最後の晩餐にはまだ早い


富士宮市「レストランBio-S」※休業

 中目黒「オー・コアン・ドゥ・フー」の記事の中で、「その店へ行きたいと願っていると、何時か行けるもの」と書いたが、この日初めて訪れる事になる、静岡県富士宮市の「レストランBio-S」も、ずっと行きたいと思っていたレストランだった。
 オーナーは松木一浩氏、東京の超高級店のサービスを担当していたが、ある日「俺はこれから野菜を作る」と明言、高給な職を投げ打ち、富士の裾野で野菜作りを始めた、この転身はレストラン業界でも一時話題になったと記憶している。その後は主にレストラン向けに高品質な野菜を提供していたが、やがてこの野菜を使った料理を提供するレストランを構想し、2009年にこの地に本格的なフランス料理店を開業、今年5年目を迎える。
 5年目を機にレストランをリニューアルし料理人も交代、1982年と1983年生れと云う激若コンビの料理人が厨房に入ったが、この二人共に和歌山「オテル・ド・ヨシノ」で手島料理長の下で働いていた事を知り、「これは本気で行かなくては」と、会う人毎に話していたら、ありがたくも「同行します」と云う人が現れ、ついでに車の手配も可能と云う、お年玉年賀はがきの一等が当たったみたいな幸運がやってきた(笑)、これは万難を排して店へ向かうしかない。

 久しぶりに乗った新幹線(こだま)で新富士駅に下車、この日は快晴で目の前には、まるで銭湯の絵みたいな見事な富士山、これが「自然は芸術を模倣する」の実例か(笑)。わざわざ御殿場から駅まで迎えに来てくれた高級車で現地へ向かった。山道を走る事約40分で、畑に囲まれた念願の「Bio-S」に到着、これタクシー往復なら相当の出費になると思う、まず一人では来られない(笑)。
 駐車場に車を入れていたら、店内から若い女性サービス担当が出迎えに現れた、それに続いて松木氏本人も登場、二人共にセーターにエプロン姿、以前松木氏はスーツ&ネクタイ姿で接客していたそうだが、リニューアルを機に変えたみたいだ、周りの環境を見るとこの方が合っていると思う(笑)、全面窓の明るい最上席に案内されるが、窓外には畑の一部と愛犬ならぬ愛山羊(笑)、遠景には富士山と出来過ぎな程のロケーション、座っているだけで東京砂漠に暮らしている緊張が解れていく。

     141219-11.jpg

 予約時にお願いしていたのは、昼夜共通の8,500円メニューで、以下に全品を紹介したい、

     141219-12.jpg
・ニンジンのメレンゲ

     141219-13.jpg
・黒米のおこげ、上に静岡産桜海老とシラス

        141219-14.jpg
・自家製フレッシュチーズ

     141219-15.jpg
・カリフラワーのカステラ?落葉仕立

        141219-16.jpg
・富士宮産ニホンジカのコンソメ、ヤーコンと葱

     141219-17.jpg
・功刀さん3年物ニジマスのミ・キュイ

        141219-18.jpg
・長谷川さんのマッシュルームと富士の鶏の卵

     141219-19.jpg
・冬野菜のエチュベ

     141219-20.jpg
・キャベツと沼津港のイトヨリ、キャベツのジュ

        141219-21.jpg
・サトイモと大浦ゴボウ、富士宮産ニホンジカのロースト

        141219-22.jpg
・綿あめ(笑)

     141219-23.jpg
・静岡産紅ほっぺとチョコレートムース

        141219-24.jpg
・エーブルスキワ、ホウレン草とリンゴ

     141219-25.jpg
・ミニャルディーズ(ビオスのどら焼き(笑)、カカオのブランケット)
・アンフュージョン

 私は初訪問だが同行者は再訪で、初回は前料理長時代だったそうで、料理は結構変わっていて、シンプルさが目立った料理から構成が多用素な料理になったとの事だ。
 私自身の感想は、とにかく野菜が美味しい事に加えて、実験的な面白さもあり、時にサプライズな味の重層も仕掛けている、油脂を抑えて酸味を強調すると云う、今の日本の若いフレンチ料理人に共通する傾向も感じた。
 メニューの中には鹿コンソメみたいに「エコール・テシマ」を感じさせる料理があり、思わずニッコリしたが、そうかと云って全て師に追随する訳でなく、自分達の個性を表現しようとする意欲も感じた。少し方向性が定まらない部分もあったし、デセールはまだ改良の余地ありと思うが、まだ二人共若過ぎる位に若い才能だ、これからもっと良くなる可能性大だ。
 この日は特にマッシュルームと鶏卵を使った料理が出色、「Bio-S」は何をやりたいのか、来た客に何を感じ取ってもらいたいのか、そのイデーを一皿で表現している、これを食べるためだけに、新幹線乗って来る価値はあると思う(笑)。

 サービスは松木氏以下女性陣が中心になり快適に過ごせる、超高級レストランの慇懃さではなく、親しみと安心感を覚えるもの、この辺りは客が店に何を求めて来たかを理解している、さすがだと思う。
 オーナーの松木氏と話していると、何故か故ジャン=クロード・ヴリナ氏を思い出す。風貌も年齢も違うが、オーナーとしての存在感と自信、客への敬愛と今この時間を楽しんでもらおうとする配慮等に、何処か共通するものを感じた。詳しい事は知らず想像で書くのだが、おそらくは一緒に仕事した経験があり、彼から学んだものだと睨んだのだが、もしそうだとしたら、ヴリナ氏の後継は富士山の麓に存在する事になる、それも鍬と鋤を抱えて(笑)。

 最後は皆で記念撮影、30歳若かったら「此処で働かせてください」と言ったかも知れないが(笑)、今は東京へ帰らないといけない、スタッフ達に見送られながら素敵な場所を後にした、また帰って来たい店だ。

スポンサーサイト

  1. [ edit ]
  2. フランス料理
  3. / trackback:0
  4. / comment:0


 管理者にだけ表示を許可する
 


プロフィール

オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
ブログの品位を維持するため、コメント欄は承認制にしています。

訪問者

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

« 2017 06  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -