最後の晩餐にはまだ早い


青山「フロリレージュ」(2013年10月)

 6月のディナー以来となってしまった青山「フロリレージュ」、本当なら毎月行きたい店だが、予約の取り難さを考えたら、春夏秋冬の各シーズンに1回利用出来ればいいのかなとも思っている、本当に気に入った店は占有しないで、他の人にも利用出来る機会を分け与えるべきなのだろう、でも今の東京でそこまで言えるのは、正直この店だけだが(笑)。

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 フロリレージュは2009年の開業以来、川手料理長と両輪で店を支えていた近藤支配人が退店した、この川手―近藤コンビは、三田「コートドール」の斉須―松下コンビの後を継ぐ、東京のフランス料理を代表する名コンビと思っていただけに残念な事だ、聞く処によると、近藤氏はフランスでレストランサービスに携わるとの事で、料理人では無いが、本場の業界で活躍する日本人として、今後の健闘を祈りたいものだ。
 近藤氏が抜けた後には若い女性がサービス担当として参入、店内の雰囲気も少し変わった気がする、以前は何処となく緊張感が漂っていたが、全体的にカジュアルな印象になった、個人的には肩肘張らないで楽しめていいと思うが、「前の方が良かった」と言う人もいると思う、でもレストランは何時までもそこに止まるのではなく、こうして変容して行くものだ、客はそれに自分の指向するものを重ね合せて、「合う、合わない」を判断すればいい事、店へやって来た100人の客が全て生涯最高と絶賛する「完全無欠のレストラン」は、世界中何処を探しても存在しないと思う。

 10月のランチメニュー(4,200円)は、通常のプリフィクスからで、前菜・メイン・デセールをそれぞれ3~4品の中なら選ぶ、私が選んだものは、

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・アミューズ(定番:グリーンオリーブのパン)

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・白ワインは4種からの選択

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・本ししゃもとトリュフのパイ包み焼き

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・蝦夷鹿の一皿目はロースト

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・同じく二皿目はラグー

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・フロリレージュ風ガトーショコラ

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・ホオズキの飴がけ

 ベテラン支配人が抜けて料理に影響が出るかなとも思ったが、心配は無用だった、川手料理長以下調理スタッフの機能は充実し、最後のミニャルディーズまで飽きさせない。
 まず前菜はサービス担当が編み籠に入った紙袋を持ってくるのだが、この中にシシャモを包んで焼いたパイが入っている、客は皿上にあるシシャモの骨を煎って砕いた粉とハーブを袋の中に入れ振る、そう「シャカシャカチキン」と同じやり方(笑)、これを皿の上に開けて食べると云う客参加型?の料理だ、「遊び心」と面白がるか、「ふざけている」と批判するかは人それぞれだと思うが、食材を無駄にしたり壊したりしている訳ではなく、シシャモの味わいは生きている、前菜やデセールにはこうした遊びは、私はあってもいいと思う。
 メインの蝦夷鹿は王道のロースト、キュイッソンは浅過ぎず強すぎず、ギリギリのジャストなもの、ガルニに使ったのは人参風味の根菜「パースニップ」で、これが意外な相性を発揮する、通常鹿肉にはビーツや赤キャベツあるいはベリー類等「赤いもの」を使う事が多いが、ありきたりの物にしたくないのだろう、この野菜を探し当てた料理人のセンスはさすがだと思う。
 二皿目はトラデショナルなラグーで、少量ながら鹿特有の風味を生かし、この料理を出した意味を感じた、セロリラブが印象的なガルニになっている。
 「ガトーショコラ」と説明のあったデセールだが、通常イメージするものとは全く違う、これは詳しく語るより是非店で体験して欲しいなと思う、スペシャリテの「ショコラ・オムレット」以上に、面白く記憶に残るデセールになりそう。

 前菜から始まりデセール、ミニャルディーズまで隙が無く、楽しさと美味しさを十分感じさせる、随所に謎かけや語呂合わせみたいな遊びもあり、客のユーモアセンスが問われる(笑)。
 私自身はどちらかと云えば厨房一人サービス一人でやっている様な小さな店が好きなのだが、この形態だとどうしても限界を感じる時がある、例えば料理は良くてもデセールで落胆する事はありがちだ、これは一人厨房の宿命で仕方の無い事だろう、それ以上を望むとすれば、このフロリレージュみたいに厨房スタッフが充実した店を選ぶしかない。
 この店は20の客席に5人の厨房スタッフと3人のサービスの体制を維持して、連日満席を続けながらも、開業以来の4年間一度も価格を上げていない、この店からそう離れていない個人名を冠した有名店?が、再三値上げしているのとは対照的だ、プリフィクスのランチでも料理による追加料金は一切ない、これは称賛すべき姿勢だと思う。
 
 毎回ながら退店時には川手料理長が見送りに出て来た、食材値上がりの話などをしたが、腰が低くて態度に裏表のない好青年と云う印象で、「料理も人なり」を感じた、長身料理人はその見かけどおり、今の東京では頭一つ抜けていると感じる、これからも輝き続けて欲しい名店だ。


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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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