所が判り難い、地下鉄千代田線乃木坂と赤坂駅の中間程、赤坂小学校の裏手にある雑居ビルの地階だが、一度訪れている友人は「夜になればカラオケの歌声が聞こえて来そうな」と云っていた、たしかにこのビルそんな雰囲気ある(笑)、今はもう無いが以前1階にドイツパンを売る店があり、一度だけ来た記憶がある。
 店名は最初フランス語の‘Le temps moelleux’(柔らかな時間)にするつもりだったが、呼び易さを考え冠詞の‘Le’は外したそうだ、日本人はLとRが苦手だ(笑)。
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 今月のムニュが額装されイーゼルに置かれている、こうした一手間で印象が良くなるものだ。
 ドアを開けて入店、店内装は白が基調色で装飾は殆どない、空いているのかな?と思ったら違った、テーブルは3卓中2卓既に埋まり我々で全て塞がった、カウンター席もあり男性が一人食事中だった。
 料理人は事前情報どおり、黒いコックコートを着た小柄な女性が一人、サービスは男性が一人で担当している。
 席に着いて、ランチメニュー(税別5,000円)の説明を受けるが、肉料理が鹿ou雉(+1,800円)の二択になる、普通ランチメニューには無難な、牛、豚、鶏辺りを使う処だが、この時点で只者ではない(笑)、これは楽しみだぞとスタートした当日の料理は以下のとおり。

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・ウニのタルト

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・馬肉のカルパッチョ、牡蠣のソルベ

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・自家製パン2種

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・銚子港から届いたキンメダイのポワレ、キノコのフリカッセ

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・鹿モモ肉のロースト -グランヴヌールソース-

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・林檎博 in China

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・興味を惹かれ注文したノン・アルコール・ペアリング、なかなか面白い。
 (ゆずとワサビ、柿と黒糖、ベリーと赤ワイン、ジャスミンティーと林檎)

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・コーヒー

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・ミニャルディーズ(ショコラ2種、中身は客が食べて当てる(笑))

 まずウニのタルトで静かな始まり、続くカルパッチョは本来牛肉で作るのだが、安全面から馬肉にしているとの事、薄切りの仕方や野菜の扱いなど丁寧、パコジェットで作ったと思われる牡蠣のソルベとの相性も面白い。
 唸ったのが次の魚料理で、丁寧に焼いたキンメも良かったが、下に敷いたキノコのフリカッセに驚く、フリカッセと云えば、かつて一世を風靡した料理だが最近見なくなった、此処で出会えるとは思わなかった、魚に合わせ重くなく味もいい、この日最も印象に残った皿。
 雉にも惹かれたが、札幌との比較の意味であえて鹿を選んだ、蝦夷鹿だから肉質のフレッシュ感はどうしても落ちるが、火入れやソースのキレの良さは、札幌のマッチョな男料理人達に負けていないと思った、このソースは和歌山の若頭を連想させる出来(笑)。
 デセールは林檎で「博覧会」をイメージして作ったそうだ、甜面醤、五香粉等を使ったので‘in China’、あとで知ったのだが料理長は椎名林檎のファンらしく、関係ありか?(笑)。パンもショコラも自家製、料理に合わせるドリンクペアリングも料理人が考えるとの事。

 食後、我々の卓に来た田中料理長、見た目は「少女」にしか見えない(笑)。この華奢な身体で、手間や時間がかかり、根気に体力も必要な正統古典派の料理を一人で作るのだから、これはサプライズだなと思う。「フランスで働きたい」と思い、それも1年だけのワーホリでは足りないから、何とかビザを取得して3年働く、有名店で野菜の皮剥く「研修生」ではなく、PARIS郊外の店ではスーシェフまで務め、毎日真剣勝負で働いていたみたいだ。
 古典料理を志向するのは、自分が一番美味しいと思うからだと話す、フリカッセみたいに「炒めて、ワイン入れ煮詰めて、バターとクリーム入れたら、美味しいですよね」と念を押されてしまった、たしかにその通りです(笑)。
 料理も話も全くブレていない、彼女と話していると、自分の理想を実現するため、脇目も振らずに直進する「弾丸少女」と云う言葉が浮かんだ。そして会ってから暫く時間が経つと、もしかしたらインスタ映え狙いの料理しか作らぬ、軟弱な男達に鉄槌を下すために現れた、21世紀のジャンヌ・ダルクではないか?とも思えて来る(笑)。
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 今年は新規訪問店の当たり年だったが、年末へ来てまた凄い店を知ってしまった。彗星の如く現れた期待値大の女性料理人、彗星の如く去らないで欲しく、これから通わないといけないが、応援したい店が増えるのは、財布の中身が追い付かない不幸もまた付いて来る(笑)。
 古典系料理が好きなら、一度訪れてみる価値ありの店、こうした料理人が現れるのが、今の東京フレンチの層の厚さ、質の高さだと思う。

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札幌・ススキノ「meri-melo(メリメロ)」(2018札幌食べ続け-8)

 食べ続けで苦しく、持参した胃薬は全部服用した(笑)、今回の食べ続けもようやく最終店まで来た。去年、一昨年と、最終に選び今年が3年連続3回目の訪問になるフランス料理「meri-melo」。店から歩いてすぐの場所に新千歳空港行のバス停留所があり、食後荷物を持って歩かずに済み、今回は途中で膝が痛くなったのもあって(笑)、座っているだけで身体を運んでくれるのはありがたい。
 店が入った建物は狸小路至近だが少々判り難い、セブンイレブン隣の白いビルで、同じ2Fフロアには「びっくりドンキー」が入っている、これを目標にする事。
 1年ぶりの訪問、昼夜の食事開始時間の早い札幌では、12時の開店と同時に既に数席予約客で埋まっている、この後も客が現れて最後にはカウンターを除いて満席になった、平日昼ながら人気店だ。
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 料理長夫妻に挨拶して、去年と同じカウンター席に座る、余計な説明だがこの店では「奥様」と云う言葉を使いたい、一方「プロヴァンサル・キムラ」は「マダム」で、「リアン」はその中間で微妙(笑)、これは年齢ではなく、あくまでも持っている雰囲気で、合っているかどうかは店へ行って確かめてください。 
 スタッフの入替わり時期だったそうで、この日は佐藤料理長と奥様二人で調理とサービスに当たり、奥の洗い場だけ手伝いの人が来ていた。
 ブルゴーニュ白を飲みながら、始めた今年の札幌最終食は以下のとおり。

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・百合根と北寄貝、ハマグリバター

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・鰹のサラダ、ヨーグルト、ベリー、エスプレッソのソース

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・甘鯛のウロコ焼き、ホオズキとフィンガーライムのソース

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・自家製パン2種

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・帆立とタチ(白子)、蕪のソース、ケールのパウダー

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・仏リヨンで果樹園を営む、アラン・ミリア (alain milliat)の‘JUS RAISIN ROSE CABERNET’

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・焼き秋刀魚、春菊と秋刀魚ワタのリゾット、赤紫蘇

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・白老牛の炭火焼き、煮詰めたバルサミコのソース、カリフラワー

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・大葉のソルベ

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・仁木町洋梨のコンポート、ブルーチーズのクリーム、抹茶のエスプーマ

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・ローズヒップティー

 スタッフが少ない事もあり、去年まであったタルトレットみたいなアミューズは無く、またガルニ(付合せ)も減ったと思う、それがかえって料理の本質が見えたと思った。
 一皿目は北海道名産の北寄貝、これを百合根と合わせたセンスはいい。続く鰹もこの時期脂が乗って美味しくなる身を、タタキの要領で調理したもの、甘鯛のウロコ焼きにホオズキソースを合わせるのは佐藤氏のスペシャリテ、面白いし味的にも外していない。
 タチ(鱈白子)は、今回訪れたフレンチ全店と中国料理店で出たが、それぞれ扱いが違って飽きさせなかった、蕪との相性も良く、汎用性高い食材なのが分かった。肉料理との緩衝材的意味で出たのが秋刀魚、これはなかなかいいアイディアと思った、どうやら「秋刀魚寿司」をイメージしたみたいだが、アイディア倒れになっていない。
 肉料理の白老牛は苫小牧市近郊で飼育される黒毛和牛、赤味は噛むほどに旨味が増す美味しさ、量を通常より抑えてくれたのはありがたい(笑)。デセール2品も自己主張強くなく、料理全体のイメージに合っていた。
 帰路を考えて「ノンアルコールの飲み物何かありますか?」と訊き、勧めてくれたのが、アラン・ミリアのJUS RAISIN、カベルネ種を使ったロゼ色のジュで、「葡萄ジュース」と簡単に呼ぶのは失礼な位に複雑で豊かな味、先日生産者が来店したそうだが、これはノンアルの食中飲料として将来性あると思った。

 佐藤氏の料理は3回目だが、今回最も「何をやりたいのか、何を食べさせたいのか」が明快だった、他の札幌フレンチ料理人とは少し指向する処が違い、東京なら代官山の「サンプリシテ」の料理に共通するものがあると思った。魚介中心で素材重視、力技で捻じ伏せるのではなく素材に主張させ、組合せの工夫により素材に実力以上の仕事をさせる、何かそんな風に感じた。
 カウンターキッチンのオペレーションでは、正直云うと詰めの甘い処も見えたので、「もし次東京に来る時は、サンプリシテへ行って、相原料理長の動きを注視すべき」と、余計な事だが助言をしてしまった。佐藤氏は話していると、東京、関西の最新料理をよく勉強しているなと感じる。
 行く毎に料理が進化していく店は、十年同じ料理を出し続ける店より面白い、特に札幌は一年に一度しか行けないので、こうした定点観測的楽しみには最適、佐藤氏夫妻はまだまだ若く進化途中だと思う、そのうち「また煩い親父が来る、話聞いたフリしよう」と思われる迄、通ってみたいものだ(笑)。

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 これで今年の札幌食べ続け記は終わります。4泊5日の間、満腹と腰膝痛で正直辛い時もあったが、それでも振り返ると楽しかった(笑)。食を楽しみたい人にとって札幌はパラダイスだと思う、歩いても殆どの店に行けるし、フレンチに限らずどのジャンルもレベルが高く、何より支払いが安い、そして食に携わる人間が魅力的だ。
 ご存じのとおり、今年9月6日に札幌からそう離れていない、北海道胆振地方中東部を震源とする大きな地震が発生した、これを書いている現在でも避難所生活をされている方が居ると知り、あらためてお見舞い申し上げます。
 狸小路を歩いても、去年に比べると外国人が減ったと感じる、客商売は水物と云われるが、何時どんなアクシデントが起きるか分からない。それでも普段から地元を相手に地道に続けている店には、以前と変わらず客はやって来ていると思った、これは大事だ。
 札幌は冬場厳寒と積雪により閉ざされる、家の中で外の雪を見て育った人は、何かに付け我慢強くインドアで楽しむ術を知っている、札幌へ来る毎に思っていたが、今回もそれを感じた。東京や関西人に比べると饒舌ではないかも知れないが(笑)、日々を楽しく生きる気持ちでは決して負けていない。
 旅行中お付き合いしていただいた方へ、ありがとうございました。また皆さんと会えるのを楽しみにしています(笑)。


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札幌・北15条東「Curry Powerパンチ」(2018札幌食べ続け-7)

 札幌へ来たら、寄らない訳にいかない店が「五丈原」と共にもう一つあり、それが北15条にあるスープカレーの店「Curry Powerパンチ」だ。
 2014年10月の開業で、私は2015年から毎年訪れていて、これが4年目で何故か5回目の訪問になる(笑)。
 若い店主の植木氏とは十年来の知己で、店からそう離れていない場所に在る、某大学の学生時代から知っていたが、将来カレー店主になるとは全く思わなかった(笑)。
 近い駅は市営地下鉄北13条東駅、札幌市内は道が碁盤目上に整備されていて分かりやすいが、地下鉄から地上に出て東西南北が不明だと、目標になる建物が無い場所で回りが暗いと違う道を歩いていたりする(笑)、今はスマホのマップがあるので助かる。

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 ゆっくり歩いていては青信号を渡り切れない位に広い環状通りに出ると、店の灯りが見えるので安心する。
 一年ぶりの訪問、商業地ではなく住宅地、駅前ではない場所なので、開業時には「長く続いてくれるといいな」と思いながら不安もあったが、こうして開店4年を迎えられたのは嬉しい事だ。

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 繁華街だと無休で昼夜通し営業するスープカレー店もあるが、此処は店主のワンオペ営業な事もあって、火曜休業で中休みあり。

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 おすすめメニューは「やわらかチキンベジタブル」と「豚タンドリーチキン」だそうだ。

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 ドアを開け入店、店長に挨拶してカウンターに着席、メニューを見る、前回と変更はないみたいだ。いつもは「うまうまつくねベジタブル」(税込1,170円)を頼む事が多いが、今日は別のものにしようと思い、「豚タンドリーチキン」(1,300円)にも惹かれながら、胃の状態も考えて、もう少し優しそうな「やわらかチキンベジタブル」(1,150円)に決め、辛さ3の「フック」で、ライスは小盛にしてもらった。

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 ホワイトボードで「本日の野菜」の案内をしている、好き嫌いのある人も居るので、いい事だと思う。

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 暫くしてやってきた「やわらかチキンベジタブル」、何と云っても野菜の色が蠱惑的だ、豊かな大地のエキスで育った、健康で血色いい道産子娘が微笑んでいる、そんな印象(笑)。
 まずはスープを一口、あっさりした和風スープのベースに各種スパイスの香り、舌の記憶が呼び覚まされる。続いて柔らかく煮込んで、骨からハラハラと外れていく鶏モモ肉の旨味、最後を締めるのが野菜の甘味と程好い食感。一年振りだがこの淡でいながら奥深いスープカレーは美味しいなと、脳が反応している。

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 胃の状態を考えてライスは小盛(笑)、北海道米でサラリとしてスープカレーに合う。

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 ラッシー(店では「飲むヨーグト」と表示)をサービスしてくれた、ありがとうございました(笑)。
 
 東京でもスープカレー店は幾つかあり、訪れてみた事もあるが、大体何処も味が濃くてくどい、此の店みたいにあっさりしていて、毎日でも食べられそうな店がどうして無いのだろう?と思い、今回店主に訊いてみたのだが、「それは札幌の水がいいからでしょう、他の地域でやってもこの味は出ないと思う」との応えだった、植木氏は元々札幌出身ではないから、その辺りは地元民より余計に感じているのかも知れない、成程、札幌のスープカレー始め食べ物全般を解く鍵は「水」だったと云う事か。
 決してアクセスのいい場所ではないが、平日の夜でも次々と客がやって来る、店主のワンオペで大変そうだが、何とか一人で客をこなしている。「五丈原」でも感じた事だが、日頃地元客を対象に地道にやっている店は、地震や停電があっても、その後客足が途絶える事はない、一方外国人観光客を狙い、一発儲けてやろうみたいな下心ありの店は、アクシデントには弱いと、今回あらためて思った。
 美味しいスープカレーでした、願わくは五丈原とセットで東京出店してくれないか?と思うが、前述のとおり水が問題だ、やはり飛行機乗って食べに来るのが最善の方法なのだろう(笑)。


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札幌・西17丁目「プロヴァンサル・キムラ」(2018札幌食べ続け-6)

 札幌4日目は、去年10月の訪問時に旧店舗を訪れ、年末に近所に移転予定と聞き、工事中の新店舗も外から見せてもらったフランス料理「プロヴァンサルキムラ」、今回の食べ続けのメインメニューにしていた新店訪問を実行する事に。インスタ映え、いやブログ映えを狙って(笑)、あえてマダム達の利用で賑わうランチタイムに訪れる。
 旧店舗から1ブロック東側の区画で、至近駅は西18丁目駅からで同じだが、住所は西18丁目から西17丁目に変わった。

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 店前に着いたら、仏語でvert oliveと云うのだろうか、ゴッホも使った南仏色が特徴的、店前には糸杉?まである。この画像だけ見ると、此処が冬場は積雪で覆われる地とはとても思えない、フランスならリヨンより南の街郊外にある高級レストラン、そんな印象を受ける。現実的な事を云うと、住宅兼店舗の2階建一軒家、駐車場複数台分の敷地を確保しているので、これ東京港区なら家賃は黙って3桁だなと思ってしまう(笑)。
 ドアを開けると木村マダムが迎えてくれる、店の真中が動線通路で左に南仏調内装の客室、右がカウンター席で厨房と繋がる。奥が雰囲気を変えた一角で、赤と黒がイメージカラー、半個室も備えている、手前の客室は思った通りマダム客達で埋まっていた。

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 あとで木村マダムが説明してくれたが、デザイナーが南仏とPARIS両方のイメージを表現したかったそうだ、勿論赤と黒の方がPARISでこちらの席に案内される。スタンダールの「赤と黒」を読んだのは一体何十年前だろうと、どうでもいい事を連想する(笑)。
 白ワインをお願いして、始まった新店一回目の料理は以下のとおり。

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・アミューズ3品(秋刀魚のパートプリック包み、フォアグラとブリオッシュ、サーモンのカナッペ)

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・自家製パン

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・北海道色々野菜、上にスペイン産骨付きハム

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・海の幸(帆立、鱈白子、牡丹海老)の温サラダ、カボチャのソース

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・積丹半島産鮃のパイ包み、茸のソース、秋トリュフ

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・フランス産ウズラのルーロー、ブドウ、根菜

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・旭川産有機ビーツのアイスクリーム

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・洋梨のコンポートとジュレ、栗のアイスクリーム

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・ミニャルディーズ
・クスミティー「デトックス」

 皿やグラス類は新調された物が多いが、料理全体の印象は旧店時代とそう変わっていない、木村料理長の料理は場所が変わったからと云って、中身が変わるほど軟ではない筈。北海道の食材を使ってフランス料理を作る、それも冬は厳寒の地で南仏にオリジンを持つ料理だから、過去色々と難しい面もあったと思う、それを乗り越えて来た今は、ブレない確かさがある。
 特に印象に残ったのは鮃のパイ包み、この茶色い料理は完成までに相当手間と時間がかかる事を想像するが、その割には正直云ってインスタ映えしない。でも食べて本当に美味しいのはこうした料理だと云うのが、経験を積んでようやく理解出来るようになった(笑)。
 肉料理の鶉は北海道産ではなくフランス産、木村氏はそれだけ此の食材の良さを認めたのだろう、焼いただけでなく、フォアグラを巻いて足りない脂分を補うと云う足し算、フランス料理王道のやり方で、葡萄を使ったソースもいい。
 デセールが秀逸なのも此の店の特徴、特にビーツのグラスは珍しく、記憶に残る味だった。

 私が毎年の様にフランス食べ続けしていたのは1997年から2009年まで、まだボキューズ、ロワゾー、ラムロワーズ、ブラス(父)達が現役バリバリだった頃で、何処の店もスタッフが沢山居て、一皿の料理にかける手間と時間も今よりずっと多かったと思う。その時代の残照みたいなものを感じさせるのは、東京では「古屋オーガストロノーム」「レクテ」辺りだが、木村氏はこの2店の料理人より少し年長ながら、同じ匂いがすると思った。
 古屋、キムラ両店は一人調理、レクテの厨房も少数精鋭なので、古典に沿ったブレない料理を作るには、人数が多くない方がいいと云う事か。最近行ったばかりだが、乃木坂に今年9月にオープンした「タンモア」も、女性料理人による秀逸な古典派単独調理店だった。モダン料理がパーツを嵌め込むデジタル的とすれば、古典料理はアナログ的手法に頼らざるを得ないのかも知れない。
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 「美味しいフランス料理を期待して来てくれるお客様のために、まだまだ頑張ります。」と云う木村料理長、そしてそれを盛り立てるマダム、最近はマダムの甥御さん(左)が手伝いに来てくれるそうだ。
 今のマスコミ等で注目されている料理とは少し傾向が違うと思うが、流行に左右されない、本当に手間をかけた料理が好きな人は、訪れて後悔する事はない筈、もし札幌に一日しか居られないとすれば、キムラへ行きなさいと云いたい、料理も店内外の雰囲気もC'est bon な店です(笑)。


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札幌・東本願寺前「らーめん五丈原本店」(2018札幌食べ続け-5)

 札幌市内、それも中心地ではなく少し離れた地域を歩いていると気付くのが、立派な寺院が多い事。中でも「新善光寺」や「成田山札幌別院 新栄寺」みたいに、元になる寺が本州内で、その別院的な寺がある、何処も明治以降に建てられた新しい寺だが、辛い開拓時代を乗り越え、成功した人達の信心深い寄進に負う処が多かったのではと想像する。
 南7条西8丁目にあるのが「真宗大谷派札幌別院」で別名「東本願寺札幌別院」、地元の人は単に「東本願寺」と呼ぶ、名前のとおり京都の東本願寺が本山にあたる。この広い敷地の脇は繁華街ススキノからの抜け道になり、タクシー等が頻繁に往来するが、その道沿いに在るのが、これから伺う「らーめん五丈原」、2年ぶりの訪問になる。

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 暗い寺敷地に対比するみたいな朱色の看板と照明を見ると、「この店に帰って来た」との思いが沸く。ススキノのネオンよりこの赤い看板に惹かれてしまう、店前を走るタクシーの運転手は多い筈、勿論駐車場もある。
 実は9月下旬に、二子玉川の玉川高島屋で開催された「秋の大北海道展」に出店し、訪れていたので、今回は見送ろうかなと思っていたが、やはり「札幌来たらラーメン食べないと」の誘惑に勝てず、来てしまった(笑)。

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 19時過ぎの入店、店内はほぼ満席の盛況で若い人が多い。まずは自販機で何を買うかだが、高島屋では「みそ」だったので、今回は券売機のPP左上端の「とんしお」にした。

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 初回入店客向けに写真でも商品を表示するのはいい事だと思う、品名だけではなかなかイメージが沸かない。

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 顔馴染みの店主にも挨拶し、店奥のカウンターに着席、2年前には割り箸と併用だったが、共用の洗い箸だけになっていた、これも賛成。

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 「ちょーデカイ」チャーシューおにぎりも食べたかったが、過食の結果膝がおかしいので、今回は止めておく(笑)。
 食券を出したら、店主より「秋メニューの試作品で煮干しと生姜を使ったラーメンがあります、食べてみませんか?」との提案があり急遽変更、それをお願いする事に、おそらく常連客から意見を聞きたいのだと思う、それなら協力しましょう(笑)。
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 暫くして登場したのが、仮称「煮干しの香る生姜味噌ラーメン」。見た目は定番の「とんしお」や「みそ」とそう変わらない。
 まずはスープを一口啜る、豚骨を長時間煮出し乳化した白濁したスープは以前と変わらず、そこへ味噌と生姜の香りが加わる、煮干しの風味はそれ程感じないが、最後に鼻孔の奥にそれらしい香りが抜けて行く。地元に「煮干し味」を強調したラーメン店が出来て、一回試してみたら、どうにも煮干し臭くて駄目だった、それに比べたらまともな味バランスで安心して食べられる。
 続いて麺だが、やはり制約の多い物産展会場とは違う、麺が疲れていないし綺麗に茹で上がっている、縮れの少ない麺だが味噌と生姜味が絡むと、最後まで飽きずに完食出来る。
 食べ終わると身体が温まり、顔の表面には汗が浮いて来た、これが味噌+生姜の効果だろう、これからの季節に最適な食べ物だと思う。元々味噌ラーメンは札幌発祥、冬は厳寒の地なので、あっさりした醤油ラーメンよりは濃い目の味が好まれた、そこへ身体を温める効果がある生姜が加われば、これは食べるホカロンみたいなものだ(笑)。胃は疲れている筈なのに、綺麗に完食しました。
 客は次々とやって来る、昼間狸小路を歩いていて、地震の影響で中国人観光客が減り、彼・彼女達狙いの安価な飲食店が閑散としているのを見ただけに、日頃から地元客を対象に地道に続けている店は、何があっても強いなと思った。

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 身体も心も温まりました、帰って明日の食行軍に備えて早く寝ようと思ったら、何と「ちょーデカイ」チャーシューおにぎりをお土産にいただいてしまった(笑)、ありがとうございました。さすがにこの夜は食べずに、翌朝の朝食(正確に云うと朝飯前(笑))にしたが、過食膨張の胃にも浸みていく美味しさでした。

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 なお、以前に食べて味が秀逸だったので、今回買おうと思っていた、「五丈原」とスープカレーの名店「ピカンティ」のコラボ商品、「旅人 スープカレーラーメン」は、生憎この日は店では品切れ中との事。

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 新千歳空港で売っているらしいと聞き、最終日に隈なく探してやっと見つけた(笑)、新千歳空港2階出発ターミナル「センタープラザエリア」内にある、「北海道本舗総合土産店」で、ANAのカウンター近くでした。


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札幌・ススキノ「Obtenir K(オプトゥニール・ケイ)」(2018札幌食べ続け-4)

 札幌3日目の昼は、昨年に続いて狸小路内にあるフランス料理「Obtenir K」を再訪する事になった。
 札幌円山の名門フレンチ「札幌コートドール」で料理長を務めていた藤谷圭介氏の店で、昨年3月にオープンし10月に初利用した、その時は料理・サービス共に光るものがあったが、各料理間の繋がりに若干無理な部分も正直感じた。開店後間もない事もあり、藤谷氏も判っていたみたいで、利用後「またチャンス下さい」と直々メッセージをもらっていた。それならもう一度行かない訳にはいかないと、在札幌の友人達を誘って再度乗り込む事に、藤谷氏にはなかなか気を遣う、嫌なメンバーだったと思う(笑)。
 エレベーターを降りると其処はもう店内と云う感じで、札幌コートドールのエントランスとはかなり違う店造り、今回は昼なので外光が入って明るい雰囲気だ。調理・サービススタッフは何人か替わったみたいで、東京の外食業界の人材不足は慢性的だが、札幌でもその傾向が出ているように感じる。
 他のメンバーは既に待っていてくれた、シャンパーニュ、白ワイン、ノンアルコールで乾杯して、始まったデジュネの内容は以下のとおり、

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・カマチ陶舗の位置皿とグジェール

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・厚岸産カキえもん

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・サーモン・野菜

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・羅臼産まだち

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・根室産秋刀魚

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・函館産鮃

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・生姜(ソルベ)

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・帯広産蝦夷鹿

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・十勝しんむら牧場ヨーグルト(プレデセール)

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・ブランマンジェ、苺のソルベ

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・マカロンタワー

 前菜の「カキえもん」とは、道内厚岸で養殖される牡蠣のブランド名、上に乗ったのは海水みたいなジュレをイクラ状に丸めたもの、メンバーの話ではアルギン酸を使ったのでは?との事だった。続くサーモンは北海道ではなくタスマニア産だそうで、下の野菜が三田コートドールの名菜「野菜のエチュベ」を連想させる。
 まだち(鱈白子)はスープ仕立て、上に生ハムを乗せて味を加えていた。続く旬の秋刀魚はパイ包みにして、アンチョビの泡とパセリのピュレを添える手の込んだもの、大衆魚の秋刀魚が高級フレンチの料理になっている。
 魚料理の鮃は割としっかり火を入れ、エシャロットとバジリコの酸味のあるソースが効いている、この酸味は胃をリフレッシュさせる効果あり。
 肉料理は秋の北海道と云えばこの食材「蝦夷鹿」、初日「リアン」の鹿個体が割と若さを感じたのに対し、こちらはもっと妖艶な印象、例えが適当でない事を承知の上で書いてしまうが、少女と人妻位の違いがある(笑)、ソースも重くならずガルニのビーツも合っていた。
 デセールのブランマンジェも三田「コートドール」を連想させる、添えた苺のソルベも美味しいが、ブランマンジェの繊細さを生かすなら無くてもいいかな?と思った。

 全体的には去年感じた不自然さはなくなり、いいムニュ構成だったと思う、特に魚料理に光るものがある。藤谷氏の料理は地に足が生えていると云うか、若い世代の料理人にしては稀な程に古典に範を取り、ただ流行を取り入れるだけの浮付いた処を感じない。
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 店の入口にはグラスを並べる棚があるが、その下段には三田「コートドール」斉須政雄料理長の著書とメニューが置かれている、店の一番目立つ場所にこれらを並べるのは、当然リスペクトによるものだろう。でも尊敬しているからと云って料理の全てを真似たら、これは「模倣」でしかない、肝心なのは、そこから何を得て自分のものにするかだ。
 ラファエロがダ・ヴィンチから、シーレがクリムトから学びながらも、そこから脱却して自分の絵画を確立したように、料理人も範とする料理から学ぶだけでなく、更に自分の料理を作り上げ個性とする事が求められる。特に今は何でもネット上で、「これパクリだろう?」と書かれてしまう時代だ(笑)。
 食後、我々の席に来て話し始めた藤谷氏の表情も、前回より幾らか余裕が出て来たようにも感じた。全ての飲食店に云える事だが、いいスタッフに恵まれるかどうかを解決していけば、若い料理長の元で、これから右肩上がりに上昇して行く店なのは間違いないと思う。
 店へのアクセスは地下鉄駅、市電停留所から至近、狸小路アーケード内なので雨や雪の影響も少ない、店内のアンビエンスやサービスも上質なので、旅行者にも札幌フレンチとは何か知ってもらうには、最適な店の一つだと云える。
 お土産にマカロンタワーのマカロンを貰い解散、私は満腹で重くなった身体でホテルまで歩いて帰るが、体重が急に増えたからか膝が痛くなる(笑)、札幌で残すは4店、最後まで持つのか不安が過ぎるが、とりあえずはホテルに付属した温泉に浸かって消化を早める事にする。


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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
人はそれぞれに「見方、感じ方、考え方」が違います。私が美味と思ってもそう思わない人が居て当然です、味覚とはそれだけ不安定で不完全なもの、あくまでも筆者個人の嗜好による感じ方である事を承知の上で読まれてください。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに赤坂、麻布十番等。
混雑電車が苦手で加齢による朝型人間化のため、ランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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