最後の晩餐にはまだ早い


大阪・布施「パパノエル」(2012関西食べ続け①)

 今回の「食べ続け(あまり歩かないから『食べ歩き』と呼べない)」を、大阪へ到着した延長でこの店から始めたのは、近くの鶴橋まで同料金でJRに乗って来れるという実質的な面もあるが、店がある東大阪・布施の街に漂う雰囲気が好きだからだ、東京下町育ちの私が子供の頃に親しんだ浅草や錦糸町といった東東京の繁華街とどこか共通した、良く言えば「アットホーム」、悪く言えば「キッチュ」なものがこの街に感じられるのだ。でもその布施の商店街が訪れる毎にシャッターを閉める店が増え、人通りに活気が無くなっていくのは寂しい事だ、小規模な町工業主体の地域だけに、日本の長引く不況と円高の影響はこうして地域経済システムを蝕んでしまっている。

 この日の昼に訪れるフランス料理「パパノエル」は、この商店街の真ん中、ヨーロッパ風な山小屋的雰囲気の店造りで、下町にありながら丁寧に作られた美味しいフランス料理を提供している店だ。
 料理人夫妻に挨拶を交わした後、これからの食べ続けの強行日程を考え、少し内容をセーブしてもらったランチメニューをお願いする事に。

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・前菜(右から:鶏肉のグラタン、烏賊のマリネ、八尾産若牛蒡のパイ包み焼き)

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・フランス産仔牛のポワレ、エシャロットソース

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・デザート(グレープフルーツのゼリー寄せ、リンゴのスフレとコンポート、アイスクリーム)

 毎回感じる事だが、ここの料理はどこか懐かしくてホッとする優しさがある、私がフランス料理を本格的に食べ始めたのは1990年前後からだが、不思議とその頃のフランス料理を連想させてくれる。これは決して料理が古いと云う訳ではなく、フランス料理が本当にフランス料理らしかった頃、お洒落でよそ行きな「ハレの日」の食べ物だった時代の、手間をかけて作った料理の片鱗が感じられるからだ。
 特に印象的だったのは、大阪・八尾産の若牛蒡をナスと炒めてパイ包み焼きにした前菜、この若牛蒡の調理前を見せてもらったが、根を食べる牛蒡とは種類が違い一見フキの様に見える茎を食べる、春先に出回るらしくこの夜に行った和食店でも出て来た。元は北陸産だが現在は東大阪に農地が残る八尾で栽培していて、これを使うという事は「東大阪のテロワール」になる(笑)。肉料理の仔牛はソースが定番の美味しさ。
 あとデザート類がとても丁寧に作られていて、厨房は一人なのでこれ全部やるのは大変だろうなと思ってしまう、大阪ではどの店もデザートの量は東京より相対的に多く甘さも強いが、これは例えればパリとリヨンの違いにも似ている。

 隣席は母親と娘とその夫らしき三人連れ、前回訪問時も同じ組合せでの食事をこの店で見た、東京ではあまり見る機会が少ない気もするがフランスでは何回か見た事がある、この件に限らず大阪は東京よりも母系社会だなと感じる事が多い、とにかく「おばちゃん」達を始め女性陣が元気だ、その意味では南欧のイタリア、スペイン等とも共通していて、これが大阪の料理や料理店を考える上で案外大事な点かも知れない。

 街は寂しくなっても、このアットホームで暖かなレストランが変わらずこの街に存在してくれる事を願って、寒風の中ホテルへ向かった。
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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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