最後の晩餐にはまだ早い


東麻布「ローブ(L'aube)」(2020年1月)

 個人的にはスカイツリーよりデザインが好きな、東京タワーが間近に見える地にある東麻布のフランス料理「ローブ(L’aube)」。鎌倉野菜を積極的に使い、働いていた南仏のテイストを感じさせる今橋料理と、東京を代表するパティシェの一人、平瀬パティシェールの先鋭なデセールが味わえる優店だが、例年1月と8月は普段営業しない平日ランチを開催するため、今月中に行かないと後悔すると出かける事に。現役を退いてから外食活動は昼中心になっているので、夜だけ営業の店は旅行先以外殆ど行かなくなってしまった。
 予約時間の12時半に入店、迎えてくれた平瀬さんに挨拶し、彼女の父親が描いた油絵のある席に着く。相客もやって来てサービス担当の山本氏と料理の相談をする。
 ランチは6,000円のメニューだが夜の9,000円も選べる、悩んだ末に6,000円の肉料理の鴨を仔鳩に替えてもらい、デセールを一品増やしてもらうと云う、我儘なカスタマイズをしてもらった(笑)。
 オープンキッチンの前には女性3人組客、外国人を交えた会話は英語だった、意味はよく判らないが、英語は議論やメディア伝達、ミュージカル舞台等、自分の言葉と意思を相手に伝える時には向いているが、食事の場には柔らかな聴感のフランス語の方が似合うなと、これは偏見かも知れないが、そう思った。更に云うと日本語は茶室みたいな狭い空間での、あまり喋らない会話に向いている(笑)。

 当日の料理は以下のとおり、
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・ウェルカムジュース(柚子)

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・アミューズ5種(ひよこ豆のパニス、トマトサブレ、蜜芋のタルト、トリュフフィナンシェ、トルティーヤ)

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・自家製ブリオッシュ

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・鎌倉野菜 牡蠣

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・白子 カレープラント

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・鰆 芹

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・仔鳩 九条葱

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・山本ソムリエが選んでくれたワイン(スペイン白、仏カオール赤)

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・柑橘 フレーバー

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・ガレット・デ・ロワ、キャラメルのグラス

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・水出しコーヒー

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・ショコラ4種

 まず料理全体から云うと、プレートやカップ類が以前より地味になって派手さが抑えられ、全体的に落ち着いた印象、見映えだけでなく、より実質的で食べて美味しい料理に進化していると感じた。
 アミューズの5品は見た目地味だが、食べて印象に残るもの、特に南仏由来のパニスがよかった。鎌倉野菜の皿は今橋料理を代表するもの、前回から器が変わったのもあるが、見た目だけでなく滋味深いものになっている。
 季節の白子に使ったカレープラントはキク科の植物で、葉茎からカレーの香りがする事からこの名が付いている、カレー粉を使うより繊細で白子の味わいを塞いでいない、バイマックルも使って少しエスニック調の料理にしている。
 魚料理の鰆は此の日最も印象に残ったもの、長崎産の鰆は繊細な身が特徴、火入れが抜群で芹を使った必然性もあると思った。鳩料理は見た目地味だが、上に乗せたのはトリュフと竹炭を混ぜたもの、下に敷いたのが九条葱で球体は鳩を使ったクロケット、これも映えない料理かも知れないが、各要素の味わいが絡まり合い、相乗効果により1+1+1+1=4の料理で終わっていない。
 此の店の特徴は、バスバリトンで歌う今橋料理が第一幕で、平瀬パティシェールがコロラトゥーラソプラノで歌う華麗な第二幕がある事(笑)。
 まずは季節の柑橘類を使った皿で、酔いで眠くなった目が醒める(笑)、香りを増すため焦がすのは栗などで使う技法だが、それを柑橘でも取り入れ、味わいを複雑にしている、この味の積層感と単調にならない点が他店のデセールと一番違うと感じる。
 そして50分かけて焼いてもらったのが、この季節ならではのガレット・デ・ロワ。これについて説明すると長くなりそうなので、興味のある人はウィキペディアを読んでください(笑)。このガレット・デ・ロワは、それ迄自分が食べていたものを全て葬り去る程の仕上がり、まず殆ど甘くない、そしてパイ生地が以前此処で味わったミルフィーユと同じく、羽根が生えたみたいに軽い、「これがガレット・デ・ロワなら、その他は『ガレット・デ・ロワ風』では?」と思った位で、「知ってしまった不幸」を感じる位の出来だった。
 締めのコーヒー&ショコラも文句なしだった。

 追加注文があったので、支払いはそれなりの金額にはなったが、充実や満足を感じて十分納得できる内容だった。フランス料理店が乱立する今の東京で、「東京らしい先鋭でコンテンポラリー」なものを求めるなら、個人的には「ル・スプートニク」「サンプリシテ」と共にお勧めしたい店。
 2016年6月末にオープンした此の店、3年が過ぎて今とてもいい状態、「旬」になっているなと感じた。4月以降はスタッフも増える予定で、平日ランチの常態営業も検討しているとの事、今年は更なる上昇気流に乗りそうな気がしている(笑)。


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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
人はそれぞれに「見方、感じ方、考え方」が違います。私が美味と思ってもそう思わない人が居て当然です、味覚とはそれだけ不安定で不完全なもの、あくまでも筆者個人の嗜好による感じ方である事を承知の上で読まれてください。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに赤坂、麻布十番等。
混雑電車が苦手で加齢による朝型人間化のため、ランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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