最後の晩餐にはまだ早い


青山「フロリレージュ」(2015年1月)

 南青山の超人気フランス料理店「フロリレージュ」の開店は2009年の6月だが、私の初訪問は2011年の2月、それから訪れた回数は、昼夜合わせても10回以上20回未満だと思う、決してディープな常連客ではない。
 それでも誰かに「今の東京で何処がいい?」と訊かれたら、迷わずにこの店の名前を挙げると思う、それだけ此処の川手料理長の料理には惹かれていた。
 料理の美味しさ、サービスや居心地を含めたレストランとしての総合点なら、同レベルの店はあると思うが、川手氏と他の料理人が決定的に違うなと感じるのが、誰かの物真似でないオリジナリティーと創造性、現在東京で出会える料理人中では、アルチザンではない最もアーチスト的な感性表現を感じる、これは過去美術業界に片足入れた経験のある私には、料理人を評価する際の大きなポイントになる。

 「何かを得るためには、何かを失わなければならない」と云う言葉があるが、私の場合フロリレージュに行くために、他店を諦めねばならない事もあった、薄給の身では致し方のない事で、以前は通っていたのに全く行かなくなった店もある、「あいつ、全く来なくなった」と思っている料理人も多い筈だ(笑)、そう思われても悔いないだけのものを、この店での料理体験で得たと思う。
 そのフロリレージュが2月15日で一旦閉店する事になった、以前から噂のあった移転に伴うものだが、それを知って昨年末にこの日の席を予約した。
 ようやく道順を覚えたのに、住宅地外れの判り難い場所にある店を訪れるのは、「フロリレージュ」としては多分これが最後になってしまう(笑)。「終り良ければ、全て良し」とも云うが、最後にどんな料理で迎えてくれるのか楽しみだった、そして結論を先に云ってしまうと、大変素晴らしく記憶に残るディネ体験になった。
 まずはその料理を紹介したい、

・春菊と菊芋の石焼き(画像ブレのため載せられず)
・四角いグリーンオリーブ(定番)

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・赤穂産 牡蠣と原木椎茸のフリカッセ

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・フォアグラと山菜のブリーニ、レモンの香りを添えて

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・平目のフリット、カブとジャガイモのエクラゼ

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・茨城産 青首鴨のロースト

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・そのエロチックな(笑)肉断面

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・(二品目)モモ肉を使ったリゾット

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・苺とメレンゲのヴァシュラン仕立て

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・青山の土に埋れた黒トリュフ(クレームショコラ)

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・金柑のパート・ド・フリュイ

 前菜は上質な牡蠣に軽く火を通し、薄く削いだ椎茸との斬新な組合せ、続く山菜と合せたフォアグラと共に、何処か「和」的なものを感じさせるのだが、それでいて間違いなくフランス料理だ、この「誰かやっていそうだけれど、誰もやっていなかった」と感じさせるのが、川手料理の特筆すべき個性だと思う。
 魚料理は、これだけ肉厚の鮃をこの値段のムニュで使っていいの?と心配にもなったが(笑)、その厚みを生かすためにあえてフライにした大胆さと思い切りがいい。
 そして「今日の肉料理は何だろう?」と期待しながらも、過去に体験した豚やパンタードでなければ嬉しいなと、口には出さなかったが思っていた(笑)、その期待を大きく上回ったのが茨城産の青首鴨で、仏語で‘ Col-vert’と呼ぶものだが、完全な野種ではなく、半飼育‘Demi Sauvage’物らしい。
 私は過去鴨料理で「旨い」と唸ったのは、大阪「コーイン」のルーアン鴨と、札幌「プロヴァンサル・キムラ」の滝川鴨位で、正直云うとあまり相性のいい食材ではなかったが、この日の鴨はいきなり先頭に躍り出た(笑)。絶妙な火入れと的確なアセゾネ、一羽骨付きのまま焼いたそうだが、鳥類はやはりこれが一番美味しいと思う、暫く記憶に残る鴨料理になりそうだ。
 デセール2品も単品の完成度だけでなく、2皿が有機的に繋がり充足感が大きい。

 例えば大阪「コーイン」の料理が、食べ終わった後に「参りました、もう入りません、降参です」と白旗を挙げたくなるガルガンチュア的料理なら、この日のフロリレージュ料理は「この先は何があるのか、何が待っているのか、覗いてみたい」と思う料理、結果新店への期待感が膨らむので、それを計算しているとしたら、この料理人はやはり只者ではない(笑)。

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 旧店舗最後を飾るに相応しい素敵な料理体験になった。退店時には毎回同様に店外で待っていた川手料理長、彼の立姿、特に夜は「白鳥の騎士・ローエングリン」みたいにも見えるが(笑)、新店の豊富などをあらためて語ってくれた、「自分のやりたかった事を表現する、全く新しい店になります」と云っていたので、今からとても楽しみだ。
 なお開業は3月末から4月初めを予定しているとの事で、まずは予約競争に参加しないといけない(笑)。
 此の店で過ごせた時間への感謝と、新たなるステージへの期待を持つ夜になった。

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オンクレ・トシ

Author:オンクレ・トシ
一般的に云う「グルメブログ」ではありません、店の点数評価等はしません。食の現場に集まる「人」を描きたいと思っています、もし読んで何か不快になる事があったとしたら、筆者の表現不足によるものでしょう。
出没地域は地元の東京足立・葛飾周辺、上野、秋葉原、たまに表参道、麻布十番等。
混雑電車が苦手なのと現在失業中によりランチ行脚がメインです。更新は週2回が目標。
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