最後の晩餐にはまだ早い


青山「フロリレージュ」(2014年6月)

 最近、料理人と話していて興味深い話を聞いた、それは「料理人が店に客として来た時は、名乗らなくても料理の注文の仕方で(料理人だと)大体わかる」で、その理由は「店側が今日はこれを食べて欲しいと思う料理をまず注文するから」だそうだ。
 これはいい事を聞いた、別に料理人だと思われたい訳ではないが、「この客は解っている、ただ来てみただけの冷やかし客ではない」位には思われてみたいものだ(笑)。
 最近は「おまかせメニュー」の形態を採る店が増え、こうした店と客の腹の探り合いが可能なカルト注文の店が減っているのは寂しいが、もしそうした場になったら、「この日、店が一番食べて欲しい料理」を探り当てられる様、より一層勉強しないといけないなと思う(笑)。

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 この日3ヶ月ぶりに訪れたのは、青山の超人気店「フロリレージュ」のランチ、この店のディナーはカルトブランシュのおまかせメニュー1種類だが、昼は前菜・メイン・デザートから1品ずつ選べるプリフィクスになる。何回か通っている内に気付いたのだが、紙に書いたメニューは1つだけでなく2つ以上あり、更には「本日の肉料理」「本日のチョコレート」と表記され口頭で説明する料理が席毎に微妙に違う、この店は席間隔が割と近く天井が低いので、各テーブルでサービスが料理を説明する声が聞こえる、つい聞き耳を立ててしまい(笑)、それで理解した。
 初訪問の客には、この店のスペシャリテである「フォアグラとメレンゲ」「チョコレートのオムレツ」等が提案されるが、何回か通った客には初登場の料理になる事が多い、その中から「今日は何を食べさせたいか」の料理人のメッセージを受け取る必要がある、これは客のレベルを試させられるみたいで、ちょっと怖い(笑)。
 そしてこの日選んだ料理は以下のとおり、

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・アミューズ(定番のオリーブパン)

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・白ワイン4種(スイス、ローヌヴィオニエ、ギリシャ、シャサーヌモンラッシュ)

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・熊本天草産車海老とフォアグラ、焼き茄子のソース(45℃の海老)

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・肉切りナイフは仏Perceval社の9.47

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・本日の肉料理(宮崎産馬肉のロースト、牛蒡の牛蒡巻、レモンと松の実ソース)

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・肉料理2品目(馬肉のパイ包み焼き)

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・本日のチョコレート(長野産白桃、ホワトチョコレート、メレンゲの液体窒素)

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・変わったカップに入ったエスプレッソ

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・佐藤錦のパート・ド・フリュイ

 前菜は雑誌「専門料理」最新号で、「45℃の海老」と題して紹介されている料理、摂氏45度の低温加熱で調理した最上質の車海老を、焼き茄子とフォアグラの上に、握り寿司みたいに(笑)乗せたもの、焼き茄子の皮を使った苦味のある黒いソースが効いている、これは注目すべき料理だった、今年これまでに体験した全レストランから前菜を一品選べと云われたら、多分これかなと思う。焼き茄子とフォアグラの組合せは以前にもこの店で出たが、相性がいい事は実証済み、そこへ海老が加わる事で味とテクスチャーが複雑になると共に、料理として完成度が更に高まっている。
 馬肉は今注目されている食材、レストランでも提供される事が多くなった、脂身が少ない赤身は滋味があり、食肉として可塑性も大きく、これからもっと使われていいと思う。この旨味に富んだ肉をロースト、短角牛の赤身と似ているが鉄分味はこちらの方が多いのではと感じる、これに酸味を利かせたソースがベストマッチ。
 2品目のアンクルートは王道の古典料理、それを軽く現代的に仕上げるのが、料理人のセンスだ。
 デセールはこれから旬の白桃のコンポートとホワイトチョコの組合せ、液体窒素で加工したギモーヴが面白いアクセントになっていた。

 湿気と高温が厳しく、フランス料理には不向きな季節を迎えるので、今回の料理はどうなのだろうとの懸念もあったが、これはノープロブレムでいつも以上の冴えを感じさせてくれた、この料理人は酸味の使い方が優れているので、他の料理人の料理が疲れる?夏場の料理にこそ本領を発揮するのかも知れない。
 この料理が4,500円(税別)で、それも高額家賃の青山で出せるのが凄い、客入りに苦しんでいるレストラン店主は、この店へ一度行って勉強すべきだと思う。 
 この日も有給休暇を一日申請して行ったのだが、その価値は十二分にあった、「そこへ行くために旅をする価値のある店」が「三ツ星」の定義なら、私の三ツ星は「そこへ行くために休暇を取って行く、取れなければ仮病を使ってでも行く店」、そう此の店がそれだ(笑)。
 最後はいつもどおり笑顔の川手料理長と宮垣支配人に見送られて退店、次は何時行けるのかと、まだ予約も取れていないのに待ち遠しい、悔しさも少しあるが今回も若い料理人に完敗だ(笑)。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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