最後の晩餐にはまだ早い


駒込「レザントレ・コウジイガラシ・オゥ・レギューム」

 赤坂、氷川公園近くにあったフランス料理「オゥ・レギューム」は私の好きな店だった、「野菜とともに」と云う店名そのままに野菜を主食材にして、軽いけれど工夫を凝らした個性的な料理は他店では味わえなかったもので、特に女性陣には評判のいい店だった。
 その店が開店十年を機に移転する事になった、理由についてはWEB情報で知ったのだが、赤坂では人を雇って昼夜営業していたが、人材難でいいスタッフが集らず、それなら小規模でも夫婦二人で出来る店にしようと考えを変え、子供も手がかからなくなったが、職住接近のために住居の近くで物件を探して、昨年7月に駒込に移転開業した。この話を知ってからずっと「行ってみたい」と思っていたのだが、なかなか機会がなかった、今回ようやく北区在住の人と訪問する事が出来た、五十嵐料理長の料理を味わうのは久しぶりなので、店へ向かう道は期待が高まる。

 場所は駒込駅からは歩いて5分位、飲み屋の多い雑多な飲食店街を抜けた辺りで、中里郵便局の斜め向かい側。2階だった赤坂の店舗とは違い今回は1階の路面店、店は奥に長い造りで、手前にカウンター席、奥が半個室になっていて、合わせても15席位の小さな店だ、この日は個室に案内されたが、個室から厨房が見える小さな窓が面白い、おそらく料理の進行具合が見られる様にしているのだと思う。

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 アラカルトもあるが、この日は予約時に5,400円(税込)のムニュをお願いしていた、その全品を紹介したい。

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・油脂を使わないヴィシソワーズ、フォアグラのムース

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・ラタトゥイユのテリーヌ、ガスパチョのソース

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・自家製米粉のパン

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・白インゲンとたっぷり野菜のミネストローネ、パルミジャーノのチュイール

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・鰆と冬瓜のスープ仕立て

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・マグレ鴨のロースト、季節野菜のグリル

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・茄子のクレームブリュレ、茄子の赤ワイン煮、西瓜

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・無農薬ルイボスティー(+100円)、ヌガー

 赤坂時代より盛付は少し地味になった気がする、これは厨房が一人だから当然の事だろうが、その反面料理自体は柔らかくなり、実質的で食べて美味しい料理に変化して来たとの印象を受けた。
 ヴィシソワーズは脂を使わず最後にフォアグラムースを加えるので素材の味が生きている、テリーヌ、ミネストローネは定番料理だが、良質の野菜と的確な火入れによって際だった個性が感じられる。
 鰆の料理は和食的な印象、肉料理は本来メニューなら豚だったが、マダムが「明日は休業日なので、食材の関係で鴨でも追加料金なしでお出し出来ます」との提案があり、それをお願いする事にした(笑)。ただこの料理も鴨はあくまでも脇役で、主役は野菜だと思った。デザートは赤坂時代と同じく野菜を使ったもの、これがとてもいい出来だった。

 とにかく野菜が美味しい、その美味しさを引き立てるための下仕事がどの皿にも感じられる料理だ。最近レストランで「〇〇農園の新鮮サラダ」とか名付けて、生の葉野菜にヴィネグレットをまぶしただけの皿が出る事があるが、「これって、フランス料理?」と常々疑問に思っていた、「火を入れて自然」がフランス料理本来のあり方と思う私はたぶん古い人間なのだろう、でも今回の五十嵐料理を体験して、同じ考えをする料理人が居たと嬉しくなる(笑)、先行する十年の野菜料理経験は大きいと思った。そして私がレストランで出会いたいのは、農園野菜ではなくそれを料理する人間のイデー、個性だと思うのだ。
 マダムに「これだけの料理(内容)で、この値段で大丈夫なのですか?」と聞いたら、「野菜は原価安いのです、でも仕込みに時間がかかるので、平日はランチを止めシェフはひたすら仕込みをしています」との事、アラン・パッサールに聞かせたい言葉だ(笑)。
 接客を担当するのがマダムだが、シャキシャキっとした話し好きで陽性の方だ(笑)、料理だけでなくこの人と話していると元気になる、五十嵐料理長は元から饒舌なタイプではないが、料理と同じく表情も赤坂時代より柔らかくなった印象を受けた。

 私も年齢を重ね、フランス料理が続くと辛いなと思う時がある、この店は自然食を謳っている訳ではないが、食べ終わってもお腹が重くなく、身体にいい食事をしたなとの思いになる、いかに身体に良くても美味しくなくては再訪したくないが、この店の料理なら毎日でも食べられそうだ(笑)、また行きたいなと思う。そして和洋中ジャンルを問わず野菜料理を勉強したい料理人は一度この店へ行くべきだ(笑)。
 なお店名に付いた「レザントレ」は仏語の‘Les Entrees’で、レストランにおける「前菜」の事、今回の店では野菜たっぷりな前菜をメインにしたかったので、この店名にしたそうだ。
 店を出た時に笑顔になれる、素敵な店でした(笑)。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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