最後の晩餐にはまだ早い


神楽坂「オー・トレーズ・ジュイエ」(2014年5月)

 レストランの楽しみ方は人それぞれでいいと思うが、私ぐらいの古い人間になると、一番面白いと思うのが「定点観測」だ。
 特に若い料理人で感じる事だが、訪れる度に料理が良くなる店がある。業界用語では「化ける」と云うみたいだが、料理が進化して洗練され余計な物が無くなり、皿上から立ち上るパワーが増して行く料理人、そう数は多くはないが現にいる。これを見届けるのが何より面白い、これは年老いたグルメに残された、最後のレストランの楽しみ方かも知れない(笑)。 
 今の東京でこれを感じさせてくれるのが、まずは「フロリレージュ」で次は「シック・プッテートル」か、そしてこの2店ほど有名ではないが、個人的に期待して通っているのが、このブログではお馴染みの、神楽坂「オー・トレーズ・ジュイエ」だ。

 この店がオープンしたのが2011年の10月で、私は翌年の7月から通い始めた、その後予期せぬアクシデントによる休業改装期間があったり、サービス担当が数人替わったりもした、それでも何とか店が続いたのは、応援していた一人として安堵している(笑)。飲食店の競争が激しい神楽坂では、開店後半年持たない店がある。
 前回利用は今年3月の法事後だったが今回はプライベート?な食事、料理は夜の5,500円メニューだが、ディナーは久しぶりなので、どんな料理が出るのか楽しみだった。
 入店時に迎えてくれたのが厨房補助兼サービスを担当する、コックコート姿の最近加入したばかりの熊本出身のイケメン青年、これは女性ファンが付くかも知れない(笑)。
 当日の料理を全て紹介したい、

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・レバーペースト、カカオのパンケーキ、ルバーブのコンポート・ペルノ風味

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・シャンパーニュはDaniel Dumant

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・北海道のタコを少し炙ったカルパッチョ、セミドライバナナとパイン、ワイルドライスのサラダ、カッテージチーズとグリーンピース、ハイビスカスのエッセンス

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・香川産新物アオサとツブ貝のクリームスープ、ハーブのパスタ

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・トレヴィスと穴子のクレピネット包み、赤ワインビネガーを効かせた人参のピューレ

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・ブルゴーニュ最北部、シャブリ地区に近いドメーヌのピノ・ノワール

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・黒ソイのヴァプール、あさり、ラディッシュ、ドライトマト、明日葉のガル二チュール、新牛蒡のピューレ、バルサミコのクロカン

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・青森産仔牛もものロースト、シードルのソース、サツマイモとリンゴ、ヨーグルトのポテサラ

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・キウイのタルト、サブレブルトンのグラス、乳蜜がけ

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・洒落たノリタケ製カップを使ったアンフィージョン

 料理人一人で全てやっていた時期に比べ、料理は進化していると思った、一例を挙げれば、以前は前菜等で加熱していない生野菜が皿に乗る事もあったが、それがキチンと下拵えした物に変わってきている。
 特に印象的だった料理を挙げると、まずはタコのカルパッチョ、鮮度の良いタコとクリスピー感あるワイルドライス等のサラダがいい相性、ビジュアルは何処か「シック・プッテートル」を連想した(笑)。次の手打パスタを入れたアオサスープも良い出来、佐藤料理長は一時イタリア料理店にも居たらしい。得意の魚料理は二品とも面白かったが、黒ソイはもう少し浅い火入れでも良かったと思う。
 そして、この日感心したのが肉料理、青森県内で飼育している国産仔牛のモモ肉をロ-ストにしたもので、少量ながら印象深い料理だった、同行者が「この肉、カチョカヴァッロ(イタリア産チーズ)みたいな味がする」と言ったが、たしかにミルク系の香りが漂い独特の味わい、仏産の仔牛と比べると力強さは劣るが、繊細さではこちらの方が上かも知れない。
 デセールはサブレブルトンのアイスクリームが良かった。

 店も料理人も年を重ねる毎に変化していくものだ、「最も強い者が生き残るのではなく、 最も賢い者が生き延びるでもない、 唯一生き残るのは、変化出来る者だ」と云う言葉がある、中には変化するのを止めてしまった店や、どうも「退化した」としか思えない店もあるが(笑)、私が訪れない店は多分そうした店だ、世評がどんなに高くても興味を失ってしまう。
 上に挙げた3店も、やがてはそうした道を辿るのかも知れない、これは作ったものが後世に残る美術、音楽や文学等と料理が一番違う点だ。でも輝いた期間が短くても長くても、人々の記憶に残る店であれば、それで充分ではないかと最近考えてもいる。

 話が脇道に逸れてしまったが(笑)、今回もいい料理でした、「オー・トレーズ・ジュイエ」がこの方向で進んでくれることを願っています。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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