最後の晩餐にはまだ早い


大阪・玉出「びすとろぽたじぇ」(2020関西食べ続け-3)

 関西二日目の夜は、私が勝手に「大阪の我家」と思い込んでいる、西成区玉出にある「びすとろぽたじぇ」を訪れる事に、本町から玉出に移転してこれが4回目の訪問、ようやく道も覚えた(玉出駅出口から一直線だが)ので、次の移転がない事を願っている(笑)。東京下町で育った私は、整然としている本町周辺より、何処か雑然とした玉出の雰囲気がしっくり馴染むので落ち着く。
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 昼もしっかり食べたので、19時からの遅いスタートにしてもらった、カウンター席に座るが、後ろのテーブル席では男性客達が食事中、聞き耳を立ててはいけないが、どうもサラリーマンの会話ではないと思った、あとで知ったが普通のサラリーマンではなかったみたいだ(笑)。
 店主の肥田氏に一年ぶりの挨拶をするが、顎髭を生やし寿老人みたいな風貌になっていた、ガンジーの翌日に寿老人と、ありがたい出会いが続いて、今年はきっといい事があるに違いない、明日はローマ教皇に会えるかも知れない(笑)。
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 黒板に書かれた「本日の料理」
 以前は「~が食べたい」と予約時にお願いした事もあったが、今回は特に何も注文はしていなかったので、此処から選ぼうと思っていた。ところが肥田氏から間髪を入れず「今日はベッシーを用意してあるので、よかったら食べてくれ」との申し出があり、断る理由もなく喜んで同意をする、「ベッシー」については後述する。

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・ニュージーランドのゲヴェルツラミネール

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・バゲットと自家製リエット

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・アミューズのポタージュ

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・前菜盛り合わせ(手前から時計回りで:サーモンマリネぽたじぇ風、自家製ロースハム、豚肉の田舎風パテ、キャロットラペ、根セロリのラペ、ラタトゥイユ、フォアグラのテリーヌ、真中はツナのゼリー寄せ?)

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・若鶏のベッシー包み、ドゥミ・ドゥイユ、ソースシュプレーム

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・服(コートと云うべきか)を脱いだ処(笑)。

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・一羽全部ではないです、残った分はスタッフで食べるそうです。

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・シャリオデセール

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・選んだものは:クレームカラメル(プリン)、キャラメルのタルト、粉を使わないガトー・ショコラ、赤白グレープフルーツのコンポート、ソルベ2種

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・アビランドのカップに淹れたエスプレッソ

 前菜は過去にも味わっている定番料理が並ぶが、やはりどれも素直に美味しいなと思う、東京のビストロで出会う前菜類に比べると、全体的に僅かだが塩分が少なく感じる、年々東京と大阪の料理の違いはなくなって来たと感じるが、肥田氏は約半世紀大阪でフランス料理を作り続けて来た、「昔から続く大阪のフレンチ味」を作れる最後の世代かも知れない。特に人参と根セロリのラペは何気ないものだが、込められた半世紀を味わえる逸品。
 そして登場したのがベッシー包み、ベッシーとは豚の膀胱の事で、掃除して乾燥させた膀胱の中に鶏(鳩の場合もある)、リキュール、トリュフ等を詰め紐で縛り、湯をかけながら間接調理する。現在の低温調理の一種だが、豚の膀胱から出る香りがプラスされ、複雑で滋味ある仕上がりになる。一昨年他界した名料理人P・ボキューズのスペシャリテで、肥田氏は同店で働き実際にこの料理を作っていた。ドゥミ・ドゥイユとは「半分喪服」の意味で、鶏の身と皮の間に黒トリュフを入れる事により、外から透けて見える黒色をそう呼んだ、この命名センスはさすがフランス人だなと思う、真面目な日本人ではなかなか思いつかない(笑)。「アルビュフェラ」と云う名のフォアグラを使った重いソースを添える事が多いが、今回は少し軽い鶏出汁のソースシュプレームだった。
 私は過去に和歌山「オテル・ド・ヨシノ」、大阪上本町「コーイン」でこの料理を体験していて、これでベッシーの関西トリプルクラウンを達成した(笑)。
 他の2店が仏産ブレス鶏を使っていたのに対し、今回は国産若鶏を入れた点が違う、そのためベッシー調理の本質が見えた気がする、印象は意外にもガストロ料理と云うより郷土料理的な、地面に根が生えたような強さと伝統食の重厚さを感じさせた。歴史を辿るとローマ帝政時代にも類似料理があったそうで、現代まで残った必然と合理性を持った料理なのが理解できた。
 今回、肥田氏が私のために作ってくれた料理だが、店の若いスタッフ男女2人にも、調理師学校でも教えない料理を教え、次代に伝えて欲しいとの想いがあると思う。今は珍しくなった、ガルニ野菜のシャトーとシャンピニオンのトゥルネはスタッフ作との事。
 そして主にパティシェールが作った、現在では出会う機会が少なくなったシャリオデセールも逸品揃いで嬉しくなる。特にキャラメルタルトが秀逸だった。

 パリとリヨンの料理が違うように、東京と大阪の料理が違っていいと思う、でも最近は料理もスイーツも皆同じ方向を向いてしまい、見て食べただけでは何処で作った料理や菓子なのか判らない、これは残念な事だ。
 畏まった雰囲気は大阪人に一番似合わない気がする、いきなり店に入って来て「親父さん、何か旨いもの喰わしてくれ」と客が云えば、店主が「わかった、少し待ちな」、これが一番似合う街、こんな事書いたら「偏見だ」と云われてしまうかな?(笑)。
 例えばリヨンのブションに居るみたいな、洗練され過ぎない、温かくて何処かバタ臭い居心地いい雰囲気、これが体験できる店だ。教員生活で培った肥田氏の含蓄ある話しが聞けるのも値段に含まれるので、可能ならカウンター席がお勧め(笑)。
 肥田さん、スタッフの皆さん、ありがとうございました、楽しい夜になりました。



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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
人はそれぞれに「見方、感じ方、考え方」が違います。私が美味と思ってもそう思わない人が居て当然です、味覚とはそれだけ不安定で不完全なもの、あくまでも筆者個人の嗜好による感じ方である事を承知の上で読まれてください。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに赤坂、麻布十番等。
混雑電車が苦手で加齢による朝型人間化のため、ランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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