最後の晩餐にはまだ早い


秋葉原「ビストロ・ヌー」(2013年7月)

 この日の平日ランチは、これが3回目になる秋葉原のニューカマーなビストロ、「ビストロ・ヌー」へ行く事に、この店はカウンターがあるので一人でも気兼ねないし、昼前に入店なら今の処は予約しないでもまず大丈夫なので、「当日思い付き」で行く時には好都合な店だ(笑)。
 店がある場所は秋葉原の外れで、駅は地下鉄の末広町が一番近いが、私は千代田線利用なので湯島駅で地上に出て十分程歩いて行く、3年位前まではこのルートは、秋葉原の石丸電気(後に「エディオン」に合併改名)にレコード&CDを買いに行くために、30年位通ったのでとても感慨深い、周りの景色は昔と随分変わってしまったが、秋葉原は増殖と変容を繰り返し発展して行く街、ある意味では最も東京らしいスポットと云えるかも知れない。

 11時半の開店直後に入店したが、既にテーブル席には4人客が着いていた、この後も続いて客が来店し、椅子席は全て埋まりカウンター席も半分塞がった、店主に「毎日こんな感じですか?」と尋ねたら、「今日はたまたまです、昨日は空いていました」との答えで、客入りにはムラがあるみたいだ、これがランチメニューを提供するレストランには一番難しい処(笑)。
 プリフィクスのランチは黒板メニューから選び、前菜+メイン+コーヒーで1,500円、中にプラス料金の料理がある、デザートを加えても1,800円とお得だが、ビジネスランチだと時間の制約もあり、デザートをパスする客もいる。

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 まずはこの黒板の字が見易くていい(笑)、パリのビストロでは筆記体のそれも癖字が多いので、解読には時間がかかり食材は読めても料理法が判らず、「これでいいや」と頼んだら、予想とはかなり違う料理が出て来た事は何回かある(笑)。
 この中から選んだのは、

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・パテ・ド・カンパーニュ

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・自店で焼いているカンパーニュ系パン

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・サーモンのミ・キュイ、レモンのソース

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・ホワイトチョコとパイナップルのタルト

 開高健の著書で、昔の香港では料理人を採用するか否かの試験に、玉子炒飯と青菜炒めを作らせたとあったが、単純で普遍的な料理ほど料理人の実力が判ってしまう、それと同じで、フランス料理の料理人の実力を推し量るには、この店で前回体験した「バベットステーキ」と、今回の「パテ・ド・カンパーニュ」を作らせれば大体判りそうだ(笑)。この出来なら合格を出せる、パテはこの値段なので豚の端肉と背脂を使うと思うが、それで美味しさを出せるのがセンスがある料理人だ。そして自店で焼いていると云うパンも美味しい。
 鮭のミ・キュイはパリの「ステラマリス」を初め、日本人料理人が得意とする料理だが、通常は時間管理がしやすい真空調理や燻製機で火入れする事が多い、この店ではオーソドックスなフライパンでの火入れで、両面ソテーしたらフライパンごとオーブンに入れる、表面は固まって白くなるが、中は文字通りの「ミ・キュイ」、立て混んでオーダーが集中するランチタイムでこのキュイッソンは立派だ、レモンのコンフィチュールとの相性もいいし、皿全体のドレッセも「現代PARIS風」で洒落ている(笑)。タルトもフランス人好みな甘味十分なタイプだ。
 料理好きなパリのフランス人にこの料理を食べさせて、「幾らだと思うか?」と訊いてみたい気がする、これが1ユーロ130円換算で税&サービス料込13.8ユーロで食べられるとは、とても思わない筈(笑)、東京ランチは世界の主要都市の中でも安く、そのクオリティはかなり高いと思う。

 磯貝料理長は若干33歳という若さ、パリの人気ネオ・ビストロで働いていて、一昨年此の地に日本版ネオ・ビストロをオープンさせた。一昔前なら国内フレンチの料理長を経て独立と云うパターンだが、今はいきなり独立する(笑)、これはパリで若手日本人オーナーシェフが次々と誕生しているのと同じ往き方だ、でも私は若いうちに独立するのは賛成だ、過去料理に光るものがあった料理人は、おおむね早くに自店を立ち上げている、オーナーの意向や先輩の色合いに染まる前に、自分のやりたい事をやった方が、こと料理に関しては良い結果を生む事が多いと思う。
 あとは「いい客」が何人着いてくれるかだろう、これから楽しみな店の一つだ。
 
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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

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