最後の晩餐にはまだ早い


代々木八幡「アルドアック」(2014年11月)

 このブログでは毎年末に「今年印象に残った店」を挙げ列記して、自分の備忘録にしているのだが、そろそろ今年もこれを選ばないといけない(笑)。初訪問して良かった店は、出来るだけ再訪して初回の印象を確認したいと思っているのだが、限られた日程と財布の中身のため、なかなか思い通りにはいかないものだ。
 代々木八幡のモダンスパニッシュ「アルドアック」も、再訪したいと思いながらも伺えていなかった。今回知人の料理人から「ワンオペレーションの店を勉強したいから」との事でこの店の名前が出たので、案内を口実にくっついて行く事が出来た(笑)。
 初回利用は4月なので、もう7ヶ月も経ってしまった、「光陰矢のごとし」と云うが、私の年齢になると矢どころかライフル弾位のスピードに感じてしまう(笑)。

 店主の酒井涼氏は10月にスペイン・ガリシア地方~パリに研修旅行へ行って来たばかりなので、その成果が料理に反映しているのかの期待もあった。
 「グリグリ」同様に2階の判り難い店舗への到着は18時半、カウンターの一番奥に座らせてもらう、カウンター内は前回同様酒井氏が一人で対応する。食前酒にはやはりチャコリだろうと思ったが、季節的にシードルがお勧めとの事でバスク産の個性的なシードル(シドラ)で乾杯。
 この日に出た料理(7,500円)を以下に全品紹介したい、

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・リーキ、ジャガイモ、塩鱈のスープ

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・アミューズ(オリーブのナンプラーバター詰め、カボチャムース、鳥と豚リエット、オムレツ、いろいろな肉のクリームコロッケ、生ハム、リンゴブルーチーズチョコボール)

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・イナダ、ムール貝、レンズ豆タルタル

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・サンマ、パパーダ(ベーコン)ほうれん草巻き、鯛と鳥のスープ

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・アジ、サフランソース

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・赤ピーマン詰め物、シイタケ詰め物

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・白イカ、イカコンソメソース、イカスミ

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・魚介パエジャ

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・鯛、生ハムと鯛アラとキノコのソース

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・牛ほほ肉赤ワイン煮

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・洋ナシコンポート、パニラとオリーブオイルのアイス、イチジクスライス

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・カフェ・ソロ(エスプレッソ)

 アミューズで出た塩鱈とジャガイモのスープは、バスクの名店「マルティン・ベラサテギ」で出た同種のスープを思い出した。鍋の残り汁みたいに魚介と野菜の旨さが凝縮している、「お祖母さんの味」みたいに懐かしく記憶を呼び覚ます味(笑)。
 以下細かく説明すると長くなるので簡単に留めるが、アミューズは変化と面白さが増したと感じた、続く魚料理三品はこの日特に印象的で、中でも鯵はフランス料理ではあまり使わない魚なので、美味しさに「目からウロコ」の思いだった(笑)。
 定番の赤ピーマン(ピキージョ)の次は珍しい白烏賊の料理、烏賊墨の黒さとの対比が見た目だけでなく味の厚みにもなっている。海老味が主体のパエジャは日本人なら旨いと思わない訳がない(笑)、鯛はフランス料理店でもなかなか出会えない質と的確な火入れだった。
 牛ほほ肉は赤ワインとビネガーを使い酸味を際立たせたもの、この料理人は「フロリレージュ」の川手料理長と双璧に酸味の使い方が巧みだ。
 デザートは鉋状のスライサーで削る凍らせたイチジクが面白い、初めて見たが今迄にもあって良さそうなアイデアだ。
 そして特別なラボで豆をローストして貰っていると云う、エスプレッソも美味だった。

 この店の料理を「モダンスパニッシュ」のカテゴリーに入れているが、どうもそう簡単に分類してはいけないと思い始めている、料理人はフランス料理が好きでよく食べに行っているし、和食や中華からヒントを得たのではないかと思える料理もある、現代スペイン料理をベースにはしているが、ジャンルに固執していない、もう「酒井料理」と呼んでいいのかも知れない。
 この日は特に魚介料理が良かった、失礼ながら決して高級食材を使っている訳ではなく、秋刀魚、鯵みたいな大衆魚を使いながらも、食べ終わっての充実感が大きい、こうした多皿構成の料理は出し方が難しく、時に単調あるいは方向性の判らないものにもなり兼ねないが、酒井料理は起承転結があって飽きさせない。

 料理は7ヵ月前より更に一段進化した印象を受けた、そして前回も感じた事だが、調理から片付けまで全て一人でこなす酒井氏のカウンター内の動きに無駄がない、舞台上での名優の一人芝居、あるいは茶道を極める達人の所作みたいで、つい見入ってしまう(笑)。
 レストランにベタなサービスを求める人には向かないが、「今の東京」を感じさせてくれる店、先入観に囚われずに、料理が好きな人なら一度は訪れるべきだと思う。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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