最後の晩餐にはまだ早い


大阪・高麗橋「旬菜 桜花」(2014年関西食べ続け⑥」

 ある程度年配で食通の大阪人なら、ご存知の方いると思うが、以前船場に「丸治」と云う名前の割烹があった、私がこの店へ人に連れられて行ったのは30年以上前の話だが、その時の料理を今でも忘れない、今主流の「おまかせ」献立ではなく、客は木片に書かれた食品名から、自分の食べたいものを告げ、料理法を聞いて注文する方式。
 例えば「はも」とあれば、「今日の鱧はどんな料理?」と訊き、「湯引きと蒸し物です」と店の人が答える、「それなら、蒸し物にしてくれ」と、こんな感じだった。その鱧の旨さを知ったのも此処で、今でも大阪の和食と聞くと、まずこの店を連想してしまう。
 毎年大阪に食旅行に行く様になり、一店は和食を選ぶのだが、どうも「此処行ってみたい」と足を運びたい店が少ない、最近話題になっている大阪の和食店をWEB上で調べ画像を見ても、どうもその気になれない、料理は京風に綺麗にまとめているが、美味しそうなフェロモンを感じないのだ、「何も大阪で、京都の真似する事ないのに」と残念に思ってしまう、そこで思い出したのが前述の「丸治」だった。

 そんな事を考えていた時に、FBで親しくなった大阪の食仲間から、大阪の和食なら「桜花」が面白いよと云う話を聞いた。調べてみると此処の若い店主は、大阪の食材を研究し、「大阪食文化研究所」を主催、料理を探求しているとの事、WEB上で料理画像を見たが、これは面白そうと働きかけるものがあり、東京から予約し、この日の夜に訪れる事にした。

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 店の場所は地下鉄の肥後橋駅と淀屋橋駅の中間位、ビジネス街だが飲食店も結構あって、老舗フランス料理店の「ラ・ベカス」も近所だ。
 店は一見和食店には見えない、カフェみたいなモダンな雰囲気、入店時にカウンター席に案内されたが、奥のテーブル席はほぼ満席だった。夜のおまかせ献立は三種で、その中から6,000円のものをお願いしていた、その内容は、

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先附: 「立春大吉」塩蒸豆、たたみ鰯とクリームチーズの味噌漬けの博多、つぼみ菜に酒
粕クリーム、ちしゃ唐味噌漬け、松葉に黒豆、のし梅

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大阪地産の箕面ビール

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お造り: 河豚の炙り 五色の野菜添え

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 同 : かんぱち、よこわ(メジマグロ)、伝助穴子炙り

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箸洗い: 田辺大根のすり流し

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旬野菜の炊き合せ: 金時人参、原木椎茸、さやえんどう、田辺大根 太牛蒡黒胡麻、富田林海老芋

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旬菜の盛り合せ: 古伊万里の猪口内は鱈白子紅芯大根柚子酢和え、蛸柔らか煮、牡蠣オイル漬けになめたけおろし、公魚南蛮漬け、八尾若牛蒡信田巻、河内鴨たたき、ミニ大根、自家製薬味味噌かけ・明日香大根甘酢漬け

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季節の主菜: 鰤炭火焼と高山真菜おひたし

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御飯もの: 小豆粥と自家製塩昆布
菓子と抹茶: 和洋(コーヒー風味のアーモンド菓子)

 料理の前に、カウンター席で話した森田料理長の印象を先に述べたい、長身で体格がよく低い声で喋る、誰かに似ていると思ったが、TVのお宝鑑定番組で、書画を担当する男性鑑定士だった(笑)。そして料理を食べてから、もう一人印象がダブったのが、東京八丁堀のフランス料理店「シック・プッテートル」の生井料理長、どこか彼の料理と共通点を感じたのだ。二人共に独学派料理人で勉強熱心、特に野菜に注目して野菜料理が得意、メニュー(献立)構成も個性的で定式に拘らない、盛り付けも独特の色使いを発揮し美的センスを感じる。年齢もそう変わらない筈で、和食とフランス料理の違いはあっても、指向するものに大きな差は無い、風貌も茫洋として泰然、料理人として更に伸びそうな可能性を感じる点も似ている、私は森田氏を「和食界の生井祐介」だと思った(笑)。

 料理もこの印象と共通すると思った。繊細さと大胆さが共存し、優しい女性的な印象もありながら、時に男性的な潔さも感じた、そして色気がある。
 特に印象的だった料理を挙げると、まずは「すり流し」で、通常ならここは椀物で、澄まし椀が出る順番だが、あえて「箸洗い」と称し、「大根のすり流し」にしたのには、並でないセンスを感じた、続く「炊き合せ」もいい出来、この後は「八寸」ではなく「旬菜盛り合せ」と称した酒肴、この三品の流れは良かった。注文があるとすれば、最後の抹茶に添えた菓子で、これはもう一工夫あった方がいいと思う。
 この値段だから高級食材は使えないが、それでもまっとうな和食は出来るのだと思った、普通のサラリーマンにとって、夜に一人福沢諭吉さん1枚程度で済む、居酒屋では無い、まともな和食店を知っていれば本当にありがたい、東京にも欲しい店だ。
 次回来阪時にも訪れてみたいと思ったが、見処ありな店が人気になるのは嬉しい反面、「予約の取れない店」にはなって欲しくないなと、勝手な願望を抱いてしまう(笑)。
 「関西」の一言では括れない、立派な「大阪の和食」として推薦したい店だ。


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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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