最後の晩餐にはまだ早い


麻布十番「ビストロ・コティディアン」(2019年7月)

 週末の金曜日昼、腰痛治療やトレーニングジムへ行く予定がなく、前日急に思いついて、麻布十番「ビストロ・コティディアン」のランチに伺う事に、約一年ぶりになってしまった。
 本当はもっと早く行きたかったのだが、民放TVの昼情報番組に須藤料理長が出演、店のスペシャリテである「カスレ」を紹介した処予約が殺到し、暫くはカスレばかり作っていたと聞く(笑)。今更ながらTVの影響力は凄いと思う、私の地元でも高田純次さんが出演する散歩番組で紹介された小さな店が、約一ヶ月普段あまり見ない層の客が来ていた。それがあって暫く見送っていたが、ようやく静かになった頃だろうと思い出かける事に。
 地下鉄の中でも「暫くぶりなので、話題になったカスレを食べてみたいが、もう7月だし熱い料理はどうか?」と悩んでいた(笑)。麻布十番駅で降り、逆方向だが「ブランジュリー コメット」でパンを買った後に店へ向かう。
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 12時少し過ぎに階段を昇って店に到着、6月からサービス担当に加わった女性が笑顔で迎えてくれる、外は見えないが窓際席に案内された。須藤氏と奥様にもご無沙汰を侘びて挨拶する。
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 現在のランチメニー、スープ+前菜+メイン+デセール+ドリンクで税込2,800円(+料金の品あり)、前菜はイサキだなとすぐ決まったが、肉は「豚肩ロースのコンフィ」にも惹かれた、でも悩んだ末に結局カスレに決め、デセールも含め当日の料理は以下のとおり。

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・岩中豚のリエット、リヨン風サラミ、鶏白レバーのムース

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・麻布十番「ポワンタージュ」のバゲット

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・赤ワインをお願いしたら、3種の提案あり

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・エチケット(ラベル)に惹かれて、選んだのはラングドックのMas d’Amile‘Le Petitou’2015(グラス1,000円)
 微笑ましい絵は醸造者のお子さんが描いたそうだ。

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・ゴールドラッシュの冷製ポタージュ

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・和歌山 イサキのカルパッチョ

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・フランス産鴨モモ肉コンフィのカスレ(+1,500円)

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・アンズのタルト ローズマリーアイス添え

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・エスプレッソと小菓子

 最初の一品は店からの追加サービスみたいで、リピーターと云えども一年ご無沙汰していた罪深い客なのに申し訳ない(笑)。冷製ポタージュは割と粘度のある造り、この時期トウモロコシのスープは各店で使うが、料理人の考え方の違いが感じられ面白い。
 鮮度のいいイサキのカルパッチョは須藤料理らしいビジュアル、バジルソースの置き方や全体の味の決め方が、フランスのビストロ料理から進化していて、P・ガニェールの元で働いていた彼ならではの繊細さが感じられた。
 そして到着したカスレ、私は2年ぶり位だと思う。フランス南西部出自の郷土料理だが、元々あの地方は「オクシタニア」と呼ばれ、PARISを中心としたフランス中央とは距離を置き、独自の文化を保って来た、カスレはアルザス地方の「ベッコフ」同様、農作業の合間に仕込んで食べていた庶民の料理、肉体労働者向けに塩も脂も強い、農業従事者が減った現在でも伝統の味はそう変えられない。
 須藤料理は現地そのままではなく、肉体労働をしない今の東京人に合わせ進化させている。伝統的なカスレに較べ、白インゲン豆煮込を鴨肉のコンフィに添える位の量にして、塩味も強過ぎず、カスレ初心者でも「美味しい料理」と思う筈だ。
 食後に須藤氏と話した中で聞いたが、ずっと同じ料理を作り続けていると、やがてコツと云うか本質が判ってくるそうで、今の出来は自信があるみたいな話だった、私も食べた印象でその言葉が理解出来た。カスレと聞くと冬の料理をイメージするが、冷房の効いた店で食べれば夏でも旨いです(笑)。デセールも安定の美味しさで、もう一品食べたい位。
 昔の有田の陶工が皿や壺に、呉須でずっと同じ図柄を描き続け、腕が疲れて嫌になる頃に、やっと力の抜けた洒脱ないい絵が描けると聞いたのを思い出す、須藤氏とカスレの関係は、まさに「習慣は第二の天性なり」の領域に入ったようだ。
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 新しいセルブーズの方は優秀、決して出過ぎない客優先の姿勢だが、常に客席に目を配る経験値は高そうだし、「この人が居れば大丈夫」みたいな安心感がある。彼女が居るからかマダムはあまり客席に出なかった(笑)。慢性人材不足の業界なので、優秀なサービスの取り合いが始まっている、待遇面に加え「この店なら働きたい」と思わせる何かが要ると思う。
 調理を終え客席に現れた須藤氏と話をする、東日本大震災の直前にオープンした店は、8年が過ぎ9年目に入った、麻布十番の客層を考慮して、料理の方向に悩む時期もあったみたいだが、今は自分の納得出来る料理を作り提供出来ている、その自信みたいなものは感じられた。
 将来へ向けての構想等も話してくれて、これは詳しく書かない方がいいと思うが、この人は本当に料理が好きなのだと思う。老後の心配はいらない位の貯えはあっても、それでも料理を作るために厨房に立ち続ける、何かそんな姿を想像してしまった。
 楽しくお腹いっぱいな午後になり、帰りの地下鉄では気持ちいい眠りに就いていた(笑)。
 


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秋葉原「長崎トルコライス食堂」

 ブックオフで入手した、2005年発行の柏井壽著「食い道楽ひとり旅」(光文社新書)を読んでいて、冒頭に出て来る「トルコライス」が食べたくなった。
 長崎のソウルフードとも呼べる食べ物で、ワンプレートの中にカレーピラフ、カツレツ、スパゲッティナポリタンが盛られたもの、店によっては多少構成要素に違いがある。たしか以前に東京でもブームになり、オリジン弁当のメニューにもあったと記憶する。
 筆者は京都在住で歯科医業の傍ら、旅や食べ物のエッセイを執筆しているが、このトルコライスを求めて、長崎まで夜行寝台列車(当時あった「あかつき」)に乗り旅に出る、そして元祖とされる店を訪れる。
 私も長崎まで行きたかったのだが、諸事情で断念(要はお金が無かったのです(笑))、東京で食べられる店をネット上で探してみた、そして辿り着いたのが、秋葉原に在るその名も「長崎トルコライス食堂」で、去年12月にオープンしていた。秋葉原なら私の第二の故郷、早速行ってみる事にした。
 何故「トルコライス」と云う料理名なのかについては諸説ある。まず天津に天津丼が無いように、トルコにトルコライスは無い(笑)、一般的なのはカレーピラフがインド(アジア)、スパゲッティがイタリア(欧州)、豚カツがその中間の「架け橋」になるから、世界地図では同位置にあたるトルコの名前を付けたとされるもの、ただ回教徒の多いトルコでは豚肉ご法度なので、疑わしさもある。
 別の説ではカレーピラフ、カツレツ、スパゲッティナポリタンで三色だから、トリコロール(三色旗)から命名、「トリコ」⇒「トルコ」になったと云うもの、著者もこの説を採っているが確証はない。

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 店はJR秋葉原から御徒町駅へ向かう高架下ショッピングセンター「CHABARA」内にある。この施設は全国各地の名産品を集め販売するショップで、長崎県の物販コーナーが店に隣接している。
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 場所は西側出入口入ってすぐの処、コーヒーショップみたいな簡素な造りだが、11時半の開店直後ながら既に2組着席中、カウンター席に案内された。
 トルコライスはパーツの違いで5種類、初回でもあり「スタンダードトルコライス」(単品だと税別1,000円、スープ・ドリンク・長崎カステラが付くセットだと1,500円)のセットに決めた。
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 ドリンクは東京では珍しい長崎名産の「バンザイサイダー」を選ぶ、たぶん初体験だが昔の三ツ矢サイダーみたいな懐かしい味がした(笑)。
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 厨房の前に並んでいたソース類、このチョーコー醤油㈱製のソースが、長崎洋食味の決め手になるみたいだ。
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 暫くしてやって来たのがトルコライス、なかなか堂々としたビジュアルで、基本の三種盛にオマケみたいにカレーコロッケが付いている、生野菜があるのは嬉しい。
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 カツ部分UP、文字どおり「紙の様に薄いカツ」(笑)だが、トルコライスにはこれが合うのかも知れない、少し甘口のドミグラソースがかかっている。
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 教科書どおりのスパゲッティナポリタン、ケチャップ味にドミグラ味が加わり、何処か懐かしく昭和的な味。
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 カレーピラフ、炒めたのではなく炊き込みタイプだと思う、米質・調理は悪くない。
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 食べ終わる頃に出て来たスープ、魚介出汁と長崎醤油がベースみたいで、独特の味わいあるが私は嫌いではない。
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 長崎カステラ、これは100%文明堂カステラの味がした(笑)。

 此の内容で支払いが1,620円なら満足できると思った、全体的に万人向けの判り易い味で、トルコライスは別名「大人のお子様ランチ」とも呼ばれるそうだが、それが理解出来る、日本人でこの味を嫌いな人は少ないと思う。毎週ではなくても月一位には食べに来たいと思ってしまうが、長崎出身で子供の頃から親しんでいれば、余計にそう思う筈だ。
 黒船来航前から外国に門戸を開いていた長崎で生まれた、少しハイカラでお洒落、日常の少し上のご馳走と云う印象。給料日過ぎのお父さんが子供に「明日メシ食いに行こう、何がいい?」と訊くと、子供が「トルコライス!」と答える、そんな光景が浮かんでくる。
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 窓の外は雨、つい「あなたひとりに かけた恋・・」と、内山田洋とクールファイブの「長崎は今日も雨だった」を口ずさみたくなる、トルコライスには雨が似合うようだ(笑)。


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亀有「ピッツェリア クレス (Pizzeria Cres)」

 1976年から2016年の40年に渡って少年ジャンプ誌上に連載された、秋本治作の漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」、通称「こち亀」は、それまでマイナーだった街亀有を全国区の知名度にしてくれた、その功績に元亀有住人として感謝したい。昔は「亀有」と云っても江東区の「亀戸」と混同されたものだ、今は「両さんが居る街」と云うと、大抵分かってくれる(笑)。
 全作を読んだ訳ではないので、実際の街とどう違うのかは分からないが、タイトルにある亀有公園前派出所は存在しない、実在するのは「亀有北口駅交番(派出所⇒交番に名称変更)」で、亀有公園は其処から歩いて3分程離れている。なおこの交番で「こち亀の両さんは居ますか?」と尋ねると、「今パトロールに出ています」と応えてくれるそうだ、私は訊いた事ないが(笑)。
 その亀有公園の前に薪窯を使うピッツェリアが忽然と出現した、店の名前は「ピッツェリア クレス (Pizzeria Cres)」、場所は公園の北側でパチンコ店の並び、階上に住居があるビルの一階角で、昔はこの場所歯科医院だったと思う、個人開業医も後継者不在の時代になったみたいだ。
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 昼は12時の開店、此の日一番で入店する。6月に新規オープンしたばかりなので、店内は当然新しく、亀有らしくない(失礼)モダンなエクステリア&インテリア。テーブル席が10、カウンターが4席と小体な造り、若い男性店主がワンオペで営業している、カウンター内に大きなピザ窯がある。

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 ランチメニューはピッツァが7種でラザニアもある、サラダとスープが付いて基本税込1,000円(プラス料金の品あり)。初回なのでピッツェリアの基本中の基本とでも云うべき、マルゲリータをコーヒー(200円)、ランチティラミス(250円)と共に注文する。

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 まずはシンプルなサラダ、上に乗っているのはプロシュートで、ドレッシングはあっさりしている。

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 野菜を多く入れたサラッとしたスープで牛乳ベースか?味は普通に美味しい。

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 これがマルゲリータ、縁高タイプの典型的なナポリピッツァ、ローマ風は全体が平べったい。イタリアでは「コルニチョーネ(額縁)」と呼ぶそうだが、フチの部分の焦げ目は割と強い、具はトマトソース、モッツアレラ、バジルの「黄金の組合せ」だが、どれも素材はいい。生地は割とモチっとしたタイプ、練ってから時間を置いているのかも知れない、全体の味のバランスはいい。

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 同行者が注文した日替わりピッツァはズッキーニと挽肉、一切れ食べさせてもらったが、肉が入いるとボリューム感が増す。

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 ドルチェのランチティラミス、「ティラミス」と云うより「マスカルポーネムース」と呼んだ方が近いかも知れないが、クリームもマスカルポーネも良質、250円なら注文した方がいい(笑)。

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 コーヒーも濃い目な淹れ方で好みのタイプ。

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 店主にお願いして薪窯の画像を撮らせてもらった、煉瓦積やタイル貼ではなく、金属板を加工したタイプ、私はこのスタイルを「ロボコップ窯」と呼んでいる(笑)、コスト的には安価に出来るのだろう。店主に「夏は熱いでしょう?」と当然の事を訊いたら、「これからが辛い季節です」との答えで、我慢大会みたいだが頑張ってください(笑)。
 亀有には駅南口側に、やはり薪窯を使う「JUN’S PIZZA(ジュンズ・ピッツァ)」があり、比較すると生地はこちらの方がモチモチ感あり、焼きも強めに感じた。値段もほぼ同額どちらもいいピッツェリアなので、もうわざわざ都心迄ピッツァを食べに行く必要なくなった。
 此の日は我々を含めて3組だったので問題なかったが、混んでくるとワンオペなので大変だろうと思う、客は人手不足を理解して、旨い物を食べるために少し待つなど我慢が要る時があるかも。
 昔の亀有を知っている人間には、あまり風紀のいい場所ではなかった亀有公園、公園自体も整備され綺麗になり、子供も安心して遊べる場所になった。そして目の前にこんなお洒落なピッツェリアが出来るとは思わなかった、時代も街も変わっていく、一番変われないのは、つい「亀有に似合わない」と思ってしまう人間かも知れない(笑)。
 続いて欲しい店だし、また訪れないといけないなと思う。


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赤坂「古屋オーガストロノーム」(2019年7月)

 親しい人には話しているが、店を訪れて料理の印象が良かった時は、ブログ記事を書くのは楽で、筆(今はキーボードと云うべきか)が進む。ところが行って印象の良くなかった店は文章を書くのが難しい、記事にしなければいいのでは?と思われるかも知れないが、世の中色々なしがらみがあって、書かない訳にいかない時がある、何も褒めるものがない時は、料理の説明後「トイレが綺麗だった」位しか書けない(笑)。
 それはともかくとして、今回は記事を書くのが楽しい店の一つ、赤坂「古屋オーガストロノム」、4月に訪れているが、今回食事以外の用事もあったので、地元のフレンチ好きのFB友人を誘って昼に訪れる事に。
 7月らしくない曇天が続く今年の東京、暑くないのはありがたいが、農作物に影響が出るのは心配でもある。予約時間の12時に店前に着いたら、非常勤総支配人?の秋葉氏が扉を開け迎えに出て来た、此の店は入口近くに透明ガラスを入れたスリットがあり、店内から外の人往来が見えるのだ。
 通常の店内は4人掛けテーブル4卓の仕様にしているが既に2卓着席、我々の後にも来客がありコンプレになった、秋葉氏に「最近、客入り好調と聞きますが?」と尋ねた処、「いや、まだ波があります」との答え。それでも今夏に開業4年を迎える此の店、ようやくフランス料理好きに知られて来たみたいだ。他卓は女性客ばかりだったが、年齢層が割と高めで、皆静かに料理を楽しんでいる印象、六本木・広尾辺りの客層とは違う。

 古屋料理長にお任せした料理内容は以下のとおり、
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・アミューズ(トウモロコシの冷製スープ、フォアグラのアイス、サマートリュフ)

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・くぬぎ鱒の低温コンフィ、グリーンピースとミントのクーリ

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・自家製パン2種

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・帆立貝のグリエ、芽キャベツ、コールラビのピュレとアルザス産シュークルートのエキュム

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・真鶴港天然鱸のポワレ イタリア産アーティチョーク添え アーティチョークのキュイソンソースと赤ワインを使った2種のソース

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・ブルターニュ産仔牛内臓(リ、フォワ、ロニョン)のデクリネゾン キャロット風味のソース ジロール茸のソテー添え

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・新任ソムリエ考案による、ワインペアリングとノンアルコールペアリング

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・興味を惹かれて選んだノンアル(5杯で税別4,500円)

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・トロピカルフルーツ(バナナ、パイン、キウイ)のコンポート、カレー(!)のグラス

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・パッションフルーツのクレームブリュレ、ドゥモーリ72%のクーベルチュールを使ったグラスショコラ

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・ミニャルディーズ(ワッフル、柿の種のマカロン)

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・エスプレッソ

 まずは冷たいスープだが、ひと手間掛けるのが古屋流で、フォアグラアイスがアイディア倒れになっていない。続く鱒の皿は清流で泳ぐ姿をイメージしたみたいで、シューベルトの「鱒」のメロディが聴こえてきそう(笑)。帆立貝は古屋氏のスペシャリテの一つ、コールラビとシュークルートの酸味が効いている。
 唸ったのが次の鱸料理のソース、赤ワインベースだが甘い、ただ甘いだけでなく深さがある、あとで確認したら、赤ワインやカシスリキュールに肉のフォンを加えているとの事。それで思い出したのが、セーヌ左岸にあった時代の「ランブロワジー」が、魚のソースにフォン・ド・ヴォーを使って旨いと評判になった事、当時働いていて現在は三田「コートドール」の斉須料理長が、二人厨房で忙しく、とても魚のフュメ(出汁)を採っている時間がなく、苦肉の策で使ったら当ったと何処かに書いていた。バルサミコ酢を煮詰めても甘味は出るが、少々品の無い味になってしまう、もっとも全ての魚にフォンが使える訳でなく、強いソースに負けない身質の魚でないと合わない筈だ。
 仔牛のデクリネゾンは6月に乃木坂「タンモア」でも選んだ料理、構成要素は違いロニョンではなくタルタルだったが、比較すると面白い。全体のイメージを云うと、仔牛を草原で遊ばせているのが「タンモア」の田中料理、草原に居た仔牛を引っ張り牛舎に寝かし付けたのが古屋料理(笑)、肉質、調理、ソースどれも秀逸で申し分ない。
 デセールにも定評ある古屋氏なので、3品文句のない出来、ただインスタ映えはしないかも知れないが(笑)。

 先日、1980年代のフランスの料理を特集した本を見る機会があったが、一皿の料理に掛ける手間や時間が、今よりずっと多かったと想像出来るものだった、人件費が安く人は多く雇えたと思うが、これ毎日やっていたらchefは身体持たないなと思ってしまった。
 古屋料理にはその時代の片鱗があると感じる、時代に合わせエキュム(泡)みたいな技法や酸味も使って軽さを出しているが、ベースはあくまでも「いい時代」のフランス料理、私みたいなオールドファンの琴線に触れるものだ。
 調理を終え、客席に現れた古屋料理長、秋葉氏を交えて話をする。私が初めて此の店を訪れたのが2016年の1月、それから3年半経っていて、3人共それだけ年齢を重ねているが、昨日の事みたいに思い出す。客入りに悩んだ時期もあったようだが、3年目を越えた辺りから、ようやく安定して来たみたいだ。
 今日の料理なら間違いなくファンは定着する筈、ただ若い人達と違って、インスタ等の飛び道具?は使わない客層が多く、浸透には時間がかかると思う、其処を耐えられるかどうかが、店存続の分岐点のようだ。
 古典に範を取ったしっかりした料理が好きなら、今の東京で最もお勧めしたい店の一つ。


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亀有「らーめん志」&「自由が丘 蔭山」

 新規開店するラーメン店のうち4割が、1年以内に閉店するとの統計があるそうだ。たしかに地元でも開店したと思ったら、何時の間にか閉まっている店を目にする、一ヶ月しか続かなかった店も知っている。
 自分のラーメンなら皆が食べに来てくれる筈、そう思うのだろうか?今年地元にオープンした某ご当地ラーメンは、麺駄目、スープ駄目、具駄目、加えてサービスのご飯も駄目と云う四重苦だった、その当地で修業した事をウリにしているみたいだが、本当に働いていたの?と、疑りたくなってしまった。
 今回紹介する店は、昨年暮れから今年にかけ、実家のある亀有に開店した2店で、どちらも「鶏白湯」を看板にしている、実際に食べてみて2店共にブログ記事に取り上げたい店と思ったので、まとめて紹介したいと思う。
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 まずは亀有駅北口、東部地域病院へ行く途中にオープンした「らーめん志(こころ)」、昨年12月のオープンで、この店舗は3代続けてのラーメン店。前店舗は銀杏と云う名前でブログ記事にした事がある。WEB情報によると、此処が撤退した後に店長だった人が引き継いだ自店との事、前店時代から鶏白湯スープだったが、スタイルは変えていない。
 前店は11時からだったが、今は11時半のオープン、この差は朝型人間の私には大きいのだが、語ると長くなるので止めておく(笑)。
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 塗装等は新しいが店の造りはそう変わっていない、食券自販機が最新型で大きくなった、「自販機左上の法則」なら「全部のせ塩らーめん」(1,100円)だが、初回なので無難に「味玉塩らーめん」(850円)を購入、「美人店員」と評判の女性に渡してカウンター席に座る、水は最初からセルフだ。

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 これが味玉塩らーめん、見た目は以前とそう変わっていない、ただ麺は細くなった。スープも少しあっさりと上品になった気がする、そのせいか「もう少し食べたいな」と思ってしまうが、大盛りはなく博多ラーメンみたいな替玉(100円)制にしている。
 全体的に印象は良かった、これならリピートありだなと思い、再訪問する事に。

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 2回目は「担々麺(汁有り)※店表記のまま」にしてみた、此の日は店主がワンオペでやっていた、決して悪くはなかったが、店で食べるべき必須アイテムか?となると、やはり担担麺専門店と比べてしまうと弱さも感じる、此の店ではまず塩、次は醤油で、その次は気に入った方の「全部入り」がお勧めだと思う。

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 そう云いながらも最後にライス小(100円)を追加。

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 よく云えばリゾット、別の云い方をすると「猫まんま」みたいに、汁の最後までしつこく食べている(笑)、ご飯の質は良かった。

 もう一店は今年3月、環七沿いの大型商業施設「アリオ」のフードコート内にオープンした「自由が丘 蔭山-鶏白湯らーめん」。
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 本店は自由が丘にある「蔭山楼」で中華料理全般を提供しているが、此処では鶏白湯ラーメン専門に特化している。自転車で行ける範囲内にオープンした新店、それも鶏白湯系なら一度は行ってみようと思う。
 フードコート内なのでセルフサービス、でも最近のラーメン専門店は半セルフみたいな形態が増えているので、あまり違和感ないが、土日は子供連れ家族で混雑しているので、騒がしいのが苦手な人は平日または夜がお勧め。
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 メニュー、一番安い品でも税別880円と結構強気な価格設定、以前フードコート内では低廉な単品提供店が多かったが、傾向が変って来たのかも知れない。
 客はブースで注文し席で待ち、無線の呼出機(「ゲストページャー」と云う名前らしい)で、出来上がりが知らされ、取りに行く。

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 注文したのは「鶏白湯塩セット」、小ライスが付いて税別980円。生のレタスが入っているのが珍しい、麺は浅草開花楼の中太麺。味は予想以上に良かった、元々豚骨系より鶏白湯系は好みだが、その中でも良く出来ている方だと思う、おそらくスープは本店または別の場所で作り、運んで来るのではと思うが、よく乳化されコクも深みもある。

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 食べ方の指南があり、途中で添えられたレモンを加えると味が変わる。
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 最後はリゾット?で締め、ご飯の質も悪くない。
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 正直フードコート内でもあり値段も高め、「一回行けばいいかの店」と予想していたが、これならリピートしたいと思った、少なくとも外にある貝白湯出汁の店よりこちらの方を採りたい。
 2店とも鶏白湯好きならお勧めできる店だと思う、あっさり系が好きなら「志」、濃い味系が好みなら「蔭山」と云う印象、どちらも長続きして欲しいものだ。


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南青山「MAMA」(2019年6月)

 今年の3月にダイヤ改正があり、地下鉄千代田線が利用しやすくなった、特に始発と終点行きに乗れ、平日昼ならまず座って往復出来るのは、腰痛持ちの私にはありがたい、お酒が入っても寝て乗り過ごす心配もない(笑)。そんな事もあって、地下鉄に乗り都心へ出る時は、つい千代田線沿線駅の店を選んでしまう。
 今回も表参道駅を利用する、南青山高樹町の「MAMA」へランチ遠征する事にした。駅からは少々歩くが、246号~骨董通りを歩いて行くと、今時のお洒落な店と美女たちがウオッチ出来るのでそれも楽しみ、地元ではヘソ出して歩く若い女性は居ないが、此処では見られる(笑)。
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 12時ちょうどに店に到着、オーナーの平垣内氏が入口で迎えてくれる。店前の緑も大きくなった。「△△△△△△」のマークは何?と思うかも知れないが、「MAMA」の店名を図案化したもので、なかなか洒落ている(笑)。
 大きく細長いテーブルだが、普段はカウンターとして使っている席の一番奥に座らせてもらう、予約時に「これとこれが食べたいな」と勝手にお願いしたら、市村料理長がそれを入れた特別定食を作ってくれた、内容は以下のとおり。

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・野菜の前菜
 左から:コーンとヨーグルトの冷製スープ、ビーツの野菜カクテル、雲丹と人参

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・白ワインを一杯
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・甘鯛を鱗付けたまま焼き、オマールと軽いブイヤベース仕立て。

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・イベリコ豚のメンチカツ、イベリコ豚のとんかつ、油淋鶏の3種盛定食

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・メンチカツUP

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・油淋鶏UP

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・味噌汁のお替りに、何故かカレーが付いて来た(笑)。

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・卵型の容器に入れたブランマンジェと小豆餡

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・チョコレートと栗のモンブラン

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・ハンドドリップの堀口珈琲と静岡緑茶

 まずはお馴染みの野菜前菜からで、普段野菜不足な身体に、良質な野菜料理が浸みていく、中でもヨーグルトの酸味を加えたコーンのスープが、もっと食べたいと思う逸品だった。
 甘鯛料理はさすが高級フレンチのスーシェフだった市村氏ならでは、何気なさそうでいて、この皿に入っているのは、フランスと日本で学んだ多くのものが凝縮されていると感じる。
 メインは私の希望で、「イベリコ豚メンチ、イベリコ豚とんかつ、油淋鶏の3種盛定食」、イベリコ豚料理は此処のスペシャリテだが、過去食べていなかったのがメンチカツ、これに「天使の羽根」とも呼ぶ肩甲骨部位肉のとんかつ、更に週替わり定食から油淋鶏を備前の俎板皿に乗せ登場、まるで発白中の大三元が揃ったみたいな嬉しさに興奮(笑)。
 ご飯も味噌汁も上質、味噌汁のお替りをお願いしたら、ストウブのミニココットに入ったカレーまで出た、まるで盆とクリスマスと正月が一遍に来たみたい。揚物ばかりだと食べた後には胃が重い時があるが、素材も油も良質なので、全くそんな心配はなかった。デザート2品もいい。
 市村料理長と私は名前が同じだし(字は違うが)、同じ4月生れの牡羊座(年齢はかなり違うが)、味に関してもケミストリーが合うのかも知れない(笑)。
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 「フランス料理の哲学に基づいて丁寧に仕上げた定食」が店のコンセプトだが、そう云うのは簡単だが実践は難しいものだ、店がやろうとしている事と、客が求めるものが一致している稀有な店かも知れない。既製服ではなく客の要望に極力カスタマイズする、オートクチュールなレストラン、多様化の時代に求められ生き残るのは、こうした店かも知れないと思う。
 居心地のいい店内なので、つい長居してしまう、B&Wのスピーカーからは食事や会話の邪魔にならない位の音量でジャズが流れ、テーブルや椅子等のインテリアも上質、「どうだ、参ったか」みたいな、上段から振り下ろす豪華さとは違い、あくまでも日常の少し上だが、多忙な庶民には届かない、華美ではないが静かな極上と云う印象。
 正式な茶会に招かれた事はないが、此の店ではたぶんそれに近い事をやろうとしているのではと思う、平垣内&市村両氏が主人になり、選ばれ招かれた客人が接待を受け、部屋の設えを褒め、器を愛でて料理と茶を堪能、主人のもてなしに感謝する。主人と客は美意識を高め合い、此の場に往きて還れる事は茶道の基本である「一期一会」の世界、そう云えば二人が身に着けているユニホームの帽子は、千利休が被っていたとされる頭巾に似ている(笑)。
 勿論何も知らなくても客は楽しめるが、美術、音楽、料理について少し知識があれば、なお楽しめる店、どちらかと云えば量より質を重視したい、人生経験を積んだシニア向けの店だと思う、最後の贅沢は此処にあった(笑)。
 デリバリー部門も好調と聞いた、このままのスタイルで続けて、客が老いても立ち寄れる店であって欲しいものだ(笑)。


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西新井「匠のとんかつ 加賀」

 外食で行った全ての店をブログ記事にしている訳ではない、料理や店の対応で「これは無いだろう」と思う店は載せていない、味の評価は人それぞれなのは尊重したいが、ブログを読んでから行った人を落胆させる確率が高い店は、後の厄災を避けたいと思っている(笑)。
 店を点数やランク付けするのは好きではないが、それでも私が行った店は3つのカテゴリーに分けられる。
1.一回行けばいいかなと思う店。
2.もう一度行きたいと思う店。
3.定期的に行きたいと思う店。
 ブログ記事にするのは、2と3と思ってもらっていいが、今回取り上げるのは、なかなか判断が難しかった店で、訪れる人の意見も聞きたいと思い、あえて記事にする事に。
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 店は昨年12月に西新井にオープンした「匠のとんかつ 加賀」、とんかつ好きとしては、地元に出来た新店なら、一度は行ってみようと思い訪れる事に。
 場所を説明し難いが一番近い駅は東武鉄道の大師前、環状七号線道路から少し北側、環七北通りと「七曲り」と呼ぶ道の交差点近くに在る。
 相当古いモルタル家屋を改装した店舗、店に掲げてある大きな布看板?に、「当店のとんかつは定食屋のとんかつではありません!専門店のこだわり抜いたとんかつです。ここから東京一美味いとんかつ屋を目指します!」と、堂々と宣言している(笑)、デリバリーもやっているようだ。
 昼の開店直後に入店したが店内は外観とは違って新しい、カウンターが10席位と座敷席が2卓、カウンターに座ってメニューを見る。カウンター内厨房は若い男性が2人、一人が調理、もう一人が配膳等を担当、さらに一人年配女性も居たが、何時の間にか居なくなっていた。
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 昼は「とんかつ膳」(税別980円)から「匠の特上ヒレカツ膳」(2,180円)迄数種、この中から初回でもあり、店の特徴が一番出そうな「匠のロースかつ膳」(税別1,350円)を選んだ。
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 「食べ方のご提案」が置いてある、ラーメン店でもたまにみかけるが、どうもこの手の指南書は苦手だ、「好きに食べさせてよ」と云いたくなるが、でも結局全部試してみる事にした(笑)。
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 奥にある小上がりの座敷、小さく見え難いがその前に水、キャベツ用ドレッシング、サービスのもやしナムルが置いてある、客は此処まで取りに行くのだが、これ少々疑問、格安チェーンの「松乃屋」や「かつや」でも卓上にこうした物は用意してある。

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 最初に胡麻を入れた擂鉢と「サービスです」とあったキャベツ、何故サービス?

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 これがロースかつ、120g位か?7切れに分けられている、産地は確認しなかったが国産豚だと思う。

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 中心は微かにピンク色、衣もしっかり付いていて、揚げは綺麗で問題ない。肉質は割とフレッシュな印象で熟成などはしていないと思う。東京一かどうかはともかく味は悪くない、脂身は多目に感じた。とんかつレベルとしては上野&御徒町の人気店「山家」の上ロース位はありそう。
 ソースの他に竹炭塩、茎わさび、とんかつ醤油を試してみたが、意外にも醤油が良かった、たまり醤油みたいなので、今度家でもやってみようと思う。

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 ご飯も豚汁もまあ合格点は出せる、ご飯おかわり可。

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 サービスのナムルと漬物は普通。

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 毎回なのか不明だが、サービスで出たバニラアイス、少量だが嬉しいものだ、レディーボーデンみたいな味だが、違うかな?
 全体的に味は悪くなく美味しかったが、東京一を目指すのだったら、料理だけでない足りないものがあるのでは?と思った。特に水やサラダドレッシングがセルフで、カウンターの客は結構離れた場所から取りに行き、瓶入ドレッシングは使った後に返しに行く事になる、最近のワンオペラーメン店に倣った省力化だろうが、客単価を考えると少しやり過ぎではと思ってしまった。
 店を出る時に「ありがとうございました、またいらしてください」と送られたが、「また来るかな?」と自問してみたが、家が近くなら来るけれど、自転車で30分なら、個人的には三郷の「林や」とか、五反野「とんとん亭」みたいな、如何にも昭和的で家庭的なサービスの店の方が好きだなと思う。
 昭和中盤世代の私にとって、とんかつは日常のちょっと上のご馳走、行列して迄食べるものではない、東京一は目指さずとも、地域の中でオンリーワンであれば、それで十分ではないかと思ってしまう、客目線で見直せば、もっといい店になる筈だ。


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入谷「サルデスカ‘Sardexka’」

 外食好きな人なら、皆大抵「次に行きたい店リスト」があると思う、このリストに載せてすぐ実行できる店と、ずっと載せたままと云う店に分かれるが、行けないでいる理由は様々、私の場合、家から遠い店や夜しか営業しない店はどうしても後回しになりがちだ。
 私が約一年間ずっとリスト上位にしていた店をようやく訪問する事が出来た、それが地下鉄日比谷線入谷駅とJR鶯谷駅の中程にある、スペイン・バスク地方の料理を提供する「サルデスカ‘Sardexka’」だった。
 フランス南西部からスペイン北西部に繋がる一帯がバスク地方で、昔から独自の言語と文化を持つ事で知られる、スペイン側バスクを代表する街がビルバオとサン・セバスチャン(バスク語では「ドノスティア」)で、前者が商工業や芸術の中心地なのに対し、後者は「食」で知られる街だ。星付きレストランから街中のバル、会員制の「美食クラブ」迄多種多彩、スペイン版「食い倒れの街」と云える(笑)。
 このサルデスカは東京でバスク料理専門、それも城北地域では私の知る限り、唯一の店ではないかと思う、2016年5月の開業、店主は深田裕氏でWEB情報によると都の西北大学教育学部卒と云う、料理人らしくない?経歴で、スペインと日本のバル数店で働いた後に独立したとある、変わった店名はバスク語でフォークの事。
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 店の場所はJR上野から鶯谷へ向かう途中、上野郵便局の並びで車道に面しているので判り易い。開店時間になって店のドアが開き、中から女性が出て来た、この方が店主の奥様みたいだ、店内は奥に4人掛けのテーブル、あとはカウンターが9席の造り、店奥の壁には店名に因んだ各種フォークが飾られている。
 おまかせの料理は5,500円と8,000円の2種、違いは食材みたいで、あらかじめ後者の方でお願いしていた。バスク産シードルで乾杯、始まった料理は以下のとおり、

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・バスク産ピキージョ(赤ピーマン)、冷製

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・淡路産アジのマリネ、黄色いガスパッチョ、じゅんさい

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・肉羊羹(鴨・豚・黒インゲン豆)、鮑、ういきょうのピクルス、ビーツ

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・トウモロコシのスープ(温製)、白アスパラ、サマートリュフ

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・ホタテとハモンセラーノ、ブラバスソース

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・炙った穴子、雲丹を包んだクレープ?

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・オオモンハタのポワレ、ピルピル、シーアスパラ

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・フランス産仔鳩のグリル、万願寺唐辛子と鳩の内臓のソース

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・ホワイトチョコレートのムース、日向夏のソルベ、ダークチェリー

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・ルイボスティー

 まずはバスクを代表するピキージョでスタート、血を連想するような鮮烈な赤い色は、バスク人の情熱を表す?続く鯵は予想外の一品だが味のまとめ方はいい、じゅんさいを合わせるセンスに非凡なものを感じた。
 肉羊羹は乾いたブーダンノワールと云う印象、これに鮑を合わせるのもチャレンジだが、味は外れていなかった。とうもろこしスープは冷製かと思ったら温かいものだった、この温度が白アスパラとサマートリュフの香りを引き出している。
 スペイン的なハモンと帆立の一品は折り返しで、一旦スタートに戻る印象、ブラバスソースとはバスクではなくカタルーニャ発祥の万能ソースの事。続く穴子は「和」を感じた一品、次の魚料理と共に、日本人料理人ならではの火入れと塩味の頂点の作り方が繊細で絶妙だ。
 そしてこの日最も強く印象に刻んだのが肉料理の鳩、過去鳩料理は国内外で何度も味わってきたが、5指に入れたい見事な火入れ、表面の焦げ具合と身の血の回り方が完璧、更に驚くのは、これを焼き鳥店で使うみたいなグリルで調理する事、手元がよく見えないので「炭ですか?」と確認したらガス火だそうだ、この料理人は火を支配し制圧できている、只者ではないと思った。
 デザートも皿盛りの組合せで、スペインと云うよりフランス的だが美味だった、コーヒーではなくルイボスティーがデフォルトなのも面白い。
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 深田氏は大学在学中、飲食店でのアルバイトをきっかけに料理に興味を持ち、辿り着いたのがバスク地方のバルで提供するピンチョス料理だったと聞く、現地と日本で働いた後、奥様の実家近くに独立開業した。「いい料理人はいい顔をしている」は私の持論だが、その例に漏れず、いい顔、特に料理する時の眼がいい(笑)。
 バスク料理専門店と聞くと、どうしても大阪本町の「アラルデ」と比較したくなるが、アラルデが楷書でキッチリ表現するバスクなら、サルデスカはもう少し柔らかく描く行書や草書のバスクと云う印象。ガストロ料理をバルスタイルで出すのがアラルデ、バル料理をガストロ的にバージョンアップしたのがサルデスカと云うと、なんとなく分かってもらえそう、どちらもいい店です(笑)。
 決定的に違うのが、ワンオペのアラルデに対して奥様がサポートしている事で、存在は大きいと感じた、個体の小さい鳩のジャストな火入れは、営業中でも調理に集中出来る時間が持てるからだと思う。
 マニアックな話になるが深田氏の料理は、サン・セバスチャン旧市街の人気バル「ラ・クチャラ・デ・サン・テルモ」を連想させるものがある、働いていなくても食べに行った事はあるのでは?と思う、次に行った時に訊いてみたい。
 平日夜ながら満席、フリで来た客を断っていた、分かっている人達はいい店は見逃さない。現在は夜だけの営業だが、此の店なら家から近いので、苦手な夜行動も何とか出来そうだ(笑)、また来たい店だ。


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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
人はそれぞれに「見方、感じ方、考え方」が違います。私が美味と思ってもそう思わない人が居て当然です、味覚とはそれだけ不安定で不完全なもの、あくまでも筆者個人の嗜好による感じ方である事を承知の上で読まれてください。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに赤坂、麻布十番等。
混雑電車が苦手で加齢による朝型人間化のため、ランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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