最後の晩餐にはまだ早い


和歌山「オテル・ド・ヨシノ」(2012関西食べ続け③)

 去年9月の事だが、東京で「オテル・ド・ヨシノ」の手島料理長と話をする機会があり、その時「10月にフランスに行くので、帰って来た頃には是非和歌山まで(食べに)来てください」と言われてしまった、口調は柔らかだが要は「挑戦状」だ(笑)、これは受けない訳にはいかないと、昨年末に伺うつもりでいたのだが、諸般の事情で延期になってしまい、それを連絡した時に「来るならトリュフのある間に」と念を押されたので、何とか間に合わせる事が出来た。

 訪れたのは日曜日の昼間、初めてこの店を訪れたのは2年前の3月で土曜の昼、当時SNSで書いていた日記を読むと4組の利用と書いてある、それが2年経ったこの日は個室も含め満席の盛況、遅れてやって来たが、離れた席には大阪の某有名料理人が若手を引き連れ6人で食事を始めた。客席のざわめきとBGMが醸し出す店内の高揚感は、上り坂のレストランに共通するものだ、この日は快晴、大きな窓からは遠く和歌山城も展望出来て、絶好のレストラン日和となった。

 この日の料理は料理長にすべておまかせしたが、これが物凄い事になってしまった、

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・真イワシのマリネ、トマトとバジルの風味

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・フランス産地鶏と紀州梅鶏のコンソメ

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・縮緬キャベツと黒トリュフのテリーヌ

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・クエのボン・ファム

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・ショーソン・オ・トリュフ

・プレ・デセール(苺のジュレ)

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・トリュフのスフレ、トリュフのアイス

・コーヒーとミニャルディーズ
 
 このムニュを見て、つい財布を確認してしまった、もし足りなかったらしばらく厨房か客席で働かせてもらえばいいと(笑)、度胸を決め食事がスタート。
 まずイワシのマリネは一切れなのがいい、以前出していたサバのマリネよりこちらの方が好み、コンソメは手島料理長の得意分野、今回はトリュフの量を増やして更に濃厚華麗になっている、続く縮緬キャベツとトリュフのテリーヌは以前にも体験しているが、トリュフの量が増えたためか完成度がより増している、クエのボン・ファムは初めて食べる料理だが、クエの淡白な肉質を上質なサヴァイヨンが包み、1+1が2以上になるというフランス料理の特質を表現している。
 そして反則技とも言えるのが「ショーソン・オ・トリュフ」、この断面をみてください、これは横綱がいきなり土俵入りを始めたみたいなもので敵う訳がない(笑)、パイ生地もソースペリグーも見かけよりずっと軽く現代的だ。好きなパティシェである葛川氏の作るトリュフのスフレも素晴らしい出来。

 これは「参りました」と言うしかない、実を言うと私は今までトリュフをそんなに好んではいなかった、値段の高い割には「そんなに美味しい物か?」という疑問をいつも感じていたのだが、要は理解する程に量も質も経験していなかったのだ、このムニュみたいに次から次へ絶世の美女が現れたら、「トリュフ不感症」の私も目覚めた、おかげでこの後身体が火照ってきて、大阪のホテルでは夜中3時に目が覚めてしまった、あらためてトリュフは「媚薬」だと身を持って体験した、ただ今となってはもう手遅れかも知れないが(笑)。
 メートル&ソムリエの小松氏がグラスで出してくれた、‘Corton Charlemagne Domaine Cauvard 1987’も凄い、熟成が進みシェリー酒みたいになっているが、まだ十分現役で通用する。
 いや、すさまじい料理体験でした、食後に手島料理長が厨房から出て来て感想を聞きたがったが、この強烈体験をボキャブラリー不足の私は上手く伝えられない、こうして暫く経って冷静になってから、やっと書く事が出来た。

 「文句の付けようは無い」のだが、あえてこの料理人にこれから何か望むとすれば、ブラスの「ガルグイユ」やトラマの「ポワロのテリーヌ」みたいな、この人ならではのオリジナリティのあるスペシャリテだろうか、それが誕生した時にはフランス人も感嘆する大料理人になる可能性を秘めていると思う。
 食後の支払いは内容から考えたら安い、おかげで残念だが此処では働かなくて済んだ(笑)、「タクシー呼びましょうか?」と云う美人セルブーズの申し出を断り、余韻を楽しむために歩いて和歌山駅まで戻ったが、長く記憶に残りそうな幸福な時間だった。


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  2. フランス料理
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  4. / comment:2

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  2. 2012/02/28(火) 22:01:21 |
  3. URL |
  4. フリッカー
トシさんのこのレストランと料理長に対する思いが伝わってきます(^^;)東京行くのと同じ位価値がありそうですね。

  1. [ 編集 ]
  2. 2012/02/29(水) 07:20:42 |
  3. URL |
  4. トシ・オンクレ
フリッカーさん、今の東京でこれだけ正攻法で手間をかけ料理を作り、食べて美味しく且つ安価な店はありません(笑)、家賃、人件費、原材料費(特に野菜類)の高い東京では無理でしょう、東京へ行くより価値があります。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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