最後の晩餐にはまだ早い


八丁堀「シック・プッテートル」(2013年11月)

 米国の作家ロバート・ネイサンに、「ジェニーの肖像」と云うファンタジー小説がある、映画化もされたが、大まかなストーリーは、貧しい青年画家がNYのセントラル・パークで可愛い少女と出会うが、その時に描いたスケッチが画商で初めて売れる、次に出会った時少女は急に成長していた、本格的な肖像画を描く約束をした後、彼女の事を調べたら、過去に存在した女性だと云う事が判った、やがて彼の前に現れた少女は美しい女性になっていた・・。こう書くと「怖い話」にも思えるが、実際には哀しいながら心温まる優れたファンタジーになっている。
 この夜、今年5月の初利用以来5回目の訪問になった、八丁堀のフランス料理「シック・プッテートル」での食事中、急にこの小説を思い出した。
 これだけ短期間に同じ店に5回も通うのは私としては珍しいのだが、その理由は訪れる毎に料理と店が進化しているのが感じられるからで、言い方を変えれば「成長」している、他店の倍以上のスピードで急成長し時空を超えている(笑)。それでこの小説を連想してしまった。

 勿論私のブログの影響ではないが(笑)、「この店に行ってみたい」と云う話をよく聞く、実際に行ってみて「駄目だった」と云う人も今までいなかったので、巷間の評判もそれなりに信用していいのだろう(笑)、今回も同行したのは業界関係者で、繁盛している小規模店がどういう運営をして、どんな料理を出すかの興味があったと思う、たぶん期待に沿えたのではないかと思うが、その11月の料理は、

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・バスク地方「キントア豚」のサラミ

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・パルメザンとキャラウェイシードのクッキー

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・フォアグラとフィグ(イチジク)のテリーヌ、ココア風味の竹炭チュイル

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・毛蟹のウッフブリュイエ、トリュフの泡をのせて

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・雄勝町の帆立のミ・キュイ、クミンとカルダモンの香り、鋸草のサラダ

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・蝦夷鹿のコンソメ、アキレス腱、黒大根、セロリ

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・蝦夷鹿二つの部位、二つの調理法、ロースのロティとバラ肉のラッケ、山葡萄風味,アンポ柿のベニエ

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・チィエルダンテルに詰めたフロマージュブランのムース、キャラメルのグラス、塩シャンティ

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・ミニャルディーズ
(フレッシュアンフィージョン)

 前回よりさらに料理の精度が増し立体的になったと感じた、これは生井料理長一人だった厨房に料理人が一人加わったのも大きいと思う、前菜もデセールも一手間作業が増えていると感じた。この店を初めて訪れた時に、太刀魚の骨付き料理が出て美味しかったが、ああしたビストロ的料理はもう出ないだろうと思う(笑)。
 帆立の料理は、ミ・キュイ仕立ての生っぽさと刻んだ百合根や銀杏?のクリスピー感が絶妙にマッチし、カレー風味の味付けが効いている。
 蝦夷鹿コンソメは芳醇な味わいで、この贅沢さは和歌山「オテル・ド・ヨシノ」以来、最近の東京では良いコンソメに出会う機会が無いが、ちゃんと作った物は美味しいと云う実例だ。
 肉料理に使った鹿は3歳雌との事、鹿の1歳は大体人間の7歳位になるそうで、それなら21歳の女性、少女から大人の女に変わっていく年頃だ、先月の「フロリレージュ」の鹿料理は、若さを強調した瑞々しいものだったが、このシック・プッテートルでは、より熟成をかけた事もあり、もっと大人びた化粧と衣装を纏わせた印象、「どちらもいい」としか言い様がないが、生井料理長はもしかしたら熟女好きなのかも知れない(笑)。
 デセールも味のテクスチャーが複雑になり、更に良くなったと思う。

 料理もいいが、この店のもう一つの魅力がオーナー兼メートルの星氏の軽快な喋りとサービスで、レストランは料理だけでは完結しないと云う事を認識させてくれる。
 最後は生井料理長を交え、業界関係の「濃い話」を延々としてしまった、これはブログにはとても書けないので、すいません(笑)。
 褒めてばかりでは「成長」を止めてしまいそうなので、少し注文も付けるとすれば、気になったのがディナー時の照明、クリスタルの小さなシャンデリは面白いが、光が拡散してしまい卓上の照度が足りず、料理の美しさが映えない。「コートドール」や「フロリレージュ」等の照明使いに比べると損をしている、補助光スポットで補う等の工夫があった方がいいと思う。

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 この店は11月に開業一周年を迎えるが、この一年で前述の小説みたいに、幾つもの店を追い抜いた気がする(笑)。今まさに大輪の花を咲かせようとする瞬間、「この時に行かないで何時行くの?」と言いたい旬の店だ(笑)。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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