最後の晩餐にはまだ早い


私の本棚から

 猛暑の中で外食のペースが落ち気味なので、今回は飲食店リポートではなく料理書籍の話をしたいと思う。
 このブログを読んだ人から、「料理は何処で勉強されたのですか?」とか「(料理)業界関係の方ですか?」と聞かれる事があるが、がっかりさせるといけないがどちらも答えは「否」で、知識は殆どが本から得たもの、「独学」と云えば聞こえはいいが、要は「我流」(笑)。私が独学派の料理人に惹かれ易いのも共通するものがあるからだと思う。
 今は積極的に料理本を買う事は殆どなくなり、書店の立読みで済ませる事が多くなったが、若い頃は大型で高価な書籍も買った、既に処分してしまった物も多いが、現在書棚に残っている本で、私自身が何がしかの影響を受けたものを紹介したい、これから料理を勉強しようとする若い人達の参考になればと思う。

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・辻静雄著作集(新潮社)1995年刊
 辻静雄ならまず代表作と云うべき「パリの料亭(レストラン)」(新潮文庫)を挙げるべきで、そうするつもりでいたが本が見つからなかった、たぶん誰かに貸した後返ってこなかったのだと思う(笑)。この著作集は死後刊行されたものだが、まず名人佐野繁次郎の洒脱な装丁が見事。中では「ヨーロッパ一等旅行」が特に読み応えがあった、「吉兆」主人の湯木貞一一行と共に、当時の欧州を代表する高級店を巡る旅は、まさに羨望の気持ちで読んでいた。辻静雄や湯木貞一みたいな巨人は、もうこの国には生まれないだろうと思うと寂しくもなるが、TV等で見ただけでも同時代を共有できたのは幸運であった。

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・パリの味―シェフたちは藝術家/増井和子著(文芸春秋社)1985年刊
 日本人が書いたフランス料理の本を一冊挙げろと言われたら、私ならこの本を選ぶ。長いパリ生活の経験で得た並外れた知識だけでなく、文章が瑞々しく感性豊かで、「理」の辻静雄に対する「情」の増井和子と言いたい位に対照的だ。そして文芸春秋社写真部長の故丸山洋平の料理写真が素晴らしい、私の料理画像はこの人を目標にしているのだが、当然ながら足元にも及ばない(笑)。

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・フランス美食街道―レストランが怖くなくなった日/山本益博著(文芸春秋社)1988年刊
 僭越ながら文章については前2冊に比べると落ちる、それでも当時これだけの熱意を持ってフランス特に地方を回った労力は称賛に値すると思う、「アラン・シャペル」「ヴィヴァロワ」みたいに、既に消えてしまった名店の貴重な記録にもなっている。装丁もとても洒落ている。

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・ヨーロッパ天才シェフ群像/アンリ・ゴー編(学習研究社)1994年刊
 まずはこの本に出てくる料理人達が凄い、25店26人(「オーベルジュ・ド・リル」はエーベルラン親子として出ている)「綺羅星の如く」と云う表現は古いかも知れないが、今あらためて見ると、この本が刊行された時期はフランスの料理界にとって「黄金期」だったと思う、私はこれを読んでブラス、トラマ、ガニェール、ロワゾー、ラムロワーズの店へ「行きたい」と熱くなり、やがて訪れる事が出来た、元来出不精の私をそこまで駆り立てる何かが、この本にはある(笑)。

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・十皿の料理/斉須政雄著(朝日出版社)1992年刊

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・吉兆味ばなし一~四/湯木貞一著(暮しの手帳社)1990~1992年刊

 料理人が書いた(前者は聞き書)で残したいのは二冊。「十皿の料理」はフランス料理人のバイブルにも例えられる有名な本なので、私如きがいらぬ説明をしない方がいいと思うが(笑)、東北地方出身の日本人青年がフランス料理、フランス文化を相手にした戦闘記、青春の書としても読める。
 後者は不世出の名料理人が雑誌の一般読者を相手に、料理、食材、器、茶事について判り易い言葉で綴った名随筆、料理に興味を持つ全ての人に読んで欲しいと思う。

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・檀流クッキング/檀一雄(中公文庫)1975年初版
 「作る」料理本はかなりの数を買ったが、一冊選ぶならやはりこれ。「小さじ何杯」等の細かいルセットは一切なし(笑)、それでいて読むと今すぐにでもキッチンに立ちたくなるから不思議だ、「フードポルノ」の本来の意味は「食欲をそそられる美味しそうな食べ物の写真や文章の事」だそうで、それならこの本こそフードポルノかも知れない(笑)。

 こうして並べてみると古い本ばかり(笑)、西暦2,000年以降のものは無い、これは日本の「食」は発展していても「食文化」は衰退しているのでは?と危惧してしまう。物を食べるのも忘れる様な面白く読み応えのある料理書籍はもう出ないのだろうか、残念な事だ。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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