最後の晩餐にはまだ早い


北海道「斜里窯」中村親子の器

 今回は料理の話ではなく容れ物、器の話をしたい(笑)。
 話は今年2月に遡るが、「そごう柏店」で開催されていた、「北海道の観光と物産展」に出店していた「札幌五丈原」のラーメンを食べて帰ろうとした時、会場内の一角で足が止まった。それが「斜里窯」と名乗った道産窯元の陶器を並べたコーナーで、一目見てなかなかいい焼物ではないかと直感し、器好きの本能?が目覚めてしまった(笑)。素朴な中にも力強さがあり、古陶みたいな鄙びた雰囲気も感じさせる。
 その時売場には誰もいなかったが、気にしないで幾つか焼き物を見ていたら、「どうぞ、手に取ってご覧ください」と、大柄な男性が明るい声で話しかけてきた。
 このコーナーの売場担当かと思ったら、デパートの人間にしてはカジュアルな格好をしている。もしかしたらと思い「作家さんですか?」と聞いてみたら、そのとおりだった。

 男性の話によると、この「斜里窯」は北海道斜里郡斜里町にある窯元で、中村さんという親子二人が制作している、この方は息子の中村しんさんだそうだ。
 器好きはお互いの匂い?で判るもの(笑)、そこから器話になってしまったのだが、やはり私が見込んだとおり、北海道産の陶土と薪を使って登窯で焼いているとの事、薪窯特有の自然な色合いと素朴な造形がいい。
 立ち話だけで帰るつもりが、焼物話に高じているうちに結局皿と茶碗を買う事になってしまった(笑)、まずは父親である中村二夫さん作の「粉引平皿」(3,150円)、直径19.5cm、高さ3cm。

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 朝鮮出自の古い井戸茶碗に多く、古陶磁好きが「琵琶色」と呼ぶ赤みがかった独特の色合い。鉄分の多い陶土とガラス質の長石釉を使い、薪窯の木灰が混ざるとこの色が出やすいと聞く、同じ窯の中でもこうして赤く焼ける物と灰色に焼ける物があり、後者は周りに灰が多く降り積もり、一種の酸欠状態になると現れるらしい。
 全体的に武骨で男性的な作り、作為がない自然さで鄙びた風情も感じ、これは相当数をこなしてきた作家だと思う、裏返すとしっかりとした高台付近は、ザラっとした荒い陶土で、意外にも九州の唐津焼と似ている。
 持ってみると皿全体はズシリとした質量があるが重過ぎる程ではない、表面に凹凸があって均質ではなく、この皿に乗せるのは魚の切り身や、鴨の抱き身、ローストビーフ等が合うと思う。

 続いては息子さん作の刷毛目茶碗(6,300円)

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 同じ琵琶色でもこちらの方が明るい仕上がり、かけ流した白い化粧土の模様が抽象画みたいで面白い、若い世代が作った物だけあって作風も若々しい。
 分類すれば大振りな飯腕だが、抹茶碗としても使える大きさだ、名碗中の名碗とされる井戸茶碗の風格も備えている。実際に手で持ち上げてみると、手の小さい私には大振りに感じるが、全体のバランスがいいので不釣合いさはない。裏を返すと高台は小さく、高台周りには釉薬が爛れたみたいな状態になっている、これを昔の茶人は「梅花皮(かいらぎ)」と呼び、茶碗の景色つまりそれぞれの個性として珍重した。日本の茶人特有のディレッタンティズムなのだが、まあ外国人には最も判り難い分野だと思う(笑)。
 多孔質の厚い陶器は熱さを伝え難いので、熱い物を入れても手が耐えられる、このためお茶漬けに使う等の用途には最適だ。

 親子の作品を見て、昨今の備前や信楽みたいな有名処と違い、作品全体に作為が無く、中世の朝鮮陶器に共通する真摯で大らかな作風だ、父と息子で微妙に印象が違うのも面白い。
 買ってから約4ヶ月経ったが、器とそれを使う人間が歩み寄るには、最低でも半年位使い続ける必要がある、ようやくお互い馴染んで来た頃だろうか(笑)。  
 作品になるまでの手間と造りを考えたら、この値段は安いと思う。

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 この斜里窯は、「日本最北東端の登窯窯元」だそうで、場所は知床半島の付け根あたり、カフェもやっているそうなので、これは是非に一度見に行ってみたいと思っている。北海道在住で器に興味があり車の運転が出来る方、連絡お待ちしています(笑)。
http://bigfis2.wix.com/sharigama/

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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