最後の晩餐にはまだ早い


仲御徒町「心洗庵」

 御徒町と上野駅間にあるアメ横商店街には、月に一度珈琲豆を買いに行くのだが、そのついでに外食の取材?をする事が多い(笑)。場所柄多いのがラーメン店やインド料理店だが、たまには違うジャンルの未訪問店へ行こうと、事前にネットで調べてみた。
 来年に迫った東京五輪を控え、成田空港から京成上野駅に直行する外国人客を狙ってか、最近オープンするのはそれを狙った「安い、早い、味はそれなり」的な店が多く、どうも気乗りせず、それでも「食べログ」を眺めていたら、十年以上前から営業している蕎麦店を見つけた、今は残っている事が価値ある時代かも知れない、地元から蕎麦専門店は消えつつあるので、「蕎麦いいじゃないか」と惹かれて行ってみる事にした。
        190430-1.jpg
 店は日比谷線仲御徒町駅を出て近い、昭和通りに面した古びた雑居ビルの地下で、このビルには900円髪カット、インド料理店、コーヒー店、タイマッサージ、指圧、ムーブメントダンススクール?と、よく云えば多種多彩、別の云い方ならカオス的テナントビルだ(笑)。
        190430-2.jpg
 店名は「心洗庵」、自分の汚れた心がキレイになりそうな店名だが(笑)、近隣のサラリーマンが昼食や仕事帰りに一杯と云う雰囲気の店、2008年の開業で、後で知ったが「本陣房」の系列みたいだ。
 昼の開店時間11時半直後に入店したが、既に数人着席していた、男性単身客でそれも結構年配でスーツ姿が多いのが、蕎麦店ならでは特徴だ。

     190430-3.jpg
 ランチタイムメニューの丼と蕎麦のセットメニュー。

     190430-4.jpg
 「ランチまかないセット」なるものもある。
 この中から「海老と野菜天丼とせいろ」のセット(税込1,000円)に決める、場所柄もあるが競合飲食店も数多く、低めな価格設定にしているのだと思う。

        190430-5.jpg
 地下店舗だが店内は整えてある、座敷席もあるので、夜はきっとサラリーマン達で盛り上がるのだろう、画像には写っていないが、この近くに電動石臼があり自家製粉している。

     190430-6.jpg
 まずは蕎麦の薬味と丼用の沢庵、逆さにした蕎麦猪口を見て「懐かしい」と思った、昔は出前の蕎麦は、こうしてツユを入れた徳利の上に蕎麦猪口を被せて運んだものだ。今は蕎麦の出前は激減し、デリバリー会社の派遣兄ちゃん達が、自転車でパック入りの弁当を運ぶ時代になった(笑)。

        190430-7.jpg
 先に蕎麦から到着、品書きは「せいろもり」だったが、磁器の皿に盛ってある。加水少な目なのか、少しゴワっとした食感、蕎麦の香りはあまりしないが、まあそれなりに美味しい蕎麦だ、量も結構ある。蕎麦ツユは少し甘めに感じた、薬味の葱が多いのは嬉しい(笑)。

     190430-8.jpg
 天丼は海老、さつま芋、南瓜、茄子でキチンと揚げてある、昔の東京蕎麦屋の天ぷらは胡麻油で黒く揚げたものだが、今は健康志向からかこうした白い天ぷらが増えた、野菜を多く使うようになったのも昔と違う、ご飯の質も良く美味しい天丼だった。

     190430-9.jpg
 蕎麦湯は割と濃い目、容れ物は年季の入った角湯筒で、これ使う店は少なくなったと思う。

        190430-10.jpg
 前述のとおり店は新橋本店の本陣房グループ、同じ御徒町にある「吉仙」は、昭和通り向かい、多慶屋並びにある割と高級蕎麦店だが、同じグループだとこの日初めて知った。
 店内サービスは女性二人が担当し、混んでくると厨房内から白衣の男性も出て手伝っていた、全体に感じのいいものだった。
 蕎麦も丼も他店より特に飛び抜けている訳ではないが、この内容で税込千円なら「てんや」より断然いい(笑)。近くに勤めていたら週一位で来るだろうと思う。地味な地下店舗で観光客や一見客はあまり来ない雰囲気、こうした店は好みだし、上野・御徒町へ来た時はまた寄ってみたい。
 最近「今日の昼何食べよう?」と迷う時は、ラーメンやカレーより蕎麦を選ぶ事が多くなった気がする、それだけ年取ったのかなと思う(笑)。


  1. [ edit ]
  2. 麺・ラーメン
  3. / trackback:0
  4. / comment:0

外苑前「レヴォル(L'Evol)」※2020年5月に閉店しました。

 食関係の友人から、「最近イチオシの店」と推奨され誘われたのが、此の日初めて伺う事になる、外苑前の「レストラン&ワインバー レヴォル‘L’Evol’」だった。私は知らなかったが、2018年3月に開業していて、今年から料理人が交替、「エディション・コウジ・シモムラ」や「アクアヴィット」に居た千葉尚氏が就任し、料理の方向も変わったと聞く。家からは結構距離あるが、日曜昼で電車も空いているので帰りも楽、誘いに乗ってランチタイムに伺う事になった。
 外苑前駅から表参道方面へ向かい、「Francfranc」のある交差点で右折、ワタリウム美術館手前の信号を左折すると、「まい泉通り」とも呼ばれる飲食店が連なる細い道が続く、そのまま表参道へ向かって歩くと右側の地下に店はある、フレンチのオールドファンには、「アンフォール」があった通りと云えば思い出す筈(笑)。
        190426-1.jpg
 店は建物の地下1階と2階部分を使っている、上階がウェイティングスペースになっていて、立派なバーカウンターもある、夜はバーだけの利用も可能らしい。メインダイニングは地下2階、階段を降りると客席が広がるが、テーブル配置や壁の絵画、卓上の花などを見ていると、何処か懐かしさを覚えた。黒服男性ばかりのサービス陣と共に、1990年代初頭バブル景気後期辺りのフレンチ高級店を思い出す、これは決して悪い意味ではない(笑)。
 奥の壁際の席に案内される、あらかじめお願いしていたのが、税別7,500円のランチメニュー、夜メニュー(10,000円)から3品引いた内容のようだ、以下に紹介したい。 

     190426-2.jpg
・アミューズ(ブータンノワール、チュコレートとバナナ)

        190426-3.jpg
・初鰹/卵黄/セルバチコ

     190426-4.jpg
・フォア・グラ/蕗の薹/ブルーベリー

        190426-5.jpg
・自家製パン・ド・カンパーニュ

        190426-6.jpg
・金目鯛/緑茶/ジャガイモ

     190426-7.jpg
・ラ・フルール・ド・ミモレット(中伊豆百花蜂蜜)

     190426-8.jpg
・仔羊/ムール貝/アンチョビ

        190426-9.jpg
・白ビール/ヨーグルト

     190426-10.jpg
・ソムリエセレクションのワイン
 白:Suertes del Marqués Trenzado(カナリア諸島)
 赤:Domaine des Croix Les Peuillets 1er Cru Savigny-Les-Beaune 2014

        190426-11.jpg
・氷温熟成珈琲

     190426-12.jpg
・ミニャルディーズ

 料理全体の印象は、感覚がモダンでセンスがあり、魚、肉共にシモムラ譲りの繊細でギリギリの火入れ、油脂を抑えた調理で盛付デザインもいい。私自身は北欧へ行った事ないので、これが北欧調なのか断言できないが、ピサンリ、セルバチコやオキザリス等生葉を加熱しないで多く用い、酸味の使い方にも特徴がある。
 各料理を挙げていくとまず鰹、「タタキ」みたいに表面を炙った下り鰹に卵黄で味を加えたのは面白いアイディア。続くパンケーキの上にフォアグラアイスを乗せた料理もアイディア倒れになっていない、「ル・スプートニク」でもムニュ内にパンケーキがあったが、最近流行っているのかも?(笑)。
 金目鯛はこの日一番印象に残った皿、火入れが抜群で緑茶を使ったソースも効いている。仔羊も良かったのだが、個人的好みを云うと、表面はもう少し火を加え内部と食感を変えた方が良かったかなと思う。
 デセールは個人的にエディブルフラワーが好きでなく、味の仕上げもあと一息、これは今後に期待したい。
 面白いと思ったのは魚・肉料理の間で削ったミモレットが出る事で、自らサービスを担当した細野オーナーの話では、「従来のグラニテの感覚で出している」との事だが、ワインとの相性も考えているみたいだ。
 スタッフは充実している、厨房内は4人でサービス陣も細野オーナー、廣嵜(正確には立ではなく大)支配人の他に優秀そうなソムリエも居て、慢性的な人材不足が続く昨今の飲食業界では珍しい。
 調理を終えた千葉料理長も挨拶に出て来た、客席に出るのは苦手との事だが、下村氏と同じく眼力(チカラ)のある人(笑)。フランスや日本で働いた店の話をするが、天才肌と云うより、叩き上げて来た職人タイプかなと想像した。
 「エディション・コウジ・シモムラ」では、現「MAMA」の市村料理長と同僚で、当時の厨房には前「TIRPSE」の田村氏、現「ローブ」の平瀬パティシェール、後になるが現「ビズ神楽坂」の村田氏も在籍した、店内サービスには現「スブリム」「Cofuku」の山田氏、「MAMA」の平垣内氏の両オーナーが居た、なかなか凄いメンバーで、才能は集まる時には一気に集まると云うが本当だ、去る時は一気に居なくなるみたいだが(笑)。
 千葉氏のモダンな料理に対して少々懐かしい雰囲気のサービスは、少しアンマッチ感はあるが、料理長が替わってまだ3ヶ月、時間が経てば両者が歩み寄って行くと思う、おそらく年末頃にはまた違った印象の店になっている筈だ。
 私が高級店を利用する機会が減ったのもあるが、店のアンビエンス、サービス、料理が均等に秀でている店は少なくなった、特にサービスの退潮を感じるが、その点でも此の店は期待が持てると思った、店名も‘Evolution’(進化、発展の意)から取ったそうなので、これから楽しみにしていい店だ(笑)。


  1. [ edit ]
  2. フランス料理
  3. / trackback:0
  4. / comment:0

亀有「麺屋 淳陛屋」

 あらゆる食ジャンルの中で、ネット上で最も情報が得やすいのがラーメンだと思う、専門の評価サイトがあるし、個人のブログも数多い。私はラーメン好きなので、参考にする事もあるが、若い頃と違い遠くまで出かける事はなくなった、今は自転車で行ける範囲か、買物に行く事が多い上野、秋葉原周辺に限られる。
 或る日そうしたサイトで、周辺の店情報を見ていたら、興味深い記事に出会った、それが「車椅子の店主が作る」とある、亀有の「麺屋 淳陛屋」と云う店で、昨年11月にオープンしている。「車椅子」の文字に、興味本位になってはいけないと思いながらも興味を覚えた。
 調べると自転車で問題なく行ける場所なので、或る日の昼に行ってみる事に。
        190422-1.jpg
 店の場所は亀有駅南口、大型商業施設の「アリオ亀有」から青戸方面へ向かって直ぐのビルの1階店舗、環七通りに面している、店名は「じゅんぺいや」と読むそうだ。外から店内が見えるが、行った時は客一人だけで席待ちもなく、安心して入店(笑)。
        190422-2.jpg
 入るとすぐ食券機がある、まずは基本の醤油だろうと、「味玉醤油SOBA」(850円)に「半ライス」(100円)を購入しカウンターに着席。
     190422-3.jpg
 店はカウンターだけの9席、通路を広く取っているのは、車椅子の動線のためだろう、白と黒を基調色にしたスタイリッシュな雰囲気、盆、箸、レンゲも全て黒漆の物を使用、店主の美意識みたいなものを感じる。
     190422-4.jpg
 味変アイテムはS&Bの粉胡椒と七味。
        190422-5.jpg
 これが味玉醤油SOBA、見た目はあっさり系だが、コクと深みあるスープが好印象、おそらく鶏骨+豚骨+魚介(煮干し?)ではないかと思う、バランスが良好で何処か懐かしい昭和的な味わいがある(笑)、叉焼は最近流行の低温調理的な柔らかいもの、メンマも美味しい、刻み柚子と三つ葉が加えてある。麺は自家製ではないが縮れない中太麺でスープに合っている。
        190422-6.jpg
 味玉、普通に美味しい。
     190422-7.jpg
 半ライス、ラーメン+ご飯は危険な組合せだと思う(笑)。
     190422-8.jpg
 事前情報どおり、若い男性店主が車椅子のまま調理する、そのため調理器具等は通常より低く設置してある、配膳や片付けは別の店員がしているが、麺を茹でる等、味に関する部分は彼が手掛ける。
食べ終わって店を出る時に、店主が「ありがとうございました、お気をつけてお帰りください」と爽やかな笑顔でお礼を云う、「この人本当にラーメンが大好きで、それを客と共有したいのだな」と思った。
 ブログ記事のため、珍しい店に行くと云う目的ではないと書くと嘘になるが、一般的なラーメン店としても十分惹かれた、これはリピートしたいと思い、2週間後に再び訪れる事に。

 此の日は客が数人居たが、何とワンオペ!で営業していた。人手不足の折、初めての事ではないみたいで、ワンオペを想定して水セルフのお願い案内もあった。
        190422-9.jpg
 此の日の食券注文は「ワンタン塩SOBA」(税込900円)を、正直「一人で大丈夫なの?」との不安もあったが、客が続いても慌てず落ち着いた様子で麺を茹で、丼にスープを張って具を乗せ、車椅子を操って客に出している、「遅くなってすいません」と詫びていたが、心配したこちらが恥ずかしくなる位に味も良かった。
     190422-10.jpg
 他の客が引けた時間だったので店主と少し話をする事が出来た、要約すると、
「自分はとにかくラーメンが好きで毎日でも食べたい、興味のある店には事前に電話をして、『車椅子で行くので、店に入れなかったら路上でもいいから食べさせて欲しい』と云うと大抵OKだったとの事。この話を友人達にすると『お前はラーメン馬鹿だな』と云われる(笑)。松戸の有名店で研修させてもらい、現在も松戸に住んでいるが、亀有の店までは車ではなく常磐線で通勤(!)している、作りたいのは『自分が毎日でも食べたいラーメン』です」との事だった。
 WEB情報では、某有名ラーメン評論家が主宰する養成道場?で、ラーメン店運営を学んだとあった。
 塩野七生さんは長編「ローマ人の物語」を著したが、別の場所でローマ史に登場した偉人・賢人達を採点比較していて、その中に「やり遂げようとする持続力」と云う項目を挙げていた。これは21世紀に生きる我々にも通用すると思うが、この店主には間違いなくそれがあると思った、色褪せた言葉かも知れないが「不屈の精神」を感じさせてくれる、「なりたい自分になれる」のだ。
 車椅子生活になった理由や苦労したであろう店造り等の話は聞いていないが、「そんな事どうでもいいのでは?」と思わせる程、提供するラーメンへの愛と情熱がある。食べ終わって店を出る時に「久しぶりにいい青年に出会えた」と、爽快で清々しい気分になれた、これから応援したい、そう思わせる店だ(笑)。


  1. [ edit ]
  2. 麺・ラーメン
  3. / trackback:0
  4. / comment:0

乃木坂「タンモア」(2019年3月)

 乃木坂と赤坂の中間に、昨年9月オープンしたフランス料理「タンモア」、11月に初訪問し、若い女性料理人の意外な位に古典的な料理に瞠目し、以来続けて通う事になる。この料理人の可能性は未だある筈と思っていたが、2月の関西遠征でご一緒した食通の方より、「今度東京へ行くので、タンモアへ行ってみたい」との話があった、このブログを読んで興味を持たれたみたいだ、第三者的な評価も聞きたいと思って喜んで同行する事に。ついでと云っては失礼だが、訪問日が休日だった料理人を誘ったら、参加したいとの返事があり、前回に続いて今度もまた煩いメンバーで押し寄せる事になった(笑)。
 3月最終の日曜昼、赤坂駅で待ち合せ店へ向かうが、桜も満開になり5月からの新元号が公表されるのを翌日に控え、普段の日曜は人出が少なく静かな赤坂~乃木坂間も人が出ていて、何処となく浮かれた感じに見えたのは気のせいか(笑)。
 人気のないビルの地階に店は在るが、此の店だけが異空間な光を放っている。ガラスのドアを開けるとサービス担当の男性が迎えてくれ、キッチン内の田中料理長にも挨拶する。カウンター席には常連らしき女性が一人で食事中、我々の後にカップルが一組入店して来た。
     190418-1.jpg
 今回はテーブル席にてスタート、3月のメニューは以下のとおりだった。

     190418-2.jpg
・アミューズ:ホワイトアスパラのスープ

        190418-3.jpg
・自家製ブリオッシュ

     190418-4.jpg
・前菜その1:春の山菜、ホタルイカ、スペック

        190418-5.jpg
・前菜その2:サーモンミキュイ、ガスパチョ

        190418-6.jpg
・魚料理:オマール、春野菜、ソースアメリケーヌ

     190418-7.jpg
・肉料理:ウズラのロースト 牡蠣とフォアグラを詰めて、ソースマデラ

        190418-8.jpg
・チーズ:エポワスのクリーム、カボチャ、クミン、コニャック

     190418-9.jpg
・デザート:桜ドロップス

        190418-10.jpg
・お茶菓子(さつま芋)
・コーヒー

 まず席上で出たのが「スープ系のアミューズは嬉しい」と云う話で、前記事の「レクテ」もそうだが、何故か私の好きな店はこれが多い、もう私の感性が古いのだろうが、「手で摘まんでください」と指示されるスナックフードが続くのは、どうも好みでない(笑)、白アスパラの香りを残したスープは、春へ優しく誘う味わいだった。
 前菜のホタルイカもテーマは春、山菜の味をまとめるのはスペック(生ハム)と粒マスタード、苦味と酸味が爽やかだ。続くサーモンは本来のランチメニューには無かった筈だが、何故か出て来た(笑)、サーモンとガスパチョを合わせるのは珍しいかも知れない、色合いも味も外していなかった。
 オマールは少々懐かしい殻を使ったアメリケーヌソース、アソゾネ(味付け)がフランス的に強めなのが田中料理長の特徴、これは同席の二人も同意してくれた。「フランスに居た時と変えていません」と前回云っていたが、客各自の好みはあるとしても、私は今のままでいいと思う。
 今回最も感心したのが次の鶉料理だった。鶉を一羽丸ごと調理する場合、腹中に米を詰めて焼く事あるが、あえて米はリゾットにしてガルニ(付合せ)として使い、鶉の中にはフォアグラと牡蠣を入れる料理長のオリジナル版。火入れも一部で流行の低温長時間調理ではなく、強めに焼いて表面は固く中は柔らかく仕上げる、昔ながらのやり方だが、食感や香りが単調でないので私は好きだ。低温調理みたいに最初から最後まで同じ食感だと、少量ならいいが、しっかり量を食べたい時は途中で飽きる、中身もアイディア倒れに終わっていないと感じた。
 デセールの前に出たチーズの一品も本来は無い筈だが、「食べて欲しい」との料理人のサービス精神みたいだ、これ「みたらし団子」を連想した(笑)、「甘しょっぱい」がテーマだと思う。
 メインデセールは見た目も味も「春」を感じさせるもの、「女性らしい」と云う言葉は、今は適当ではないかも知れないが、やはりこのセンスは男料理人からは出ないと思う(笑)。

        190418-11.jpg
(この店へ来ると、つい頼んでしまうのがドリンクペアリング、面白いです。)
・グリーンアスパラのフローズンカクテル
・フレッシュハーブティー(ミント、バジル、レモングラス)
・スパイスとブドウのスパークリング
・桜の葉とホワイトチョコレート

 まだ開業して半年、店の場所も赤坂の繁華街から離れていて、正直いいとは云えないので、集客には苦労しているみたいだ。これが「情熱大陸」等で、「3歳から料理人になる事を志し、フランスで3年半単身修行し帰って来た女性シェフ」とか取り上げると、一気に客が押し寄せる(笑)、それが料理人にとっていい事なのかどうかは別の話だが。
 過去何人も料理人を見て来たが、その経験で云わせてもらえば、彼女にはこれからも期待できる何かがあると思う。勝手に「弾丸少女」と名付けてしまったが(笑)、目標に対し直進する感性とスピード。クララ・ハスキルとかワンダ・ランドフスカがミューズの神に選ばれし鍵盤奏者なら、料理の神に守られた存在に感じてしまう、あと必要なのは経験と客だと思う。
     190418-12.jpg
 今の時代が才能ある女性を求めているし、料理の世界でも女性活躍の場が少しずつだが増えているので、これから注目していい料理人だ、私もストーカー的ではなく(笑)、客として暫く追いかけたいと思っている。


  1. [ edit ]
  2. フランス料理
  3. / trackback:0
  4. / comment:0

代官山「レクテ」(2019年3月)

 「リエーブルロワイヤルを頼んでいるけど、参加する?」と食仲間から誘われた、食べたのは何時以来か、ハッキリ思い出せない位に前の話だ。主材料になる野兎が入荷しないらしい、以前はベルギー産のものが入っていた時期あったが、今は欧州からの輸入は種々制約があり難しいと聞く、あとは国内で獲れる兎だが、これも野生で増加した鹿や猪とは違い、個体数が増えている訳でなく、たまたま猟師が撃ったものが回って来るのを待つしかないそうだ。
 この機会を逃すと次は何時になるか判らない、少なくても今シーズンは無理だろうと、「参加しますよ」とお願いしておいた。それから待つこと数週間、「レクテの佐々木料理長から、近日中に来てくれと連絡が入った」との知らせがあった、それで急ぎ店へ向かう事に、値段は確認しなかったが、財布の中身が足りなければカードで払うしかない(笑)。
 リエーブルロワイヤルについて簡単に説明すると、正確にはリエーブル・ア・ラ・ロワイヤル(Lièvre à la royale)、起源については諸説あるが、広く伝わるのは、名前のとおり元は宮廷料理で最初に食べたのはルイ14世との説。ジビエ料理が好きだった国王が、高齢で歯が抜けてしまう、当時は日常的な歯磨き習慣がなかった、そのため専属料理人に歯が無くても食べられるこの料理を作らせたとされる。元々固い野兎の肉を手間と時間をかけ柔らかくする調理法だが、「シャリアピンステーキ」の誕生話とも似ている(笑)。フランス革命後、市中に派生したレストランで、「宮廷で饗された料理」と宣伝し、付加価値を加えたのもあると思う。
 まず家で作ろうとは思わないが(笑)、ルセットに興味のある人は、故増井和子の名著「パリの味」中の「王家の野兎」の項を参照してください。
 ランチタイムだが、少しピークを外した時間に集合して始まった野兎の宴、前述の経緯により通常のランチメニューとは構成が異なります。 

        190414-1.jpg
・ジビエ コンソメ

     190414-2.jpg
・ロワール産ホワイトアスパラ プンタネッラ

     190414-3.jpg
・音更町 庄司農園 はるきらり ライ麦(自家製パン)

        190414-4.jpg
・今治産 太刀魚(緑アスパラ、空豆、ブロッコリー、スイバのピュレ)

     190414-5.jpg
・青森産 リエーブルロワイヤル(アロマレッドと根セロリのピュレ)

     190414-6.jpg
・ソムリエセレクションのワイン
 白:Charles Frey Pinot Gris Cuvee de L'ours 赤:Château Pédesclaux 2010

        190414-7.jpg
・ファーブルトン(赤ワインとスパイスで煮たプラム、グラスバニーユ)

     190414-8.jpg
・ミニャルディーズ(カヌレ、フィナンシェ、パート・ド・フリュイ)

        190414-9.jpg
・この店の特徴でもある、豊富に選べる食後のボワゾン

        190414-10.jpg
・私が選んだ、磐田二番茶 マルヒ製茶 香駿

 まずは高貴なコンソメでハートを掴まれる、雉、青首鴨、野兎で採ったコンソメに、雉とフォアグラの実が加わる、遠くが見渡せるような奥深い味、採算が合わないのかレストランでコンソメ類は消えつつあるが、東京では久しぶりにいいものを体験出来た。
 白アスパラをあえて加熱し茶色くした前菜は、蝦夷鹿ハムを加え香りを際立たせている、英名では「アスパラガス・チコリ」になるプンタネッラは、イタリアで人気のある冬春野菜、食感が独特でアスパラガスとの相性もいい。
 今治からの太刀魚はシンプルな炭火焼で、見栄えを別にすれば魚は炭焼きが一番旨いと思う、「緑」でまとめたガルニが春を連想させる。
 そして真打登場のリエーブル、実物のソースの深い艶は画像では伝えきれない。恐ろしく手間と時間をかけた料理で、この上にファアグラやトリュフの薄切りを乗せる事もあるが、それをせず本質だけで勝負するのは、さすが佐々木氏だと思った。
 俗な例えだが、煮込んだ野兎はツナ缶の食感と似ている(笑)、そこにワインと血とフォンが加わると、他の食材では得られない高貴な味と芳香が口腔と鼻腔に広がる。豚血等は使わず兎の血を使うが、少量なので兎の内臓を潰して加えるそうで、微かに感じる獣香が味の立体感を築いている、奥深い味は余韻が消えず記憶に残る、これは間違いなく「今年印象に残った料理」部門にエントリーした(笑)。
 長くPARISで働いた佐々木氏によると、今はフランスでも手間のかかるこの料理に出会う機会は少なく、野兎が入ってもシヴェ(civet)にする事が殆どとの事。でもこうした料理は誰かが作っていないと途絶えてしまうから、作り続けて欲しいと思う。
 北海道時代からコンビを組んでいるパティシェール作のファーブルトンもいい出来で、以前より進化していると思った。
     190414-11.jpg
 王侯貴族になれた気分だが問題はその後だ、王様なら「今日は良い出来じゃったのう」とでも云えば済むが、ただの庶民ではそういかない、恐々と支払い計算をお願いしたら、金額は脱力する位に安かった、これは「自分も作りたい料理を作れたので、それで儲けたいと思わない」との、料理人の心意気だろう、その好意に遠慮なく寄りかかる事にした(笑)。
 今回も個室利用、正確に云うと個室隔離(笑)だったが、調理を終え現れた佐々木氏が「料理どうでしたか?」と訊くので、「もっとお金を取った方がいい」とも云えず(笑)、「(料理に)どんなワインを使うのですか?」と当たり障りのない話をしたが、圧巻の料理でした。
 もし今回みたいな本物のリエーブルロワイヤルを食べたかったら、今から「レクテ」に通って常連になる事、そして季節が近づいたら「入ったら必ず食べに来る」と頼んでおく、つまり一年待ちだが、寿司店を一年前から予約する人なら待てるでしょう(笑)。
 おそらく平成最後のジビエ体験だと思うが、大トリにふさわしい華麗な食卓だった、料理長とスタッフの皆さんに感謝したい。


  1. [ edit ]
  2. フランス料理
  3. / trackback:0
  4. / comment:0

竹ノ塚「市東製作所」

 我家は江戸城(皇居)から見ると、鬼門とされる丑寅間の北東方角、それも東京の外れになる、「東京に住みたいけれど、家賃が高い」と思う人が、最後に選ぶ地域ではないかと思う(笑)、それでも此処数年の駅混雑ぶりは顕著で、賃貸物件の家賃も上がっている。特徴的なのは物価が安い事で都内では指折りだろう、若い人向けの遊び場は少ないが、節約しながら年金生活をするには住み易いと思う(笑)。
 「住めば都」と云うが、都心へ出るのに時間がかかる等、不満が無い訳でなく、「近くに良いパン店がない」もその一つ、日常的な総菜パンや菓子パン、四角い食パンなどは、それなりにいい店があるが、食事に使うパンとなるとバゲットが置いてある位で、私が好きなパン・ド・カンパーニュみたいな、ハードパンを売っている店は皆無だった、こうしたパンを食べたい時は、電車に乗って買いに行くしかなかった。
 或る日、東武スカイツリーラインの竹ノ塚駅周辺の飲食店を調べていた時に、偶然見つけたのが、今回記事にする「市東製作所」だった、「しとう」と読むらしい。工務店みたいな名前だが、惹かれた理由はハードパンの品揃えが豊富で、画像でも「此処はイケルのでは?」と訴えるものがあったからだ。
 WEB情報によると、店主は広尾「沢村」や谷中「カヤバベーカリー」で働いていたらしい、地図を見たら何とか自転車でも行けそうなので、天気のいい日に向かう事にした。
        190410-1.jpg
 店の場所は竹ノ塚駅西口から歩きで5、6分位、自転車だと悪名高い「開かずの踏切」を渡る事になり、本当に「開かず」だったが、西友がある道に沿って進むと右側に店がある。
 外観は街中にありそうな店構え、WEBによると昨年6月の開業らしく当然店は新しい。
     190410-2.jpg
 ドアを開けるとすぐ右手にパンを並べている、カンパーニュ、セレアル、コンプレ等々、「一目会って恋に落ちる」みたいに、見るだけで自分が求めているパンなのが分かった、頬ずりしたい位だがしていません(笑)。
(店内撮影の承諾は得ています)
        190410-3.jpg
 バゲットも白いフニャフニャした物ではなく、黒っぽくて固そうなタイプ、対面販売ではなく客が選ぶトレー式、奥で会計をするがカフェコーナーもあるので、コーヒー等も此処で淹れる。
     190410-4.jpg
 カフェコーナーはシンプル、子供が描いたみたいな壁の絵が微笑ましい。
        190410-5.jpg
 カフェコーナーの目玉商品「ぱん盛りセット」、これパン好きには美人コンテストみたいで惹かれる(笑)、此の日はパンを買うだけだったが次は試したいと思った。

 店は夫妻らしき二人でやっているみたいで、夫が奥の工房でパンを製作、奥さんが販売を担当していている、買ってみたいパンは多かったが、他の荷物もあるので以下の4種を購入、以下に食べた印象と共に紹介したい。
     190410-6.jpg
・カンパーニュ1/2(実測404g)税込500円
 一個を半分に切ってもらった、ズシリと重量感あり。地域の需要に合わせて食べ易くしていると思うが、粉の香りや焼きは合格、酸味も感じる。このレベルのハードパンが、電車賃払わずに買える日が来るとは思わなかった、長生きして?よかった(笑)。買った日より翌日の方が、味が馴染んで美味しく感じた、材料もまともな物を使っている証だと思う。

     190410-7.jpg
・セレアル(270g)360円
 これもハード系パンの代表格で雑穀が入っている、買った当日は少し柔らか目な生地に感じたが、翌日になって水分が飛ぶと、いいバランスになった、雑穀類も良質だと思う。

        190410-8.jpg
・りんごシナモン(122g)300円
 おそらくバゲットの生地を使っているのではと思う、例えがよくない事を承知で書いてしまうと、上から見るとちょっと芋虫みたいなビジュアル(笑)。中にシナモン味のリンゴのコンフィチュールを入れている、食事時のパンではないが、これも良かった。

     190410-9.jpg
・黒豆ぱん(100g)260円
 この店のスペシャリテみたいだ、中にたっぷり大きな黒豆を入れている。生地は上記3種とは違い、食パンに使うものだろう、私は豆好きなので次来る時も買いたいと思った。

        190410-10.jpg
 理由は聞いていないが、「オバケのQ太郎」に出て来るO次郎みたいなキャラクターを店のマークにしている(笑)。
 期待以上にいいパンだった、有名店で働いていた人が独立し、自分が作りたいと思うパンを作って売る、あとはどれだけ地域の人がこうしたパンを評価し支えてくれるかだ。「パン屋は閉まる時間が早いので、コンビニでしかパンを買わない」と思っている人も、休みの日に買ってスライスして冷凍しておけば、深夜でも食べられる。こうしたハードパンは冷凍保存にも耐性あるので、一度本物を食べてみてください(笑)。
 花粉が収まった頃に、また行きたい店だ。


  1. [ edit ]
  2. スイーツ・和菓子・パン
  3. / trackback:0
  4. / comment:0

千駄木「谷中ビストロ サンセリテ(Sincérité)」~「カフェポロン(Pollon)」

 東京文京区と台東区の一部、不忍通りに沿った地域の谷中、根津、千駄木を総称し、「谷根千(やねせん)」と呼ぶ、寺社が多く存在し、大戦時の空襲被害をあまり受けなかった事もあり、昔の東京下町の雰囲気が残され、最近では観光スポットとして外国人の姿も目立つ、古民家を改装したカフェやショップが増え、街散歩に訪れる人が多くなっている。
 千駄木駅から根津神社下へ向かう、不忍通りから少し東側の住宅街中にある細い道は、クネクネと曲がっている事から、通称「へび道」と呼ばれるが、此処も散歩コースの一つになっている。この道沿いにビストロがオープンしたと知ったのは最近、WEB情報では2018年6月の開業で、料理人は池袋の「ブラッスリー・ラフェット」の料理長だったそうだ。家から近く千代田線一本で行けるので、ブロガー仲間とのランチ場所に選び、予約して訪れる事にした。
 千駄木駅から歩いて7分位、その「へび道」が終わる辺りに店は在った、私は長く文京区内に勤めていたので、この辺りも来ていて土地勘あったが、初めての人は地図を見ながらでないと見つけ難いと思う。
        190406-1.jpg
 事前情報どおり木造古民家を改装した店舗、以前は青森郷土料理の店だったそうだ。店名は「谷中ビストロ サンセリテ(Sincérité)」、Sincéritéとは仏語で正直、誠実を表す。
        190406-2.jpg
 店前には「本日の料理」が黒板に書いてある。
 店内に入るとすぐ客席で、カウンターが8、テーブルが1卓4の12席、カウンター席に案内される。水回りの関係か、目の前で調理するのではなく、左奥のキッチンで料理人が作業する、カウンター内でサービスを担当しているのが大柄な男性で、この二人は友人同士との事だが、ちょっと渋い中年コンビでいい雰囲気を出していて、女性ウケしそうだ(笑)。
 ランチの料理は税込1,800、2,600円の2種、後者は料理が選べず、肉料理のアンガス牛に惹かれなかったので、プリフィクスの前者でお願いする事にした。黒板を見た時から殆ど決めていた「仔羊もも肉のロースト」をメインにして、前菜とデザートも迷わず決まった。
 料理は割と早めに出て来た、「ビストロ」の語源はロシア語の「早く(料理と酒出せ)」説が有力らしいので、料理出しが早いのは正調ビストロと云える(笑)。

     190406-3.jpg
・サバと季節野菜のサラダ仕立て

     190406-4.jpg
・同行者が注文した、田舎風パテ自家製ピクルス添え

        190406-5.jpg
・白ワインはDOMAINE PEIRIEREのシャルドネ(グラス税込700円)

        190406-6.jpg
・仔羊もも肉のロースト マスタードクリームソース

     190406-7.jpg
・マスカルポーネのムース チョコレートソース

     190406-8.jpg
・同行者が選んだプリン
・コーヒー
 鯖は皮側に軽く火を通した後におそらくマリネし、生野菜と合わせている、尖らず優しい味わいで、ランチ前菜の手本のような一品、見ただけだが同行者のパテ・ド・カンパーニュも脂の入れ方や全体の仕上げはいいと思った。
 仔羊もも肉ローストは、フランスではビストロ定番の「ジゴダニョー」だが、日本ではあまり見かけない、この店では毎週末に1本焼き、売り切れ仕舞いとの事、行ったのは月曜昼でギリギリ間に合った(笑)。前記事の仔羊背肉も同じだが、ロースト肉は大きい塊でそれも骨付で調理するのが一番旨いと思う。ジゴは久しぶりだったが納得の美味しさ、付け合せの野菜の扱いもいい。
 デザートも悪くないし、これでコーヒーが付いて1,800円は、かなり値打ちあるランチだと思った、店名どおり「誠実」な値段だ(笑)。料理もワインも税込表示なのも分かり易い、消費税上げ後どうなるのか不明だが、外国人観光客がこれだけ増えている中で、飲食店は税込表示に統一すべきではと思うのだが、実現は難しいのだろうか? 
        190406-9.jpg
 料理はビストロらしく、全体に判り易く美味しさがストレートに来る印象、良心価格ながら量が多めなのも嬉しい、これは家の近くに在ったら通うと思う、前店は池袋でも人気店だったそうだが、それも納得出来る。
 古民家を改造した店内は、居酒屋みたいな雰囲気なので戸惑う人は居るかも知れないが、私は東京下町育ちなので違和感なく落ち着いて過ごせ、また来たいと思った。帰る頃にはカウンター1席を残すだけ、美味しくて財布に優しい店はまず女性が見逃さない(笑)。

        190406-10.jpg
 食後は千駄木駅近くに、これも去年11月にオープンした、マフィンの店「カフェポロン(Pollon)」をハシゴ訪問(笑)、脱サラして始めたという若い女性が一人で営んでいる小さな店だ。

     190406-11.jpg
 マフィン各種、甘くないキッシュもある、先に会計をする半セルフ方式、持ち帰り可だ。

     190406-12.jpg
 チョコレート好きの私が選んだのは、チョコレートナッツマフィン(税別380円)とオーガニックコーヒー(300円)。
 「国産食材を使って安心して食べてもらえる手作り菓子」が店のコンセプトで、素朴な味わいながら美味しい、そんなに饒舌な店主ではないが、いいものを提供したいと云うハートは伝わって来る。

        190406-13.jpg
 インテリアセンスも秀逸だし、こうした小物類も販売している、女性はまず惹かれる店だろう、オジサンにも訴えるものがあった(笑)。店名のPollonはラテン語の「粉」の事だと思う、これが仏語の「プードル」、英語の「パウダー」になった。
 この日訪れた二店とも当たりだった、谷根千散歩の折にはお勧めしたい。


  1. [ edit ]
  2. フランス料理
  3. / trackback:0
  4. / comment:0

六本木「ル・スプートニク」(2019年3月)

 関西のフレンチ料理人達の濃い料理を体験し、暫くの間は後遺症?からフレンチ気分が萎えていたが、そろそろ始動しないといけないと、活動を再開する事に。
 東京では約一ヶ月ぶりのフランス料理店訪問に選んだのは、友人から誘われた六本木の「ル・スプートニク」だった。前回訪問は昨年1月なので既に一年以上経っている、言い訳だが東京は店が多過ぎる(笑)。
 ATMでお金を引き出すため、道向かいにある東京ミッドタウンに入ったが、平日昼ながら人が出ている。近隣で働くサラリーマン&OL達が、地下飲食店街で弁当を買うため並んでいて、値段は何処も千円以下、六本木と云えども日常は贅沢出来ないようだ(笑)。10月の軽減税率導入後は、飲食店では店内と持ち帰り販売で税率が違う事になる、レジを2台用意するのか1台のレジで異種税率を併用するのか、店内での飲食以上に弁当類を購入する客が多くなりそうで、人手不足の中、手間だけが増え混乱が起きそうな気もしているが。
 約束の12時半に店に到着したら、友人は既に待っていてくれた、昨年から支配人に就任した千葉氏に挨拶し、始まった3月の料理は以下のとおり、

        190402-1.jpg
・萩産熟成甘鯛、蕪と柚子を巻いて

        190402-2.jpg
・聖護院蕪の温かいコンソメ

     190402-3.jpg
・左:蕗の薹のチュロス、ブーダンノワールを詰めた紫芋
・右:鮪のタルタルを詰めた有明海苔のチュイール

        190402-4.jpg
・奥:フォアグラと金柑を巻いたパートガボット、手前:黒ビールのアイスクリーム

     190402-5.jpg
・ホワイトアスパラと同ブランマンジェ、甲殻類のジュレ

        190402-6.jpg
・ハマグリのラビオリ、そら豆と緑豆を使ったスープ、ペコリーノ風味

     190402-7.jpg
・鰻とバナナを挟んだパンケーキ(右は開いた状態)

        190402-8.jpg
・氷見産鰤、黒大根、フレッシュハーブ、ディルの花、焦がしバターレモンソース

     190402-9.jpg
・仏リムーザン産仔羊背肉のロティ(焼き上がった塊で)

        190402-10.jpg
・同 各皿に盛り、下にさつま芋とモリーユ茸、子羊のジュとロックフォールのソース

     190402-11.jpg
・マスカルポーネのクレームブリュレ ブルーベリー オキザリス、ミントとレリボの液体窒素

        190402-12.jpg
・オレンジとショコラオレ(ジヴァラ ラクテ)のパルフェグラッセ、ショコラのキャレのチュイール、カモミールの泡

     190402-13.jpg
・紅玉リンゴとキャラメルのエクレア
・コーヒー
 
 まず料理全体の印象から云うと、今の東京で先頭集団を走っている料理だなと感じる。モダンで都会的センスがあり、国産食材を積極的に使いながらもオリジンはフランス、メイン料理へ階段を昇る過程と、そこから最後へ降りて行き方も巧い、平坦でなく起伏があって飽きさせない。
 以前は次から次とアミューズ~前菜系の料理が続き、品数が多すぎて各皿の印象が薄れがちな気もしていた、今回ランチメニューで品数が少ない事もあるが、「客に何を食べさせたいのか」が明確と共に、各料理間の繋がりが良くなったと思う。
 特に印象に残った料理を挙げていくと、まずは蕪のコンソメ、油脂を抑えた優しい味わいながら奥行と深味がある。フォアグラと金柑、黒ビールアイスと合わせた皿も高橋料理らしいもの、自分が脂肪肝気味なのでフォアグラはなるべく控えているが、これは身体が悪くなっても食べたい料理だ(笑)。
 蛤、空豆、緑豆を合せた料理は、「春のざわめきが皿の上に舞う」みたいな、鮮やかで爽やかな色合いと味。次の鰻とバナナを合わせた料理は過去未体験の味で、かなり冒険的だが意欲は買える、カルトだと否定されるかも知れないが、ムニュの中に入れるのは変化を持たせる意味でありかなと思った。
 名産地氷見の鰤は脂味が強め、これをハーブとレモンの風味で中和させ、旨味を増している、現代北欧料理みたいなインスタ映えはないが、味わって記憶に残るものだった。
 そして人数分を一度に焼いたリムーザン仔羊、肉質・火入れは抜群でガルニが少ない事もあり主役が明確、既にお腹は満杯の筈なのに何時までも食べ続けていたい、そんな気持ちにさせる堂々とした逸品だった。
 髙橋氏自ら作ると聞くデセール2品も秀逸だった、特にオレンジ&ショコラは文字どおり「パルフェ」で、「今年印象に残ったデザート」選考にエントリーした(笑)。

 店スタッフは以前より少なくなった気がするが、千葉支配人を中心に不足を感じさせず時間を過ごせる、場所柄外国人客も多く異文化遭遇で気を使う面もあると思う、此の日も中国系の男性二人客が食事していた。
 前回からテーブルが交換されていて、より木目のいい物になった、それを見せるためもありクロスを使っていないが賛成、何処から何か云われても自分のスタイルを変えないのは立派だと思う、ただ周りが職人気質の料理長に付いて行くのは大変かも知れないが。
 髙橋料理長は先日、ロシア・ウラジオストックにある有名レストラン「ZUMA」から招かれ、一日限りのフェアを開催して来た、満席60名の客に対し、彼のスペシャリテである「ビーツとフォアグラのバラ」を提供したそうだ、その作業を考えると戦場みたいで大変だったろうと想像する。現地TV局の取材まで受け、文字通りスター扱いされたらしい、店名の「スプートニク」も、ロシア人のハートを掴むのに役立ったみたいだ(笑)。最後挨拶に現れた高橋氏に、「次はロシアに支店出すのもありでは?」と訊いたら、即座に「ありません」と応えたが(笑)。
 「今、東京フレンチ何処がいいの?」と訊かれたら、推したい店の一つなのは間違いない、充実した午後の時間を過ごせた、高橋料理長&千葉支配人ありがとうございました。


  1. [ edit ]
  2. フランス料理
  3. / trackback:0
  4. / comment:0

NEW ENTRY  | BLOG TOP |  OLD ENTRY


プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
人はそれぞれに「見方、感じ方、考え方」が違います。私が美味と思ってもそう思わない人が居て当然です、味覚とはそれだけ不安定で不完全なもの、あくまでも筆者個人の嗜好による感じ方である事を承知の上で読まれてください。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに赤坂、麻布十番等。
混雑電車が苦手で加齢による朝型人間化のため、ランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

最新トラックバック

訪問者

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

« 2019 04  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -