最後の晩餐にはまだ早い


大阪・玉造「歩き」(2020関西食べ続け-1)

 今年の関西食べ続けは、昨年5月に開業した初訪問店から始める事に、その店は大阪市内天王寺区玉造にあるフランス料理「歩き」。
 店主は春木真太郎氏で、このブログでも何回か取り上げている、大阪上本町「コーイン」の湯浅料理長の下で8年間働いた後、太田料理長の北新地「グランシャン」でも厨房スタッフとして参加、その後飲食でのアルバイト等の準備期間を経て独立開業した。
 以前からコーインに通っていた客は、坊主頭で風貌が似ている事から、彼の事を「ガンジー君」と呼んでいた、そうマハトハ・ガンディーに似ていたからだが、私は永井荷風にも似ていると思っていた(笑)。今は髪も伸び立派なオーナーシェフになって帰って来たので、これからは春木料理長と呼ぶ事にする、なお春木はローマ字で「Haruki」だが、通常フランス人は「H」を発音せず「アルキ」と呼ぶ事になるので、それを店名にしたのだと思う。
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 店へのアクセスはJRまたは大阪地下鉄の「玉造(たまつくり)」駅からすぐ、不思議な地名は古墳時代に此の地に勾玉などを作る、大和朝廷の「玉造部」が置かれた事に由来するとされる。戦国時代最後の戦「大坂の陣」では最激戦地となり、近くに「真田丸」が在った事でも知られる。現在は大阪下町の商業地区として発展、歩いていると何処か親しみを感じる町だ。
 地下鉄の駅出口から至近の商店街入口にドラッグストアーがあり、脇の階段から2階に上ると店が見える、フリの客はまず来ないだろうと思うが、木製ドアのガラスから放たれる柔らかな照明光が、ホッとする雰囲気を出している。
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 入口にはカルトの品書きが。
 入店し春木氏に挨拶する、私が会うのは2016年以来だから4年ぶり、彼は髪が伸びたくらいで他は変わらないが、現役を退いた私はすっかり老けた(笑)。
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 テーブルが2卓8席、カウンターが5席で計13席、春木氏が一人で対応している。大阪在住の友人と2人でカウンター席に座った、此の日の料理は5,500円(席料+500円)の夜メニューをあらかじめお願いしていたが、以下に紹介したい。

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・イワシのマリネ、グジェール

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・(手前から)牡蠣とヒラマサのカルパッチョ、キッシュロレーヌ、パテ・ド・カンパーニュ

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・バゲット(何処の店か聞くのを忘れたが、今回の食旅行中最も気に入ったパン)

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・カサゴのパイ包み焼き、マテ貝のエスカルゴ風仕立

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・ニュージーランド産仔羊のロースト、カリフラワー、ポム・ド・ピュレ

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・チーズケーキ、バニラアイス、刻んだ苺

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・アンフィージョン(タイム&カモミール)

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・ミニャルディーズ(チュイエル、ショコラ、紅茶のブリュレ)

 料理全体の印象から云うと、古典をベースにしながらも所々に若さも感じさせ、コテコテのビストロ料理とも少し違う、手をかけた料理なのが分かった、さすがは「コーイン」「グランシャン」と云った、古典派の大家二人に就いていただけの事はある。
 事前予約時に春木氏は、『これといった特徴のないお店なので、食べ歩きの貴重なお時間、うちでよろしいのか不安です』と謙遜していたが、値段を考慮すれば立派な内容だと思った。
 前菜は王道的なもので、たしかに特徴はないが、見た目の華やかさより食べて実質的で美味しい、これは大事だ。
 魚料理は此の日一番感心した皿で、自家製のパイ生地からファルス(詰物)の出来、ソースとガルニに使ったマテ貝まで、十分ガストロ料理になっていた。こうした「手の込んだ料理」は師である「コーイン」が最も得意とするものだが、そのエスプリを継承していると思う。
 仔羊も定番の皿ながら、キュイッソン(火入れ)はジャスト、このブログでも書いた事あるが、「初めてのフレンチでは、パテ・ド・カンパーニュと仔羊ローストを食べれば、料理人の実力が大体判る」と、昔に食の先輩から教わったとおり判断すれば、此の日の料理二品は合格点を出せると思った(笑)。
 デザートのチーズケーキも上手く焼いているし、ミニャルディーズまで手を抜かないのもコーイン譲り。

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 トイレ内の洗面台ボウルは、意外にも「しゃぶしゃぶ鍋」をくり抜いた物だそうだ(笑)、これを始め店内は、店主自ら塗った漆喰壁、他店から貰った中古のドア、陶芸家が作ったランプシェード等手作り感に溢れている、「お金がなかったからです」と春木氏は云うが、なかなかどうして若い感性に溢れていて、いい雰囲気の店になっていた。
 食文化は継承していくものだ、学んだ事をこうして自分なりに実践している若者を見ると嬉しくなり、此の国の将来にも少しは希望が見えてくる(笑)。
 階上店で未だ知られていないので、客入りはこれからだろうが、最低1年は我慢、3年経てばやがて人気店になる、多くの店を見て来た私はそう予言したい、予想以上にいい店だった(笑)。
 


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乃木坂「タンモア」(2020年2月)

 このブログではお馴染みの、乃木坂のフランス料理「タンモア」、FBページによると、月替わり2月の料理を「アルザス名物がてんこ盛りの色モノコース」と紹介していて、興味を惹かれ日曜昼のランチに訪れる事に、去年9月の一周年記念メニュー以来になる。
 赤坂=乃木坂間は平日だと賑わうが、日曜日は閑散としていて、目にするのはUber Eatsの袋を背負った自転車の兄ちゃん姉ちゃん(最近女性も見る)だけ(笑)。特に「タンモア」のある辺りは住宅地なので、ひっそりとしている。
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 予約時間の12時に入店し、田中いずみ料理長とサービスの坪内氏に挨拶しカウンター席に座るが、此の日は昼夜満席だそうで、一人ヘルプが来ていた(笑)。ガイドブック等には未だ紹介される事少ない店だが、客入りは割と好調みたいで、応援していた私も嬉しくなる。店は最低でも一年、安定するには三年は我慢しないといけないと思う。
 料理は事前情報どおり「アルザス名物てんこ盛り色モノコース」(笑)、肉料理が「越後牛サンカク」か「ペルドロールージュ」を選べるが、あらかじめペルドローの方でお願いしていた(+2,000円)。
 以下に内容を紹介したい。

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・タルトフランベと逆さまタルトフランベ

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・牛ハツと豚スネのアルザス風サラダ

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・自家製ブリオッシュ

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・ブルターニュ産エイヒレのムニエル、赤ワインソース、シュペッツレ

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・ペルドロールージュ:其の一 – 胸肉のロティ、アワビの肝のソース –

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・ペルドロールージュ:其の二 – モモ肉とアワビのベックオフ –

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・ドリンクペアリング(不知火ミモザ、カブと三つ葉のフローズン、梅干しサングリア、
洋梨・キャラメル)

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・タルト オ フロマージュブラン、ゲヴュルツトラミネールのソルベ、ミラベル、グリオット、洋梨

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・エスプレッソ

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・ミニクグロフのチョコフォンデュ

 タルトフランベはアルザスのピッツア的定番料理で、パン生地の上に玉葱とチーズ、ベーコンを載せて焼く、「逆さ」とは同じ材料を使い冷前菜にしたもの、これを並べた面白さは評価できるし味もいい。続くサラダはこれもアルザス定番のシャルキュトリーをベースにしたもの、少し酸味が強すぎたかな?と云う印象も受けたが、味の構成は悪くない。
 魚料理のエイはブルターニュ産だが、ガルニに使ったシュペッツレは、ドイツ発祥の鶏卵と粉を使った麺の一種で、国境を接したアルザスでもよく使われる、以前別の店で出たものはもっとパスタ的だったが、これはお好み焼きを刻んだみたいな面白い食感(笑)。
 肉料理はスコットランド産のペルドロー(Perdreau:山鶉)、ペルドローには茶色い羽根で嘴と足が赤い「ルージュ(赤)」と、全体が灰色で嘴と足が黒の「グリ(灰)」があり、ルージュの方が味は淡白で、グリは味が濃く野性味が強いとされる、今回使ったのはルージュの方、これを胸肉ロティとモモ肉のベックオフ仕立の2皿で提供する。
 私がタンモアの料理中でも特に好きなのが肉料理で、フランス的な強めの塩使いに毎回共感する。主役はやはり胸肉だと思うが、雉に似た繊細でいて味の強さもあるペルドローの肉質が、キッチリ合った味付けと強めの火入れにより生きている。ベックオフはシュークルートと並ぶアルザスの名物料理、本場では巨大な鍋で作り、家畜の食事ではないかと思う位の量があるが(笑)、日本人向けの小さな土鍋で上手く作っている。両料理共に鮑と合わせたのが特徴、珍しいだけで終わっていない相乗効果は感じた。
 デセールも以前より良くなっているが、この世界には上には上が幾らでも居る(笑)、更に洗練度を上げて行って欲しいと思う。

 全体的に以前より各料理間のバラツキが少なくなった印象、スタッフ?も増えていたし、上り坂の店である事は間違いない。今風のモダン料理を求める人には向かないかも知れないが、伝統的な料理が好きな人なら一度は行ってみるべき店と思う、ベースはあくまでも古典だが、そこへ何かしら料理人の「自分」を表現しようとする、時にそれが外れる皿もあるが、チャレンジ精神は買いたく、変に小さくまとまらないで欲しいと願っている。
 今迄はどうしても「女性料理人だから」的な眼で見ていたが、もう男性料理人と互角に戦える実力は身に付けていると感じる、心配なのは体力的な問題だが、客入りが安定してくれば、これからスタッフを増やせるのではないかと思う。
 サービスの坪内氏の対応も柔らかい印象で、天性のサービスマンだと感じる、人材不足極まるサービスの世界だが、続いて欲しいものだ。
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 カウンター席だったので、忙しい料理長の邪魔をしながらも色々と話したが、どうしても「フランス料理店は儲からない」の話に行き着いてしまう(笑)。新型ウイルス騒動、東京五輪を経て今年の業界がどう変わって行くのか、生き残りは結構厳しくなりそうだが、此の店は回りの静けさとは対照的に満席の賑わいで異次元感覚、そして外食慣れした客層が良好な雰囲気を出していた。
 寒い日だったが、温かな充足感で赤坂駅まで歩いて帰る事が出来た(笑)。

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京成関屋駅前「雑賀屋」

 或る料理人から「このブログは面白い」とのお褒めの言葉をいただいた、その理由が「(一人)1万円超えのフランス料理の次に、800円のラーメン店が出て来たりするので、その落差が面白く、親しみが感じられる」そうだ。要は高級(高額)店へ行き続けられる程余裕がないからだが、成程そうした見方もしてもらえるのだと思った(笑)。
 たしか丸谷才一だったと思うが、谷崎潤一郎を「王朝の文学にも親しんだが、淫靡な文学世界も開拓した、だから幅のある作家になった」みたいな事を何処かに書いていた、それに倣って王侯貴族でも庶民の料理でも、今後も取り上げたいと思っている(笑)。
 今回はその庶民派からで、地元に詳しいB級グルメ通から、「一度は行ってみるべき」と教わっていた、京成電鉄関屋駅前にある路麺立食の店「雑賀(さいか)屋」を訪問、我家からだと荒川に架かる堀切橋を渡って行くので、自転車で30分以上かかった。
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 京成関屋駅と東武牛田駅は50m位離れているが、店は両駅間に在り関屋駅から徒歩0分の場所。東武=京成を乗換する間に蕎麦を食べていく客も結構いるみたいだ。
 店前にはテラス席?(笑)もあるが基本立食い、朝7時から夜0時までの通し営業で、正月三が日以外は年中無休、こう書くとあまり旨いものは出て来ない気がするが、その予想を超えるレベルとの噂で楽しみにしていた。
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 入店すると右側に券売機があるが、種類が豊富。蕎麦・うどんに中華そば、カレーにカツ丼まである、更にトッピングも天ぷら数種にコロッケ、もつ煮込みと盛沢山、目移りしてしまう。事前情報で「太麺の蕎麦を食べるべき」と聞いていたので、「かき揚げ極上太麺そば」(510円)とミニカレー(220円)を食券購入する事に。
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 本当に椅子は無く立ち食いだった、客に媚びない潔さはいい(笑)。調理は男性が一人、他に女性が二人手伝っていた。
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 こう説明する事に、かえって店の自信みたいなものを感じた。店内は情報発信の貼り紙が結構ある、TV取材も何回か来たみたいだ。
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 説明どおり注文後にかき揚げを作るので、少し時間はかかるが、到着した「かき揚げ極上太麺そば」と「ミニカレー」。
 まずは蕎麦ツユを味見、女性店員によると出汁は自家製だそうだ、業務用の濃縮ツユを使う立食蕎麦でありがちな、ケミカルな後味は感じない。濃い目な味付けだが、東京下町育ちの私は特に気にならない、かき揚げは揚げ立てなので勿論美味しい。
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 麺は製麺所への特注品だそうで、「きしめん」的な幅広でモチモチとした歯応えがある。通常の細麺も用意しているが、此の店ではまずこの太麺を試すべき。
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 ミニカレー、これも自家製との事、大量に煮込んで少し置いてから提供するのか、馴染んだ味になっている、カレー専門店とは違いスパイス感は弱めで親しみやすい味。添えたスプーンが、ユリ・ゲラーが曲げた(古い!)後に直したみたいになっている(笑)。
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 店員が見せてくれた生太麺蕎麦、蕎麦と云うよりタリアテッレやフェトチーネみたいな印象。
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 此の店舗は元々別の立食蕎麦だったが、経営者が変わり現在は「雑賀グループ」が運営している、店の評判が上がったのはそれ以降らしい。創業者は和歌山出身か?
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 「都内最強立ち食い蕎麦7選」に選ばれた事があるそうだ、その実力は十分感じた。
 気に入ったので、翌週さっそく再訪問する事に。
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 2回目はちょっと捻って「中華そば半カレーセット」(税込670円)にしてみた。
 中華そばは予想したとおり昭和の東京ラーメンそのもの、脂の少ないスッキリしたスープに濃い目の醤油味、メンマ、チャーシューもいい出来、縮れた細麺も昔のまま、あえて云えば茹でたホウレン草とナルト巻スライスがあれば文句なしだったが(笑)。
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 「メガ唐揚げ定食」(550円)、こんな危険?なメニューもある(笑)。
 此処はいい店だ、店の近所に住む人が羨ましくなった。たぶん次回もあると思う、店まで何とか辿り着けるよう、脚力を維持しておきたいものだ(笑)。
※なお次回のブログ更新は2月22日の予定です。


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麻布十番「L'inédit(リネディ)」

 普段は家に籠って居る事が多い日曜日の昼、友人に誘われて訪れたのは、麻布十番から歩いて5分程の場所に在る「L'inédit(リネディ)」だった。2018年2月に開業したフランス料理店だが、毎週日曜日の昼に数量限定のブランチを実施している、パティシェ夫妻(パートナー?)二人が営んでいるそうで、興味を惹かれ重い腰を上げる事にした。
 事前情報によると、料理を担当する石毛氏はフランスでの経験長く、ロレーヌ地方メッス市郊外の有名パティスリー「Fresson(フレッソン)」で働いた後、料理にも興味を持ちトレトゥールも経験する、「トレトゥール(traiteur)」とは菓子系店が作る総菜の総称で、日本にも進出していたPARIS「ジェラール・ミュロ」みたいに、菓子類と惣菜を同店舗販売する店がフランスには結構ある。その後「レ・ゼリゼ」「ピエール・ガニェール」等錚々たる名店に在籍し、帰国後はガニェールの日本店でも働いた後、以前から温めていた料理とデセールの店を開いたそうだ。
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 店名の‘L’inédit’は仏語で「新機軸、斬新」みたいな意味。場所は麻布十番駅から一の橋交差点へ出て右折、「富麗華」の先にあるビストロの角で左折し、「スブリム」の入った建物を左に見ながら直進すると、突き当り左に狸穴(まみあな)公園、右側に狸穴坂がありその右側。この界隈は静かな高級住宅地だが、坂の先にはロシア(旧ソ連)大使館があるからか、此の日も右翼の街頭宣伝車と警察が出動?していた。
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 一見カフェか美容室みたいな外観だが、店前にはブランチの案内が、最近まで平日ランチも営業していたが、現在は日曜日だけ昼に開けている。
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 入って右奥のベンチシート席に座った、店内は14席と小規模、インテリア類は簡素だが、居心地は悪くない。店内を担当するのがパートナーの北原さんで、この方もパティシェールだと聞く。
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 ブランチメニュー、ヴェノワズリー4種とドリンクで税込980円、他にクレープやスープもある。私はヴェノワズリー4種盛とオレンジジュースに、白いんげん豆スープを注文する。
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 オレンジジュース、これは普通のジュースだった。
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 白いんげん豆スープ、上に乗っているのは鴨の脂とその出し殻で、大阪の「かすうどん」に使う油かすみたいな印象。スープ自体は仏南西部の郷土料理「ガルビュール」に近いが、レストラン料理にヴァージョンUPしている、塩使いも的確な美味しいスープで、料理人の相当な実力を感じる。
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 ヴェノワズリー4種類、「ヴェノワズリー(Viennoiserie)」とは、フランスにおけるパン生地を使った菓子パン類の総称、「ウィーン風」「ウィーン物」の意味で、19世紀末にPARISでオーストリア由来の菓子パンが流行して以来、この呼び方が広まったとされる。
 内容は右から、クロワッサン、クイニーアマン、エスカルゴ?(奥)、ボストック(ブリオッシュ生地)。
 正直に云ってしまうと、値段から過大な期待をしていなかったが、予想以上の本格派だった。サイズは小さ目だがどれもレベル高く、PARISブーランジュリーの日本店位のレベルは十分あると思う、固めの焼きとバターの香りが脱日本的な印象。
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 特に気に入ったのが、このクイニーアマン。本場ブルターニュでも食べたが、バターの水分からか作りがヤワイ感じで(笑)、この小股の切れ上がったみたいな焼きの固さはPARISスタイルだなと思った。
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 この秀逸なヴェノワズリーの後はやはりコーヒーが欲しくなる、追加で注文。
 
 食後、調理場からジャージ姿で出て来た石毛氏、話していると只者でない雰囲気がある、フランスや日本で相当な数の戦場を潜り抜けて来たと想像する、麻布十番の本多忠勝か?(笑)。
 これは近いうちに、夜の5,000円メニューも体験しないといけないと思った、店全体に「一発当ててやろう」みたいな商売っ気を全然感じない事もあり、人に知られぬ穴場とはこんな店を差すのだろう。
 尚、店情報はこちらを参考にしてください。
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 店の近くに或る狸穴公園、江戸時代に大狸が住む洞穴が存在したとの伝承がある。園内に狸穴稲荷があり、鳥居奥には狸ではなく狐が祀られているが、其処に何故かくまのプーさんのぬいぐるみが置いてあり、ミスマッチ感が半端なく面白いので見学をお勧めしたい(笑)。

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稲荷町「キエチュード」(2020年1月)

 例年1月は稲荷町の下谷神社で初詣をしてから、目の前にあるフランス料理「キエチュード」でランチを摂っていたが、諸事情により大幅に遅れ1月末になってしまった、今年だけ旧暦で実施する事に(笑)。
 1月末とは思えないポカポカ陽気の中、日比谷線の上野駅から歩いたが、浅草通りから一本南側の道は、懐かしい木造の看板建築等、随所に昭和が残っていて、昭和生まれの下町人間にはあの時代に戻れる気がする。
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 下谷神社でお参りを済ませるが、今回境内に正岡子規の句碑があるのに気づいた、あとで調べたら、寛政年間に境内で江戸初の寄席興行が行われた史実に因んだもので、句中の「上野の鐘」とは上野公園内寛永寺の鐘、現在でも鳴らされているが、車の騒音で稲荷町迄は聞こえないと思う、こんな情緒のある句はもう生まれる訳ない?(笑)。
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 開店時間になったので入店する、一番乗りかと思ったら既に着席しているテーブルあり、下町ランチは出足が早い(笑)。
 荒木料理長に挨拶してカウンター席に座るが、スタッフが増えていた、黒服の専任支配人が就任しキッチン内も5人と、客席数18に対して手厚い体制、それでいて開店以来ランチ値段は変えていないので、営業的に大丈夫なの?と余計な心配をしてしまう。Aランチ(平日のみ):税別1500円、B3,000円で後者をお願いする。
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 此の日の料理内容、カトラリーはクリストフルのステンレス仕様のもの。

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・荒木料理長の郷里熊本産のワイン「菊鹿(きっか)」シャルドネ(1,500円)

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・バゲット

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・本日のジビエ(鹿肉)のパテ

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・しらすのマリネと鎌倉野菜のサラダ

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・サーモンのミ・キュイ 麦と茸のリゾット

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・岐阜県産鹿肉の香草パン粉焼き

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・焼きたてのチョコレートのフォンダン(蜂蜜のアイスクリーム)

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・エスプレッソ

 まずスタッフが充実しているので、料理の出が早く客にストレスを感じさせない。早く来て早く食べ早く帰る下町の客には、このスピード感は大事だ(笑)。
 鹿肉パテはおそらく端肉を使いながらも印象に残るアミューズ、続く鎌倉野菜の皿は荒木氏のスペシャリテで盤石な一品。
 浅い火入れのサーモンの扱いも安定している、下に敷いた麦リゾットも効いている。
 鹿肉はブフ・ブルギニョンの要領で赤ワインで煮込んだ後、ディアブル風にパン粉をまぶして焼いている、昔からある技法みたいだが、手間がかかる割には見栄えがイマイチなので、最近あまり見なくなった、でもこうした料理は旨いものだ、付合せのクミン風味のじゃが芋コンフィも印象に残る。
 デセールは私の好きなフォンダン&グラスなので嬉しい、レストランデセール特に冬場は冷だけでなく熱さも欲しくなる(笑)。
 店の価格帯は違うが、荒木氏と「ローブ」の今橋氏の料理には何処か共通点を感じる、ほぼ同年齢で同じ時代にフランスで働いている。鎌倉野菜を積極的に使い、フランスでも北より南の方を向いて、素材を力業で捻じり伏せるのではなく、素材自体に謳わせるタイプの料理。食感は軽いが「あの日何を食べたか」が思い出せるのは、アクセントの付け方が巧いからだろう。

 現在、調理スタッフが充実しているので、荒木氏は中心になって調理せず、若手に任せて最後の仕上げ等に目を配っている。彼も十分若いが、次の世代を育てようとする姿勢を、オープンキッチンで見ていて感じた。
 荒木氏は「料理界の東大」を標榜する大阪の名門調理師学校の出身、卒業後はフランス校でも学んでいる、俗な話だが料理人になる迄には相当な金額を自分自身に投資している。現在ようやくそれを回収している段階だが、学んで得たものを独り占めするのではなく、次代に伝えようとしている姿には感心、なかなか出来ない事だ。
 どんなに才能ある料理人でも不老不死ではない、そして昔と違い「技は盗んで覚えろ」の時代でもなくなった。文化とは継承しながら続いていくもの、此の日厨房に居た若い料理人が、間もなく郷里の岡山に戻って開業するらしく、彼の地でも「エコール・アラキ」を伝えて行って欲しいものだ。
 店は今年5月には開店5周年を迎えるとの事で、上野=浅草間と云うあまりフランス料理が似合わない地域でも、誠実に仕事をしていれば、やがて客は付いて来ると云う、いい先例になったと思う。先日行った青山高樹町の「MAMA」でも感じた事だが、普段着で気兼ねなく良質なランチに行ける店が家の近くに在れば、老後の孤独と不安が少しは解消する気がする、我家の近くにも欲しい店だ(笑)。
 5年だけでなく10年、15年と続いて行って欲しいと願ってしまう。
 尚、「キエチュード」の店情報については、以下をご覧ください。
https://www.eatpia.com/restaurant/Quietude-Inaricho-French


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亀有「SHEE’S CURRY(シーズカレー)」

 昨年10月に、実家のある葛飾亀有にスープカレーの店がオープンした、店内工事をしている時に知ったのだが、インド・ネパール系のカレー店は頻繁にオープンしても、スープカレー専門店は珍しい、亀有では初めてだろう。暫く経った日曜日に行ってみたら、開業した様子だが「本日はお休みです」の表示が、「日曜日に休業、大丈夫かな?」と心配したが、その後店評価サイトにも登場したので営業はしているみたいだ、休業日等の情報が少ないので、再度平日昼に行ってみたら開いていたので、入ってみる事に。
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 場所は亀有駅南口を出て、「ゆうろーど」(郵便局があるからか?)と呼ばれる商店街を直進、5分程歩いた左側にある、以前の店舗は持ち帰り専門のおにぎり屋だったと思う。
 店の名前は「SHEE’S CURRY(シーズカレー)」で、「野菜ソムリエのスープカレー」をキャッチコピーにして店のテントに表示している。
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 店内はカウンターだけの8席、この椅子が短足族には少々座り難い(笑)。店名から女性店主?と思っていたがやはりそうだった。インテリアのセンスがよく明るい雰囲気で、女性一人でも安心して利用できそう。
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 メニュー、スープは「スタンダード鶏スープ」と「濃厚海老スープ」の二種から選べる、カレーは6種類で他に「お子様カレー」もある。ライスの量は選べるが辛さレベルの注文は出来ないようだ。
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 一番上の「チキンベジタブル」(税込1,400円)を選ぶのが無難かな?と思ったが、店主がザンギ(鶏唐揚)を揚げていて、それがとても旨そうに見えた、店内表示にメニューには載っていない「北海道ザンギとベジタブル」(1,400円)を見つけ、それをお願いする事にした。
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 オープンキッチンなので作り方が見えるが、大きなスープポットから小さな雪平鍋にスープベースを移し、具を加え温めて調理する。
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 暫くして出来上がった「北海道ザンギとベジタブル」。まず見た目だけで「これは美味しいだろう」と判った(笑)。何と云っても野菜が活かっていて死んでいない、確認できたのは、南瓜、蓮根、オクラ、ベビーコーン、人参、茄子、ブロッコリー、水菜と盛沢山、例えばブロッコリーは茹でた後蕾の部分を黒く焼く等、それぞれに合わせた調理をしている。
 まずはスープを一口啜るが、サラサラであっさりしたカレー風味の中にスパイス数種の香りが、ガツンと来る味わいではなく、優しく包み込まれるような味と香り、美味しいスープだ。
 そして「野菜ソムリエ」を名乗るだけあって野菜が美味しい、輸送コストから全て北海道産ではないだろうが、出自はともかく調理が的確なので香りと味が立っている。
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 北海道で「ザンギ」と呼ぶ鶏唐揚、スープカレーに入れるので、通常より小さめに切っている、味わいは特別ではないが、揚げ立てだから香ばしく美味しい、諸事情から揚げ物は控えたいが、食べると旨いから困ったものだ(笑)。
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 辛さのオーダーは出来ないようで、足りない人はこの「辛みパウダー」で調節する、私は激辛好きではないので少しだけ使った。
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 白飯ではなくターメリックライスだった、これは中盛(150g)だが、スープが美味しく量もあるので大盛(200g+50円)でもいけた(笑)。
 美味しいカレーでした、味の決め方と濃すぎずサラっとしている点が、過去東京で食べたスープカレーより、札幌で食べるものに近いと思った、あえて云えばもう少しスパイス感が立っていれば尚よくなりそう。
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 フェミニンなセンスあるトイレ(笑)
 食後店主と話しをしたが、家庭事情からか営業時間が11時半~15時半と短く不定休の営業、それでも思い切って起業したのは、色々なリスクを覚悟しながらも立派だと思う。「札幌出身ですか?」と訊いたら、同じ道内でも函館出身との事。
 1,000円以下が普通の亀有ランチでは高い部類だが、内容を考えたら納得、此処はまた来てみたいと思った、そして「ママさん料理人頑張れ」とエールを送りたくなる(笑)。
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 店の前にある「両さん少年像」、店に行く時はこれを目印に。

 現役をリタイアしてから地元の飲食店を回る機会が増えたが、まだまだ私の知らない店がある、そして此の店みたいに、料理やスイーツの分野で小規模ながら起業している女性達が居るのを知った。皆家事と兼業しながら頑張っているのを見ると、これからの日本の食を支えるのは彼女達ではないかとも思えて来る。一様に云えるのはあまり自己宣伝が上手くない事で、このブログが少しでも役立てればと思っている(笑)。


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  2. カレー・エスニック料理
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東麻布「ローブ(L'aube)」(2020年1月)

 個人的にはスカイツリーよりデザインが好きな、東京タワーが間近に見える地にある東麻布のフランス料理「ローブ(L’aube)」。鎌倉野菜を積極的に使い、働いていた南仏のテイストを感じさせる今橋料理と、東京を代表するパティシェの一人、平瀬パティシェールの先鋭なデセールが味わえる優店だが、例年1月と8月は普段営業しない平日ランチを開催するため、今月中に行かないと後悔すると出かける事に。現役を退いてから外食活動は昼中心になっているので、夜だけ営業の店は旅行先以外殆ど行かなくなってしまった。
 予約時間の12時半に入店、迎えてくれた平瀬さんに挨拶し、彼女の父親が描いた油絵のある席に着く。相客もやって来てサービス担当の山本氏と料理の相談をする。
 ランチは6,000円のメニューだが夜の9,000円も選べる、悩んだ末に6,000円の肉料理の鴨を仔鳩に替えてもらい、デセールを一品増やしてもらうと云う、我儘なカスタマイズをしてもらった(笑)。
 オープンキッチンの前には女性3人組客、外国人を交えた会話は英語だった、意味はよく判らないが、英語は議論やメディア伝達、ミュージカル舞台等、自分の言葉と意思を相手に伝える時には向いているが、食事の場には柔らかな聴感のフランス語の方が似合うなと、これは偏見かも知れないが、そう思った。更に云うと日本語は茶室みたいな狭い空間での、あまり喋らない会話に向いている(笑)。

 当日の料理は以下のとおり、
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・ウェルカムジュース(柚子)

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・アミューズ5種(ひよこ豆のパニス、トマトサブレ、蜜芋のタルト、トリュフフィナンシェ、トルティーヤ)

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・自家製ブリオッシュ

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・鎌倉野菜 牡蠣

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・白子 カレープラント

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・鰆 芹

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・仔鳩 九条葱

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・山本ソムリエが選んでくれたワイン(スペイン白、仏カオール赤)

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・柑橘 フレーバー

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・ガレット・デ・ロワ、キャラメルのグラス

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・水出しコーヒー

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・ショコラ4種

 まず料理全体から云うと、プレートやカップ類が以前より地味になって派手さが抑えられ、全体的に落ち着いた印象、見映えだけでなく、より実質的で食べて美味しい料理に進化していると感じた。
 アミューズの5品は見た目地味だが、食べて印象に残るもの、特に南仏由来のパニスがよかった。鎌倉野菜の皿は今橋料理を代表するもの、前回から器が変わったのもあるが、見た目だけでなく滋味深いものになっている。
 季節の白子に使ったカレープラントはキク科の植物で、葉茎からカレーの香りがする事からこの名が付いている、カレー粉を使うより繊細で白子の味わいを塞いでいない、バイマックルも使って少しエスニック調の料理にしている。
 魚料理の鰆は此の日最も印象に残ったもの、長崎産の鰆は繊細な身が特徴、火入れが抜群で芹を使った必然性もあると思った。鳩料理は見た目地味だが、上に乗せたのはトリュフと竹炭を混ぜたもの、下に敷いたのが九条葱で球体は鳩を使ったクロケット、これも映えない料理かも知れないが、各要素の味わいが絡まり合い、相乗効果により1+1+1+1=4の料理で終わっていない。
 此の店の特徴は、バスバリトンで歌う今橋料理が第一幕で、平瀬パティシェールがコロラトゥーラソプラノで歌う華麗な第二幕がある事(笑)。
 まずは季節の柑橘類を使った皿で、酔いで眠くなった目が醒める(笑)、香りを増すため焦がすのは栗などで使う技法だが、それを柑橘でも取り入れ、味わいを複雑にしている、この味の積層感と単調にならない点が他店のデセールと一番違うと感じる。
 そして50分かけて焼いてもらったのが、この季節ならではのガレット・デ・ロワ。これについて説明すると長くなりそうなので、興味のある人はウィキペディアを読んでください(笑)。このガレット・デ・ロワは、それ迄自分が食べていたものを全て葬り去る程の仕上がり、まず殆ど甘くない、そしてパイ生地が以前此処で味わったミルフィーユと同じく、羽根が生えたみたいに軽い、「これがガレット・デ・ロワなら、その他は『ガレット・デ・ロワ風』では?」と思った位で、「知ってしまった不幸」を感じる位の出来だった。
 締めのコーヒー&ショコラも文句なしだった。

 追加注文があったので、支払いはそれなりの金額にはなったが、充実や満足を感じて十分納得できる内容だった。フランス料理店が乱立する今の東京で、「東京らしい先鋭でコンテンポラリー」なものを求めるなら、個人的には「ル・スプートニク」「サンプリシテ」と共にお勧めしたい店。
 2016年6月末にオープンした此の店、3年が過ぎて今とてもいい状態、「旬」になっているなと感じた。4月以降はスタッフも増える予定で、平日ランチの常態営業も検討しているとの事、今年は更なる上昇気流に乗りそうな気がしている(笑)。


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  2. フランス料理
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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
人はそれぞれに「見方、感じ方、考え方」が違います。私が美味と思ってもそう思わない人が居て当然です、味覚とはそれだけ不安定で不完全なもの、あくまでも筆者個人の嗜好による感じ方である事を承知の上で読まれてください。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに赤坂、麻布十番等。
混雑電車が苦手で加齢による朝型人間化のため、ランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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