最後の晩餐にはまだ早い


「パスティチェリア・バール・アルテ」のイタリアン・ドルチェ

 住居表示なら台東区清川になるが、この「パスティチェリア・バール・アルテ」がある一帯は通称「山谷(さんや)」と呼ばれる、岡林信康が歌った「山谷ブルース」の山谷、戦後日本の高度経済成長を支えた日雇労働者が集まった街だ。そのためかネガティブなイメージが付きまとうが、江戸時代は隆盛を誇った吉原遊郭が至近だったため、文化面でも歴史ある街で、江戸屈指の料亭「八百善」も関東大震災まではこの地にあった、そしてこの「アルテ」がある場所は、大型スーパー「イトーヨーカドー」の発祥地だったそうだ、その建物は無くなったが、隣にある元銀行の建物が明治時代のモダン建築で、建築好きには一見の価値がある。またこの店の道路を挟んだ向かいにある珈琲専門店「バッハ」は、コーヒー好きには特に知られた店、更に言えば「あしたのジョー」の舞台になった街だ。

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 様々な歴史を抱えた街にある、このイタリア料理店は洋菓子販売を兼用している、正確に言うと、洋菓子店の店舗内にイタリア料理店を併設していると言った方がいいかも知れない。先代が菓子職人で洋菓子店を営んでいたが、二代目の現当主が料理に興味を持ち本格的にイタリア料理を習得、店内を改装して現在の営業形態になったが、ケーキだけを買う客も多い。そのケーキ類がコンビニの台頭等により売れ行きが落ちた事もあり、従来の定番だった生ショートケーキやシュークリーム等から、イタリアン・ドルチェを主力にした品揃えにシフトした、その結果レストラン利用客が買って帰る事が多くなったそうだ、興味も覚え私も買ってみる事にした、値段は殆どが1ピース400円以下と云う下町ならではの良心価格だ(笑)。

・ズコット
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 ズコットはフィレンツェで誕生したとされる丸いドーム型のケーキで、中世兵士のヘルメットあるいは教会聖職者の頭巾の形に由来する、スポンジ生地の中に、生クリームやリコッタチーズのフィリングを詰めたもの、この店は甘さを抑えた繊細な作りで、おそらくはイタリアで作られている物より軽い仕上げになっていると思う、でも日本人にはこの位が好まれる筈、形や味わいは子供にも受けそうだ。

・カンノーロ
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 カンノーロ(複数形だとカンノーリ)はシチリア島発祥の菓子、パスタと同じ小麦粉ベースの伸ばした生地を筒に巻き油で揚げ、リコッタチーズを使ったクリームを詰める、かなりカロリーの高そうなドルチェ(笑)、シチリア出身マフィアファミリーを題材にした映画「ゴッドファザー」でも小道具として使われている。この店では仕上げにチョコレートでコーティングし「黒いカンノーロ」にしている、小さ目だが食べ応えあるのでこの位がいい(笑)、美味しいが後で腹にズシリと来るので、食後のドルチェと云うより「おやつ」感覚で食べる物だと思う。

・リコッタチーズのトルタ(店内表記は「リコッタチーズケーキ」)
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 くしくもリコッタチーズ三連荘になってしまったが(笑)、個人的にはこれが一番気に入った、簡単に言えば「ベイクド・チーズケーキ」だが、リコッタチーズを使う事により味わいがより複雑になっている。これに何かのジェラートを添えれば、都心のイタリアンの4~5千円ランチにも十分使えるクオリティだと思う。

 この店の主人は日曜を除く週6日、レストランで調理にあたる、それも昼夜休みなしだ、その合間にこれらのケーキ類を作る、主人の他には若い男性が一人サービス兼任で手伝っているだけだから凄い、その上に店のブログまで毎日更新している(笑)、「超人的」とでも言いたい位の働き方だ、おそらく鰹や鮪みたいに常時泳いでいないと死んでしまうタイプかも知れない(笑)、これも家族の協力があってこそ出来る事だと思うが、彼を見ていると「忙しい」とか「時間が無い」等の言い訳は、一職業人として出来ないなと思う(笑)。私が子供の頃、東京下町にはこうした昔気質の職人達が居たが、最近あまり見なくなった、日本人が右肩上がりの明日を信じて、必死に働いていた昭和を思い出す、気骨あるアルチザンだと思う。

 値段は下町的だが、内容は脱下町的な繊細で美味なイタリアン・ドルチェ、この他にも「ティラミス」や「ズッパイングレーゼ」等、魅力的なものが揃っている、一度試される事をお勧めしたい(笑)。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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