最後の晩餐にはまだ早い


大阪・上本町「レストラン・コーイン」後編「2013春関西食べ続け⑧」

(「レストラン・コーイン」の続き)

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・静岡産活けラングスティーヌのフランとスピラル

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・マダムビュルゴーのルーアン鴨、オレンジ風味ロースト

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・上をエギィエット(薄切り仕立て)にしたもの、ガルニは、オニオンフォンデュ、トリュフタルト

 魚料理は、前がアンクルート、メインが鴨ローストと、オーブンでのキュイッソンで神経集中する料理間だから、普通なら魚切り身のポワレ等で「逃げたい」処だが、安易な方法を採らないのがこの料理人の真骨頂、フランの火入れとすり身をスパゲッティー状にして巻き付ける手間は気が遠くなりそう(笑)、当然だがそれが料理の出来に反映していると思う。

 そして登場して来たのが、ルーアン鴨の丸ごとロースト、これもビジュアル的には相当エロイ(笑)、「鳥類は丸ごと調理に限る」はこの料理人のポリシーだが、これ一羽で2人前、提供するのは胸肉ともも肉の一部だけなので、相当「余り」が出る筈だ、一部は翌日のランチメニューで転用出来るかも知れないが、かなり思い切らないと使えない料理、それでもこの料理人は「一番旨いものを出したい」と云う信念は曲げたくないらしい。
 ルーアン鴨はシャラン鴨の原種にあたるそうで、大きさは少し小ぶりになる、もちろん人為的に飼育されたものだが、食べた印象ではシャラン鴨が人工的な養殖ハマチとすれば、ルーアン鴨はもう少し天然ブリに近いと感じた(笑)、肉質は舌にまとわりつく妖艶さがある。
 「鴨とオレンジ」はパリの名店「ラ・セール」の往年のスペシャリテだが、コーインの料理ではオレンジに甘味の強いベニマドンナ種を使用、果汁はソースには混ぜず、鴨肉と果肉を一緒に食べる事で「鴨とオレンジ」を表現、胸肉はあえて古典的な薄切りのエギュイエット仕立にし、「古典料理へのオマージュ」にしたとの説明があった。残念ながらラ・セールで「鴨とオレンジ」は食べていないが、おそらく今回の料理を上回る事は無い筈、そう思わせる程料理の完成度は高かった。私自身は鴨はそれ程得意な食材ではなく、カルトの場合選ぶ事は少ないのだが、この料理とソースには唸った、魯山人でも「山葵と醤油で食った方が旨い」とは多分言わないと思う(笑)。

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・プレデセール(トリュフのブリュレ、トリュフのグラス)

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・ガトー・マルジョレーヌ、ピシュターシュのグラス

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・ミニャルディーズ(フィナッシェ、マカロン他)
・人参のアンフィージョン

 プレデセールのブリュレとグラスは、生トリュフを砕いて加えたもの、メインデセールは「ガトー・マルジョレーヌとピスターシュグラス」、何故これになったのかは大体想像つくが、語ると長くなるので割愛する(笑)。料理人は納得出来る形にするため、本家の「ピラミッド」のルセットを元に試作を繰り返したとの事だ、去年同じ大阪の「びすとろ・ぽたじぇ」でいただいたものは、濃厚華麗な1960年代マルジョレーヌだが、それに比べると現代的に軽くなっていて、ぽたじぇ版がアメ車のキャディラックなら、コーイン版はハイブリッド車のプリウス(笑)、どちらも優れたデセールだった。
 プティフール(ミニャルディーズ)が盛り沢山なのも、この店の特徴の一つ、「食べ切れなかったら持ち帰ってください」との事だが、このスタイルは1990年代のフランスでは多かった、これはあの贅沢だった時代へのリスペクトと解釈するべきだろうか、それぞれの出来は以前よりレベルが上がっていると感じた。

 前2回にも増して強烈な料理体験だった、満腹なのに不思議と食べ続けられるのもこの店の特徴、回を増す毎に料理が進化・洗練されているし、次行った時は一体どうなっているのだろうかとの恐怖心もある(笑)。
 正直言うと「この店を知らない方が良かった」と思う時もある、古陶磁好きに「焼き物は李朝と信楽で大往生」との言葉があるが、数奇を極めた先に辿り着くのがこの焼き物二つで、これに嵌ったら一生抜け出せなくなると云う意味だ、それと同じで、この店は「フランス料理好きが最後に辿り着く店」だと思っている、私は辿り着いてしまったので、あとは「大往生」が待っているだけかも(笑)。

 「今、関西で何処行ったらいい?」と訊かれたら、「オテル・ド・ヨシノ」と答える事に変わりはないが、それを体験し更に次のステージで闘いたい?人には、この店しか残っていない、ただ此処は食べる側の知力・体力・経験値が試される店だ。一応「紹介制」(笑)らしいので、本気で体験したい人は予約時に、「このブログを見た、是非行きたい」と言えば、「満席」でさえなければ多分入れてもらえると思う(笑)、でも生半可な気持ちで行くのはお勧めしない、料理人と刺し違える位の覚悟が必要(笑)。
 私が今やらなければいけないのは、東京を引き払い大阪に引っ越し、この店に毎月通って料理人と真剣勝負をする事ではないかと思い始めている、でも今は百回挑んでも百回共勝てない気はするが(笑)。

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  1. [ edit ]
  2. フランス料理
  3. / trackback:0
  4. / comment:1

Re: コーイン

  1. [ 編集 ]
  2. 2013/11/30(土) 19:48:05 |
  3. URL |
  4. オンクレ・トシ
拙ブログをお読みいただきありがとうございます。
中でも「コーイン」の記事に反応していただいたのは、
自分でも力作と思っていただけに嬉しいです(^^;)。
今「コーイン」はスタッフが少なくなったので、昼は
2,500円、夜5,800円を基本のメニューにしていると思いました、
初回ならこれでも楽しめると思いますが、もっと料理を
極めたいと思うのなら、昼7,500円、夜10,500円のおまかせ
メニューをお勧めしますが、デセールをパスするのであれば、
あらかじめ好みを伝えておいて、2皿仕立て位のカルトにして
もらう方がいいのかも知れません。
内容的には昼夜それ程違いは無いと思いますが、昼はマダム達が
大勢いるので、結構騒がしいです、落ち着いて食事を楽しみ
たいなら、夜の方がいいとは思います。
予約の電話では、場合によっては断られる事もあります、その時
は、このブログを読んだと言ってもらえば大丈夫だと思いますが(^^;)
私もお酒は弱いので、飲めないのは気にする事はないと思いますが、
店へのエチケットとして、ノンアルコールの有料ドリンクやミネラルは
頼むべきでしょうね。



> いつもブログを楽しく拝見しています。
> こちらのコーインはいつか行こうと思っていました。
> 年末に時間が取れそうなので、
> もしよろしければ教えて頂きたいことがあります。
>
> ランチのお任せ(一番上のコース)と、夜では、
> やはり夜の方がクラシックなフレンチを楽しむには良いでしょうか。
> ちなみに1人で伺う予定です。
> 嗜好としては、クラシックフレンチを好みます。特にソースが好きです。
> ただお酒は舐める程度で、ほとんど飲めないです。
> 甘いものも得意ではないので、
> デザートをフロマージュに差し替えることが多いです。
> フロマージュはウォッシュやブルーが好きです
>
> 時間的にはランチの方が都合が良いのですが
> せっかく大阪に行くのでお料理も思いきり楽しみたく、
> 料理内容が夜優勢であれば夜かな、という気持ちもあり
> 考えあぐねています。
> もしよろしければアドバイスお願い致します。

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プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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